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病院薬剤師によるプレアボイド報告 の解析と事例紹介 平成28年度 愛媛県病院薬剤師会 プレアボイド講演会 2016.9.2 (Fri) 愛媛県薬剤師会館 愛媛県病院薬剤師会 プレアボイド委員 田坂 祐一

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病院薬剤師によるプレアボイド報告の解析と事例紹介

平成28年度 愛媛県病院薬剤師会 プレアボイド講演会2016.9.2 (Fri) 愛媛県薬剤師会館

愛媛県病院薬剤師会 プレアボイド委員

田坂 祐一

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日本病院薬剤師会への年間報告件数全国合計 愛媛県

33,348件

0

500

1,000

1,500

2,000

0

10,000

20,000

30,000

40,000

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

2010年度

2011年度

2012年度

2013年度

2014年度

874件全国13位

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愛媛県プレアボイド事業の目的

プレアボイド報告件数で日本一になる

愛媛岐阜 広島

2014年度3,601件

2014年度3,690件

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愛媛県プレアボイド事業の目的【保険薬局】 【病院】1. 副作用等健康被害の回避症例2. 残薬の削減症例3. 健康相談

1. 自施設での薬学的介入2. 残薬の削減症例

【事務局】

各施設での取り組みを解析し、医療経済効果を算出(医療費に対する薬剤師の介入効果を用いて、取り組みの効果を評価)

��

プレアボイドシステム(FileMaker Server)

情報の蓄積・共有化

全施設での取り組みを参照可能※入力者の個人情報は匿名化される

現状把握(問題点の抽出)

エビデンスの創出(経済効果・業務改善)

地域医療の質向上

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医療経済効果の推算方法薬学的介入による副作用等健康被害の軽減・回避

田坂祐一ほか 医療薬学, 2014; 40(4) 208-14

#2.

#1.

#4.

#3.

#6.

#5.

#8.

#7.

#10.

#9.

#11.

重大な副作用の回避または重篤化の回避

経静脈的な抗菌薬療法への介入

がん化学療法に対する介入薬物相互作用回避腎機能に応じた投与量推奨注射薬配合変化防止薬歴の聴取(術前中止薬の中止等)その他の薬剤処方提案モニタリング(検査)推奨次回受診日までの処方日数不足の回避残薬確認による残薬解消の効果

H23年度 医薬品副作用被害救済制度(PMDA)支給総額 2,058,389,000円支給件数 959件

医薬品副作用被害救済制度平均支給額 2,146,391円≒2,140,000円

注射抗菌薬監視介入による医療経済効果愛媛大学病院の抗MRSA薬平均投与日数

27,237円/人/日7日

介入1件あたりの経済効果 190,659円≒190,000円

丹羽隆 医療薬学, 2013; 39(3), 125-33

さまざまな薬学的介入のうち2.6~5.21%が重大な副作用の回避につながる

Humbling S et al, J Trauma Acute Care Surg., 2013; 73(6), 1484-90

most risky(#3. がん化学療法)2,146,391円×5.21%=111,827≒112,000円

high-risk(#4.~#8. のうち ハイリスク薬)2,146,391円×3.91%=83,924≒84,000円

normal(#4.~#8.のうち がん化学療法、ハイリスク薬以外)2,146,391円×2.6%=55,806≒56,000円

直接的には処方変更に反映されない介入 0円

不足薬剤の追加は算定しない 0円

処方中止となった薬剤の薬価ベースでの金額を算定する

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0 5,792486 1 53 792486 1 53 792486 1

sr7 r 9

sa- ,- 4 52341 0

i8 lo- ,- 4 52341 0

s- ,- 4 52341 0

n sm h kg- ,- 4 52341 0

sar- ,- 4 52341 0

6

2015年度の報告まとめ(病院)2014年度:2施設 2015年度:13施設4月~2月:11ヶ月間 4月~12月:6ヶ月間

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重大な副作用の回避/重篤化の回避:実際の報告#入院患者 #薬剤管理指導業務

心房細動再発予防のためにシベノール®錠が開始となった。開始後、血糖値が顕著に低下し、70mg/dL以下になることが多発したため、医師にシベノール®

による低血糖の可能性である旨を伝えた。患者はランタス®、ビクトーザ®を使用していたため、減量を行ったが改善せず、医師へ低血糖発現の報告がないサンリズム®Capへの変更を提案し、変更となった。変更後は低血糖なく経過した。

#重大な副作用の軽減

60歳 女性

既往歴:心房細動、2型糖尿病

156cm、42kgeGFR:65ml/min/1.73m2

肝機能:問題なし薬剤アレルギー:なし 副作用歴:なし

実際の入力画面を見てみましょう!

