看護師の夜勤・交代制勤務に関するデータ...3...
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看護師の夜勤・交代制勤務に関するデータ
■看護労働の実態~『2010 年病院看護職の夜勤・交代制勤務等実態調査』から~
短い勤務間隔(「日勤→深夜勤」シフトと「準夜勤→日勤」シフト) ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
短い勤務間隔による「日常生活の時間のゆとり」と「ヒヤリ・ハット」のリスク ・・・・・・・・・・・ 2
夜勤の拘束時間(三交代・二交代別) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
短い仮眠時間と「ヒヤリ・ハット」と「疾患の自覚症状」のリスク ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
看護師長への教育・研修、スタッフの疾病リスクに関する知識 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
■夜勤・交代制勤務の健康・安全リスクに関するデータ
<健康リスク>
国際がん研究機関(IARC)による発がん性リスク ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
看護師の乳がん発生リスク 深夜勤の期間・累積回数・交代勤務別 ・・・・・・・・・・・・・・ 7
短時間の睡眠を連続した場合の睡眠と循環器系機能への影響 ・・・・・・・・・・・・・・・ 8
<安全リスク>
長時間の日勤・夜勤の事故リスク ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
連続の夜勤によるインシデント発生のリスク ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
不眠による疲労と作業効率 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
夜勤中に生じた無意識の眠り ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
<調査概要>
調査は、1) 急性期医療を担う病院として、高度救命救急センターを有する病院の看護職
を対象とした施設調査、2) 全国の病院勤務の看護職を対象とした個人調査、の 2つの調査
からなります。
1)施設調査
この調査は、高度救命救急センターを有する病院を対象とした 19 の施設調査です。調査
対象は看護部長調査(n=19)では、高度救命救急センターを有する病院の看護部長、看護
師長調査(n=409)では、夜勤・交代制勤務をしている看護単位を担当している看護師長、
スタッフ調査(n=2,883)では、所在地、設置主体、病院規模により選定した病院において、
夜勤・交代制勤務をしている看護単位の正規職員スタッフを対象としています。
2)個人調査
この調査は、全国の病院勤務の看護職を対象とした個人調査です。本会会員で病院に勤務
する看護職から無作為抽出した 1万人に送付し、回答のあった 2,260 人を集計対象として
います。
資料 4
1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◆これは、病院勤務の夜勤・交代制勤務を行っている看護職の勤務間隔に関するデータとして、
「日勤→深夜勤」「準夜勤→日勤」シフトの回数を示したグラフです。
◆左のグラフは「日勤→深夜勤」となるシフトの回数を表しています。グラフをみると、短い勤
務間隔となりやすいシフトが 1か月間に 1回以上ある割合が「日勤→深夜勤」シフトでは 77.3%
となっています。
◆右のグラフは「準夜勤→日勤」となるシフトの回数を表しています。グラフをみると、短い勤
務間隔となりやすいシフトが 1か月間に 1回以上ある割合が「準夜勤→日勤」シフトでは 10.8%
となっています。
※ここでいう「短い勤務間隔」とは、例えば、日勤(08:30-17:00)の終了から次の深夜勤
(00:30-09:00)の開始までの時間間隔のことで、最長でも 7時間 30 分しかないため、日勤後
の残業や深夜勤前の前残業を行うことでさらに短くなる勤務の間隔のことを意味します。
■短い勤務間隔(「日勤→深夜勤」シフトと「準夜勤→日勤」シフト)
