乳幼児と保護者、妊産婦のための...

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乳幼児と保護者 乳幼児と保護者 妊産婦のための 妊産婦のための 防災ハンドブック 防災ハンドブック 日本子ども家庭総合研究所 平成26年3月

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  • 乳幼児と保護者乳幼児と保護者、、妊産婦のための妊産婦のための

    防災ハンドブック防災ハンドブック

    日本子ども家庭総合研究所

    平成26年3月

  • 身のまわりの安全チェック

    日頃の備え―非常時の必需品と心の準備

    災害にあったら

    被災後や避難生活で気をつけること

    栄養・食生活分野における被災後の対応

    参考文献

    連絡先カード

    わが家の備蓄品チェックリスト

    大規模な災害が発生した際に,その発生時から乳幼児あるいは妊産婦に焦点を当てた簡潔

    明瞭な手引きを作ること目指し,本ハンドブックは編纂されました。東日本大震災後約2年余り経

    過した平成25年度に日本子ども家庭総合研究所に対し,厚生労働省雇用均等・児童家庭局よ

    り「東日本大震災被災児童・避難児童に対する支援の総合的研究」として,被災後の初期対応

    に関する研究の要請がありました。このハンドブックはその研究の成果物の一つとして位置づけ

    られるものです。

    日本列島には複数の火山帯が走り,世界の中でも日本は地震が多い国です。最近10年程度

    をふり返っても,平成15年(2003年)には十勝沖地震,平成16年(2004年)には新潟県中越地震,

    平成19年(2007年)には能登半島地震,および新潟県中越沖地震,平成20年(2008年)には岩

    手・宮城内陸地震,そして平成23年(2011年)に東日本大震災が起こっています。また,温帯モ

    ンスーン地帯にあり,梅雨の長雨,夏から秋にかけての台風の到来など特徴ある気象条件がそ

    ろった国でもあります。すなわち,日本は自然災害に見舞われやすい国であり,日頃から災害

    に遭った場合を考え,備えておくことが安全に暮らすために意味があるといえます。本ハンド

    ブックでは,特に地震を具体的に想定し,日頃から備えておくこと,災害発生時に対処すべきこ

    となどについて,乳幼児をお持ちの家庭,妊娠中の女性,産後間もない女性の場合に役立つこ

    とに視点を置き,まとめました。地震の際には,倒壊,ひび割れなど目に見える変化のほか,周

    囲の環境の見えないところにも危険が迫っていることがあります。どのようなことを想定し行動をと

    ればよいのかについても日頃から考えておくことは大切です。時間のある時にご一読いただき,

    それぞれの家庭での備えに役立てていただきたいと願っています。

    乳幼児と保護者、妊産婦のための防災ハンドブック

    2

    6

    13

    16

    22

    目 次

    1

    28

    29

    日本子ども家庭総合研究所所長

    衞藤

    まえがき

    平成26年3月

    31

  • 1.さまざまな自然災害について知っておきましょう

    ■妊娠したら市区町村に妊娠の届出をしましょう。災害が起こったとき、妊産婦・乳幼児など、

    特に保護が必要な人の所在を市区町村に知らせておくことは安心につながります。

    ■妊婦さんや乳幼児のお母さんは、より安全な避難路を確認します。また、里帰り中には、実

    家のある地域の避難場所や避難経路を確かめておきます。

    ■妊婦さんは、特に自分の身とおなかの子どもを守る必要があります。

    体調が悪いときや妊娠後期にはすばやい行動がとれないことも考慮して、より安全な状態にし

    ておきます。

    妊娠の安定期に入ったら、出産後、乳児の世話をすることを考えて、家庭内の環境を子どもに

    とっても安全な状態にしておくと安心です。

    ■乳幼児のお母さんは、子どもの目の高さで、安全を確認しましょう。

    特に、住んでいる地域、滞在している地域に起こる可能性のあることを確認しましょう。

    ■市区町村が配布している「くらしのしおり」のような冊子や広報、自治体のホームページなど

    で、住んでいる地域の避難場所や避難経路を確認します。

    市区町村のハザードマップがあれば、手に入れておきます。

    ハザードマップというのは、暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火などの自然災害の被害

    を予測し、被災する地域の範囲、被害の程度などを示した地図です。

    例えば、大量の雨が降り、地域にある川の水があふれた場合、予想される浸水の範囲などを知ることが

    できます。

    避難場所や避難経路が確認できます。

    わからないときは、役所・役場に問い合わせます。

    転居したときは、転入届を出した窓口でたずねます。

    避難場所や避難経路の確認

    2.自宅の安全性のチェック

    ふだんから自宅の室内と室外の安全性をチェックしておきます。

    大地震による大きな揺れ、台風などの強い風などを想定して備えます。

    2

    1 身のまわりの安全チェック

  • 身のまわりの安全チェック

    2 -

    1. 家の中

    1)安全な空間を確保する

    ■まず、居間、寝室、台所など日常多くの時間を過ごす場所を安全な空間にします。

    ■床にたくさんものが置いてあったり、床に積み上げてあるものが崩れやすかったりして、つ

    まづいて転ぶことがないようにします。

    ■妊婦さんは、特に転ばないように気をつけましょう。

    ■乳幼児のお母さんは、子どもの行動範囲を安全に保ち、子どもの手の届くところに危険なも

    のを置かないなど気をつけましょう。

    2)家具の配置を考える

    ■入口のドアを開け閉めする空間は十分に確保します。

    ■就寝中に家具が倒れてくると危険なため、寝室には高さのある家具を置かないようにします。

    または万一転倒しても、家具の下敷にならないような位置に置きます。

    ■特に、妊婦さんや乳幼児のからだの上に重い家具が倒れてくることがないようにしましょう。

    ■ベビーベッドは、ガラス窓から離し、上から物が落ちてこない場所に置き、動かないように固