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がん化学療法に対する介入(モニタリング推奨13件を含む)

支持療法提案26件: 29.9%

87件: 全件数の11.8%

処方もれ確認23件: 26.4%

モニタリング推奨13件: 14.9%

追加的な提案

必要な確認

投与量提案

服用方法の提案化学療法の中止提案

薬物相互作用回避ノンコンプライアンス改善 その他

11件: 12.6%

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がん化学療法に対する介入:実際の報告1#外来患者 #支持療法提案

外来化学療法患者の面談時に、胃がんに対するドセタキセル療法に伴う悪心、食欲不振Grade1が治療後6日目以降に発現していることを聴取した。 担当医に遅発性の悪心対策としてナウゼリン®OD錠の処方提案を行い、追加処方となった。 その後、悪心、食欲不振は軽快した。

#副作用軽減

悪心・嘔吐の種類 特徴

急性 抗がん剤の投与1~2時間後から24時間以内

遅発性 抗がん剤投与の24時間以降に発現し、数日間持続

予測性 精神的な要因による(前治療での悪心・嘔吐のコントロール不十分など)

「がん化学療法ワークシート 第3版」編集:大石了三, じほう(一部改変)

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がん化学療法に対する介入:実際の報告2#外来患者 #支持療法提案

外来化学療法患者の面談時に、大腸がんに対するmFOLFOX6+Pmab(パニツムマブ)療法に伴うざ瘡Grade1の発現を確認した。Grade1であったことから、担当医にアンテベート®軟膏を処方提案し、追加処方となった。その後、背中のざ瘡は軽減しPmabを休薬することなく治療継続できた。

#副作用軽減

手足症候群

代表的な皮膚障害と注意が必要な抗がん剤

ざ瘡・乾皮症・爪囲炎

フッ化ピリミジン系薬(ゼローダ®錠など)

抗EGFR抗体(アービタックス®注、ベクティビックス®注)

マルチキナーゼ阻害薬(スーテント®CP、ネクサバール®錠、スチバーガ®錠)

EGFR-TK阻害剤(イレッサ®錠、タルセバ®錠、ジオトリフ®錠)

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セツキシマブは皮膚障害あり≒治療効果あり

Joker DJ et al, N Eng J Med. 2007; 357: 2040-8

いかに皮膚障害を抑えて治療を継続するか!

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どのような検査値を参考にしているのか

(TDMを除く)211件: 全件数の28.7%

Cre/Ccr/eGFR147件: 69.7%

HBs抗原/HBc抗体/HBV-DNA15件: 7.1%

カリウム尿酸血圧血糖値

10件: 4.7%

6件: 2.8%5件: 2.4%

4件: 1.9%

腎機能に着目した介入が非常に多い

腎機能に応じて調節の必要な処方が多い

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腎機能に応じた投与量の推奨48種類133件の薬剤で腎機能に応じた投与量の減量/中止があった

(TDMを除く)

一般名 商品名 件数

1 セフカペンピポキシル フロモックス 26

2 レボフロキサシン クラビット 24

3 ファモチジン ガスター 14

4 エドキサバン リクシアナ 7

5 酸化マグネシウム マグラックス 4

5 アピキサバン エリキュース 4

5 クラリスロマイシン クラリス 4

8 ベザフィブラート ベザトールSR 3

8 スルタミシリン ユナシン 3

8 メロペネム メロペン 3

うち上位10品目 腎機能低下が禁忌に該当したもの一般名 商品名 件数

1 エドキサバン リクシアナ 5

2 アピキサバン エリキュース 2

2 メトホルミン メトグルコ 2

2 レボセチリジン ザイザル 2

5 デュロキセチン サインバルタ 1

5 ブホルミン ジベトス 1

5 エプレレノン セララ 1

5 ロサルタン/HCTZ プレミネント 1

HCTZ: ヒドロクロロチアジド

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腎機能に応じた投与量の推奨:実際の報告1

持参薬確認時に、腎機能がeGFR 7.7 mL/min/1.73m2と低下している関わらず、ガスター®を服用していることを聴取した。また、副作用歴を確認したところ、ネキシウム®で下痢を起こしたとの記載があった。肝代謝型のH2RAであるプロテカジン®への変更を提案したところ、提案通りプロテカジンへ変更となった。その後、消化器症状の増悪なく経過した。

#入院患者 #持参薬確認 #副作用回避

肝代謝型

ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2RA)

