超伝導体の熱力学matsuhp.mat.iwate-u.ac.jp/h24超伝導材料学資料.pdfdg sdt vdp...

22
- 1 - 第1・2回 超伝導体の熱力学 熱力学の復習 H 2 O の相図 ジョサイア・ウィラード・ギブズ 系の粒子数を N, 化学ポテンシャルをとすると ギブスの自由エネルギーは、G=Nで与え られる。固相、液相および気相の化学ポテンシャルを s l g とすると、液相と気相の二相 共存の場合 l = g となる。化学ポテンシャルは、1粒子当たりのギブスの自由エネルギーに 相当する。気体としての水分子が多くなると、気体から液体に入る込む水分子の数と、液体 から気体に飛び出す水分子の数が等しくなり、見かけ上は静止して見えるようになる。これ が、平衡状態である。 ギブスの自由エネルギーG は、内部エネルギーU、温度 T、エントロピーS、圧力 p 及び体積 V を用いて、次式で与えられる。 G U TS pV 熱力学第一法則より、 dU dQ pdV TdS pdV 式①の全微分をとり、②を代入すると dG SdT Vdp ギブスの自由エネルギーG は、温度 T と圧力 p を熱力学変数にとる。熱力学第二法則より、 系は自由エネルギーが減少する方向に進行する。また、閉じた系における熱平衡条件は自由 エネルギーが極小値をとることである。 二相共存の場合、熱平衡状態において 以下の計算から、 l = g となる。 1 2 1 1 1 1 1 0 g l g l g l g l G N N N N N G N N N N = 液体の場合 l < g 気体の場合 l > g 二相共存の場合 l = g

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  • - 1 -

    第1・2回 超伝導体の熱力学

    相転移の熱力学

    熱力学の復習

    H2Oの相図 ジョサイア・ウィラード・ギブズ

    系の粒子数を N, 化学ポテンシャルをとすると ギブスの自由エネルギーは、G=Nで与え

    られる。固相、液相および気相の化学ポテンシャルをslgとすると、液相と気相の二相

    共存の場合、l= gとなる。化学ポテンシャルは、1粒子当たりのギブスの自由エネルギーに

    相当する。気体としての水分子が多くなると、気体から液体に入る込む水分子の数と、液体

    から気体に飛び出す水分子の数が等しくなり、見かけ上は静止して見えるようになる。これ

    が、平衡状態である。

    ギブスの自由エネルギーGは、内部エネルギーU、温度 T、エントロピーS、圧力 p及び体積

    Vを用いて、次式で与えられる。

    G U TS pV ①

    熱力学第一法則より、

    dU dQ pdV TdS pdV ②

    式①の全微分をとり、②を代入すると

    dG SdT Vdp ③ ギブスの自由エネルギーGは、温度 T と圧力 p を熱力学変数にとる。熱力学第二法則より、

    系は自由エネルギーが減少する方向に進行する。また、閉じた系における熱平衡条件は自由

    エネルギーが極小値をとることである。

    二相共存の場合、熱平衡状態において

    以下の計算から、l= gとなる。

    1 2 1 1

    1

    1 1

    0

    g l g l

    g l g l

    G N N N N N

    GN N

    N N

    l= 液体の場合 lg 二相共存の場合 l=g

  • - 2 -

    超伝導相の磁場・温度相図

    次に超伝導転移を熱力学の観点から考える。温度 T と外部磁場 H を変数とする超伝導相及び常伝導相

    の自由エネルギーG、エントロピーS 及び比熱 C を以下の表に従って定義する。また、超伝導相と常伝

    導相の境界を与える臨界温度及び熱力学的臨界磁場を Tcおよび Hcとする。

    熱力学関数 超伝導相 T < Tc 常伝導相 Tc < T

    ギブスの自由エネルギー GS(T,H) GN(T)

    エントロピー SS(T,H) SN(T)

    比熱 CS(T,H) CN(T)

    いま、温度 Tと外部磁場 Hは、臨界温度及び臨界磁場を超えないものとする。

    外部磁場 Hにより、超伝導体になされた仕事W は、 2

    0 0 4 8

    H H HW d d

    HM H H

    となる。ここで、マイスナー効果より、超伝導体内部の磁束密度 B は0であるので、超伝導体の磁

    化M は 4 B H M より、4

    H

    M を得る。従って、外部磁場零の場所から、有限の外部磁場 H

    の点まで超伝導体を動かしたときの自由エネルギーの増加は 2

    8

    H

    となる。

    2

    , ,08

    s s

    HG T H G T

    相境界線 Hc(T) GS =GN

    T< TC 臨界磁界 HC

    GS < GN

    GS > GN

    0 T Tc(臨界温度)

    臨界磁場

    HC (0)

    H

    超伝導相

    常伝導相

    カーメルリング=オンネス

    (オランダ)