    定します。

    3)家具などが倒れないように、重い家電製品などが移動しないようにする

    ■タンスなどの家具は、重いものほど下部に収納し、重心を下げて倒れにくくします。

    ■家具が後ろの壁にもたれかかるように、家具の下に板などをはさみます。

    ■効果的な転倒防止器具を家具に正しく取りつけて固定します。

    ■固定する場合には、壁の強度を確認し、薄い板の場合は、壁の中の柱や桟などの部分に固

    定します。

    ■家具と天井との隙間をつっぱり棒などで固定する場合、つり天井は強度が不足するため、

    補強工事が必要です。

    ■積み重ねるタイプの家具は、上下を必ず金具で止めます。

    ■ピアノや大型の冷蔵庫などは、取扱い店に問い合わせます。

    4)重い家電製品が移動したり、照明器具が落下したりしないようにする

    ■テレビやパソコンなど、重い家電製品はできるだけ低い位置に置き、飛び出さないように台

    に固定し、台は転倒防止器具で壁に固定します。

    ■吊り下げるタイプの照明器具は、落ちないように複数の鎖などで固定します。

    3

  • 5)ガラスが飛び散らないようにする

    ■ドアや戸棚の扉のガラスの部分や窓ガラスには、飛散防止フィルムを貼ります。

    ■窓ガラスにフィルムを貼れない場合は、カーテンを二重にしておきます。

    ■食器棚は、滑り止めのゴムシートなどを敷いた上に食器を並べ、扉が開かないように留め具

    をつけ、食器が外へ飛び出さないようにします。

    6)戸棚や引き出しの中身が飛び出ないようにする

    ■戸棚の扉や引き出しには、留め具をつけ、中身が飛び出ないようにします。

    ■冷蔵庫のドアにストッパーをつけ、ドアが開いて中のものが飛び出さないようにします。

    ■タンスの上に重いものやガラスケースに入った飾り物などを置かないようにします。

    ■台所の調理台や棚の上の調味料なども滑り落ちないよう浅い箱に入れるなど工夫します。

    ■本棚は本が飛び出さないよう奥の方に隙間なく詰めます。

    7)その他

    ■玄関には、建物の構造によっては、地震で玄関の扉が開かなくなったときのために、扉を開

    くためのバールなどを用意する必要があります。

    ■消火器は定期的に点検して、使用期限が過ぎる前に新しいものにします。

    1)家のまわり

    ■自宅から避難場所まで実際に歩いて、危険な場所がないかを点検し、安全な避難路を家族

    で確認します。

    ■妊婦さんや乳幼児がいる場合は、特に地面がしっかりした避難経路を確認しておきます。

    ■買い物に行く道、公園や保育園・幼稚園など子どもと行く道も、危険な場所がないかを点検

    しておきます。

    2 -

    2. 家の外

    ■家の出入り口から外の道路に出るまでの通路には、不用品や自転車など、避難の際にじゃ

    まになりそうなものを置かないようにします。

    ■ブロック塀や門柱に、傾きやひび割れ、破損箇所はないか調べます。

    ■集合住宅などでは、通路など共用部分に置いてある消火器や火災報知器など消火設備の

    場所を日ごろからよく確認しておきます。

    2)避難場所までの道・日ごろ歩く道

    4

    乳幼児の事故やけがの防止に

    もなります

    身のまわりの安全チェック

  • 2 -

    3. 自宅の耐震性のチェックについて

    昭和56年(1981年)以前に建てられた建物は、古い耐震基準で建てられているため耐震性が低

    い可能性があるので、耐震診断を受けましょう。

    昭和56年以降に建てられた建物でも、地盤が弱い可能性があったり、建物の基礎の部分や壁な

    どにひび割れがあったりする場合は、耐震診断を受けてみましょう。

    地方自治体によっては、耐震診断の費用の補助を受けられる場合があるので、役所・役場に問

    い合わせてみましょう。

    ● 狭い道

    地震で崩れて道路をふさぎそうな塀や建物、がけなど

    交通量の多い横断道路、踏み切りなど

    路上の障害物や落下危険物(看板、電柱の変圧器など)

    学校、公民館など公共施設

    病院・診療所

    コンビニ・食料品店

    公園や駅などのトイレ・水飲み場

    駐車場や空き地など、空きスペース

    < 外出時に災害に遭ったときに頼れそうなところ>

    < 危険なところ

    >

    5

    身のまわりの安全チェック

  • 1.非常用備蓄品について

    ライフラインが寸断されても、自力で1週間程度生活できる備蓄を

    1 -

    1. 備蓄のポイント

    地震などで、電気・ガス・水道などのライフラインが断たれたあとに自宅で生活する場合や、避難

    所へ行ってからの生活を支えるために、最低3日分、できれば1週間分の生活用品の備蓄が必

    要です。また、台風や大雪などで交通網が遮断され、食品などの物流が滞ることもあります。新

    型インフルエンザなどの流行では、1週間以上外出ができなくなる状況も想定されます(参考文

    献No.6)。

    そこで、食料品、トイレットペーパーなどの消耗品、離乳食やおむつなど子ども用品は、日頃から

    多めに買い置きする習慣にしましょう。

    乳幼児や妊産婦のいる家庭で非常時に必要なものや、あったら便利なものを紹介します。それぞれの

    家庭や個人で必要なものは異なると思いますので、以下を参考に「わが家のオリジナル災害用品セッ

    ト」を用意してください。心の準備や情報収集も大切です。いざという時に備えて、家族や親戚、近隣の人達と話しあっておきま

    しょう。助けてもらえる人や公的サービスを確かめておきます。

    災害用食品は普段の生活の延長で考える。

    ■常温で日持ちし、家族が食べなれた食品を多めに買い置きする(停電時、冷蔵品・冷凍品は

    保存できなくなります)。

    ■食品は使ったら買い足し、賞味期限がくる前に入れ替える。

    煮炊きがある程度できる場合と、できない場合を想定する。

    ■簡単に調理できるものと、調理せずにそのまま食べられるもの両方を用意。

    定期的にチェックする

    ■食品の賞味期限を確かめたり、電池、薬の使用期限にも注意。

    ■季節や子どもの成長にあわせ、着替えやおむつのサイズをチェック。

    家族それぞれの必需品

    ■各人に応じた(持病、食物アレルギーなどある場合)

