財政制度等審議会財政制度分科会 海外調査出張報告 -国別資料- ·...

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資料4 財政制度等審議会 財政制度分科会 海外調査出張報告 平成30年3月30日

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  • 資料4

    財政制度等審議会 財政制度分科会海外調査出張報告

    - 国 別 資 料 -

    平成30年3月30日

  • 出張者:遠藤典子委員、神子田章博委員 日 程:平成30年2月5日~2月9日 訪問先:英国、イタリア

    出張者:赤井伸郎委員、宮島香澄委員 日 程:平成30年2月5日~2月9日 訪問先:フランス、スウェーデン、OECD

    出張者:田近栄治分科会長代理、土居丈朗委員 日 程:平成30年2月12日~2月16日 訪問先:ドイツ、オランダ、EU(ベルギー)

    出張者:大槻奈那委員 日 程:平成30年2月12日~2月16日 訪問先:米国、カナダ、IMF

    調査体制及び調査日程

    1.欧州A

    2.欧州B

    3.欧州C

    4.北 米

    <欧州>

    <北米>

    1

  • 出張者:遠藤典子委員、神子田章博委員 日 程:平成30年2月5日~2月9日 訪問先:英国、イタリア

    出張者:赤井伸郎委員、宮島香澄委員 日 程:平成30年2月5日~2月9日 訪問先:フランス、スウェーデン、OECD

    出張者:田近栄治分科会長代理、土居丈朗委員 日 程:平成30年2月12日~2月16日 訪問先:ドイツ、オランダ、EU(ベルギー)

    出張者:大槻奈那委員 日 程:平成30年2月12日~2月16日 訪問先:米国、カナダ、IMF

    調査体制及び調査日程

    1.欧州A

    2.欧州B

    3.欧州C

    4.北 米

    <欧州>

    <北米>

    2

  • - 英 国 -

    3

  • ○ 英国経済は、足元では堅調に推移しているものの、今後、ブレクジット(EUからの離脱)の決定が安定した成長の阻害要因となり得る。

    ○ 財政面では、世界的な金融危機後の財政出動等により、財政収支が悪化した(2007年:▲2.7%→2009年:▲10.1%)が、歳出削減に取り組むことで改善(2016年:▲2.9)。今後、ブレクジットに向けて財政出動が見込まれているが、政府は財政健全化姿勢を維持しており、財政健全化目標を2年前倒しで達成する見通し。

    英国:経済・財政状況、今後の見通し

    (出所)IMF 「World Economic Outlook」 (2017年10月)(注)数値は一般政府ベース

    ブレア首相

    (労働党)

    ブラウン首相

    (労働党)

    キャメロン首相(保守党)

    メイ首相

    (保守党)

    ▲ 2.7

    ▲ 10.1

    ▲ 2.9

    ▲ 12

    ▲ 10

    ▲ 8

    ▲ 6

    ▲ 4

    ▲ 2

    0

    2

    4

    プライマリーバランス対GDP比

    実質経済成長率

    GDPギャップ

    財政収支対GDP比

    (%)

    (年)

    (見通し)

    2016年89.3 %

    2018年89.7 %

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    100

    30

    35

    40

    45

    50債務残高対GDP比(右軸)

    歳入対GDP比

    歳出対GDP比

    (%) (%)

    (年)

    (見通し)

    < 経済・財政指標の推移 > < 歳出・歳入、債務残高対GDP比の推移 >

    4

  • ① 構造的財政収支(公的部門):2020年度までに対GDP比▲2%以下に削減(予算責任憲章で規定)(その後、2022年の総選挙以降、早期に財政収支を均衡することを目標。)

    ② 純債務残高対GDP比(公的部門):2020年度に純債務残高対GDP比を減少(同上) ※公的部門とは、一般政府と公的企業。

    英国:財政健全化目標の策定・進捗管理

    ・財務省は、同省から独立した財政責任庁が策定する経済財政見通しに基づき、目標を策定。下院の承認を経て予算責任憲章で規定。

    ・財政責任庁が、財政健全化目標の進捗状況を年2回評価し、単なる見通しにとどまらず、目標の達成可能確率が50%以上か否かを分析。

    ・結果を踏まえて次年度予算が編成され、毎年度、目標達成に向けた調整が可能。

    ・目標の変更は、経済状況等も踏まえつつ判断されるが、下院での承認が必要。財務省は変更前の目標からのかい離の理由の説明が求められる。

    (出所)OBR 「Economic and Fiscal Outlook」(2018年3月)

    財政目標の策定・進捗管理

    < 財政健全化目標の進捗状況 >

    策定

    実施

    反映

    目標に沿って、各省庁が改革項目を積み上げ、複数年度の予算総額の上限(計画)を策定(スペンディングレビュー)、下院が承認。

    毎年度の予算編成は本計画等に沿って実施。

    2017年に公表された財政健全化の進捗状況の評価では、目標を約65%の確率で達成可能と評価。リスクや不確実性、感応度等も公表(客観的検証を可能とする材料を提供)。(2016年の分析では、当時目標とした2019年度財政収支均衡の達成確率を約35%と評価。)

    経済財政見通しを作成する財政責任庁は、最低年1回、過去に発表した見通しと実績のかい離、その要因等を評価。透明性・説明責任を確保し、教訓の獲得等に寄与。

    ⇒ 政府も民間エコノミストも、経済財政見通しの正確性、客観性に高い信頼

    評価

    計画

    毎年

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    ▲ 9▲ 8▲ 7▲ 6▲ 5▲ 4▲ 3▲ 2▲ 1

    012

    純債務残高対GDP比(右軸)

    構造的財政収支対GDP比

    (%) (%)

    ②2017年をピークに減少し、目標達成見込み

    【▲2%】

    ①2018年に、2年間前倒しで目標達成見込み(▲1.9%)

    見通し

    (年)

    経済財政見通しの信頼性等の確保

    5

    ・歳出削減努力が足りないと見込まれる省庁は議会に対して説明する必要。

  • 社会福祉給付

    24.6%

    利払費

    6.3%

    その他

    23.0%

    その他

    16.2%

    国際開発省

    1.3%

    国防省

    4.6%

    教育省

    8.4%

    保健省

    15.6%

    AME4152

    DEL3554

    公的部門の歳出総額 「総管理歳出」

    ○ 英国では、「財政再建は、財務省だけの仕事ではなく、政府全体の責任」との考えの下、各省庁も主体となり、複数年度の歳出改革(スペンディングレビュー)を計画的に実施。

    ○ 社会福祉分野については、歳出総額に上限を設定し、目標に到達しない場合には議会への追加削減策等の報告が求められる仕組みにより、歳出をコントロール。

    英国:歳出合理化策

    (出所)HMT 「Charter for Budget Responsibility: autumn 2016 update」、「Autumn Budget 2017」、「Spending Review and Autumn Statement 2015」、「Public Expenditure Statistical Analyses 2017」

    スペンディングレビュー(SR)の枠組み

    ② 各年度管理歳出(Annually Managed Expenditure)

    ・ 法律等に基づく義務的経

    費。歳出の見通しをモニタリングすることが中心。

    (例) 年金、児童手当、利払費、公社向け融資等

    ・ 財務大臣を長とし、主要閣僚で構成する歳出委員会が、各省庁の改革項目を積み上げ、「省庁別歳出限度額」を向こう3~4年分設定し、毎年度の予算を策定。

    ・ SRを通じて、2016~2019年にかけて120億ポンドの合理化を目指す計画(2015年11月策定)。2018年度予算案では、概ね計画に沿って予算削減を実現。

    ・ 財務省との間で削減額に合意した省庁は、歳出委員会に属することができ、合意できていない省庁に対して削減を求めることが可能(DELの分配は「ゼロサムゲーム」であり、早期合意へのインセンティブになる)。

    < 公的部門の歳出構成 > (2016年度実績、単位:億ポンド)

    総管理歳出7706

    (100%)

    ・ 2014年、社会福祉支出の総額に上限を導入(welfare cap)。児童手当等の約6割の社会福祉給付が対象(年金は対象外)。

    ・ 現在、2022年度まで(通常5年間)を対象に上限を設定。

    上限を超えた場合、雇用・年金大臣は、①下院に歳出削減策の提示、②正当性に関する説明のいずれかが必要。

    < スペンディングレビューの実績・見通し >① 省庁別歳出限度額(Departmental Expenditure Limits)

    ・ 裁量的・政策的経費。経常歳出が主に削減の対象。

    (例) 経常歳出: 省庁別の人件費、各種補助金等

    資本歳出: 公共事業、IT等

    削減対象外の主な省

    社会福祉分野の歳出抑制策

    (億ポンド)

    2016 2017 2018 2019

    ①計画

    (2015年11月策定)3648 3679 3702 3756

    ② 実績/見通し(2017年度以降) 3554 3609 3707 3797

    94 70 ▲ 5 ▲ 41①-②6

  • ○ 英国では、日本を上回るペースで歳出改革を推進。2016年秋に財政健全化目標を後ろ倒しするも、計画されていた歳出削減計画を実施し続けることも明言し、財政健全化を進めている。

    ○ 一方で、予算の質的向上を図り、生産性を向上させるために重要な①住宅、②研究開発、③交通、④デジタル情報通信の4分野に対して重点的に投資をし、予算にメリハリをつけている。

    英国:財政健全化と予算の質的向上

    (出所)OBR「Economic and Fiscal Outlook」(2018年3月)、内閣府「中長期の経済財政に関する試算 」(平成 30年1月23日 経済財政諮問会議提出)※日本のデータは、成長実現ケース

