肺癌、気胸、胸部外傷の外科治療...cddp/etop 2コース+conc rt 45gy→surgery 3a期...
TRANSCRIPT
肺癌、気胸、胸部外傷の外科治療
高松赤十字病院 胸部乳腺外科
環 正文
2014.9.11 Takamathu red cross Hospital Morning Seminar
肺癌の外科治療
高松赤十字病院 胸部乳腺外科
肺癌手術に関する最近の話題
どこまで低侵襲な手術が可能か
縮小手術の適応拡大
胸腔鏡手術の質の向上と適応拡大
どこまで根治切除は可能か
N2肺癌に対する集学的治療の中の手術
T3-4肺癌に対する拡大手術
ロボット手術に対する期待
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どこまで縮小手術が可能か
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pure GGO 7mm
15mm
4M 12M
8M
病変1
緩徐な陰影増大を認める
78歳 男性. 肺癌術後Follow up中. pure GGOのため経過観察. 観察期間2年.
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74歳 女性. 肺癌術後follow up中. 確定診断困難なため経過観察. 観察期間3年1ヶ月.
mixed GGO 10mm 6M
6M
6M
6M
6M
6M
17mm
充実部の濃度上昇、拡大と 陰影増大を認める
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60歳 女性. 乳腺腫瘍術後Follow up中. 小結節のため経過観察. 観察期間5年5ヶ月.
solid type 11mm 9M
8M
12M
36M
陰影の縮小、再増大と 血管偏移の増強を認める
野口分類
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Type A 腫瘍内に線維化巣を認めない BAC
Type B 腫瘍内に肺胞虚脱型の線維化巣を認める BAC
Type C 腫瘍内に繊維芽細胞の増生を認める Mixed
subtypes
Type D 低分化型腺癌 solid
Type E 腺房型(腺管型)腺癌 acinar
Type F 乳頭型腺癌 papillary
小型腺癌の進展型式を詳細に検討し肺胞置換型と非置換型に分類、予後をよく反映 TS-CT画像との相関性が高く画像所見からこの病理分類に基づいた質的診断が可能
JCOG 0201
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画像的非浸潤癌とは 腫瘍の最大径2cm以下C/T比0.25以下
C/T比 薄切CT上病変の最大径に対する Consolidationの最大径の比
臨床病期Ⅰ-Ⅱ期
• 臨床病期 IまたはII期非小細胞肺癌で外科切除可能な患者には、肺葉以上の切除を行うよう勧められる(グレードA)
• 臨床病期 IA期、最大腫瘍径2cm以下の非小細胞肺癌に対して、画像所見、病変の位置などを勘案したうえで縮小切除(区域切除または楔状切除)を行うことを考慮してもよい
(グレードC1)
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JCOG 0802
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当科の成績 組織型
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腺癌が手術症例の80%を占める
0
10
20
30
40
50
60
70
80
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
Others
SCLC
LC/LCNEC
SqCC
AD
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
Others
SCLC
LC/LCNEC
SqCC
AD
当科の成績 病理病期
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0
10
20
30
40
50
60
70
80
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
Ⅳ
ⅢB
ⅢA
ⅡB
ⅡA
ⅠB
ⅠA
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
Ⅳ
ⅢB
ⅢA
ⅡB
ⅡA
ⅠB
ⅠA
根治手術症例の70%以上が 病理病期1A+1B
当科の成績 術式
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区域切除10%程度
積極的縮小手術として部分切除を含め20%程度実施
0
10
20
30
40
50
60
70
80
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
部分切除
区域切除
葉切
全摘
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
部分切除
区域切除
葉切
全摘
当科の方針
• 消極的縮小手術 積極的に実施している
• 積極的縮小手術 広範囲楔状切除 1.5-2.0cm以下pure GGN 2cm以上のマージンが確保できる位置
• 積極的縮小手術 区域切除 2.0cm以下 C/T比0.25-0.5以下 広範囲楔状切除が困難な1.5cm以下 pure GGN
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広範囲楔状切除の実際
• 63歳 女性
• CT検診で右S8に8mm大のpure GGNを指摘
• PET-CT 高分化腺癌
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致死的合併症である空気塞栓の報告がある
マーキング後の楔状切除
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術者
助手
カメラポート
胸腔鏡下右下葉部分切除
手術時間:47分
出血:少量
区域切除の実際
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63歳女性 CT検診左上葉にGGNを指摘 経時的に増大傾向を認める
3年の経過
区域切除の要点
• 区域間の設定 虚脱・含気線 含気・虚脱線 ICG注入法 含気しない方法 区域間静脈の走行と腫瘍からの切離断 端からの距離を目安に切離
• 区域間切離方法 電気メス ステイプラー
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ビンセント3D画像
V3a/b
切除マージンは十分に確保
V3c
V1+2
V4 V5
A1+2細枝?