    1913年ノーベル物理学賞

    低温現象の研究

  • - 3 -

    一方、常伝導相は非磁性であり磁場に依存しないものと仮定すると、常伝導相の自由エネルギー

    は表に示すように温度のみの関数である。

    印加磁場が臨界磁場まで増加すると、超伝導相及び常伝導相の自由エネルギーは等しいので、

    ,s C NG T H G T

    よって、④に H=Hc を代入することにより、零磁場における超伝導相及び常伝導相の自由エネル

    ギーの差を求めることができる。

    2

    ,08

    C

    N s

    HG T G T

    常伝導相の自由エネルギーGN は、超伝導相の GS に対しエネルギーが高いことがいえる。言い換

    えれば、T < Tcの場合に超伝導相の自由エネルギーは、常伝導相に比べ2

    8

    CH

    の値小さいことが重

    要である。次に、ゼロ磁場において臨界温度 Tc での超伝導相と常伝導相のエントロピー、SS, SN

    は連続であること示す。③式を温度で偏微分することにより

    GS

    T p

    が得られる。式⑤の温度微分をとると、臨界磁場が温度の関数であることに注意すると

    , 0 ( )4

    N S C CG T G T H T dH T

    T T dT

    よって、自由エネルギーの温度微分をエントロピーにより表わすと式⑤は、

    4

    CCN S

    dH THS T S T

    dT ⑥

    臨界磁場 Hcは、温度の上昇に対して単調に減少する関数であるから、T < Tcの場合に超伝導相の

    エントロピーSSは、常伝導相のエントロピーSNに比べ低い値をとることがわかる。

    温度 Tが超伝導転移温度に達すると、臨界磁場 Hc は零になるので、T = Tcの場合 式⑥より、

    N C S CS T S T となる。超伝導転移点において、超伝導相のエントロピーと常伝導相のエン

    トロピーは連続になる。すなわち、相転移に伴い潜熱は発生しないので、ゼロ磁場における超伝導

    転移は二次相転移である。

    最後に、ゼロ磁場における超伝導転移点の比熱 Cの変化を求めよう。

    dQ dS

    C T TdT dT

    より、式⑥を温度 Tで微分すると、

    2 2

    2

    1

    4 4

    C C S C C

    N S C

    H T dH T dS T dH T d H Td d dS T S T H T

    dT dT dT dT dT dT dT

  • - 4 -

    両辺に温度 Tをかけて、比熱 Cで表わすと、

    2 2

    24

    C C

    N S C

    dH T d H TTC T C T H T

    dT dT

    T = Tcの場合、臨界磁場 Hc は零になるので、

    2

    4

    CCN C S C

    T Tc

    dH TTC T C T

    dT

    よって、超伝導転移に伴う比熱のトビは

    2

    04

    CCS C N C

    T Tc

    dH TTC C T C T

    dT

    となる。 2

    8

    CH

    図1 超伝導相の自由エネルギー 図2 超伝導相のエントロピー T = Tcで GS =GNおよびその温度微分が一致 T = Tcで SS =SN

    図 3 超伝導相の電子比熱 T = Tcで比熱の不連続なトビがある

    か 問題1常伝導相の電子比熱および臨界

    磁 界 が 次 式 で 与 え ら れ る 場 合

    NC T T , 2

    0 1C CC

    TH T H

    T

    (1) (1) 常伝導相のエントロピーおよび自

    由エネルギーを求め、温度の関数として

    図示せよ。

    (2) 超伝導相の比熱、エントロピーおよ

    び自由エネルギーを求め、温度の関数と

    して図示せよ。

    (2)

    (3)

  • - 5 -

    第3回 マイスナー効果について

    ジェームズ・クラーク・マクスウェル

    ・マイスナー効果について

    ヴァルター・マイスナー

    電磁気学の復習

    以下に示すマクスウェルの基本方程式は、ガウスの定理、磁荷

    (単磁極)の存在の否定、アンペールの法則、ファラデーの電

    磁誘導の法則を表わすことが知られている。ベクトル解析の微

    分演算子を用いると

    (微分形) (参考 積分形)

    div

    div 0

    rot

    rott

    D

    B

    H i

    BE

    0

    0

    0

    0

    S

    S

    C

    C S

    dS Q

    dS

    d I

    dd dS

    dt

    D n

    B n

    H r

    E r B n

    ここで、E,D,H,B は電場、電束密度、磁場および磁束密度を表

    わす。また、,i は、電荷密度および電流密度を意味する。

    (1)

    マイスナー効果は超伝導体内では磁束密度が常にゼロになるという現象であり,1933 年に

    マイスナー.とオクセンフェルトによって発見された。電気抵抗が零となる現象とともに超伝

    導状態を特徴づける重要な効果である。新しい超伝導物質を発見した場合には、論文にその

    証拠として、零抵抗と反磁性のデータを載せることが必要である。

    さて、超伝導体の磁化率を求めよう。物質中の磁束密度 B は、外部磁場 H と物質の磁化 M

    を用いて、次のように表わされる。

    4 B H M (cgs単位)

    マイスナー状態において、超伝導体内部の磁束密度は 0であるから、0 4 H M

    よって、磁化率の定義より 1

    4

    M=

    H (超伝導体の磁化率)

    (2)

