大学で教える株式投資論...大学で教える株式投資論 投資銘柄の選択状況...

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大学で教える株式投資論 大学で教える株式投資論 株式投資の入門から専門実務まで p.1 II-5.ファクター・モデル(2)

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大学で教える株式投資論

大学で教える株式投資論株式投資の入門から専門実務まで

p.1

II-5.ファクター・モデル(2)

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大学で教える株式投資論

p.2

株式学習ゲーム

今期の株式学習ゲームのテーマは「投資戦略の体験」です。それぞれが担当する投資戦略のポートフォリオ構築にどのような銘柄選択基準を適用したか、学生の皆さんに提出してもらった資料の概要を紹介しました。景気敏感株投資やディフェンシブ株投資では「β」や「ボラティリティ」、小型株投資では「時価総額」、モメンタム投資では「騰落率」と期待した用語が並びました。その他にはPER、PBR、ROEなどの用語が目立ちました。

株式市場は、短期的に循環的な動きが続いているように見えます。他のファクターの挙動は見えにくいのですが、「β」は確実に日々の値動きにも影響しているようです。

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大学で教える株式投資論

投資銘柄の選択状況

p.3

投資戦略 銘柄選択

景気敏感株投資R 業種を建設、証券、機械に限定。β 1.23~2.17の銘柄を選択

ディフェンシブ株投資R PER 9.42~50.97、PBR 0.43~0.87、β 0.15~0.83の銘柄を選択

ディフェンシブ株投資G β 0.13~0.64、ボラティリティ6.92~16.24、電気・ガス2銘柄、食料品3銘柄選択

割安株投資R PER 5.92~19.89、PBR 0.62~1.67の銘柄を選択。他にPER 30.03、PBR 2.08が1銘柄

割安株投資G PER 5.8~9.91、PBR 0.32~1.05、配当利回り3.04~4.98%、他に東京オリンピック向けの銘柄が1銘柄など

成長株投資G PER 9.74~60.43、PBR 0.9~42.37、ROE 6.6~70.0%の銘柄を選択

小型株投資R 時価総額165~1,012億円で、ROEが高いなどの銘柄を選択

小型株投資G 時価総額226~1,241億円で、ROE、ROA、移動平均乖離も加味して銘柄選択

モメンタム投資R 前日比騰落率1.62~4.67%、対20日前比5.88~30.17%の銘柄を選択

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大学で教える株式投資論

株式市場の状況

› 10月12日から19日までのTOPIXのパフォーマンスは「-0.56」%

p.4

10月12日1,702.45

10月19日1,692.85

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大学で教える株式投資論

皆さんの投資状況

› この週は、投資戦略間のパフォーマンスの違いが少し見える

p.5

投資戦略10月12日の資産額(円)

10月19日の資産額(円)

変化率(%)

景気敏感株投資R 9,946,750 9,783,250 -1.64

ディフェンシブ株投資R 9,585,010 9,616,410 0.33

ディフェンシブ株投資G 9,681,128 9,733,528 0.54

割安株投資R 10,000,000 9,907,502 -0.92

割安株投資G 9,952,963 9,874,424 -0.79

成長株投資R 9,736,809 9,542,209 -2.00

成長株投資G 9,812,933 9,502,112 -3.17

小型株投資R 9,951,158 10,094,004 1.44

小型株投資G 9,598,797 9,600,997 0.02

モメンタム投資R 9,568,603 9,703,575 1.41

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大学で教える株式投資論

p.6

重回帰分析

さて、「ファクター・モデル」の2回目の講義は「マルチファクター・モデル」です。複数のファクターの挙動を同時に調べるには「重回帰分析」が有用で、実際に実務的な「マルチファクター・モデル」のほとんどは「重回帰分析」を適用して構築されています。

この種の統計的手法は、実際に使ったことがない限り、他の授業で聞いていたとしても頭に残っていないことがほとんどです。インターネット上に非常に分かりやすい説明がありましたので、拝借して改めて「重回帰分析」について説明します。

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大学で教える株式投資論

重回帰分析とは?

