左房粘液腫:その4症例 における心音図,心機図,...
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左 房 粘 液 腫 : そ の 4 症 例における心音図,心機図,UCG,とくに僧帽弁狭窄症との対比について
厚 地 良 彦小 松 行 雄中 村 憲 司長 井 靖 夫阿 部 光 樹水 庭 弘 進渋 谷 実広沢弘七郎
臨床心音図第5巻2号(論文N0.198〉
Leftatl’ialmyxoma:Pho-
nocal’(1i()graphic,mechano-
cardiographicandechocardi-
ographicf(?aturesin4
(2ases,withspecial:t` eference
tocomparisonofmitral
st(E?nosis
1
Yoshihiko
Yukio
KenJI
Yasuo
Mitsuki
Hironobu
Minoru
Koshichiro
ATSUCHIKOMATSUNAKAMURANAGAIABEMIZUNIVVASHIBUYAHIROSAVVA
Summary
Fourcasesofleftatrialmyxomawerepresentedto(lescribethephonocardiographic,
mechanDcarclic)graphicandechocardiographic弛aturescomparedwith50casesofpuremitralstenosis
whichwereprovedbyssul‘gery.lnours5eries,ear117.diastolicor“tumorplop̈soundoccurring
from0.07to0.nsecondafterS1,V山ratory介stsoundoccupyingtheisovolumeticperiodan(t
2ttつsenceofbothatrials5ystolicmurmurandsnappyorlligh-pitchedopeningsnapweremostconstant
findings.lnthreecaseschangingintensityofanlurnlurindudingabeattobeatchangeof
thevibratoryfirstsoundwasnoted.The趾standpulmonicsecondsoundwerenotedtobeaccen.,
tuatedinpatientswithleftatrialmyxomaasl‘c?portedpr(2vi()usly。
Anotchonthesystolicup欧rokeoftheap匹cardiogramwasnotseeninourcases.A
simplenochoccurinthenormalandmitrals5化nosis(16%inour5sereis)andisnotofdiagnostic
sign旧cance.However,therapidmlingwaveintheapE!xcardiograminleftatrialmyxoma,r)robably
duetothedelayedobs;tructionofthemitralorificebythe行eelymovingtumor,israrelyseenin
mitrals;tenosis(only2%inouriseries)andmightgiveacluetodiagnosis。
ln(?chocardiogramlinedorwaxyechoesweremc()rdedl:〉()5steriortotheanteriorleafletof
themitralvalveduringtheventl・iculardiastole.Abnormalanteriormotionofthemitralleanet
東京女子医科大学,日本心臓血圧研究所東京都新宿区河田町10(〒162)
TheHeartlnstituteJapan,TokyoWomen’sMedica1
(2oHege,Kawada-cho10,Shinjuku-ku,Toky0,162
- 3 2 9 -
厚 地 , 小 松 , 中 村 , 長 井 , 阿 部 , 水 庭 , 渋 谷 , 広 沢
inearlydiastolewasseeninboth(:ases.lncase1,themaximumpointofopeningofthe
,anteriorleanetisfollowed0.09secondlaterbyamoreanteriorpeakwhichl’el〕resentsthearrestof
thetumorintheventricle.lncase2,thepassageofthetumorthroughthemitralvalveinterrupting
normalsemklosingmotion,actuallyabuttedontheseptalwallinearlydiastole.Thesemotionswere
con5sideredtocoincidewiththeearlydiastolicsoundandneverseeninmitralstenosis.
Keywords
leftatrialmyxoma“tumorplop”sound
vibratoryfirstsこ)und
echocardiogram
abnormalmotionoftheanteriormitralleanet
は じめに
原発性心臓腫瘍の20~40%を占める左房粘液腫は,1)その多彩な症状のため術前a今断は心血管造
影に待たねばならなかったカ乳echocardilgrphy(心エコー法,UCG)の発達により,その診断も比較
的容易となってきた.2)また心音図,心機図についても従来より多くの報告がなされ,3~5)リューマチ性僧帽弁狭窄症(MS)との鑑別について論議
がなされており,外科的に根治できる左房粘液腫の有力な手段となっている.
今回,われわれは4症例の左房粘液腫について,心音図,心機図,UCGの面より検討し,前2者については手術で確認されたMS50症例の心音図,
心機図と鑑別診断的見地より対比検討した.また尖後者については従来より報告されている僧帽弁前 後 方 の 腫 瘍 エ コ ー の み な らず, 腫 瘍 の 動 態 を 反映 し た 拡 張 早 期 の 僧 帽 弁 前 尖 の 異 常 運 動 が, M Sとの鑑別点の1つになりうると思われたので報告
する.