  • - 6 -

    常伝導金属の電流密度は電場に比例し、オームの法則 N j Eが成立する。

    ここで、jN, , E は電流密度、電気伝導率、電場を表わす。

    一方、超伝導の場合、オームの法則は成立しないので、ロンドンは超伝導電流がベクトルポ

    テンシャルに比例すると仮定して、次の方程式を現象論的に導入した。(ロンドン方程式) 2

    cgsSSe n

    mc ①( 単位系)j A

    ここで、e,ns,m,cは電子の電荷、超伝導電子密度、電子の質量、光の速度を表す。 ベクトルポテンシャルの回転は、磁束密度であるから

    = rot ②B A

    ①式の両辺の rotをとり、②式より右辺を磁束密度により表すと、 2 2

    rot rotS SSe n e n

    mc mc ③j A = B

    次にアンペールの法則 4

    rot Sc

    ④B j を用いて、③式の電流密度を消去すると、

    (超伝導体内部では、反磁性電流のため4

    rotc

    H jでないことに注意する)

    2

    rot rot rot4

    S

    S

    e nc

    mc j B B 故に

    2

    2

    4rot rot S

    e n

    mc

    ⑤B B

    ここで、ベクトル解析の公式 2rot rot grad(div ) B B B と変形されるが、

    電磁気学の基本方程式div 0B より、式⑤は以下のようになる。

    2

    2

    2 2

    4 1S

    L

    e n

    mc

    ⑥B B = B

    x≧0 の半無限空間を超伝導体が占めていると仮定する。z 軸の正方向に磁場 Haを印加した場

    合、超伝導内部の磁束密度の分布は、z 成分のみを考慮すればよい。また、磁束密度は x座標

    のみに依存する。よって式⑥の偏微分方程式は次の常微分方程式で与えられる。 2

    2 2

    z z

    L

    d B B

    dx ⑦=

    この微分方程式を解くと、

    0 expz zL

    xB x B

    ただし、 0z aB H

    外部磁場は、超伝導体の表面から内部に向かって指数関数に従って減衰することがわかる。

    磁場侵入の目安の長さを磁場侵入長といい、Lにより表す。通常L= 10-5

    ~10-6

    cm の大きさであ

    るので、バルク(巨視的な)試料に対しては無視できるスケールであるから、超伝導体内部

    には磁場は侵入していないと考えてよい。マイスナー効果は、ロンドン方程式を仮定するこ

    とにより、導出することができる。

    問題2 上の図の配置の場合、超伝導体の表面に流れる超伝導しゃへい電流を求め、その

    方向を図示しなさい。

    し 超伝導体 zz 印加磁場 Ha z

    し 0 x

  • - 7 -

    ・二階微分方程式 0y a y b y の一般解は, 一次独立な解 y1(x),y2(x)を用いて,

    以下のように表わされる。1 1 2 2y c y c y

    特に 2y k y の場合, axy e と解を仮定して代入すると 2 2a k すなわちa k と

    なり、二つの一次独立な解1 2,

    kx kxy e y e を得る。

    ・ベクトル解析の微分演算子 gradf(勾配), divF(発散), rotF (回転) の定義

    gradf f f

    fx y z

    i j k divyx z

    FF F

    x y z

    F

    roty yx xz z

    x y z

    F FF FF F

    x y z y z z x x y

    F F F

    i j k

    F i j + k

    第4回 超伝導体の磁束の量子化について

    超伝導体に磁場を印加した場合、通常はマイスナー効果により、超伝導体内部に磁束が侵入

    することはできない。しかし、ドーナッツ状の超伝導体の穴を磁束が通過することは可能で

    あり、通過する磁束はとびとびの値(量子化された値)をとることが知られている。磁束の

    量子化は超伝導を特徴づける重要な特性のひとつである。

    超伝導電流は、次式で与えられる。 2

    2

    s ss

    n e n e

    m m ①j A

    ここで、ns, e, m は超伝導電子密度、電子の電荷、電子の質量を表わす。rは波動関数

    expA i r r r の位相、A はベクトルポテンシャルである。①式の第二項は、マイスナー効果を導く際に仮定したロンドン方程式と同じものである。

    超伝導体のリングの表面から十分離れた内部を通る閉曲線 Cに沿って式①の両辺の接線線積

    分をとることを考える。ここで試料の内部では、マイスナー効果により磁束密度 B は零であ

    る。また、 rot SB j より超伝導電流も零である。よって、①式の左辺は零となる。

    閉 閉曲線 C(点線)に沿ったベク

    トルポテンシャルの接線線積分

    Cd A rを考える。

  • - 8 -

    2

    02

    s s

    C C

    n e n ed d

    m m ②r A r

    式②の右辺の第二項におけるベクトルポテンシャルに関する接線線積分が閉曲線 C を貫

    く磁束に等しいことに注意する。

    ここで、閉曲線 C に関する接線線積分と法線面積分の関係を表わすストークスの定理を用

    いる。

    0 0

    rotC S S

    d ndS ndS ③A r A B

    また、二番目の等式の変形には、磁束密度とベクトルポテンシャルの関係 = rotB A を用いた。最後の等式の変形は、磁束密度の法線面積分が磁束に等しいことを使った。

