積層型静電アクチュエータ積層型静電アクチュエータは極板間隔が狭くなるほど、発生力が急激に(極板間隔の...

7
積層型静電 アクチュエータ 人工筋肉の実現へ Stacked-type Electrostatic Actuator 省エネルギー 軽量 advantage 大きな発生力 アクチュエータに使用されているリボン状電極 材料がPETフィルムと銅箔なので非常 に軽量です。 また発生力が面積力なので小型化も可能です。 積層型静電アクチュエータ 収縮時(イメージ) 自然長 エネルギー効率は約50%です。 収縮状態を持続するために電流を流し続ける必 要がないので、負荷保持の際にエネルギー消費 が無いのも魅力です。 リボン状電極の模式図 PET 銅箔 積層型静電アクチュエータは、直動運動をする多層電極構造のアクチュエータです。 極板間隔を狭くすることにより発生力を強くすることができ、将来的にはエンジンの10倍 にすることも可能です。 実際のリボン状電極 アクチュエータの収縮 電極間隔0.6um、印加電圧300V としたときの発生力は 10kgf/cm 2 以上 !! ※電極間の誘電率に比例して大きくなる(10kgf/cm 2 は誘電率1の場合) ロボットの人工筋肉への応用が可能です

Upload: others

Post on 04-Jul-2020

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 積層型静電アクチュエータ積層型静電アクチュエータは極板間隔が狭くなるほど、発生力が急激に(極板間隔の 二乗に反比例して)強くなる。

積層型静電アクチュエータ

人工筋肉の実現へ

Stacked-type Electrostatic Actuator

省エネルギー

軽量

advantage

大きな発生力

アクチュエータに使用されているリボン状電極

は材料がPETフィルムと銅箔なので非常

に軽量です。

また発生力が面積力なので小型化も可能です。

積層型静電アクチュエータ 収縮時(イメージ) 自然長

エネルギー効率は約50%です。

収縮状態を持続するために電流を流し続ける必要がないので、負荷保持の際にエネルギー消費が無いのも魅力です。

リボン状電極の模式図

PET 銅箔

積層型静電アクチュエータは、直動運動をする多層電極構造のアクチュエータです。

極板間隔を狭くすることにより発生力を強くすることができ、将来的にはエンジンの10倍にすることも可能です。

実際のリボン状電極

アクチュエータの収縮 電極間隔0.6um、印加電圧300V

としたときの発生力は 10kgf/cm2以上※!!

※電極間の誘電率に比例して大きくなる(10kgf/cm2は誘電率1の場合)

ロボットの人工筋肉への応用が可能です

Page 2: 積層型静電アクチュエータ積層型静電アクチュエータは極板間隔が狭くなるほど、発生力が急激に(極板間隔の 二乗に反比例して)強くなる。

gear

other advantage

ストロークが大きい

極板を積み重ねることでストロークを大きくできます。

応答性が良い

静電アクチュエータの長所です。

制御が簡単

電圧駆動 → on / off 駆動

集積化することで出力調整も可能です。

直動運動

ギアなどの力の変換機構が不必要

→ 慣性モーメントが大きくなりません。

原料の安定供給が可能

原料は銅とプラスチックです。レアメタルを必要としません。

応用

魚型ロボット

魚型ロボットの駆動機構

魚型ロボット全体図

静電エンジン

application

~魚型ロボット~ ~回転機構~

軽量で熱も発生しない! 軽量で沈まない!

アクチュエータ

Page 3: 積層型静電アクチュエータ積層型静電アクチュエータは極板間隔が狭くなるほど、発生力が急激に(極板間隔の 二乗に反比例して)強くなる。

積層型静電アクチュエータは、並行電極が幾重にも重なった構造をしている。

電極に互い違いに電圧を加えることでクーロン引力が発生し収縮運動する。

引力

引力

引力

引力

引力

電圧をかけると収縮して物体を持ち上げる

多数の層を重ねることで、

長いストロークを得ることができる

2

22

1V

d

SF

F:力 S:面積 V:電圧 d:極板間隔 ε:誘電率

発生力は電極間距離の2乗に反比例する

上のような構造を実現するために、本研究室では紙バネ構造を採用した。

リボン状電極

三角形 アクチュエータ

四角形 アクチュエータ

完全収縮

駆動領域

過負荷領域

柔らかい

硬い

変位量

負荷

静電力

自然長

理想的なアクチュエータのバネ特性は 駆動領域では、柔らかい

過負荷領域では、硬い

柔らかいと負荷に対して伸びやすく、

電圧を掛けても縮まない

硬いと弾性力が働いて、

発生力が小さくなってしまう

理想的な リボン状電極

電極部:厚い

ヒンジ部:薄い

「ヒンジ部が薄い=駆動領域で柔らかい」「電極部が厚い=過負荷領域で変形しにくい」

PET(絶縁層)