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手術所見
カメラポートo Access window
完全胸腔鏡下左上区切除/ND1b 時間 2:42 出血 少量
術者 助手
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アプローチの低侵襲化
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• 臨床病期Ⅰ期肺癌に対する胸腔鏡補助下肺葉切除は、科学的根拠は十分ではないが行うことを考慮してもよい(グレードC1)
胸腔鏡下補助下肺葉切除
実地臨床ではすでに標準的アプローチとして 施行され、さらに質の向上を図り適応拡大している
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当科のこれまでの経緯と現状
2006.10 2007 2008 2009 2010 2011.1- 2012.4-
Access windowの短縮
カメラポート
Access window
腋窩前方開胸
標準開胸 10cm 広背筋、前鋸筋温存 肋骨切離なし
3-4㎝
2㎝
2㎝
c VATSへ完全移行
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手術時間の経緯
0
50
100
150
200
250
300
350
400
450
1 3 5 7 9
11
13
15
17
19
21
23
25
27
29
31
33
35
37
39
41
43
45
47
49
51
53
55
57
59
61
63
65
67
69
71
73
75
77
79
81
83
85
87
89
91
93
95
97
99
10
1
10
3
10
5
時間
完全鏡視下手術 ハイブリッド
デジタル内視鏡導入 自動縫合器の改良
2007 2008 2009 2010 2011.1- 2012.4- 2013.1
アクセス創の狭小化
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どこが変わったか?
2011.2.9
右上葉切除/ND2a-1
3:30 160ml
2013.10.28
右上葉切除/ND2a-1
1:45 少量
余分な作業を省略し、手順を標準化 短時間、安全、確実な手術に変化
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• 開胸術の適応 気管気管支形成術、肺動脈形成 胸壁・他臓器合併切除 導入療法後
• まずは胸腔鏡、できなければコンバート しみこみリンパ節、balky LN
視野の確保が困難(気腫肺、巨大腫瘍) 高度分葉不全 大量出血、時間超過
当科の方針
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• 肺癌手術 73例
• 完全胸腔鏡下手術 63例 部分切除 6 区域切除 2 肺葉切除 54 胸膜生検 1
• コンバート 4例
• 開胸手術 7例 導入療法 1 胸壁合併切除 4 気管支形成 1 巨大腫瘍 1
2013年の実績
2013
VATS
コンバート
開胸 86%
4% 10%
0
10
20
30
40
50
60
70
80
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
開胸
コンバート
VATS
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• 平均手術時間
全症例 165分
cVATS例 109分
• 出血量
全症例平均 130ml
cVATS例平均 27ml
• 術死、在院死なし
2013年実績
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局所進行肺癌の外科治療 N2肺癌
N2肺癌の治療戦略
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• 臨床病期IIIA期N2非小細胞肺癌に対して
外科切除単独療法を行うよう勧められる科学的根拠が明確でない(グレードC2)
• 臨床病期IIIA期N2非小細胞肺癌に対して
導入療法後に外科切除を行うことを考慮しても良い(グレードC1)
導入療法 INT 0139試験
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CDDP/ETOP 2コース+conc RT 45Gy→Surgery
→RT61Gy 3A期N2非小細胞癌に対する導入療法+手術群と
根治的化学放射線治療群の生存率を比較した第3相試験
当科での導入療法症例
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2007.1.1-2013.12.31 肺癌手術293例
cN2肺癌 2例 胸壁浸潤肺癌 2例→1例再発 (転移性肺腫瘍(子宮癌) 1例)
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• 56歳 男性
• 検診症例(Lt S1+2.46x40mm)
• BFS ClassⅤ(SqCC)
• cT2aN2M0 stageⅢA
• Induction therapy
CBDCA/weekly PCA 2コース
RT(Tumor+LN)40Gy
症例
高松赤十字病院 胸部乳腺外科 4.5cm大、胸壁に接する腫瘤
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#5腫大
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c-T2aN2M0 stageⅢA
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46mm→26mm
RECIST PR(26%)
矢状断
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矢状断
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手術所見
Accesswindo
w カメラーポート 完全胸腔鏡下左上葉切除/ND2a-2
手術時間 3:21 出血 180ml
術者
助手
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• Poorly differentiated squamous cell
carcinoma
ypT3N0M0 stageⅡB
• 44x31x40㎜ p3.
