特集 cutting edge 国民との協働で社会を変える オープン...

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国民との協働で社会を変える オープンガバメントの時代。 特集 Cutting EDGE ●テクノロジー ●企業市民活動 ●イベントレポート ● HOT EDGE 企業の新たな成長を支えるクラウドサービス Microsoft ® Online Services 世界へ羽ばたく IT ベンチャー育成で地域活性化 電子書籍のバリアフリー化への 取り組みを発表 ハイブリッドクラウドなら、 機密性と利便性の両方を追求できる 情報化社会の視座 Vol.26 2010 年 6 月号

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国民との協働で社会を変えるオープンガバメントの時代。

特集 ● Cutting EDGE

●テクノロジー

●企業市民活動

●イベントレポート

● HOT EDGE

企業の新たな成長を支えるクラウドサービスMicrosoft® Online Services

世界へ羽ばたくITベンチャー育成で地域活性化

電子書籍のバリアフリー化への取り組みを発表

ハイブリッドクラウドなら、機密性と利便性の両方を追求できる

情 報 化 社 会 の 視 座

Vol.26 2010 年 6 月号

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P4-11国民との協働で社会を変えるオープンガバメントの時代。【第1部】オープンガバメントが日本を変えるオープンガバメントとは/透明性(Transparency)の実現に向けて/国民参加(Participation)の実現に向けて/官民連携(Collaboration)の実現に向けて

【第2部】オープンガバメント推進に欠かせないプライバシー&セキュリティ国民参加・官民連携の課題/プライバシー・セキュリティの確保と管理/GIEシンポジウム「クラウド時代のセキュリティ問題を考える」

特集●Cutting EDGE

●New TechnologyP12-13

企業の新たな成長を支えるクラウドサービスMicrosoft® Online Services

P14-15●Realizing Potential

世界へ羽ばたくITベンチャー育成で地域活性化

マイクロソフトの最新 ICT 政策関連情報ポータルInformation for ICT Policy and Opinion Leadershttp://www.microsoft.com/japan/mspolicypositions/

P16-17●EVENT REPORT

電子書籍のバリアフリー化への取り組みを発表

P18-19●HOT EDGE

ハイブリッドクラウドなら、機密性と利便性の両方を追求できる

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CONTENTS vol.26

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企業の新たな成長を支えるクラウドサービスMicrosoft® Online Services

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産業界、政府、消費者の対話がクラウドを成功に導くマイクロソフト法務本部 ゼネラルカウンセル ブラッド・スミスのプリンストン大学でのスピーチより

マイクロソフト コーポレーション(米国本社)

シニアバイスプレジデント兼ゼネラルカウンセル

ブラッド・スミス

 クラウドコンピューティングはコンピューターの新時代の幕開けを告げるものです。コスト削減、市場参入におけるアジリティ、ITの柔軟性、顧客との新しい関係性など、我々の生活にとって役立つ、さまざまな新しい機会をもたらしました。 コンピューティングの利用量は常に一定ではありません。ピーク時に合わせてシステムを準備する必要があるため、多くのサーバーで、日常的にその能力の一部しか使われていないという状況がありました。余剰部分にかかる管理コスト、消費エネルギーなど、企業は大きな負担を強いられてきました。必要な時に必要なだけのITリソースを使えるクラウドコンピューティングは、それらの負担を解消し、さまざまな形態の企業や団体に柔軟に対応することが可能です。 1つの例を紹介しましょう。スウェーデン赤十字では、常勤の社員が500名、常勤のボランティアが1,200名、そして非常勤のボランティアが4万名働いています。彼らの通信手段をマイクロソフトのExchange OnlineとSharePoint® Onlineに 移 行 することで、利用できるユーザー数を3倍に拡大しながらコストを20%削減することができたのです。

 新しい可能性や利便性を提供できると同時に、クラウドコンピューティングを成功させるために、産業界と政府は新しい課題に向き合っています。データセンターに

安心・安全なクラウドのための新しいパートナーシップ

保管されている情報のプライバシーの問題、データセンターのセキュリティをめぐる問題、そして、データセンターを運営する会社と、顧客の国籍が違う場合の国家主権に関する問題などです。つまり、非常に重要で、これまでにない新たな責任が数多く発生していると言えます。 その1つとして、政府と民間、そして一般消費者まで含めた、新しいパートナーシップの構築が必要になるでしょう。まずは、IT業界においてお互いに協調し合いながら、実質的な自主規制を採用していくことが大切です。マイクロソフトでは、プライバシーの原則を公表しており、業界全体でも同様のことが可能だと考えます。また、今後は、専門家が特定の業種や連邦政府の機密保護基準などセキュリティ評価に重点的に取り組む必要があると考えています。 最後に、私たちが取り組むべきことは、国境を超えたコラボレーションをおいて他にないと思います。各国が集まって、法律に関しての調整を行い、同じ法的基準を持つようにするのです。 私たち、つまり産業界、政府、消費者は、これらの問題について対話をしなくてはいけません。この 「新しい対話」 には、情報の交換が欠かせず、対話を始めるのが早ければ早いほど、より多くの人々が参加可能になり、より早く、確かな情報を得て、新たなアイデアを生むことができます。きっと今、思っている以上の明るい未来が拓けることでしょう。

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国民との協働で社会を変えるオープンガバメントの時代。今、各国で新しい民主主義の萌芽が始まっている。ITを活用して政府の透明性と公開性を高め、市民参加型の開かれた政策形成を実現する"オープンガバメント"が、その改革のエンジンとなっている。2009年12月「オープンガバメント指令」を正式に発表した米国連邦政府を筆頭に、英国、豪州など各国が取り組み始めています。日本でも、2010年5月に政府のIT戦略本部が発表した「新たな情報通信技術戦略」において『政府・提供者が主導する社会から納税者・消費者である国民が主導する社会への転換』『オープンガバメントの確立』が盛り込まれ、その実施に向けた取り組みが進められている。今号では、新たな政治改革の潮流と言われるオープンガバメントを特集する。

