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発達障害と問題行動 かかわり方、対応 新潟大学教育人間科学部 長澤正樹

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発達障害と問題行動かかわり方、対応

新潟大学教育人間科学部

長澤正樹

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発達障害

• 学習障害–知的な遅れのない学習困難

• 注意欠陥多動性障害(ADHD)–行動抑制の困難さ

• アスペルガー、高機能自閉症–社会性、コミュニケーションの障害– こだわりなど行動の特異性

通常学級にいる特別な支援が必要な子ども

発達障害は病気ではありません

物事を感じ取ったり表現したりする能力に偏りがあり、社会生活がうまく送れない特性です

歴史上の人物にもたくさんいます

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発達障害と二次障害 二次障害

ADHD

LD

アスペルガー障害

微細脳器質変異

遺伝子?

抑鬱・不安障害

強迫神経症

不登校ひきこもり中途退学非行

反抗挑戦性障害

行為障害

適応障害 ニート多重債務などの問題

失敗経験

犯罪薬物・アルコール依存

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さまざまな問題行動

• 生活上の問題行動

• 対人関係における問題行動

• やっかいな問題行動?

集中力が続かない、衝動的、攻撃的になる物事に固執する、こだわりがある、場にあった行動ができない

孤立している、友達がいない、対等な関係が築けない相手の気持ちが分からない、他者に共感できない

いじめる・いじめられる反抗挑戦性障害、行為障害

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問題行動の見極め

• その行為が問題だということを理解できるか– ことばの理解、状況の理解

• その行為は障害特性ではないか– ADHD、自閉症・・・

• その行為は誰にとって問題か–親にとって、教師にとって・・・?

• その行為は本当に問題となるレベルか–実年齢、精神年齢、文化、風習・・・

本人はわかっているのか、困っているのか?

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問題行動に対応する手続き

問題行動の解決には具体的な

手続きに基づくことが必要です

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CAMPPAs

• 情報収集:Collection• 分析:Analysis• 指導モデルに従った対応の検討:Model• 指導計画の作成:Plan• 実践:Practice• 評価:Assessment

問題解決の手続き・方法この手続きで問題行動の対応を考え、実践します

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1.情報収集

• 検査の実施–発達検査、生活能力検査、知能検査–スクリーニングテスト

• 行動観察–問題が起きる状況、今までの対応とその効果

• 保護者への聞き取り–養育の姿勢–危機感–父親の認識、育児への参加

困っていることに共感するできるだけ事実を尋ねる、確認する

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事例

• Aくんは、他の園児に比べて発達が少し遅れている。休み明けの設定保育の時間に、「昨日はどんな遊びをしましたか?」と保育士が質問すると園児は一斉に手をあげた。Aくんも手をあげようとするが他の園児の勢いに負けてほとんど目立たない。なかなか自分の番が来ないので服を脱ぎ始めた。するとそばにいる園児たちが「はだかんぼうだ」と言ってはやし立てた。気づいた保育士が「いけませんAくん」と注意するも、Aくんは全く気にもせずにズボンまで脱ごうとした。教室は園児たちの笑い声と保育士の叱責が響きわたった。 この記録を問題が起きる状況、問

題、その対応に分けて分析する

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行動観察:観察し、記録する例)人前でわざと服を脱ぐ

条件(問題にかかわると思われる事項)

行動(具体的な行動) 結果への対応(問題への周囲の反応)

・保育:発表の場面

・他の園児が積極的

・ことばの遅れ

・服を脱ぐ ・叱責

・他園児の笑い

ますます服を脱ぐようになった(対応の成果、効果)

問題が起きる状況、行為、結果への対応とその成果を具体的に分析するABC分析といいます

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行動観察:観察し、記録する

条 件 行 動 結果への対応

・どんな活動の時間か

・場所、設定

・誰が、どんな働きかけをしたのか

・対象の子どもの特徴

・教師の働きかけ

・気になる行動はどういう行為かを具体的に

・問題と考えられる行動のみを書くこと

・左の行動に対して、教師(子ども)はどう対応したのか(反応したのか)