    ▲ 500 ▲ 400 ▲ 300 ▲ 200 ▲ 100 0 100

    ○分野別の内訳 ※2016年時点。1ポンド=153円(2018年3月時点)

    ▲ 10

    ▲ 8

    ▲ 6

    ▲ 4

    ▲ 2

    0

    2

    2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026 2027

    < 英国と日本のプライマリーバランス対GDP比の比較 >

    英国(公的部門) 日本(国・地方)

    (見通し)

    (%)

    (年)

    30

    32

    34

    36

    38

    40

    42

    44

    46

    2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022

    < 英国と日本の歳出対GDP比の比較 >

    英国(公的部門) 日本(国・地方)(見通し)

    (%)

    ▲6.3%pt(2009→2016)

    ▲4.4%pt(2009→2016)

    (年)

    社会福祉関連施策(68億ポンド)

    その他

    生産性を高める4分野に資する投資ファンド

    (NPIF)(237億ポンド)

    優先分野への投資(10億ポンド)

    既存の政策変更(86億ポンド)

    税制改革(62億ポンド)

    脱税対策等(22億ポンド)

    その他

    ○2016年秋季財政演説の政策決定による追加的歳出・歳入策(2016~2021年の合計額)

    追加財政出動 420億ポンド 財源確保 89億ポンド

    国家生産性投資ファンド(National Productivity Investment Fund, NPIF)

    交通分野 30億ポンド(約4,600億円)

    無人運転自動車の実現や、再生可能燃料やエネルギー効率の良い輸送等、次世代の乗り物、輸送技術への投資等。

    住宅分野 81億ポンド(約1.2兆円)

    需要の高いエリアに10万戸の住宅を建設するためのインフラ整備、低価格で提供する4万戸の住宅の建設等を行うインフラファンドの設置等。

    研究開発分野 47億ポンド(約7,200億円)

    ロボット、人工知能、産業バイオテクノロジー等、国の競争力を維持・向上させる革新的研究開発を行う大学や企業への投資拡大。

    デジタル情報通信分野 7億ポンド(約1,100億円)

    民間が行うフルファイバー・ブロードバンドの展開や、5Gモバイル通信の試用の支援等。

    NPIFは、2017年秋季財政演説においてさらに約80億ポンド増額され、約310億ポンドに拡大

    2009 2016 改善幅

    英国 ▲8.4 ▲0.6 7.8%pt

    日本 ▲7.3 ▲3.0 4.3%pt

    7

  • ○ 与野党問わず、政治家は、「国民に対して財政問題の重要性を訴えるのは、政治の重要な責任」との考えの下、健全な財政の必要性や財政赤字が国民生活にもたらす負の影響をアナウンス。

    英国:財政健全化に対する国民意識

    労働党の財政ルール(2017年総選挙マニフェスト)• 5年以内に経常的財政収支を均衡• 国債は投資的経費の範囲内• 5年後の債務残高対GDP比を現状より引下げ

    フィリップ・ハモンド財務大臣スピーチ抜粋「債務を減らす。(中略)納税者のお金が、学校や病院のために使わ

    れるのは見たいが、債務の利払いのために無駄遣いはしたくはない。そして、将来世代に平等な機会を与えたい。(中略)債務削減と英国の将来のための投資をバランスを図っていく。(2018年春季予算)」

    「債務は未だにとても高く、削減する必要がある。これはイデオロギー的な理由ではない。過剰な債務は経済の安定を弱らせ、ショックに対して脆弱になるからである。また、負担を不当に次の世代に渡してしまうことになるからだ。(2017年秋季予算)」

    Gov.uk

    (海外調査で聞かれたコメント)・ 「国民に対して財政問題の重要性を訴えるのは、政治の重要な責任」・ 2010年総選挙の際には、欧州債務危機の影響もあり、国民の中に危機感が共有され、財政健全化の必

    要性が説得力を持っていた。国民に財政健全化への理解を持ってもらうためには、日ごろからの財政に関する情報発信が重要。

    8

  • 英国:ポイント

    政府も民間エコノミストも、財政責任庁の経済財政見通しの正確性、客観性に対して高い信頼を寄せているが、その背景には、 同庁は、最低でも年1回、過去に発表した見通しの評価を行うなど、予測に関する透明性・説明責任等が高いことなどがある。

    財政健全化に向けては、スペンディングレビューによる歳出見直しを計画的に実施しているが、その際、「財政再建は、財務省だけの仕事ではなく、政府全体の責任」との考えの下、各省庁も主体となり、複数年度の歳出改革を計画。さらに、歳出圧力が高い社会福祉分野では目安を設け、未達の場合には追加措置等を実施。

    財政目標の達成状況等は、年2回、目標の達成可能確率が50%以上か否かを分析し、進捗状況を踏まえて迅速に翌年度の予算編成に反映。

    党派を超えて、政治家は財政健全化にコミットしており、「国民に対して財政問題の重要性を訴えるのは、政治の重要な責任」との考えがある。政府・行政が財政健全化に強くコミットすることで、国民の中の財政健全化に対する理解の醸成につながっている。

    9

  • - イ タ リ ア -

    10

  • ○ リーマン・ショックや欧州債務危機の影響が大きく、2012年、2013年にかけてマイナス成長。近年はプラス圏で推移しているものの、構造改革の遅れや銀行の不良債権問題などが重石となり、低成長が続く。

    ○ 財政面では、利払費の水準が高く財政収支は赤字が続くものの、プライマリーバランスについては、1992年以降、リーマンショックや欧州債務危機時を除き、一貫して黒字で推移。債務残高対GDP比はようやく増加に歯止めがかかりつつある(2019年以降、低下する見通し)。

    イタリア:経済・財政状況、今後の見通し

    ベルルスコーニ首相

    プロディ首相

    ベルルスコーニ

    首相

    モンティ首相

    レッタ

    首相

    レンツィ首相

    ジェンティロー

    二首相

    ▲ 2.4

    ▲ 7

    ▲ 5

    ▲ 3

    ▲ 1

    1

    3

    5 プライマリーバランス対GDP比実質経済成長率

    GDPギャップ財政収支対GDP比

    (%)

    (年)

    (見通し)

    フォルッァ・

    イタリアルニオーネ

    自由の人民、北部同盟

    実務家内閣民主党、

    新中道右派、無所属等

    民主党、新中道右派、

    無所属等民主党、

    新中道右派、無所属等

    2016年132.6 %

    2017年133.0 %

    30

    50

    70

    90

    110

    130

    150

    40

    45

    50

    55債務残高対GDP比(右軸)

    歳入対GDP比

    歳出対GDP比

    (%) (%)

    (年)

    (見通し)

    < 経済・財政指標の推移 > < 歳出・歳入、債務残高対GDP比の推移 >

    (出所)IMF 「World Economic Outlook」(2017年10月)(注)数値は一般政府ベース

    11

  • 財政健全化目標の策定・進捗管理

    ① 構造的財政収支(一般政府):2020年度までに均衡化(経済財政文書(安定化プログラム)で規定)

    ② 債 務 残 高 (一般政府) :対GDP比60%超の部分を直近3か年平均で1/20以上削減(同上)

    イタリア:財政健全化目標の策定・進捗管理

    (出所)IMF 「World Economic Outlook」(2017年10月)

    < 財政健全化目標の進捗状況 >

    ※ 補正予算は、税収上振れ分等を活用して拡張的なものを編成可能であるが、近年は財政目標を達成するための追加削減策など緊縮的なものが編成されている。

    ・経済財政省は、毎年4月の「経済財政文書」の中で、経済財政見通し、3年以上の財政健全化目標及び歳出削減策を提示。

    ・経済財政省は、予算法案の中で、各省における3か年の歳出目標(シーリング)をトップダウンで決定。各省は、その達成のため、規制改革等の提案を行う。

    ・予算法成立後、経済財政省と各省で覚書を締結し、達成見通し、定量的なモニタリング指標を盛り込む。

    ・(翌年)年2回の「経済財政文書」の改訂の中で、実施状況について自己評価。評

    実施

    80

    90

    100

    110

    120

    130

    140

    ▲ 6

    ▲ 5

    ▲ 4

    ▲ 3

    ▲ 2

    ▲ 1

    0

    1

    2

    2001

    2002

    2003

    2004

    2005

    2006

    2007

    2008

    2009

    2010

    2011

    2012

    2013

    2014

    2015

    2016

    2017

    2018

    2019

    2020

    2021

    2022

    債務残高対GDP比構造的財政収支(対GDP比)

    【収支均衡】

    (見通し)

    ①2019年に、+0.1%となり、目標達成見込み

    ②債務残高目標

    (右軸)

    (年)(年)(年)(年)

    (%) (%)

    ○ 債務残高対GDP比ではなく、政府が毎年の財政運営でコントロール可能な「財政収支」が重要

    • 「債務残高対GDP比は、成長率の動向により左右され、特に経済の低迷期には見通しが難しく、目標として望ましくない。重要なのは、利払費まで含めた「財政収支」。」

    ○ 経済成長に配慮した財政健全化の推進

    • 「経済安定期の緊縮財政は、市場からの国債の信認を高めるなどのメリットがあり、経済低迷期の財政健全化は経済にマイナスの影響がある。昨年、目標が後倒しされたのは、ようやく開始した経済成長を腰折れさせないため。」

    (議会予算局、民間シンクタンクへのヒアリングより)

    財政健全化に対する考え方

    策定

    反映

    12

    ・議会予算局が、政府の経済財政見通しや目標の達成状況を評価し、政府はこれも参考に。

    ・必要な場合には、議会での承認を経て目標を変更。なお、目標未達と見込まれる場合には、補正予算を編成するなど是正措置を検討(※)。

  • ○ イタリアでは、2013年以降、スペンディングレビューを実施。この他、地方政府に対して個別・具体的な財政規律を設定。政府がコントロール可能な名目の実額ベースで見た歳出について、しっかりと規律を設定。