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【第2部】

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 地球温暖化、経済格差、国際金融危機、人口問題、社会福祉、財政、エネルギー問題など、現代社会には解きほぐすことのできない問題が複雑に絡み合っています。経済成長率イコール国民の幸せという時代が色褪せた今、先進諸国の政府は新たな公共政策のあり方を模索しています。 こうした社会背景の中、先進的な国々はITを活用して国民参加を促し、公共政策・サービスの設計、提供、評価を行う「オープンガバメント」を推進していま

 透明性とは政府の保有する情報を国民に公開すると共に、政府データを国民の財産として活用することを目指すものです。 政府データ公開のポイントは、だれもが容易にアクセスできることと、2次利用可能

な加工されていない生データとして提供することです。政府システムに準拠した特定のデータセットや加工済みデータではなく、統計や資料作成に使用した数値や画像などが加工されていないデータの状態で提

供されることが重要です。また、データは行政組織の観点でまとめたものでも、国民目線に立ち、省庁や地域の壁を越えてだれもが加工しやすい形式で提供されることが必要です。

す。その代表例といえるのが、オバマ政権の重要施策として「オープンガバメント指令」を発表した米国連邦政府です。この指令の特徴は、オープンガバメント実現の3原則として「透明性(Transparency)」

「 国 民 参 加(Participation)」「 官 民 連携(Collaboration)」を定義したことと、これに基づき各連邦機関に対して価値の高い公的データをだれもが利用できるようにすることや、最短45日以内、長くとも120日以内という具体的な期限を明記してオープンガバメ

ントサイトを立ち上げるアクションプランを提示したことにあります。本特集では、この米国連邦政府が定義した3原則に沿って日本のオープンガバメント化に向けた個別の課題や解決策を検証していきます。

1 透明性(Transparency)の実現に向けて

オープンガバメントとは

オープンガバメントが日本を変える

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行政刷新会議における事業仕分けのインターネットライブ中継

【第1部】

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Cutting EDGE

 米国連邦政府が運営する「Data.gov」では、国勢(人口統計、犯罪統計など)、環境(有害化学物質排出目録、地質、地形関連データなど)、経済状況(社会保障寄付金、消費者支出、利率の推移など)など400以上の統計データが提供されています。これらのデータは、利用者の環境に合わせて2次利用しやすいようXML、CSV、KML/KMZ、XLSなどさまざまなフォーマットでダウンロードできます。 「Recovery.gov」は、景気刺激策の予算に関する情報を公開するサイトです。同

 日本でもITを活用して透明性を高める取り組みが急速に進められる中、たとえば、行政刷新会議における事業仕分けのインターネットライブ中継などは情報公開の代表例と言えるでしょう。一方で、政府データの公開という点では、まだまだ取り組みが進んでいません。総務省が政府統計の総合窓口として「e-Stat」を開設し、さまざまな機関が保有していて検索に時間がかかっていた統計データをすばやく検索できるようになりました。現在提供されているのは集約されたデータですが、2次利用のしやすさから見て、ユーザーのアプリケーションから直接集約されたデータを参照できるよ

うにすることが課題です。 一般的に政府データの公開が進まない要因として、組織構造、ITコスト、そして権利処理の問題が考えられます。使いやすいデータを提供するには、省庁や自治体の壁を越えてデータを集約することが必要です。しかし、現実問題として各機関のシステムに分散している整合性のないデータの集約は簡単ではありません。かと言ってデータ集約のために新システムを構築したのでは膨大な予算がかかってしまいます。この問題は、ソリューションの組み合わせによって解決できる場合もあります。Stimulus 360を活用して各機関からデータを吸い上げ、クラウドでデータを集約・連携させれば、ITコストを最小限に抑制しつつ利便性の高いサービスを実現できます。

米国連邦政府が保有するデータを無償提供するData.gov(http://www.data.gov/)

 また、政府データの権利処理についての問題も早急に解決しなくてはいけません。日本の著作権法では、政府の広報資料は雑誌などに転載することは認めていますが、他サイトへの転載や改編は認められていません。この課題の解決には米国の例が参考になります。米国では、連邦政府の著作物は政府のものではなく国民のものと定めており、著作権法で保護されないしくみとなっています。また、ホワイトハウスに寄せられたコンテンツは、クリエイティブ・コモンズのライセンス下で提供することを投稿者に求めるなど、だれもが広く利用できる工夫がなされています。 日本政府の透明性を高めるには、こうした柔軟なしくみと、先進技術の導入が必要です。

サイトは、図表をふんだんに使い、分野別・州別・省庁別・資金受領者別に資金の流れを公開しています。このサイトを見れば、どの省庁がどれだけ予算を使っているのか、施策による雇用創出効果はどの程度見込まれるのか、どの地域でだれが補助金を受け取っているのかなど、詳細なデータを確認することができます。 これらの情報公開サイトは、各省庁や地方政府、民間事業者などに分散している情報を集約するしくみがなければ実現できません。米国の政府機関では、分散されている情報を集約し連携させるしくみとして、ソリューションパッケージであるMicrosoft®

Stimulus360を採用しているところもあります。

景気刺激策の予算に関する情報を公開するRecovery.gov(http://www.recovery.gov/)

米国の事例

日本の課題と対策

写真:ロイター / アフロ

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 国民参加は、その言葉が示すとおり政策の形成過程に国民の声を取り入れることです。国民から遠い場所で進められてきた政策形成プロセスを公開し、国民参加型で討議を進めていくことはオープンガバメントの真骨頂です。 参加型民主主義の実現に欠かせないのが「Web2.0」と言われる双方向型のWeb技術です。動画配信サイトやSNS、