• pm0
• 気管支Br(-).胸壁CW(-).壁側胸膜PP(-)
• Ef1b
病理
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病理所見
充実性胞巣を形成する異型細胞増殖が
認めれる.結節周囲に炎症細胞浸潤を伴う
線維化がみられる.
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局所進行肺癌の外科治療 他臓器浸潤肺癌
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臨床病期IIIA期T4N0-1非小細胞肺癌に対して外科切除を行うことを考慮してもよい(グレードC1)
横隔膜、心膜に浸潤した臨床病期T3N0-
1M0非小細胞肺癌には、それぞれの合併切除を行うことを考慮してもよい(グレードC1)。
他臓器浸潤肺癌の治療戦略
致死的合併症多く手術単独では
満足な成績は得られない
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T4N0-1非小細胞肺癌に対する外科治療後の合併症は極めて高く、慎重に選択された患者にのみ適応されるべき
上大静脈合併切除後の致命的合併症発生率は5-15%、5年生存割合は約20%
分岐部切除後の致命的合併症は約20%
5年生存割合は約15%
T4(心大血管、分岐部)
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横隔膜合併切除例の5年生存率は19-33.3%
手術死亡率は1.6-4.4%
予後因子 完全切除とリンパ節転移の有無
心膜浸潤症例の後方視的研究では、全体の5年生存率は15.1%
心膜浸潤症例ではリンパ節転移の頻度がきわめて高く、リンパ節浸潤例は予後不良
T3(横隔膜、心膜)
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術前化学(放射線)治療の有効性に関しては一定の推奨すべき段階にいたっておらず今後の検討事項である.
ケースシリーズでは集学的治療で長期生前が得られる症例の報告はある.
他臓器浸潤肺癌の導入療法
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臨床病期T3N0-1M0の胸壁浸潤非小細胞肺癌には胸壁合併切除術を行うよう勧められる(グレードB)。
胸壁浸潤肺癌の治療戦略
拡大手術の適応決定には正確な転移リンパ節の
評価が必要!
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症例
• 63歳 男性
• 左背部痛
• 4ヶ月前より上記あり近医受診し異常陰影を指摘された
• エコーガイド下生検 扁平上皮癌
• CYFRA 13.5ng/dl
• BI:20x40
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#4R腫大?
2.3.4肋骨に接する6cm大の不整形腫瘤
不均一に造影され、肋骨破壊像を認める
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冠状断
矢状断
椎体への浸潤?