下図のようにリボン状電極を交互に折り込むことで製作できる。

Page 4: 積層型静電アクチュエータ積層型静電アクチュエータは極板間隔が狭くなるほど、発生力が急激に(極板間隔の 二乗に反比例して)強くなる。

積層型静電アクチュエータは極板間隔が狭くなるほど、発生力が急激に(極板間隔の二乗に反比例して)強くなる。

そこで、微細化することで単位面積当たりの発生力を強くできる。

さらに、大量のアクチュエータを並列化することでトータルの発生力も強くできる。

微細化 並列化

極板間隔が大きいので 発生力が弱い

極板間隔を小さくして 単位面積当たりの 発生力を強くする

大量のアクチュエータを並べ トータルの発生力を強くする

厚薄構造がない場合 厚薄構造がある場合

電源ON 電源ON

電極部が他よりも広い部分は、上下が 縮むことで電極間隔がさらに広がる

電極部が他よりも広い部分は、上下が 縮んでも電極間隔は広がらない

収縮できない 収縮できる

電極の絶縁用プラスティックフィルム(PET)の上に、ポリイミドフィルム(PI)・フォトレジストを張り付ける。フォトリソグラフィーでパターンを作り、エッチングでヒンジ部のPIを除去することで厚い極板、薄いヒンジのリボン状電極を製作。

加工手順

PET

PI

レジスト

Cu

(裏側は省略)

PI

レジスト(変質)

マスク

PET Cu

①ラミネート

②露光

④エッチング レジスト

PET

Cu

PI

加工したリボン状電極

電極部が厚く、ヒンジ部が薄いリボン状電極の製作に成功。 四角形の一辺は100mm,ヒンジ長は75mm

75mm

100mm

PI

PET

Cu ⑤レジスト剥離

③現像

レジスト

PET

Cu

PI

Page 5: 積層型静電アクチュエータ積層型静電アクチュエータは極板間隔が狭くなるほど、発生力が急激に(極板間隔の 二乗に反比例して)強くなる。

①レーザー照射 ②励起分子生成 ③分子結合切断 ④アブレーション完了

短パルス幅・高出力レーザ光を材料に照射することにより、材料の分子結合を切断し材料表面を削り取る。

リボン状電極 断面図

レーザ加工

加工したリボンの SEM画像

12μm厚さの試料に対して 加工深さ11mmを達成

絶縁体

導体 絶縁体 12μm

12μm

0.3μm

11μm

11μm

両面の絶縁体(PET)を 深さ11mmまで加工

300mm幅 リボン状電極

①ヒンジの加工

②裏面の加工

③リボンの切り出し

リボン製作の流れ レーザ加工機

加工装置 制御用PC 両開きドア

レーザ光路

電極部が厚く、ヒンジ部が薄いリボン状電極を製作。 電極の一辺は300mm ヒンジ長は75mm

加工深さ

焦点位置

加工深さのパラメータ依存性

深い

浅い

深い 浅い

75μm

300μm×300μm

レーザの焦点の位置を変えて、加工深さの焦点位置依存性を調べた。

ヒンジ部

電極部

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

0 100 200 300 400 500 600 700

発生力

[mN

]

印加電圧[V]

測定値

理論値

発生力は理論値の95% PET層のエッチングと、ヒンジ部に残った接着層をエッチングした。 これにより、ばね特性の改善を図った。

500μm

0

1

2

3

4

5

6

7

0 2 4 6 8 10 12 14

変位量

[um

]

力[mN]

エッチングなし

PETエッチング

接着層エッチング

PETエッチング・接着層エッチング

500μmのアクチュエータの製作に成功

空気層の間隔は9.33μm

Page 6: 積層型静電アクチュエータ積層型静電アクチュエータは極板間隔が狭くなるほど、発生力が急激に(極板間隔の 二乗に反比例して)強くなる。

多数のアクチュエータエレメントを1本ずつ折り込んで、集積化するのは非効率で現実的でない。 例えば縦100本、横100本のリボンを同時に折り込めれば、1万本のエレメントが一度に製作できる。 そこでアクチュエータの構造を見直して、実現可能な方法を検討した。

提案する構造

このように横どうしをつなげても縦方向は同じ構造になる 構造的に安定し、大量生産に向けて一歩前進 ばね特性も改善されている。

模型を製作し、実現可能性を確認

材料とジグ

完成した模型

一つのアクチュエータ 断面

電極リボン用紙テープ 極板部用アルミチップ

接着剤塗布用ジグ

極板部位置決めジグ

ジグベース

折り返し用棒

熱圧着用スペーサ

持ち上げても安定している

アクチュエータの集積化を行うためには、大量生産を可能とする自動アクチュエータ製作機が必要である。そこで、自動アクチュエータ製作の過程の一部であるリボン状電極の自動折り込み機を製作した。

