【回答結果と解説】aoringi.org/science/accuracy2017/answer/physiology_01.pdf【回答結果と解説】...
TRANSCRIPT
【回答結果と解説】
【問 1】
74歳女性。胸痛を訴え他院に受診。その後当院に紹介。その際に持参した心電図(図 1)。
最も考えられる心電図診断を次の①~⑤の中から 1つ選んで下さい。
① 正常心電図
② 右手と左手の付け間違い
③ 手と足の付け間違い
④ 右胸心
⑤ 急性心筋梗塞(右冠動脈領域)
(図 1)
正解 ③ 手と足の付け間違い
① ② ③ ④ ⑤
1(2%) 6(13%) 39(85%) 0(0%) 0(0%)
心拍数 68/分、電気軸は-88度、移行帯は V3-4誘導となっています。
Ⅱ・aVF誘導で陰性 P波、aVR誘導で陽性 P波より、まずは右手と左手の電極の付け間違いか右胸心を疑い
ます。
右胸心の心電図は、aVLと aVR誘導が入れ替わったような波形となり、胸部誘導の波形は V6誘導に向かうに
したがって R波は小さく(低電位)なります。しかしこの心電図ではそのような変化はみられないため右
胸心は否定的です。Ⅱ・Ⅲ・aVF誘導の QRS波が同じ形で陰性、aVLと aVR誘導が同じ形で陽性、Ⅰ誘導
が低電位であることから右手と左手の電極の付け間違いではなく、手と足の付け間違いと診断されます。
【問 2】
39歳女性。左胸痛を訴え受診。受診時の心電図(図 2)。
最も考えられる心電図診断を次の①~⑤から 1つ選んで下さい。
① 低カリウム血症
② 高カリウム血症
③ 低カルシウム血症
④ 高カルシウム血症
⑤ 低ナトリウム血症
(図 2)
正解 ① 低カリウム血症
① ② ③ ④ ⑤
44(96%) 1(2%) 1(2%) 0(0%) 0(0%)
心拍数 81/分、PQ時間が 0.12sec、QRS幅 0.11secと正常、U波の増高、QT時間 0.52(QTc0.60)secと延長
しています。この心電図は T波とU波が融合して TU波となり QT時間が延長していることから、低カリウム
血症の心電図と診断されます。低カルシウム血症でも QT時間の延長はみられますが、ST部分が延長すること
で QT時間が延長となります。高カルシウム血症の場合は QT時間は短縮します。
【問 3】
別紙図 3-1~3-5の心電図診断で正しい組み合わせを次の①~⑤の中から 1つ選んでください。
a 非伝導性上室性期外収縮 b 洞房ブロック c 完全房室ブロック
d Wenckebach型房室ブロック e MobitzⅡ型房室ブロック
① 1 b 2 a 3 c 4 d 5 e
② 1 b 2 c 3 a 4 e 5 d
③ 1 a 2 b 3 c 4 e 5 d
④ 1 a 2 c 3 b 4 d 5 e
⑤ 1 a 2 b 3 c 4 d 5 e
(図 3-1)
(図 3-2)
1拍目
1拍目
(図 3-3)
(図 3-4)
(図 3-5)
1拍目
1拍目
1拍目
正解 ⑤ 1 a 2 b 3 c 4 d 5 e
① ② ③ ④ ⑤
0(0%) 2(4%) 5(11%) 0(0%) 39(85%)
3-1:心拍数 58/分、PQ時間 0.15sec、QRS幅 0.10secとなっています。
2拍目の T波の上に P波が重なりこの P波に続く QRS波が脱落しています(矢印部分)。これらのことよ
り非伝導性上室性期外収縮の心電図になります。
3-2:心拍数 56/分、PQ時間 0.19sec、QRS幅 0.11secとなっています。
2拍目と 3泊目の P-P間隔(矢印部分)は 2.05secとほぼ 2倍となっています。これらのことより洞房ブ
ロックの心電図なります。
3-3:心拍数 38/分、QRS幅 0.18secと広く、心室からの調律と推定されます。
