飼料用トウモロコシの栽培の現状と今後 の作付け拡 …...national agriculture...
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National Agriculture and Food Research Organization
農業・食品産業技術総合研究機構
農研機構は食料・農業・農村に関する研究開発などを総合的に行う我が国最大の機関です
飼料用トウモロコシの栽培の現状と今後
の作付け拡大に向けた技術開発
畜産草地研究所
飼料作物研究領域
菅野 勉
1.はじめに (トウモロコシの特徴)
2.飼料用トウモロコシの栽培の現状
3.今後の作付け拡大に向けた技術開発
発表内容
1)トウモロコシの基本的特性
2)海外における栽培面積
3)今後の穀物需給の予測
1.はじめに
1)トウモロコシの基本的特性
起源に関する主要な2説
①テオシント説:
テオシント(Euchlaena mexicana)起源?
②三部説:
トウモロコシを栽培し続けてきたインディオの祖先は、起源となる野生種を追跡できないくらい
作物化してきた。
中央アメリカ地域原産のC4植物
C4植物
光合成においてCO2を固定して最初にできる産物が炭素原子4個のオキザロ酢酸等
C4植物の特徴
・単位葉面積当たりの見かけの光合
成速度が非常に高い。
・光合成の最適温度が30~35℃
(C3植物は10~20℃)。
12.7
10.5
4.9
6.4
草種別の1日当たりのTDN日生産量の期待値(高位値が得られた試験結果からの推定)(伊藤ら(1989)『粗飼料・草地ハンドブック』をもとに作図。)
TDN日生産量
期待値
(kg
TDN
/10a
/日)
1)トウモロコシの基本的特性
2)海外における栽培面積
35603 35056
14199
87106985
5400 4373 4131 4057 36960
5000
10000
15000
20000
25000
30000
35000
40000
トウモロコシの主要な栽培国における栽培面積
(×1,000ha)
(FAOSTATの2012年のデータ(Maize)より作図。)
3)今後の穀物需給の予測
1227 14061007 1185
150 155
1153
1424
537
732
450 497
23872838
13541652
785 900
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
2015年及び2030年の世界全体、途上国及び先進国の穀物需要量及び生産量の予測(小麦、米、粗粒穀物を含む穀物全体の需給予測)(World agriculture: towards 2015/2030 (FAO2014)のデータより作図。)
100% 100%
88% 86%
131% 138%
2015 2030世界全体 途上国 先進国
(×million tons)
需要量
生産量
需要量
生産量
需要量
生産量
需要量
生産量
需要量
生産量
需要量
生産量
2015 2030 2015 2030
図中のパーセンテージ(%)は自給率 ■ 需要量(食用)
■ 需要量(その他)
■ 生産量
2.飼料用トウモロコシの栽培の現状
1)我が国における近年の飼料用トウモロコシの作付面積の推移
2)北海道の栽培面積拡大に寄与した技術的要因
3)飼料用トウモロコシの単収の現状
我が国における飼料用トウモロコシの作付面積の推移(農林水産省作物統計及び耕地及び作付面積統計のデータを基に作図。)
1)トウモロコシ作付面積の推移
0
50
100
150
45 50 55 60 元 5 10 15 20 25
北海道 都府県
(昭和) (平成)(年)
作付面積
(×
1,00
0ha)
外部作業受託組織(コントラクター)等による飼料生産作業の外部化
大型機械とバンカーサイロを組み合わせた大量調製技術や細断型ロールベーラの普及
道東・道北地域向けの極早生トウモロコシ品種の育成と安定栽培技術の開発
イアコーンサイレージ技術の開発と普及
大型機械とバンカーサイロを組み合わせた大量調製技術の普及
(根釧農試 林氏ら 撮影)
細断型ロールベーラの開発と普及
