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久保田ゼミ プロジェクト研究Ⅰ 成果発表
1451101017D 今垣 真人
2015年8月9日
リアルオプション理論の応用について(仮) ~IT投資評価のために~
中央大学大学院戦略経営研究科
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目次
テーマ:リアルオプション理論の応用について(仮) ~IT投資評価のために~
1. オプション理論について 2. リアルオプションの概念 3. リアルオプションの評価方法 4. 二項モデルの評価 5. BSMモデルの評価 6. IT投資評価への適用 7. 今後の研究方針について 8. 参考文献
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オプションとは①
• 権利であって、義務ではない。将来に行動を起こす権利 • オプションは不確実性が存在するときに価値を持つ
オプションの基礎
(金融)オプションとは
ある将来の時点において、ある資産を一定の価格 (権利行使価格)で購入または売却する権利
コールオプション:資産を一定の価格で購入する権利
プットオプション :資産を一定の価格で売却する権利
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オプションの契約形態
オプションとは②
アメリカンオプション ヨーロピアンオプション
オプション満期日以前のいつでもオプションを権利行使することができる
オプション満期日にだけオプションを権利行使することができる
オプションの評価
• 二項オプション価格モデル(バイノミアルオプション評価モデル) ⇒離散時間モデル/アメリカン・ヨーロピアン問わず • ブラック・ショールズ・マートンモデル ⇒連続時間モデル/ヨーロピアンオプションのみに適用
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リアルオプション①
リアルオプションとは
資本支出投資など特定の事業活動に関する意思決定を 行う権利のこと (狭義)金融オプション理論を実物資産に応用したもの 不確実性の高い環境下で、企業が保有する戦略上の柔軟性をオプション理論で評価し、意思決定をするためのもの
リアルオプションが意思決定に及ぼす要素
• 意思決定を変更、撤回、先送りすることができる 延期・操業規模変更・段階開発・廃棄・切り換え・複合など
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リアルオプション②
リアルオプションの分類
投資実施前 投資実施後
段階投資オプション 成長オプション
タイミングオプション 中止オプション
オペレーティングオプション 放棄オプション
スイッチングオプション
株式のオプション プロジェクトのリアルオプション
現在の株価 期待キャッシュフローの現在価値
行使価値 投資コスト
満期までの期間 機会が消滅するまでの期間
株価の不確実性 プロジェクト価値の不確実性
無リスク金利 無リスク金利
金融オプションとリアルオプションのパラメータ対比
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オプション価値の評価方法
オプション解法の選択
数式で表す
リアルオプションの特定
解法の選択
• 意思決定の仕組みの明確化 • リスクファクターの特定
• 意思決定ルールを数学的に表現 オプションの種類、原資産、行使価格の設定
• 偏微分方程式 解析的解法(ブラック・ショールズ式) • ダイナミック・プログラミング・アプローチ 二項モデル、三項モデル • シミュレーション モンテカルロ法
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二項モデル(Binomial Model)
リスク中立確率
• 原資産と安全資産を組み合わせた複製ポートフォリオとプロジェクト投資の比較
• リスク中立確率は1時点後の原資産の期待収益率をリスクフリーレートを使って表す • 将来から順次計算し、現在の価値を評価する(backward induction)
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BSMモデル①
“Black,Scholes,Merton” Model
c:オプション価格 S:原資産価格 K:行使価格 T:満期 N:標準正規分布の累積分布関数 r:リスクフリーレート σ:ボラティリティ
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BSMモデル②
BSM Model 適用例
例)レストラン新規開店のケース
リアルオプション 具体例
資産の現在の市場価値 600万ドル
前払いする投資額 500万ドル
意思決定の最終時点 1年
リスクフリーレート 5%
資産価値のボラティリティ 40%
延期することによって逸失するFCF 60万ドル
• 今すぐ開店、1年後に開店どちらの場合でも500万ドルかかる
• キャッシュフローは平均して年2%の成長率で増加する
