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非行を考える 発達障害に関係する諸問題(4)

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非行を考える

発達障害に関係する諸問題(4)

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到達目標

• 発達障害特性のある子どもと二次障害との関係を知る

• 矯正教育の基本を知る

• 特別支援教育との類似点に気づく

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ADHD特性からの二次障害

反抗挑発障害と 素行障害

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自己肯定感とは

• 自分を認め、自分に自信を持ち、生きる意欲を持つこと

うまくいった 認められた

できるという自信を持てた

うまくいかない 認められない

できるという自信がない

自己肯定感が 高い

自己肯定感が 低い

自立した人間

問題行動 (非行)

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ADHD特性と二次的な問題 行動抑制の困難さ

対人トラブル 学習のつまずき 周囲の 無理解

誤った 対応

自己肯定感の喪失

注目要求 家庭の無理解 無関心 悪いモデル

問題行動・逸脱行動

養育の困難さ

虐待

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反抗挑発障害(ODD) Oppositional defiant disorder

• 症状 – 家庭での言いつけに従わないことがあった – 学校での言いつけに従わないことがあった – 非常にひねくれやすかったことがあった – かんしゃくを起こすことがあった

主たる理由もなく、ひねくれやすく、反抗的な態度 6ヶ月以上継続している

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反抗挑発障害への対応(基本)

• 包括的な行動支援 – 家庭、関係機関の連携

• 学習困難とやる気のなさへの取り組み • うまくいくための方略を教える

– 問題が起こらず、うまくいく方法を教える • 子どもとの信頼関係を築く • 妥当なコミュニケーションの仕方を教える • 自己コントロールの仕方を教える

学習の目標、将来への展望 成功体験

受け入れられる言い方、対応を具体的に

成就感から自己肯定感の育成を

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素行障害(CD) Conduct Disorder

• 動物や人を傷つける • ものや建物を破壊する • 嘘をつく • 社会のルールに従わない • 罪の意識を感じない • 冷淡で感情に乏しい

CD(未成年) = 非行 大人 = 犯罪

(反社会性パーソナリティー障害)(サイコパス?)

(参考)暴力行為の減少→SNS? (参考)CU特性

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素行障害への対応

• 親に対する訓練

• 自己解決を援助する

• 個別の指導計画の作成と評価

• 関係機関との連携(支援チーム、支援会議)

親が自分の子どもをコントロールできる(生活の規制など)

自分で問題解決することを教える

大人間の共通理解と指導の一貫性

家庭、学校、専門機関、警察、児童相談所など

警察等を中心とした連携、継続的指導・支援

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親の態度と養育 統制

注目

放任

無視

もっとも良い子育ての姿勢

権威主義

甘やかし 虐待 (ネグレクト)

犯罪率が高い

受刑者エピソード

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親を訓練する

• 素行障害への知識 • 素行障害に対応するためのスキル

– 良好なコミュニケーションのし方 – 話をよく聞き、子どもに考えさせる

• コンサルテーション – 親自身の問題として考える – 自分も目標を立て実行する

ペアレントトレーニングの重要性 子どもと自分自身が目標を決め、お互いが守れるよう実行

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少年院での矯正教育

少年法の改正(2007)

触法少年も逮捕の対象に 12歳でも少年院送致へ

保護観察の強化

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少年犯罪の実態

発達障害との関連性は?

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非行少年とは • 犯罪少年

– 14歳以上20歳未満の罪を犯した少年で、少年法に基づく刑事司法手続きが適用される

• 触法少年 – 14歳未満で刑事罰法令に触れる行為を行った少年で、児童福祉法上の措置が優先される

• 虞犯少年 – 20歳未満で、保護者の正当な監督に服しない性癖がある、正当な理由がなく家庭に寄りつかない、犯罪性のある人もしくは不道徳な人と交際する、自己または他人の特性を害する行為

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少年犯罪の実態(平成29年犯罪白書)

• 少年刑法犯検挙数 – 減少傾向(?) – 窃盗、遺失物等横領が多い

粗暴犯、風俗犯の増加 他は減少

性犯罪被害、出会い系サイト 連れ去り被害、ひったくり 薬物乱用、 「いじめ」

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少年非行の原因

• 少年自身の問題

• 家庭の問題

• 学校の問題

• 社会の問題

規範意識の欠如、自己中心性 自己主張・表現の未熟さ

自己肯定感の低さ

親の役割放棄。虐待(羽間,2017)

親の規範意識の欠如

学校不適応(いじめ、不登校など) 学力の問題

貧困、経済的格差

ネット社会、ICTの悪用 他人の子どもに無関心(地域)