Twitterなどを活用することにより、政策形成プロセスを公開し、国民の声を直接取り入れることが可能になります。一方で、不特定多数が参加できるこうしたしくみを使うことに対し、「意見の集約が難しい」「"荒らし" によりまともな意見交換ができない」「特定の意見に引きずられ正しい判断ができない」などのネガティブな意見があることも事実です。しかし、

米国コラムニストのジェームズ・スロウィッキー氏が著書「『みんなの意見』は案外正しい」で論じているように、一般の人々の知識や判断による「集合知」は、少数のエリートの判断より正しい結果を導き出す可能性が高いことは実証されています。国民の「集合知」を導き出すために、政府は積極的に双方向型Web技術を取り入れることが必要です。

2 国民参加(Participation)の実現に向けて

規制政策に関する情報公開サイトRegulations.gov(http://www.regulations.gov/)

 米国のオバマ大統領が、政策形成のプロセス公開や国民との意見交換、集会への参加呼び掛けなどにSNSやTwitterを活用していることはよく知られています。  2009年3月には、Whitehouse.govのコンテンツ「Open For Questions」に寄せられた質問にオバマ大統領が動画で直接答える「タウンホールミーティング」も開催されました。同サイトには、全米50州から10万件を超えるコメントが寄せられるなど、大きな話題となりました。なお、米国では、ホワイ

トハウスだけではなく各省庁も積極的にSNSやTwitterを活用した情報発信が実践されています。 また、国民参加型サイトの例としては

「Regulations.gov」が挙げられます。これは連邦政府が策定した規制に対する意見を書き込めるサイトです。同サイトには、各規制に対する政策担当者のコメントやガイダンス、裁定結果に対するコメントが書き込める機能があり、国民参加型の政策形成に役立てられています。他にも医療改革を進めるための「HealthReform.gov」、科学技術政策に関して国民の声を受け付ける「Science Integrity」などのサイトが開設されています。

米国の事例

Twitterを利用し、政治家が「開かれた政治」をアピールする機会が増えている。

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Cutting EDGE

「国民からの政策提案を募り、国民参加によるオープンな政策決定」を目指す民主党政権は、ITを活用した情報発信ならびに意見収集に注力しています。経済産業省の「アイディアボックス」、文部科学省の「熟議カケアイ」などは今後の発展が大いに期待できる取り組みです。 しかし、これらの取り組みはまだ試験的利用が始まったばかりであるため認知度

が低いので、今後はもっと内容をアピールして参加者を増やし、活発な意見交換ができる環境を醸成していくことが課題と言えるでしょう。そうした環境を実現するために、各省庁におけるIT活用をさらに促進していくことが必要です。 技術的観点から言えば、国民参加型のサイトには意見の散逸を避け国民の「集合知」を導き出すしくみとして、他者のコメントに賛成を表明できる『投票機能』を実装することが望ましいと言えるでしょう。投票機能を装備すれば、賛同者の多い

 官民連携とは、中央省庁および地方自治体と、国民、NPO/NGO、企業などの民間組織が協業しながら公共サービスを実行することです。環境、医療、福祉、教育

などあらゆる分野で複雑な問題が山積している現代において、すべての公共サービスを行政機関だけでまかなうことは難しいと言われています。財政負担や人的負担を減

3 官民連携(Collaboration)の実現に向けてらすためにも、政府は公共サービスの設計段階から自治体や民間組織とパートナーシップを築き、お互いの知恵と力を生かせる体制を築くことが大切です。

優れた意見が必然的にクローズアップされ、自発的に不適切なコメントは淘汰されていくので「集合知」を導きやすくなるというメリットがあります。 また、現在の法律では、国民から国会への請願手続きは、自署による文書が原則で、印刷された文書の場合、押印が必要とされています(請願法第2条)。今後、国民の声をもっと受け入れていくには、だれもがインターネットを通してオンラインで国会への要望を発信できるよう法的環境の整備を求める声もあります。

日本の課題と対策

Photo:AFLO

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 民主党政権が掲げる「新しい公共」とは、これまで官が支えてきた教育や子育て、防犯や防災、医療や福祉などの公共サービスに、地域のNPO法人や市民、企業が積極的に参加できる制度を整え、社会全体として支援するしくみを作り上げる理念です。 これまでに市民キャビネットの立ち上げや、有識者を招いた「新しい公共」円卓会議が開催され、ソーシャルビジネスの事例、

税制のあり方、社会制度、企業の公共性などに関するさまざまな議論が交わされてきました。円卓会議で有意義な議論が交わされていますが、「新しい公共」を実践するには、もっと幅広い人 に々参加を呼び掛け、1人1人の公共意識を目覚めさせる取り組みが必要です。これを実現するために欠かせないのが、ITです。Web2.0系ツールや動画配信サイトなどを活用し、1人でも多くの国民に参加を呼び掛け「新たな公共」の担い手を育成していくことが必要です。 また、政府・自治体が保有するデータ

 米国連邦政府の公式サイト「Business.gov」の目的は、すべての事業主に連邦政府、州政府、地方自治体などへの平等なアクセスを提供し、公的な助成金/ビジネスローンの活用を促して中小企業を活性化することです。同サイトは、Web2.0技術の応用により、中小企業経営者、有識者、政府との対話が可能となっており、その対話から官民連携型のビジネスを創出することが期待されています。 ワシントンDCが実施した「Apps for Democracy」は、オープンガバメント時代の官民連携の一例です。これは、市が保有する統計情報データを公開し、市民を対象に公共サービス向けアプリケーションの開発コンテストを開催するというものです。結果的に、わずか1か月という募集期間でしたが、携帯端末の情報を使って廃棄自転車を回収するアプリケーションや地図情報とWikipediaなどの情報をマッシュアップした観光ツアー作成アプリケーションなど優れた作品が数多く寄せられました。なお、コンテストで選ばれた優秀作品には、改めて市から予算がつけられ正式なアプリケーションとして官民連携型で開発が行われました。 これにより、ア

