自殺と自殺対策 - 駒澤大学...自殺と自殺対策...

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自殺と自殺対策 ~ベクトル自己回帰による分析~ Suicide trends and countermeasures in Japan: A Vector Autoregressions Analysis 経済学科・ 4 EX3106 千羽敏史

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自殺と自殺対策

~ベクトル自己回帰による分析~

Suicide trends and

countermeasures in Japan:

A Vector Autoregressions

Analysis

経済学科・4 年

EX3106

千羽敏史

自殺と自殺対策

~ベクトル自己回帰による分析~

Suicide trends and

countermeasures in Japan:

A Vector Autoregressions

Analysis

1. 自殺と自殺対策~ベクトル自己回帰による分析~

Suicide trends and countermeasures in Japan: A Vector Autoregressions

Analysis

2. 自殺・失業・離婚の関係性、VAR モデル、若年者雇用

3. 要旨

本研究では、自殺と失業と離婚の関係性を数量的に捉え、日本の自殺の傾向、社会保障と自殺の

関係性を分析し、政策提言を行うことを目的とした。

1973 年から 2010 年までの日本における完全失業率、離婚率、 5 分位別社会保障決済費 (生活保護

費、社会保険費、失業対策費、社会福祉費、保健衛生対策費 )の一般会計歳出決済額における割合

が、自殺に与える影響について、年次データを用いたベクトル自己回帰 (Vector AutoRegression モ

デル、以下 VAR モデル )による実証分析を行った。さらに 2005 年 1 月から 2015 年 6 月までの日本

における完全失業率が、自殺に与える影響についても月次データを用いた VAR モデルによる実証分

析を行った。今回、年次では 5 歳階級別、月次では 10 歳階級別で、分析を行った。

本研究の新規性は、自殺に対する失業や離婚の影響という一方方向の影響だけでなく、自殺が失

業や離婚に与える影響などを 3 つの変数の相互関係を VAR モデルによる分析を行った点である。さ

らに自殺が自殺に及ぼす影響などの自己相関を VAR モデルによって分析した点や、性別や年齢階級

ごとの傾向を分析した点も挙げられる。

分析結果は、ほとんどの年齢階級で、自殺、失業、離婚が相互に増加し合うことが分かった。特

に若年層の自殺、失業、離婚の結びつきが強い。失業や離婚などはうつ病などの精神疾患を発症さ

せる可能性が高く、自殺の危険因子となることが知られている。また、自殺の自己相関の主な要因

である群発自殺と自死遺族の心理的負担・経済的負担や自殺リスクの増加など効果が強い。このよ

うな負の連鎖を断ち切るためにも、若年層への積極的労働市場政策の必要性がある。また、全年齢

階級に対して、うつ病などの精神疾患に関する取り組みの必要性がある。特に日本の自殺対策の一

環であるうつ病の認知度向上やうつ病に対する心のケア・自死遺族へのケアが必要である。

目次

Ⅰ .はじめに…………………………………………1 項

Ⅱ .先行研究…………………………………………2 項

Ⅲ .自殺、失業、離婚の動向………………………3 項

Ⅳ .変数の説明………………………………………5 項

Ⅴ .年次実証分析手法………………………………6 項

Ⅵ .年次実証分析結果………………………………7 項

Ⅶ .月次実証分析手法………………………………10 項

Ⅷ .月次実証分析結果………………………………11 項

Ⅸ .結語………………………………………………12 項

Ⅹ .本研究の課題……………………………………13 項

1

1. はじめに

日本では 1998 年以降、14 年にわたって自殺者数が 3 万人を超え続けた。自殺の要因に

関して、様々な先行研究がなされており、失業や貧困などの経済的要因が大きいと考えら

れる。また、自殺が周囲に及ぼす影響も考える必要がある。

本研究では、自殺と失業と離婚の関係性を数量的に捉え、日本の自殺の傾向、社会保障

と自殺の関係性を分析し、政策提言を行う。1973 年から 2010 年までの完全失業率、離婚

率、5 分位別社会保障決済費(生活保護費、社会保険費、失業対策費、社会福祉費、保健衛

生対策費)の一般会計歳出決済額における割合が、自殺に与える影響について、年次データ

を用いたベクトル自己回帰(Vector AutoRegression モデル、以下 VAR モデル)による実証

分析を行った。さらに 2005 年 1 月から 2015 年 6 月までの完全失業率が、自殺に与える

影響についても月次データを用いた VAR モデルによる実証分析を行った。今回、年次で

は 5 歳階級別、月次では 10 歳階級別で分析を行った。

本研究の新規性は、自殺に対する失業や離婚の影響という一方方向の影響だけでなく、

自殺が失業や離婚に与える影響などの変数の相互関係を VAR モデルにより分析した点に

ある。さらに自殺が自殺に及ぼす影響などの自己相関を VAR モデルにより分析した点

や、性別や年齢階級ごとの傾向を分析した点も挙げられる。

分析の結果、ほとんどの年齢階級で、自殺、失業、離婚が相互に増加し合うことが分か

った。特に若年層の自殺、失業、離婚の結びつきが強い。失業や離婚などはうつ病などの

精神疾患を発症させる可能性が高く、自殺の危険因子となることが知られている。また、

自殺の正の自己相関の主な要因である群発自殺と自死遺族の心理的負担・経済的負担や自

殺リスクの増加などの効果が若年層には強い可能性がある。このような負の連鎖を断ち切

るためにも、若年層への積極的労働市場政策が必要である。また、全年齢階級に対して、

うつ病などの精神疾患に関する取り組みの必要性がある。特に日本の自殺対策の一環であ

るうつ病の認知度向上やうつ病に対する心のケア・自死遺族へのケアが必要である。

図表 A

厚生労働省 「人口動態統計」、総務省 「労働力調査」より

0

10

20

30

0.00

2.00

4.00

6.00

197

3

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5

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1

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3

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200

9

201

1

自殺率、離婚率、完全失業率の推移

離婚率(人口千人対) 完全失業率 自殺率(人口10万対)

離婚率、失業率(

)

自殺率(

%)