    次に式②の右辺の第一項に着目すると、

    gradQ Q Q Q

    P P P P

    QQ

    P P

    d d dx dy dz dx dy dzx y z x y z

    d Q P

    r r i j k i j k

    と計算される。従って、波動関数の位相の勾配 に関する接線線積分は2点の位相の差によって与えられる。

    2点 P,Qにおける波動関数の位相P)、 (Q)は点 P から閉曲線 C に沿って一周して点 P に

    もどるとき、線積分の終点 Q が始点 P に一致して、波動関数は一価関数であることから、

    exp expi P i Q が成り立つ。 よって、 exp 1 exp(2 )i P i Q Ni ただし、N は整数である。

    Q P 2C

    d N ④r

    このように、式②の右辺の第一項における波動関数の位相の勾配 に関する接線線積分が 2の整数倍に等しいことが示せる。

    2

    0 22

    s sn e n eNm m

    0

    NN

    e

    0

    ただし、磁束量子の単位 15 20 2.0678 10 T m

    2

    h

    e

    である。

    よって、超伝導体のリングを貫く磁束が量子化されることが示される。

    02

    問題3 超伝導体のリングを貫く磁束を縦軸に、印加

    磁束extを横軸にとり、 ext 00 2 の範囲において

    図示せよ。ただし、は量子化磁束単位とする。

  • - 9 -

    ・空間内に閉曲線 C があるとする。この閉曲線を縁とする任意の開曲面 S0 を考え、その開曲面

    上の微小な面積要素を dS とする。この面積要素 dSに対する法線ベクトルを n とすると、磁束 Φ

    は次の式で表される。 簡単に言うと磁束密度に面積をかけると磁束になることである。

    0S

    dS B n

    ・ストークスの定理は、ベクトル場の回転を曲面上で面積分したものが、元のベクトル場を曲面の

    境界で線積分したものに一致することを述べたものであり、以下のように記述される。

    0

    rotS C

    dS d A n A r

    ここで S0は積分範囲の面、C はその境界の曲線である。

    左辺は、ベクトル場 Aの回転(渦)を閉曲面内の任意の微小面積要素 dSiを囲む境界 Ciに沿って

    積分し、その値の総和が右辺の閉曲線Cに沿った接線線積分に等しいというものである。 言い

    換えると、線積分と面積分の変換公式のようなものがこの定理である。

    ジョージ・ガブリエル・ストークス(1819- 1903年)

    アイルランドの数学者、物理学者

    ・全微分とは、すべての変数を微少量動かしたときの一次近似での関数の変化量

    2変数関数 ,z f x y を微小量 dx, dy動かした場合、2変数のテイラー展開を適用すると、

    一次近似において

    , ,f f

    f x dx y dy f x y dx dyx y

    となり、関数の変化量は、

    f fdf = dx dy

    x y

    となる。

    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%9E%E8%BB%A2_%28%E6%95%B0%E5%AD%A6%29http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%9A%E7%A9%8D%E5%88%86http://ja.wikipedia.org/wiki/1819%E5%B9%B4http://ja.wikipedia.org/wiki/1903%E5%B9%B4http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%B0%E5%AD%A6%E8%80%85http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%A9%E7%90%86%E5%AD%A6%E8%80%85

  • - 10 -

    超伝導体のリングを貫く磁束は、外部による印加磁束extと超伝導体のリングの表を流

    れる超伝導電流による磁束SC との和になる。印加磁束a は量子化条件を満たす必要はな

    いので、超伝導電流による磁束SC が量子化条件を満たすように適当に調節されることに

    よって、磁束の量子化は実現される。

    例えば、印加磁束の大きさが磁束量子の値よりも小さく、0 ext 02 のとき、不

    足した分の磁束は超伝導電流による磁束SC 0 ext 0 によって補われる。

    また、印加磁束の大きさが磁束量子の値よりも大きく、0 ext 03 2 のとき、超

    過した分の磁束を打ち消す方向に超伝導電流が流れる。すなわち、超伝導電流による磁束

    SC 0 ext 0 が外部磁場と反対方向に生じて、磁束の量子化は実現される。

    (a) 0 ext 02 の場合 (b) 0 ext 03 2 の場合

    ext ext

    ・コヒーレンスの長さ

    磁場侵入長とともに超伝導体に特徴的な基本的な長さとして、コヒーレンスの長さがあ

    る。超伝導体を小さく分割したときに、コヒーレンスの長さは超伝導性を失う目安の長さ

    である。また、常伝導相と超伝導相との境界において中間相の空間的な広がり(超伝導電

    子密度が変化する領域)を意味する。

    この二つの長さの比によって、超伝導体のタイプが区別される。

    のものを第Ⅰ種の超伝導体、 のものを第Ⅱ種の超伝導体とよぶ。純粋な金属の場合Sn,Pb,Al 等)、Nbを除いて第Ⅰ種の超伝導体である。一方、超伝導マグネット材

    料として利用される NbTi,Nb3Sn,MgB2 等の合金や金属間化合物の実用超伝導材料や銅酸化

    物高温超伝導物質は、第Ⅱ種の超伝導体である。

    fu 不足した磁束を補う方向に超伝導

    電流が流れる

    不 超過した磁束を打ち消す方向に超

    伝導電流が流れる

  • - 11 -

    第5回 第Ⅰ種及び第Ⅱ種の超伝導体について

    第Ⅰ種超伝導体 (半無限空間)