(生研センター 志藤氏 撮影)
(林ら、2007)
マルチ栽培
・マルチ価格の高騰
・播種に時間がかかる(7-10ha/日)
・マルチの残さによる環境問題
への懸念
耐冷性極早生品種の登場により、マルチを用いる必要がなくなり、さらに、不耕起播種機を用いることで、播種の作業効率が大幅に向上(40-50ha/日)。
耐冷性極早生品種を活用した狭畦密植栽培
道東・道北地域向けの極早生トウモロコシ品種の育成と安定栽培技術の開発
(濃沼ら 2012) (牧野ら 2014)
5月25日に播種して10月10日に収穫すると仮定した場合の「黄熟初期以降に達する確率マップ」
熟期が“早生の早”という最も早いグループに属する(相対熟度(RM)75-80日クラス)。
乾物収量(全体としての収量)や雌穂の収量が同じ熟期の既存品種「ぱぴりか」と同程度に高い。
耐倒伏性が強く、道東地方で多発しているすす紋病に対して極めて強い抵抗性を有する。
天北地方や根釧地方は、夏も冷涼なため、極早生品種を活用しても毎年しっかり登熟するとは限らない。このため、1km四方単位で黄熟初期以降に達する確率を把握できる、安定栽培マップが作成された。
サイレージ用トウモロコシ新品種「たちぴりか」
寒地におけるトウモロコシの安定栽培マップ
天北地方版 根釧地方版
大下ら(2013)http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/pamphlet/tech-pamph/047436.html
イアコーンサイレージ技術
海外におけるイアコーンサイレージの種類と名称
栽培面積の拡大2008年:2ha → 2014年:120ha超(予定)
名称 利用部位 収穫機械 TDN
スナップレージ(イアレージ)
芯+子実+外皮
自走式ハーベスタ
74-83%
ハイモイスチャイアコーン、コーンコブミックス
芯+子実 普通コンバイン 87%
ハイモイスチャシェルドコーン
子実 普通コンバイン 92%
日本おけるイアコーンサイレージに相当
都府県におけるサイレージ用トウモロコシの単収(作物統計、農林水産省2013)
3)飼料用トウモロコシの単収の現状
4683
4185
5256
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
東北・北陸・東山 関東東海近畿中国 九州四国
生草
kg/1
0a
最近5年間の都府県におけるサイレージ用トウモロコシの平均単収は現物で5,030kg/10a。乾物収量の推定値は、乾物率25%換算で1,257kg/10a、28%換算で1,408kg/10a。
地域ごとの推定乾物収量(kg/10a)地域 乾物率
25% 28%
東北・北陸・東山
(kg/10a)1171
(kg/10a)1311
関東・東海・近畿・中国 1046 1171
九州・四国 1314 1472
都府県平均 1257 1408東北北陸東山 関東東海近畿中国 九州四国
奨励品種決定試験等におけるサイレージ用トウモロコシの地域ごとの平均乾物収量
(独)家畜改良センター茨城牧場長野支所が管理する奨励品種決定試験等のデータのうち、2008年から2012年に実施された試験データをもとに計算。
3)飼料用トウモロコシの単収の現状
地域 気候区分 作期 データ数乾物収量(kg/10a)
道東・道北 寒地限界地帯 夏作 71 1184
道央 寒地 夏作 542 1812
東北、北陸、東山 寒冷地 夏作 901 2073
関東、東海、近畿、中国
温暖地 夏作 1154 1987
九州、四国 暖地
夏作 196 1923
二期作(1作目) 399 1792
二期作(2作目) 79 1512
サイレージ用トウモロコシの作物統計における推定単収と奨励品種決定試験等における平均乾物収量の比較(夏作)
3)飼料用トウモロコシの単収の現状
0
500
1000
1500
2000
2500
乾物
収量
kg/10a 100
100 100100
7863
68
59
■作物統計推定値 ■奨励品種決定試験等図中の数値は奨励品種決定試験等の収量を100とした比数
酪農家圃場におけるトウモロコシ収量調査の事例
3)飼料用トウモロコシの単収の現状
牧場 収穫年個体密度