プリケーション開発費用を数十分の1に縮小する効果が得られました。なお、コンテストは、ソースコード公開と著作権放棄がエントリー条件となっているので、寄せられたアプリケーションは市の資産として自由に活用できるというメリットもあります。 「Apps for Democracy」は、公共データを民間に開放するだけではなく、その活

官民連携型のビジネス創出を期待される「Business.gov」http://www.business.gov/

用法をも市民の手に委ねることで、低コストで質の高い公共サービス用アプリケーションを開発すると共に、地域活性化をも導いた一例として知られています。

を公開し、その解決につながるアプリケーションを公募する官民連携の形も、取り入れることも考えられます。日本には優れた技術を持つエンジニアがたくさんいます。彼らの力を「新しい公共」の実現に生かすには、提供するデータの互換性が重要で す。 米 国 マイクロソフトは、Open Government Data Initiativeを主導することを通じて、政府・自治体が保有するデータを官民連携に活用するための支援に力を注いでいます。今後ともオープンガバメントに関する議論がすすむものと思われます。

日本の課題と提言

米国の事例

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Cutting EDGE

オープンガバメント推進に欠かせないプライバシー&セキュリティ

 国民参加・官民連携を推進するには、できる限り多くの国民が適切に発言できる環境を整備することが重要です。これを実現するには、携帯電話やPCなどの環境に依存せずだれもが容易にアクセスできるクラウドコンピューティングの利用が適切です。ただし、インターネットの掲示板で見られるように、匿名のネット環境ではなりすましや誹謗中傷が発生しやすく、国民の声を正しく吸い上げることが困難です。そこで公式な意見交換の場では、ユーザー登録を促し、参加者の身分を確認できる環境が必要です。国民の身分を明確にするしくみとして民主党政権は、国民IDの導入を進めています。5月に発表された「新たな情報通信技術戦略」では、2013 年までに国民IDを導入すると期限が定められているので、今年度は実現に向けた本格的な議論が行われることになるでしょう。国民ID導入時に最も議論すべき課題は、国民のプライバシー情報をどのように管理・運用するのかという指針にあると考えられます。

 国民IDが導入され、各種行政手続きをコンビニエンスストアの端末から週7日24時間利用できるようになれば、生活の利便性が高まることは間違いありません。ですが、その一方で戸籍、家族構成、就労状況、年収、保有資産、納税状況、健康状態まであらゆるプライバシー情報が紐付いて管理されてしまうため、知らない所で利用されてしまうのではないかと不安を感じる人がいることも事実です。もちろん厳格に管理されたセキュアな政府データベースに格

納されるわけですから、不用意な情報漏洩の恐れはないのかもしれません。しかし、国民IDの情報は、本人確認の手段として病院や銀行を始め民間企業でも利用されていくことは自明の理です。その際に、どのようなポリシーで情報が提供されるのか明確に定められ、万全のセキュリティ技術で保護されているという確証がないと不安を払拭できません。 この問題は、国民IDに限らず「クラウド時代のセキュリティ問題」として大きな議

論の的になっています。インターネットでの検索情報、メールサービス、オンラインショッピング履歴、サイト閲覧履歴、SNSでのコメント情報など、あらゆるデータがシステム上に残されている現状では、これらを統合分析するだけでプライバシー情報が垣間見えてしまうと懸念されています。また、サービス提供業者がユーザーの知らない所で、プライベート情報をビジネスに活用しているとの指摘も一部にはあり、第三者機関による監視の必要性もありそうです。

1 国民参加・官民連携の課題

2 プライバシー・セキュリティの確保と管理

【第2部】

Photo:AFLO

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クラウド時代の情報セキュリティのあり方

 クラウドの普及が進むにつれて、データがどこの国に存在しているのかさえわからない時代になるでしょう。そうした中でプライバシー問題に対処するには、技術、制度、運用ルールという3つの面での対策が必要です。 技術面では、IDに紐付くデータをカテゴリ別に管理し、利用目的ごとに必要な情報だけを受け渡すしくみが有効です。たとえば、運転免許証更新時には住民票情報だけが紐付けられ、納税情報や就労状況などのデータは抽出できない技術の導入です。加えて、どの機関が何のために情報を利用したのかユーザーに知らせるしくみも

運用ルール保護には、技術・制度・運用それぞれの対策が必要

併せて導入することが必要です。 ドイツでは、連邦内務省が安全な電子身分証明書を発行する電子政府プログラムを、2010年11月を目途に開始する予定です。法的に有効なドキュメントフォームを使った本人確認のプロセスにより、オンラインIDが確かな認証基準に基づくことを保証し、同時に利用者が開示を認めた最小限の情報のみで運用が可能です。また、このシステムでは、別のオンラインサービスで利用者が開示した情報を紐付けすることができません。プライバシーや個人情報保護の分野で、マイクロソフトのIDとアクセス管理技術が利用されています。 制度面では、クラウド上で管理されるデータを監査する国際的なルールや、国民ID情報の利用を監視する第三者機関の設置など、コンプライアンスが働くしくみを導入することが有効だと考えられています。