P波と QRSは無関係で出現しており、R-R間隔が P-P間隔より長く、それぞれが調律をとっていることか
ら完全房室ブロックの心電図なります。
3-4:心拍数 74/分、QRS幅 0.10secとなっています。
P-P間隔は一定で、2拍目の P波後ろに続く QRS波が脱落しています(矢印部分)。少しわかりにくいで
すが、PQ時間は 1拍目 0.27sec、2拍目 0.29secと徐々に延長しており、脱落後の PQ時間は脱落前より
0.23secと短縮しています。これらのことよりWenckbach型房室ブロックの心電図なります。
3-5:心拍数 73/分、QRS幅 0.10secとなっています。
P-P間隔は一定で、2拍目の P波後ろに続く QRS波が脱落しています(矢印部分)。3-4と非常に似ていま
すが、QRS波脱落前後の PQ時間は約 0.24secとほぼ一定であり、時間に変化がないためMobitzⅡ型房室
ブロックの心電図なります。
ブロックの鑑別に関しては、脱落前後の波形がどのような波形か、P波はあるか、PQ時間の延長・短縮はして
いないか、P-P間隔は一定かなど P波と QRS波の関係性の判読が大事になってきます。
【問 4】
心電図のペーシングが判読しにくいため今回の精度管理問題から削除します。
【問 5】
75歳男性。心電図(図 5)は心機能正常時の心電図と心筋梗塞急性期~慢性期(陳旧性期)までの心電図を
記録したものです。経時的変化の順番で正しいものを次の①~⑤の中から1つ選んで下さい。
① B→D→C→A
② B→D→A→C
③ B→A→D→C
④ C→A→D→B
⑤ C→D→A→B
A
B
C
D
正解 ② B→D→A→C
① ② ③ ④ ⑤
26(57%) 20(43%) 0(0%) 0(0%) 0(0%)
心筋梗塞時の心電図変化は時間経過とともに変化します。
発作直後にまず T波が増高(hyper-acuteT)、直後~数時間後に ST上昇がみられます。この時対側誘導では
ST低下を認めます(鏡面現象)。数時間~12時間程度で Q波が出現し、その後 T波の陰性化(冠性 T波)がみ
られます。慢性期になると ST部分は基線に戻り、続いて冠性 T波が浅くなり陽転化します。異常 Q波は最後ま
で残ります。
問題の心電図を見ていきます。
A:心拍数 69/分、PQ時間 0.27秒と延長(Ⅰ度房室ブロック)、Ⅱ・Ⅲ・aVF誘導で ST上昇・Q波(+)・QS
パターン・T波が 2相性
B:心拍数 54/分、PQ時間 0.20秒(正常)、R-R間隔は一定、Q波(-)、ST上昇なし
C:心拍数 61/分、PQ時間 0.24秒と延長(Ⅰ度房室ブロック)、Ⅱ・Ⅲ・aVF誘導で ST上昇・Q波(+)・QS
パターン・冠性 T波
D:心拍数 45/分、2:1房室ブロック、Ⅱ・Ⅲ・aVF誘導で ST上昇・Q波(+)・R波を認める、Ⅰ・aVL誘
導で ST低下(鏡面現象)
先述の時系列の心電図変化で考えると、ST部分及び Q波、T波の変化も見られない Bが心機能正常時の心
電図と判断できます。2:1の房室ブロックを伴い、Ⅱ・Ⅲ・aVF誘導で明らかな ST上昇(鏡面現象あり)・
Q 波を認めるがかろうじて R波が残っているため Dが急性期。Aと Cはともに、Ⅱ・Ⅲ・aVF誘導で ST
上昇と QS パターンを認め、A では T 波の陰転化がはじまり、C では冠性 T 波がみられます。また PQ 時
間を比較すると心筋梗塞時に起きた PQ時間の延長が経時変化で元に戻ってきているのがわかります。よっ
て B→D→A→C の順に変化したと判断できます。今回のように右冠動脈領域の心筋梗塞の場合、梗塞部位
によって房室ブロックを伴うことがあります。この場合のブロックは虚血によるものであるため、虚血状態
が改善されることにより消失します。