認知症のおはなし · 2018-08-23 · 認知的フレイルとは何か?...
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認知症のおはなし~フレイル学習会シリーズ~
東大阪生協病院 病院長
神経内科 橘田 亜由美
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フレイルとは? 復習しましょう
「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」
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フレイルの3要素
認知機能低下
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認知的フレイルとは何か?
認知的フレイルは,①身体的フレイルと認知機能障害が共 存すること,②アルツハイマー型もしくはそのほかの認知症でないことの双方 を満たす状態として IANA/IAGG が操作的に定義した。診断基準が定まっていないが,認知的フレイルの頻度は数%(1~5 %)程度と推 定される.
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フレイルの診断基準
• フレイルの基準には、さまざまなものがありますがFriedが提唱したものが採用されていることが多いです。Friedの基準には5項目あり、3項目以上該当するとフレイル、1または2項目だけの場合にはフレイルの前段階であるプレフレイルと判
断します。
①体重減少:意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減
少
②疲れやすい:何をするのも面倒だと週に3-4日以上感じる
③歩行速度の低下
④握力の低下
⑤身体活動量の低下
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フレイルの定義における認知症の位置づけ
• 結局、フレイルは身体的な虚弱を中心に定義されており、認知的フレイル単独の予防や対策についての研究はあまり進んでいないようだ。
• 認知機能の低下や認知症の合併は、身体的フレイルの促進因子としてとらえられている側面が大きい様子。
• しかし、フレイルが前要介護状態であるなら、認知症自体が要介護になる要因の大きな部分を占めており、今後、健康寿命を延ばす取り組みにおいて、認知症に対する対策はフレイル対策と同様非常に重要になると考えます。
その立場で、本日は認知症についてお話します。
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認知症のイメージを変えよう!
①一番かかりたくない疾患は?壮年層:がん
老年層:認知症 という回答が一番多い
②認知症のイメージ・診断されたら人生の終わり
・何もわからなくなり、妄想や不穏や徘徊などのBPSDが必ず出て、周辺にものすごく迷
惑をかける病気
③認知症に負のイメージが強いのはなぜか?・認知症の早期発見、進行予防、BPSDを起こさない対策、治療が長年なかった。
自然経過のまま、悪化してBPSDがいっぱいの姿を「認知症」のイメージとして固定され
ている。
④これからの認知症のとらえ方を一緒に考えましょう
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Q1これは何の有病率推計でしょう?
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Q1 これ何の有病率の推移予測でしょう?
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○ 65歳以上高齢者のうち、○○○高齢者が増加していくと推計されていま
す。
認知症高齢者の将来推計
※「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別
研究事業 九州大学 二宮教授)による速報値
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これからは認知症と共に生きる時代
認知症を持った人と共に生きる時代
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認知症とは何か?
• 一度正常な知能の発達を遂げた後に、脳の変性疾患や脳血管障害によって、記憶や思考などの認知機能の低下が起こり、6カ月以上にわたって、
日常生活に支障をきたしている状態
↓
日常生活に支障をきたしていなければ認知症 という範疇には定
義的には入らない。
★ただし、本人は支障をきたしていないと思っていても、周囲は支障を
きたしていると認識している場合もあるので、その判断には身近な人からの聴取も必要。
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認知症の物忘れと年相応の物忘れの違い
• 物忘れには「加齢」によるものと「認知症」が原因となるものがあります。前者は、脳の生理的な老化が原因で起こり、その程度は一部の物忘れであり、ヒントがあれば思い出すことができます。本人に自覚はありますが、進行性はなく、また日常生活に支障をきたしません。
• 後者は、脳の神経細胞の急激な破壊による起こり、物忘れは物事全体がすっぽりと抜け落ち、ヒントを与えても思い出すことができません。本人に自覚はないが、進行性であり、日常生活に支障をきたします。
進行性年齢相応を超えて進行
エピソードごと忘れる
生活に支障がある
物忘れの自覚がないことが多い
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物忘れはするけれど、生活能力は維持できている人もいるけど?
• 健常者と認知症の中間にあたる、MCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)という段階(グレーゾーン)が
あります。MCIとは、認知機能(記憶力、言語能力、判断力、計算力、遂行力など)に多少の問題が生じていることが確認できますが、しかし日常生活に支障がない状態のことです。
MCIの段階で認知機能の低下にいち早く気づき、対策を行うことが認知症予防にはとても大切です。
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MCIは必ず認知症に移行するの?
• 正常高齢者の認知症発症率は年1~2%
• MCIからの認知症発症率は年10%
• 予防の取り組みによりMCIから正常群に戻るケースもある
• 予防への研究が進められている:金さん銀さん
・デュアルタスク ・社会的交流と役割
などなど
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MCI こそ、認知症分野のフレイルです。前要介護状態・
・MCIや初期認知症を発見しよう
・認知症は怖いけれど怖くない!早期発見、早期進行抑制の取り組みで要介護状態になるのを防ぐ!
・それでも認知症は進んでしまったら、BPSDを起こ
さない関り、なるべく残存機能を維持できる取り組み!
・ピア・アクションの推奨!