症 例 と 方 法
症例は,東京女子医科大学付属日本心臓血圧研究所において,過去14年間に経験した左房粘液腫4例である.その臨床所見,心音図,心機図の所見は各々TableLら45才まで,性別は男子1例,女子3例であった.症状は呼吸困難(3例),塞栓症状(3例),徴熱
(1例)などであった.心電図はいずれも洞調律で,左房負荷(3例),右室肥大(2例),ST-Tの変化(2例)を症例1ではH,m,avE,V3~67症例4ではH,m,avパこ認めた.胸部レントゲソ写真では,心拡大,肺野のうっ血Z,13例に認められた.血行動態では,肺動脈喫入圧,あるいは左
房圧はいずれの症例でも上昇し,それらの波型はMSのそれと異なり,急峻なydescentを認め,4)
症例4においてはc波が顕著であった.腫瘍はい
ずれも病理学的に粘液腫で,有茎性であった.なお,腫瘍による僧帽弁の破壊はなく,4症例ともに正常であった.
心音図記録は,フクダ電子製ポリグラフMCM -8000に加速度型マイクMA-250を接続して,心機
図と同時記録し,一部ポリグラフRM-150を使用した.UCG装置は三栄測器製Ultl’21sosnicCar・(h()graphWM-09型を使用した.トラソスジューサーは2.5MHz,直径12mmのものを用い,繰
り返しパルスは1000Hzである.
成 績症例1.T.F.40才,女性入院5ヵ月前より労作時の息切れを覚え,咳囃
血 痰 を 認 めて い る . そ の 後 一 過 性 に 歩 行 困 難 , 言
語障害を訴えご入院前日ベッド上で突然呼吸困難となり,顔面蒼白,四肢の冷感を伴い,1973年12月7日に入院した.
- 3 3 0 -
-wβ-
Tablel.Chnicalfeaturesin4caseswithleftatrialmyxoina
Patient
1
2
3
4
Age
10
7
30
45
Sex
F
Symptoms
dyspnea
hemoptysis
transientdysarthria
gaitdisturbance
ECG
sinusrhythm
P-■nistrocardiale
STdepressionand
Twaveinversionin
II,III,avr,V3-6.一 一 一
M l h e m i p l e g i a l N o l m a l
一 一 一 一
F
F
dyspnea
palpitationlowgradefever一 一dyspnea
palpitationtransientdysarthria
sinusrhythm
P-snistrccardiale
RVH
sinusr!=ythm
P-sinistrccar6iale
STdepressioninII,
III,avF,
RVH
S一1Chestx-ray Hemcdynamics(mmHg)
CTR(%) Conge3tion PCW(m) PA
51
一 一
51
(併) 31 62/ 3 3
- 一 一
2 7 / 1 2
一 一 一 一 一 一 一 一
8()/32
___‥__
(-) 14
54 (十) ノ62 (十) 25*
- = ㎜ ㎜ ㎜
zeoftumor
(cm)
5×5×4
Halfsizeof
leftatrium
4×5
Eggsize
- 一 一
CTR:Cardiothoracicratio,PCW:Pulmonarycapmarywedge,PA:Pulmonaryartery,*LApressure,RVH:rightventricularhypertrophy
Table2 ’ P h onocardioFaphic6ndi_ngsin4glllse?._withatrialmyxoma______・___.__.________‥‾ 二 づ s l l i 矢 ダ l ト り ヨ フ ○ り ? ≧ ご i c 呼 言 ぜ I M u r m u r 牛 j ; 1 ご 1 匹 l y l ; 昌 ご
・ ・ = = = J ¶ - - = = ・ = = r = W W = - ¬ - = - - = W ■ = = = - ・ = = ・ - ・ = ・ = = = ・ = ・ ・
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2 1 以 ご a 温 l 0 . 0 7 ト ( ) “ 3 リ 0 . 0 7 1 ( - ) | ( ‾ ) | ( 十 ) | ( h s t o l i c l ( 十 ) 1 7 , 1・ 一 a 〃 ・ = - = = = - - = - - - - - - = = = = - - 〃 - = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = = =
J n 低 器 1 0 . 1 0 い o u d 1 0 . 0 9 レ バ ( - ) | ( 十 ` ) 1 1 s y s t o l i c l / ! 9 2・ - - W ㎜ ■ ■ ㎜ ■ 一 = ・ = = ・ - =
4 1 ポ . に y l 0 . 1 ∩ 1 ・ d O . H n 一 川 ( - ) ! ( 十 ) | ( l i a s t o l i c l / 1 8 2- ¶ - = 習 ・ - = = ・ ・ ・ = = - = = = - = = = = = - = = = - = = 一 ・ = - - S - ・ = = ・ = = . = = - .