• 資本コストは12%とする
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BSMモデル③ 問題点
“McDonald and Siegel” Model
BSMモデルはヨーロピアンオプションが前提⇒よりリアルオプションに近づけたモデル(どのタイミングでも行使できるアメリカンコールオプションを定式化したモデル)
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“McDonald and Siegel” Model
数値例
パラメータ 値(初期値)
rf 6%
δ 8%
σ 10% I $10,000,000 V $9,000,000
①δを1%~15%変化させる ②σを1%~15%変化させる
$-
$1,000,000
$2,000,000
$3,000,000
$4,000,000
$5,000,000
$6,000,000
δ
RealOption①
$-
$100,000
$200,000
$300,000
$400,000
$500,000
$600,000
$700,000
$800,000
σ
RealOption②
キャッシュフロー利回りδが増加 ⇒オプション価値減少
ボラティリティσが増加 ⇒オプション価値増加
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IT投資評価にリアルオプションを適用する理由
不確実性が大きい • 情報システムの段階的導入・開発 • 情報システムを基盤とした業務改革(BIツール等)
• 情報システムにおけるインフラ投資 (自社資産として保有orクラウドの使用、セキュリティ対策など)
IT投資評価にリアルオプションを適用する意義
IT投資評価にリアルオプションを適用した場合の課題
市場性商品との関連が困難(市場価格インデックスがない)
企業や事業に特有の個別リスクが存在しやすい 契約に基づく選択権の設定が一般的ではない
• 利害関係者に対する投資判断の説明手法 • 投資意思決定の判断材料 として有用である
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今後の研究方針
• Schwartz and Zozaya(2003) IT投資プロジェクトの評価のための新しいモデルの開発
• Dos Santos(1991) IT投資の多くは段階投資が有用であり拡張オプション加味したNPVを 算出する必要がある • 加藤敦(2004) セキュリティ投資の価値を対策前後におけるプットオプションとして定式化
先行研究
今後の研究方針
• 自社システムにおけるインフラ投資 自社でシステムを保有するかクラウドに代表される社外にシステムを保有するかの投資判断についてリアルオプションモデルを使用して研究を進める ⇒ITユーザー企業におけるITインフラ投資のフレームワーク構築を目指す
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参考文献
• ジョン ハル(2009)『フィナンシャルエンジニアリング デリバティブ取引とリスク管理の総体系』金融財政事情研究会
• 久保田敬一(2001)『よくわかるファイナンス』東洋経済新報社 • 今井潤一(2004)『リアル・オプション―投資プロジェクト評価の工学的アプローチ』中央経済社 • Lenos Trigeorgis(1996):Real Options: Managerial Flexibility and Strategy in Resource
Allocation,The MIT Press(川口有一郎訳『リアルオプション』エコノミスト社、2001) • ジョナサン・バーク/ピーター・ディマーゾ(2014)『コーポレートファイナンス 応用編 第2版』丸善出版 • Titman,S.,and J.D.Martin(2015):Valuation The Art and Science of Corporate
Investment Decisions,Prentice Hall • ポール・ミルグロム/ジョン・ロバーツ(1997)『組織の経済学』NTT出版 • マーサアムラム(2001)『リアル・オプション―経営戦略の新しいアプローチ』 東洋経済新報社 • 松島桂樹(2013)『IT投資マネジメントの変革』白桃書房 • 加藤敦(2007)『リアルオプションとITビジネス―基礎理論とケーススタディ』エコノミスト社 • 加藤敦(2004)「ITセキュリティ投資とリアルオプション」『同志社女子大学学術研究年報』第55巻107-
117頁 • Eduardo S.Schwartz and Carlos Zozaya-Gorostiza(2003),”Investment under
Uncertainty in Information technology,”Management Science,Vol49,NO1 • Dos Santos,B,L.(1991),”Justifying investment in new information technologies,”Journal
of Management Information Systems,Vol.7-4,pp.71-79