    印加磁場 コヒーレンスの長さ

    Ha

    B=0

    図1 超伝導電子密度と磁束密度

    2

    8

    aH

    磁場排除のエネルギー

    2

    8

    CH

    超伝導凝縮エネルギー

    図2 超伝導体表面付近での自由エネルギーの変化

    第Ⅰ種超伝導体の場合、であるから、印加磁場を臨界磁場と同程度と仮定すると、

    2

    08

    CHG

    となる。

    一方、第Ⅱ種超伝導体の場合であるから、

    2

    08

    CHG

    となり、磁場を侵入させた方が表面の自由エネルギーが下がることがわかる。

    例題 第Ⅱ種超伝導体の表面付近での自由エネルギーの変化を第Ⅰ種超伝導体の場合(図1、2)

    を参考にして図示しなさい。

    下部臨界磁場 混合状態 上部臨界磁場

    第Ⅱ種超伝導体の混合状態

    (1)

    地 ns:超伝導電子密度 (表面に近づくに従い、超伝導電子の数は減少する)

    B:磁束密度 (表面から遠ざかるに従い、磁束密度

    は減少し、内部で零になる)

    L :磁場侵入長 超伝導体の表面では超伝導電子の数が少ない

    ので、0 x の範囲で常伝導状態であると

    考えると、表面の自由エネルギーは、超伝導

    体の内部に比べて、2

    8

    CH

    だけ高い。

    一 一方、超伝導体に磁場 Haを印加すると、超伝

    導体の表面には、0 x の範囲で磁場が侵

    入する。従って、表面の領域は、超伝導体の

    内部に比べて自由エネルギーは 2

    8

    aH

    低下する。

    以上をまとめると、超伝導体表面の自由エネ

    ルギーは、その内部に比較して増加する。 2 2

    8 8

    C aH HG

    自由エネルギー

  • - 12 -

    っ 磁場が零のときは、第Ⅰ種超伝導体と第Ⅱ種超伝導体の特性に変化はないが、磁場を印加

    した場合に磁化特性は大きくことなる。純粋な金属の第Ⅰ種超伝導体の磁化は、熱力学的臨界

    磁場Cまで完全反磁性(マイスナー効果)を示して磁場を排除する。印加磁場が臨界磁場に

    達すると、超伝導状態から常伝導状態に転移して磁場が侵入する。

    一方、第Ⅱ種超伝導体の磁化特性は、熱力学的臨界磁場Cよりも低い磁場(下部臨界磁場

    Hc1)から磁束が侵入を開始する。印加磁場が上部臨界磁場(Hc2)に達すると、超伝導状態を完

    全に消失する。印加磁場が 1 2C a CH H H の範囲にある場合、磁束量子が渦糸状に超伝導体を

    貫通するので、渦糸状態または混合状態とよばれる。

    第Ⅱ種超伝導体の量子化磁束

    付近の超伝導電子数と磁場変化

    細い円柱状の量子化磁束が

    混合状態の主役

    印加磁場 Haが下部臨界磁場 Hc1に達すると、量子化

    磁束が進入を始める。このとき半径の円柱状の領域は

    常伝導相と考えられるので、自由エネルギーは回りの

    超伝導体に比べて、2

    2

    8

    CH

    だけ高い。一方、

    0 r の範囲で磁場が侵入する。従って、磁束が侵

    入している領域は、周囲に比べて自由エネルギーは2

    2

    8

    aH

    低下する。Ha= Hc1の場合、自由エネルギー

    の増加分と減少分が等しくなると考えられるので、2 2

    2 21 08 8

    C CH H

    。∴1C CH H

    次に、印加磁場 Haが上部臨界磁場 Hc2に達すると

    超伝導体の体積のほとんどを多数の量子化磁束が覆う

    と考えると、磁束密度×面積=磁束の関係より

    2

    2 0CH ∴0

    2 2CH

    ただし、は磁束量子単位である。

    問題4 第Ⅱ種超伝導体の臨界磁場に対して、 1C CH H を示

    しなさい。(式①を使う)また、 2C CH H を示しなさい。た

    だし、後半の不等式は下部臨界磁場 Hc1 を磁束量子単位と

    磁場侵入長を用いて表し、式②からを消去することで示さ

    れる。

    じ 磁化率の定義 4 B H M

    H

  • - 13 -

    j「

    表1.超伝導物質の臨界温度、コヒーレンスの長さおよび磁場侵入長

    表2.超伝導物質の臨界温度、下部臨界磁場、臨界磁場および上部臨界磁場

    例題 第Ⅱ種超伝導体の

    上部臨界磁場 Hc2を

    0

    2 2CH

    左の表のデータを用いて

    計算しなさい。ただし、 15 2

    0 2.0678 10 T m

    である。

    (a) Nb-Ti

    (b)Nb3Sn

    (c)YBCO

  • - 14 -

    第6回 超伝導エネルギーギャップについて

    超伝導状態では、多数の伝導電子は特殊な秩序状態を形成している。このことを理解するため

    に、強磁性体の磁気秩序について復習する。

    例えば鉄のキュリー温度(強磁性転移温度)は Tc = 1043Kであり、図のようにキュリー温度を,

    Tc と表します。(キュリー婦人の旦那さん、ピエール・キュリー氏が発見した現象なのでこの名

    がついています。)