ACG:21pexcar(liogram,0S:openingsnap,TPS5:“tumorplop”sound,ゝz沁ratory*:55ystoliclllurmurduringlhe弛(八-olumetricperiod叶緬ぎ溥陽
厚 地 , 小 松 , 中 村 , 長 井 , 阿 部 , 水 庭 , 渋 谷 , 広 沢
理学所見では,収縮期圧90mmHgで拡張期圧
は測定できなかった.脈拍は120/分で整.聴診上,心尖部に強盛なi音が聴かれ,n音に引き続いて僧帽弁開放音(oy)に頬似してトるが,やや低調な拡張早期過剰心音を聴取し,第4肋間胸骨左縁に2/6度の高調な収縮期雑音を聴取した.H音肺
Ilt川爪成分はプL2進していた.なお,体位変換による心音および心雑音の変化は認められなかった.心音図上ではげigure1)この過剰心音は,低・中音領域で記録さ且,2つの成分よりなり前成分はnハより0.09秒朧れて生じ,心尖拍動図のO点にほぼ一致し,後成分は急速流入波(RFW)の頂点に 一 致 して ト だ . こ れ ら の 過 剰 心 音 は 聴 診 上 ,11泌h-pitchでなく,また高音領域では記録され
て ト な い こ と よ り , 腫 瘍 の 動 き に よ っ て 生 じ る‘tumorplop”1;ound(TPS)であると思わ九
た.6)なおQ-1時間は0.09秒と延長していた.心尖拍動図(ACG)の頂点に結節を認めるが,この結節はI音主振勁より0.04秒遅れて記録されている.またク急峻なRFWは重症なMSにはみられ
ないものである.術後の心音図,心機図(:Figure2)ではI音の九進はなく,Q-1時間は0.06秒
と正常であり,TPSも消失している.UCGでは僧帽弁前尖および左室後壁を見込む
じ7引句において(I゛igure3a),前尖の拡張期後方に層状の強いエコー反射を認め,収縮期には消失している.大動脈・左房を見込む方向では(:F`igure3b),収縮期に左房のほぼ全領域を,拡張期には前半分を占める異常エコーを認め,心周期に伴い,腫瘍が左室・左房間を急速に移動しているこ
とがうかがえた.拡張早期の前尖は最大開放後,fl’!功ヽに遅れて左室に陥入した腫瘍により,再度前
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Figurel.Preoperativephonocllrdiogram(PCG),apex(・ardiogram(ACG)andcarotidpulsetracing
(CPT)incaselTheTPS,consistingoftwocomponents,wasbestrecordedatlowandmediumfrequency.Thenrstand
secondcomponenlofTPScoincidedwiththeopointandtheprominentrapidnllingwaveinthe
ACG,respectively.AlthoughasmallnotchwasseenatthetopoftheACG,thisnotchwasdelayedfromthemainvibrationofthefirstsoundandnotreproducible.TheQ-lintervalwasprolonged,
measuring0.09second.TPS:“tumorplop̈sound.
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Figure2.PostoperatjvePCG,ACGandCPTinc£se2TheQ-lintervalisnow0.06second.NOTPSwasrecordedinthePCG.
左房粘液紋
AORTA
LA
EKG
( a ) ( b )Figure3.Echocardiogramincase1Themaximumpointofopeningoftheanteriorleanetisfollowed0.09secondlaterbyamoreanterior
peakwhichrepresentsthesuddenarrestof山etumorintheventride(left).Duringthesystole,the12ftatrialcavityisfilledbythetumorechoesandp21rtiallyindiastole(right).
方へ押し.しげられ結節を形成し,以後プラトーに動き,心房収縮後僅かに再開放し収縮期に移行している.UCGと心音図の同時記録はしていなトが,この結節と心音図上の“tumorl)lor)”sound
とが一致するものと推察された.肺1助脈注入による左房造影(:Figure4)では,
左房のほぼ80%を占める2つに分葉した腫瘍を認め , 拡 張 期 に はそ の 一 部 が 僧 帽 弁 輪 を 越 えて 左 室
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厚 地 , 小 松 , 中 村 , 長 井 バ 呵 部 , 水 庭 , 渋 谷 , 広 沢
Figure4.CineangiographyincaselTheprj)jestioloftheheadofthetumつrthrこ)ughmitralvalveringintoth21eftventrideindiastole
(right).lnsystole(1eft)apartofthetumorisdisengagedfrommitralringanddisplacedbackwardintotheleftatrium.
に陥入している.