(個体/10a)新鮮重収量(kg/10a)
乾物収量(kg/10a)
K牧場 2007 4933 5614 1360
F牧場 2008 4756 3978 1138
T牧場2008 4756 5612 1190
2009 5000 4954 1365
W牧場2008 4926 5969 1610
2011 5111 5823 1398
O牧場 2010 5535 5125 1403
各事例とも黄熟期(8月下旬~9月上旬)の坪刈り収量(地際刈り)。
○個体密度は平均で約5,000個体/10a。主に栽培されていた中生品種の最適個体密度7,000本程度よりはるかに少ない。
○堆肥の不足が減収の要因と考えられる圃場があったものの、総じて、個体密度の低さが単収の低い要因の一つであると考えられた。
個体密度を高めるためには、・播種当年に購入した発芽力の高い種子を用いる。・播種前に播種機から支障なく種子が繰り出されることを確認する。・鳥害対策を講じる。・個体密度の低下が予想される場合は、あらかじめ幾分播種量を多くする。
・圃場の土壌水分が高い場合は播種後の鎮圧を弱くするか省略する。・湿害が生じる圃場では、明暗きょ等による湿害対策を徹底する。
調査事例において考えられた減収要因
3)飼料用トウモロコシの単収の現状
栽植密度に関して
「トウモロコシは1本立(1粒点播)が基本であり、播種量は最適栽植本数を確保するため、病害虫、鳥害、播種作業ミスによる欠株を考慮して、やや(10%程度)多めにする。」
森田(2014)『飼料増産技術指標-飼料作物の生産利用技術-』(平成26年2月)
3)飼料用トウモロコシの単収の現状
目標栽植本数 目標栽植本数時の株間
必要播種粒数(目標+10%)
播種時に想定する株間
6000 22.2 6600 20.2
6500 20.5 7150 18.6
7000 19.0 7700 17.3
7500 17.8 8250 16.2
8000 16.7 8800 15.2
目標栽植本数と播種量を10%増加させる場合の株間の違い
3.今後の作付け拡大に向けた技術開発
1)栽培技術開発の現状
2)トウモロコシ・ソルガム混播栽培
3)耕うん同時畝立て播種技術
1) 栽培技術開発の現状
① 省力播種技術
② 赤かび病対策技術
③ 土壌養分活用型の肥培管理技術
①省力播種技術
サイレージ用トウモロコシ生産に要する10a当たりの労働時間(都府県)
播種関連23%
追肥除草15%
収穫31%
細断詰込
み31%
播種関連 追肥除草
収穫 細断詰込み
1.2時間
0.8時間1.6時間
1.6時間
トウモロコシサイレージ生産に要する労働時間のうち、播種関連作業に要する時間は都府県平均で1.2時間/10aと作業時間全体の23%を占めており、栽培管理の省力化のためには播種作業の省力化が不可欠。
不耕起播種機の実用的利用が
既に開始されている地域
北海道~東北
寒地・寒冷地のトウモロコシ年一作地帯
九州:暖地のトウモロコシ二期作地帯
不耕起播種機の実用的利用が
現在検討されている地域
本州から九州の温暖地
夏作トウモロコシ+
秋冬作の二毛作、
及び
トウモロコシ+牧草と
の輪作
各地域におけるトウモロコシの不耕起播種技術の検討状況
(3年間の実規模試験の平均値。図中の数字は慣行耕起播種を100とした相対値。)
02468
10121416
耕起 簡易耕 不耕起
乾物収量
0
20
40
60
80
100
120
140
耕起 簡易耕 不耕起
燃料消費量
0
10
20
30
40
50
耕起 簡易耕 不耕起
費用価
02468
1012141618
耕起 簡易耕 不耕起
作業時間(hr/ha) (L/ha)
(円/乾物kg)(t/ha)
100
4029
100
2414
100105
65
100 91
141
ライムギ後におけるトウモロコシ簡易耕播種技術
飼料用トウモロコシ播種に要する作業時間、燃料消費量、乾物収量およびトウモロコシ乾物1kg当たりの費用価
0
20
40
60
80
100
慣行 簡易耕
作業
時間
(慣
行区
を10
0とした比数)
■除草剤散布
■鎮圧、 ■播種
■堆肥散布・施肥
■耕起・耕うん・整地
①省力播種技術
(森田、2014)
作業時間の内訳の比較