・そしてその結果はどうだったのか

ひとつの問題行動について、それぞれに条件・結果への対応が特定されるはずです

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2.集めた情報から目標をきめる

問題行動

望ましい行動悪くない行動

検査

発達の遅れ発達のゆがみ養育状況

学校の対応

いくつかの領域ごとに、今までの対応について振り返る

子どもにあった目標子どもに必要な目標

家庭の対応親(父母)の養育姿勢、基本的生活習慣対応(ほめ方、叱り方、教え方)愛情(遊び、受け入れ)、経済状況

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3.指導モデル指導方法を考えるためのモデル

自己肯定感を育てる

教師保護者

ABC分析分化強化

トークンタイムアウト

自己解決法自己評価法

SST視覚的手がかり

さまざまな指導のアイデアを出し合うみんなで考える

チームアプローチ協働作業 対応マニュアル

障害特性

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指導モデルの説明(基本的な考え方)

1. 子どもの悩みに耳を傾ける2. 問題の原因解明より、問題解決を優先する3. 子どもにかかわる大人が指導チームを作る4. 問題行動を分析し、問題が起きない工夫を考える

5. 問題行動に代わる行動をのばす6. 自分で問題を解決することを教える7. 役に立つ指導技法を積極的に取り入れる8. 客観的な記録をとる

長澤(2005)

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4.指導計画の作成

• どんなに簡単でもいいので、必ず文書にすること

• 関係者(教師、保護者)で共有すること

カリキュラムに基づく目標・計画作成領域ごとの目標設定・計画作成

保育の領域ごとに目標をきめる検査項目の領域ごとに目標をきめる

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指導計画の例(個別の指導計画):人前でわざと服を脱がないようにする指導計画

指導場面の

設定

行動の定義 結果への対応 指導者

発言の仕方の練習

他の園児への指導(さわがないように)

<望ましい行動>

手をあげて発言する<指導方法>

介助員がそばで教える

<問題行動>

服を脱ぐ<指導方法>

介助員が脱がないように手をかける

すぐに指名する

大いにほめる

無視する

エスカレートしたときはタイムアウト

担任

介助員

問題行動が起きない工夫

望ましい行動ができる工夫

うまくいったらほめること

対応を提案し、担任に選択してもらう

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5.実践

• 指導場面の特定化–いつ、どこで指導するのか?

• 指導者、保護者による指導–誰が担当するのか?

• 日々の生活の中での指導• 繰り返しによる指導

生活の中に指導する機会の確保を!

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6.正しい評価のために

• 短期目標を具体的に• 条件、標的行動、基準を意識する• 例

条件(どんな状況のときに):保育場面で発表のとき標的行動(何ができればいいのか):手をあげて発言する

基準(できたと見なす判定基準):手をあげる。指名されてから発言する話題に関係する内容

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評価:記録をとること

• 結果や行動の数値化–時間、回数、頻度

• 主観的記録–逸話、評定尺度法

• 自己評価:がんばりカードなど–自己評価は自己理解につながる

必ず記録をとりましょう

記録を図に表しましょう評価:自分はこれだけできるようになったという認識を育てる

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記録の取り方(主観的記録)

問題が起きた場面・状況

問題行動 対応 結果

・朝のあいさつ

○○くんの手が顔にぶつかる

・○○くんのおなかを叩く

・「いけません。あやまりなさい」と叱る

・「僕は何もしていない」と言う

時系列的に、事実に基づく記述を!

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指導のふり返り

記録から

• よくなっているのか、変わらないのか?• どの指導が有効だったのか?• どうしてうまくいかなかったのか?