› 単回帰分析が、1つの目的変数を1つの説明変数で予測するのに対し、重回帰分析は1つの目的変数を複数の説明変数で予測しようというもの

› 例えば、身長から体重を予測するのが単回帰分析で、身長と腹囲と胸囲から体重を予測するのが重回帰分析

› 式で表すと以下のようになる

› ここで、Xの前についている定数b1,b2・・・を「偏回帰係数」という

› 偏回帰係数は、どの説明変数がどの程度目的変数に影響を与えているかを直接的には表していない

› それは身長を(cm)で計算した場合と(m)で計算した場合とでは全く影響度の値が異なってしまうことからも明らか

› 一般に影響度は「t 値」を用いて把握する

p.7

出所:ALBERT、https://www.albert2005.co.jp/knowledge/statistics_analysis/multivariate_analysis/multiple_regression

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大学で教える株式投資論

重回帰分析のデータ

p.8

出所:ALBERT、https://www.albert2005.co.jp/knowledge/statistics_analysis/multivariate_analysis/multiple_regression

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大学で教える株式投資論

Excelによる分析の結果

p.9

出所:ALBERT、https://www.albert2005.co.jp/knowledge/statistics_analysis/multivariate_analysis/multiple_regression

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大学で教える株式投資論

Excelによる分析の結果

p.10

出所:ALBERT、https://www.albert2005.co.jp/knowledge/statistics_analysis/multivariate_analysis/multiple_regression

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大学で教える株式投資論

p.11

マルチファクター・モデル

「マルチファクター・モデル」も「体質」「刺激」「反応」によって説明することができます。株価の挙動を説明するモデルですから、「反応」は株価の値上り・値下り、すなわち「リターン」に決まっています。問題は、「体質」と「刺激」をどう捉えるか?です。

事例を説明する前に、企業(株式)の性格を「体質」、経済動向を「刺激」として、株価の変化のイメージを示します。

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大学で教える株式投資論

体質、刺激、反応(1)

› 花粉症の場合

p.12

体質

刺激 反応

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大学で教える株式投資論

証券の期待リターンの生成に影響を持つファクター

› CAPMでは「市場リスク・プレミアム」が唯一のファクターであるが、現実の市場では、個々の企業の業績は様々な経済事象の影響を受け、それが株価にも反映されている

› 例えば、次のような企業の業態等(ファクター・エクスポージャ)を持つ企業の株価は◼ 景気敏感企業、内需型企業、海外進出型企業◼ 金融サービス業、負債比率の高い企業◼ 輸出型企業、輸入型企業◼ エネルギー消費型企業、エネルギー提供型企業

› 以下のようなファクターの動向に対して、一定の反応を示す

◼ 国内経済や海外経済の成長率◼ 金融政策の変更◼ 為替相場の変化◼ 将来の原油価格

› そうした様々なファクターを取りこんだモデルがマルチファクター・モデルである

p.13

体質

刺激 反応

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大学で教える株式投資論

体質、刺激、反応(2)

p.14

ファクター・リターン

(リターン生成要因の値)

証券の期待リターン

国内経済成長率の見込み

政策金利変更の見込み

為替相場の見込み

原油価格の見込み

成長加速 成長減速

利上げ 利下げ

円安 円高

上昇 低下

ファクター・エクスポージャ

(要因に対する感応度)

景気敏感企業(例:証券会社)

金融サービス企業(例:銀行)

負債比率の高い企業(例:不動産会社)

輸出型企業(例:自動車会社)

輸入型企業(例:大手商社)

エネルギー消費型企業(例:運送会社)

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大学で教える株式投資論

p.15

マルチファクター・モデルの事例

本日の講義のハイライトは「マルチファクター・モデルの事例」です。大学の学問として株式投資論を学ぶのですから、統計分析に基づくモデルも避けて通れません。しかも、ここで紹介するモデルは、機関投資家の株式投資分析に実際に用いられているものです。

「体質」「刺激」「反応」および「重回帰分析」の視点を絡めて、いくつかの事例を説明します。

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大学で教える株式投資論

ファクター・モデルの構造

p.16

証券またはポートフォリオの

リターン

リスク・フリー・レート

= 切片

=証券または

ポートフォリオの超過リターン

+ファクター・リターン①

(リターン生成要因の値)

Xファクター・エクスポージャ①(要因に対する感応度)

2ファクター・モデル

反応

体質 刺激

+ファクター・リターン②

(リターン生成要因の値)

Xファクター・

エクスポージャ②(要因に対する感応度)