2

2. 先行研究

自殺の先駆的論文は、社会学のデュルケームの「自殺論」(1897)である。また、医学・

心理学的側面による自殺の研究が行われてきた。近年では、日本でも経済学的な自殺の研

究をまとめたものとして、澤田ら(2013)が挙げられる。

自殺によって生み出される負の外部性について、澤田ら(2013)は群発自殺と自死遺族の

心理的負担・経済的負担や自殺リスクの増加を挙げている。群発自殺とは、著名人やいじ

め自殺、一家心中などの自殺報道により自殺が波及していく効果(ウェルテル効果)のこと

であり、日本でも観測されている(Michiko Ueda, Kota Mori, Tetsuya Matsubayashi,

2013)。

自死遺族に関しては、Chen et al(2009),森ら(2008)によって、日本の自死遺族数が推計

された。

この推計によると 2006 年時点の日本における自死遺族数は、292 万~364 万人にもの

ぼり、日本の人口当たり 37~44 人に 1 人が遺族ということになる1。より広い親族・友

人・同僚・近隣住民などを含めると国民全体に大規模の負の外部性をもたらすことが分か

る。

澤田ら(2013)は自殺と失業に関する先行研究をまとめており、自殺と失業の関係性に関

して、Hamermesh & Soss(1974)によれば、「自殺は人々の合理的判断の結果として選択

される行動であると考え、個人の生涯効用の期待値が各個人の閾値を下回ったとき、個人

は自殺する」としている。それに基づくと「失業率が高くなると所得リスクの上昇や生涯

所得の低下が自殺を招く」可能性がある。さらに「失業は精神的・肉体的疾患病のリスク

も上昇させ、複合された深刻な自殺の危険因子になりうる」。また、「失業率と自殺率と

の相関関係は多くの論文で確認されている」(chen et al. 2011, 2012a, 澤田・菅野 2009)

としている。 (p45,p57,p57,p57)

厚生労働省の自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム(2008)によると、

「生活保護受給者の自殺死亡率は全体の自殺死亡率よりも高く(※)、被保護者数に占

める精神疾患及び精神障害を有する方の割合は全人口に占める精神疾患患者の割合より

も高い。生活保護受給者に対する精神面での支援体制の強化が必要であることが分か

る。(※)生活保護受給者の自殺死亡率については、平成 22 年 1 月に全国の自治体に依頼

し、福祉事務所から都道府県本庁を通じて報告があったものを集計したもの。

1推計に使用した式は以下の通りである。

自殺者1人当たりの自死遺族数

=人口動態統計特殊報告から得られた自殺者の有配偶者比率

+各年齢層において生存している親の平均数

+各年齢層において生存している兄弟姉妹の平均数

+各年齢層において生存している子どもの平均数1

3

職業等の属性によって、自殺に至る経路や要因は異なる。例えば「被雇用者・勤め

人」は、配置転換や転職等による『職場環境の変化』がきっかけとなって自殺に追い込

まれるケースが多い。失業者は、『失業→生活苦→多重債務→うつ→自殺』といった経

路をたどるケースが多い。各地域で対策に取り組む際は、そうした実態を踏まえて必要

な連携を図っていく必要がある」(p3)

と述べている。また、自殺対策支援センターライフリンクの自殺実態解析プロジェクトチ

ーム(2008)によると、離婚(家族の不和)や失業の裏にはうつ病などの精神疾患の存在が大

きいとされている。さらに、様々な危険要因を生み出す社会経済的な構造が自殺を引き起

こすことも指摘している。

松田ら(2006)によると、自殺の危険要因である離婚率と失業率の相関が強いことが知ら

れており、佐藤(2014)によると、夫の失業が 1~2 年後に離婚確率を上昇させ、所得以外

の失業の効果が要因になっていると指摘している。Charles and Stephens (2004)による

と、失業が結婚相手としての適性に関する負のシグナルになっている可能性があると指摘

している。

このように、自殺には複数の要因が複雑に絡み合っていることが分かる。そこで本研究

では、自殺、失業、離婚の相互関係や影響期間に関して分析する。

3. 自殺、失業、離婚の動向

図表 C

戦後の日本の自殺が急増した時期は図表 B(文末

掲載)あるように、1950 年代、1980 年代、1997~

現在までの3つが存在する。それぞれの自殺者数増

加の特徴を年齢階級や男女の違いで説明すると以下

のようになる。

<1950 年代の自殺>

戦後直後(1950 年代)の 15~24 歳の男女の自殺が急増した理由は、以下のような時代背

景にあったのではないかと推測する。吉川洋(2012)によると

「高度経済成長の直前一九五〇年(昭和25)には、女子の三人に二人、男性でも二人

に一人は中学を出ると働き始めた。同年代の男女合わせて二人に一人は中学を卒業する

と、身体にも心にもいたる所に幼さを残したまま十五歳にして一人前の働き手になった

のである。彼らは『民族大移動』の先兵だった」(p103-104)

「夢破れて故郷に帰る少年少女もいたが、多くは大都会にとどまり他の職場を求め

た。いずれにしてもそれは『終身雇用』とは無縁の世界だった」(p108)

図表 D

4

と記されている。

男女共の集団就職、中学新規学卒者の高い失業率と

出稼ぎ労働による社会のつながりの希薄化が自殺を助

長させた可能性がある。図表 E(文末掲載)に記載されて

いる自殺の社会的要因では、失業、社会的孤立などが

挙げられる。また、心理的要因では、失業・出稼ぎ労

働による喪失感体験(特に親・親族・職・自尊心の喪失)→苦悩・心痛→危機対処能力の減

退・欠如→危機感・絶望感→自殺念慮→自殺行為に及ぶ状況だった可能性がある。

また、大きな社会変動が生じたときには、若年男性の自殺率が上昇することが世界的な

傾向であると知られている。さらに男女共に集団就職を行ったことにより女性にも同様の

影響が出たのではないかと考えられる。女性で専門職についている人の自殺率は、専業主

婦よりも高い傾向があることも知られており(Bille-Brahe,1987)、女性の社会進出によっ

て、女性の自殺が増加する可能性がある。

<1980 年代と 1997 年以降の自殺>

1980 年代の自殺の急増は、男性の 25~54 歳が主要因だったが、1997 年以降は全年齢

の自殺者数が増加傾向にある(図表 B 文末掲載)。二つの自殺時期の共通点は、失業率の

高い時期と自殺数の多い時期が重なっていることである(図表 A)。

1997 年以降の自殺の特徴は、澤田ら(2013)によると急増・恒常化・若年化が挙げられ

る。具体的には、1997~98 年の急増、徐々に自殺者の若年化の進行、1998 年以降年間自

殺者数が 14 年間連続で 3 万人を上回るといった特徴がある。急増の原因は、金融危機に

よる金融機関の貸し渋りが要因となっている可能性が高いと指摘している。Chen et al.