    必要品は多めに買い置きする。

    保管場所

    ■リスク管理の観点から、備蓄品は家の中でも2階や車の中など、

    分散させて保管する。

    6

    日頃の備え―

    非常時の必需品と心の準備2

  • 日頃の備え―

    非常時の必需品と心の準備

    1 -

    2. 妊産婦・乳幼児のいる家庭の備蓄品

    1)食料品について

    水1週間分 調理も含めた飲料水の目安は1日1人当たり3Lを目安に。容量は2Lよりも、

    500mlのものが食品衛生上望ましい。

    常温で日持ちする

    調理不要の食品災害用の備蓄食品のアルファ化米、乾パンなどにこだわる必要はなく、普段食

    べ慣れているレトルト食品や缶詰の備蓄がお勧め。日常の食事に利用し、使っ

    た分を買い足すようにすれば賞味期限切れのリスクも避けられます。

    缶詰 肉、魚以外にも、豆(大豆など)、果物、牛乳、ジュース、パンなど各種あるので

    食べてみて、好みのものを。

    スチール缶はさびやすいので、できるだけアルミ缶入りのものを。

    野菜ジュースやロングライフ牛乳

    常温で長期保存可能。断水時の水分補給として、また、支援物資は炭水化物

    が中心になりがちなので、栄養補給の点でも貴重な食品となります。食品衛生

    上、一度に使いきれる小容量パックの用意を。

    嗜好品(甘味) エネルギーの補給と共に、心を癒します。缶詰の果物、ドライフルーツ(レーズ

    ン、ドライマンゴーなど)、チョコレート、ビスケット、羊羹、あめ、キャラメルなど

    好みで。

    栄養補助食品 支援物資の食事は、野菜や果物が不足しがちで、栄養バランスが偏ることも。

    マルチビタミン剤や食物繊維入りの栄養補助食品がお勧めです。

    日持ちする根菜類 普段使う、にんじん、たまねぎ、じゃがいも、ごぼうなどは多めに買い置きし、先

    に購入したものから使っていくと、備蓄野菜に。

    米、パスタ、カップ

    麺など水や熱源が必要ですが、多めの買い置きが安心。パック入りご飯、おもちの

    パックなども。

    育児用ミルク 常に1缶(箱)分は余分に買い置きを。キューブタイプのミルクは、スプーンで計

    量の必要がなく便利。プラスチック製哺乳瓶と乳首も備蓄を。普段母乳でも、母

    乳が出にくくなる場合があるので、ミルクと哺乳瓶の準備をしておくと安心です。

    ミルク調整用の水 硬水より軟水のものを。「加熱殺菌済みベビー用飲料水」が便利。

    離乳食・幼児食 市販のベビーフードや幼児食は、種類も豊富で常温で長期保存可能なものが

    多い。レトルト(容器タイプ)が便利。与える時のスプーンの用意も。食事量が多

    い幼児には、レトルトタイプの大人の介護用食品の利用も可能です。

    紙皿、紙コップ、箸、スプーンなど 紙コップやスプーンは、哺乳瓶のない場合に授乳にも役立ちま

    す。紙コップなどを使った授乳方法はP23参照。

    食品用ラップ、アルミホイル、厚手

    のビニール袋(ジップロック)など

    水が十分に使えない状況では、ラップやポリ袋を皿に敷く、お椀

    にかぶせる、手袋代わりに使うなどで衛生的に節水を。

    キッチンばさみ まな板が使えない時に。

    買い物用ポリ(レジ)袋、エコバッ

    支援物資の食料運搬や乳幼児の小物整理袋、ゴミ袋としての利

    用など広い用途に。

    携帯カセットコンロ、ガスボンベ ガス、電気が止まった時に。

    2)食生活に関係する生活用品の備蓄について

    7

    巻末に「わが家の備蓄品チェックリスト」がありますので、ご利用ください。

  • 3)その他の生活用品の備蓄について

    消耗品 紙オムツ、おしりふき、生理用品

    ティッシュ、トイレットペーパー

    ウェットティッシュ、手指消毒用アルコール 断水に備えて。

    非常用トイレパック 断水に備えて、水なしで使えるもの。

    不透明なビニール袋、新聞紙 汚物など外から見たくないゴミの処理。

    灯油、ガソリン、固形燃料 日頃使っている機器の燃料。

    備品 懐中電灯、携帯ラジオ、予備の乾電池、

    給水用タンク、バケツなど 生活用水確保のため。*

    工具類(スコップ、バール、のこぎり、車用

    のジャッキなど)戸が開かなくなるなどの事態に備えて。

    台車またはキャリーカー 水や支給品などを運ぶとき使用。ベビーカーも

    代用となる。

    マッチ、ライター、ろうそく

    防寒用品(カイロなど) 暖房が取れない時。

    救急用品

    三角巾、消毒ガーゼ、ばんそうこう、はさ

    み、ピンセット、傷口用消毒液、安全ピン、

    体温計

    三角巾は大判スカーフなどで代用可。

    常備薬、持病薬

    衣料品 肌着など着替え 断水に備えて多めに。

    *風呂の残り湯を断水時のトイレ用などの生活用水としてためておく場合には、必ず幼児の溺水事故防止のための措置をとる。

    常にバスタブの蓋を閉め、浴室のドアに鍵をかけるなど、絶対に幼児が1人で水に近づけないよう

    にします。

    1 -

    3. 食物アレルギー児のいる家庭の日頃の備え

    1)食物アレルギー児の日頃の備え

    アレルギー疾患用ミルク 避難所では入手困難なことが多いので、日頃から1缶以上の買い置きを。

    ベビーフード幼児用食品

    アレルギー原因物質が入っていないものを、5~7日分備蓄します。レトル

    トタイプで、カップ入りが便利。与える時のスプーンの用意も。普段食べ慣

    れていない食品は、子どもに食べさせてみて味慣らしを。

    学校生活管理指導票(アレルギー疾患用)のコピー

    就学児童は、学校生活管理指導票(アレルギー疾患用)のコピーを。

    主治医の連絡先 電話番号等のメモを複数箇所に。

    アレルギー児の親の会の

    連絡先会のネットワークにより、食物アレルギー用食品の入手が可能になること

    も。電話番号等のメモを複数個所に。

    8

    日頃の備え―

    非常時の必需品と心の準備

  • 2.緊急持ち出し品

    1)荷物は出来るだけ少なくする

    2 -

    1. 緊急持ち出し品準備のポイント

    自宅にいることが危険になり避難することになった時、家族の命を守るために最小限必要な品を、

    すぐに持ち出せるように準備しておきましょう。

    ■女性1人で運べる荷物の重さの目安は10kg、妊婦さんは5kgです。

    ■子どもを抱いて動けるかどうか、妊産婦さんが幼児の手を引いて歩けるかも確かめる。

    ■原則として、1人1個ずつのリュックサックに入れておく。

    ■歩いて避難できる幼児には、衣類や菓子など軽いものと連絡先カードを入れたリュックを用

    意する。

    ■リュックは玄関や車など、取り出しやすいところに置く。

    ■瓦礫などを踏んでも耐えられる底のしっかりした、歩きやすい靴も一緒に置いておく。

    2)貴重品は手早くまとめる

    現金などの貴重品や普段使っている健康保険証や母子健康手帳、携帯電話などは、避難す

    ることが決まった時に手早く持ち出せるようにまとめておく。貴重品袋を用意しておくとよい。

    3)定期的にチェックする

    ■食品の賞味期限を確かめる。電池、薬の使用期限にも注意。

    ■季節や子どもの成長にあわせ、着替えやオムツのサイズをチェック。

    9

    日頃の備え―

    非常時の必需品と心の準備

    2)アナフィラキシーショックへの備え(直ちに持ち出せるようにまとめておくもの)

    緊急時の経口薬や

    エピペン*緊急時の経口薬やエピペンは、避難が決まったらすぐに持ち出せるようにまと

    めておきます。定期的に使用期限の確認も。

    *アドレナリン自己注射薬(商品名「エピペンⓇ」)について

    アレルギー反応により、じんましんなどの皮膚症状、腹痛や嘔吐などの消化器症状、ゼーゼー、呼吸困難などの呼吸器症状が

    複数同時にかつ急激に出現した状態をアナフィラキシーといいます。アナフィラキシーを起こす危険が高く、万一の場合に直ち

    に医療機関での治療が受けられない状況下にいる者に対し、事前に医師がアドレナリン自己注射薬を処方することがあります。

    日本で発売されているこの薬の商品名を「エピペンⓇ」といいます。とっさの場合に患者自らが注射出来るように作られており、処

    方に際しては正しい使用に関する患者教育が行われることになっています。

    (文部科学省監修「学校のアレルギー疾患に関する取り組みガイドライン」〔平成20年3月〕を参考に記述。)