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認知症や認知機能の低下を早めに見つけるためのサイン
①同じものを何度も買ってくる
②大切なものを何度もなくす
③ちょっとしたエピソードを忘れている。(一緒に見ていたニュースの内容など)
④物の名前が出てこない
⑤意欲がなくなったり、いつもしていることが億劫になる。今までできていたことができなくなる。
⑥怒りっぽくなったり、人の話を受け入れなくなる
⑦約束を忘れる
などなど
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早期発見:自分編
• いろいろなスクリーニングテストが出ています。やってみてください。
結果を悲観することはない。何度もやってみてください。
①記憶
②見当識
③構成能力:時計描画、立方体描画
④実行能力
⑤判断力
⑥言語能力
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早期発見:他人編(家族含め)
• おかしいと思ってもはばかられて「指摘できない」
• 指摘しても、拒絶されて、指摘を受け入れてくれない。しまいに怒り出す。
• 一緒に病院に行こうというと「人をボケ老人扱いして」と人間関係が崩れてしまう
• 受診拒否
• 内服拒否(飲んだ飲んだと口先だけは言うことも)
• 危険なのに車の運転をやめてくれない
① 一緒に脳ドック受けてみない?
②班会でみんなで一緒に認知症早期発見チェックを行う
③車の運転講習で認知症チェックがあるので、それを受けるように場合によれば警察に相談する。
④大事なことは認知症なんて早く見つけて極力進まないようにしたらいいのよ。みんな歳が行くとなるものよ。その人らしく生きるために早期発見と予防の薬を飲もう、というように、認知症が困ったものという観念で伝えないこと。
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進行してしまった認知症の様々な問題
• 高度なBPSD(周辺症状)
• サービス拒否、支援拒否
• 経済的に介護保険やサービスが受けられない
• 家族など支援者がいない
• 認知症の自覚がなく、危険行為を繰り返す。運転など。
• 暴力、暴言、徘徊、妄想
• 弄便などの不潔行為
• 作話
• 異食行動・火の不始末
• 性的な逸脱
• 浪費 等々
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Q2 認知症とアルツハイマー病は別の病気である。○か×か?
認知症
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■アルツハイマー型◆脳内にたまった異常なたんぱく質により神経細胞が破壊され、脳に萎縮がおこります。【症状】
昔のことはよく覚えていますが、最近のことは忘れてしまいます。軽度の物忘れから徐々に進行し、やがて時間や場所の感覚がなくなっていきます。
■脳血管性認知症◆脳梗塞や脳出血によって脳細胞に十分な血液が送られずに、脳細胞が死んでしまう病気です。高血圧や糖尿病などの生活習慣病が主な原因です。【症状】
脳血管障害が起こるたびに段階的に進行します。また障害を受けた部位によって症状が異なります。
■レビ-小体型認知症◆脳内にたまったレビ-小体という特殊なたんぱく質により脳の神経細胞が破壊されおこる病気です。【症状】
現実にはないものが見える幻視や、手足が震えたり筋肉が固くなるといった症状が現れます。歩幅が小刻みになり、転びやすくなります。
■前頭側頭葉型認知症◆脳の前頭葉や側頭葉で、神経細胞が減少して脳が萎縮する病気です。【症状】
感情の抑制がきかなくなったり、社会のルールを守れなくなるといったことが起こります。
(その他の凡例)■アルコール性■混合型■その他
認知症の種類(主なもの)
各説明は、全国国民健康保険診療施設協議会「認知症サポーターガイドブック」を元に作成データは、「都市部における認知症有病率と認知症の⽣活機能障害への対応」(H25.5報告)及び『「認知症⾼齢者の⽇常⽣活⾃⽴度」Ⅱ以上の⾼齢者数について』(H24.8公表)を引用
認知症にはその原因などにより、いくつか種類があります。
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認知症の種類と頻度
• その他の認知症・嗜銀顆粒性認知症
・神経原線維変化型認知症
・意味性認知症(FTDに属す)
・変性疾患に伴う認知症(PSP、PD、
CBD等)
・薬物による認知症(特にアルコール)
・ウェルニッケ脳症・VitB12不足等の代謝性
❤治る可能性のある認知症水頭症・甲状腺機能低下症
ビタミン不足など代謝性認知症
等
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認知症の症状
周辺症状
記憶障害物事を覚えられなくなったり、思い出せなくなる。
理解・判断力の障害考えるスピードが遅くなる。家電やATM などが
使えなくなる。
見当識障害時間や場所、やがて人との関係が分からなくなる。
実行機能障害計画や段取りをたてて行動できない。
中核症状徘徊外に出て行き戻れなくなる
徘徊外に出て行き戻れなくなる
妄想物を盗まれたなど事実でないことを思い込む
妄想物を盗まれたなど事実でないことを思い込む
幻覚見えないものが見える、聞こえないものが聞こえるなど
幻覚見えないものが見える、聞こえないものが聞こえるなど
暴力行為自分の気持ちをうまく伝えられない、感情をコントロールできないために暴力をふるう
暴力行為自分の気持ちをうまく伝えられない、感情をコントロールできないために暴力をふるう
不潔行為風呂に入らない、排泄物をもてあそぶなど
不潔行為風呂に入らない、排泄物をもてあそぶなど
人格変化穏やかだった人が短気になるなどの性格変化
人格変化穏やかだった人が短気になるなどの性格変化
抑うつ気分が落ち込み、無気力になる
抑うつ気分が落ち込み、無気力になる
せん妄落ち着きなく家の中をうろうろする、独り言をつぶやくなど
せん妄落ち着きなく家の中をうろうろする、独り言をつぶやくなど
全国国民健康保険診療施設協議会「認知症サポーターガイドブック」を元に改変
脳は私たちのあらゆる活動をコントロールしている司令塔です。指令がうまく働かなければ、精神活動も身体活動もスムーズに運ばなくなります。認知症とは、いろいろな原因で脳の細胞がしんでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな
障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態(およそ6ヶ月以上継続)をいいます。
認知症の症状として、「中核症状」と「行動・心理症状」があります。なお、「行動・心理症状」には周囲から見ると、「徘徊」や「妄想」も、本人なりの背景や理由がある
と言われています。
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時計描画
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立方体模写
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新の検査:様々なイメージングは研究レベルであり、当院ではし
ていないが、若年性で診断が必要な場合などは大学病院に紹介している。
• アミロイドイメージングPET(早期発見)
• タウイメージングPET
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タウ アミロイドβ-
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生協病院では認知症の評価はできますか?