症例2S.1.7才,男子生来健康であったが,掃除中に急に倒れ,意識
消失し,右片麻庫を来たした.この時心尖部に雑音のあることを指摘され,その精査のために1974年1月25日入院した.理学所見では,血圧U4/70mmHg,脈拍90/分
で整であった.聴診上,心尖部でI音は九進し,
低調性の拡張早期過剰心音と,それに続くrumbleを聴取した.心音図および心機図(UFigure5)では,この過料ら音は2つの成分よりなり,低音および中音領域で記録され,前成分はn人よりoyo7
秒離れ,ACGのO点よりやや早期に生じ,後成分はほぼRFWに一致していた.これらの過剰心音も症例1と同様“tumorplop”soundと思われた.なお,ACGの上行脚の結節は認めていない.UCG(Figure6)では症例1と異なり僧帽弁前
尖 の 動 き は 比 較 的 良 く 保 た れて い た . 腫 瘍 エ コ ーは前尖の後方に蝋状のエ=1 -としてとらえられている.前尖は最大開放後正常な後退速度(90mm/sec)で半閉鎖に向うが,遅れて左室に陥入した腫
瘍は正常の閉鎖運動を中断し,さらに前尖を越えて心室中隔に接している.このような現象は茎が
長く,また僧帽弁口を容易に通過しうる小さな腫瘍に認められると思われる.7)ちなみにこの症例
の平均肺動脈樹入圧は14mmHgで,症例1の31m m H g に 比 して 軽 度 で あ り , 前 尖 の 動 き や, 腫
瘍の“septalcontact”現象の有無により,腫瘍の大きさや,血行動態をある程度推擦しえる可能性があると思われた.
腫動脈注入による左房造影(:Figure7)では腫瘍は左房の前半分を占め,拡張期にはその一部が左室へ嵌入してトだ.症例3.S.H.30才,女性8)入 院 約 半 年 前 よ り 階 段 の 昇 降 に 際 して 動 悸 を 訴
えるようになり,3ヵ月前より易疲労,徴熱が出現し,僧帽弁狭窄兼閉鎖不全として治療を受けていたが,軽快しないので手術目的で1950年10月26
日に入院した.
聴診上,心尖部で3/G度の収縮期雑音を聴取し,拡張期雑音は不明瞭であった.I音およびnpは
完進していた.拡張早期過剰心音(TPS)は心音図上(F泌ure8)記録された.なおこの患者は本邦で始めて人工心肺を使用し
て外科的に根治しえた1例である.症例4.T.T.45才女性9)入院約3年前より夜間呼吸困難,咳囃を訴え,
突然舌や,口唇の右半分がしびれ,口がきけなくなることがあった.動悸,労作時呼吸困難が増強
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し,19(55年4月僧帽弁狭窄症の手術目的で入院した.
聴診上,心尖部でI音は完進し,拡張期ラソブルを聴した.聴診で前収縮期雑音と思われた雑音
は,心音図上(Figure9)心電図Q波より後で始まり,プ亡進したI音に向う収縮期漸増性の雑音で,MSにみられる心房収縮による前収縮期雑音(:F`igure10)とは明らかに異なるむのであった.またこの症例のI音は各心拍毎に変化しており,
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左房粘液腫
- 3 3 5 -
考 案左房粘液腫の血行動態は,腫瘍の発生部位,大きさ,茎の有無などにより多少とも変化がみられるカvo)その主なる血行動態の異常は,拡張期における僧帽弁口の流入障害であり,その点に関し
Figure5.ThePCG,ACGandCPTjncase2
Thelowfrequency,earlydiastolic
sound(TPS)wasrecorded.Aprominent
rapidfillingwavewasseenintheACG.Nonotchwasrecordedontheupstroke
oftheACG.
左房粘液腫の1つの特徴を示している.なおTPSの前成分はnハより0.11秒離れて記録されていた.
Apex
M 2 一 一 吟 ¬ 一 咄 → y 9
4L
厚 地 , 小 松 , 中 吋 , 長 井 , 阿 部 , 水 庭 , 渋 谷 , 広 沢
LVPW
Figure6.Echocardiongramincase2Thepassageofthetumorthroughthemitralvalveinterruptingnormalsemi.dosingmotion,
actuallyabuttedontheseptalwallinearlydia3tole.
Figure7.Cineangiographyincase2For-andbackwardmotionofthetumorisseenduringcardiaccycle
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PREOi゛ERAnⅥノ\…………ト……=-jjfしノ\‥‥‥‥‥☆∧∧ぐト丿二・」二4.二ここ。こ二二二jLjj_i,‘Jニ二。,う叉ュyj]ス:二1T‾コAPEX\し\ゲ……[/TS………jylニニ犬↑ノ
4 付 子 ÷ j ← 紳
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APEX
”犬|
,。犬しユユ!4
Figure8.Pre・andpostoperativephonocardiogramincase3
The“tumorplop̈soundwasrecordedpreoperative】yanddisappearedpostoperatively
左房粘液腫
IAPEX
杵叫いl?ぺ弟岬i卜l
Figure9.Thephonocardiogramincase4PCGshow2daloudanddelayednrstsoundwithcontinuingvibrationsthroughouttheisometric
contractionperiod.Noteabeattobeatchangeofthenrstsound.