  • 2 -

    2. 大人用の緊急持ち出し品

    分 類 用 品 例リュックに

    入れておく避難時手早

    く用意する

    飲料水 携帯用飲料水(500mlボトル)1人2本程度 ◯

    食料品 食品1日分(レトルト食品、乾パン、肉・魚・野菜・果物の缶詰、など

    調理しないでそのまま食べられるものを好みで)◯

    嗜好品 チョコレート、ビスケット、羊羹、あめ、キャラメルなど ◯

    防災用品 連絡先カード* (住所、氏名、連絡先、血液型など)、家族の写真 ◯

    地図、筆記用具 ◯

    ヘルメットまたは防災ずきんなど、軍手(厚手の手袋)、マスク ◯

    懐中電灯、携帯ラジオ・予備の乾電池、笛 ◯

    使い捨てカイロ、防寒シートまたは毛布 ◯

    衣類 長袖、長ズボン、セーター、ジャンパー類、下着、雨具 ◯

    生活用品 箸、スプーン、缶切り、はさみ、ナイフ ◯

    紙皿、紙コップ、ラップ、ビニール袋 ◯

    ウェットティッシュ、トイレットペーパー、歯ブラシ、タオル ◯

    携帯電話(スマートフォン)と充電器 ◯

    貴重品 預金通帳、印鑑、現金(10円玉、100円玉) ◯

    母子健康手帳*、健康保険証、診察券、お薬手帳、乳幼児医療証 ◯

    救急用品 三角巾または大判スカーフなど、消毒ガーゼ、ばんそうこう、はさみ、ピンセット、傷口用消毒液、安全ピン、体温計

    常備薬、持病薬 ◯ ◯

    *連絡カードの見本は巻末にあります。*母子健康手帳は、母子の心身の状況の経過が把握できる重要な記録です。スマートフォンなどに書き込みのある頁の写真を

    撮影、保存しておくことも勧められます。

    2 -

    3. 乳幼児用の緊急持ち出し品

    用 品 例 参 考

    育児用ミルク キューブなど小分けの市販品もあり。

    哺乳瓶(密閉式ビニール袋、消毒液とともに)プラスチック製が軽量で割れる心配がない。使い捨て哺乳

    瓶の市販品もあり。

    調乳用の水 硬水より軟水を。加熱殺菌済みベビー用飲料水が便利。

    離乳食、幼児食、おやつ 少なくとも1日分。

    着替え(長袖、長ズボン、肌着)、防寒具 全身を保護するため、夏でも長袖、長ズボンを。

    紙オムツ、おしりふき オムツは1日8~10枚は必要。

    抱っこ紐、おんぶ紐、子ども靴、帽子 避難する時に使う。帽子は脱げにくい工夫を。

    薬 医師から処方されている薬などがあれば。

    便

    スプーン、ストロー、子ども用歯ブラシ 使い捨て用が便利。

    大判スカーフ、風呂敷、タオルなど 授乳時に人目を避けたり、保温用に。

    ドライブ用簡易トイレ

    おもちゃ・絵本 おもちゃは音のでないものが無難。

    10

    日頃の備え―

    非常時の必需品と心の準備

  • 2 -

    4. 妊娠28週以降の妊婦さんの持ち出し品緊急時一度にすべてを持ち出せなくても、避難所から荷物をとりに戻った時、まとめてあると便利

    です。

    出産準備品 いつお産が始まっても慌てないように、入院に必要なものの準備をして、直ぐに持ち出せ

    るように荷物をまとめておきます。

    避難後の出産も想定し、乳児用品も準備しておきます

    ⇒「2-3.乳幼児用緊急持ち出し品」参照

    2 -

    5. 食物アレルギー児用の緊急持ち出し品

    上記の「2-2.」「2-3.」の他に、以下の用意を。

    アレルギー疾患用ミルク

    被災直後は、アレルギー対応の食

    品やミルクは入手困難なことが多い

    ので、普段からの備えを。

    ベビーフード、幼児用食品

    主治医から処方されている経口薬、エピペン

    主治医と「アレルギー児の親の会」の連絡先の電話番号のメモ

    2 -

    6. 個人別に必要な持ち出し品

    家族ひとり一人の状況にあわせて、必要な品をリストアップして備えましょう。

    名 前 用 品

    (お子さん) (例)アレルギー対応食品、エピペン

    (お子さん) (例)塗り薬、吸入器(非常用タイプ)

    (父) (例)持病薬

    (母

    妊娠中) (例)生理用品、出産準備品

    (祖父母など) (例)介護用品

    11

    日頃の備え―

    非常時の必需品と心の準備

  • 3.家族で防災会議

    話し合うことや確かめておくこと

    1)家族で話し合い

    災害の発生時、家族が一緒にいるとは限りません。いろいろな事態を想定して話し合っておきま

    しょう。家族が離ればなれになった時の連絡方法や対処の仕方を相談しておきます。近隣との協

    力体制は日頃からのお付き合いが大切です。防災訓練など積極的に参加し、顔見知りを増やして

    おくと安心です。

    家族の集合場所(地域防災拠点、広域避難所などの確認)

    避難時の役割分担(ガスの元栓を閉める、電気のブレーカーを切る、貴重品の持ち出し、要

    支援者の避難誘導担当、戸締まりなど)

    勤務先から徒歩で帰宅する場合の経路の確認

    連絡方法(家族と、保育園や幼稚園と、近隣の人と)

    災害用伝言ダイヤルや伝言板の使い方

    2)地域や公的機関などで確かめて

    地域の防災訓練(積極的に参加する)

    公的機関などが主催する防災教室

    心臓マッサージ(胸骨圧迫)とAED(エー・イー・ディー、自動体外式除細動器)を使った救命法

    を学ぶ

    妊娠中に被災したら(助産所など特定の避難場所がある自治体もあります)

    避難行動要支援者名簿へ登録(平成25年の災害対策基本法改正によって、避難行動要支援

    者名簿の作成が市町村に義務づけられました。高齢者や障害者など避難に支援が必要な場

    合に登録しておくと、市町村が避難の支援、安否確認などを行なうための基礎となります。市

    町村によって対象となる範囲は異なりますが、乳幼児や妊産婦が含まれることも多いので確

    かめておくとよいでしょう)

    < 災害時の連絡方法

    >

    固定電話NTT災害用伝言ダイヤル(171)の基本的操作方法(音声ガイダンスに従って伝言の録音、再生を

    行って下さい)

    1.「171」をダイヤルする。2.録音または再生を選ぶ。3.被災地の方の電話番号を入力する。4.伝言ダイヤルに接続される。5.メッセージの録音、または再生をします。6.終了

    携帯電話各社が災害用伝言板を開設します。

    災害地と指定されたエリア内にある携帯電話で、

    電話番号を使って伝言板登録と確認ができます。

    12

    日頃の備え―

    非常時の必需品と心の準備

    【伝言の登録】メニュー

    → 災害用伝言板

    登録 →

    コメン

    ト入力

    → 登録ボタン

    【伝言の確認】メニュー

    → 災害用伝言板

    確認 →

    相手

    の電話番号

    検索ボタン

    ※災害用伝言ダイヤル・伝言板の詳細は、電話会社のHPなどでご確認ください。

  • 1.地震発生時の行動のポイント

    高層住宅

    一般の住宅では、出入り口を確保し、揺れが収まるのを待ちます。コンロの近くからは離れま

    しょう。

    自宅

    1 -

    1. 屋内

    高層階での地震は、揺れ始めは遅く、揺れ出すと長く揺れます。また、揺れ幅も大きくなる傾向

    があります。

    1 -

    2.