「日勤→深夜勤」シフトの回数 「準夜勤→日勤」シフトの回数
22.7%
2.2%
6.7%
16.0%
33.1%
14.9%
3.3%
0.4%
0.7%
0回
1回
2回
3回
4回
5回
6回
7回
8回
89.2%
4.5%
3.0%
3.0%
0.4%
0回
1回
2回
3回
4回
5回
6回
7回
8回
2
■短い勤務間隔による「日常生活の時間のゆとり」と「ヒヤリ・ハット」のリスク
51.0%
47.5%
46.2%
52.5%
シフトあり
シフトなし
ヒヤリ・ハットあり なし 無回答
62.1%
48.8%
34.5%
49.2%
シフトあり
シフトなし
ヒヤリ・ハットあり なし 無回答
37.0%
42.6%
61.5%
57.4%
シフトあり
シフトなし
ゆとりあり わからない ゆとりない 無回答
27.6%
39.6%
69.0%
59.6%
シフトあり
シフトなし
ゆとりあり わからない ゆとりない 無回答
「日勤→深夜勤」シフトによる時間のゆとりのリスク
「日勤→深夜勤」シフトによるヒヤリ・ハットのリスク
「準夜勤→日勤」シフトによる時間のゆとりのリスク
「準夜勤→日勤」シフトによるヒヤリ・ハットのリスク
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◆これは、短い勤務間隔による「日常生活の時間のゆとり」と「ヒヤリ・ハット」のリスクを
示したグラフです。
◆左上のグラフは、「日勤→深夜勤」シフトによる日常生活の時間のゆとりに関するリスクを表し
ています。「日勤→深夜勤」シフトがある場合をみると、日常生活の時間に「ゆとりがない」割
合(61.5%)でシフトのない場合(57.4%)より高くなっています。
◆左下のグラフは、「日勤→深夜勤」シフトによるヒヤリ・ハットに関するリスクを表しています。
「日勤→深夜勤」シフトがある場合をみると、ヒヤリ・ハットが 1 か月間に 1 回以上「ある」
割合(51.0%)でシフトのない場合(47.5%)より高くなっています。
◆右上のグラフは、「準夜勤→日勤」シフトによる日常生活の時間のゆとりに関するリスクを表し
ています。「準夜勤→日勤」シフトがある場合をみると、日常生活の時間に「ゆとりがない」割
合(69.0%)でシフトのない場合(59.6%)より高くなっています。
◆右下のグラフは、「準夜勤→日勤」シフトによるヒヤリ・ハットに関するリスクを表しています。
「準夜勤→日勤」シフトがある場合をみると、ヒヤリ・ハットが 1か月間に 1回以上「ある」
割合(62.1%)でシフトのない場合(48.8%)より高くなっています。
3
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◆これは、病院勤務の夜勤・交代制勤務を行っている看護職の夜勤の拘束時間と長時間夜勤によ
る「(現在の勤務先からの)離職」と「(看護職以外への)転職」のリスクを示したグラフです。
◆左のグラフは、病院勤務の夜勤・交代制勤務を行っている看護職の夜勤の拘束時間を表してい
ます。三交代では、「8.5~9 時間未満」が最も多く 75.0%となっています。一方、二交代では、
「16~17 時間未満」54.2%、「17~18 時間未満」30.8%が多く、「16 時間以上」の長時間夜勤
をしている割合が合わせて 87.7%となっています。
◆右上のグラフは、交代制勤務者の長時間夜勤による離職のリスクを表しています。夜勤の拘束
時間が「12 時間以上」の場合をみると、現在の勤務先からの離職を「考えている」割合(56.7%)
が「12 時間未満」の場合(49.2%)より高くなっています。
◆右下のグラフは、離職を「考えている」と回答した者について、看護職以外への転職のリスク
を表しています。グラフの中で拘束時間が長くなるほど、(転職先を)看護職で探している割合
が低くなっています。
◆なお、夜勤回数に関するデータを紹介すると、交代制勤務を行っている看護職の夜勤回数は二
交代では 1 か月に平均 4.6 回の夜勤(50.2%が 5 回以上)を行っていました。一方、三交代で
は 1か月に平均 8.5 回の夜勤(43.1%が 9回以上)を行っています。
■夜勤の拘束時間(三交代・二交代別)
夜勤の拘束時間
49.2%
56.7%
50.0%
42.9%
12時間未満
12時間以上
考えている 考えていない 無回答
64.4%
59.3%
56.5%
50.0%
7.8%
14.8%
13.0%