(2011)によると 1999 年~2007 年で中高齢の自殺率への寄与はマイナスであるが、男女共

に 20・30 代の自殺率が増加するという若年化の進行が恒常化を招いている。また、恒常

性の背後には、男女ともに健康理由、男性の場合は経済理由があるとしている。

<自殺の世代別比較>

5 歳階級別生まれ年別自殺者数(図表 F、文末掲載)によると、1935~39 年生まれは男女

共に自殺者数が全体的に高く、中でも 15~24 歳(1950 年代)、50~59 歳(1980 年代)、65

~74 歳(1997 年以降)の自殺が多い。図表 B(文末掲載)と比較してみると、自殺が急増した

3 つの時期に自殺の多かった年代とほぼ一致する。

世代によって自殺する年代が異なる原因は、時代背景が大きく影響している可能性があ

る。若年期の失業率の高さを経験した世代は、失業を経験することで退職金が減少し、賃

金も減少する(図表 G 文末掲載))。また、樋口(2013)によると学校卒業時点の景気の良し悪

しが若年者の卒業後の就職状況を規定するという世代効果がその後も長く不利な状況を生

じさせる。先にも述べたが、失業と精神疾患との関連性も強いことからその後の自殺のリ

スクが高くなる可能性がある(自殺実態解析プロジェクトチーム、2008)。これらの先行研

5

究を踏まえ、自殺、失業、離婚の分析をする。4 章では、まず分析に用いた変数を説明す

る。

4. 変数の説明

<自殺>

自殺の主なデータは、厚生労働省の人口動態統計と内閣府「地域における自殺の基礎資

料」(警察庁自殺統計)である。厚生労働省の人口動態統計と内閣府「地域における自殺の

基礎資料」(警察庁自殺統計)の違いは以下の通りである。

自殺の全国統計において、人口動態統計よりも警察庁自殺統計の自殺数が上回ってい

る。2015年の全国自殺数を比較すると、24025‐23121=904人の差がある。例年、1000人

~2000人の差がある。

このような差の原因は、警察庁自殺統計では外国人も含まれる点がある。また、本研究

において注意すべき差の原因は、自殺を判断する基準が違うことである。人口動態統計で

は、「家族をよく知っているかかりつけ医が死亡診断書に、死因として「自殺」と明記す

るのを避ける傾向がある」(高橋 2008)

警察庁自殺統計に記載されている自殺者の情報は、職業、原因・動機、自殺未遂歴の有

無など自殺者の細かい情報が記載されているが、人口動態統計に比べ、直近のデータを公

開している。本研究では、長期時系列データに長けている人口動態統計を使用した。また

月次データに関しても警察庁自殺統計よりも月次データの公開されている期間が長いた

め、人口動態統計を使用した。

<完全失業率>

完全失業率を年齢別に見てみると、15~29 歳の失業率が全体よりも高い傾向がある(図表 H 文末掲載)。

完全失業者の定義についての 3 条件は、総務省統計局によると、(1)仕事についていない

(2)仕事があればすぐつくことができる(3)仕事を探す活動をしていたである。

つまり、働いていない人(専業主婦や定年退職後に再就職しようとする人)がハローワー

クに行った場合、失業者となる。また、失業後に働くことをあきらめた人は、失業率に含

まれないことにも注意が必要である。

<離婚率>

本研究では、データの制約上、全年齢の離婚率を使用している。日本の離婚年齢の内訳

(図表 I 文末掲載)によると近年では男女共に 25~39 歳が他の年齢より高い傾向がある。

今回の分析では、データの制約上、全年齢対象の離婚率を使用しており、人口構造の変化

や既婚者の年齢構成の変化などの影響も含まれている。

6

5. 年次実証分析手法

本研究では、VAR モデルを用いて相互関係や影響期間を分析することを目的とし

た。また、年齢階級や性別による違いを捉えた。使用したソフトウェアは EViews であ

る。次数 2 を選択した。また、1973~2010 年までの年次データのサンプルサイズは 38

である。2 3

𝑌𝑡=∑𝐴

𝑖

2

𝑖=1

𝑌𝑡−𝑖+ 𝜂

𝑡

𝑌𝑡には、男女別 5 歳階級別自殺率、男女別 5 歳階級別完全失業率、離婚率、5 分位別社

会保障決済費(生活保護費、社会保険費、失業対策費、社会福祉費、保健衛生対策費)の一

般会計歳出決済額における割合を採用した。男女別完全失業率は男女計、男性の 15~69

歳までの 5 歳階級別失業率があり、70 歳以上の分析には 65 歳以上の完全失業率を使用し

た。男女計と男性は、総数と 15~84 歳までの 5 歳階級別の分析を行った。女性は、65 歳

以上の失業率が公開されていないため、女性は総数と 15~64 歳までの分析となった。

各変数の算出方法は以下の通りである。

男女別 5 歳階級別自殺率=5 歳階級別自殺率/5 歳階級別人口(人口動態統計より)

離婚率=年間離婚件数/10 月 1 日現在日本人人口(人口動態統計より)

5 歳階級別完全失業率=5 歳階級別完全失業者/5 歳階級別労働力人口 (総務省統計局

労働力調査より)