    超伝導エネルギーギャップの温度特性

    常伝導電子(準粒子)

    低温 超伝導電子(電子対) Tc付近の高温 電子対は一部壊れ、常伝導電子になる

    地 原子の磁気モーメント

    低 低温では原子の磁気モーメントが同一方

    向に整列するが、温度を上げると熱エネル

    ギーの影響で方向が揺らぎ始めます。ある

    温度で以上では完全にバラバラになり、自

    発磁化は 0 となります。この温度のことを

    キュリー温度とよぶ。

    自 自発磁化 Mのことをオーダーパラメタとよ

    び、物質の磁気秩序の強さを表わす量であ

    る。強磁性の現象は、交換相互作用という

    量子力学的な力が作用することで説明され

    る。

    超伝導状態において、多数の伝導電子は

    電子対を形成して、超伝導電子になる。 この

    秩序状態は、超伝導エネルギーギャップ(単

    位は eV)とよばれるオーダーパラメタ(T)によ

    り定量化される。温度を上げると熱エネルギ

    ーの影響で、電子対が壊れ始めます。 Tc付

    近の高温領域において 電子対は一部壊れ、

    常伝導電子(準粒子)になる。

    超伝導体では,電子の励起エネルギーに

    ギャップが存在するため,電子の散乱はでき

    なくなる.常伝導体では個々のエネルギーは

    変えずに,運動量の方向 だけを変えることが

    可能であるのに対して,超伝導体の個々の電

    子の運動量の方向を変えるには電子対を壊

    さなければならず,エネルギーを高くしてやら

    ねばならない.

    場 × ×

  • - 15 -

    高校生レベル(初級編) 大学生レベル(中級編) 格子振動モデル

    ジョン・バーディーン レオン・クーパー

    (ノーベル賞 2回受賞)

    従来型超伝導体の超伝導転移温度 Tcは、BCS 理論によって電子格子相互作用の大きさ V

    と強く関係することがわかっている。基底状態の超伝導エネルギーギャップは、次式で与

    えられる。ただし、はフェルミ面から測った場合のエネルギー、N(0)はフェルミ面付近の

    状態密度、Dはデバイ振動数とする。

    D

    2 20

    d

    D 11sinh(0)N V

    例題1 式①をについて解き、 (0) 1N V の場合の

    超伝導エネルギーギャップの近似式

    1

    (0)D2

    N Ve

    を求めよ。

    BCS理論(Bardeen Cooper Schrieffer)

    1957年に発表されたジョン・バーディーン、レオン・クーパ

    ー、ロバート・シュリーファーらの BCS理論により、超伝導

    現象の基本的なメカニズムが解明された。 (1972年ノー

    ベル物理学賞)

    超伝導状態は、多数の電子がクーパー対を作っている

    状態である とBCSは仮定した

    そ 双曲線関数の定義

    cosh2

    x xe ex

    , sinh

    2

    x xe ex

    sinh

    tanhcosh

    xx

    x ,

    2

    1tanh

    coshx

    x

  • - 16 -

    有限温度の場合、超伝導エネルギーギャップは次式で与えられる。

    D 2 22 20

    tanh 21

    (0)

    kT d

    N V

    この式を数値的に解くと超伝導エネルギーギャップの

    温度特性が得られる。

    特に、T=Tcのとき、 0T であるから、式②は

    D

    0

    tanh 21

    (0)

    ckT d

    N V

    ③ と変形される。

    次に 2 cx kT とおき、式③の右辺の部分積分を実行すると

    DD D

    22 2 2

    00 0

    tanhlog tanh log cosh

    kTkT kTcc cxdx

    x x x x dxx

    となる。

    ただし、 D ckT と仮定し、0 0

    limlog tanh limlog 0x x

    x x x x

    不定形の極限に関するロピタルの定理を適用する。

    20

    4log cosh log ex x dx

    を利用すると、

    ③式の右辺は、 D D24log log log2 c c

    eekT kT

    となる。ここで定数 0.577 はオイ

    ラー数とよばれる。よって、最終的に BCS 理論の有名な結論である 1

    (0)D1.13

    N VCkT e

    ④を得る。(

    1

    (0)D1.13

    N VCT e

    ④ )