折り込んだアクチュエータ 製作した折り込み機

・折込む速さ 81回/min

・160層折り込むことができた

折り込み機構

十字機構

上図は、十字の溝に沿って●と●がそれぞれ上下、左右に動くようになっていで、それらを棒でつないでいる。その棒の中点にあたる●を あのように回転させると●と●が交互に上下、左右に動く。

半円機構

半円状のガイドに沿ってリボン支持部を動かすとリボンが折れる。

GND HV

十字機構

半円機構

二つの機構を上図のようにつなぐことで一つのモータでアクチュエータを折り込むときの動作を実現させた。

折り込み機構

折込部

リボン支持部

格納部

(半円機構)

(十字機構)

折込部

折り込みの歩留りを改善するために、リボンの送出し量の制御と折り込み時のリボン保持機構を追加した。 折り込みには車輪の回転運動を利用した。

折り込み機構

格納部

保持棒

格納棒

リボン状電極

折込済リボン

1. リボンの送り出し 2. 途中まで折り込み 3. 保持棒の持上げ 折り込み

4. 保持棒降下 格納棒降下

折り込み結果

・2mm幅の三角形電極アクチュエータの折り込みに 成功した

・折り込み成功率99.6%を得た(250層折り込み時)

・100層まででは100%の歩留りを実現した

製作した折り込み機

Page 7: 積層型静電アクチュエータ積層型静電アクチュエータは極板間隔が狭くなるほど、発生力が急激に(極板間隔の 二乗に反比例して)強くなる。

積層型静電アクチュエータの特性改善には バネ特性と構造の関係を解明することが特に重要

有限要素法を用いた 接触問題を含む非線形構造解析

アクチュエータの各パラメータ (電極部、ヒンジ部の厚さや長さなど)

を変更してシミュレーションし、 バネ特性への影響を調査

(ソフトウェア:ANSYS)

電極形状 :四角形

電極サイズ:1辺2mm

電極層数 :8層

シミュレーションに用いた形状

0

20

40

60

80

100

0 0.05 0.1 0.15 0.2

Displacement(mm)

Spr

ing

Const

ants

(N/m

)

D=74um, H=2um

D=74um, H=4um

②ヒンジの厚さ効果

ヒンジ厚さ 2μm

ヒンジ厚さ 4μm

電極厚さ 74μm

0

20

40

60

80

100

120

0 0.05 0.1 0.15 0.2

Displacement(mm)

Spr

ing

Const

ants

(N/m

)

D=54um, H=2um

D=74um, H=2um

D=94um, H=2um

電極厚さ 54μm

電極厚さ 94μm

電極厚さ 74μm

ヒンジ 2μm

ヒンジを薄くすると、バネ特性が改善する

① 電極厚さ 54,74,94μm

③ ヒンジ長400,500μm

② ヒンジ厚さ 2,4μm

①電極の厚さ効果

0

100

200

300

400

0 0.1 0.2 0.3

Displacement(mm)

Spr

ing

Con

stan

ts(N

/m

)

D=56um, H=6um-400um

D=56um, H=6um-500um

③ヒンジの長さ効果(バネ定数)

ヒンジ長 400μm

ヒンジ長 500μm

電極厚さ 56μm

ヒンジ厚さ 6μm

ヒンジを短くすると、バネ特性が改善する

各種パラメータの紹介およびシミュレーション結果

アクチュエータを均一に1/nに縮小

駆動領域と過負荷領域のバネ定数も1/n

発生力は変化なし(面積は1/n2,間隔1/n)

アクチュエータを均一にn×n個の集積化

発生力は元のn2倍,バネ定数は元のn倍

ストロークを戻すために長さ方向にn個集積

発生力は元のn2倍、バネ定数は元のまま

全体のスケールを1/nに微細化し、 同じ体積になるまでアクチュエータを集積すると、 発生力:元のn2倍,バネ定数とストローク:元と同じ という特性を持ったアクチュエータが得られる

シミュレーション結果からみえる 微細化・集積化の意義

シミュレーションの必要性

電極の荷重関係

固定

固定

要素に分割

荷重定義

解析実行

結果からバネ 特性を算出

シミュレーションの手順

ヒンジ部の応力

せん断応力と

垂直応力の混在

垂直応力

τ

τ τ

せん断応力

主軸

要素に分割

モデル作製

電極を厚くすると、バネ特性が改善する