5 分位別社会保障決済費の一般会計歳出決済額における割合=

5 分位別社会保障決済費(生活保護費、保健衛生対策費、失業対策費、社会保障費、社会

福祉費)/一般会計歳出決済額(財政統計より)4 5

6. 年次実証分析結果

2 VARモデルでは、サンプルサイズが少ない場合、推定すべき次数や変数が多くなると推計された次数の

信頼度が低くなることに注意しなければならない。3 次数を変更した際に、主な結果に影響はなかった。また、変数を男女別 5歳階級別自殺率、男女別 5歳

階級別完全失業率、離婚率で設定した場合にも主な結果に影響はなかった。 4分母分子ともに昭和 42 年度以降主要経費別分類による一般会計歳出予算現額及び決済額より

財政統計(財務省)http://www.mof.go.jp/budget/reference/statistics/data.htm 5 平成 21 年度において社会保障関係費の区分が見直され、社会保険費は年金医療介護保険給費に変更

し、失業対策費は雇用労災対策費に変更された。

7

まず、自殺、失業、離婚の関係性をまとめ、社会保障とこれら 3 つの変数の関係性につ

いて言及していく。本研究では、インパルス応答による分析結果をまとめた。今回、有意

水準は5%に設定した。文末に年次データ VAR モデル分析結果一覧表を掲載する。

6.1.変数の自己相関

<自殺率>

同年代の自殺率のインパルス応答による正の自己相関は、全ての年代で確認された。男

女共に 20~24 歳が最も正の自己相関期間が長い(図 J)。男性は 15~24 歳と 60 代の自殺

の正の自己相関期間が長い。女性は、20・30 代と 50 代の自殺の正の自己相関期間が長

い。

自殺の正の自己相関の背景には、群発自殺と自死遺族の自殺リスク増加があり、自殺の

報道に関する規制や自死遺族の心のケアを積極的に行う必要がある。

図表 J

-.00002

.00000

.00002

.00004

2 4 6 8 10

Response of SUM_SUICIDE_R_20_24 to SUM_SUICIDE_R_20_24

Response to Cholesky One S.D. Innovations ± 2 S.E.

<失業率>

同年代の失業率の正の自己相関は、全ての年代で確認された。男女共に 25~29 歳の失

業率の正の自己相関期間が長い。また、女性より男性の方が、全体的に正の自己相関期間

が長い傾向がある。男性は正規労働者の割合が多いが、女性は非正規労働者の割合が多

い。そのため、男性の方が女性より失業期間が長くなる可能性がある。

<離婚率>

離婚率(全体)の正の自己相関は、全ての年代で確認された。男女共にほとんどの階級で

約 1~3 年後に増加する。また、男性より女性の方が、全体的に正の自己相関期間が長い

傾向がある。

6.2.自殺率⇔失業率

<失業率から自殺率への影響>

男女計 20~24 歳の自殺率の自己相関

8

各年齢階級の失業率が増加することで同年齢階級の自殺率の増加する傾向は、一部で確

認された。男女計の総数は 5 年後に増加したが、その一方で減少する結果も見られた。

本研究では、同年齢階級の失業率と自殺率の分析を行っているため、他の年齢階級の失

業の影響が含まれていない。そのため、男女計の総数の失業率が自殺に与える影響が正で

あるのに対し、各年齢階級の分析では、一部負になることが考えられる。例えば、親の年

齢階級の失業が子供の年齢階級の自殺に与える影響がある可能性もあるため、他の年齢階

級に及ぼす影響を今後詳しく分析していきたい。

<自殺率から失業率への影響>

男女計の 20・30 代の自殺率が増加すると、同年代の失業率が増加する傾向がある。男

性は 20~24 歳、30~34 歳の増加期間が長い。本研究はマクロデータ分析であり、他者の

自殺が失業に影響する直接的な因果を断定することができないものの、自死遺族がうつ病

になり、失業に追い込まれるケースが考えられる。また、自殺が増える状態が失業を生み

やすい状況であることが分かる。

6.3.自殺率⇔離婚率

<離婚率から自殺率への影響>

離婚率(全体)が増加することで自殺率が増加する傾向が半分以上の年齢階級で見られた

(男女計、男性、女性)。男性は 30~44 歳の増加期間が長く、男女共に 35~39 歳の増加期

間が最も長かった。離婚と自殺の因果関係を推測すると、家族の不和によってうつ状態に

なることが考えられる。また、35~39 歳の時期に増加期間が長い理由は、子供の年齢や将

来の所得に対する不安と喪失感などが考えられる。さらに、30 代の離婚が多いため、30

代の自殺に影響が大きい可能性がある。

<自殺率から離婚率への影響>

自殺率が増加することで離婚率(全体)が増加する傾向は、男女共に 20~24 歳の増加期間

が最も長い。また、男性の 15~19 歳、35~39 歳も増加期間が長い。女性は、35~39 歳

も増加期間が長い。

6.4. 失業率⇔離婚率

<失業率から離婚率への影響>

男女計の 25~29 歳の失業率が増加すると、1,5 年後に離婚率(全体)が増加する。男性

の 25~29 歳の失業率が増加すると、4,5 年後に離婚率(全体)が増加する。また、男性の 65

~69 歳と 75~79 歳の失業率が増加すると、1~4 年後に離婚率(全体)が増加する。失業が

所得や家族関係に対して負の効果を持っている可能性がある。若年期の失業は、生涯賃金

の低下や退職金の減少を招いたり、精神的・肉体的疾患のリスクが上昇させたりする。こ

うした状況が離婚に繋がる可能性がある。

<離婚率から失業率への影響>

9

離婚率(全体)が増加すると、ほとんどの年齢階級で失業率が増加する傾向がある。特に

男女計の 20・30 代、55~59 歳の増加期間が長い。男性は 55~59 歳の増加期間が最も長

い。

6.5. 各社会保障費 5 分位の割合と自殺率・離婚率・失業率の関係

図表 K は、全体の傾向をまとめたものである。ただし、全ての年齢階級が有意だったと

いう意味ではない(年次データ VAR モデル分析結果一覧表 文末掲載)。

図表 K

※セルが空欄になっている場合は、有意な結果がなかったという意味である。※+は増加、-は減少を意味する。※一番上の行には、インパルスを与えた変数が記載されている。一番左の列には、インパルスの影響を受けた変数が記載されている。※インパルスが生活保護費の割合で、応答が失業率の場合は、生活保護費の割合が増えると、失業率が男女計では減少傾向であり、男性では減少傾向であり、女性では減少傾向であるがこの表から分かる。