    イタリア:歳出合理化策

    年 2014 2015 2016 2017 2018 2019

    合理化額(億ユーロ) 36.1 180.0 250.3 299.5 315.0 268.3

    〔2013年 スペンディングレビューを導入〕

    • 2013年より、首相府直属のスペンディング委員を常設。委員は、民間部門のリーダーなど政府外部の者を中心に指名。

    • その下に、各省担当者、学界、その他専門家などから構成される分野別グループを設置。テーマ別レビューを実施。

    〔2016年 財政制度改革による規律強化〕

    • 経済財政省は、予算成立後、各省との間で向こう3年間の歳出計画等に関する覚書を締結。覚書には、達成見通し、定量的なモニタリング指標等を盛り込む。

    • 達成状況については、翌期以降の予算編成に活用。⇒ 経済財務省が財政運営を主導し、中期財政目標の達成

    を確実に(2017年度予算編成より実施)。

    〔スペンディングレビューによる歳出合理化〕

    ※ 2017年以降は見通し

    ○ 州、県等の地方自治体に均衡予算を義務付け※ 予算と決算の両時点で、歳出(借入金の支払いを除く)と歳

    入の収支均衡を求めている。違反した場合、職員採用ができないといったペナルティあり。2016年4月施行。

    ○ 医療支出の3か年シーリングを設定

    国と地方自治体との間で3か年の医療支出の負担に

    ついて合意。収支均衡等が達成できない場合、個人所得税の引上げや、赤字削減計画の策定等の是正措置が求められる。

    この他、調剤支出に対するシーリングも設定(2017年では、国家医療サービスの財政の14.85%を上限)。

    ※ 計画では、①3年間で赤字を回復するための方策、②計画の実施状況を監視・検証する手段を求められる。

    ▲ 2

    ▲ 1

    0

    1

    2

    6

    8

    10

    12

    14

    16

    18

    2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

    財政収支対GDP比(右軸) 歳出対GDP比 歳入対GDP比

    (%) (%)< 地方政府の財政状況の推移 >

    (出所)OECD 「National Accounts」

    スペンディングレビュー

    (出所)経済財政省 「経済財政文書」

    地方政府に対する財政規律・歳出キャップ

    (年) 13

  • ○ 欧州債務危機時、付加価値税の引上げや年金・医療費の抑制などが進められ、国民の実生活に影響を与えるとともに、失業率の上昇等によって大規模なデモやストライキが多発し、社会情勢も不安定に。

    ○ こうした状況を受けて2011年に樹立されたモンティ政権においても、緊縮財政が続けられ、こうした改革を続けざるを得なかったとの評価がある一方、国民の中には当時の緊縮財政に対する批判も。経済が安定し、GDPギャップがマイナスでない時こそ財政再建の好機であり、危機に備える観点で重要との声もある。

    イタリア:財政健全化に対する国民意識

    モンティ政権は、債務危機から脱するために国民に大きな痛みを求めざるを得ない状況を踏まえ、年金改革等の長期的な視点に立って改革を断行。

    〔民間シンクタンクからのヒアリング〕「モンティ政権下の緊縮財政は、景気状況が悪い中で増税が行われ、その結果、さらに消費は落ち込み、雇用は悪化。結局、財政を緊縮したのに財政赤字は依然残るなど矛盾も見られた。アウトプットギャップがマイナスの時は、緊縮財政にはタイミングが悪かった。もっと早く財政再建に取り掛かるべきだった。」

    財政危機に陥ったイタリアでは、国民生活に財政状況の悪化の直接的な影響が表れる事態に。

    付加価値税の引上げ(2011年:20%→21%)

    年金・医療費の抑制(退職後年金の受取り開始に猶予期間を設定)

    失業率悪化(2012年の若年失業率:35.3%)や緊縮財政に反対する大規模なデモやストライキの発生

    予算削減によるごみ収集の停止など衛生状況の悪化

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

    < 失業率の推移 >

    若者(15~24歳) 全体

    (%)

    (年)

    (出所)OECD Stat

    ▲ 7

    ▲ 5

    ▲ 3

    ▲ 1

    1

    3

    2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

    財政収支 実質経済成長率 GDPギャップ

    (%)

    (年)

    成長率はマイナスが続く

    (出所)IMF 「World Economic Outlook」(2017年10月)

    欧州債務危機時のイタリア 危機からの脱却時の取組

    14

  • イタリア:ポイント

    同国は、リーマンショックや欧州債務危機時を除き、1992年以降、プライマリーバランスが一貫して黒字で推移。3か年の歳出計画等の歳出規律を梃にして、各省の自律的な歳出削減努力を促すことによって財政健全化が進む。

    地方政府に対しても、例えば、地方自治体の医療支出に3か年シーリングを設定し、収支均衡等が達成できない場合には、個人所得税の引上げなどの是正措置等の実施を求めるなど、中央・地方の政府等が一体となり、財政健全化が進む。

    こうした取組の結果、足もとでは、低成長や巨額な債務残高に起因する利払費負担等を背景に財政収支赤字から脱していないものの、その赤字幅は着実に縮小し、堅実な財政運営による成果が表れつつある。

    欧州危機時には、モンティ政権下での緊縮財政によって信用不安の鎮静化に成功したが、国民に大きな痛みをもたらしたとの反省がある。このため、経済が安定し、GDPギャップがマイナスでない時こそ財政再建の好機との声がある。

    15

  • 出張者:遠藤典子委員、神子田章博委員 日 程:平成30年2月5日~2月9日 訪問先:英国、イタリア

    出張者:赤井伸郎委員、宮島香澄委員 日 程:平成30年2月5日~2月9日 訪問先:フランス、スウェーデン、OECD

    出張者:田近栄治分科会長代理、土居丈朗委員 日 程:平成30年2月12日~2月16日 訪問先:ドイツ、オランダ、EU(ベルギー)

    出張者:大槻奈那委員 日 程:平成30年2月12日~2月16日 訪問先:米国、カナダ、IMF

    調査体制及び調査日程

    1.欧州A

    2.欧州B

    3.欧州C

    4.北 米

    <欧州>

    <北米>

    16

  • - フ ラ ン ス -

    17

  • 2.0

    ▲ 2.9

    ▲ 7.2

    ▲ 3.4

    ▲ 8

    ▲ 6

    ▲ 4

    ▲ 2

    0

    2

    4

    プライマリーバランス対GDP比実質GDP成長率GDPギャップ財政収支対GDP比

    2016年96.3 %

    2019年97.0 %

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    45

    50

    55

    60

    債務残高対GDP比(右軸)歳出対GDP比(左軸)歳入対GDP比(左軸)

    (出所)IMF「World Economic Outlook」(2017年10月) (注)数値は、一般政府ベース

    フランス:経済・財政状況

    < 経済・財政指標の推移 > < 歳出・歳入、債務残高対GDP比の推移 >(%)

    (年)

    シラク(共和国連合)

    サルコジ(国民運動連合)

    オランド(社会党)

    マクロン(共和党)

    (年)

    (%) (%)

    ○ 経済面では、リーマン・ショックの影響により実質GDP成長率が2009年に▲2.9%まで落ち込んだものの、経済対策が功を奏し、翌2010年には2.0%に回復。その後も企業の設備投資などに支えられ、堅調な成長を維持。

    ○ 財政面では、リーマン・ショックの影響により、財政収支が2009年に▲7.2%まで悪化したが、その後、歳出面でシーリングの導入や医療保険支出目標(ONDAM)の強化を図るとともに、歳入面で、富裕税・付加価値税の引上げ等、歳出・歳入両面からの取組により、着実に改善。

    (見通し)

    (見通し)

    18

  • 実施

    0

    30

    60

    90

    120

    ▲ 9

    ▲ 6

    ▲ 3

    0

    2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022

    債務残高対GDP比(右軸)構造的財政収支対GDP比(左軸)財政収支対GDP比(左軸)

    <目標の達成状況>目標達成に向けた取組

    フランス:財政健全化目標の策定・進捗管理

    ① 構造的財政収支(一般政府):▲0.4%以下(2018-22複数年財政計画法で中期目標として規定、直近の見通しは予算法でも規定)

    ② 財政収支(一般政府):2017年に▲3.0%以下(安定化プログラムで目標とされたほか、2018年予算法、2018-22複数年財政計画法でも2017年に▲3.0%以下が達成される見通しを規定)

    ①構造的財政収支目標

    (%)(%)

    (年)

    目標延期(2023年達成見込み)

    (見通し)

    ○ 景気低迷の長期化を受けて、2013・2015年に財政収支▲3%以内とする目標を2年後に先送り(それぞれ2015年・2017年へ)。

    後ろ倒し幅は、「野心的な健全化ペースでありつつも、実現可能な期限としてEUと交渉した結果、政治的に設定されたもの」、との説明。

    目標の変更と反応等

    ※ このほか、政府は、毎年度EUに対して安定化プログラムを提出。

    ○ 歳出対GDP比がユーロ圏内で最も高い水準であることや、歳入増加に伴う歳出増大を回避する観点から、歳出対GDP比についても、財政運営上の目標として設定。

    その他の目標

    ②財政収支目標過去2度の延期の末、2017年

    に目標達成見込み(▲2.9%))