+ 誤差項

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大学で教える株式投資論

ファクター・モデルの分類

› ファクター・モデルは、株式リターンの構成要因を分析するに当たって、主に株式市場を取り巻くマクロ要因に着目したものや主に株式市場のミクロ構造に着目したものなどがある

◼ 次のように分類できるが、実際にはこれらが組み合わさったものが主流› 共通の要因として、市場リターンなど、マクロな市場要因に着目したもの› 共通の要因として、マクロな経済要因などに着目したもの› 個別銘柄のファンダメンタル属性やテクニカル属性に着目したもの

› また、ファクター・モデルの構築方法により以下のような分類が可能◼ PFM(Prespecified Factor Models)

› マーケット・モデルなど、ファクター・リターンを説明変数として、個別銘柄の感応度(ファクター・ベータ=ファクター・エクスポージャ)を推計するタイプ

◼ PBM(Prespecified Beta Models)› 個別銘柄のファクター・エクスポージャ(感応度を表す指標の値)を説明変数とし

て、ファクター・リターンを推計するタイプ› ファクター・エクスポージャを「ファクター・ベータ」ともいうのが名称の由来› Fama-MacBeth(1973年)がルーツで、バーラ・モデルなどで実用化された

◼ FAM(Factor Analysis Models)› 因子分析や主成分分析といった統計手法を用いて、ファクター・リターンと個別銘

柄のファクター・エクスポージャ(ファクター・ベータ)を同時に推計するタイプ

p.17

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大学で教える株式投資論

PFMとPBM

p.18

=>

証券またはポートフォリオの超過リターン VS

ファクター・リターン①

(リターン生成要因の値)

ファクター・エクスポージャ①

(要因に対する感応度)

PFM

反応 体質刺激

ファクター・リターン②

(リターン生成要因の値)

ファクター・エクスポージャ②

(要因に対する感応度)

=>

証券またはポートフォリオの超過リターン VS

ファクター・リターン①

(リターン生成要因の値)

ファクター・エクスポージャ①

(要因に対する感応度)

PBM

反応 体質 刺激

ファクター・リターン②

(リターン生成要因の値)

ファクター・エクスポージャ②

(要因に対する感応度)

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大学で教える株式投資論

PFMとしてのマーケット・モデル

› 例:TOPIXのリターンを共通要因としてベータを推定

p.19

y = 1.260x + 0.117

-20

-15

-10

-5

0

5

10

15

20

25

30

-15 -10 -5 0 5 10 15

三井不動産の月次リターン(%)

TOPIXの月次リターン(%)

三井不動産のヒストリカル・ベータ(2016年6月末時点、過去60か月)

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大学で教える株式投資論

PFMとしてのマーケット・モデル

p.20

=>

証券またはポートフォリオの超過リターン VS

ファクター・リターン①

(リターン生成要因の値)

ファクター・エクスポージャ①

(要因に対する感応度)

マーケット・モデル

反応 体質刺激

市場ポートフォリオのリターン

ベータ(β)証券のリターン

時系列の分析

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大学で教える株式投資論

回帰分析とPFMモデル

› 回帰分析の適用

◼ 時系列回帰分析

◼ マーケット・モデルへの適用では、例えば

› リスク・フリー・レートを「ゼロ」と想定

› 被説明変数:過去60か月の証券iの月次リターン(Yit)

› 説明変数:同じ期間の市場ポートフォリオMの月次リターン(XMt)

› 関係式: Yit = ai + biXMt + eit

› biは「ヒストリカル・ベータ」と呼ばれる

p.21

2018/9 2018/8 2018/7 ・・・ 2013/10

Yit

XMt

ai

bi

eit

被説明変数 反応

説明変数 刺激

回帰切片体質

回帰係数

誤差

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ファマ・フレンチ・モデル

› Eugine Fama and Kenneth French (1993年)

› マーケット・モデルの発展型としては、ファマ・フレンチの3ファクター・モデル(1993年)が代表例

› マーケット・モデルのファクター・リターンとしてのマクロ市場要因をスタイル・リターンで補完したPFM

› 構造式

p.22

・ベータ)回帰係数(ファクター

月の平均リターンの差ループの    大きい株式グ

グループと時価総額の小さい株式

月の平均リターンの差ループの    小さい株式グ

い株式グループと純資産対株価比の大き

: 、、、

: 