保健衛生対策費や社会保険費の割合の増加は、自殺率を約 2・3 年後に減少させる結果

となった。保健衛生対策費は、男女共に 40 代に対して効果がある。社会保険費では、男

女計の 70~84 歳に効果があり、男女共に 40 代に対して効果がある。70~84 歳の自殺率

を減少させた要因は、高齢者は病気・怪我による介護の可能性が高く、医療費、年金、保

険の充実が自殺を低下させた可能性がある。

この 2 つに共通していることは、精神的・肉体的疾患病に対するケアに貢献している点

である。保健衛生費の割合が増加すると、失業率や離婚率が低下傾向にあるが、社会保障

費の割合が増加すると、失業率や離婚率が増加傾向にあった。仮説として、失業や離婚を

経験しても社会的なサポートが得られることが考えられる。全ての失業や離婚が自殺に繋

がるわけでなく、失業や離婚によって被る精神的・経済的負担を減らすことが重要である

が、この違いに対しては、今後さらに分析が必要である。

生活保護費、失業対策費、社会福祉費の割合が増加すると、自殺率が増加する傾向があ

る。第 2 章でも述べたが、自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム(2008 年)によると、生

活保護費の割合増加の背景には自殺リスクの高い生活保護受給者が増加することが考えら

れる。また、受給者が精神疾患や精神障害を有する確率が全人口に比べて高いため、自殺

率が増加した可能性がある。

インパルス→

応答↓ 男女計 男性 女性 男女計 男性 女性 男女計 男性 女性 男女計 男性 女性 男女計 男性 女性

自殺率 + + + - - - + + + - - - + +

失業率 - - - -30代+、55~59歳

+ (一部負) + + + + + + + +

離婚率 - - - - - - + + + + + + + +

生活保護費の割合 保健衛生対策費の割合 失業対策費の割合 社会保険費の割合 社会福祉費の割合

10

失業対策費の割合増加の背景には、失業率の増加による失業者の増加と今まで働く必要

のなかった専業主婦や定年退職後に再就職する人などがハローワークに行くことも考えら

れる。しかし、それだけで約 2・3 年後に自殺が増加するという考察をするには、データ

の制約上不十分といえる。

社会福祉費の割合増加の背景には、身体障がい者、児童、高齢者、母子世帯など社会的

にサポートの必要な人が増加し、さらに高齢化が進むことで、介護者と被介護者の増加が

挙げられる。本研究で断定することは難しいが、介護をする可能性の高い 50 代の男性の

自殺率が高かったことを考えると、介護と自殺の分析を今後行う必要がある。

以上の結果を踏まえると、20・30 代の自殺の正の自己相関期間が長い理由は以下のよう

に考えられる。

・自殺率の正の己相関期間が長い点

・失業率の正の自己相関期間が長い点

・離婚率(全体)と 20・30 代の自殺率の関係が互いに増加関係にある(自殺→離婚の増加

期間が長い)

・20・30 代の自殺率が増加すると 20・30 代の失業率が増加する点

・離婚率(全体)と 20・30 代の失業率の関係が互いに増加関係にある(離婚→失業の増加

期間が長い)

・各社会保障費 5 分位の割合増加による影響が、自殺に関して減少させる効果がない点

上記の点から、20・30 代の自殺対策を行う必要がある。

7. 月次実証分析手法

2005 年 1 月から 2015 年 6 月までの月次データも VAR モデルによる分析を行った。

𝑌𝑡=∑𝐴

𝑖

4

𝑖=1

𝑌𝑡−𝑖+ 𝜂

𝑡

𝑌𝑡には、季節調整済み 10 歳階級別自殺数(人口動態統計より)、10 歳階級別季節調整済

み失業率(労働力調査より)、震災ダミー(2011 年 3 月)を採用した。使用したソフトウェア

は EViewsである。次数は 4 とした。自殺数の季節調整には失業率と同様に季節調整法 X-

12-ARIMA を使用した。月次データのサンプルサイズは 126 である。データの制約上、男

女計は、総数、15~94 歳までの 10 歳階級別で分析し、65~94 歳は 65 歳以上の季節調整

済み失業率を使用した。男性と女性は、65 歳以上の季節調整済み失業率が公開されていな

いため、総数と 15~64 歳までの 10 歳階級別の分析を行った。

この分析では、自殺の正の自己相関や失業を中心に分析することで、対策を考えること

に重点を置いた。また、データの制約上により 10 歳階級別になっており、年次データの 5

11

歳階級別と比べると広い範囲となっている。この分析でも他の年齢階級の自殺の影響を分

析していない点にも注意が必要である。

10 歳階級別完全失業率の算出方法は以下の通りである。

10 歳階級別完全失業率=10 歳階級別完全失業者/10 歳階級別労働力人口(労働力調査より)