    この式は、超伝導転移温度の大きさが、電子格子相互作用の大きさ Vで決まることを示唆

    しており、高温超伝導物質開発の指針となるものである。

    例題1の結果を用いて、式④から超伝導転移温度と超伝導エネルギーギャップの関係が得

    られる。 1.13 2CkT ゆえに2

    3.54CkT

    問題5 超伝導転移温度の評価式④と超伝導エネルギーギャップと Tcに関する普遍的な

    関係式⑤について、以下の問いに答えよ。

    (1)④式を変形して、以下の超伝導金属の N(0)Vの値を算出しなさい。

    ただし、Dはデバイ温度とする。

    (a) Al: Tc=1.2 K, D=375 K (b)Sn :Tc=3.75 K, D=195 K (c)Pb : Tc=7.22 K, D=96 K. (2)⑤式の左辺を計算し、右辺の値と比較しなさい。

    トンネル効果の測定より、超伝導エネルギーギャップ 2は以下の値になる。

    (a) Al: 2=0.32 meV, (b) Sn : 2=1.11 meV, (c) Pb : 2=2.7 meV. (1eV=1.16×104 K)

    sinhtanh

    cosh

    xx

    x

    lim tanh 1x

    x

    0 0lim tanh lim

    x x

    x xx x

    e ex

    e e

    0 00 0

    2lim limx x

    xx

    e e

    微分積分学で習ったロピタル

    の定理より、

    0 0

    loglim log lim

    1x x

    xx x

    x

    0 0

    loglim lim 0

    1x x

    xx

    x

  • - 17 -

    常伝導金属の場合,伝導電子はパウリの

    排他律に従ってフェルミエネルギーまで

    占有されることを固体物理学で学んでい

    る。超伝導状態の金属の場合、図のように

    フェルミエネルギー付近にエネルギーギ

    ャップ 2が生じることが知られている。

    超伝導エネルギーギャップの大きさは、超

    伝導物質により異なる。

    また、常伝導状態の電子は、フェルミ粒

    子として振舞うが、超伝導状態の電子は、

    格子振動を媒介にして電子対を組み、電荷

    2e、スピン 0のボース粒子のようにふるま

    う。すなわち、多数の電子対(超伝導電子)

    は、ボース凝縮して超伝導の基底状態を形

    成する。

    格子振動について

    図のように、無限個の質量 m のおもりをバネ定数 k のバネに連結した場合、左から

    n-1,n,n+1番目のおもりのつりあいの位置からの変位を各々un-1,un,un+1とする。n番目のお

    もりは、左側のバネから 1n nk u u の力を受け、右側のバネから、 1n nk u u の力を

    受ける。従って、n番目のおもりに関する運動方程式は、

    2

    1 1 1 122n n n n n n n n

    d um k u u k u u k u u u

    dt ①

    となる。

    いま、おもりのつりあいの位置からの距離を aとし、n番目のおもりの位置を x=naとす

    ると、 1 1( ), ( ), ( )n n nu u x u u x a u u x a である。

    2 2

    2 2

    du x d u x au x a u x a

    dx dx 、

    2 22 2

    du x d u x au x a u x a

    dx dx

    等のテイラー展開を式①に代入し、高次の項を無視すると、 2 2

    2

    2 2

    u um k a

    t x

    ②となる。連続体近似により、式①は波動方程式に変換される。

    2 22

    2 2

    u uv

    t x

    ただし、速度

    2kav

    m とする。

  • - 18 -

    第7回 超伝導トンネル効果(ジョセフソン効果)について

    ブライアン・ジョセフソン

    (1973年ノーベル物理学賞)

    低 ジョセフソン効果は、弱く結合した 2つ

    の超伝導体の間に、超伝導電子対のトンネ

    ル効果によって超伝導電流が流れる現象

    である。量子物理学で学習した電子のトン

    ネル効果を超伝導電子対に拡張したもの

    である。これらの現象は、両側にある超伝

    導体の波動関数の位相差によりあらわれ

    るものです。この効果は、超伝導量子干渉

    計(SQUID)等に応用されている。

    左図に、絶縁体を挟んで置かれた二つの

    超伝導体の模式図を示しています。左側

    の超伝導体 1 の中の波は赤線で、右側の

    超伝導体 2 の波は青線で示しています。

    絶縁体が薄い場合(数ナノメートル程

    度)、それぞれの波が絶縁体を乗り越えて

    他方の超伝導体にしみ出します(破線の

    波)。別々の超伝導体中の波は左図のよう

    に当然ずれています。この時、このずれ

    を無くして同じ波にしようとして、一方

    の超伝導体から他方の超伝導体に電流が

    流れます(直流ジョセフソン効果)。この

    電流は電圧がかかっていない状態でも流

    れるため、通常の物質で生じるトンネル

    効果とは異なっており、超伝導体に特有

    の現象です。

    0 a x

    V(x)

    V0

    0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1

    0 1 2 3 4 5

    T

    E/V0

    a=0.1 nm

    V0=1 eV

    (透過率)

    (粒子のエネルギー)

    トンネル効果は、微視的粒子が、古典的には乗り越え

    ることができないポテンシャル(エネルギー)障壁を、

    量子効果により乗り越えてしまう(透過してしまう)