: 

iiii

t

t

ittitiMtiiftit

bbba

t

SMB

t

HML

eSMBbHMLbrbarr

321

321 ++++=−

低PBR株ー

高PBR株

小型株ー

大型株

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PFMとしてのファマ・フレンチ・モデル

p.23

証券またはポートフォリオの

リターン

リスク・フリー・レート

= 切片

=証券または

ポートフォリオの超過リターン

+ファクター・リターン

(リターン生成要因の値)

Xファクター・エクスポージャ

(要因に対する感応度)

+ 誤差項

ファクター・モデル

ファマ・フレンチ・モデル

「ファクターの動きに対してどのように連動して動くか」を表す指標

ファクター値rMt、HMLt、SMLt

(リターン生成ファクターの値)

ファクター・ベータb1i、 b2i、 b3i

(ファクターに対する感応度)

PFMでは「ファクター値」を変数として「ファクター・ベータ」を推計

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ファマ・フレンチ・モデル(3)

› ポートフォリオのスタイル分析

p.24

ポートフォリオのリターン

HMLt

(割安株ー成長株)

2b

割安株が相対的に優位な局面でリターンが大きい傾向

ポートフォリオのリターン

SMBt

(小型株ー大型株)

3b

小型株が相対的に優位な局面でリターンが大きい傾向

分析したポートフォリオが「割安・小型スタイル」であることが分かる

任意に銘柄を選択して組み合わせたポートフォリオに同じ傾向が広く観察されるとしたら、それは市場全体に特定のスタイルが優位な「アノマリー」が存在する証拠となる

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大学で教える株式投資論

PFMとしてのファマ・フレンチ・モデル

p.25

=>

証券またはポートフォリオの超過リターン VS

ファクター・リターン

(リターン生成要因の値)

ファクター・エクスポージャ

(要因に対する感応度)

ファマ・フレンチ・モデル

反応 体質刺激

市場ポートフォリオのリターン

ベータ(β)

証券のリターン

低PBR株と高PBR株のリターン差

小型株と大型株のリターン差

割安株相場に対する感応度

小型株相場に対する感応度

時系列の分析

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大学で教える株式投資論

ファマ・フレンチ・モデル(2)

› ファマ・フレンチは、この3ファクター・モデルを用いて、米国株式市場などで、これらのファクター・ベータが有意にゼロでないことを示し、CAPMが示唆する単一ベータの市場構造に対して、割安株と成長株、小型株と大型株のリターン格差もベータを構成することを実証

› このモデルは、それまで「株式市場のアノマリー」と呼ばれていたファクターの存在を実証するのに有用な手法として注目された

› その後このモデルは、任意のポートフォリオ(特定の運用商品や株価指数)の時系列データを基に、そのファクター・ベータを推定し、当該ポートフォリオの割安・成長傾向、小型・大型傾向といったスタイルを分析するツールとしても広く利用されるようになった

› 彼らは、その後、3ファクター・モデルを拡張し、以下のようなファクターを追加した4ファクター、5ファクターなどのモデルも開発

› Momentum(直近短期のパフォーマンスの強さ)

› Operating Profitability(ROE的指標)

› Investments(総資産の伸び率)

p.26

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大学で教える株式投資論

バーラ・モデル(1)

› 機関投資家向けの株式資産運用、特にリスク分析においては、わが国の業界標準的な存在となっているファクター・モデル

› 株式市場のミクロ要因をファクター・エクスポージャとして、ファクター・リターンを推定するPBMタイプのモデル

› PFMタイプでは各銘柄について時系列回帰分析を行うのに対して、PBMタイプでは各期間毎に銘柄横断のクロスセクション回帰分析を行うのが一般的

› バーラ日本株式モデル(JPE4)の構造

p.27

リターン)月の誤差項(銘柄固有の証券

、回帰係数)のリターン(推定結果月のファクター

率(観測値)分類の業種への配分比以上のとき、が

クター)の観測値ロ要因(コモン・ファ以下のとき、株式ミクが

値、説明変数)に対する感応度(観測月のファクターの証券

tie

ktF

k

k

ktib

eFbFbrr

it

kt

kit

it

k

N

i

ktkit

k

N

i

ktkitftit

: 

: 

   

   

: 