8. 月次実証分析結果

本分析では、インパルス応答による分析結果をまとめた。年次データ同様、有意水準は

5%に設定した。文末に月次データ VAR モデル分析結果一覧表を掲載する。

<自殺の自己相関>

男女計では、総数・15~64 歳、男性で、総数・25~54 歳、女性は、総数、15~34 歳の

正の自己相関期間が長い。本研究の年次の分析と同様に 20・30 代の自殺の正の自己相関

期間が長い点は一致する。

最も正の自己相関期間が長い年齢階級は、男女計では 55~64 歳(1~23 ヶ月後)、男性で

は 35~44 歳(1~3,7~30 ヶ月後)、女性では 25~34 歳(1~2,7~12,14~15 ヶ月後)であっ

た。

<失業率から自殺率への影響>

失業率が増加すると、男女計の総数では 2 ヶ月後に自殺が増加する。また、失業率が増

加すると、男性の 15~24 歳では 2 ヶ月後に自殺が増加する。15~24 歳の失業率は、図表

H(文末掲載)を見ても分かるように全体よりも高い水準を維持していることが分かる。15

~24 歳の男性にとって、失業によって被る心理的・経済的負担が大きい可能性がある。第

3 章でも述べたが、樋口(2013)によると、学校卒業時点の景気の良し悪しが若年者の卒業

後の就職状況を規定するという世代効果がその後も長く不利な状況を生じさせると述べて

いる。

<東日本大震災から自殺への影響>

震災後、男女共に 3~4 ヶ月後に増加し、約 13~33 ヶ月後に減少する傾向がみられた。

月次データでは、男女ともに東日本大震災による影響が 3~4 月後に増加する結果となっ

た。

9. 結語

2 つの分析の結果を踏まえ、考察すると以下のようになる。

12

15~34 歳までの若年者の自殺に関して、自殺、失業、離婚との関係が強く結びついてい

る点や社会保障の面でのサポートが不十分である点、学校卒業時点の景気の良し悪しが若

年者の卒業後の就職状況を規定するという世代効果がその後も長く不利な状況におかれて

しまう点などを踏まえると、若年層への積極的労働市場政策を行う必要がある。

福島(2007)によると若年者の積極的労働市場政策には、失業者への職業紹介、職業訓

練・教育、助成金による雇用創出の 3 つの役割がある。資源分配、所得分配、景気変動の

安定化によって労働市場に影響を及ぼす。若年者の高い失業率の背景に求職サイドと求人

サイドのミスマッチがあるとすると、このミスマッチを減少させる若年者の積極的労働市

場政策の3つの役割は若年失業者対策に効果的である。職業紹介によって、若年失業者の

就職活動の効率性を高める。職業訓練・教育によって、若年者労働者の労働生産性を高

め、若年失業者の就職を後押しする。しかし、景気に左右されやすい OJT だけでなく、

学校教育による職業訓練の充実によっても若年者労働者の労働生産性を高め、若年失業者

の就職を後押しする必要性がある。助成金による雇用創出によって、若年失業者に雇用の

機会を生み、企業で働きながら行う OJT(on the job training)による労働の熟練度の向上を

若年失業者に提供することができる。したがって、学校卒業時点の景気の良し悪しが若年

者の卒業後の就職状況を規定するという世代効果を少しでも減少させることで、後の失業

や離婚や自殺の連鎖を断ち切ることが必要である。

全ての年齢階級においても自殺、失業、離婚の背景には、うつ病などの精神疾患が関連

しているため、日本の自殺対策の一環であるうつ病の認知度向上やうつ病に対する心のケ

アが必要である。周囲の精神疾患への理解は、職場や家庭などでの心理的ストレスが減

り、心療内科受診に繋がりやすくなる。また、相談できる場が増える(周囲や相談窓口)こ

とで自殺を未然に防ぐことができる。

自殺対策には、様々な方面からの対策が必要であり、また長期的に取り組む必要性があ

る。若年層の積極的労働市場政策や精神疾患に関する自殺防止の取り組みは、今後の不安

定な経済・社会による自殺の急増を阻止する効果があるだろう。また、全ての年齢階級の

自殺に対しても自殺対策が十分に機能していると言い難く、自殺の原因が性別、世代、年

齢ごとに違うこともあり、自殺対策も性別や年齢ごとに違う必要性がある。

2012 年以降、日本の自殺者数は、3 万人を下回ったもののまだ高い水準にある。2006

年に自殺対策基本法が制定されて、現在(2016 年)で 10 年を迎え、取り組みの効果が今後

さらに分析していく必要がある。また、次に自殺が急増する事態を防止するためにも自殺

に対するメカニズムの解明・精神疾患と自殺の関係の解明・予防策に関する研究を進めて

いく必要がある。

日本の自殺対策の中でも自死遺族に対する支援を法律で定めた点は、他国と比較しても

珍しい。本研究でも自殺の正の自己相関期間が最長で 4 年間持続することが分かってお

り、自殺の正の自己相関期間が長期化する要因の一つに自死遺族の自殺リスクの増大があ

ることを踏まえると大きな一歩といえる。しかし、正の自殺の自己相関期間が長期化する

13

もう一つの要因である群発自殺を防止する対策は不十分だといえる。特にメディアによる

自殺報道が依然として目立つ部分が多く、インターネットによる自殺の有害な情報など規

制の難しさがある。自殺が急増する事態を防止するためにも自殺に対するメカニズムの解

明・精神疾患と自殺の関係の解明・予防策に関する研究を進めていく必要がある。

10. 本研究の課題

本研究では、VAR モデルによる分析を行ったが、構造ベクトル自己回帰モデル

(Structural VAR モデル)の分析によって、同期の変数間の影響を調べていきたい。また、

VAR モデルでは、離婚率が増加すると自殺が増加するという結果が出た時に、離婚率が減

少すると自殺が減少するという解釈ができる。しかし、この仮定が正しいかどうかを検証

するため、影響が非対称性を持つ仮定を置いた分析をしていきたい。そのため、

Threshold vector autoregression による分析や Regime switching vector autoregression

による分析を行いたい。

また、今回、同年齢階級の自殺と失業率の影響しか分析していないことからも、親世代

と子供世代といった他の年齢階級への影響を調べたい。特に自殺では、自死遺族の自殺リ

スクの問題は、同年齢階級以外の遺族の年齢階級に対してもその影響を及ぼしていると考

えられるため、他の年齢階級との関係を分析したい。

失業に関しては、非正規労働者やフリーターではなく、失業者に関して分析してきた

が、今後非正規労働者やフリーターの自殺に関して分析していきたい。また、自殺に繋が

る失業がどのようなものなのかを分析し、自殺対策となる失業対策を提言していく必要が

ある。個票データでは失業と自殺の関連性だけでなく、失業による所得や生涯賃金の低

下、失業期間の長期化、失業後の再就職先の離職率などが自殺にどのように影響を及ぼす

のかなどの分析をしていきたい。

離婚に関しては、離婚と自殺の関係性をさらに分析するために全体の離婚率ではなく、

同居期間別にみた離婚件数・平均同居期間の年次推移(人口動態統計年報より)を使用し、

離婚と自殺の関係性を別の側面で分析したい。

社会保障に関しては、今回用いた 5 分位別による分析ではなく、失業対策・雇用対策や

福祉対策などの政策や一人当たりの社会保障費と自殺の関係性を分析し、どのような政策

が自殺対策に繋がるのかを考えたい。

今回行えなかった世代による分析を行い、失業の世代効果と自殺の関係を分析したい。

また、より自殺の研究を深めていくためにも自殺の月次データをより広く公開していかな

ければならず、さらには個票データの充実が望まれる。因果関係を特定し、複数の自殺の

危険因子を持つ人と自殺の関連性を捉えるために、個票データによる因果関係の分析を行

い、失業、離婚、うつ病などの自殺の危険因子が少なくなるような状況がどのようなもの

なのかを分析していくことで自殺の複合的な対策を検討する必要がある。失業や離婚によ