    屋外

    まず自分自身の身の安全を守ることが大切です。頭部の保護(ヘルメットや帽子など)と履き物

    (底の丈夫なもの)に留意しましょう。

    職場

    キャビネットや棚、ロッカー、コピー機などから離れます。エレベーターは使用できません。

    外出先

    スーパー・デパートでは、可能なら比較的商品の少ない場所に移動します。

    映画館・劇場では係員の指示に従います。

    地下街の場合、非常照明がつくまではむやみに動かないようにし、脱出は壁づたいに移動します。

    エレベーターに乗っていた場合、全ての階のボタンを押し、最初に停止した階でおりるのが原則

    です。

    塀や電柱、自動販売機、住宅等から離れます。

    住宅地

    窓ガラスや外壁、看板などの落下に注意します。

    オフィス街

    繁華街

    安全な高台や避難地を目指します。いったん波が引いても絶対に戻ってはいけません。

    海岸

    流れに対して直角方向に素早く避難します。

    河川付近

    川べり

    落石に注意し、急傾斜地など危険な場所から遠ざかるように避難します。

    山 ・ 丘陵地

    13

    災害にあったら3

  • 身の安全を確保します。

    避難の判断

    正しい情報(ラジオ・テレビ・防災無線など)に基づいて判断します。

    避難の行動

    ■行動しやすい服装や履き物に留意します。帽子をかぶる、かぶせることも大切です。

    ■家を出る時はライフラインをチェックします(ガスの元栓、電気器具のプラグを外す、ブレー

    カーを切る)。

    ■火災に遭遇した場合は、逃げましょう。風向きや煙に注意し、マスクやハンカチなどで煙を

    吸わないように、姿勢を低くして行動します。

    ■妊婦は、足元が危ないことがあるので、誰かに先導してもらい一緒に行動します。

    ■乳児(首がすわっていない児)では、乳児を抱いて避難します。抱っこ用のたすきなどを利

    用して両手を使える状態にします。

    ■乳児(首がすわっている児)では、おぶいひもなどを利用して、おぶって避難します。

    ■歩くことができる幼児は、迷子に備えて、名札をつけておきます。

    帰宅の判断

    外出先で被災した場合は、正しい情報に基づいて帰宅方法を判断します。

    無理に帰宅することは避け、公共施設や帰宅困難者の避難先など現在地の自治体の指示

    や情報に従います。

    1 -

    3.

    乗り物

    急ブレーキは禁物です。

    運転中

    鉄道・新幹線では緊急停車に備え、姿勢を低くしたり、手すりやつり革につかまります。

    地下鉄の場合、勝手に線路に飛び降りないこと。

    バスでは急ブレーキに備えます。

    乗車中

    外出先での被災に備えて…

    1 -

    4.

    揺れが収まったら(発生後~半日)

    1 -

    5.

    持ち歩き品

    などを選んで、携帯すると有効です。

    また、マタニティマークも携帯しておくとよいでしょう。

    1.飲料水

    2.アメなどの行動食

    3.保険証(またはコピー)

    4.母子健康手帳

    9.ビニール袋

    10.ウェットティッシュ

    11.笛

    12.携帯トイレ

    5.貴重品の控え

    6.家族との災害時の取り決めメモ

    7.ラジオ

    8.懐中電灯

    14

    災害にあったら

  • 2.災害から復旧まで(ライフライン復旧まで)

    家族との連絡方法やかかりつけ医、病院、保育園、幼稚園等との連絡方法を確認しておきます。

    自分の居場所や安否情報は、P.13を参考に災害伝言ダイヤル(171)を利用しましょう。また、油

    性ペンを使用した張り紙も便利なことを覚えておきましょう。

    2 -

    1. 連絡方法など

    母子健康手帳は、母と子の貴重な記録であるとともに、被災した時にはカルテとして大きな役割

    を持ちます。避難先での受診にも有用なので、日頃から検査結果や飲んでいる薬、アレルギー

    など母と子の情報を記載しておきます。

    2 -

    2. 災害時の工夫

    2 -

    3. 母子健康手帳の活用

    電 気

    手動発電やソーラー発電式のラジオ、ライト、

    充電器が便利です。自動車用充電ケーブ

    ルも役立ちます。

    水井戸水は洗濯などの雑用水として使用で

    きます。水洗トイレが使用できない時、紙

    おむつを小さくちぎってビニール袋に入れ、

    簡易トイレとして使えます。

    ガ ス

    カセットコンロで代用可能です。プロパンガ

    スは使用可能な場合があります。電気がき

    ていれば、電気ポットでお湯を沸かせます。

    携帯電話

    回線の混雑で使用できないことがあります

    ので、各携帯会社の「災害用伝言板」を活

    用しましょう。

    3.あなた(またはあなたのパートナー)が妊婦だったら

    ■周囲の人に妊婦であることをアピールしましょう。

    ■お産の兆候や身体の変化があったら、すぐ人を呼び救助を求めましょう。

    ■「おなかが張る」「出血」「破水」などがあれば、受診しましょう。自分で受診ができない場合、

    避難所の責任者、医療関係者に受診の手配を依頼しましょう。

    15

    災害にあったら

  • 1.災害を体験することでみられる心とからだの変化

    心の変化

    発熱、哺乳力の低下による脱水症状、風邪、風邪の悪化による肺炎、喘息の悪化、おむつか

    ぶれ、湿疹、食欲の増加、食欲の低下、嘔吐、下痢、便秘、おねしょ、昼間のおもらし、頻尿、

    よく眠れない

    からだの変化

    1 -

    1. 乳幼児に表れる可能性のある変化

    指しゃぶり、べったり甘える、赤ちゃん言葉を使う、聞き分けがなくなる、小さな物音で目覚めた

    り夜泣きする、親が見えないとパニックになったり大声で泣く、トイレに1人で行けない、落ち着

    きがなくなる、物へのこだわりや気になる癖が出る、チック(意思とは関係なく、まばたきや肩を

    ピクピク動かす)のような症状が出る、災害ごっこ(積み木を崩す、救出の真似事など災害をイ

    メージしながらの遊び)を繰り返す

    1 -

    2.