腎排泄型

シメチジン(タガメット®錠)ラニチジン(ザンタック®錠)ファモチジン(ガスター®錠)

ラフチジン(ストガー®錠、プロテカジン®錠)

ロキサチジン(アルタット®CP)ニザチジン(アシノン®錠)

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腎機能に応じた投与量の推奨:実際の報告2#入院患者

持参薬確認時に、腎機能が低下(修正eGFR32.3ml/min)しているにも関わらず、マグミット®(330) 6錠/日を毎日服用していることを確認した。担当医に血清Mg値の測定を依頼した結果、血清Mgは3.0 mg/dlと高値であったため、マグラックスは中止し、アミティーザ®でのコントロールに変更となった。その後も排便コントロールは良好であった。

#持参薬確認 #副作用軽減(重大な副作用の回避/軽減)

マグラックス®錠添付文書より

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ポリファーマシー回避(不要薬の中止)25種類82件の薬剤で報告があった

対象薬剤 件数 割合(%)

1 消化性潰瘍・健胃消化剤・制酸剤 32 39.0

2 血圧降下剤 5 6.1

3 抗菌薬 4 4.9

3 ビタミン剤 4 4.9

3 血液凝固・血小板凝集阻止剤 4 4.9

病院プレアボイドに占めるポリファーマシーの回避

11.2%

✓ 入院中に中止していた薬剤が  意図せず退院時に再開になっている✓ 複数の医師からの同種同効薬の処方✓ 患者が先発品と後発品を  違う薬剤だと思い服用している

同種同効薬の重複投与46件: 56.1%

不要薬の継続投与(漫然投与)

27件: 32.9%

重複投与9件: 11.0%

n=82

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脳腫瘍に対して頭蓋内腫瘍摘出術を施行した患者 術前:頭痛に対してロゼオール®錠およびラベプラゾールNa塩錠を内服 術後:頭痛が改善したためロゼオール®錠は内服しておらず、ラベプラゾール    Na塩錠のみ内服継続ロゼオール®錠内服に伴う胃腸障害に対してラベプラゾールNa塩錠が処方されていたため、患者に胃腸障害が生じていない事を聴取したうえで、主治医に現在ロゼオール®錠を内服していない事を報告し、ラベプラゾールNa塩錠の必要性について確認したところ、ラベプラゾールNa塩錠の内服が中止となった。その後も、患者に胃腸障害の発現は見られなかった。

ポリファーマシー回避:実際の報告#入院患者 #薬剤管理指導(服薬指導) #副作用回避

医師の処方意図と患者の服薬状況を把握することの重要性

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愛媛県プレアボイド事業の目的【保険薬局】 【病院】1. 副作用等健康被害の回避症例2. 残薬の削減症例3. 健康相談

1. 自施設での薬学的介入2. 残薬の削減症例

【事務局】

各施設での取り組みを解析し、医療経済効果を算出(医療費に対する薬剤師の介入効果を用いて、取り組みの効果を評価)

��

プレアボイドシステム(FileMaker Server)

情報の蓄積・共有化

全施設での取り組みを参照可能※入力者の個人情報は匿名化される

現状把握(問題点の抽出)

エビデンスの創出(経済効果・業務改善)地域医療の質向上

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自施設のデータの抽出方法(全データ抽出)

② 自施設名で検索

④⑦

⑥⑤

⑧ 拡張子の変更名称未設定.mer

名称未設定.csv

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自施設のデータの抽出方法(簡易データ抽出)

①② 自施設名で検索

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自施設のデータの抽出方法(簡易データ抽出)

⑩ 拡張子の変更 名称未設定.mer

名称未設定.csv

⑤ ⑥

⑤⑦⑧

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プレアボイド報告から生まれた業務改善

・眼科病棟では、酸化マグネシウムを服用している患者が多い

・白内障手術後のセフジニルとの相互作用が問題

・毎回、問い合わせをしているが件数も多く煩雑。。。

・セフジニルはクリニカルパスで動いているので、 白内障手術後はルーチンで処方される

背景

・クリニカルパスの変更  セフジニル ⇒ セフカペンピポキシル

解決策

・問い合わせ件数減少!・腎機能に応じた投与量調節は比較的問題なさそう。

結果

問題点

解決策

分析

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システムを利用した日病薬への報告方法

③ ④ ⑤

⑦ 拡張子の変更名称未設定.mer

名称未設定.csv

⑧ 報告に必要な箇所を抜粋して日病薬へメールで送付する

(様式2のフォーマットです。様式3は現在対応中)

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ご清聴ありがとうございました