9.4%
27.8%
25.9%
30.4%
39.6%
9時間未満
9~12時間未満
12~16時間未満
16時間以上
看護職で探している 看護職以外で探している探していない 無回答
長時間夜勤による離職のリスク
長時間夜勤による転職のリスク
7.2%
75.0%
10.4%
2.3%
1.8%
1.8%
1.2%3.0%
2.4%
3.0%
3.9%
54.2%
30.8%
1.9%
8時間未満
8-8.5時間未満
8.5-9時間未満
9-9.5時間未満
9.5-10時間未満
10-11時間未満
11-12時間未満
12-13時間未満
13-14時間未満
14-15時間未満
15-16時間未満
16-17時間未満
17-18時間未満
18-19時間未満
19-20時間未満
20時間以上
三交代 二交代
4
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◆これは、病院勤務の夜勤・交代制勤務を行っている看護職の夜勤時の仮眠時間と短い仮眠時間
による「ヒヤリ・ハット」と「疾患の自覚症状」のリスクを示しています。
◆左のグラフをみると、夜勤時に平均でとれた仮眠時間数は、「120 分未満」が 75.3%を占めてい
ます。
◆右上のグラフは、短い仮眠時間によるヒヤリ・ハットのリスクを表しています。仮眠時間が「120
分未満」の場合をみると、1か月間にヒヤリ・ハットが 1回以上「ある」割合(50.7%)が「120
分以上」(37.0%)より高くなっています。
◆右下のグラフは、短い仮眠時間による疾患の自覚症状のリスクを表しています。仮眠時間が「120
分未満」の場合をみると、15 項目の疾患のうち、自覚症状が「5 項目以上ある」と回答してい
る割合(29.0%)が「120 分以上」(24.1%)より高くなっています。
■短い仮眠時間と「ヒヤリ・ハット」と「疾患の自覚症状」のリスク
仮眠時間 短い仮眠時間によるヒヤリ・ハットのリスク
短い仮眠時間による疾患の自覚症状のリスク
9.5%
20.0%
45.8%
16.4%
2.2%
1.1%
5.1%
0分
1~60分未満
60~120分未満
120~180分未満
180~240分未満
240分以上
無回答
50.7%
37.0%
48.8%
63.0%
120分未満
120分以上
あり なし 無回答
69.6%
75.9%
29.0%
24.1%
120分未満
120分以上
5項目未満 5項目以上 無回答
◆15項目の疾患の自覚症状頭痛 肩こり 手足の関節痛 腰痛 疲れ目 高血圧 不整脈月経不順 便通異常 憂鬱感 倦怠感 睡眠障害 慢性的な睡眠不足 胃の調子が悪い 食欲不振
5
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◆これは、看護師長への教育・研修、スタッフの疾病リスクに関する知識について表したグラフ
です。
◆左のグラフでは、看護師長が管理職となってから、夜勤・交代制勤務のリスクに関する教育・
研修を「受けたことがない」割合が 61.4%に上っています。
◆右上のグラフでは、スタッフが夜勤・交代制勤務による疾病リスクを知っている割合が、「循環
器疾患」、「悪性腫瘍」では、それぞれ 39.5%、22.1%にとどまっています。
◆右下のグラフでは、疾病リスクを「知っている」と回答した者についてみており、「睡眠不足」
「慢性疲労」「月経異常」「循環器疾患」「悪性腫瘍」の知識を「基礎教育から得た」割合がすべ
ての疾病でおよそ 40%「現任教育から得た」割合がおよそ 5%となっています。
■看護師長への教育・研修、スタッフの疾病リスクに関する知識
夜勤・交代制勤務に関する看護師長への教育・研修夜勤・交代制勤務の疾病リスクに関するスタッフの知識
夜勤・交代制勤務に関する疾病リスクの知識を得た情報源
80.7%
79.4%
67.4%
39.5%
22.1%
13.8%
15.2%
27.0%
54.3%
71.8%
睡眠障害
慢性疲労
月経異常
循環器障害
悪性腫瘍
疾病リスクに関する知識として知っている 知らない 無回答
42.1%
41.2%
41.7%
38.1%
35.1%
4.9%
4.7%
4.3%
4.7%
5.8%
睡眠障害
慢性疲労
月経異常
循環器障害
悪性腫瘍
基礎教育で知識を得た 現任教育で知識を得た
61.4%
41.6%
41.8%
40.1%
28.4%
27.1%
(管理職となってから)
夜勤・交代制勤務のリスク