• できます!
• 神経内科医、看護師で認知症の正確な診断を行っています。
• それをチーム化することを今年は目指します。
• 高度なBPSDは近隣精神科と協力しますが・・・
• BPSD=精神科 ではありません!!!
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認知症の根本治療の道は険しいが・・
〇予防策は?:エビデンスの確立とまでは行かないが、幾つかの示唆がでている
❤ダブルタスク:ウォーキングしながら計算
❤大分安心院プロジェクト
❤地中海料理
〇BPSDのコントロールには薬物もだけど、周囲の
理解と対応方法が も重要
❤ユマニチュードケア
❤パーソンセンタードケアなどなど
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後の話題、進行の防止や発症予防はできるのでしょうか?
① 脳梗塞・動脈硬化の予防:脳血管性認知症の予防
血圧・コレステロール・タバコ・血糖値等々
② アルツハイマー病の予防
A 食事
高血糖を避ける:糖尿病の人は2倍以上アルツハイマーに罹患しやすい
ポリフェノール:赤ワイン少量、緑黄色野菜
抗酸化食品:オリーブオイルなど
DHA:青背の魚
B 運動機能維持
適度な運動
フレイル防止
C デュアルタスク:運動しながら頭脳を使う:例コグニサイズ
D 脳トレ:様々なものがあります:声を出して本を読む、パズル、ナンプレ・・・・・・・
E 有効といわれる食品:銀杏の葉エキス、カマンベールチーズ
③ 積極的な社会参加、人とのかかわり、プランニング、生きがい
④ アルコール性認知症の予防:適正飲酒を守る(意外と多いアルチューハイマー病 )
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人知れず認知症が高度に進行し生活がままならなくなるリスクの高い人
• 独居で親しくかかわる親類や友人のいない生活
• 老老世帯で、子供さんやご近所付き合いの薄い方
つまり・・・・・
孤独と孤立が手遅れになる大きなリスクです
イギリスでは・・・孤独に一人ぼっちにしない政策。 を国が進めている。
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認知症とともに生きると言うこと、認知症と共に生きる人と共に生きるということって?
認知症は特別の病気でも、恐ろしい病気でもない。誰でもかかる、今後ものすごく増える病気で、かかった当たり前。
でも、早期発見、進行予防で、健康寿命を延ばすこと、要介護状態を遅らせることも併せて取り組もう!
認知症になっても、人間らしい心、自尊心、尊厳は失われないことを忘れず、人としてかかわり合おう!
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医療生協でできること
例:班会で 認知機能チェック
班会で コグニサイズ
班会で 認知症学習会:ぜひ橘田をお呼びください
支部や班の仕事に積極的に参加していただく。さりげないサポート力をつける
班会で 認知症予防食事会
当事者同士で語り合い、できることをするピアピアの会なんてどうかしら。
物忘れかな?気になる組合員さんには、気軽に受診しよ~!とお誘い。
自分もあれっと思ったら、気軽に受診しよ~。
自分の地域に一人ぼっちの高齢者を作らない。たまり場、集いの場を広げる。
などなど・・・・・。いろいろ考えて、どこからでも実践しましょう!
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「いのちと暮らしまるごとケア」において認知症施策は置いて通れない道
• 国の認知症施策は?
オレンジプラン→新オレンジプラン
• 東大阪市の認知症チームは?
オレンジチーム
• 医療生協かわち野の認知症施策は?