Squomous cell carcinoma
cT3-4N2-3M0 stage3A-3B RT 2Gyx20(腫瘍+縦隔) CBDAC/PAC 2コース
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化学放射線治療後
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Squamous cell carcinoma
yc-T3N0M0 stage2B
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手術
• 高位後側方開胸 胸壁切除 (ⅡⅢⅣ肋骨)
• 胸腔鏡補助下 左上葉切除/ND2a-2 気管断端被覆 (心膜周囲脂肪)
• 胸壁再建なし
• 手術時間 5:05 出血 715ml
カメラポート Access window
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病理 poorly differentiated squamous cell carcinma(Ef2)
肋骨部にViableな腫瘍細胞の残存はない
ypT3N0M0 stageⅡB
腫瘍と胸壁間に肋骨および肋間から胸壁の
一部を巻き込んだ線維性瘢痕様組織を認める
気胸の診断と治療
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気胸とは
通常は陰圧に保たれている胸腔内に何らかの原因で空気が流入し、陰圧が保てないために肺が膨張を保持できず虚脱してしまう状態
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流入経路
①肺から(自然気胸など)
②胸壁から(外傷性など)
③横隔膜から
(月経随伴性、外傷性など)
④気管、気管支から
(外傷性など)
①
②
③
④
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気胸の分類
• 自然気胸
特発性(原発性)気胸
若年男性、ブラの破綻
続発性気胸
高齢者、気腫性嚢胞の破綻
喘息、腫瘍、結核、リンパ脈管筋腫症など
月経随伴性気胸
• 医原性(気管支鏡検査、生検、CVP、鍼灸)
• 外傷性気胸
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症状、理学所見
• 症状
誘因なく突発する胸痛、咳発作、呼吸困難
• 理学所見
非対称性呼吸運動
患側呼吸音の減弱
• 緊張性気胸
気瘻部にcheck valve機構
胸腔内圧の極端な上昇 →ショック状態
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診断
• 虚脱肺の確認
• 虚脱の程度
• 縦隔、横隔膜の変位
• 胸水の有無
• 対側肺の虚脱
ブラの有無
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虚脱の程度
• 肺虚脱の程度分類 Ⅰ度:肺尖部が鎖骨の上 Ⅱ度:ⅠとⅡの中間程度 Ⅲ度:完全虚脱に近い
• Kircherの式 (AB-ab)/ABx10 50%以下 Ⅱ度 50%以上 Ⅲ度
A
B
a
b
治療
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• 安静、脱気
• ドレナージ
• 手術療法
• 癒着療法
• フィブリン糊注入療法
• 気管支鏡下気管支塞栓療法
• 原疾患の治療
緊張性、両側性、血気胸
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胸腔鏡下ブラ切除
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術後再発
初回ブラ切除線
再発対策
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• 切除断端周囲の被覆
• 壁側胸膜切除、擦過
焼灼による癒着促進
当科での術後再発率
4.5%
吸収性メッシュ
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胸部外傷の診断と治療
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頻度
• 胸部損傷16%(日本損傷データバンク2004-2006) 頭部22%.下肢20%
上肢12%.顔面10%.腹部骨盤内・頸椎7.6%
• 60-70%に多発損傷を伴う
• 意識、循環、呼吸をつかさどる臓器への致命的
損傷が多い
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受傷機転
• 鋭的(穿通性)損傷
刺創、射創、杙創
• 鈍的損傷
交通事故、転落墜落
スポーツ損傷、暴行、爆風
急激な減速によるせん断力、衝撃、圧迫
胸部外傷の90%を占める
開胸を要する頻度 5-20%
肋骨骨折
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第5-9肋骨が多い
これより頭側の骨折
これより尾側の骨折
第1肋骨の単独骨折
第2肋骨骨折
3本以上の骨折で合併症多くなる
胸腔内損傷
腹腔内損傷
頸髄、腕神経損傷
鎖骨下動脈損傷
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Flail Chest(動揺胸郭)
• 3本以上の連続する分節骨折
• 前胸部から側胸部の損傷
→ floating segment 奇異呼吸
→低換気から呼吸不全
→随伴する肺挫傷による肺内シャントが原因
• 胸部外傷の7%程度
• 随伴する肺挫傷は受傷後2~3日中に増悪
→時期を逸せず人工呼吸管理
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肋骨骨折の治療
• 疼痛による呼吸抑制が問題
鎮痛剤
肋間神経ブロック
硬膜外麻酔
バストバンド、局所の固定
• 骨折に対して
おおくは処置不要
6~8週で化骨
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手術適応