に関する教育・研修
(管理職となってから)
労働基準法・労働安全衛生
法
に関する教育・研修
夜勤の禁忌・減免内容
に関する説明
看護師長に対する個別指導
看護師長の相談相手
となる担当者の明示
(看護師長として着任からこれ
まで)
勤務表作成マニュアルの配
布
夜勤・交代制勤務のリスクに関する教育・研修を受けたことがない
労働基準法・労働安全衛生法に関する教育・研修を受けたことがない
夜勤・交代制勤務の禁忌・減免内容についての説明を受けていない
夜勤・交代制勤務に関する個別指導を受けていない
相談相手となる担当者の明示を受けていない
勤務表作成マニュアルの配布を受けていない
管理職となって
から
看護師長として着任からこれまで
循環器疾患
循環器疾患
6
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆これは WHO(World Health Organization: 世界保健機関)の専門機関である国際がん研究機関
(IARC:International agency for research on cancer)が公表している発がん性リスクの一覧
から抜粋したものです。<参照 http://monographs.iarc.fr/ENG/Classification/index.php>
◆発がん性リスクは、リスクの高い順から 4つのグループに分類されています。
グループ 1 発がん性がある(現在、107 因子が該当しています)
グループ 2A 発がん性がおそらくある(現在、59 因子が該当)
グループ 2B 発がん性があるかもしれない(現在、267 因子が該当)
グループ 3 発がん性が分類できない(現在、508 因子が該当)
グループ 4 発がん性がおそらくない(現在、1因子が該当)
◆2011 年、携帯電話がグループ 2B(発がん性があるかもしれない)と公表され、大きく報道さ
れましたが、交代制勤務はその上位のグループ 2A(発がん性がおそらくある)に位置付けら
れています。グループ 2Aはヒトを対象とした疫学研究での科学的根拠は限定的ですが、動物
実験において十分な科学的根拠が認められる場合に適用されます。
◆グループ 1にはアスベスト、カドミウムなどが入っていますが、交代制勤務は次の段階のグル
ープ 2A に分類されていますので、このことからも発がん性リスクはかなり高く位置づけられて
いることがわかります。なお、グループ 1はヒトおよび動物実験において発がん性が認められ
た場合に認定されます。
◆デンマークではこれを受けて 2008 年より元夜勤・交代制勤務者の乳がん罹患者に、一定条件を
満たす場合に労災認定を行っています。
Last update 2011年6月
Group 発がん性リスク
Group 1「発がん性がある」107因子:アスベスト、カドミウム、アルコール飲料、受動喫煙
を含む喫煙など
Group 2A「発がん性がおそらくある(probably)」59因子:サーカディアンリズムを乱す交代制勤務、ディーゼル
エンジンの排ガスなど
Group 2B 「発がん性があるかもしれない(possibly)」267因子:携帯電話、ガソリンエンジンの排ガス、鉛など
Group 3「発がん性が分類できない」508因子:原油、カフェイン、お茶、ヘアカラーリング、外科イン
プラント・その他の異物など
Group 4 「発がん性がおそらくない(probably)」1因子:カプロラクタム(ナイロンの原料)
国際がん研究機関(IARC)による発がん性リスク
健康リスク
(がん)
7
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆これはデンマーク看護協会の看護師会員(女性)を対象とした研究結果です。デンマーク看護
協会には国内の 95%の看護師が入会しています。<Hansen J, Stevens RG. Case-control study
of shift-work and breast cancer risk in Danish nurses: Impact of shift systems. Eur J
Cancer. Aug 16. 2011 [Epub ahead of print]>
◆表は、看護師の勤務による乳がん罹患のリスクを示しています。オッズ比は、ある疾患などの
罹患しやすさを 2 つの群で比較して示す統計学的な尺度を言います。表中の調整オッズ比は年