- 3 3 7 -
厚 地 , 小 松 , 中 村 , 長 井 , 阿 部 , 水 庭 , 渋 谷 , 広 沢
: 1
111111111111111!|111111111態多忿彰笏総丿綱.l!1111111111111111111111:iil!|!i‘1:’11111111SIIIli!1111111面心|川言Uillmい釧面川田如油川
E犬二柚卜
恥紬叫丈 Figure10.PCG,ACG,andCPTin
mitralstenosis”‾¬押『TTT▽T∇77?ヤ;4fF’ト……トjjy=1j………’1111`=”=フy叩Noteanotchontheupstrokeofthe
j∧トゾケ\∧\☆ノ‥‥‥‥‥‥‥::…………上=ソケ…………’…………\………:ACG.0S:()1〕eningsnap,PSM:pre-
1111111111111111111j11111111111・i・111jiiliiiilii’1111111:|1211;11j111j1111111111!|!111111:1111111111111t.jiiに1!.S1111111111111111111jl11111111111!1111に町stolicmurmur.
て はMSと同一である.したがって聴診および心
音図所見も共通した所見を呈する.すなわち,強
勢なI音,I音の遅れ,n音肺動脈成分のプE進,拡張中期ラソブル,などがしばしばみられる.しかしながら左房・左室間を心周期に伴い腫瘍が急
速に移動する現象はMSと異なった聴診,心音図上の変化をもたらすもの,とニ思われる.すなわち,1)拡張早期過剰心音,3)~5)2)等容収縮期中,あるいは等容拡張期中の雑音,5)`11)3)MSにおける如きOSや前収縮期雑音の欠除,3)4)体位による心音の変化,3)などがそれにあたると考えられ
る.拡 張 早 期 過 剰 心 音 は , 腫 瘍 が 拡 張 早 期 に 前 方
運 動 を 起 こ す た め , 僧 帽 弁 , 左 室 壁 , あ る い はFjgure6でもみられるように心室判届への衝突,
また腫瘍の茎の緊張により生じるとされており,“tumorplop”sound,3)6)earlydiastolicsound4)1o)
あるいはvc・ntriculargallopsound5)として呼ばれている.この心音は聴診上低調で,MSにおいて聴かれるOSの如き高調でなく,心音図上も低
音および中音領域で最もよく記録される.またしばしば2つの成分よりなり,僧帽弁開放点より急
- 3 3 8 -
速流入期に時間的に一致している.したがって臨床的には重症なMSが疑われるにも拘らず,HA -O S間隔が長い場合には左房粘液腫を疑う必要が
あると思われる.われわれの症例においては全て乙7)例にTPSを記録しており(Table2),また症
例1,3,4の如く,HA-TPS間隔0.09~0.11秒は
重症なMSに合致しない所見と云える.等容収縮期中の振動音は,拡張期と左室に陥入していた腫瘍が,収縮早期に左房へ強く押し戻さ
れ,その際,個帽弁輪や左房壁に衝突して生じるものと思われる.聴診上はしばしばMSの前収縮期雑音と誤られることがあるが,心音図上では必ず 心 電 図 の Q 波 よ り 後 で 始 ま り , 漸 増 性 で あ り乙ヽil)ratoryfirstsoundとして記録される(Figure9).なお,Zitnikら11)は等容拡張期におトても同
様な雑音を2症例に認めている.左房粘液腫におい て M S に 聴 か れ る 如 き O S が 記 録 さ れ る か ど
うかは議論の多い点てあるが,Wasserrni11,12)I.(2fcoe13)らは僧帽弁の器質的変化がなくて乱大
きな房室圧較差が存在すれば出現するとしており,
事実聴診上認められるOSや,心音図上明瞭なOSの記録された症例,12)13)またTPSとOSの両者を
記録した症f列14沁報告されている.しかしながら,例え時間的にはOSの発生時点と一致して過剰心音 が 記 録 さ れ て 乱 聴 診 上 低 調 で あ り , ま た 心 音図上高音領域で記録されていない場合はOSよりむしろTPSと考えるのが妥当に思われる.
洞調律でありながら前収縮期雑音をしばしば欠くことは,左房粘液腫の1つの特徴としてあげら
れており,3)14)またわれわれの4症例においても認めていない.前収縮期雑音の発生にはi)狭窄した
弁口,ii)心房収縮期に左房圧が左心圧を凌抗している,iii)心房収縮が良好,iv)心房収縮期に残存血液量が多い,などの条件が必要である.しかしながら症例1,2のUCG(:Figure3,6)にみられるように腫瘍は僧帽弁開放に遅れて左室に陥入してお川広張早期の心室充満はある程度達成さ
れており,また左室充満の大部分は拡張早期に行
われることを考えると,心房収縮期において心房
左房粘液言
内の残存血液量は多くない可能性を示唆している,
また一方,腫瘍が左房への流入障害を来たすようであれば,すなはち肺静脈口の閉塞をもたらして
おれば,左房そのものへの流入量も減少しており.当然心房収縮期の左房内血液量は減少しているもの,と思われる.また腫瘍が小さく,僧帽弁口の閉,yJ勘;僅かであれば,当然前収縮期雑音は生じえたい と 考 え ら れ る . ち な み に 手 術 に よ って 確 認 さ れ
たMS50症例中,洞調律であったものは24例であ,ったが,前収縮期雑音を欠いていたものは4例,
(17%)であり,MSとの絶対的な鑑別点とはなり一之ないが,洞調律で前収縮期雑音を認めない症例で は 左 房 粘 液 腫 も 考 慮 して 検 索 を 進 め る べ き と 思われる.