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レインボープランで進めようとしていることの一旦を紹介
• ユマニチュードの導入で認知症を持って生きる人に人として尊重し、人として寄りそう関係づくりと対応、ケア
• 認知症の方とともに生きるご家族などへの相談、アドバイス業務(これは現在は医師と一部の看護師に留まっており、多くの職員が相談に乗れるようにする必要があります)
• 認知症のある方との参加と協同を進める
認知症になったら一方的にケアを受けるだけの対象にしない。持てる力をしっかり引き出し、ちょっとしたサポートで
能力を生かして頂く協同への取り組みが課題です。
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アルツハイマー型 レビー小体型 脳血管性型
脳の変化
老人斑や神経原繊維変化が、海馬を中心に脳の広範囲に出現する。脳の神経細胞が死滅していく
レビー小体という特殊なものができることで、神経細胞が死滅してしまう
脳梗塞、脳出血などが原因で、脳の血液循環が悪くなり、脳の一部が壊死してしまう
画像で分かる脳の変化海馬を中心に脳の萎縮がみられる
はっきりとした脳の萎縮はみられないことが多い
脳が壊死したところが確認できる
男女比 女性に多い 男性がやや多い 男性に多い
特徴的な症状
•認知機能障害(もの忘れ等)•もの盗られ妄想•徘徊•とりつくろい など
•認知機能障害(注意力・視覚等)•認知の変動•幻視・妄想•うつ状態•パーキンソン症状•睡眠時の異常言動•自律神経症状 など
•認知機能障害(まだら認知症)•手足のしびれ・麻痺•感情のコントロールがうまくいかない など
経過記憶障害からはじまり広範な障害へ徐々に進行する
調子の良い時と悪い時をくりかえしながら進行する。ときに急速に進行することもある
原因となる疾患によって異なるが、比較的急に発症し、段階的に進行していくことが多い
アルツハイマー型認知症の詳細ページへ
レビー小体型認知症の詳細ページへ
脳血管性認知症の詳細ページへ>
上記の他、前頭側頭型認知症、若年性認知症、アルコール性認知症、正常圧水頭症(NPH)、まだら認知症などがあります。認知
症ネットより
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認知症の種類と頻度
• その他の認知症・嗜銀顆粒性認知症
・神経原線維変化型認知症
・意味性認知症(FTDに属す)
・変性疾患に伴う認知症(PSP、PD、
CBD等)
・薬物による認知症(特にアルコール)
・ウェルニッケ脳症・VitB12不足等の代謝性
❤治る可能性のある認知症水頭症・甲状腺機能低下症
ビタミン不足など代謝性認知症
等
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一人で抱えない
• 介護保険
• 地域包括支援センター
• 保健所
• 医療生協:レインボーチーム!
• 班や支部で認知症サポーターを要請
• オレンジカフェ
• 認知症外来での相談
• 精神科への相談
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認知症家族、支援者の支援
• これも大事
• 一人で抱えさせない
• 完璧を求めない
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症例1 性逸脱行動が生じた症例•70歳代後半女性
•【現病歴】
X年:物忘れに主治医が気付く。本人と夫は気づいていない様子なので、夫にだけ診察時に認知症発症を疑うと告げる。夫は、食事の支度もして、信託も切り盛りできているからなーとあまり受け止めず。
X+1年:夫も少し今までの妻と違う感じを自覚。スクリーニングと説明し、脳のCTを受けていただいたところ海馬に軽度の萎縮を認めた。HDSR24点、リバーミード7/24点、コースIQ70。MCIと診断した。ご本人に物忘れの自覚は無し。服薬の希望もないが、ドネペジル開始を渋々同意。
X+4年:認知症は顕在化。怒りっぽく、昔のことで夫をなじるようになる。株は運用できている。
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X+5年;夫だけが受診。妻が高圧的で、こんな生活できるのは誰のおかげだと詰め寄る。2階でテレビを見ていても「何をしているんや。すぐ降りてこい」と怒鳴り、テレビなんか捨ててしまえというので、姉に譲り渡したら、今度はすぐ返してもらえと騒ぐ。それから・・・こんなこと先生にしか言われんけどな・・・・・・
一番困るのは浮気妄想と、性的な逸脱で、僕が一人でいると、浮気していると思い、「今すぐこっちへおいで!」と詰め寄りまんねん。もう逃げるしかなく、ホテルに泊まってまんねん。
HDSR9点、リバーミード0点/24点 ADASCOG19点(中等度認知症に相当)
ほとほと困り果てて相談に見えた。
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頭部画像の変化
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診断
診断: アルツハイマー型認知症
治療:易怒性、性逸脱行動にタイする当院でした対応
→ ドネペジル中止
ドネペジルに変えてメマンチンとガランタミンの併用 とした。
抑肝散、向精神薬少量追加処方。
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事例から考えよう!
①ある日の診察室
嫁がな、おかしなってんねん。物忘れもやし、ゆうこときかへんし家事もおかしいことしよんねん。同じもんばーっかり買ってきよる、
味付けもおっかしいねん。カレーが甘かったりなー。ぼけてきよったんやろな-。
どないしたらええ?
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協立診療所へ連れておいでよ。
まずは診断や。なおる認知症もあるん
やで
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私は何もおかしくないのに夫があれもしたらあかん、
これも買ったらあかんゆーねん
何か私 おかしい?
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• 検査の結果、中等度以上のアルツハイマー型認知症と診断。
• ご本人には自覚はない
• ある日、自宅で転倒して大腿骨頸部骨折を受傷。
人工骨頭置換術をして、回復期リハ病棟へ転入院。
認知症のため、脱臼肢位の理解ができず、脱臼の危険が高い。歩行はとても不安定で、転倒リスク高く、常に見守りが必要。トイレの後始末時などに脱臼肢位を取りやすく、トイレは介助を要す。
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退院の指導をします①1人で歩くと絶対いつか転倒す
るから、必ず付き添ってね②特にトイレに行くときは転ぶから、ポータブルトイレにしましょう③トイレのズボンの上げ下げや後始末の時に脱臼肢位になったり転倒しやすいから必ず一緒に
いってあげてね。お父さん、ちゃんとお願いします。そうじゃないとすぐこけるからね。
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事例から考えよう!
