電磁気学2講義第6回 10/30)4.1 polarization(分極)...
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§4.1 Polarization(分極)
電磁気学2講義第6回(10/30)�Chapter 4 Electric Fields in Matter(物質中の電場)
l この章では,物質(特に誘電体)中の電場について学ぶ.
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l 多くの物質は導体(conductors)か絶縁体(insulators)に分類される.絶縁
体は誘電体(dielectrics)とも呼ばれる.
l 導体中では,電子は原子から離れて自由に動き回ることができる.
l それに対して,絶縁体(又は誘電体)では電子はすべて原子や分子に強く
結びつけられている.電子は原子,分子の内部ではある程度移動すること
ができるが,そこから離れることはできない.
§4.1.1 Dielectrics(誘電体)
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絶縁体(又は誘電体)では電子はすべて原子や分子に強く結びつけられている.
導体中では,電子は原子から離れ
て自由に動き回ることができる.
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§4.1.2 Induced Dipoles(誘起双極子) l 電気的に中性な原子を電場の中に置くとどうなるだろうか?
+q
�q
原子核
電子雲
+q
�q
E
l 電子と原子核は反対方向に力を受けるので,電荷分布に片寄りが生じて,
電気双極子モーメントが誘起される.(原子分極)
l 電場が弱ければ双極子モーメントは電場に比例する.
p = �E α : 原子分極率
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Example 4.1
l 図(b)のように,電子雲の中心が原子核から距離dだけずれたとする.
Prob.2.12の結果より,一様に分布した電荷-qによって電荷+qの位置
に作られる電場の大きさは
図(a)のように,中性原子を正の点電荷+q(原子核)と,点電荷を中心とする半径aの球内に一様な密度で分布する-qの負電荷(電子雲)からなるものとみなす.このような簡単な原子モデルについて,分極率を求めよ.
(a) (b)
Ee =1
4⇥�0
qd
a3
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l つり合いの条件は以下で与えられる.
l これより誘起された双極子モーメントの大きさが求まる.
l よって,原子分極率が求まる.
E =1
4⇥�0
qd
a3
p = qd = (4⇥�0a3)E
� = 4⇤⇥0a3
l 水素原子の電子雲の広がりはBohr半径程度 a0 = 5.29� 10�11m
�/4⇤⇥0 = 0.148� 10�30m3
実験的に求められた水素原子の分極率は
�/4⇤⇥0 = 0.667� 10�30m3
桁は合っている.
§4.1.3 Alignment of Polar Molecules (極性分子の配向)
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l 分子がはじめから双極子モーメントを持っている場合もある.例えば,
水の分子は図のような形をしており上下非対称であるため,電子分布
は少し下に片寄っている.その結果として水分子は上向きの双極子
モーメントを有する.
l このような分子を極性分子(polar moleculde)とよぶ.
l 極性分子を電場中に置くと何が起こるだろうか?
極性分子に働く力
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l 双極子を構成する電荷の分布を一般にρ(r)と表すことにする.双極子
全体にかかる正味の力は
F =�
�(r)E(r)d⇥
l 電荷が存在する領域では電場がゆるやかに変
化すると仮定し,電場を原点付近で展開すると
l これより双極子に働く力は
l 電荷の総和がゼロのとき( ) Q = 0
F = (p ·�)E
極性分子に働くトルク
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l 電場が一様であれば,正電荷に働く力と負電荷に働く力が打ち消し
合って双極子に働く正味の力はゼロとなる.
l しかし,双極子にはトルクが働く.
N = p�E
l このトルクは双極子モーメントを電場の向
きにそろえるように働く.
l したがって,自由に回転できる極性分子は
電場がかかると電場の方向を向く.
N =
⇤r� � �(r�)Ed⇥ � =
�⇤r��(r�)d⇥ �
⇥� E = p� E
双極子のエネルギー
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l 外部電場の中に置かれた双極子のエネルギーを考える(双極子その
ものを構成するために必要なエネルギーはここでは含めない).
U =�
�(r)V (r)d⇥
l 電荷が分布している領域でポテンシャルがゆるやかに変化していると
仮定してVを原点付近で展開すると
l これより双極子のエネルギーは
l 電荷の総和がゼロのとき( ) Q = 0
U = �p · E
U ⇥ V (0)�
�(r)d⇥ +⇤V ·�
r�(r)d⇥ = QV (0)� p · E(0)
双極子-双極子相互作用
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l 二つの双極子があるときのエネルギーを求める. l 双極子p1が双極子p2の位置に作る電場は
r
p1
p2
E =1
4⇥�0
1r3
[3(p1 · r̂)r̂� p1]
l エネルギーは だから U = �p · E
U =1
4⇥�0
1r3
[p1 · p2 � 3(p1 · r̂)(p2 · r̂)]
双極子-双極子相互作用
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誘電体を電場の中に置くと,何が起こるか? §4.1.4 Polarization (分極)
1. 誘電体が中性原子から構成されている場合
E = 0
E
• 電場がないとき,個々の原子は双極子モーメントを持たない. • 電場は各々の原子に小さな同じ向きの双極子モーメントを誘起する.
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2. 誘電体が極性分子から構成されている場合
E = 0
E
• 電場がないとき双極子は熱運動のため乱雑な方向をむいている. • 電場がかかると双極子はトルクによって電場の向きに揃う傾向を示す.
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l 上記の異なる二つのメカニズムは基本的には同じ結果をもたらす.つま
り,物質中では多数の小さな電気双極子が同じ方向に揃っている.この
ような状態を,物質が分極している(polarized),という.
l この効果を特徴付ける指標として分極(polarization)を定義する(誘電分
極(dielectric polarization)と呼ぶこともある).
l N個の電気双極子モーメントが体積ΔV中に存在しているとき,分極は
l 今後は,物質を分極させるメカニズムが上記二つのうちのどちらである
か,ということは区別しないことにする.
P � 単位体積あたりの双極子モーメント
P =�N
i=1 pi
�V一般には位置の関数になる.