齢等の調整後の値です。この表からは主に以下のようなリスクがあることが読み取れます。
<期間>
○「日勤-準夜勤」を 1として比較すると、午前 0時以降を含む夜勤の経験期間が長いほど
オッズ比が高くなる傾向にあり、20 年以上では 2.1 倍のリスクがありますが、5~10 年で
も 2.3 倍のリスクであることを示しています。
<累積回数(午前 0時以降を含む夜勤回数)>
○上記同様に、夜勤の累積回数が多くなると「日勤-準夜勤」の 2倍以上ものリスクがあるこ
とを示しています。
<交代性勤務>
○「日勤-深夜勤(2 交代)」は「常日勤」と比較すると、その経験回数が多くなるほどオッズ
比は高くなり、732 回以上では 2.6 倍ものリスクになることを示しています。
○また、「日勤-準夜勤-深夜勤(3 交代)」は経験回数の多い場合も少ない場合も、「常日勤」
と比較し約 2倍近くのリスクがありますが、2交代よりリスクが低いことを示しています。
◆これらから、夜勤・交代制勤務をする看護職は乳がん罹患のリスクが高いことがうかがえ、対
策としてリスクを軽減する働き方(働かせ方)をすることが必要です。
オッズ比※ 95%信頼区間
午前0時以降を含む
深夜勤を1年以上
(
19~9時の間の8時間労働)
期間 日勤+準夜勤 1 -
1~5年 1.5 0.99-2.5
5~10年 2.3 1.4-3.5
10~20年 1.9 1.1-2.8
20年以上 2.1 1.3-2.2
累積回数 日勤+準夜勤 1 -
468回未満 1.6 1.0-2.6
468~1095回 2.0 1.3-3.0
1,096回以上 2.2 1.5-3.2
交代性勤務
日勤+準夜勤 常日勤 1 -
732回未満 1.4 0.9-2.2
732回以上 1.0 1.4-2.4
日勤+深夜勤 常日勤 1 -
732回未満 1.5 0.9-2.4
732回以上 2.6 1.8-3.8
日勤+準夜勤+深夜勤 常日勤 1 -
732回未満 1.8 1.2-3.1
732回以上 1.9 0.7-2.3
※オッズ比: 年齢、体重、ホルモン補充療法、初潮年齢、月経の規則性、母親・姉妹の乳がんの有無、授乳期間で調整
看護師の乳がん発生リスク深夜勤の期間・累積回数、交代勤務別
(Hansen & Stevens,2011を改変)
健康リスク
(乳がん)
8
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◆これは短縮した睡眠時間の繰り返しが睡眠中の心拍数にどのような影響を示すかを調べた実験
結果です。<佐々木司,酒井一博,繰り返しの睡眠短縮が睡眠中の循環器機能に及ぼす影響,労働
科学,73(7),288-291,1997/佐々木司,健康リスクからみた看護師の夜勤,看護実践の科学、
35(2),2010>
◆被験者(通常 8時間睡眠の 19 歳大学生)に、実験室にて 2夜連続で 8時間の夜間睡眠をとり(1
夜目は実験室に適応するため、2 夜目は基準値測定のため:基準値は図中横軸“0”の部分)、
その後、睡眠時間 5時間の睡眠短縮を 12 日間連続で行ったものです。
◆図は実験結果である徐波睡眠の出現率と睡眠中で最も心拍数が高くなるレム睡眠中の心拍数の
変化が表されています。
<徐波睡眠出現率の変化> ※徐波睡眠:心身を眠らせる深い睡眠
通常、徐波睡眠出現率は睡眠時間の長短に関わらず、20 歳成人で一晩に 15~20%の範囲で出
るといわれています。この実験では睡眠を短縮しても 2日目までは基準値の約 20%を示しま
すが、3日目は 50%以上の高い割合で出現し、それ以降も 40%以上を示しています。
<レム睡眠中の心拍数の変化> ※レム睡眠:心身を起こす浅い睡眠
レム睡眠中の心拍数は、実験 3日目で大きく亢進し(約 10 拍/分)、その後 5日目に一旦 2日
目の水準に戻っていますが、その後も高低を繰り返しながら徐々に亢進し、12 日目には最も
高く約 10 拍/分も心拍数が上がっていたのです。
◆この結果から睡眠短縮による徐波睡眠の増加がレム睡眠中の心拍数を増加させていることがう
かがえます。これらから、長時間夜勤による不十分な睡眠時間は、睡眠中の循環器系機能に負
担をかけ健康リスクを高くするといえます。
短時間の睡眠を連続した場合の睡眠と循環器系機能への影響
(佐々木ら, 1997を改変)
心
拍
数
徐波睡眠出現率
徐波睡眠:心身を眠らせる睡眠
レム睡眠:心身を起こす睡眠
健康リスク
(循環器系機能)
9