14

る引き起こされるうつ病の発生を抑制する政策を検討し、うつ病による失業や離婚の発生

を抑制する政策が何かを考えたい。企業内のうつ病に対する取り組みや労働環境・家庭環

境の改善に関する取り組みを調査していきたい。

参考文献

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デンスに基づくアプローチ』有斐閣[4]澤田康幸・菅野早紀(2009)「経済問題・金融危機と自殺の関係について」『精神科』第

15 巻第 4 号、p352-356[5]自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム(2008)「自殺・うつ病等対策プロジェクトチー

ムとりまとめについて」p3 厚生労働省HP(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jisatsu/torimatome.html)

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新報』No4343,11 月 15 日号, p102-103.[8]高橋祥友(2014)『自殺の危険性 臨床的評価と危機介入』(第 3 版)金剛出版[9]福島淑彦(2007)「雇用補助金は若年失業対策として有効か?」NUCB journal of

economics and information science 51(2), 197-208[10]樋口美雄, 財務省財務総合政策研究所編著(2013)『若年者の雇用問題を考える 就職支

援・政策対応はどうあるべきか』日本経済評論社[11]松田弘幸、野田信雄、小井出一晴、福田吉治、今井博久(2006)「離婚率の社会的要因

の統計的考察“愛は勝つか”」『バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌』 8(1),159-165

[12]森浩太・陳國梁・崔允禎・澤田康幸・菅野早紀(2008)「日本における自死遺族数の推計」CIRJE Discussion Paper J-207,東京大学経済学部

[13]吉川洋(2012)『高度経済成長 日本を変えた六〇〇〇日』中公文庫[14] Bille-Brahe, U. (1987) “A pilot study of the integration levels in Norway and

Denmark.” Acta Psychiatr scand, 76:45-62[15]Chen, J., Choi, Y.J., & Sawada. Y. & Sugano, S. (2009) “Those Who Are Lift

Behind: An Estimate of Nunber of Family Members of Suicide Victims in Japan, ”CIRLE Disucussion Paper. Mineo,F-558,Graduate School of Economics, Universityof Tokyo

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[17]Chen, J., Choi, Y.J., Mori. K., Sawada. Y &. Sugano. S. (2012a) "Socio-EconomicStudies on Suicide: A Survey" Journal of Economic Surveys 26(2): 271-306

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[21]Ueda, M. Mori, K. and Matsubayashi, T. (2013)“The Effects of Media Reports ofSuicides by Well-known Figures between 1989 and 2010 in japan,” mimeo

15

図表 B

平成 27 年度版自殺対策白書、内閣府http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9929094/www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku//whitepaper/w-2015/html/chapter1/chapter1_01_03.html

16

図表 E

図表 F-1

図表 F-2

0

10000

20000

30000

40000

50000

60000

19

00

_1

90

4生まれ

19

05

_1

90

9生まれ

19

10

_1

91

4生まれ

19

15

_1

91

9生まれ

19

20

_1

92

4生まれ

19

25

_1

92

9生まれ

19

30

_1

93

4生まれ

19

35

_1

93

9生まれ

19

40

_1

94

4生まれ

19

45

_1

94

9生まれ

19

50

_1

95

4生まれ

19

55

_1

95

9生まれ

19

60

_1

96

4生まれ

19

65

_1

96

9生まれ

19

70

_1

97

4生まれ

19

75

_1

97

9生まれ

19

80

_1

98

4生まれ

19

85

_1

98

9生まれ

19

90

_1

99

4生まれ

19

95

_1

99

9生まれ

20

00

_2

00

4生まれ

20

05

_2

00

9生まれ

女性 生まれ年別自殺者数100-95-9990-9485-8980-8475-7970-7465-6960-6455-5950-5445-4940-4435-3930-3425-2920-2415-1910-14

0

10000

20000

30000

40000

50000

60000

70000

80000

90000

100000

19

00

_1

90

4…

19

05

_1

90

9…

19

10

_1

91

4…

19

15

_1

91

9…

19

20

_1

92

4…

19

25

_1

92

9…

19

30

_1

93

4…

19

35

_1

93

9…

19

40

_1

94

4…

19

45

_1

94

9…

19

50

_1

95

4…

19

55

_1

95

9…

19

60

_1

96

4…

19

65

_1

96

9…

19

70

_1

97

4…

19

75

_1

97

9…

19

80

_1

98

4…

19

85

_1

98

9…

19

90

_1

99

4…

19

95

_1

99

9…

20

00

_2

00

4…

20

05

_2

00

9…

男性 生まれ年別自殺者数 100-95-9990-9485-8980-8475-7970-7465-6960-6455-5950-5445-4940-4435-3930-3425-29

(人)

(人)

17

厚生労働統計協会(2014)「人口動態統計時系列データ DVD 明治 32 年(1899 年)~平成 24 年(2012

年)」より

※パターン模様は、データがない年があり、線形補正した部分である。図表 F-2 も同様。

図表 G-1

図表 G-2

ユースフル労働統計 2015(http://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/kako/index.html)JILPT図表 G-1 は、p249 図表 G-2 は、p252 より引用図表 H