体 位 変 換 や 目 に よ っての 雑 音 の 変 化 は M S と 異なる重要な所見として従来より強調されているが.MSにおいて左臥位でOSやラソブルが明瞭にな
ることは日常経験していることであり,体位変換に よる 雑 音 の 変 化 は 極 端 な 場 合 を 除 いて あ ま り 強
調されるべきではないと思われる.しかしながらFigure9の如く,仰臥位,呼吸停止の記録において心音の“beattobeat”の変化は,明らかに
可 動 性 の 腫 瘍 に よる 血 行 動 態 の 変 化 を 反 映 して いるものと思われ,左房粘液腫の存在を強く示唆するものである.心尖拍動図(ACG)上の特徴としては従来より・
上行脚の結節がしばしば強調されてきたzり1,3)6)17)’18)しかしながらこの結節は正常人19),MS2o)におー
いてもみられることや(Figure10),またわれわ・
れ の 症 例 の 如 く 結 節 を 欠 く 症 例 も 報 告 さ れ て いる.14)50症例のMSにおいて結節の有無を検討したところ16症例(32%)に結節を認めている事実は,左房粘液腫の診断根拠としての価値に疑問を
残 す も の で あ る . し か し な が ら ぐ 急 速 流 入 波 の 存在は重症度にもよると思われるが,MSにおいては稀とされており,21)われわれも50例中2例(4
%)に認めたのみであり,左房粘液腫との重要な鑑 別 点 に な る と 思 わ れ た . 左 房 粘 液 腫 に お いて 急
速流入波がみられることは,前述した如く僧帽弁
- 3 3 9 -
厚 地 , 小 松 , 中 村 , 長 井 , 阿 部 , 水 庭 , 渋 谷 , 広 沢
伺 放 に 遅 れて 腫 瘍 が 左 室 に 陥 入 す る こ と , あ る いは腫瘍が小さく,弁口の狭窄が軽度である時に生じると思われる.
本症のUCG所見として僧帽弁前尖後方の多層-エコー,あるいは朝漫性なエコーの存在は従来よ
り多くの報告がなされているZ,気2)22)~27)拡張早期・の前尖の異常運動に関してはあまり注目されてい
ない.14)心音図およびtime-motionUCGを同時l記録すると,拡張早期にE点(心音図上のOSに一致)より遅れでdl-op-out”を生じ,この点が心一音図上のTPSに一致するとされている.23)われ
われの症fjgりでは結節,あるいは前尖後退の中断現
象を認めており,この点がTPSに時間的に一致す る も の と 思 わ れ た . ま た 収 縮 早 期 に お いて 乱腫 瘍 が 左 室 よ り 左 房 へ 急 速 に 押 し 戻 さ れ る 際 にUCG上“drop-ouẗを生じ,この点が心音図上の
強勢なI音に一致するとされている.27)このようlな収縮初期,あるいは拡張早期の僧帽弁前尖の動
きは有茎性の左房粘液腫に特徴的であり,弁性の僧帽弁狭窄症にはみられない現象である.弁尖や腱索の肥厚,癒合したものや,石灰化の強いMS
娯おいては前尖後方にしばしば腫瘍エコーと紛らお し い 多 層 エ コ ー を と ら える が, 上 述 し た 前 尖 の
動きや,さらに腫瘍エコーは心周期に伴い左室・左房間を移動していることを把握すれば,僧帽弁狭窄症のエコーパターンと容易に鑑別できるもの乏思われる.
まとめ有茎性の左房粘液腫4例の心音図,心殴図,UCG
・の特徴について述べ,僧帽弁狭窄症との鑑別点に
ついて考4察した.両者の.鑑別点をまとめると以下の 如 く な る と 思 わ れ る . ぃ , 卜 ・ プ ,A . 心 音 図 お よ び 心 機 図 尚 二 ソ … … へ
1)左房粘液腫のみに認められるもの卜千:i)拡張早期過剰心音ii)等容収縮期中あるいは等容拡張期中の
雑 音 一
iii)心音の“beattob(・a(;の変化
1 。 jjコ
2)比較的左房粘液腫に多く認められるものOMSにみられる如きOSを欠くことii)洞調律で前収縮期雑音を欠くことiロ)心尖拍動図上急速流入波を認めること
B.UCGi)左室・左房間を心周期に伴い移動する
異常エコーii)拡張早期の僧帽弁前尖の異常運動iii)前尖開放に遅れ左室側に陥入するエコ
超音波倹査室の足立文子技師の御陰ブJに感謝します.