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆これは、長時間日勤と夜勤によって労働安全上の事故リスクが相対的に高くなることを示した
研究結果です。<Folkard S, Lombardi DA. Modeling the impact of the components of long work
hours on injuries and "accidents". Am J Ind Med.49(11):953-63.2006>
◆この図は左の青い棒グラフで示されている週 40 時間労働の場合と比較して、週労働時間 48 時
間の 4種類の勤務が何倍のリスク(何%増しのリスク)があるかを示しています。
日勤と夜勤に分けて見てみます。
<日勤について:オレンジの棒グラフ>
○「8 時間労働の日勤×6回」では、週 40 時間労働と比較して 1.03 倍(3%増)のリスク
○「12 時間労働の日勤×4回」では、週 40 時間労働と比較して 1.25 倍(25%増)のリスク
<夜勤について:グレーの棒グラフ>
○「8 時間の夜勤×6回」では、週 40 時間労働と比較して 1.41 倍(41%増 )のリスク
○「12 時間の夜勤×4回」では、週 40 時間労働と比較して 1.55 倍(55%増)のリスク
◆これらから、勤務時間が長ければ長いほど、また、日勤より夜勤でリスクが高まることがわか
ります。
◆この研究では 12 時間を超える夜勤の事故リスクについては検討されていませんが、それは、
EU 諸国では 12 時間を超える夜勤が行われていないからです。しかし、この結果を見ると夜勤
が 12 時間を超えて長くなった場合、事故リスクはさらに高まることは推測されます。日本の 2
交代制勤務では 16 時間夜勤が大多数を占めていますので、事故リスクが非常に高い状態のなか
で働いていると推察されます。
41%増
11.03
1.41
1.25
1.55
0.9
1
1.1
1.2
1.3
1.4
1.5
1.6
週40時間労働 8時間労働×6回日勤
8時間労働×6回夜勤
12時間×4回日勤
12時間×4回夜勤
相対リスク
1週48時間モデル(EU労働時間指令の上限)
週40時間労働と比較して3%リスク増
25%増 55%増
長時間の日勤・夜勤の事故リスク(Folkardら、2006を改変)
安全リスク
10
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◆これは、夜勤中に起こったインシデントについて、過去 7 論文を再分析して連続夜勤と事故発
生の相対リスクを算出された研究結果です。<Folkard S, Tucker P. Shift work, safety and
productivity. Occup Med (Lond).53(2):95-101. 2003/佐々木司,夜勤の勤務編成のスタンダー
ド(その 1) ,看護実践の科学、35(5),2010 >
◆この図は、1晩目の夜勤を基準にして、2晩目の連続夜勤、3晩目の連続夜勤、4晩目の連続夜
勤の場合に何%増しのリスクがあるかを示しています。
○2 連続夜勤の場合、2晩目の夜勤は 1晩目の夜勤と比較して 6%増のリスク
○3 連続夜勤の場合、3晩目の夜勤は 1晩目の夜勤と比較して 17%増のリスク
○4 連続夜勤の場合、4晩目の夜勤は 1晩目の夜勤と比較して 36%増のリスク
◆この結果から、連続夜勤日数が増えるとともにインシデント発生のリスクが高くなることが明
らかです。
1.00
1.06
1.17
1.36
0.9
1.0
1.1
1.2
1.3
1.4
1晩目 2晩目 3晩目 4晩目
6%増加
36%増加
17%増加
連続する夜勤の日数
インシデント発生の相対リスク
連続の夜勤によるインシデント発生のリスク(Folkard ら,2003を改変)
安全リスク
11
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ◆これは、不眠による疲労と作業効率との関連性を調べた実験結果です。不眠状態を維持した場
合(8時から翌日の 12 時まで 28 時間)、真夜中から明け方にかけての時間帯には人間の作業能
力が極端に落ち、酒気帯び状態で同じ作業をさせた場合よりも劣る危険な状態になることが明
らかにされています。<Dawson D, Reid K. Fatigue, alcohol and performance impairment.