    妊産婦に表れる可能性のある変化

    ■妊婦

    蛋白尿が出る、体重が増加する、血圧が上昇する、浮腫(むくみ)が強まる、おなか

    が張る、胎動が一時的になくなる、または多くなる、腹痛がある(切迫早産、切迫流産など)、

    性器からの出血がある

    ■産婦

    母乳が出なくなったり出にくくなったりする、乳腺炎になる、産後のおりものが増えた

    り排出期間が長くなったりする

    ■妊婦・産婦共通

    耳鳴りやふるえが止まらなくなる、食欲が増えたり減ったりする、発熱や風

    邪にかかりやすくなる

    からだの変化

    胎児が大丈夫なのか、無事に生まれてくるか不安になる(妊婦)。見捨てられた感じがする、見

    捨てられる不安を抱く、音や揺れに敏感になる、いらいらしたり疲れやすくなったりする、無気

    力になる、憂うつになる、熟睡できずすぐに目が覚めてしまうこれらは、妊婦に特有の変化を除き、被災時に大人全般にみられるものと言えるでしょう。

    心の変化

    災害を体験すると大人も子どもも心が深く傷ついたり、からだにもその影響があらわれたりします。

    自分の気持ちや考えを言葉にすることができない子どもは、特にからだや行動にその影響が表れ

    やすいといえます。叱ったり無理をさせたりせず、やさしくありのままを受け止めましょう。また、大人

    も自分自身をいたわることが大切です。子どものためにもまずは大人が元気を取り戻すことが大切

    といえます。

    災害を体験することでからだや心にどのような変化が表れる可能性があるのでしょうか。

    乳幼児と、大人のなかでも特に心身への影響が懸念される妊産婦についてみてみましょう。

    16

    5.被災後や避難生活で気をつけること4

  • 2.親と子のからだのケア

    このような心やからだの変化に対してどのように対応すればよいのでしょうか。

    ここでは、まずからだのケアについて考えてみましょう。

    2 -

    1. 安全の確保につとめましょう

    避難先では、子どもが頭をぶつけたり、転落したりしないように居場所や寝場所を確保すること

    が大切です。小さな赤ちゃんには、安心して寝かせておけるベビーベッドが確保できるとよいで

    しょう。それが用意できない場合は、段ボール箱に毛布を入れ、目立つようにするなどの工夫

    があるとよいでしょう。

    1)危険な物から身を守る工夫

    学校の体育館での避難の場合は、プール、理科実験室等の危険場所に立ち入ることができな

    いようにするなど、けがや事故につながる危険な場所の点検が必要です。冬は、ストーブ、焚き

    火などによる火災にも注意が必要です。

    2)けがや事故につながる危険な場所を点検

    災害による心の不安やストレスが、時として、暴力や犯罪というかたちで女性や子どもに向けら

    れてしまうことがあります。宅配便を装っての強盗や性犯罪、避難先での盗難や性被害など、

    残念なことですが非常時に犯罪が増えるという報告があります。

    子どもが、「まだ小さいから」「男の子だから」ということは通用せず、未就園児や男の子も性被

    害にあっています。小さい子どもは、性犯罪の意味は理解できないでしょうが、普段から「下着

    を着て隠れる場所は、見せてもダメ、触らせてもダメ」と教えることも大切といえるでしょう。

    大人も人気のない道や見通しの悪い道、暗がりなどを1人で歩かないようにし、外出の際は、行

    き先を家族や知人に知らせておくなどを心がけましょう。

    なお、犯罪が起こりやすい場所として、人が「入りやすいところ」と「見えにくいところ」(小宮,2005)

    が指摘されています。たとえば、見通しの悪い公園、建物の陰になる駐車場、マンションの階段

    や屋上、エレベーターの中、公衆トイレなどです。このような場所は特に注意が必要ですが、買

    い物や戸外での遊びの際に、子どもを決して1人にしない、子どもから目を離さないことが防犯

    の鍵となるでしょう。

    また、常日頃から子どもが犯罪被害にあわないように、「たとえ顔見知りであっても人について

    行ってはいけません。必ず親に聞くように」などのわが家の約束事を教えることが大切といえる

    でしょう。もしもに備えて、「逃げる」「大声を出す」練習も大事です。

    3)防犯への備え

    17

    被災後や避難生活で気をつけること

  • 2 -

    2. 衛生面に気をつけましょう

    1)感染症予防の対策

    手洗い、うがいをしっかりしましょう。マスクも使用します。

    乳児の哺乳瓶や子どもがなめたり口に入れたりするおもちゃなどは、消毒をするなど特に衛生

    に気を付けます。

    避難所では、周りの人と協力して掃除をし、身のまわりの清潔を保ちましょう。また、食中毒の

    予防にも気を付けます(P.25参照)。

    ライフラインの復旧に応じてできるだけ清潔をこころがけましょう。

    お湯が沸かせないうちは、清浄綿(滅菌した脱脂綿)やおしりふきなどを利用します。お湯が沸

    かせるようになったら、乳児は別個にお湯を取り分けて沐浴をします。湯で固く絞ったタオルで

    からだを拭いたり、ぬるま湯でおしりなどのからだの部分を洗ったりして清潔を保ちましょう。ま

    た、口腔ケアも大切です(P.25~26参照)。

    アトピー性皮膚炎の発症や悪化の防止のためには、皮膚の清潔に加えて、肌の保湿・保護も

    必要であるため、室内温度や湿度にも配慮します。

    夏は、虫よけ対策も必要になるでしょう。

    2)清潔の確保

    2 -

    3. 規則正しい生活習慣を心がけましょう

    1)バランスのとれた栄養

    できるだけ規則的に食事をし、水分も十分にとりましょう(P.24参照)。

    2)運動を心がける

    特に妊婦は、血栓症、深部静脈血栓症・肺塞栓症(エコノミークラス症候群)*等に注意が必

    要です。妊婦は、足を動かす、ふくらはぎをもむ、水分をとる、眠るときは足をあげるなどして予

    防をすることが大切です。

    子どもも運動不足にならないように気をつけましょう。

    *深部静脈血栓症・肺塞栓症(エコノミークラス症候群)とは、水分をとらずに、無理な姿勢で長時間いることにより、血行不良

    が起こり、血栓(血液の固まり)ができ、肺に詰まって肺塞栓などを引き起こす疾患です。

    3)十分な休養

    親子とも十分な睡眠がとれるようにしましょう。そのために避難所では、プライバシーが守れる

    空間、横になることができる場所を確保しましょう。子どもをトイレに連れて行きやすい通路側

    に場所を確保するなど、家族の状況によってできるだけ安心して休める場所を確保しましょう。

    移動の際は、両手が使えるように子どもをおぶったり、ベビーカーを利用したりしてできるだけ

    疲労を防ぎましょう。

    周囲の大人は、妊産婦や子どもたちが安心して休むことができるような配慮を積極的にしてあ

    げたいものです。

    18

    被災後や避難生活で気をつけること

  • 子どもの世話をするためには、親自身が少しでも気持ちが安らぎ元気になることが大切です。子

    どもは親の笑顔に一番安心を感じることができるのです。自分が少しでもリラックスでき、楽しい

    気分になれるようなものを見つけて、実行してみましょう。

    話 す 書 く 泣 く

    家族と話す、友人と電話で話す、電話相談や面接相談を利用する。

    3.親と子の心のケア

    心とからだは密接につながっているので、からだのケアをすることで心のケアにもなることもあるで

    しょう。またその逆の関係も成り立つといえます。ここでは、親と子の心のケアについて、その具体

    的な方法をとりあげてみました。

    3 -

    1. 親自身の心の安定を図る

    辛かったこと、悲しかったこと、言えなかったことを紙に書きだし、ビリビリに破ってみる。日記を書く。詩を書く。

    泣ける歌や映画を利用して思いっきり泣く。

    < たとえば、次のような方法はいかがでしょう

    >

    笑 う 読 む 眠 る

    喜劇や楽しい漫画等を利用して思いっきり笑う。

    子どもの頃に好きだった

    絵本を読み返す。好きな本を読む。

    からだや心に休息を与える。眠れないときは横になるだけでも。

    からだを動かす からだを温める 五感を利用して自分を癒す

    ヨガ、呼吸法(特に吐くときに深くてゆっくりとした呼吸など)、散歩、体操、ダンス等でからだを動かす。

    ●視覚

    好きな写真や絵を眺める。好きな景色を眺める。

    ●嗅覚

    安心する香り、心地よい香りを嗅ぐ。

    ●触覚

    気持ちが落ち着く肌触りの物を触る・握る。誰かに肩をもんでもらう。

    ●聴覚

    心地よい音、音楽を聴く。好きな楽器を奏でる。

    ●味覚

    お気に入りの飲み物や好きなごはんをゆっくり時間をかけて味わう。

    お風呂につかる。シャワーを浴びる。足湯をする。

    (門間尚子「3.11を経験したあなたへ~無理をしない癒しのススメ~」子育てファミリーのための地震防災ハンドブック

    2011年(p19)を改変)