イタリアンライグラスは麦類などに比較し、栽培後の土壌が緊密化するため、収穫後のトウモロコシの簡易耕播種にあたっては、土壌表面を十分に攪拌する必要がある。
縦軸型ハローとバキュームシーダを用いた耕うん同時播種技術を開発。
慣行耕起播種区 簡易耕播種区
乾物収量
(kg/
10a)
乾燥害等により
大きく減収
①省力播種技術
イタリアンライグラス後におけるトウモロコシの簡易耕播種技術(耕うん同時播種技術)
(住田、2012)
0
20
40
60
80
100
慣行 簡易耕
作業時間
(慣
行区
を10
0とした比数
)
■除草剤散布
■鎮圧、 ■播種
■堆肥散布・施肥
■耕起・耕うん・整地
作業時間の内訳の比較
縦軸型ハロー
ケンブリッジローラバキュームシーダ
3点ヒッチアーム
収量の連年安定性の評価
②赤かび病対策技術
赤かび病は子実にかび(最初は白く、後に淡紅色または鮭肉色に変化)を生じる病害で、全国に発生。
病原菌としてはFusarium属の中のいくつかの種が知られており、代表的なものはF. graminearumとF. verticillioides。
F. graminearumはデオキシニバレノール(DON)などのトリコテセン系毒素およびゼアラレノンを、F. verticillioidesはフモニシン類を産生することが報告されている。
デオキシニバレノールは、家畜による大量摂取では嘔吐等の中毒症状を起こすとされ、飼料中の基準値は生後3ヶ月以上の牛の飼料中は4ppm、それ以外の家畜等の飼料中では1ppm。
現在、農林水産省委託プロジェクト研究等において、かび毒汚染の実態解明が行われるとともに、トウモロコシの赤かび病抵抗性検定手法の開発が行われている。さらに、それらの手法を活用したトウモロコシ品種、系統の抵抗性の評価が進められている。
雌穂における赤かび病菌の汚染
病原菌 F. verticillioidesの連鎖した小型分生子
(畜草研 岡部氏 撮影)
化学肥料の全国平均小売価格の推移
農業物価統計調査「農業物価統計」、および「ポケット肥料要覧-2011/2012-」をもとに作成。
現在、酪農経営におけるトウモロコシサイレージの生産費のうち、化学肥料の購入費は全国平均で13%。
飼料生産に要する生産コストを削減するには、堆肥や地力を活用した合理的な施肥管理により、化学肥料購入費の削減を図っていく必要。
特に、近年、化学肥料の価格は上昇傾向にあり、合理的な施肥管理により、化学肥料の節減と飼料作物の安定多収の安定の両立を図ることが重要。
③ 土壌養分活用型の肥培管理技術
(須永、2014)
従来のカリ施肥対応(左)と新たな土壌養分活用型カリ施肥管理法(右)
交換性カリ
(mg/100g)
施肥基準に従う。状況により増施する。
20
※1 関東東海地域における飼料畑土壌の診断基準検討会報告書(草地試験場1988)の陽イオン交換容
量が10~20meq/100gにおける土壌を対象とした交換性カリ含量の基準とカリ施肥対応を示す(陽イオン
交換容量が20~35meq/100gでは、基準値の範囲が15、15~50、50~100、100mg/100g以上となる)。飼
料用トウモロコシのカリ施肥基準は14県で上記範囲にあり、16kg/10aは中央値である。
※2 新しい土壌診断基準に基づく施肥対応(栃木県那須塩原市で実施した試験結果に基づく)
カリ施肥量10kg/10a+
牛ふん堆肥2-3t/10a(地力補給)
10
従来の飼料畑におけるカリ施肥対応※1
新たな土壌養分活用型カリ施肥管理※2
カリ施肥中止,家畜ふん尿施用量減少
カリ無施肥
70
60
施肥基準の20~80%に減肥
50
40
30 減肥カリ施肥量3~4kg/10a
(牛ふん堆肥施用時、無施肥)施肥基準に従う。
カリ施肥量16kg/10a※1(範囲:10~38kg/10a)
③ 土壌養分活用型の肥培管理技術
(須永ら、2013)
土壌養分活用型カリ施肥管理法の開発新たな土壌養分活用型カリ施肥管理法では、土壌に蓄積したカリを活用することで、従来の土壌診断基準に基づく施肥対応と比べて、より少ないカリ施肥量、もしくは、カリ施肥を行わずに目標乾物収量1.8t/10a(生収量で6~6.5t/10a相当)得ることが可能。