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入院者の特性(リスク) • 精神疾患 • パーソナリティ:ASP、精神病質 • 心理特性:自己肯定感(-)、自己認知(-) • 行動特性:散発行動、CU特性、SS未熟、人間関係(-)

• 知的能力、学力 • いじめ被害経験、虐待経験 • 薬物使用経験

Pyle(2016)

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非行少年の認知の特徴 • 非言語性IQ優位

– 暴走族(集団化) – 手口が巧妙 – 欲求、感情本意 – 衝動的 – 善悪の判断なし – 作文が書けない

• 言語性IQ優位 – 非行少年らしくない – 要領が悪い – 不器用 – 孤立的 – 性犯罪、窃盗(単独) – 理屈っぽい

バイク系 アニメ系

近年、発達障害特性のある少年の増加

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少年院における実態調査の結果 (松浦,2007)

• スクリーニングテスト – LD:61% – ADHD:82% – LD+ADHD:56%

• 知能検査 – 境界線から軽度知的障害のレベル – 言語性IQ(言語能力)<動作性IQ(非言語能力)

発達障害が犯罪に結びついているわけではない 発達障害のような状態が見られるということ

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ASDと犯罪

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ASDと二次的な問題 認知の特異性

特殊な興味

対人関係の困難さ

養育の困難さ

能力、 プライドの高さ

いじめ 周囲の 無理解

自己肯定感の喪失

不登校・ひきこもり 精神疾患

インターネット、ゲーム、テレビ

性的関心 理科実験型 対人接近

問題行動・逸脱行動

親の コントロール

不能 理解者の喪失

虐待 不適切な養育

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事例:寝屋川事件の判決 • 動機

– 「刺す」目的はあったが、「恨み」ではない – ASDの影響を認める

• 殺意の有無 – 「刺す」事が目的で「殺す」事ではない – 社会通念上殺意は「あり」

• 責任能力 – 行動制御能力があり、責任能力あり

• 処遇 – ASDを克服する処遇の必要性

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近年の発達障害と犯罪の実態

• 家庭裁判所の調査(2009) – PDD;3%、ADHD;18%、LD;17%(傾向)

• 犯罪種 – PDD;性犯罪(ネット関係)、ほか一般少年犯罪と同じ

– 学校不適応(孤立感)、学力の問題→犯罪 • 学校での対応

– 障害特性に応じた支援

熊上崇(2012)

注)PDD:広汎性発達障害(現、自閉症スペクトラム障害)

ADHDかどうかはわからない(RADの可能性)

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ASDと犯罪 • Newman(2008),Aut,38(10)

– 犯罪に関係する特性:共感性の乏しさ、社会的愚直さ、過剰な興味、自己コントロールの低さ

– 精神疾患との関連性 • Cheely(2012)Aut,42(9)

– 犯罪率の低さ、人に対する犯罪の割合の高さ、訓練の少なさ、起訴の少なさ

ASDが直接犯罪に結びつくとは考えにくい

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少年院の実際

• カリキュラム(資料1) – カリキュラム一欄 – 入院の時期によって異なる内容

• 面接指導(資料4) – 出院後を想定した対応

• 指導計画の例(資料5) – 家族に関係する内容

• 新潟少年院

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宇治少年院での実践

• スクリーニングテスト • 調査記録の情報点検 • 処遇現場の行動観察 • 処遇経過の検討 • 個別的処遇計画(個別の指導計画) • 保護者からの情報収集

実態把握、個別計画の作成、連携など、 特別支援教育に類似している

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宇治少年院の指導プログラム 「生きる力と自立を目指して-幸福な生活」 • 結婚と就職

• 社会的適応力

• 社会的絆(ボンズ)

• 自己管理、セルフコントロール

男女平等、民主的な家庭、役割交換、良好な社会的関係

社会のルールに従って生きる 学歴、資格、さまざまなスキル

愛着、努力、多忙、規範意識 カリズマティック・アダルト

感情のコントロール、対人スキル 資格、免許(自動車など)

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環境づくり

• 民主的で促進的な環境での生活・学習体験 – 非公式なルールの根絶

• ある程度までは競争させない • 安全で守られた環境

– いじめや暴力などをさせない、しない • 大人の責任:十分な管理

民主的な学校、学級、家庭 安全が守られた家庭・学校・地域

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自己管理の力を高める

• 基礎体力、基礎学力(リテラシー) • しつけ

– 基本的生活習慣の確立 – 公共の場でのマナー

• 民主的な交わりの楽しさを経験させる • 子どもを納得させて力を引き出す

– 押しつけず、話し合いで

自己決定、自己管理はすべての指導の基本

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指導の具体例 • 集団行動訓練

– バランス、体力 • 基礎学力の強化

– ドリル等反復学習 – 日記指導は毎日添削

• ロールレタリング(資料2)、SST(資料3) • カウンセリング

– ことばによらないコミュニケーション訓練 – 聴き方訓練 – グループディスカッション

当たり前のことを繰り返し、 系統的に教える

科学的な分析と評価

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特別支援教育に 似ていませんか?