嫁退院後の診察室
悲愴な顔で入室①もう全然言うこと聞かんねん!②ポータブルトイレにしーやゆーて
も、勝手にトイレに行っとる③知らん間にいくから、ずーっとみ
はっとらんならんねん④もう、デイから帰ってくるんがおそ
ろし。日曜日地獄や~。
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私何も困ってへんよ~夫だけがみがみゆーてる入院なんてしてへんよ
骨折?そんなんしてへんよ
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お父さん、お母さん帰ってきても嬉しくないやろ?お母さんせっかく帰ってきたのにたのしんでないやろ?認知症の人の見守りなんて、完璧なんて事は無理よ。病院でだって転ぶのに。できる限りのことをしても、脱臼する、転んで怪我する事もあると言う前提に立って、トイレいくんやったらしゃーないやん。生活をたのしも。こけたらすぐ
来たらええんやから。
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そんなんゆーてくれたんは先生だけや。こかしたら、また骨折したら、脱臼したら僕のせいやと思って、必死やった。しっかりやってねって言われてたから、僕の責任やって思って
苦しくて苦しくて・・・・・
男泣き・・・
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困難事例1全ての介入を拒否する認+認高齢者世帯
事例 80歳代夫妻 子供無し
妻 夫
X年ー32M 夫の介護の相談したことを 自転車で転倒し、失禁、寝たきりになり
丸々忘れている←初めて認知症疑う 介護調整のため介入
HDSR21点X年ー26M 夫の病状の理解困難 一過性に左片麻痺隣救急搬送。入院
拒否にて帰宅。ショートステイの勧め
に激怒。まだ車の運転をしていること
が発覚。往診で点滴施行。
X年ー25M 夫が家で倒れてもいいからサービス 左視神経梗塞で左目失明。車をよう
は要らないと拒否。 やく廃車。
X年ー19M 大丈夫。自分たちで生活できると 風呂で転倒し、右顔面打撲し内出血。
楽観的。夫を介護する事は考えてい 介護保険を申請し、小規模多機能
ない。 利用(ただし週1、自宅にはいれてもら
えず) 本人転倒したこと覚えていない。認知症顕在
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妻 夫
X年ー17M 2人暮らしが不安ともらされ、
小規模多機能へ行ってみるがすぐ
辞めてしまう
X年ー11M 自転車で転倒
X年ー4M 夫がだいぶ弱っていることを説明
一人の入浴が危険と注意 自転車で転倒して警察に保護
X年 風呂場で死亡しているところを妻が
発見
X年+1M 夫他界後食事もろくに摂らず、着替えも、入浴もできていない。
主治医が診察室でついつい「一人の入浴は危ないって言って
たのにね~」と言ったことで、「夫は風呂で死んだのではない、居間で
私の手を取って死んだのだと」話がすり替わる。サービスも拒否続き、自宅のこたつ
の下には沢山のゴキブリの死骸そこで寝て起きている生活。
近隣住民が援助しようとするが、1000万円亡くなったとか、あれこれ取られた
と言うようになり、住民も援助できない。 HDSR16点
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本人の自己決定権を尊重する事と人間らしく、安全で衛生的な生活を支援することは両立するのか?
結局、一人になった妻に対する生協の組合員、ケアマネージャー、遠くにいる兄弟、診療所スタッフが粘り強く見守りと、サービス利用をめざしてきたところ、あれだけ嫌がっていたデイケアに楽しいと通い、訪問看護やヘルパーさんとも良好な人間関係を築き、単身生活を安全に続けている。
信頼し、あきらめない。寄り添って見守って、助言する。この勝利でした!
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困難事例2認知症と関節疾患による移動能力低下にてセルフネグレクトに陥った1例
事例80代女性
歩行困難になり、年余にわたり失禁、失便で、自宅はゴミの山となっている。自宅は長年失禁した尿で、サンが腐り、窓が取り付けられない状態になっており、息子さんが、家の環境を整え、サービスを入れて生活を立て直したいと希望され、
ケアマネージャー、地域包括支援センターへ相談。当院受診となる。
受診時ご本人は、歩行でトイレへ行き、失禁したことはない。手すりが付いてあるので、歩行でトイレに行けていた。入浴は息子がおぶって自分のマンションへ連れて行ってくれて入浴していた。食事は息子が買ってきてくれて不自由はなく、入院も入所もいやだと言われる。
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息子さんが家の環境を整えるのでその間ショートステイなどを利用することをしぶしぶ何とか同意される。
年余にわたり入浴ができておらず、足皮膚があかつき皮膚炎になっており、病院で入浴して頂き、緊急ショートステイを確保した。
その後歩行障害、皮膚疾患、認知症の評価目的で当院へ転院となった。
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私:検査が終わったら退院ですが、まだ家の修繕に時間がかかるようです。どこに退院しましょうか?
Aさん:ここに来るまで泊まっていたところがあるんです。
(ショートのこと)そこは皆さん明るくて優しくて、また帰ってきてねと言われているんです。そこに行きたいんです。
私:えっ?自宅よりもそこがいいんですか?