記録を冷静に分析し、次の指導に生かすこと

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問題行動への対応の基本

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問題行動はコミュニケーション?問題行動を禁止するだけでは効果がありません

問題行動正しい

コミュニケーション行動

先生を叩く 「教えてください」と言う

分化強化:問題行動にかわる好ましい行動を教える「~しない」 → 「○○しましょう」

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分化強化:基本パターン

• 望ましい行動

• 悪くない行動

• 問題行動– してほしくない行動–許しがたい行動

強化(大)たくさんごほうび、ほめことば

強化(小)少しだけごほうび・少し認める

消去無視、ルールを繰り返し言う

教育的な罰活動の制限、タイムアウト少しの変化を認める

できるだけほめる

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例)宿題がわからないとプリントを破る

• 望ましい行動

• 悪くない行動

• 問題行動– してほしくない行動–許しがたい行動

わからないときに母に聞く<誉めて教える>

宿題をせずに遊びに行く<破かなかったことを認める>

宿題のプリントを破る<叱らずにテープで補修するよう告げる>

弟を叩いて泣かせる<ゲームを禁止>

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ソーシャルスキルとは?

• 社会生活を送る上で人との関係を確立し、円滑な人間関係を維持するスキル(技能)

• そのための訓練をソーシャルスキルトレーニング(SST)という

目的

問題行動による自己主張ではなく、社会的に妥当な自己主張を学習すること

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人とのかかわりの指導(ソーシャルスキルトレーニング)

社会的能力例:おもいやり

説明を聞く練習する(ロールプレイ)評価(いいところを見つける)日常場面で実行する

傷ついた友達を慰めるお年寄りに席を譲る落とし物を届ける

いじめられている友達を助ける

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ロールプレイの実際

• 趣旨説明と設定–例)悪い仲間からの誘い。断り方を学ぶ

• ロールプレイ–例)「ちょっとつきあえよ、○○先輩がおごってくれるってさ」

• 評価、話し合い– もっと良い言い方–再度ロールプレイ

ちょっと用事が・・・少しだったらいいけど・・・

すみません。7時に弟を迎えにいくので。これからバイトにいかなければならないので失礼します。

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授業中の問題行動

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問題行動への対応(概念図)

自己肯定感を育てる

チームアプローチ客観的な評価

教師

保護者現状の認識対応の説明

保護者自身による対応

授業への対応授業のルール

学習スケジュール表タイムアウト

自己解決法問題の認識問題への解決案

違反行為への対応の説明

学習権の理解

対応マニュアル個別の指導計画協働作業

障害特性への配慮

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障害特性への配慮

• 知的能力を考慮する

• ADHDの特性を考慮する

• アスペルガー障害の特性を考慮する

わかりやすい説明、できないことによる劣等感への気づかい

話を聞いてクールダウン、集中できる部屋問題行動とできていることを分けて説明

問題が起きる過程の視覚化(見てわかるように)論理的な説明

他者理解ができる工夫

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対応の基本

• 学習のルールの提示

• 子どもにあった学習の提供• 課題理解の工夫• 学習環境の整備• できたときにはほめて評価する

• 約束違反は警告 → 退場(タイムアウト)

あとだしルールはだめ!クラスで話し合いを

個別課題・指導

支援教材・学習スケジュール表

集中できる工夫を

悪くないときにほめて評価する

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学習スケジュール表

学習活動 学習内容 評価

1.音読 ・教科書を音読する

(ひらがなシートの使用)

2.読みとり ・ノートに主人公のせりふを書く

3.漢字 ・教科書○頁の漢字をノートに書く

はじめに配布学習内容の提示保護者に知らせる

約束:手をあげてから発言しましょう

スケジュール管理でルールの徹底

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違反行為への対応

• 本人の認識を確認• 迷惑な行為 → 違法行為

• 自分自身で目標を決める(学習、態度)• 違法行為への対応の説明(結果責任)

– タイムアウト(別室で学習)–保護者による介入の予告

・学習権の侵害・理由ではなく結果への言及

悪くない状態を評価すること

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例:学習内容がわからないときに暴言

気持ちの受容

問題の認識と解決への意欲

目標設定

方法の選択

評価

実行

そうか、自分は内容がわからなかったのに「不真面目だ」って言われたんだね。それでついひどいことを言ったんだね?