総務省 労働力調査より

0

2

4

6

8

10

12

14

完全失業率 男女計

全体

15-19歳

20-24歳

25-29歳

(%)

18

図表 I-1

図表 I-2

厚生労働省:平成 21 年度「離婚に関する統計」の概況より

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/rikon10/01.html

19

年次

デー

タVA

Rモデ

ル分

析結

果一

覧表

インパルス→

応答↓

年齢階級

男女計

男性

女性

男女計

男性

女性

男女計

男性

女性

男女計

男性

女性

男女計

男性

女性

男女計

男性

女性

男女計

男性

女性

男女計

男性

女性

総数

1,2

11,2

55

4,5

3,4

72

15~19歳

11,2

13

6

20~24歳

1,2,3,4

1,2,3

1,2,3,4

32,3

5

25~29歳

1,5

11,2

3,4,5

43

3

30~34歳

1,2

11,2

33,4

32

2-

35~39歳

1,2

11,2

2,3,4

2,3,4,5

2,3,4,5,6,7

42

40~44歳

11

13-

3,4

3,4

2-,6+

33-

3-3-

22-

3-

45~49歳

11

13-

33

2,3

3-3-

2,3

2,3

3-

50~54歳

11

1,2

22

55

55~59歳

1,2

11,2

43,4

22

3+,4-

4,5

4,5

60~64歳

1,2

1,2

12

2,3,4

22

65~69歳

11,2

4

70~74歳

11

2-4

42

32

23-

75~79歳

11

73,4,5-all

3,4

80~84歳

1,2

13,4-

2,3-all

総数

1,2

1,2

1,2

1,2

1,2

3,4

3,4

3,4,5

4,5

54,5

15~19歳

25

11

1-4

46,7,8,9-all

6-3

14,5,6,7,8

4,5,6

5,6,7,8

20~24歳

1,2,3,4,5

1,2,3,4,5

31

1,2

13

2,3

25,6

53,4,5

25~29歳

1,2

11,2

1,2,3

1,2,4

2,3,4

34

3,4,5

30~34歳

1,2,3,4,5

1,2

41

1,2

13,4

33

3,5-all

32

33,4,5

35~39歳

1,2

13

11

13,4,5

3,4

3,4

26

40~44歳

11,2

1,2

13,4

3,4

34,5

45~49歳

1,2

1,2

1,2

32

7,8,9,10,11-all

1,11

9,1

54,5,6

50~54歳

1,2

1,2

13

2,3

8-9-

4-4,5,6,7

4,5,6,7

4,5

55~59歳

11

1,2

1,2

13,4,5,7

3,4,5,6,7

33-

24,5

4,5

60~64歳

11

41,2

1,2

13

22

33,4,5

3,4,5,6

4,5

65~69歳

21,3

1,4

2,3,4

32

25

5

70~74歳

11,3

2,3,4,5

2,3,4

22

3,4,5

2,5

75~79歳

1,2

1,3

2,3

22

22

80~84歳

11

2,3

2,3

22

総数

11

1,2,3,4

1,2,3

1,2,3,4

4,5

4

15~19歳

1,3,4,5

1,3,4,5,6

2-1-

1,2,3

1,2,3

1,2,3,4

5,6,7,8-all

4,5,6,7

4,5

4,5,6

20~24歳

1,2,3,4,5

1,2,3,4,5

1,2,3,4

1,2,3

1,2,3

1,2,3

54,5

5,6,7

25~29歳

11,5

4,5

1,2,3

1,2,3

1,2,3,4

3-5

4

30~34歳

1,2,3,4

41,2,3

1,2,3

1,2,3

2-5,6,7

35~39歳

1,4

1,2,3,4

3,4,5

1,2,3,4

1,2,3,4

1,2,3,4

40~44歳

11

51,2,3

1,2,3

1,2,3,46,7,8,9,10-all

6,7,8,9,10-all

3-4,5,6,7,8

4,5,6,7,8

5

45~49歳

1,2,3

1,2,3

1,2,3

3+,9-,10-

3-3-

3-6,7,8,9,10-all

8,9,10,11

6,7,8,9,10

4,5,6,7,8

3,4,5,6,7,8

5

50~54歳

2-2,3-all

1,2,3-all

1,2,3

1,2

1,2,3,4

6,7,8-all

6,7,8,9,10-all

2,3,4-all

2,3-all

7,8

3,4,5,6,7

3,4,5,6,7,8

55~59歳

1,2,3,4

1,2,3,4

1,2,3,4

4,5,6,7

4,5,6

4,5,6,7

60~64歳

1,5

1,4

2-1,2,3,4

1,2,3,4

1,2,3,4

24,5

3,4,5,6

5

65~69歳

11,3

1,2,3,4

1,2,3,4

1,2,3,4

3,4,5,6

5,6

70~74歳

11

11,2,3,4

1,2,3,4,5,6

3,4,5,6,7

4,5,6,7

75~79歳

2,3-all

11,2,3,4

1,2,3,4

1,2,3

2,5

4,5,6

80~84歳

7-1

1,2

1,2,3,4

1,2,3

5,6,7,8

5,6

※数字の意味は、○年後に有意水準5%を満たすという意味である。

※セルが空欄になっている場合は、有意な結果がなかったという意味である。

※色がついているセルは、結果が負で有意(減少)。別時点で正と負の結果が混ざっている場合は、数字の後に+、-と記載。最後にallと

記載されている場合は、全て負の結果である。

※一番上の行には、インパルスを与えた変数が記載されている。一番左の列には、インパルスの影響を受けた変数が記載されている。

※インパルスが男性の総数の自殺率で、応答が離婚率の場合は、男性の総数の自殺が増えると、離婚率が1年

後増加するということがこの表から分かる。

生活保護費の割合

保健衛生対策費の割合

失業対策費の割合

社会保険費の割合

社会福祉費の割合

離婚率(全

体)

自殺

失業率

(70歳

以上

は65歳以上

の失業率)

離婚率

自殺率

失業率(70歳

以上は65歳以上の失業率)

20