Aさん:自宅は地獄、あそこ(ショート)は天国です。そこ
へ戻して下さい。お願いします。
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自己決定権を尊重しつつ、粘り強く関わることの大切さ
• その時の意思表示が(サービスは使わない、家から絶対出ないなど)未来永劫普遍的な意思ではない!
• その時の意思はその時のその人の判断材料から刹那的にあるいはかたくなに思い込んでいる場合が多い
• 信頼関係を築き、「この人が勧めるなら」と行動変容を起こすきっかけを作ることが重要
• どうしてもダメなときは、最大限の努力で見守り、変化の時を待つ!
• まずは認知症の人の世界にこちら側がが合わせることから。
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事例から考えよう!
①ある日の診察室
嫁がな、おかしなってんねん。物忘れもやし、ゆうこときかへんし家事もおかしいことしよんねん。同じもんばーっかり買ってきよる、
味付けもおっかしいねん。カレーが甘かったりなー。ぼけてきよったんやろな-。
どないしたらええ?
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認知症の人に対する対応の基本
認知症の人の⾒ている世界を理解する
に 聞いてみる。の 話を想像する。に 現状を伝えてみる。の 反応をみる。が どのように思うか聴いてみる。に どのようにするか相談する。
認知症の人
認知症の人は、意思も・経験も あります
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認知症の症状や状態、環境などによって、認知症の人が希望することや必要な支援は異なります。
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Lewy小体病の病理
• 1995年の国際ワークショップで初めて提唱された名称で、
疾患概念とともに臨床・病理診断基準が作成されました。DLBを簡単に定義すると、主として初老期ないし老年期に
発症し、進行性の認知機能障害に加えて、パーキンソニズムと特有の精神症状を示す変性性認知症疾患です。病理学的には、大脳と脳幹の神経細胞脱落とレビー小体(Lewy body)の出現を特徴とし、パーキンソン病(Parkinson's disease: PD)と共通点をもっています。従来のびまん性レビー小体病(diffuse Lewy body disease: DLBD)を含むがより幅の広い概念であり、老年期の変性性認知症疾患ではアルツハイマー型認知症(Alzheimer-type dementia: AD)に次いで2番目に多いとされています。
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Lewy小体病のメカニズム:パーキンソン病との異相
• パーキンソン病とは、脳内の黒質という場所にある神経細胞が変性したり無くなったりして、黒質で作られる「ドパミン」という神経伝達物質が減少してしまうことにより、脳から全身に出される運動の指令がうまく伝わらなくなり、体の動きが不自由になる疾患。
黒質
パーキンソン病では
黒質の変性で、メラニン色素が脱落して白っぽ
くなる
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パーキンソン病の病理
• レビー小体の出現PDの黒質や青斑核では神経細胞の胞体内に円形で周囲が白く抜けてみえる封入体が認められ、レビー小体(Lewy body)と呼ばれています。レビー小体は神経細胞の胞体
内に加え、突起の中(その多くは軸索)にも形成されます。電子顕微鏡ではレビー小体は異常なフィラメントの集合として認められます。レビー小体はPDの黒質および青斑核では100%の症例に認められ、さらに視床下部、マイネルト核、迷走神経背側核、脊髄中間質外側核、末梢交感神経節、内臓自律神経系にも高頻度に認められます。PDで
は中枢神経系における自律神経核や末梢自律神経系にレビー小体が出現するため第1章で述べた自律神経障害を呈するのです。 大脳皮質にも少数のレビー小体が認め
られることがあります。このレビー小体を皮質型レビー小体と呼んでいます。皮質型レビー小体が大脳皮質に広範かつ多数認められる場合があり、そのような例では痴呆や精神症状が目立つためレビー小体病と呼んでいます。
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Lewy小体病の病理
• DLBでは、ADと同様に海馬領域を含む側頭葉内側部の萎縮がみられますが、ADと比べて軽度です。この他、前
頭葉萎縮や進行するとびまん性大脳萎縮を示しますが、一般にAD程高度とはなりません。脳幹では、PDと同様に、
中脳の黒質や橋の青斑核の黒褐色の色調が程度の差はあれ失われます。
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• 脳幹では、PDと同様に、黒質や青斑核などで黒褐色のメ
ラニンをもった神経細胞が脱落しており、臨床症状のパーキンソニズムの原因となります。また、大脳では、萎縮した海馬領域や扁桃体を含む大脳辺縁系を中心に、神経細胞の脱落がみられ、認知機能障害の原因と考えられます。黒質や青斑核などでは、神経細胞の胞体内にPDと同様
のレビー小体が認められます。レビー小体は、延髄の迷走神経背側核や間脳の視床下部やマイネルト核、さらに末梢交感神経節や内臓自律神経系にも分布しています。一方、DLBでは大脳にもレビー小体がみられるのが特
徴であり、扁桃体や大脳辺縁系皮質、さらに大脳新皮質にまで広く分布しています。
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DLBにみられる認知機能障害や精神症状は、大脳辺縁系
のレビー小体の出現に関連していると考えられる。後述するα-シヌクレイン免疫染色では、レビー小体とともに樹状
突起や軸索由来のレビー小体関連神経突起が認められ、電子顕微鏡により同じ成分よりなることが判っている。また、DLBでは多くの場合、ADにみられるアミロイド沈着
や神経原線維変化を程度の差はあれ伴っていることが多く、これも認知機能障害を悪化させる原因となっている。
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図は日本神経病理学会HPより
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Lewy小体病の前駆症状はどれでしょう?