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事例(犯罪白書より)

1. 就労の安定と交友関係の改善 2. 家族機能の強化 3. 建設的な生活目標の樹立、社会生活に必要

な態度の習得 4. 大人との信頼関係の再構築や自尊心の回

入院・矯正教育により、改善や社会復帰へ

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発達障害への対応

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家族援助の基本(生島,2003)

• 親に原因はないが責任はある。 • 「必ず立ち直れる」を強調する。 • うまくいっていることは続ける。 • 親が一致する必要はない。 • 言わなくてもいいことは言わないが、言うべきことはきちんと言う。

• 付和雷同はよくないが、一緒に揺れてやることも必要。

非行臨床より。

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発達障害への対応 予防 矯正教育 復帰支援

・早期発見、支援 ・親支援 ・特別支援教育の推進 ・不登校、いじめへの対応 ・学力向上、学歴 ・国民の理解啓発

・発達障害特性への対応 ・エビデンスに基づく実践 ・社会の変化に対応

・少年院と社会をつなぐ専門機関 ・支援チーム、支援会議 ・個別の移行計画(支援計画)作成と評価(本人参加)

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発達障害への対応(生島,2006) • 強迫的傾向(こだわり)が問題行動をエスカレートさせる危険性

• 「受容・共感」だけでは不十分 • 毅然とした態度(だめなものはダメ) • ことの重大さを教える(関係機関との連携) • 「結果」が問題であることを認識させる • ことばだけの説明は限界がある • 世間の常識を教える

ゆがんだ認知を修正し、あるべき姿を具体的に教える 「認知行動療法」

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不幸な経験をしないために

• 感情理解の乏しさ

• 融通のきかなさ

• 不適切な自己評価

• 対人スキルの乏しさ

Niigata Univ.-Nagasawa Labo.

視覚支援を用いるなど、相手の感情が理解できるよう支援

善し悪し、常識で説得ではなく、選択肢と結果を示す

達成可能な具体目標と、「できた」ことへの確かな評価

計画的なSSTと日常生活への般化を

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家族問題への対応 • 家族が抱える深刻な問題

– 親の離婚、DV、虐待、親が犯罪者・・・ • 親支援、家族支援

– 犯罪にかんする知識、子どもと話し合う態度、話し合いのスキル

• 「家族教室」の実際(グループミーティング) – 家族への共感、家族の努力の肯定、家族間の相互援助システムの構築、コミュニケーションの改善、家族の問題解決能力を高める

親支援プログラムの必要性。ODD、CDも同じ。

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矯正教育:後藤(2012)特殊、50(3)

• 教育課程:類型 – 社会適応の視点、再非行防止の視点

• 発達障害への処遇 – 特別のプログラムの事例

• 就労支援 – 進路指導の充実(自己理解など)、若年者就職基

礎能力習得証明書の活用、関係機関との連携、キャリア教育

• 被害者の視点を取り入れた教育 • 矯正教育研究を社会的に共有

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課題 • 二つの対立軸:犯罪対策と保護教育

– 厳罰論か、保護優先論か • 責任能力の問題

– 知っていることと理解すること、受け入れていること

• 障害特性によるものか、二次障害か – 複数の要因が複雑に絡んでいて判断困難

• 誤った認識 • 軽度知的障害女性の性的被害(性産業)

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少年法改正(2014)

• 事件当時18歳未満の少年に対する有期刑の上限を15年から20年にする。

• 判決時20歳未満の少年に対する不定期刑の上限を、短期は5年から10年に、長期は10年から15年にする。

• 検察官や国選付添人が少年審判に立ち会える対象事件を窃盗や傷害などにまで広げる。 厳罰化への有識者のコメント(2016)

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発達障害 = 犯罪

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到達目標

• 発達障害特性のある子どもと二次障害との関係が理解できたか

• 矯正教育の基本的な内容がわかったか

• 特別支援教育との類似点に気づいたか

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発展課題

• 発達障害特性のある児童生徒が、少年犯罪につながらないために学校がすべきことは何か。

• 少年犯罪におけるマスコミの対応について、問題点は何か。

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図書

• 心からのごめんなさいへ – 品川裕香(2005) 中央法規

• 入門 犯罪心理学

– 原田隆之(2015) ちくま新書

• 反省させると犯罪者になります – 岡本茂樹(2013) 新潮新書