• flail chest 高度な動揺胸壁
最大の目的は人工呼吸器管理の短縮
• 骨折端変位の著名なもの
• 小児は対象外
• 選択的な手術時期は受傷後7~10日頃
• ついでに行う手術が多い
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手術方法
• Judet’ stent
• ステンレススチール・ワイヤー
• バイクリル・バイクリルメッシュ固定
• Kirchner鋼線(髄内固定)
• ステンレススチール・プレート
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67才 男性
自転車で走行中自動車にはねられ受傷
左肋骨骨折、気胸、皮下気腫を認める
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第3-10肋骨骨折を認める
第5-8肋骨は2か所の分節骨折を
認めたが背部のため胸郭動揺はなし
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入院6時間後胸水の増量を認め
ドレナージを施行した
高度な骨端部変位を認めるが
手術は不要であった
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胸骨骨折
• Seat belt syndrome
• 胸骨体部頭側1/3の横断骨折
• 合併損傷の診断が重要
大血管損傷
心筋挫傷.心弁膜損傷
中枢気道損傷
• CT検査、心エコー、心筋シンチグラフィー、CK-MB
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手術適応
• 転位、疼痛が高度
• 合併損傷を伴う場合
転位がない限り疼痛対策のみ
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52才 女性
乗用車どうしの衝突で受傷
胸骨中央部の疼痛を訴える
胸骨体部に横断骨折を認める
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骨折部周囲の血腫を
認めるが合併損傷なく
第2病日退院
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外傷性気胸
• 軽症型肺裂創
• 外開放性気胸
• 高度な気瘻の持続
重症型肺裂傷(肺破裂) 気管気管支断裂
食道損傷
→手術適応を判断
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外傷性血胸
• ドレナージ
350ml程度までは不要
24Fr以上のドレーン
第5.6肋間より背側に挿入
2次感染に注意
• 手術適応
時間出血量5ml/kg、循環血液量の5%
ショック状態
残存血腫
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80才 男性
耕運機操作中転倒し耕運機の下敷きに
なり受傷.紹介医受診し左第2~7肋骨までの
骨折と左血胸を指摘された
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紹介時胸部CT
皮下気腫、両側血気胸を認め、
ドレーンは葉間に挿入されている
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両側ドレナージ施行
左肺挫傷の残存認めるが
肺の拡張は良好、出血消失
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肺損傷
肺挫傷(lung contusion)
組織挫滅、浮腫、肺胞出血
低酸素血症
人工呼吸器管理
肺裂傷(lung laceration)
出血、虚脱の持続
重症型→肺破裂
緊急手術の適応
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手術術式
損傷部止血、縫合閉鎖
肺切除
肺門部遮断の併用
高度な気道出血による呼吸不全
気管支肺静脈瘻よる空気塞栓症
可久的に肺組織の温存に努める
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気管気管支損傷
鋭的損傷例は重篤、治療前の死亡が多い
鈍的損傷では急性期に見逃され狭窄による無気肺、呼吸困難で初めて診断されることが少なくない
鈍的損傷で高度な皮下気腫、縦隔気腫を伴うときは気管支鏡検査を実施する
食道損傷の合併に注意
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気管気管支損傷
分類 裂傷、部分(不完全)断裂、完全断裂
鈍的損傷時の好発部位 分岐部から2cm以内の気管、主気管支
手術方法 断裂部縫合閉鎖 楔状切除縫合閉鎖 端々吻合 瘢痕狭窄部に対する応急的レーザー焼灼
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気管支損傷 49歳 女性
原付バイクで走行中トラックにはねられ受傷.
高度な皮下縦隔気腫、両側気胸、肺挫傷を認めた
受傷3日 受傷20日
第20病日右完全無気肺を認め気管支鏡検査にて分岐部直下の
右主気管支軟骨の断裂と肉芽組織による狭窄を認めた
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手術所見
瘢痕狭窄部
管状切除後縫合
奇静脈切離端
右主気管支
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横隔膜損傷
• ヘルニアによる呼吸循環障害と脱出臓器の閉塞、絞扼が問題
• 鋭的損傷ではヘルニアは少ないが他臓器損傷が多い
• 鈍的外傷では多発肋骨骨折、肺挫傷等の重篤合併症を伴うことが多い
• 発生学的に左側に脆弱部ありヘルニアは左に多くみられる
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外傷性横隔膜ヘルニア
58才 男性
自宅3階からの転落による受傷.
左側腹部から背部痛を訴える.
高松赤十字病院 胸部乳腺外科
CT検査
胃の脱出と左下葉の圧排による
含気不良を認める
高松赤十字病院 胸部乳腺外科
手術所見
損傷破裂部
縫合閉鎖部