 運用面で重要なことは、ユーザーがプライバシー情報を管理できるしくみです。たとえば、政府の「新たな情報通信技術戦略」の中に、『どこでもMY病院』という医療情報を共有する構想が掲げられていますが、健康・診療データを医療機関が利用する際には、必ず本人の許可を求めるしくみが必要です。このしくみがないと、知らない間に自分の健康情報が流出し、薬販売や民間療法の業者などからしつこい勧誘を受けるなどの事態が起きかねません。 クラウド時代だからこそ、プライバシーとセキュリティには徹底的な対策を講じていかなくてはなりません。マイクロソフトは、だれもが安心してクラウドを利用できる環境を整備するため、ITの利便性を損ねることなくプライバシーとセキュリティを確保する技術の開発ならびにシステム作りに全社を挙げて取り組んでいます。

慶応義塾大学SFC研究所プラットフォームデザイン・ラボ主催のGIEシンポジウム「クラウド時代のセキュリティ問題を考える」

  マ イクロソフト副 社 長 兼 Trustworthy Computing 最 高責任者のスコット・チャーニーが来日し、慶応義塾大学 SFC 研究所プラットフォームデザイン・ラボ主催の GIE シンポジウムで次世代の情報セキュリティに関する基調講演およびパネル ディスカッションを行いました。 チャーニーは基調講演において、クラウド時代の新たなセキュリティ問題に対応するには

「世界規模で攻撃の標的を削減する努力」「技術革新による対応力強化」「国際的な協力の推進」が必要だと述べました。また、プライバシーを保護するには個人の情報が何に紐付けら

Scott Charney |スコット・チャーニー

マイクロソフト副社長兼 Trustworthy Computing 最高責任者のスコット・チャーニーが慶応大学 SFC 研究所プラットフォームデザイン・ラボ主催の GIE シンポジウムで講演

れ、どのように利用されるのかをクラウドプロバイダがユーザーに「通知」することと、利用者が自分の情報をコントロールできる環境を提供することが必要だと強調しました。 また、参加者による政府の規 制 に 関 す る 質 問 に 対 し、チャーニーは過度な規制はイノベーションを阻害してしまうが、不十分な規制ではプライバシーを守れない、適切なバランスを持ったハイブリッド型が望ましいと言及。政府主導で規制を決めるのではなく、各国の事例や市場の声に耳を傾け、規制を作り上げていくことが望ましいと発言しました。

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Photo:AFLO

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企業の新たな成長を支えるクラウドサービスMicrosoft® Online Services

 2010年6月発表の「産業構造ビジョン」において経済産業省は、日本経済の競争力強化に向けて、日本企業の強みを生かしたモジュール化分業モデルへの進出や、次世代の成長分野であるインフラ・医療・環境・文化産業などへの新規参入を促進するなど、産業構造の変革が必要だと提言しています。すでに国内大手企業の多くは、ビジネスモデル変革に向けて"選択と集中"を進め、M&Aなどの手法で事業規模拡大や新規事業参入を進めています。一方で中小企業は、資本や人材の不足によりビジネスモデルの転換があまり進んでいないのが実情です。 この課題の解決策となるのが、中小企業にも手が届くクラウドサービスの活用です。クラウドは、低コストで信頼性の高いサービスを容易に導入でき、ITインフラへの巨額の投資や人的リソースの配置が難しい中小企業と大企業の間の情報格差を縮め、中小企業のITインフラの底上げに貢献します。たとえば、社内外の情報共有やコミュニケーションを活発にするグループウェアをクラウドで導入すれば、生産性を大企業並

みに向上させると共に、コラボレーションを容易にし、新分野参入の敷居を下げる効果が期待できます。

  ビジネス向けのクラウドサービスMicrosoft Online Servicesは、 グループウェア機能を集約したセットサービスです。Microsoft Online Servicesには、メールや予定表共有機能を提供するExchange Online、ファイル共有やポータルを実現するSharePoint® Online、リアルタイムで在席情報を把握できるOffice Communications Online、Web会議を実現するOffice Live Meeting の4つが含まれています。以下

に、そのメリットをビジネスモデル変革の視点から3つにまとめて紹介します。

 Microsoft Online Servicesは、 わずかな月額利用料金でビジネスに欠かせない情報共有環境を即座に導入するクラウド サービスです。自社システムと異なり、ビジネス環境の変化に合わせてサービスを拡充・縮小できるので、新事業参入時にも投資リスクはほとんどありません。さらに、既存の情報共有環境をクラウド化することで、コスト削減や生産性向上、セキュリティ強化などさまざまな効果がもたらさ

日本企業が新たな成長を遂げるには、コストを削減して成長分野に投資を集中することや、コア領域の人材強化、次世代成長分野への進出、強みを生かしたグローバル市場でのコラボレーションなどが欠かせません。こうした変革を実践する基盤となるのがITです。しかし、国内市場を俯瞰してみると、大手企業は積極的にIT活用を進めていますが、全企業数の99.7%を占める中小企業(※)では、資本、人材、ノウハウの不足などによりITの活用が遅れています。マイクロソフトは、クラウドサービスMicrosoft Online Servicesの提供を通じて、大手企業から中小企業まですべての企業のIT基盤高度化を支援します。

New Technology

アプリケーション連携が可能な Web 会議機能で、距離を超えたコラボレーションワークを容易に実現

Microsoft Online Services3つのメリット

クラウドは日本の国際競争力強化の基盤になる

※)出典:「平成 18 年事業所・企業統計調査」(総務省)

ITインフラへの投資リスクを抑制して、企業のチャレンジを後押し

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す。これにより、子育て中の女性や地方のスペシャリストなど、多様な人材を確保することができます。新規に事業所を設けることなく各地の優秀な人材を採用できるようになれば、日本経済の課題である雇用環境改善という効果も期待できます。

 グローバル経済では、お互いの強みを生かして新たな価値を生み出すオープンイノベーション型のビジネスが重要となっています。これを実現するには、時間や場所を超えて情報共有・ファイル共有・コラボレーションワークができる環境が必要です。Microsoft Online Servicesを使えば、安価かつ迅速・容易にこうした環境を実現できます。たとえば、ファイル共有、データ連携、アプリケーション連携、Web会議などを活用して、東京の政府系研究機