    19

    被災後や避難生活で気をつけること

  • 子どもにとって、安心感を得られやすい遊びには、親とスキンシップをしながらの遊びがあげられま

    す。年齢に合わせて取り入れてみましょう。

    3 -

    2. 子どもとのスキンシップや親子遊びをしましょう

    < スキンシップをしながらの遊び >

    (日本プレイセラピー協会

    「遊びを通した子どもの心の安心サポート~

    つらい体験後の未就学児(乳幼児)のためのマニュアル~」2012年

    p28より)

    抱っこ

    今まで以上に抱っこをしたり、背中をなでた

    りして「大丈夫だよ」と言葉をかけてあげま

    しょう。

    マッサージ、くすぐり遊び子どものからだをやさしくなでたり、マッサー

    ジしたりしてあげます。くすぐり遊びも喜ぶでしょう。ただし、中には

    くすぐりが嫌いな子もいます。

    からだ遊びおんぶで歩く。たかいたかい。お馬さんごっ

    こ(お馬になった大人の背中にのせて移動

    する)。ひざのせ遊び(床の上で、大人のひ

    ざの上に子どもを乗せて上下に揺すり、最

    後に足を広げてすとんと子どものおしりを床

    に落とす)。

    からだをつかったゲーム大人が子どもの手のひらや背中に何かを

    書いてそれが何かを当ててもらうゲーム。子どもが大人の顔の部分を触ったら間違わ

    ずに特定の音を出すゲーム(たとえば鼻は

    「ぴっぴー」、あごは「ブー」、おでこは「りん

    りん」などルールを決めて)。指相撲や腕相撲。

    安心感を与える替え歌の例 :

    ♪きらきらぼしの歌♪

    きらきらひかる

    おそらのほしよ

    みんなのことを

    まもってくれる

    あんしんできる おまもりぼしよ

    お母さんやお父さんのやさしい歌とともに振りをつけたり踊ったり、

    次のような替え歌をつくって一緒に歌うのも楽しいでしょう。

    子どもにとっては、どんな遊びであっても親や大人が自分にかかわってくれる、向き合ってくれる、

    そのような時間がとてもうれしく安心できる時間なのです。ままごと遊び、絵本や紙芝居、ボード・

    ゲーム(すごろくなど)など、特別な遊びでなくていいのです。子どもと言葉を交わしながら、子ども

    が好きな遊びにつき合ってあげましょう。

    20

    被災後や避難生活で気をつけること

  • 3 -

    3.

    子どもと遊ぶときに、大切にしたいこと子どもが安心感をもち、元気を取り戻すなど、心のケアを促進するために大切にしたいことを4つ

    あげておきます。

    子どもの遊びには子ども自身のペース、速さがあります。大人のペースで遊ばせようとせず、

    子どものペースを大切にしましょう。

    2)子どものペースを大切にする

    3)子どもに自分でできることは自分でやる機会をつくってあげる

    たとえば、子どもがおもちゃをうまくあつかえないときに、すぐに手伝わずに子どもを見守り、子

    どもが自分でできたという体験をさせてあげることも大切です。子どもは、そのような体験を重

    ねることで自信をつけていきます。

    4)遊びの中で子どもの気持ちや行動を言葉にしてあげる

    子どもは、つらい体験遊びをしているときに、1人ではつらくて圧倒されることもあります。その

    ようなときはその場で見守ってくれる人がいて、1人ぼっちで取り組ませないことが重要です。

    その場で一緒に見守り、子どもの気持ちや行動を言葉にしてあげましょう。

    子どもをもつ親同士が集まってグループで行う遊びもまた子どもにとっても親にとっても楽しく、

    リフレッシュできる場になります。そのような活動は、ピア・サポート活動やピア・ミーティングな

    どとよばれ、有効な心のケアの一つと言われています。

    地域によっては、子育てにかかわる専門職(保育士、幼稚園教諭、心理士、保健師など)がそ

    のような遊び場を提供してくれるところがあります。親同士おしゃべりをすることで、不安に

    思っていたことが解消されることもあります。子どもにとっては、普段体験できない遊びを体験

    することができるでしょう。

    自分の周りにそのような場がないか、ぜひ探してみてください。

    1)子どもが好きに自由に遊べるようにする

    子どもには、それぞれ自分の好きな遊びがあります。大人が押し付けることがないように気を

    つけましょう。また、つらい体験を遊びで表現する子どももいるでしょう。大人が期待するような

    遊びでないかもしれませんが、大人が安心して見守ることができる範囲でそのような遊びをす

    る自由を保障してあげましょう。

    また、子どもは1人で遊びたい、ただそばで見ていてほしいときもあります。そのようなときは、

    そばで寄り添って子どもの様子(顔や表情、言葉、行動など)をよく見ていてあげることが大切

    です。

    3 -

    4. 子どもをもつ親同士集まって遊びましょう(ピア・サポート活動)

    21

    被災後や避難生活で気をつけること

  • 1. 乳汁栄養

    母乳育児の継続のために

    1 -

    1. 母乳育児の勧め

    ミルクや母乳はスプーンやコップで飲ませることができます。この方法は生後すぐの乳児でも安

    全に行えます。消毒ができない状況では、使い捨ての紙コップが便利です。衛生上、ミルクの飲

    み残しは捨てます。

    今までの授乳方法を変

    えないで被災後も母乳を飲ませ続けます。一時的に母乳の量が減少しても、飲ませ

    続けることで次第に増えていくことが多いです。

    食事量の確保を 母乳分泌にはエネルギーや栄養素が使われます。ショックや混乱で食欲が

    減退することがありますが、食事の支援が受けられる場合には、しっかり摂

    取しましょう。

    水分の摂取を十分に 母乳の約88%は水分です。カフェインの入らない麦茶・ほうじ茶などの積極

    的な摂取を。甘味飲料の飲み過ぎには注意。麺類の汁物は塩分摂取過剰

    になるので控えます。

    1)育児用ミルク、調乳用の水、哺乳瓶や乳首の確保

    1 –

    2. 人工栄養の留意点

    衛生管理を十分に 哺乳瓶や乳首はできればディスポーザブル(使い捨て)のものを。

    調乳用の水 「加熱殺菌済みベビー用飲料水」は煮沸不要。ミネラルウオーターを使用し

    てミルクを調整するには煮沸し、70℃以上に冷ましてから使用を。軟水が望

    ましく、一部の硬水では、粉乳が十分に溶解しないことがあります。また、硬

    水は腎臓に負担がかかり消化不良を起こしやすくなるため、注意が必要で

    す。この場合には水道水を用いる方が安全です。

    2)コップで授乳する方法(哺乳瓶や乳首の洗浄・消毒ができない場合)