    (注)首相が予算総額の上限、歳出の優先分野等を示し、各省と折衝。中央政府の歳出は、硬直的歳出と調整可能な歳出に分け、それぞれの歳出ルールを適用。

    ・概ね2年に1度の複数年財政計画法の策定の中で、必要に応じて目標を見直し。

    (歳出対GDP比を約3%低下(2018年:54.0% ⇒ 2022年:51.1%))

    (出所)フランス政府「複数年財政計画法、付属資料、stability programme」、国立統計経済研究所(INSEE)「National Account2016」等

    反映

    策定

    評価

    ※ 計画法・予算法策定に当たっては、独立機関である国立統計経済研究所が策定した経済見通し等を用いるほか、法案提出前には独立財政機関の財政高等評議会が意見を出す。

    19

    ・複数年財政計画法や予算法の中で、政府が新たな目標を提案し、議会の承認やEUの審査を経て策定。

    ・複数年財政計画法では、目標達成のために必要な改革や、複数年の部門別(中央政府、地方政府、社会保障)分野別の歳出上限も定めており、政府は、これに沿って、翌年度の予算法案を作成。議会やEUの承認を経て成立。

    ・財政高等評議会が目標からのかい離状況を評価し、決算法案時に審議。

    ・計画法からのかい離がある場合、政府はその要因を説明するとともに、健全化案を提案し、 翌年度の予算法案に反映。

  • ○ 特別会計、地方交付金、EUへの拠出金を含む歳出総額、及びそのうち調整可能な歳出の総額のそれぞれに2022年までの上限を設定。

    ○ 歳出総額の伸びをインフレ率以内に抑制。さらに歳出の中で調整可能な分野(国債費等以外)を選定し、その分野の歳出については、実額の伸びをゼロとする。2004年から適用され、2017年以外はルールを遵守。

    フランス:歳出合理化策(中央政府)

    ○ 一般会計の政策分野別歳出と特別会計等を含む歳出総額について、複数年にわたる上限を設定。

    ○ 複数年財政計画法において、政策分野毎に向こう3か年の歳出上限(シーリング)を設定。

    ○ 国債費、公務員年金拠出、還付を除く中央政府の一般会計予算。

    【シーリング設定の例(2018-2022計画法)】

    ○ 上限は各政策分野の方針を反映しつつ、全体としては抑制。

    (年)2017

    2018年予算法の編成2018年予算法の執行2019年予算法の編成

    【2018-2022】年複数年財政計画法の

    策定作業

    2019年予算法の執行2020年予算法の編成

    2020年予算法の執行2021年予算法の編成

    2021年予算法の執行2022年予算法の編成

    【2020-2024】年複数年財政計画法の

    策定作業

    3か年政策分野別シーリングの設定(計画法) 5か年にわたる歳出総額上限の設定(計画法)

    歳出総額上限:4,254(2018年)、4,327(2019年)、4,387(2020年)、4,428(2021年)、4,509(2022年)

    2018-2022年複数年財政計画法①3か年シーリングの設定②5年間の財政目標の設定

    2022年予算法の執行2023年予算法の編成

    2018 2019 2020 2021 2022 2023

    2020-2024年複数年財政計画法①3か年シーリングの設定②5年間の財政目標の設定

    新しい計画法が策定された場合は以前の計画法は新計画法に更新

    計画法・予算法策定サイクル(イメージ)※複数年財政計画法は、原則2年に1度策定されるが、策定頻度に特段の定めはなく、必ず策定されるわけではない。

    政策分野 2017(前年の予算法)

    2018 2019 2020

    学校教育 500.1 514.9 520.9 529.5

    移民・庇護・統合 11.0 13.8 13.6 13.6

    労働 152.7 151.7 129.6 126.8

    3か年シーリング

    (単位:億ユーロ)

    31分野

    対象経費

    上限設定の考え方

    以前の歳出ルール・実績

    歳出総額硬直的経費

    ○一般会計歳出のうち国債費。未来投資

    ○公務員年金など調整可能でない特別会計歳出

    ○地方交付金・地方向け特別会計歳出○EUへの拠出金

    調整可能な歳出

    ○一般会計歳出(国債費、公務員年金拠出、還付、未来投資を除く政策経費)

    ○附属予算、調整可能な特別会計歳出、割当上限の定められた特定財源

    調整可能な歳出の上限:2,579(2018年)、2,595(2019年)、2,605(2020年)、2,625(2021年)、2,645(2022年) *インフレ分を除く実質伸び率は、2019年が▲0.5%、2020年以降は毎年▲1.0%

    (単位:億ユーロ)

    20

  • フランス:歳出合理化策(社会保障)

    ○ 社会保障分野でも、歳出目標を設定するとともに、歳出のモニタリングにより歳出を抑制。

    ○ 社会保障支出のうち、医療保険支出については、伸び率にも目標を設定するほか(ONDAM、1997年~)、履行確保措置等も設け、厳格に管理。

    【目標値設定までのプロセス】○ 各地域の医療機関のニーズ把握を踏まえ、改革を実施しない場合の

    医療保険支出の自然増を算出。そこから削減可能な分野を精査し、目標の伸び率を算出。

    【目標達成の実績・履行確保】○ 支出状況を年間を通じて「アラート委員会」がモニタリングし、目標を

    超えるリスクが生じた場合には、医療機関への投資的予算を凍結する等により、目標を遵守。(2010年~)※ 医療費の償還にかかる費用は凍結しない。

    ○ 2010年以降は、7年連続で目標を達成中。

    医療保険支出目標(ONDAM)

    医療保険支出総額1,952億ユーロ(2.3%)

    開業医889億ユーロ(2.4%)

    病院807億ユーロ(2.0%)

    高齢者向け施設・サービス93億ユーロ(2.2%)

    障がい者向け施設・サービス112億ユーロ(1.8%)

    地域介入基金34億ユーロ(3.1%)

    その他の支出18億ユーロ(4.3%)

    (注)カッコ書きは前年度比の伸び率

    (出典・出所)フランス政府「社会保障予算法、付属資料」、OECD「Fiscal Sustainability of Health Systems」。

    ○ 社会保障は、国の一般会計・特別会計ではなく公的金庫にて経理。医療、年金(基礎年金部分)、労災、家族手当制度の4部門に分かれており、それぞれ独立した金庫(医療と労災は同一金庫)が管理。国民は加入が義務付けられており、複数年度計画法において、これらの義務的社会保障支出の総額に3か年にわたる上限を設定。

    (2018年:4,977億ユーロ、2019年:5,081億ユーロ、2020年:5,191億ユーロ)

    ○ 昨年7月にフィリップ首相が表明した2020年までの社会保障財政収支全体の均衡という目標達成に向け、部門毎の収支・歳出・歳入の見通しが示されている(2019年収支均衡達成見込み)。

    社会保障支出の管理

    2017 2018 2019 2020 2021

    医療 ▲4.1 ▲0.7 1.1 3.9 6.7

    労災 1.1 0.5 0.8 1.2 1.7

    家族 0.3 1.3 2.4 3.5 4.9

    年金 1.5 0.2 ▲0.9 ▲2.3 ▲3.8

    老齢連帯年金 ▲3.6 ▲3.5 ▲2.7 ▲1.5 ▲0.8

    社保財政収支 ▲4.9 ▲2.2 0.6 4.9 8.6

    (単位:億ユーロ)

    2018年は、自然増を4.5%、ONDAMを2.3%と設定。2017年の2.2%よりも若干高いが2001年以降の平均的な伸びよりも低い数値。2.3%とするためには実額で42億ユーロの削減が必要であり、医薬品の価格引下げ(4.8億ユーロ)やジェネリック医薬品の販売促進(3.4億ユーロ)等、様々な改革により対応する予定。

    2018年社会保障予算法における収支見通し

    2018年のONDAM・達成状況

    (注)2017年は見込み、2018年は目標。

    目標達成

    3.3%

    3.0%

    2.9%

    2.6%

    2.4% 2.

    6%

    2.1%

    1.8% 2.

    10%

    2.30

    %

    3.6%

    2.6% 2.7%

    2.3%

    2.2% 2.4%

    2.1%

    1.8%

    0%

    1%

    2%

    3%

    4%

    2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018

    ONDAM実績

    21

  • 0

    ▲ 15

    ▲ 35▲ 33

    ▲ 24

    0

    ▲ 40

    ▲ 30

    ▲ 20

    ▲ 10

    0

    2013 2014 2015 2016 2017 2018

    2.8

    2.0

    1.61.7

    1.2 1.2 1.2 1.2 1.2

    2.5

    1.8

    ▲ 0.2

    9.0

    9.5

    10.0

    10.5

    11.0

    11.5

    12.0

    ▲ 0.5

    0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2.5

    3.0

    2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022

    ODEDEL(左軸)実績(左軸)歳出対GDP比(右軸)歳入対GDP比(右軸)

    フランス:歳出合理化策(地方政府)

    ○ 地方財政支出目標(ODEDEL)の導入により、地方政府の歳出抑制に成功。この結果、国からの地方交付金の抑制も可能となり、国・地方の双方の財政状況が改善。

    ○ 2014年から地方政府の支出伸び率目標である「ODEDEL」を設定。その後、毎年目標を達成。

    ○ こうした取組等により、歳出対GDP比は順調に減少。

    ○ 国からの地方交付金の額は、2014年から削減が進んだが、今後は一服する見込み。

    ○ 2018年予算より、国と一定規模以上の自治体の間で契約を結んで当該自治体における経常経費の水準目標を定め、当該自治体がこの目標を達成できなかった場合は翌年度の交付金を減額する仕組みを導入。

    ※ 減額した分の交付金を他の自治体等や他の予算に振り分けることはしないため、その分は結果的に予算が節約される。

    地方財政・ODEDELの現状

    (%) (%)

    (見通し)