    現象である。粒子のエネルギーE が山型ポテンシャル

    V0より小さい場合(E< V0の場合)、透過率 Tは次式で

    与えられる。

    12 2

    0

    0

    sinh1

    4

    V aT

    E V E

    古典論では、透過率は 0であり、反射率は1になる。

    量子論では透過率が有限の値をとり、粒子の波動性が

    トンネル効果を与える。

    左の図において、横軸は粒子のエネルギーを表わす

    が、山型ポテンシャルの高さにより規格化されている

    ことに注意すると、トンネル効果に対応する領域は E/

    V0=1 を表わす点線の左側の領域である。

    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B6%85%E4%BC%9D%E5%B0%8Ehttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB%E5%8A%B9%E6%9E%9Chttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB%E5%8A%B9%E6%9E%9C

  • - 19 -

    第8回 銅酸化物系高温超伝導体について

    ベドノルツ ミューラー

    1987年 ノーベル物理学賞

    Tc,on =~31K:超伝導転移開始温度(オンセット温度)

    Tc,zero=~10K : 超伝導転移温度(零抵抗温度)

    ①ランタン系 (La-Ba-Cu-O、214系)LaCuO4 3つの結晶構造(変形ぺロブスカイト構造)

    T相(Tc=37K) T* 相 T’ 相 電子ドープ型

    単層CuO2 面を有する銅酸化物の例

    1986年 ベドノルツとミューラーが La-Ba-Cu-O系(ランタン系

    Tc~40K )発見した。 その後発見された転移温度が液体窒

    素温度(77 K, −196 ℃,)を越える一連の銅酸化物高温超伝導

    物質とその超伝導現象のことを意味している。

    主に3つの物質群に分類される。

    ①La-Ba-Cu-O系 (ランタン系 Tc~40K )

    液体窒素温度以上で超伝導

    ②YBa2Cu

    3O

    7-δ (イットリウム系 Tc~93K)

    ③Bi2Sr

    2Ca

    2Cu

    3O

    10 (ビスマス系 Tc~109K)

    銅酸化物高温超伝導体は全てペロブスカイト構造を基礎とした

    結晶構造

    ペロブスカイト構造 ABO3 型をベ

    ースにした結晶構造 例 LaCuO4

    Aサイト:ランタンイオン

    Bサイト:銅イオン(八面体の中心)

    Oサイト:酸素イオン(八面体の頂点)

    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%AB%E7%89%A9%E7%90%86%E5%AD%A6%E8%B3%9Ehttp://ja.wikipedia.org/wiki/1986%E5%B9%B4http://ja.wikipedia.org/wiki/1986%E5%B9%B4http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B6%B2%E4%BD%93%E7%AA%92%E7%B4%A0%E6%B8%A9%E5%BA%A6http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B6%B2%E4%BD%93%E7%AA%92%E7%B4%A0%E6%B8%A9%E5%BA%A6http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%83%AB%E3%83%93%E3%83%B3http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%82%B9%E5%BA%A6http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%AD%E3%83%96%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%88%E6%A7%8B%E9%80%A0http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%90%E6%99%B6%E6%A7%8B%E9%80%A0http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%AD%E3%83%96%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%88%E6%A7%8B%E9%80%A0

  • - 20 -

    銅酸化物高温超伝導体の相図

    2次元 CuO2 面

    1.高温超伝導物質は2次元 CuO2 面をもつ物質である。

    2.母物質は反強磁性絶縁体であり、キャリアドープにより超伝導が出現する。

    3.クーパー対の波動関数は、d波の対称性

    ②イットリウム系(YBCO,123系)超伝導体 YBa2Cu

    3O

    6+ T

    c~91-93K

    2層の CuO2面

    Y123 Y247=Y124+Y123 Y124

    歴史上初めて液体窒素温度(77K)以上で超伝導を示した物質

  • - 21 -

    ③ビスマス系(BSCCO,Bi-2223系)

    CuO2面 1枚 2枚 3枚 (単位胞あたり)

    Bi-2201 (n=1) Bi-2212 (n=2) Bi-2223 (n=3)

    Tc~20K T

    c~80K T

    c~110K

    1988年日本人の前田弘により発見(科技庁・金材技研)

    ・CuO2 面の枚数が増えると、超伝導転移温度が増大する?

    ・これまでの研究により CuO2 面の枚数と Tcは必ずしも相関はない。

  • - 22 -

    銅酸化物高温超伝導体の電子状態を記述するモデル (t-J模型)

    t: ホールの運動エネルギー(ホールとスピンの位置の交換のエネルギー)

    J:スピン間の反強磁性相互作用の大きさ

    Cu の電子配置は、3d104S1から Cu2+ 3d9となる。また、酸素は O2- 2P6である。さらに、銅

    イオンの 3d軌道は、八面体の頂点の酸素イオンのつくる電場により、t2g軌道と eg軌道に

    分裂する。最終的に 3dx2-y2軌道が最もエネルギーの高い軌道になる。

    2個のホールが離れている(a)の場合、8Jのエネルギーの損失がある。一方、2個のホール

    が隣接している場合は、7Jのエネルギーの損失ですむので、ホールどうしが近くにいる方が

    エネルギーが低下する。これは、超伝導電子対の引力の起源と考えられる。