カリ施肥が不要と判定される土壌交換性カリ含量の基準値を大幅に引き下げ、標準的なカリ施肥量を各地の施肥基準量における最少量として設定。
トウモロコシ二期作の収量及び登熟不足が問題となっている地域。
平成以降、トウモロコシ二期作を開始近年、二期作後の冬作導入が検討されている地域
トウモロコシ年一作地帯
夏トウモロコシ+冬作物二毛作地帯
トウモロコシ二期作地帯
我が国における主要な飼料作物作付体系
2)トウモロコシ・ソルガム混播栽培
トウモロコシ・ソルガム混播2回刈り栽培が大規模に行われている地域。
作付体系見直しの視点・気候温暖化・穀物価格上昇・コントラクターの活用
1980年代~1990年代に九州地域、関東地域、東北地域の広範な地域で適用性が検討。
暖地から温暖地にかけては、1回の播種で2回刈り可能な省力的栽培法として活用可能。
千葉県や茨城県におけるコントラクターの主要な作付体系。
繁殖牛の過肥を防止するための飼料としても活用されている。
千葉県では、トウモロコシ・ソルガムを4月下旬に混播し、8月下旬に1回目、11月中旬に2回目の刈取りを行い、その直後にライ麦を播種し、翌年4月下旬にライムギを収穫する周年栽培体系についても検討されている。
2)トウモロコシ・ソルガム混播栽培
トウモロコシ・ソルガム混播栽培に関するこれまでの検討経過
播種時期は、トウモロコシの播種に準じる。(平均気温が10℃以上となる時期=4月中下旬以降)
トウモロコシの品種は相対熟度が110日–120日の品種を用いる。ソルガムの適品種としては、低温時の発芽定着が良く、一番刈りはトウモロコシが優勢になるものの再生と晩秋の生育が良い品種。
播種量は、トウモロコシについては、単播と同様の播種量とする。ソルガムについては、10a当たり0.5–1.5kgの播種量とする。
刈取り時期は、トウモロコシを主体とする1回目は8月中旬を目途に行い、ソルガムの再生期間を十分確保する。
積算温度の指標として、播種からトウモロコシ収穫までが10℃基準有効積算温度で1,200℃、1回目収穫から再生ソルガムの収穫までが13℃基準有効積算温度で500℃が目安。
2)トウモロコシ・ソルガム混播栽培
トウモロコシ・ソルガム混播栽培のポイント
2)トウモロコシ・ソルガム混播栽培
トウモロコシ単播 トウモロコシ・ソルガム混播
労働時間 3.8 時間/10a 4.8 時間/10a
乾物収量 1800 kg/10a 2500 kg/10a
TDN収量 1170 kg/10a 1510 kg/10a
単位時間当たり生産量
乾物 474 kg/時間TDN 308 kg/時間
乾物 521 kg/時間TDN 315 kg/時間
自給飼料生産費 35 円/乾物kg53 円/TDN kg
27 円/乾物kg45 円/TDN kg
トウモロコシ単播とトウモロコシ・ソルガム混播(2回刈り)の労働時間、収量及び生産費の比較
スーダン型ソルガムの新品種・新系統の登場
(長野県畜試育成)
2012年品種登録
新品種「涼風」
従来型よりも作期短い
中山間地個別農家向けに有望
牧草用機械で省力収穫可能
高消化性品種→トウモロコシ代替として期待
新系統「東山交30号」
乾性でサイレージ調製時の水分調整
が容易 トウモロコシ・ソルガム混播2回刈に適す
平場のコントラクター向けに有望
再生力高く多収
2)トウモロコシ・ソルガム混播栽培
近年の新たな研究の背景
長野県畜試群馬県畜試新潟県畜研セ茨城県畜セ神奈川県畜技セますみヶ丘フォルト組合茨城県県央農林事務所中央農研畜草研
農食研究推進事業
0
1,000
2,000
3,000
4/30 5/14 6/3 6/25
畜産草地研究所(那須研究拠点)における東山交30号+トウモロコシ混播の作期移動試験1年目の試験結果. (トウモロコシは品種タカネスター)
年間
合計
乾物
収量
(kg
/10a)
東山交30号(2回目)東山交30号(1回目)トウモロコシ(1回目)(1793℃) (1878℃)
(1720℃)
(1491℃)
図中の数字は播種から収穫までの10℃基準有効積算温度
2)トウモロコシ・ソルガム混播栽培
東山交30号とトウモロコシ混播における1作目の10℃基準有効積算温度と乾物収量の関係(左)、及び2作目の13℃基準有効積算温度と乾物収量の関係(右).