    (億ユーロ)

    (年)

    <地方交付金の変化額の推移(前年度比) ><地方政府の歳出・歳入対GDP比・ODEDELの推移 >

    (見通し)

    (年)(出所)フランス政府「複数年財政計画法、予算法付属資料」

    22

  • フランス:財政健全化目標の進捗管理

    ○ 目標の進捗状況を確認し、政府に是正(健全化策)を求める仕組みが法定化されているものの、少なくともこれまでは健全化策ではなく、目標の下方修正により対応がなされ、十分に機能していない。

    目標の進捗管理のプロセス

    ○ 2013年決算法案審議時に、財政高等評議会が、当時の構造的財政収支と2012-2017計画法で定めた構造的財政収支の間に約1.5%のかい離があり、「重大なかい離」と指摘。

    ○ このため、政府は、策定中の2014-2019計画法の構造的財政収支の健全化パスを下方修正し、実現可能な目標に再設定した上で、計画法を策定。

    ○ この結果、欧州委員会と合意していた、2015年度の財政収支対GDP比▲3%等の目標達成2017年度に延期。

    是正の実績

    12月

    予算執行

    2月

    会計検査院

    年次検査報告

    6月1日まで

    決算法案国会提出

    【会計検査院】決算法案には、会計検査院作成の

    検査結果等に関する以下の報告書等を添付することが法定化・予算管理と結果に関する報告書・国の決算の正規性・誠実性・忠実性

    (fidéllté)に関する証明

    決算法案審議

    【財政高等評議会】

    決算法案提出時に、複数年財政計画法の健全化パスから重大なかい離の有無を特定。必要に応じ、報告書を作成。

    ・財政高等評議会がかい離を指摘した場合、政府はかい離の要因について決算審議時に説明。

    ※ 重大なかい離とは1年間の健全化パスからのかい離が0.5%以上、又は2年間の平均で0.25%以上のかい離

    次年度予算の

    基本方針を議論

    1月~12月

    予算法成立

    6月~

    ・政府は財政高等評議会からの指摘を踏まえ、必要に応じて財政健全化策を提案。

    9月

    予算法案国会提出

    ※これらの手続は、予算組織法(2001年)や財政プログラム及びガバナンスに関する組織法(2012年)において規定

    構造的財政収支目標の是正

    (出典)Haut Conseil des Finances Publiques「Activity Report 2013-2015」等23

  • フランス:ポイント

    フランスは、財政健全化目標(財政収支対GDP比▲3%)の達成期限を過去2回延期。昨年、政権を獲得したマクロン大統領は、市場からの信認を取り戻すため、財政規律を重視し、徹底的な削減を実施。この結果、2017年度にこの目標を達成し、EUの下で進められてきた過剰財政赤字手続を脱する見込み。

    中央政府の歳出を調整可能なものと困難なもの(硬直的歳出)とに区分し、前者は2019年以降インフレ分を除く実質伸び率をマイナスとする等、厳格な規律を採用。

    中央政府のみならず、地方政府、社会保障においても歳出合理化目標とその履行確保のための仕組みが設けられており、実績としても目標を達成。

    財政健全化目標の進捗・達成状況を確認し、政府に是正(健全化策)を求める仕組みが法定化されているものの、少なくともこれまでは健全化策ではなく、財政健全化目標の下方修正により対応がなされ、十分に機能していない。

    24

  • - O E C D -

    25

  • 26

    OECDによる財政ルールの影響等に関する分析・整理

    ○ 様々ある財政ルールには、財政健全化に向けたコミットメントの維持と経済変動時の裁量の確保というトレードオフから見て一長一短があり、こういった点も考慮しつつ、各国で適切な財政ルールを設定する必要がある。

    財政規律の促進 財政安定化への影響 リスクと副作用

    予算収支ルール<例>・財政赤字目標 (対GDP比)・プライマリーバランス黒字化目標

    ・ 数値的に予算収支のルールが示されることで、より高い財政黒字や低い財政赤字につながる。

    ・ 財政への姿勢を判断する具体的なベンチマークとなる。

    ・ 厳格な予算収支ルールは、カウンターシクリカルな財政政策の実施に当たって柔軟性を欠く。

    ・ また、国・地方等の政府レベル間の調整が弱くなり、改めてプロシクリカルな政策を誘発する傾向。

    ・ 財政健全化を進める政府に、公共投資のような、成長を促進するが、政治的な優先度が低い歳出のカットに過度に依存させ得る。

    ・ このため、投資的経費を除いた収支均衡(ゴールデンルール)目標がしばしば提案される。

    構造的財政収支ルール<例>・構造的財政収支赤字目標(対GDP比)・構造的財政収支均衡・構造的財政収支黒字(対潜在的GDP比)

    ・ 原理上、構造的財政収支ルールは財政規律を補強。

    ・ 景気循環の影響を取り除いたコア変数を目標とするため、裁量的な政策の範囲を明確に。

    ・ 柔軟性があり、自動安定化装置が完全に機能。

    ・ 実際、予算収支ルールよりも拘束力が弱く、景気循環の効果を考慮。

    ・ アウトプットギャップが計測手法に左右され、リアルタイムでの測定も困難。

    ・ アウトプットギャップと潜在成長

    率の見通しが楽観的・悲観的であると判断を誤らせるおそれ。

    歳出ルール<例>・歳出=△%(対GDP比)・歳出の名目又は実質伸び率目標を設定・歳出伸び率=経済成長率・歳出伸び率=物価上昇率+人口伸び率

    ・ 予算編成過程における説明責任と透明性を高め、財政規律を向上。基礎的な歳出に対する政府のより強いコントロールが可能。

    ・ オランダ、デンマーク、スウェーデン、フィンランドの財政の枠組みにおいて重要な役割を発揮。

    ・ 歳出ルールを適切に設計すれば、自動安定化装置の機能は妨げられない。

    ・ 想定以上の歳入があった場合のプロシクリカルな歳出を抑制。

    ・ 特に景気が悪い時期における予算の質と削減に関して、予算収支ルールと同様の欠点あり。

    ・ 直接的な支出が適当と考えられる様々な政策目的にも、税額控除等を活用してしまうおそれがある。

    歳入ルール<例>・歳入伸び率=経済成長率・想定より歳入が伸びた場合のルール

    を設定

    ・ 税負担の抑制に有効。

    ・ 財政赤字への影響は、歳入が限られ、政府が行き過ぎた歳出を抑制する副次的効果あり。

    ・ 想定以上の歳入の活用方法を予算法に事前に定めれば、プロシクリカルな政策を回避可能。

    ・ 歳入ルールはマクロ経済の安定化に対応していない。しかし、想定以上の歳入があった場合の歳出を制限することが可能。

    ・ 歳入の景気循環的要素の立証が困難で、追加の歳出に繋がるおそれ。資産価格の上昇が長引く国では、公的支出の増加につながり、そのためプロシクリカルな政策や持続不可能な財政政策となるリスクが高まった例もある。

    (出典)OECD「Achieving-prudent debt targets using fiscal rules」(2015) 26

  • 27

    OECDによる財政健全化の進め方・歳出合理化に関する指摘

    ○ 経済成長が継続できるよう着実に健全化を進めるとともに、好況期にこそ歳出改革等を実施することが重要。

    目標達成年限

    ○ 歳出を画一的に削減するのではなく支出全体を見直し、削減・合理化の対象を決定することが望ましい。

    財政再建ペース

    財政健全化に向けた取組

    財政健全化の進め方に関する指摘

    ○ 団塊の世代が後期高齢者に移行し、社会保障に係る国庫負担が増大する2025年よりも前に目標を達成することが重要。

    ○ 経済成長が持続できるように、徐々に、着実に健全化を進めていくべき。また、財政再建ペースを考える上では特に、債務残高、潜在成長率、金利上昇による債務への影響(感応度)等を考慮することが重要。

    ○ 好況期には歳出改革が実施可能。日本にとって今が好機であり、計画どおりに歳出改革を実行すべき。

    ○ 国民が安心・信頼を持てるようなフレームワークとすることが重要。実現可能で、合理的な歳入・歳出改革の規模、経済成長率、金利の推移等の見通しも必要。

    歳出合理化策に関する指摘

    総 論

    各 論

    ①公共投資・・・ 資本形成が進んでいる国では、新たな投資のGDPへの寄与率が低い。

    ②教育・・・ 教育等の特定の公共支出項目は、潜在成

    長を促進する一方、年金や公的補助金への支出は潜在成長を低下させる。

    Japan

    (出典)OECD「The Positive Effect of Public Investment on Potential Growth」(2016),OECD「The Effect of Size and Mix of Public Spending on Growth and Inequality」(2016)等

  • - ス ウ ェ - デ ン -

    28

  • 2015年43.9 %

    0

    20

    40

    60

    45

    50

    55

    債務残高対GDP比(右軸)歳出対GDP比(左軸)歳入対GDP比(左軸)

    ▲ 5.2

    1.9

    0.2

    ▲ 6

    ▲ 4

    ▲ 2

    0

    2

    4

    6

    プライマリーバランス対GDP比実質GDP成長率GDPギャップ財政収支対GDP比

    (出所)IMF「World Economic Outlook」(2017年10月) (注)数値は、一般政府ベース。

    スウェーデン:経済・財政状況

    < 経済・財政指標の推移 > < 歳出・歳入、債務残高対GDP比の推移 >(%)

    (年)

    ペ―ション(社民党)

    ラインフェルト(穏健党)

    ロヴェーン(社民党)

    (年)

    (%) (%)