Nature. 388(17):235.1997/佐々木司,安全性のリスクからみた看護師の夜勤,看護実践の科
学,35(3),2010>
◆図中の左縦軸はトラッキング作業の成績を示し、折れ線グラフは時間経過に沿った作業成績を
記録したもので、午前 9 時の成績を 100%とした時の変化を表しています。右縦軸はトラッキ
ング作業の成績に対応した血中アルコール濃度を示しています。図を横切る 2 本のラインは、
オーストラリアの酒気帯び運転の基準とされるアルコール血中濃度0.05%にある被験者が作業
をした時の平均成績と、日本で酒気帯び運転の基準とされているアルコール血中濃度 0.03%に
ある被験者が作業した時の平均成績のラインです。
◆作業成績は、経過時間が 14 時間を過ぎ、時刻が午前 0時を過ぎるあたりから、成績が急激に悪
化しています。酒気帯び運転基準の作業成績のラインと折れ線グラフの動きと比較すると、不
眠状態でいる被験者の真夜中から朝方にかけての時間帯の成績は、『酒気帯び』レベルで作業し
た被験者の成績を大きく下回っています。
◆これらのことから、人間の深夜の活動は、注意力や作業能力が低下した、極めて危険な状態に
あると言えるのです。
眠い→
←
はっきり
血中アルコール濃度(%)
トラッキング作業の成績(%)
0.03%(日本の酒気帯び運転基準)
追従作業とも呼ばれ、軌道上でゆっくりと動く赤い点を軌道から外れないよう追っていく、単調な作業
トラッキング作業
104
102
100
98
96
94
92
不眠による疲労と作業効率(Dawsonら、1997を佐々木改変)
安全リスク
12
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◆これは、夜勤者 1名の夜勤中とその後の昼間睡眠の脳波を調べて睡眠経過図として示されたも
のです。<Åkerstedt T, Torsvall L, Gillberg M. Shift work and napping. In: Dinges DF,
Broughton RJ eds, Sleep and alertness, chronobiological, behavioral, and medical
aspects of napping. Ravan Press. New York, 1989/佐々木司,安全性のリスクからみた看護師
の夜勤,看護実践の科学、35(2),2010>
◆睡眠経過図は、縦軸に睡眠深度、横軸に時刻が示され、時間の経過にしたがい睡眠の程度がわ
かるようにしたものです。 睡眠深度は、浅い順からW(覚醒)→1(睡眠段階 1)→2(睡眠段階 2)→3(睡眠段階 3)→
4(睡眠段階 4)を示しています。心身を眠らせる深い眠りである徐波睡眠は、睡眠段階 3と睡
眠段階 4になります。
◆この睡眠経過図を見ると、夜勤中に 3 回もの眠りが出現しています。さらにそのうち徐波睡眠
である睡眠段階 3が 2回も出現しています。これは、夜間の勤務中に被験者が合計 3回眠り、2
回は深い眠りであったことを示します。
このことからも、夜勤は安全性の観点からも十分な対策が必要な勤務であることがわかります。
夜勤中に生じた無意識の眠り(Åkerstedtら,1989を佐々木改変)
睡眠深度
夜勤中 昼間睡眠
時刻 時
深度3の睡眠が夜勤中に2回も出現
夜勤者1名の夜勤中とその後の昼間睡眠の脳波を調べて睡眠経過図として示したもの
安全リスク