関と地方の企業が連携して技術開発を行い、成長市場であるアジアのメーカーと製品を共同開発することも可能です。世界中の企業が利用しているマイクロソフトの技術を基盤にしているMicrosoft Online Servicesだからこそ、こうしたグローバルな連携を簡単に実現できるのです。

 今後クラウドは、ビジネスの重要なインフラとして普及することは間違いありませんが、現時点では、国境を越えたデータに関する法規制、セキュリティ&プライバシー、クラウドプロバイダの事業継続性などの問題点があると指摘されています。Microsoft Online Servicesは、10年以上前からクラウドの歴史と共に歩んできたマイクロソフトの技術、ノウハウ、各国で実践してきたベストプラクティスを生かすことによって安心のサービスを実現しています。世界規模のデータセンターでの万全なデータ管理、最先端のセキュリティ技術、プライバシー情報の管理に対する明確な指針、国情に合わせた柔軟なサービスの提供、日本の法律に準拠したコンプライアンス対応策などによってクラウドに対する懸念を払拭し、安心して利用できるサービスを実現しています。

Microsoft Online Services

プロジェクトメンバーのスケジュールを同期させて情報共有が可能

電子メール 予定表 ポータル ファイル共有共同作業

プレゼンス インスタントメッセージング

音声・ビデオ通話 / 会議

データ共有会議

使い慣れた Microsoft Office と連携 特別なトレーニングも不要 導入 / 展開のプロセスを簡略化

各国で培ったベストプラクティスに基づく安心のクラウドサービス

組織外部との情報共有を活発化してオープンイノベーション型ビジネスをサポート

Microsoft Online Services

れます。 また、新サービス導入時に懸念される操作系への不安もありません。多くの企業が日々利用しているOffice系インターフェイスを採用しているので、特別なトレーニング不要でスムーズにクラウドへ移行できます。

 Microsoft Online Servicesの運用はマイクロソフト側で行われるため、社内にIT専任者はいりません。これにより、企業はコア事業に人材を割り当てることが可能となり、自社の強みをさらに伸ばすことができます。 また、地方の拠点、自宅、外出先、海外など場所に依存せず、PC、携帯電話、スマートフォンなどのプラットフォームから、社内同様の仕事ができるので、テレワークなど多様な働き方が可能になりま

運用管理にかかる人的リソースの不足をカバー

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世界へ羽ばたくITベンチャー育成で地域活性化

「世界中のすべての人 と々ビジネスの持つ可能性を、最大限に引き出すための支援をする」マイクロソフトはこの実現をミッションとし、企業市民活動を推進しています。http://www.microsoft.com/japan/citizenship/

 マイクロソフトは各地の自治体との協働により、ICTを活用した地域活性化支援を行っていますが、中でも力を入れているのが、ITベンチャー支援です。地方の中小企業でも世界的大企業と取引きすることも可能なIT業界での成功を後押しすることで、地域の産業振興と、地元経済の活性化を促すようにすることが目的の1つです。 マイクロソフトも最初はITベンチャーとして挑戦を始めました。この自らの経験も踏まえ、ITベンチャー企業の育成支援を最も社会に貢献できるフィールドの1つと捉え、各自治体などの公共団体の協力の下、支援プログラムを実施しています。 都道府県、政令指定都市との協力によるプログラムは、2006年度からスタート。これまでに、埼玉県、神奈川県、千葉県、北海道、岐阜県、北九州市、秋田県、

香川県、広島市、愛知県、福井県、青森県、高知県、徳島県、鳥取県(順不同)のITベンチャーを支援してきました。また、2010年度は静岡県、福岡市、山形県、宮崎県での実施が決まり、選定企業9社と準選定企業5社に対しての支援が発表されました。 ITベンチャーへの支援を自治体と共に行うのは理由があります。自治体には、マイクロソフトでは接触することが難しい地方の中小企業についての情報が豊富にあるからです。一方で、支援を求めるITベンチャー側にとっても、自治体が参加しているプログラムであることで、支援の公共性が伝わりやすく、安心して応募することができます。 支援対象として選定されると、開発ソフトやツールの提供、技術的なサポート、プログラムロゴの使用許諾などの支援を

受けられるほか、トレーニングやカンファレンス、米国本社での研修(U.S.ツアー)などに参加することができます。さまざまな支援の中でも、プログラムロゴの使用は特に好評で、過去にプログラムに参加した企業からは、「ロゴ使用により、会社の信用度が高まり、業績拡大につながった」などの声が寄せられています。また、目に見える支援だけでなく、「U.S.ツアーにより刺激を受けた」「プログラムを通じて人脈が広がった」など、1年間のプログラムで得た "経験" が最大の成果だとする参加企業もありました。 2007年の選定企業、秋田県の「ソフトアドバンス株式会社」は、3Dプレゼンソフト「prezvision (プレジビジョン)」を開発、インパクトのあるスライドショーを驚くほど簡易な操作で実現して高い評価を得ています。U.S.ツアー中にランチタイ

マイクロソフトの企業市民活動

マイクロソフトは2007年より、全国各地の自治体と連携して、地域のIT産業の振興と

経済の活性化を目的に、ITベンチャーを支援するプログラムを実施しています。2010

年度は、静岡県、福岡市、山形県、宮崎県の 4 地域での実施が決まり、選定企業 9

社と準選定企業 5 社に向けて、1年間の技術およびマーケティング支援を行います。

2010 年度 U.S. 研修ツアー東京・大手町で行われたキックオフミーティングの様子

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ITベンチャー企業の声

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Realizing Potential

ムの食堂でゲリラ的に自社商品のプレゼンを行い、本社関係者の関心を集め、世界進出への足がかりをつくりました。 2008年選定企業、愛知県の「株式会社ステップワイズ」は、主に基幹業務システムの開発提供を行っていますが、プログラムへの参加をきっかけに、対外的な信用が得られて、大幅に業績がアップし た そ うで す。 一 方 で、Windows®