    ○ 経済面では、リーマン・ショックの影響により実質GDP成長率が2009年に▲5.2%まで落ち込んだものの、財政黒字であるなど比較的良好な状態(財政収支対GDP比+1.9%(2008年))で危機を迎え、雇用対策を中心に、累次にわたる景気刺激策を実施し、翌年には成長率が大幅に回復。その後も好景気を持続している。

    ○ 財政面では、リーマンショック後でもシーリングを維持するなど財政規律を保ち、財政収支は概ね▲1.0%~+1.0%の間で安定的に推移。債務残高対GDP比も減少している。

    (見通し) (見通し)

    29

  • 0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    ▲ 2

    ▲ 1

    0

    1

    2

    3

    4

    債務残高対GDP比(右軸)財政収支対GDP比構造的財政収支対GDP比

    (出所)IMF「World Economic Outlook」(2017年10月)、スウェーデン財務省「2018 budget bill」

    <目標の達成状況>

    スウェーデン:財政健全化目標の策定・進捗管理

    ① 景気循環平均財政収支対GDP比(一般政府):2027年までの間、+1/3%(予算案:2019年から適用。以前は+1%)

    ※ 過去10年間の財政収支、前後3年間(計7年間)の財政収支の平均や構造的財政収支が1/3%であるかを各々測定し、総合的に評価。

    ② 債務残高対GDP比(一般政府):2027年までに35%(±5%)の達成を目指す(議会決定:2019年から適用)

    (%)(%)

    (年)

    ①財政収支目標(1%⇒1/3%)

    目標達成に向けた取組

    ・8年毎に上記の目標水準等の財政フレームワーク全体について見直しを予定。

    ・春と秋に政府が進捗状況を議会に報告。・政府・財政政策委員会等は目標からのかい離状況を評価

    し、大きなかい離がある場合、政府は対応する必要(法定)。(注)財政政策委員会はかい離幅を0.5%を目安としている。

    ②債務残高目標(2027年までに35%)

    (見通し)

    ・一般政府ベースの黒字の目標を設定することが法定されており、その具体的な目標水準を議会が承認。

    EUが求める債務残高対GDP比の水準(60%)を大きく下回ることにより、経済危機等があった場合でも機動的に対応ができるようにストック目標の水準を設定。

    フロー目標は、そのストック目標を達成するために必要な水準を設定。(なお、経済分析庁では、景気循環平均財政収支 1/3%は、構造的財

    政収支0.5%相当とみている。)

    (注)2019年以降、政権が交代しても財政フレームワークが継続されるよう、見直しは8年毎とする仕組みを導入。

    (注)予算案の前提となる経済見通しについては、財務省のほか、外局の経済分析庁も作成。また、財政政策委員会(独立財政機関)が政府見通しを評価。

    ・毎年以下のプロセスで予算を編成。① 春に、翌年以降3年間のシーリングや経済見通し、経済・

    財政政策の方針等を政府が提案し、議会が議決。

    ② 秋に、春のシーリングを踏まえ、翌年度の予算案を制定。翌

    目標水準の考え方

    反映

    評価

    実施

    策定

    (※次ページで詳述)

    30

    ・地方自治体に対しても財政収支均衡義務を法定。赤字が生じた場合、3年以内に収支均衡に戻す必要あり。

  • 25

    30

    35

    40

    45

    50

    55

    60

    債務残高対GDP比

    (%)

    (年)

    ○ 債務残高の適切な水準については、様々な意見が存在し、「確定的な水準」について結論が出ず。

    ※ アイルランドのように、35%から急激に120%に達した例あり。成長見通しや金利などの経済指標の変動によって、最適な状況は変わりうる。

    ○ このため、EUの求める債務残高基準を大きく下回り、積極的な財政政策を実施してもこの基準を超えない程度の水準を保つという考え方の下、35%の±5%程度という幅のある目標を設定し、事後的に目標を検証する仕組みを設けることとされた。

    スウェーデン:新たな財政健全化目標の策定

    ○ 2019年から、新たな財政フレームワークを採用し、債務残高目標及びその達成のために必要な収支目標を盛り込むこととしている。毎年の予算編成においては、この収支目標が達成されるようシーリングを設定し、全体を通じて一貫性・関連性のあるフレームとしている。

    新たな目標設定までの経過

    2015.6 2016.9 2017.9 2017.12 2019~

    新たな目標策定に関する議論・考え方

    (出所)IMF「World Economic Outlook(2017年10月)」、スウェーデン財務省「2018 budget bill」

    景気循環平均財政収支+1%

    景気循環平均財政収支+1/3%

    債務残高対GDP比35%(±5%)

    ※目指す水準であり、数値は一定程度柔軟に捉えられている

    毎年の予算編成においてはフロー目標が達成されるよう、シーリングを設定

    EUが求める債務残高水準

    ※2016年までは実績。2019年までは政府の見通し。2020年からはイメージ。

    債務残高の水準

    達成年限

    収支目標の水準

    新たな目標と目標達成までのイメージ

    ・国会に有識者や関係機関をメンバーとする委員会を設置。

    ・目標見直しの検討について、国会が委員会に任命。

    新ルール開始の8年後に財政フレームワーク全体

    の見直しを実施予定

    ・景気循環平均財政収支は1/3に調整する。・債務残高は35%をアンカー(幅のある目標)と

    することで、顕著な役割を果たす。・収支と債務目標の見直しは、選挙期間ごとに

    実施すべき。・財政政策委員会が収支目標をより厳格にフォ

    ローアップし、枠組みを強化すべき。

    2017.4

    ・春期財政政策提案にて報告書の内容を全て支持する旨表明。

    ・報告書の内容を予算案に反映。

    予算成立

    新目標適用開始

    調査委員会設置

    調査委員会が政府

    に報告書を提出

    政府が報告書を支持

    予算案国会提出

    報告書の概要

    ○ 4年毎の選挙で政権が交代しても継続されるよう、2019年の新ルール開始の8年後(2027年)に設定。

    ○ 収支目標については、債務残高目標を8年後に達成する水準に設定。

    31

  • 32

    スウェーデン:歳出合理化策

    ○ 利払費を除く中央政府の全予算。

    シーリング対象歳出実績(対GDP比)

    シーリング額(対GDP比)

    (出所)スウェーデン財務省(注)2009年のシーリング額の名目伸び率は例年並であるものの、名目GDPが落ち込んだために対GDP比が増加し、突出したものである。

    ○ 財政健全化目標達成のため、毎年、向こう3か年の歳出上限(シーリング)を設定。シーリングを守るための措置も法定化しており、着実に歳出を抑制することに成功。

    シーリングの特徴

    ○ 過去、実績でみてシーリングを超えた例はない。

    シーリングの達成状況

    3か年シーリング

    法律により担保されたシーリングの遵守

    リーマンショック

    対象経費

    上限額決定までのプロセス

    上限設定の考え方

    シーリングと歳出実績の推移(対GDP比)(%)

    ○ 債務残高が安定的に減少するよう、当該年度における財政収支黒字幅が決定され、それを実現できるように、歳出上限が設定される。

    ○ 財務省において、財政政策委員会、経済分析庁、中央銀行等の意見も参考にしつつ、経済財政見通し(税収見込み)を策定。

    ○ 税収見込みを踏まえ、財務省が、今後の財政収支の黒字幅の水準を決定するとともに、向こう3か年の歳出総額シーリング案も決定。

    ○ その後、財務省が、政治的な優先度等も踏まえ、27の歳出分野ごとに上限額案を作成、各省と調整(大臣折衝も)。最終的には、財務大臣が決定。春期財政政策提案として議会に提出し、議決。

    ※ 各分野の上限額はシーリングより低く設定され、その差が予備費。

    【シーリング設定の例(春期財政政策提案2017)】

    ○ シーリングを超えなければ、各分野の歳出金額を増やす修正ができるが、各分野についても個別に議決されており、変更する場合は、議会の承認が必要。

    その際、代替となる同歳出分野の予算事項の減額を同時に提案する必要がある。また、恒久的な歳出の増加は、恒久的な歳出の削減をする必要がある。(ペイアズユーゴー原則の考え方と概ね同様)

    ○ 政府は、補正予算においても、既定のシーリングを超えて歳出を行うことができない。年度途中で予算を補正する必要が生じた場合は、他の予算からの充当や予備費で対応。

    政策分野 2017(見込み) 2018 2019 2020

    所得保障(疾病・障害) 1033 1026 1019 1017

    所得保障(家族・児童) 885 946 985 1014

    地方交付金 1055 1114 1169 1220

    予備費 381 476 765 1196

    歳出総額 12740 13370 13970 14710(単位:億クローネ)

    3か年シーリング

    27分野

  • ▲ 2

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    日本スウェーデンユーロ圏(16カ国)

    0

    20

    40

    60

    80

    ▲ 16

    ▲ 12

    ▲ 8

    ▲ 4

    0

    4

    8

    12

    スウェーデン:1990年代の金融危機

    ○ 1980年代後半に「バブル」を経験したのち、1990年初めから不動産ブームの終焉、資産価格の下落などの不況に突入。1991~1992年前半にかけて大手銀行3社が公的資金の注入や公的保証措置を求めるなど金融危機に直面。

    ○ 政府は、1992年秋~1993年末の間に金融システム支援対策費を投入し、財政収支は急激に悪化。

    ○ これに伴い、国債の信用が低下し長期金利が急騰、デフォルトの危機を迎えた。この間に、国内最大の生命保険会社が国債購入停止を表明(1994年7月)。

    (%) (%)

    債務残高対GDP比(右軸)

    財政収支GDP比(左軸)

    (年)

    < 財政収支、債務残高対GDP比、失業率の推移 >

    (年)