そのような言い方は良いことかな?そうか、そんなとき、どうすればいいか、

一緒に考えてみようね

うまくできないときや、人と同じようにできないときってあるよね

そんなときどう言えばいいんだろう

どれができるかな?「約束だよ」

「練習してみよう」

よくがまんできたねうまく言えたね!

今度はちゃんと言おうね

「もう一度説明してください」「すみません。聞いていませんでした」

となりの人に聞く

アドバイスはあと、話を良く聴くこと・せかさず話すまで待つ・相手の話を繰り返すなど

正しい対応を自分で考える

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保護者への対応

• 問題の現状と学校の対応の説明–事実に基づく説明を

• 違法行為への対応の説明–今までの対応の限界–問題行動 → 違法行為

• 保護者自身による対応の協力要請

やるべきことを実施すること

学校との連携の緊密化学習の点検(学習スケジュール表)

本人との話し合いタイムアウト時における保護者による対応

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保護者への説明(基本)

• 学習、行動、対人関係について、どういうことが問題かを具体的に説明する

–データを示す• 一斉指導(通常の指導)では困難であることを話す

• 子どもにあった指導のために、専門機関の判断が必要であることを話す

障害の可能性を必ずしも言う必要はない

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Fairbanks(2007):問題行動へのRTI新たな考え方:障害を特別な指導の理由にしない

1. 全員へ:規則を守る指導• 予防的対応

2. 守れない子どもへ:特別な指導• グループ指導(班目標、班単位の指導)

3. なおも守れない子どもへ• 個別指導(ABC分析による対応)

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チームアプローチ

• 親と学校の協働作業• 協働作業による子どもの支援

–校内委員会–保護者との連携

両親

コーディネーター

担任

個別の指導計画の共有

生徒指導主任相手を責めない

子どものためにそれぞれができることを考える問題解決志向

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このモデルを使った事例(1)

• 小5(男)、PDD-NOS• 問題:自分の気持ちがうまく伝えられないときなど、破壊的な行動

• 対応:このモデルに従う、通級指導教室・親の会

• 結果–破壊行動の減少–保護者の理解と保護者による指導–校内の一体感

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このモデルを使った事例(2)

• 中1(女)、アスペルガー障害• 問題:破壊的行動、不登校、養育上の問題• 対応:このモデルに従う、専門機関・親の会との連携

• 結果–破壊行動の減少–保護者の認識の改善–不登校の改善

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教育的な罰、あれこれ

• レスポンスコスト–約束を破ったらポイントを取り上げる

• 過剰修正–失敗を自分で回復させる(+誉める)

• 活動の制限– タイムアウト:教室から一度外に出す–ゲームの時間、自由時間を減らす

ほめることも大事だが、約束を破ったら結果責任を負うこと(罰)も重要!

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問題行動への対応(行動契約法)

暴力(どうにもならない問題)

大声を出す教室から出る

(自分ができること)

それに代わる行動

暴力は犯罪最悪、逮捕(警察の協力)でも、むしゃくしゃす

る(気持ちの受け入れ)

これはいいよ、認めるよ(分化強化)

共通理解ほめること契約書にまとめる

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混乱したときは外に出る(出す)タイムアウト(教育的な罰)

• 警告 → 退場

• まず、落ち着かせる• 約束、簡単な課題(漢字の書き取りなど)

すぐに復帰を!説教しない!

快適な環境に置かない

担任

介助員

本人・保護者に説明し理解を求める

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ルールを守ることを教える

法律

校則 家庭のルール

世の中はルールを守ることになっている!(視覚的に教える)

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不登校への対応

問題解決のための指導モデル

COMPAS

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問題行動への対応(概念図)

自己肯定感を育てる

チームアプローチ

客観的な評価・個別の指導計画

保護者による対応健全な日常生活自己解決法

問題の認識問題への解決案自己評価

SST

障害特性への配慮

教師、SC、保護者、相談機関、専門機関、塾(?)

