食料増産、環境変動と世界の土壌資源 -...
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食料増産、環境変動と世界の土壌資源食料増産、環境変動と世界の土壌資源
農業環境技術研究所農業環境技術研究所
研究コーディネータ研究コーディネータ
谷山谷山
一郎一郎
1.農地の必要性2.世界の土壌資源の現状3.土壌劣化の現状と原因4.食料増産や気候変動が土壌劣化に及ぼす影響5.土壌劣化の防止・回復技術
雨滴侵食
1.農地の必要性1.農地の必要性
南フランスの農地
世界人口の推移・予測(UN,2007)
開発途上国
先進国
年
億人
人
口
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
20502050年には年には9090億人を超え、所得も増加億人を超え、所得も増加
世界の食料生産予測(FAO,2006)
年
百万t先進国開発途上国
世界の食料生産は世界の食料生産は20502050年には年には7070%(%(20062006年比)増加する必要年比)増加する必要
食
料
生
産
潜在農耕地面積(FAO,2008)
南アメリカ
アフリカ
中東・北アフリカ
南アジア
東アジア
先進国
経済移行国
百万ha 非かんがい作物生産潜在農耕地2005年の農耕地
現在の農耕地面積は現在の農耕地面積は1414億億hahaでさらにでさらに1616億億haha増加が可能、その増加が可能、その 半分以上は南アメリカとアフリカ半分以上は南アメリカとアフリカ
農耕地面積
指
数
一人当たりの収穫面積
作物生産に関する指標の推移(FAO・OECD,2009)
1961
1971
1981
1991
2001
2007
このこの5050年間に生産量は年間に生産量は290290%増に対して農地面積は%増に対して農地面積は1010%の増加、%の増加、 そのほとんどを単位面積当たりの収量増で補うそのほとんどを単位面積当たりの収量増で補う
2.世界の土壌資源の現状2.世界の土壌資源の現状
タイ,コンケン県
世界の土壌分布(FAO,2007)
世界の土壌の多くは世界の土壌の多くは 有機物の少ない養分有機物の少ない養分 の乏しい土壌の乏しい土壌
天水・低投入作物生産潜在力図(FAO,2007)
0t/ha
0~0.25t/ha
0.25~0.5t/ha
0.5~0.75t/ha
0.75~1.0t/ha
1.0t/ha~
凡 例
かんがい、施肥を行わないでかんがい、施肥を行わないで0.75t/ha0.75t/ha以上の収量を上げられ以上の収量を上げられ る土地面積はる土地面積は1010%以下%以下
3.土壌劣化の現状と原因3.土壌劣化の現状と原因
ガリ侵食(中国,内蒙古自治区)
水食
風食
化学性変化
物理性変化
強~極強度
安定地
未利用地
水域
土壌劣化の種類 その他
世界の土壌劣化分布図(ISRIC,1997)
世界で土壌劣化により生産力が低下世界で土壌劣化により生産力が低下
土壌有機物の選択侵食(タイ,コンケン県)
水食水食
侵食により基岩が露出した農地(中国,貴州省)
水食水食
放牧草地における風食(中国,内蒙古自治区)
風食風食
イネ・コムギ輪作田の塩類集積(カザフスタン,クジオルダ)高田祐介提供
化学変化:塩類集積化学変化:塩類集積
土壌劣化の地域別・原因別面積(ISRIC,1997)
水食
風食
化学性変化
物理性変化
百万ha
アジア:747
アフリカ:494
南アメリカ:243
ヨーロッパ:219
北・中央アメリカ:158
南西太平洋:103
全世界で全世界で2020億億haha(牧草地を含めた農地の(牧草地を含めた農地の4040%に相当)が土壌%に相当)が土壌 劣化の影響を受け、半分以上は水食が原因劣化の影響を受け、半分以上は水食が原因
4.食料増産や気候変動が土壌劣化に4.食料増産や気候変動が土壌劣化に 及ぼす影響及ぼす影響
ハリケーンカトリーナ(NASA,2006)
森林や草地を開発して農地にすると土壌劣化の危険が増加森林や草地を開発して農地にすると土壌劣化の危険が増加
焼畑から流出した土砂(フィリピン,ヌエヴァ・ヴィスカヤ州)
傾斜畑では水食が起こり、土壌生産力が低下傾斜畑では水食が起こり、土壌生産力が低下
標準区
裸地区
標準区
標準区
日本で14年間、13道県で行われた侵食試験後の土壌の性質 (谷山,2007)
土壌侵食量
t/ha/年
裸地区
裸地区
裸地区
標準区
砂含量
% %
炭素含量 塩基交換容量
cmol/kg
降水量の変動で水食、風食、塩類集積が増加する危険降水量の変動で水食、風食、塩類集積が増加する危険
減 増
将来(2090-2099年)の降水量変化予測(IPCC,2007)
20cm
50cm
海面水位の上昇(IPCC,2007)
注:1980-99 年の平均をゼロとしている。
海面水位の上昇により河川デルタの農地は洪水被害が増加海面水位の上昇により河川デルタの農地は洪水被害が増加
世界の主な河川デルタ
(IPCC,2007)
ガンジス
メコンナイル
5.土壌劣化の防止・回復技術5.土壌劣化の防止・回復技術
不耕起栽培によるコムギ後作のダイズ
土壌侵食防止効果(谷山,2007)
0
20
40
60
80
100
1 2 3 4 5 6無処理
堆肥の投入
ほ場2分割
牧草帯
マルチ・敷わら
横うね
相対侵食量
いろいろな対策で土壌劣化を軽減することが可能いろいろな対策で土壌劣化を軽減することが可能
テラス(中国,甘粛省)
畑の傾斜を緩和することで土壌侵食を防止畑の傾斜を緩和することで土壌侵食を防止
水田の不耕起栽培による炭素蓄積(石橋ら,2005)
4
3
2
1
0
tC/ha
土
壌
炭
素
量
水田の不耕起栽培で炭素量は増加水田の不耕起栽培で炭素量は増加
水田の不耕起栽培による土壌炭素量の推移(石橋ら,2005)
ブラジルのテラプレタ (Pearson,2009)
堆肥や炭の投入で土壌物理性・化学性を改良、土壌劣化を堆肥や炭の投入で土壌物理性・化学性を改良、土壌劣化を 防止し、生産力を維持防止し、生産力を維持
0
2
4
6
8
10
12
0 10 20 30 40 50 60
堆肥投入による水田の土壌炭 素量の増加(志賀,1985)
実測値
炭
素
集
積
量
年
tC/ha
結結
論論
増え続ける人口を養うには、新たな農地と既存の農地増え続ける人口を養うには、新たな農地と既存の農地 の生産力を維持・向上させる必要がある。そのための技の生産力を維持・向上させる必要がある。そのための技 術の普及には、資金的な援助と法律的な規制、そして土術の普及には、資金的な援助と法律的な規制、そして土 壌を物質循環の媒体として位置づける意識の改革が必要壌を物質循環の媒体として位置づける意識の改革が必要 である。である。
フィリピン,イフガオ