文 献
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- ‥ 一 一 -
討 論 ( 司 会 : 松 浦 徹 )
吉川(神戸中央市民病院内科):トまのご報告で,特に心尖拍動図の上昇脚のnotchがあまり診
断的でないということ,またrapidnllingwaveがMSとの鑑別で非常に有用なことは,われわれ
も各所で発表しておりまして,先生の御意見には賛 成 な んて す げ れ ど 乱 心 音 図 で 示 さ れ ま し た n音のすぐあとにtumorのplopsoundらしいのが2つありまして,その後の方はrapid剛ingwaveに 一 致 し て お り ま し た け れ ど 乱 そ の 前 の 方 の
plopsoundの機序はどうお考えになりますか.前の方七後の方乱両方ともplopsoundと考えていいわげでございますか.
演者(厚地):ええ.2つともtumorplopsoundと考えたのは,まず低ニili成分に富んでおるという
一 一 一 一 一 一
こ と と ,それに拡張早期にこういった過剰心音が
記録されるということは,ほかにはあまりないものですからです.
吉川:われわれのjlE例では,後者のtumorplopsoundはですね,ポリグラフで心音とエ=-を同
時記録してみますと,僧帽弁前尖とtunlorの衝激の時点と,後者のplopsoundとrapidfillingwaveが時間的には一致しております.すべての
例 で そ う で す. そ れで に 内 科 」 に 投 稿 し た の で すげれども(内科5月号,1974),その機序として,
悪性腫瘍にもそのような心音が認められるので,そうトう僧帽弁前尖と腫瘍とのイソパクトじゃない か と 考 え た わ け で す げ れ ど 乱 先 生 の お 考 え は
どうでしょうか.
- 3 4 1 -
一 一
厚 地 , 小 松 , 中 村 , 長 井 , 阿 部 , 水 庭 , 渋 谷 , 広 沢
演者:tumorの動きというのは,結局そういった 瞬 間 的 な も の じ ゃ な い と 思 わ れ る の で す. と い
うのは,拡張早期においても一緒にばっと動くので は な く て , ダダダダッ と 勤 いて い く と 思 わ れ ま
す の で, 1 ヵ 所 に 限 らず, 拡 張 早 期 に お いて は どの部分においても過剰心音が出ておかしくはないのじゃないかと思っているのですが.
吉川:それはよく分るのですが,どういう成因が考えられますでしょうか.
演者:tumor自身の軽度の緊張とか,あるいはtumor自身が壁にあたるとか,そういったものを
考 えて お り ま す け れ ど 払魚住(愛知県総合保健センター):いまの所見
をor)eningsoundとm音と考えてはいけないのでしょうか.
演者:やはり一番最初考えたことは,高音成分に富んでないということで,いわゆるわれわれが
MSに聞くようなsnappyな音でないということで,openingsoundとは……
魚主:MSのように弁が動くかというと,また
問 題 を む し か え す こ と に な り ま す け れ ど 乱 い わゆるOS,()r3eningsnapというものではなくて,正常者でも見られるようなor)eningsoundがございますね.そういうものであれば,弁の動きとい
う と ま た 反 論 さ れ ま す け れ ど 乱 そ う い う 低 調 な音であったようなことは解釈できないでしょうか.それともと2番目の音もrapidfillingwaveに一致しておりますから,本来からいえばm音ということになります.ですから所見的にはj隆い僧帽弁
狭窄の所見がmyxomaの心音図,心機図的な所見ということになりませんか.演者:それと拡張早期だけでなくて,収縮期の
開 始 に I 音 に 向 か う 雑 音 が 記 録 さ れ て お り ま すが,これはtumorが左室から左房ヘワッと抑し
出される瞬間に出る雑音で,すべてのjj]と例で記録されております.その点もほかのいわゆる正常者との鑑別点になり得るめじゃないかなと思っております.山本(九州厚生年金病院内科):先生のお示し
になりました心音図を見てみますと,pr(2i;5/stolicmurmurは全例に見られなかったように思います.
それから(hastolicmurmurにつトての項目が残
念ながらなかったようですけれど乱丿企例2ではM1,つまりnledium-pitchでしょうかね,それにmid-(liastolicのmurmurが明らかに記録され
ておりましたのですが,それもやはり何かtumor‘の………
演者:ええ,tumorの勤きによる心音の変化を
全 例 に 認 めて お り ま す し , そ う い っ た 心 音 の 変 化は出てもよろしいと思います.山本:私どもの病院ではmyxonlaの例は1例
な んで す げ れ ど 乱 そ の 例 で は , 全 拡 張 期 に わ たるhol(油astolicbhvingmurmurとでもいうよ
うな,ジューとトうmurmurがきれいに記録されたということを経験しております.こういうよ.うに,たくさんのミキソーマの症例を各病院のいろトろなものを持ち寄って,はじめてmyxomaの 心 音 図 所 見 の 全 貌 が 得 ら れてくる の だ ろ う と 言い ま す が, そ う い う 意 味 で は , 先 生 の 症 例 で,
pr(・systolicmurnlur;う丿例もなかったというの・はおもしろいことだと思いました.