4322

21

64

22 1

21

1 1

++=− = == =

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大学で教える株式投資論

バーラ・モデル(2)

› バーラ日本株式モデル(JPE4)のコモン・ファクター

◼ 各銘柄の月次の属性値を表す変数◼ 属性値の違いによって、個別銘柄の月次リターン間に有意な差が生まれる

ことの多い変数(リスク要因)が用意されている◼ また、これらの中には、そのファクター・リターンが時系列に有意に市場

平均リターンを上回るものも含まれる

p.28

カントリーベータ利益クオリティ益回り財務レバレッジ海外経済感応度グロースインダストリー・モーメンタム流動性長期リバーサルマクロ感応度

マネジメント日経225採用指標モーメンタムサイズ非線形プロスペクトレジデュアル・ボラティリティセンチメント短期リバーサルサイズバリュー

資料提供:MSCI

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大学で教える株式投資論

バーラ・モデル(3)

› バーラ日本株式モデル(JPE4)のインダストリー・ファクター◼ 各銘柄がどの業種にどの程度の比率で属するかを表す変数◼ 業種は、個別銘柄の月次リターン間に有意な差が生むことの多いリスク要

因である

p.29

化学紙&パルプ金属ガラスエネルギー産業部品産業機械精密機器プラント機械&

エンジニアリングその他運搬機械自動車電子部品半導体&半導体装置コンピューター&

通信機器

OA機器&家電重電&その他電気機器薬品食品家庭用品&化粧品繊維&アパレルその他製品ゲーム消費者向けサービス放送メディア電気通信インターネット百貨店&スーパーその他専門小売

商社産業サービスソフトウエア旅客運輸貨物運送インフラ建設住宅建築不動産銀行地方銀行消費者金融他証券保険不動産投資信託電力&ガス

資料提供:MSCI

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大学で教える株式投資論

PBMとしてのバーラ・モデル

p.30

証券またはポートフォリオの

リターン

リスク・フリー・レート

= 切片

=証券または

ポートフォリオの超過リターン

+ファクター・リターン

(リターン生成要因の値)

Xファクター・エクスポージャ

(要因に対する感応度)

+ 誤差項

ファクター・モデル

バーラ・モデル

PBMでは当該株式の「ファクターに関連する属性指標」を変数として「ファクター・リターン」を推計

ファクター・リターンFkt

(エクスポージャ1単位当たりのリターン)

ファクター・エクスポージャbkit

(ファクターに関連する属性指標の値)

「ファクター・リターン」は各時点のクロスセクション回帰の係数として求められる

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大学で教える株式投資論

バーラ・モデル(4)

› 個別銘柄のクロスセクション回帰分析

p.31

t月の個別銘柄

リターン

bkt

各銘柄の「財務レバレッジ」

ktF

t月は借入金の比率の大きい

銘柄ほどリターンが大きかった

個別銘柄の属性とその属性に帰属するファクター・リターンの時系列の特性を分析することにより、それらを組み合わせたポートフォリオのリスクやリターンの特性を把握

t月の個別銘柄

リターン

bkt

各銘柄の「流動性」

ktF

t月は流動性の大きい

銘柄ほどリターンが大きかった

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大学で教える株式投資論

PBMとしてのバーラ・モデル

p.32

=>

証券またはポートフォリオの超過リターン VS

ファクター・リターン

(リターン生成要因の値)

ファクター・エクスポージャ

(要因に対する感応度)

バーラ・モデル

反応 体質 刺激

市場ファクターのリターン

ベータ(β)

証券のリターン 業種

企業のファンダメンタルズ

業種リターン

ファンダメンタルズに対応するリターン

クロスセクションの分析

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大学で教える株式投資論

回帰分析とPBMモデル

› 回帰分析の適用

◼ クロスセクション回帰分析

◼ 単一変数のPBMモデルへの適用では、例えば

› リスク・フリー・レートを「ゼロ」と想定

› 被説明変数:証券iの月次リターン(Yit)

› 説明変数:同じ期間の証券iのファンダメンタルズ(Zit)

› 関係式: Yit = at + btZit + eit

› btが「ファクター・リターン」になる

p.33

銘柄1 銘柄2 銘柄3 ・・・ 銘柄N

Yit

Zit

at

bt

eit

被説明変数 反応

説明変数 体質

回帰切片

回帰係数 刺激

誤差