乾物収量(kg/10a)
混播1作目 混播2作目
10℃基準有効積算温度(℃) 13℃基準有効積算温度(℃)
2)トウモロコシ・ソルガム混播栽培
再生ソルガムの目標収量を冬作イタリアンライグラスと同等(800kg/10a)とすると、回帰式より有効積算温度が585℃以上の
条件が適地判定指標の候補と考えられた。
1回目刈取りまで10℃基準有効積算温度
1,200℃
1回目刈取り~2回目刈取りまで(ソルガム再生)
13℃基準有効積算温 500℃ ~ 580℃
混播2回刈り栽培のため適地判定指標の予備的な検討
ソルガム再生時の積算温度
500℃未満 500℃ ~580℃
580℃以上
適地区分 栽培不適地 栽培限界地帯 安定栽培地帯
33のアメダス観測地点の平年値データを用いた分類1)
真岡ほか8地点
青梅ほか7地点
伊勢崎ほか18地点
各分類における観測地点の4月1日~10月31日の10℃基準有効積算温度
1,721-1,951℃ 1,964-2,052℃ 2,082-2,409℃
従来のトウモロコシ・ソルガム混播2回刈り栽培の安定栽培指標(三井1995)
1段階の簡易指標作成と適地判定
1,960℃ 2,080℃1) 4/21播種、10℃基準で1200℃に到達した日を1回目刈取り日に想定。 関東地域におけるトウモロコシ・
ソルガム混播2回刈り栽培の適地
栽培試験に基づいた
適地判定指標の改良
凡 例 有効積算温度(10℃基準)
■ 栽培適地 2,080℃以上
■ 栽培限界地帯 1,960℃以上2,080℃未満
■ 栽培不適地 1,960℃未満
2)トウモロコシ・ソルガム混播栽培
今後、甲信越地域へ解析地
域を拡大
中央農業総合研究センター北陸センターによりダイズ等の湿害軽減技術として開発。
中央農総研北陸センター、宮城県、畜草研の共同研究により、トウモロコシへ適用。
市販の反転アップカットロータリと施肥播種機を組み合わせることにより、生産者が特殊な改良を加えることなく、導入可能。
3)耕うん同時畝立て播種技術
アップカットロータリ 施肥ホッパ
種子ホッパ
施肥播種機耕うん爪
耕うん同時畝立て播種機
畝
750(mm)
アップカットロータリ75cm畝用配列
畝高さ
播種(6月5日)
6月7日の大雨により冠水
2007年、栃木県塩谷町(現地試験)
慣行区(平畝区)では出芽が得られなかったが、畝立て区では十分な出芽が得られた。
3)耕うん同時畝立て播種技術
畝立て播種の効果①
降水量および地下水位の経時的変化
3)耕うん同時畝立て播種技術
畝立て播種の効果② 2009年、栃木県塩谷町(現地試験)
畝立て区
慣行区
灌漑による過湿処理
慣行区における黄化現象発生
2009年の2つの現地試験の乾物収量とTDN生産費(試算)
3)耕うん同時畝立て播種技術
畝立て播種の経済性・データは湿害発生程度軽度及び中程度の2圃場
の平均値で、各区とも品種「セシリア」及び
「31N27」の平均値。
・施肥はN、P2O5、K2Oの各成分が20kg/10aとな
るよう施用。肥効調節型肥料(N14%、2800円/20kg)と高度化成肥料(N17%、 1400円/20kg)で計算。
・播種は条間75cm、株間19cmの設定で播種。
・各区とも15m2の試験区を3反復で設置したが、
圃場内の反復間の変動が大きいため、処理区間
に有意な差は検出されていない。
・TDN収量は乾物収量×65%・畝立て播種はロータリ(72万円)、施肥播種機(32万円)を栽培面積2ha、原価償却5年で計算し、TDN 1kg当たり生産費に上乗せ。
イタリアンライグラス後に慣行播種及び畝立て播種されたトウモロコシの乾物収量
3)耕うん同時畝立て播種技術
二毛作トウモロコシへの適用
畝立て区 畝立て区慣行区 慣行区
2012年
乾物収量(kg
/10a
)
2012年と2013年は同一圃場圃場A 圃場B 圃場B
66% 13% 4%
地下水位-20cm以上の期間割合(%)
過湿条件 乾燥条件
3)耕うん同時畝立て播種技術
0
500
1000
1500
2000
2500
年間
乾物
収量
(kg
/10a
)
■ソルガム(2回目収穫)■ソルガム(1回目収穫)■トウモロコシ(1回目収穫)
慣行 畝立て
トウモロコシ・ソルガム混播への適用
トウモロコシは条間75cm、株間19cmで点播、ソルガムは10a当たり1kgを目安にトウモロコシと同一条に条播。
畝立て区慣行区
今後予想される年平均気温の変化(IPCC第5次報告書における気候変動シナリオのうちRCP4.5(温度上昇が中庸なシナリオ)に基づいて解析した今後の年平均気温の変化。)
凡例 年平均気温(℃) 地帯区分
■ 8℃以下 寒地
■ 8~12℃ 寒冷地
■ 12~14℃ 温暖地
■ 14~16℃ 暖地
■ 16℃以上 亜熱帯
■ 予測データ無し
1981~2000年平均 2030~2049年平均 2080~2099年平均
おわりに
気候変動への対応
温暖化のもとでは、記録的に暑い天候がより多く発生し、平均気温も上昇するものの、気温の変動の幅が増加するため、冷害年の発生確率が低下するものの、その確率がなくならない。
森田敏(2011)『稲の高温障害と対策』より
但し、極端現象への備えは、今後とも必要。
おわりに
ご静聴ありがとうございました。