➀振戦(片側) ⑪無動・寡動
②歩行障害 ⑫嚥下障害
③認知機能低下 ⑬姿勢反射障害
④筋強剛(固縮) ⑭構音障害
⑤意欲低下 ⑮レム睡眠行動障害
⑥排尿障害 ⑯姿勢異常
⑦嗅覚障害
⑧起立性低血圧
⑨すくみ足
⑩睡眠時無呼吸症
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正解
➀振戦(片側) ⑪無動・寡動
②歩行障害 ⑫嚥下障害
③認知機能低下 ⑬姿勢反射障害
④筋強剛(固縮) ⑭構音障害
⑤意欲低下 ⑮レム睡眠行動障害
⑥排尿障害 ⑯姿勢異常
⑦嗅覚障害
⑧起立性低血圧
⑨すくみ足
⑩睡眠時無呼吸症
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• 進行性の認知機能障害が必須症状であり、これに加えて、中核症状として認知機能の動揺、幻視、パーキンソニズムの3つがあり、このうち2つあればprobable DLB、1つあればpossible DLBと診断します。
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• 必須症状である進行性の認知機能障害は記憶障害で始まり、ADと異なり、初期には記銘や記憶の保持に比べて記憶の再生障害が目立つとされていますが、進行するとAD と区別し難い記憶障害や失見当識、健忘失語を呈します。DLBでは注意障
害、視覚認知障害、構成障害が強いのも特徴で、他の認知機能と比べて不釣合いな遂行能力や問題解決能力の低下となって現れます。中核症状としての認知機能の動揺は、初期に目立つことが多
く、茫呼とした状態、日中の傾眠や覚醒時の混乱がしばしばみられますが、せん妄との区別が難しいことがあります。 精神症
状としては、反復性に現れる幻視が特徴的で、中核症状とされています。典型的なものは人物や小動物の幻視で、しばしば不安感を伴い、夕方や薄暗いときに多くみられます。幻視以外の精神症状として、錯視や人物・場所の誤認も多くみられます。被害妄想もみられますが、多くは幻覚や誤認から生ずる二次性妄想です。
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• 中核症状の1つであるパーキンソニズムはDLBに必須ではなく、ほとんどみられない場合もあります。DLBのパー
キンソニズムは、寡動と筋固縮が主体で、安静時振戦は末期まで目立たないことがあります。
• この他、これらの症状に年単位で先行して、夜間睡眠時に悪夢を伴う大声や体動を示すREM睡眠行動異常が高い頻度でみられます。また、PDと同様に、起立性低血圧、
尿失禁、便秘などの自律神経症状もしばしばみられます。
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DLBの大脳アセチルコリン濃度
認知機能障害に対しては、DLBでは大脳のアセチルコリン濃度がAD以上に低下していることが報告されており、ADに用いられているアセチルコリン・エステラーゼ阻害薬がDLBの認知機能障害にも効果的であると考えられ、欧
米を中心に有効性が報告されている。アセチルコリン・エステラーゼ阻害薬は、DLBにみられる
幻視などの精神症状にも有効であることが報告されています。塩酸ドネペジルで幻視や妄想などの精神症状が改善したとの報告が多くみられ、認知機能障害と精神症状の両方の効果を期待して投与する。
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DLBにおけるパーキンソン症状の運動症状
➀振戦
②無動・寡動
③歩行障害:小歩、腕を振らない、前傾姿勢、突進現象、すくみ足
④姿勢反射障害:易転倒性
④筋強剛(固縮)
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• DLBとPDDDLBの臨床診断基準では、パーキンソニズム発症の後、
1年以内に認知機能障害を示したものはDLBと診断しますが、1年以上たってから認知機能障害を示したものは、Parkinson's disease with dementia (PDD)と呼んで区別しています。しかし、PDDは臨床所見や検査所見でDLBと共通の特徴を有し、病理学的にDLBと区別できないことから、PDDも含めたDLBとして広く捉えようというのが、 近の趨勢です。いずれにしろ、PDとDLBは臨床・病理学的に
連続性をもった疾患と考えられます。
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アルツハイマー病の脳スペクト
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レビー小体病の脳スペクト(日本メジフィジックスホームページより)
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MIBGシンチ
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ダットスキャン
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パーキンソン病自験例
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症例1
82歳女性
【現病歴】
2年ほど前から物忘れと、子どもが来ているなどおかしなことを言い、テーブルに3人家族なのに4人分お菓子や食事をおいたりするようになった。
1年ほど前からじっとしていることが増え、転倒を繰り返すようになったため当院受診。
【診察所見】
認知機能の低下。記憶障害はあるが比較的軽度。寡動。しかし、子どもがふと家に入ってくる、布団の上に人の顔が見えるなど、リアルな幻視体験を言われる。
振戦は無し。姿勢は前傾姿勢。筋固縮両側にあり。歩行は不安定で小歩が顕著。
独歩は困難。手引き歩行レベル。
【臨床診断】
DLBもしくはPDD
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レビー小体病患者自験例
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診断と経過
one year rule に基づき、Lewy小体病と診断
抗パーキンソン病薬とドネペジル投与し、歩行は歩行器歩行自立、幻視は軽快している。
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症例2
68歳 男性
【現病歴】
数年前から、小刻み歩行や物忘れが見られるようになった。