AzureTMにいち早く対応、サーバー管理にかかっていた負担が軽減され、コスト削減も実現しました。 マイクロソフトでITベンチャー支援プログラムを担当するデベロッパー&プラットフォーム統括本部ビジネスインキュベーション(LSE)シニアマネージャの長井伸明は「日本のIT業界は、ハード面では世界のトップグループにまだ残っていると言えますが、ソフト面では遅れていると言わざるを得ません。この分野での復活のカギを握るベンチャー企業を育成していくためにも、官民が協力して取り組んでいくべきだと考えています。日本では、自治体と民間企業との共同プロジェクトの

2001年10月に設立したソフトアドバンスは、2005年、3Dプレゼンソフト「prezvision (プレジビジョン)」を発売。2007年にITベンチャー支援プログラムに応募し、同ソフトが高く評価されて選定されました。代表の菅原氏は「参加してすべてプラスになりましたが、何よりメリットだと思ったのは、米国、日本のマイクロソフトのさまざまな事業部の方々と知り合えたことですね。秋田にいても世界を向いて仕事することができるという日ごろの考えが、ちょっと証明されたように思います」とプログラム参加の効果を述べています。

ソフトアドバンス 代表取締役の菅原亘氏(写真上)。3D プレゼンソフト「prezvision(プレジビジョン)」(写真下)

経験が浅く、課題も多く残されていますが、困難な時期であるからこそ、マイクロソフトという企業のマーケティング力を利用して、日本のIT業界全体の起爆剤としてもらいたい。地方からの産業振興に成功すれば、雇用も増え、経済も活性化

するのではないでしょうか」と述べています。 充実した支援のため、現在は支援対象を年間4~5地域としていますが、マイクロソフトでは、最終的には全国の47都道府県との活動を目指しています。

Photo:AFLO

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教育に活用することも提案しています。小学校で学習するひらがな、カタカナ、数字、漢字の書き順を1画ごとにアニメーション効果で見せることのできるスライドを提供、通常の方法で学習が難しい子供たちに役立つものとして期待されています。

マイクロソフトでは、障碍 (しょうがい) のある方を含めたすべての人々が自己の可能性を最大限に引き出すことができるように、 自社製品にあらゆる方に使いやすい機能(アクセシビリティ機能)を拡充する、パートナーへの技術支援、障碍のある方の支援プログラムなど、さまざまな活動を行っています。この度、電子書籍のバリアフリー化への取り組みとして、多くの電子書籍や学習教材に採用されているファイルフォーマット「DAISY(デイジー)」形式の文書をMicrosoft®Wordで作成できるWordのアドインソフトウェア日本語版の開発に協力し、2010年4月6日から無償提供が開始されました。

電子書籍のバリアフリー化への取り組みを発表

無料で提供される学習教材の一例。枠を付けたり色を変えたり、簡単にアレンジが可能

 アクセシビリティとは、情報、サービス、製品、環境などの、利用しやすさ、使いやすさを意味する言葉で、マイクロソフトでは、障碍のある方や高齢者などのICT利用を促進するアクセシビリティ活動に20年以上にわたり取り組んでいます。 PCの 操 作が 難しい方を支 援する、Windows®などの標準機能の開発、提供など、あらゆる方に使いやすい製品を目指して努力してきました。 最新のWindows 7においては、PCを使いやすくするための機能を1か所に集約した「簡単操作センター」で「画面を見や

すくしたい」「キーボードを使いやすくしたい」など目的別の設定が可能です。また、[Windowsロゴ]キー+[+]キーのキーボードショートカットで拡大鏡を起動できるなど、"使いやすさ" を追求した標準機能が増えています。 自社製品ではPowerPoint®を特別支援

EVENT REPORTイベント レポート

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左より、マイクロソフトCTO加治佐俊一、プロップ・ステーション竹中ナミ氏、日本障害者リハビリテーション協会野村美佐子氏、DAISYコンソーシアム河村宏氏

簡単に XML 形式のDAISY ファイルが生成される

 また、Windowsを始めとするマイクロソフト製品についての情報提供、技術支援を行うことにより、業界全体でのアクセシビリティ向上にも力を入れています。「マイクロソフト支援技術ベンダープログラム」は、標準機能にない機能を提供するソフトウェアや機器の開発企業を支援するもので、日本では26の企業、研究機関がメンバーとなっています。今回、記者発表された「DAISY Translator」も、DAISYコンソーシアム(本部:スイス)などと共同開発を行ったものです。 「DAISY」フォーマットで作られた文書は、文章を音声で読み上げたり、読まれている文章をハイライト表示させることができたり、世界中で視覚障碍や読字障碍のある子供の学習にも広く利用されています。これまで、DAISYの作成には、専門の知識と専用の編集ソフトウェアが必要でしたが、今回の無償提供開始により、Wordで作成した文書をDAISYに簡単に変換することが可能になり、障碍のある子供の教育現場など、利用の範囲が拡大しそうです。 DAISYコンソーシアム会長の河村宏氏は今回の無償提供開始について「全盲の人、弱視の人、読字障碍の人など、潜在的な読者層が、出版と同時に読むことが

できる書籍を届けるという、電子書籍をめぐる忘れられがちな問題点を改めて提起したものです。これからもインクルーシブな社会を作るための電子書籍の役割を考えていきたい」と述べました。 一方、マイクロソフト最高技術責任者加治佐俊一は「Office 2007でOpen XMLを採用したことで、Word文書をさまざまなフォーマットに変換することが容易になり、そのことが今回の「DAISY Translator」の開発につながりました。