    (%) < 10年物国債金利の推移 >

    失業率(左軸)

    ○ 財政健全化のため、以下の取組を短期間で実施。・ 外来患者自己負担、薬剤自己負担の引上げ、

    児童手当の減額、介護手当の見直し(1995年)・ 高額所得者の所得税の一時的な引上げ(1995~1998年)、

    日刊紙への付加価値税の賦課(1995年)

    ○ 失業率も高騰、失業手当の給付率も従前賃金の90%から80%に引下げ(1993年)のほか、公務員のリストラも実施。

    ○ 1990年前半の金融危機により、短期間に国民に直接痛みを伴う改革を実施せざる得ない状況に直面。

    ○ 現在でも1990年代危機の際の対応は、選挙時に言及され、候補者はシーリングの重要性とシーリング範囲内での効率的な予算配分について議論。政府も当時の状況を詳細に分析し、現在の財政運営に活用。こうしたことを通じて財政健全化への国民的なコンセンサスが醸成。

    財政悪化に至る経緯

    国民生活への影響

    0.3%

    ▲10.9%

    8.6%

    10.3%

    (出所)IMF「World Economic Outlook」(2017年10月)、OECD「Economic Outlook102」(2017年11月) 33

  • スウェーデン:ポイント

    債務残高目標達成のために必要な財政収支目標の水準を決定し、また、財政収支目標の達成のため、毎年の歳出シーリングを設定するというように、目標の策定に当たっては、財政フレームワーク全体として一貫性・関連性を持たせている。

    シーリングは補正予算を編成する場合であっても、実績ベースで必ず遵守。その設定に当たっては、総額のみならず、各分野についても、(伸び率ではなく)名目の実額ベースで上限を定めることにより、厳格な歳出管理を行っている。また、シーリングを守るため、ある歳出分野を増加させる場合には、代替となる歳出の減額を同時に提案すること等も法定化。

    1990年代前半の金融危機で失業給付の切下げ、増税、公務員のリストラ等、国民に直接痛みの伴う改革を経験。これを踏まえ、現在でも選挙時には、候補者はシーリングの重要性とシーリング範囲内での効率的な予算配分について議論。政府も当時の状況を詳細に分析し、現在の財政運営に活用。こうしたことを通じて財政健全化への国民的なコンセンサスが醸成。

    34

  • 出張者:遠藤典子委員、神子田章博委員 日 程:平成30年2月5日~2月9日 訪問先:英国、イタリア

    出張者:赤井伸郎委員、宮島香澄委員 日 程:平成30年2月5日~2月9日 訪問先:フランス、スウェーデン、OECD

    出張者:田近栄治分科会長代理、土居丈朗委員 日 程:平成30年2月12日~2月16日 訪問先:ドイツ、オランダ、EU(ベルギー)

    出張者:大槻奈那委員 日 程:平成30年2月12日~2月16日 訪問先:米国、カナダ、IMF

    調査体制及び調査日程

    1.欧州A

    2.欧州B

    3.欧州C

    4.北 米

    <欧州>

    <北米>

    35

  • - E U -

    36

  • -12

    -10

    -8

    -6

    -4

    -2

    0

    2

    4

    6

    8

    -12

    -10

    -8

    -6

    -4

    -2

    0

    2

    4

    6

    8

    2005 2007 2009 2011 2013 2015 2017 2019

    フランス ドイツ

    イタリア オランダ

    スウェーデン 英国

    ユーロ通貨圏 (参考)日本成長率(ユーロ通貨圏、右軸)

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    2005 2007 2009 2011 2013 2015 2017 2019

    フランス ドイツ イタリア

    オランダ スウェーデン 英国

    ユーロ通貨圏 (参考)日本

    欧州主要国における財政健全化に向けた取組①

    ○ ユーロ圏経済は、欧州債務危機後の経済再生のための金融緩和と規律ある財政が両輪となって、域内経済の安定化と財政健全化が同時に進む。

    ○ ユーロ圏全体の財政赤字対GDP比は均衡に向かうとともに、債務残高対GDP比についても、イタリアなど一部の国で高止まりしているものの、2015年をピークに減少に転じている。

    <財政収支対GDP比>(%) (%) <債務残高対GDP比>

    ユーロ通貨圏

    (年)(年)

    (出典)OECD「Economic Outlook102」 (2017年11月)

    日本

    日本

    ユーロ通貨圏

    37

    (%)

    ユーロ通貨圏成長率

    (見通し) (見通し)

  • 欧州域内の財政健全化に向けた取組②

    ○ EU加盟国間の経済財政政策の協調のため、2011年に「欧州セメスター」を導入。欧州委員会は、各国の予算案等が「中期財政目標」に沿ったものかどうか評価し、必要に応じて是正措置を求めている。

    ○ さらに、域内各国の財政健全化の取組を推進するため、3年に一度、高齢化等を踏まえた長期的な財政の持続可能性等を分析した報告書を公表するとともに、毎年、経済動向等を踏まえて本報告書の分析を更新(※)。

    (参考)予防的・是正的措置安定・成長協定では、当初、過剰財政赤字手続の最終段階となる財務相理事会からの警告に従わない場合にのみ預託金又は制裁金を課すこととされてい

    たが、経済ガバナンス六法(2011年12月施行)により、以下の制裁措置を追加。当該措置は、欧州理事会において特定多数決による反対がない限り適用。① 各国の中期財政目標※から明らかにかい離している場合に、対GDP比0.2%の有利子預託金を課す。

    ※毎年欧州委員会に提出する安定化プログラムにおける目標② 過剰財政赤字の存在が決議された場合に、対GDP比0.2%の無利子預託金を課す。

    (注)既に①の預託金を納付している場合は、当該納付分が無利子預託金に転換される。③ 過剰財政赤字国が期限内に効果的な行動を実施しない場合に、対GDP比0.2%の制裁金を課す。

    (注)既に②の預託金を納付している場合は、当該納付分が制裁金に転換される。

    10月~11月

    ・ 各国は、欧州委員会に対して「中期財政目標」に沿って予算案を提出(10月15日期限)

    ・ 欧州委員会は、安定・成長協定の遵守状況について意見を表明(11月末期限。ただし、予算に盛り込まれた個別の政策の妥当性は対象外。)。

    12月

    各国が予算を決定。

    1月~6月(欧州セメスター)

    ・ 各国は、欧州委員会に前年度と向こう3か年の経済財政に関する「安定化プログラム」を提出。

    ・ 欧州委員会は、安定・成長協定に基づき財政健全化の状況のほか、規制環境等を評価し意見を表明。

    欧州委員会は、各国の予算案について評価し、安定・成長協定が定める義務に対する重大な違反が見られる場合には、委員会は加盟国に対して新たな予算案を3週間以内に提出することを求めることが可能。

    38

    (※) 「持続可能性レポート(Fiscal Sustainability Report)」を3年に1度作成し、「債務の持続可能性モニター(Debt Sustainability Monitor)」として毎年更新。

    財政制度等審議会「我が国の財政に関する長期推計」は、 これらの分析手法に倣って試算。

  • ① 中期財政計画の策定、実行(欧州セメスターによって評価)

    中期財政計画とは、財政収支均衡に向けて策定される、向こう3年間の構造的財政収支目標等を含む財政健全化計画。原則、3年で更新。

    ② 歳出ベンチマーク(歳出の伸率

  • 欧州域内の財政健全化に向けた取組④

    構造的財政収支 = 財政収支 - 景気循環要因 - 一時的要因(国有財産の売却等)

    ※ 公共事業等の景気対策は歳出から除かれない。

    景気変動による・(歳出)失業関連支出・(歳入)税収

    の増減を除外。

    GDPギャップや税収弾性値といった推計値を用いて、実際の税収分等と比較して算出する必要あり。

    ⇒ 欧州委員会と参加国の間の算出結果にも隔たり。

    ○ 欧州8財務大臣欧州委員会宛レター要旨(2016年3月)※ イタリア、スペイン、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、ポルトガル、スロベニア、スロバキア

    構造的財政収支の計算の前提となる、欧州委員会が定めた共通のGDPギャップの推計方法に対する懸念を表明。潜在的成長率は、観測できないもので、高い不確実性を伴うことなどを同時に指摘。

    ○ 欧州議会調査サービス局報告書抜粋(2016年6月)※ European Parliamentary Research Service。欧州議会の調査部門。

    「 観測できない構造的財政収支の計測は、相当な不確実性と欠点が

    ある。景気循環要因は、GDPギャップ(潜在成長率と実際の成長率の差)の測定や歳出・歳入の弾性値等に基づき算出され、多種多様であるためである。(略)

    その結果、この指標への依存は、誤った財政政策の提言につながる可能性がある。そのため、一部アナリストは、(略)異なる公的支出ルールの利用を提案。」

    (参考)GDPギャップ: 当初推計値とその後の改定幅の差(1998年から2010年までの間(絶対値))

    2017年末、イタリアは、2018年予算案を巡る議論において中期財政目標を達成するに必要な構造的調整努力(0.8 %必要)を0.3%行うと計画。しかし、欧州委は、同国の計画では0.2%にしかならないと警告(0.5%以上となり、是正的措置の対象となる大幅なかい離に該当)。

    伊パドアン財務相は、欧州委に宛てた書簡で、この0.1%ポイントの相違についてGDPギャップの推計に伴う循環的な状況の評価の違いに起因するものと説明。今後、再評価がなされる見込み。

    (出所)欧州議会事務局「Potential output estimates and their role in the EU fiscal policy surveillance」(2017)

    欧州経済・財務相理事会(ECOFIN)は、2016年12月、安定成長協定の予見可能性と透明性を高めるため、財政政策を検討・評価する際に歳出をベースとした指標(=歳出ベンチマーク)により焦点を当てることに合意。