1年後くらいには幻覚、幻視が顕在化し、幻視のため不穏状態になり、精神科
受診したところ、リスペリドンを初めとする向精神薬を投与された。
投与後から、ほとんど足が前に出せず、体幹の前傾姿勢が顕著になり歩行がほぼ困難になった。具体的には介助で3分ほど歩行すると、前傾姿勢がひどく
なり、小刻みで、突進して止まれず、転倒を繰り返した。
頭部MRIでは海馬の萎縮が中等度みられた。
関西医科大学ではアルツハイマー病と診断され、ドネペジル投与されていた。
歩行障害、認知症のため、当院受診。
【神経学的所見】
パーキンソニズム
認知機能低下
不穏などの精神症状と妄想、幻覚、幻視
【診断】 DLB疑い
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症例2のダットスキャン
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診断
アルツハイマー病
薬剤性パーキンソン症候群
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パーキンソン病の小体の出現進展様式と初期症状
• PDでは黒質の神経脱落が も高度であることから、PDの病変は黒
質にはじまると長く考えられてきた。
• しかし、2003年にBraakらは、PDではα-シヌクレイン(レビー小体に
存在する異常たんぱく)の蓄積は嗅球と迷走神経背側核に 初に起こり、その後、脳幹では延髄から中脳へと広がり、大脳皮質では側頭葉前内側部から側頭葉外側皮質、島回、帯状回、前頭前野へと広がっていくことを明らかにして、PD病変を6段階に分類した。
• 一方古くからPDでは嗅覚障害が多いことは既に知られていた
• 現在は嗅覚障害が、運動神経症状よりも先に出現する人も多いことが知られている。
• 更に 近の研究では、PDの嗅覚障害がPDD(パーキンソン病認知
症)の発症の前駆症状であると考えられている
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レビー小体病の診断における画像イメージング
• パーキンソン病に特有な運動症状の存在
有名なパーキンソン病運動障害4徴を初め、神経症候の存在が先ず第一です。
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パーキンソン病の診断Ⅱ鑑別診断
➀脳血管性パーキンソン症候群(頭部画像より)
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②進行性核上性麻痺:中脳被蓋部の萎縮:ハミングバードサイン
脳MRI矢状断 T1強調画像(左:PSP、右:正常対象者)赤矢印:PSPでは矢状断MRIで中脳吻側部分が水平ある
いは下に凸に変化します。正常対象者やパーキンソン病では、上に凸です。萎縮した中脳正中吻側部がハチドリの嘴に見えるためHummingbird signとも呼ばれています。
MIBGシンチ:パーキンソンとの鑑別に重要
ダットスキャン:パーキンソンと同様の低下あり
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③多系統萎縮症:MSA-P(線条体黒質変性症)
・ダットスキャンはPDと同様低下する
・MIBGシンチは低下することもある
典型的には線条体の異常信号が見られる出ないことも良くある
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④大脳基底核変性症
• CBDは、大脳皮質と皮質下神経核(特に黒質と淡蒼球)の神経細胞が脱落し、神経細胞およびグリア細胞内に異常リン酸化タウが蓄積する疾患である。典型的には (1)中年期以降に発症し、緩徐に進行する神経変性疾患
• 病理学的には、典型例では前頭・頭頂葉により強い大脳皮質萎縮が認められ、同時に黒質の色素含有神経細胞が減少している。顕微鏡的には皮質、皮質下、脳幹 の諸核に神経細胞脱落とグリオーシスが認められ、神経細胞およびグリア細胞内に蓄積する異常リン酸化タウが蓄積するが、中でも‘astrocytic plaque’がCBDに特異的な所見とされている。
• 正確な疫学調査はない。わが国では人口10万人当たり2人程度と推計され、男女比はやや女性に多いとされている。
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レビー小体病
・PDと同じく、Lewy小体病が出現する疾患。幻視が特徴的な認知症に加えてパーキンソン症候群が見られる。Lewy小体は広く大脳皮質に認め、病理像としてはPDD(パーキ
ンソン病認知症)と同じとされている。
・Lewy小体病とPDDを別けるONE YEAR RULEパーキンソン病の運動症状を認めてから1年以上経過し
た後に認知症が出るものは
PDDとするという一応の基準がある。
・ダットスキャンもPDと同じように低下する
・MIBGシンチもPDと同じように低下する
・脳血流シンチでは
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⑥薬剤性パーキンソン症候群
• 頭部MRIなどの画像診断では鑑別困難
• ダットスキャンもMIBGシンチも低下は認めない
• パーキンソニズムを起こし得る薬剤歴の確認
• 被疑薬を休薬して症状の改善が得られるかの観察
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パーキンソン病の診断Ⅲ
• 抗パーキンソン病薬、L-DOPAの効果を見る
(診断的治療)
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パーキンソンに特徴的な運動障害ではないが、しばしば誤診される疾患
• 正常圧水頭症:歩行障害の存在
• 脊髄小脳変性症
• 腰部脊柱管狭窄症
• 本態性振戦
その他
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パーキンソン病の診断:シンチグラフィー
1)ダットスキャン
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MIBG心筋シンチ
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2018/8/23フッター116キョウリン製薬HPより
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