演者:r)I‘(・systolicmurmurに関して,われわれの症例では,スライドでお見せしましたように,tumorが入る場合,おくれて入ってトるわけです
ね.だからrapid剛lingにbloodvolumeのほとんどが左室側に移行していて,心房収縮期に伴って流れる(2nd-diastoleの血液というのですか,それはほとんどなくて,そのためにpr(・i;ystolicmur-nTlurはなかったのじ9ないかと思っております.
も し 拡 張 期 に 弁 尖 と 同 時 に 左 室 内 に 入 る よ う なtumorでしたら,弁口は必ず狭くなりますし,そ
れ だ け 血 液 は 左 房 側 に 残 って お り ま す の で, 前 収縮期雑音があってもいいのじゃなトかと思います.その点,こういった所見はx/arja川eだと思うのですげれども………
平川(岐阜大内科):素人ですので変なことをお 聞 き す る か も し れ ま せ ん け れ ど 乱 第 1 音 が 4例とも1oudであったといいましたが,それは
- 3 4 2 -
’mitralclosuresoundが出ると思われるところが
inclモaseして,そのうしろにより大きな振動があ
る,そういう意味でございますか.それとlt,mitra1・(:1osuresoundは正常で,そのうしろの後成分が
ブ[進してトるという意味でござトますか.演者:mitraldosureの成分が九進しているわ
廿です.平川:4例ともですか.それから第:ES例はちょ
っと興味がございましたけれど乱con匹sti()nが’ な いと書いてございましたが,あれは肺のうっ血
・のことでございますね.
演者:そうです.平川:それで,PAの(nastolicpl’(・ssureが高
うざいますね.mainPAが80/32mmHgでございますね.wedgeが大体30くらトはあると,Qリっれ
て肺うっ血がなかったということですか.演者:非常な肺高血圧症を示していたわげです
廿 れ ど 乱 P H の 所 見 は x - r a y で は あ って 乱 肺のうっ血像はみられなかったわげです.
平川:肺動脈側の所見のことでござトますか.演者:PA圧が上昇していたわけです.
平川:うっ血像がなかったというのは,I)ulmo一万naryveinのほうのうっ血像がなかったというこ
とですね.それは両側なかったということですか.演者:ええ.吉川(神戸中央市民病院内科):先ほどちょっ
と 魚 住 先 生 が い わ れ ま し た け れ ど 乱 わ れ わ れ の
症例では魚住先生のお考えどおりに,2例ともn音のあと非常に早期に(Uastolicsoundカ鴇己録さ九ておりました.それは僧帽弁エコーのIE点にほ
ぼ 一 致 して お り ま して , や は り M S の O S じ ゃ なくて,トわゆる僧帽弁の開放音,()peningsoundでたとえば坂本先生から報告されたことのありま
左房粘液腫
すIHSSなどの開放音,そ;紅に類似した音じゃない か と 思 い ま す が, も う 一 度 ご 検 討 い た だ け れ ば
,と:,11よヽます.
坂本(東大第二内科):2つのplopsoundが出て いて , そ の 最 初 の は , 私 も よ くわ か り ま せ ん け
れ ど 乱 僧 帽 弁 の 開 く と き , 正 確 に い え ば 開 き 終りの音じゃなトかというような気がします.と中しますのは,小さな子供,とくに胸壁の薄い子供では,ああいう音はnormalの人でも幾らでも出
るので,tumorがなくても必然的に出てきてもいト音じゃないかと思うのです.ただtumorがあ
ると,それが何らかの意味でaccentuateされて,
ああいう音になるということであって,tumorそのものの動きと全然無関係とはトいませんけれど
乱norma1のmitralvalveでも出ていいのではなトかという.ら似こ二思うのですげれども.それからaμ・xcal’diogramでのnotchは,あれはたしかにoveremphasizeされている所見であって,
僧 帽 弁 狭 窄 で 乱 多 少 時 定 数 の 短 い 装 置 , た と えば1.5秒ぐらトの時定数のむので書きますと,loudなI音がありますとき,みんなnotchが出
て し ま い ま す. 時 定 数 を 4 秒 ぐ ら い に 延 ば し ま す
と,それが消えるというわけです.それで用いる器械の差とトうのがきっとあるのだと思います.apexcar(liogramを記録しながら亜硝酸アミルな
どをやりますと,例数は少ないのですけれども,I音が非常に九進してくると,はっきりしなかったnotchが明らかに出てくるというのは,これは日常の経験ですから,そういったことでnotchが
出たり出なかったりすることを考えておかないと.つまり排??U敲こ違いが出るということを考えてお
かなくちゃいげない,そういう。jjうに思うのです
げれども.
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