    40(出典)欧州議会調査サービス局「Fiscal Compact Treaty: Scorecard for 2015」 (2016)

    (注)欧州委員会は、2018年予算案では、域内共通の算出法に基づき、景気循環等を考慮した上で、2年間(2017,2018年)の平均で0.8%の構造的調整努力が必要としている。

    欧州における構造的財政収支に関する議論 イタリアと欧州委員会: 構造的財政収支の推計の相違

    1.2% 1.3% 1.3%

    2.4% 2.2%2.9%

    1.8%1.6%

    1.1% 0.9%

    2.1%1.6%

    2.9%

    1.6%

    0.8% 0.8%1%

    0.6% 0.7% 0.8% 0.7%

    米国 日本 ドイツ フランス 英国 イタリア カナダIMF OECD 欧州委員会

  • - オ ラ ン ダ -

    41

  • ○ オランダ経済は、2014年以降プラス成長で推移し、国内需要と輸出に支えられて今後も堅調な見通し。

    ○ 財政面では、金融危機に直面した2008年に財政赤字に陥り、欧州委員会からもその翌年に是正勧告を受け、主として歳出抑制に取り組み、2016年に財政黒字を達成。2017年には債務残高対GDP比が、欧州域内で求められる水準である60%を下回る見込みで、その後も減少する見通しとなっている。

    オランダ:経済・財政状況、今後の見通し

    ▲ 5.4

    0.4

    ▲ 6

    ▲ 4

    ▲ 2

    0

    2

    4

    2009 2011 2013 2015 2017 2019 2021

    プライマリーバランス

    実質経済成長率

    GDPギャップ

    財政収支

    (%) 2014年68.0 %

    2016年61.8 %

    2017年57.4 %

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    36

    38

    40

    42

    44

    46

    48

    50

    2009 2011 2013 2015 2017 2019 2021

    債務残高対GDP比(右軸)歳入対GDP比

    歳出対GDP比

    (%) (%)(見通し) (見通し)

    2002.7~2010.10 2010.10 ~

    バルケネンデ(キリスト教民主アピール)

    ルッテ首相(自由民主国民党)

    キリスト教アピール、労働党、キリスト教同盟

    自由民主国民党、

    キリスト教民主アピール、(自由党)

    自由民主国民党、キリスト教民主アピール

    自由民主国民党、キリスト教民主勢力、民主66、キリスト教連合

    (年) (年)

    42

    < 経済・財政指標の推移 > < 歳出・歳入、債務残高対GDP比の推移 >

    (出所)IMF「World Economic Outlook」(2017年10月)(注)数値は、一般政府ベース。

  • ・CPBは、翌年度の予算編成開始前に目標の達成状況と

    経済財政見通しを評価。財務省は、毎年度の予算編成に活用。

    ・ 財政制度諮問会議(関係6省庁幹部、CPB、中銀が参加)は、総選挙1年前に次の政権に対する財政運営方針に対する提案をまとめ、国会に提出。

    ① 財 政 収 支(一般政府): 2021年までに+0.5%。(連立合意文書で規定)

    ② 構造的財政収支等(一般政府):▲0.5%以下、債務残高60%以下(安定化プログラムで規定)

    オランダ:財政健全化目標の策定・進捗管理

    (出所)HaukeVierke and Maarten Masselink「The Dutch Budgetary Framework and the European Fiscal Rules」 (2017)、オランダ財務省「Public Finance in the Netherlands」(2013)、IMF「World Economic Outlook」(2017年10月)

    目標の達成状況

    目標達成に向けた取組

    ・政権発足時の連立合意文書において、次期選挙までの4年間の財政目標を策定。

    ・その際、独立機関である経済財政分析局(CPB)が、最も現実的(most likely)な見通しを作成し、これを基礎に政府は目標を設定。(注)オランダは一般に単独過半数を占める与党がいない多党制。

    策定

    財政運営を支える6つの原則(コーナーストーン)

    評価

    反映

    連立合意文書において、目標達成に向けた具体策と4年間の歳出額にシーリングを設定(トレンドベースド・アプローチ(右図参照))。(注) 中央政府、社会保障、医療分野ごとに設定(税、社会保険料等の財源に

    応じた分類)。雇用対策費や利払費等は対象外。

    中長期

    各省庁は翌年の歳出等の見通しを財務省に提出。財務省は、それらを精査し、歳出削減の要否を伝達しつつ、上記シーリングに沿って予算を取りまとめ。

    毎年度

    実施

    歳出・歳入を厳しく分け、経済見通しが変化したとしてもこれらを変更しないことで好況期に緊縮的に、不況期に拡張的に財政運営。歳入の上振れ分は、②、④、⑤の仕組みによって債務の圧縮に活用。

    ① CPBの経済見通し ④ 歳出・歳入の分離② 歳出シーリング ⑤ 歳出の決定は年1回③ 歳入のペイアズユーゴー ⑥ 欧州域内ルール

    20

    30

    40

    50

    60

    70

    80

    90

    ▲ 6

    ▲ 4

    ▲ 2

    0

    2

    2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021

    債務残高対GDP比(右軸)財政収支

    構造的財政収支

    財政収支:+0.5%(2021年まで)

    構造的財政収支:▲0.5%(見通し)

    債務残高対GDP比:60%以下(右軸)

    財政収支:▲3%以内

    ※ 次ページで詳述。

    43

    (%)

    トレンドベースド・アプローチの

    イメージ

    t+1 t+2 t+3 t+4

    想定税収

    実際の税収

    総歳出

    歳出シーリング

    (年)

    予測される

    財政収支

    財政

    赤字財政

    黒字

    財政

    黒字

    実際の

    財政収支

    財政

    赤字

    (%)

  • ○ 財政運営を支える6つの原則(コーナーストーン)を定めることで、一定の歳出規模を維持し、歳入の変動にあわせて、好況期に財政黒字、不況期に財政赤字を許容しつつ、財政規律を維持し、財政の経済安定化効果を最大限に発揮。※歳出シーリングは、1997年以降、政治的混乱期(2002-2003年)、リーマンショックによる景気低迷期(2009-2011年)以外は実績ベースで達成。

    ○ 政権交代等によって、その断絶が起こらないよう、関係省庁・中央銀行の高官が総選挙1年前に財政目標やシーリング等に関する提言をまとめ、国会に提出し、次期政権もこれを参考として財政運営を検討。

    オランダ:財政運営を支える6つの原則(コーナーストーン)

    経済分析局が、最も現実的な(most likely)な見通しを策定。“良い政策が経済成長にプラス”といった論理を排除。

    経済分析局が持続可能性に関する報告書を公表。

    【総選挙1年前】

    中長期試算や提言も参考に策定。【総選挙以降】

    歳入の自動安定化機能の活用、歳出の物価上昇率の調整に応じた実施等

    関係省庁・中央銀行の高官が、次の政権に対する財政目標、シーリング等について提案をまとめ、国会に提出。 【総選挙9か月前】

    中長期試算策定 財政制度諮問会議による提言

    執 行連立合意策定

    財政健全化努力の継続性確保策

    (出典)欧州委員会「The Dutch Budgetary Framework and the European Fiscal Rules」(2017)

    ①独立した経済見通しの策定

    政権期間中の歳出総額は、事前に「歳出シーリング」によって決まり、変更されないため、歳入の動向は考慮されない。

    ④歳出・歳入の分離

    政権合意において、中央政府・社会保障・医療の3分野についてシーリングを設定(総額を想定税収以下に設定)。

    ②歳出シーリング

    税収中立原則を採用。また、不測の景気変動時には国債を発行し、好況時に償還する自動安定化機能を活用。

    ③歳入のペイアズユーゴー

    歳入の上振れなどを活用した補正予算等の議論を封じ込め。※ 内閣は、経済金融危機等の異常時にシーリングの枠外で支出可能だが、あくまで例外的扱い。

    ⑤予算の決定は年1回

    欧州委員会が定める財政ルールを遵守する範囲内で歳出シーリング等を設定し、一体性を確保。

    ⑥ 欧州域内ルール

    財政運営を支える6つの原則(コーナーストーン)

    1994年以降、これらの原則が導入されているが、その背景には、1970年代、1980年代にオランダ財政の急拡大と複雑化、予期しない経済低迷、天然ガス収入の変動といったことがあったとされている。

    (出典)OECD「The Dutch Fiscal Framework: History, Current Practice and the Role of Central Planning Bureau」(2008)

    44

  • 2006年医療制度改革

    ・ 国民は、保険加入義務があるが、加入する保険を自

    ら選択可能。国は、社会保険料を徴収し、リスク要因に応じて保険者(民間保険)に分配。保険者への配分額は事前に確定し、医療費高騰のリスクを保険者自身が負うため、保険者のコスト意識を喚起。

    ○ 歳出合理化の中心は、歳出シーリングによる歳出全体の伸びの抑制であるが、この他にスペンディングレビューの実施を通じて予算の質的向上を実施。各政党も、この取組を公約の参考として取り入れている。

    ○ 近年、少子高齢化の進展に伴って医療・介護費等が増大しており、抑制に向けた制度改革等が進められる。

    オランダ:歳出合理化策

    財務省が事務局となり、関係省庁も参加し、ワーキンググループを毎年設置。1年程度の議論を経て、歳出抑制策等を報告書にまとめ、翌年の予算編成等に活用されるほか、各政党の政権公約においても活用。

    スペンディングレビュー

    2006年以降、欧州域内で高水準にあった医療・介護費を抑制するため、公的部門の役割を縮小する