『DAISY Translator』は無償のオープンソフトウェア。マイクロソフトでは、OSというプラットフォームを提供する会社の使命としてアクセシビリティに力を入れてきましたが、今回の取り組みもその一環です」

とマイクロソフトの取り組みについて説明しました。 マイクロソフトでは、開発・提供だけでなく、人と人とのつながりを重視したアクセシビリティ向上の取り組みも行っています。障碍のある高校生のための大学体験プログラム「DO-IT Japan」(東京大学先端科学技術研究センターなどと共催)、あらゆる方にやさしい社会をコーディネートできる人材育成「アクセシビリティリーダー育成プログラム」(広島大学などと協議会設立)の他、自治体、NPOとも幅広く連携しています。また、障碍のある方向けのセミナー講師などに社員がボランティア参加する、社員ボランティアコミュニティのメンバーも年々増加しています。

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HOTEDGE

 マイクロソフトは、2010年2月から世界21か国で、クラウドプラットフォーム

「Windows® AzureTM」の提供を開始し、日本でも本格的な展開が始まっています。

「Windows Azure」の最大の特徴は、アプリケーションやデータのポータビリティにあります。データセンターやデスクトップの世界で実績のあるマイクロソフト

のWindowsベースのシステム環境を、そのままクラウド環境でも利用することができるのです。アプリケーションやデータを、セキュアなプライベートクラウドでも、使いやすいパブリッククラウドでも、必要に応じてどちらの環境にも容易に移行することができます。 この特長を活かしてマイクロソフトが提

案しているのが"ハイブリッドクラウド"です。ハイブリッドクラウドでは、高い機密性を求められるデータは、自社の内部に設置したオンプレミスなシステム環境で扱い、低コストで手軽な運用が求められるデータはパブリッククラウド環境に置くことができます。オンプレミスとクラウドの最適なバランスを常に選択することができます。 銀行業界でも、安全性と安定性が必要とされるオンラインシステムは、自社のデータセンターのメインフレームで処理し、操作の使い勝手が求められ、扱うデータ量の予測が難しく、システムニーズの変化への迅速な対応が求められる情報系のシステムはクラウド環境で処理するという、ハイブリッドクラウドへのシフトが進んでいます。

ハイブリッドクラウドなら、機密性と利便性の両方を追求できる

コンテナ型データセンター内部。2500台のサーバーを収容できる コンテナの外観

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エッジ [ 情報化社会の視座 ]Vol. 262010 年 6 月発行

発行:マイクロソフト株式会社

発行責任者:ジム・フォスター

* Microsoft、Microsoft ロゴ、Windows、Excel、PowerPoint、SharePoint、SQL Azure, Windows Azure は、米国 MicrosoftCorporation および /またはその関連会社の商標です。*その他、記載されている会社名、製品名は、各社の登録商標または商標です。本誌の内容は、2010 年 6 月現在のものです。※本誌の内容は掲載時点での情報を基に記載されておりますが、出版後に情報が変更になる場合があります。

マイクロソフト株式会社法務・政策企画統括本部 政策企画本部〒 151-8583東京都渋谷区代々木2丁目 2 番1号 小田急サザンタワー

4887-WI1

 ハイブリッドクラウドは、新たなIT政策として進められている「霞が関クラウド・自治体クラウド」にも、大きなメリットをもたらします。 機密性の高いデータを扱う政府や自治体のシステムでは、高いセキュリティレベルが求められています。そのためにオンプレミスでのシステム構築が前提となっていますが、ハイブリッドクラウドによって、高いセキュリティレベルを保ちながら、低コストで使い勝手の良いシステムが実現できるのです。 例えば、市民の個人情報といった、機密性が高く、情報漏洩のリスクを避けるべきデータは、オンプレミスやプライベートクラウド環境に置いたまま、市民が直接利用するオープンなアプリケーションをパブリッククラウド環境に置いて、連携をとることが可能になります。安全性を確

保しながら、利便性を高めることができるのです。 また、アプリケーションやデータは、それぞれの環境に相互に移行することができますから、特定のアプリケーションやデータを、必要な期間だけパブリッククラウドで運用し、再びオンプレミスな環境に戻すといった柔軟な運用も可能です。

「Windows Azure」 はJavaやPHPで 構築されたインターオペラビリティに対応していますから、他のオープン環境で構築されたシステムも、同様に扱うことができます。 しかも、ハイブリッドクラウドでは、パブリッククラウドのメリットである低コストでの運用が可能になります。特定のシステムを積極的にパブリッククラウド環境で

運用することで、「霞が関クラウド・自治体クラウド」全体のコスト削減を促進することができます。 クラウド環境へのシフトが加速している米国では、米国政府もクラウド環境を取り入れています。シカゴにあるマイクロソフトのデータセンターに、米国政府専用のコンテナ型のシステムを設置することで、パブリッククラウドの中で、セキュアなプライベートクラウドを実現しています。 日本で進められている「霞が関クラウド・自治 体クラウド」でも、「Windows Azure」が実現するハイブリッドクラウドの活用は、コスト面でもサービスレベルの向上という面でも、大きな成果をもたらすものです。今後の展開にぜひご注目ください。

「霞が関クラウド・自治体クラウド」に大きなメリットをもたらすハイブリッドクラウド

2200万円

2000万円

1800万円1600万円

1400万円

1200万円1000万円

800万円600万円

400万円

200万円0円

Webサーバー4台と、SQL Azure™を利用した場合の3年間のトータルコストの比較

Setup and delivery

Bandwidth

Facilities and overhead

Database computing, licensing and storage

IT administration and support

Web/worker computing

Windows Azure Pratform

750 万円

1,650 万円(On-Premises)Webサーバー4台