学校による対応学習の保障心理的なケア

将来の目標

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自己決定の指導

自己選択の指導

自己解決の指導

自己主張の指導SST

自己理解の指導

得意なこと、苦手なこと、学力自分の性格、障害自分の人生観

(自己理解にかんするチェックリスト)

日常生活場面で選択の機会を設定選択肢を提示し、選択をうながす選択できたことを評価する

自己解決法(後述)

自己表現から自己主張へ

ものや現象への肯定的な自己表現ものや現象への肯定・否定的な自己表現自己主張できたことへの評価・強化

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自己解決法

気持ちの受容Sympathize

問題の客観的認識See

目標の自己選択Self-Determination

自己評価・強化Self-Evaluation

目標のステップアップStep up

話をよく聞き、気持ちを受け止める

現状の認識解決への意欲

できそうな目標をいくつか提案無理なくできる目標の自己選択

スケジュールの自己決定(学校のルールの認識)

できることを認識し、さらなる目標を考える

実行

将来の目標の決定と学習計画

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学校の対応

• 学習の機会、学力の保障

• 心理的なケア(SC、教師)

• 同級生による支援

• 支援計画の作成

可能性の強調(君ならできる)、支援の具体的内容の提示

カウンセリング、SST、自己決定の指導

同じ趣味、特性を持つ生徒との交流

問題解決の見通しを具体的に示す

いずれにしても、自己選択を保障すること

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保護者の対応

• 自然な関係作り

• 健全な日常生活

• 両親による役割分担

• 学校との連携

自然な会話、余計なプレッシャーをかけない

健全なリズム、家庭の仕事、余暇(親子のふれあい)

父:目標と見通しを示す、母:相談相手。夫婦の協働作業

定期的な情報交換、支援計画の作成と共有学校と保護者との協働作業

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1000ポイント:ゲームソフト500ポイント:ファーストフード店での食事100ポイント:カード10パック20ポイント:ゲーム1時間追加10ポイント:テレビ2時間、ゲーム1時間

無理なく登校できると普通の生活が保障される約束

登校した:5ポイント適応教室で1時間学習:1ポイント(1時間ごとに1ポイント追加)通常学級で30分学習:2ポイント行事への参加:3ポイント 約束を具体的に

トークンを活用した登校支援

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保護者への対応

• 指導より支援を

• 具体的な話し合いを

• 決定事項は文書化すること

• 合併症を見極める

こちらの主張を抑えてできるだけ話を聴く

データを示す、情報を数値化する

個別の指導計画、支援計画。親自身の目標も

チームのメンバーとしての資質、うつなどの合併症

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事例• 高機能PDD(中1男子)• きっかけ:ちょっとした失敗を指摘され不登校• その後:ゲームに没頭。親は振り回されてあきらめムード

• 対応

• 結果とその後

SCによる両親への対応:将来の見通しトークンシステムによる日常生活管理

親の毅然とした対応できた成果をこまめに評価

トークンシステムを守り登校へ得意な活動や教科で自信がつく

親の認識の変化

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子どもの問題行動(まとめ)

• 問題行動という「問題」に答えがあるとは限らないし、「良い子」に育てるマニュアルはない

• 問題行動はコミュニケーション行動

• 毅然とした態度を貫く

• 悪くない状態を評価する

問題解決の過程が大事。あきらめずにつきあうこと

子どもの意見を聞き、伝え方、表現の仕方を教える

ルールや対応をきめたらその対応を続けること

完璧ではないことを認め、少しの変化を誉めること

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研修をお手伝いします

• 長澤研究室http://www.ed.niigata-u.ac.jp/~nagasawa/– メールマガジン

COMPAS、個別の教育支援計画LD、ADHD、アスペルガーへの対応

研究物チャレンジルームの様子

資料:http://www.ed.niigata-u.ac.jp/~nagasawa/#materials