    < コップで授乳する方法

    >

    乳児が完全に目覚めている状態で、養育者のひざに乗せ、やや立て抱きになるような

    姿勢をとります。

    コップを乳児の唇に触れるようにします。コップ内のミルクが乳児の唇にかるく触れるく

    らいにコップを傾けます。コップと乳児の唇の位置は、コップを下唇に軽く触れるように

    し、コップの縁が上唇の外側に触れるような関係となります。

    乳児の口の中にミルクを注ぐのではなく、コップを乳児の唇につけたまま保持し、自分

    自身で飲むようにします。

    乳児は満ち足りると口を閉じ、それ以上飲もうとしなくなります。摂取量は1回ごとでは

    なく、24時間以上の期間でみるようにします。

    22

    栄養・食生活分野における被災後の対応5

  • 2.避難所での食事の摂り方

    2 -

    1. 妊産婦

    2 –

    2. 乳幼児

    ■被災前に、医師の指示や栄養指導があれば、可能な限りその指示を守ります。

    ■積極的に水分の摂取をします。水分摂取が不足すると、脱水症、深部静脈血栓症・肺塞栓

    症(エコノミークラス症候群)、低体温症(冬季)・熱中症(夏季)、慢性疾患の悪化などのリスク

    が高まります。

    ■食生活のことで相談がある場合には、管理栄養士・栄養士に相談しましょう。

    食事はしっかり摂る 妊娠中期・末期、授乳期は非妊娠時よりも必要とするエネルギーや栄養素

    が多いので、食事はしっかり摂ります。

    濃い味付けに注意を 弁当などには味付けの濃いものがあるので、佃煮や漬物は残す、添付の

    しょうゆやソース、ドレッシングは、最初はかけずに食べてみて、必要なら

    少量をかけるなどの工夫をして、塩分の摂取量を減らします。【カップ麺を食べる時には:定量の熱湯を加えて麺を軟らかくしたら、さら

    に熱湯を加えて味を薄める、牛乳、野菜ジュースがあれば加えて味を和らげる、汁は全部飲まないなどで塩分摂取過剰を予防します】

    「ばっかり食」にしない 1日の食事がおにぎりだけ、パンだけ、麺類だけなどが続く「ばっかり食」に

    ならないように、いろいろな食品を選びます。

    栄養補助食品やサプリメ

    ントなどの利用も不足しがちなビタミン・ミネラルは、栄養補助食品やサプリメントなどを利用

    します。なお、摂取方法・量を守り、過剰摂取にならないようにします。

    お菓子を食事代わりにし

    ない糖分、脂肪分の摂り過ぎで肥満になることも。時間を決めて、各自の適量

    を考えて食べます。

    離乳開始直後の乳児には 母乳やミルクで対応します。

    離乳完了の頃の幼児には 大人の食事から薄味、やわらかいものなどの取り分けで対応します。

    幼児には3回の食事と間食を

    幼児は体重1㎏あたりに必要なエネルギーや栄養素が多いにもかかわら

    ず、胃の容量が小さく、消化吸収機能が未熟なために食事以外にも間食

    が必要です。

    間食(おやつ)はお菓子に

    限らない食事の補いとしておにぎり、サンドイッチ、ふかし芋や果物などがあれば

    与えます。

    間食(おやつ)の食べすぎ

    に注意支援物資には、甘いお菓子・飲料やスナック菓子が多いです。時間を空

    けずにお菓子を食べる生活が続くと、むし歯や肥満になるリスクが高まり

    ます。

    ストレスによる過食・食欲

    不振には子どもをひざに乗せたり、抱っこして目と目を合わせて話を聞いたり、一

    緒に遊ぶ時間を増やすことなどで心が安定し、食欲も平常時にもどりや

    すくなります。

    23

    栄養・食生活分野における被災後の対応

  • 3.衛生管理

    食中毒の予防

    食中毒予防には 「つけない」、「増やさない」、「やっつける」が三原則です。

    「つけない」ためには 手洗いを十分に。水不足の場合には、除菌スプレーやウエットティッシュ

    などを利用して清潔を保って。

    食べ物は素手で触らない 包装紙ごと持って食べます。おにぎりを作る場合には、ラップやビニール

    袋の活用を。

    水が十分に使えない状況

    ではラップやポリ袋を皿に敷く、お椀にかぶせる、手袋代わりに使うなどで衛

    生的に節水を。

    「増やさない」ためには 支援物資が支給されたら、なるべく早く食べて、食事の取り置きは避け

    ます。消費期限*の確認も。

    「やっつける」ためには 自炊で携帯コンロの使用時には、食品の中心部まで十分な加熱を。

    *消費期限は、お弁当や洋生菓子など長期保存できない食品に表示してあります。一度開封したものは、表示されている期限に

    かかわらず早めに食べるようにします。似た言葉に賞味期限がありますが、こちらは

    ハム・ソーセージやスナック菓子、缶詰など

    冷蔵や常温で保存がきく食品に使います。

    4.災害時の口腔ケア

    被災後は、不規則な食生活、睡眠不足、口腔衛生状態の低下などが重なり、肺炎、インフルエン

    ザ、風邪などの呼吸器感染症を起こしやすくなることが知られています。この予防には、手洗い、

    マスクと共に、歯磨きやうがいなどの口腔ケアを必ず実施することが重要です。

    4 –

    1. うがいする水が不足している場合

    チューブ入り歯磨き剤(研磨剤

    を含むもの)は使わない吸湿作用が強く、口中に残ると乾燥を助長するので、うがいしにくい

    状況では使いません。

    歯ブラシを少量の水で濡らして

    磨く液体歯磨き(デンタルリンス)や洗口液が入手可能なら、水だけより

    も歯垢の除去に効果的です。

    うがいは少量ずつ回数を多く 一度に多くの水を口に含んで吐き出すよりも、少量ずつ口に含んで

    は吐き出す方が口中の汚れは除去しやすい。

    24

    栄養・食生活分野における被災後の対応

  • 4 –

    2. 歯ブラシを入手できない場合

    タオルやティッシュペーパーなど

    を利用洗口(クチュクチュ、ブクブク)だけでは歯垢の除去はできません。

    歯の表面をタオルやティッシュペーパーなどでこすって、歯垢を除

    去します。

    液体ハミガキや洗口液の併用を 液体ハミガキ(デンタルリンス)や洗口液の併用は、歯垢の除去に

    効果的です。

    4 –

    3. 口が渇いて困る場合

    口の渇きの原因 水分不足、ストレスなどで唾液が減ることが原因で起こりやすいです。

    ガムを噛むことがお勧め ガムを噛むことは、ストレス緩和も兼ねるのでお勧めです。

    マスクで蒸発予防を 水分を口に含んで潤す、マスクをして蒸発を予防することも口の渇き

    に効果があります。

    保湿ジェルの活用も 口腔用チューブ入り保湿ジェルは、乾燥予防に効果的です。小豆大

    程度を、舌や頬の粘膜に薄く塗り広げます。

    4 –

    4. お菓子や甘味飲料摂取の工夫

    お菓子や甘味飲料の頻回摂

    取は避ける砂糖、ブドウ糖、果糖を含むお菓子や甘味飲料は、頻回(だらだらと)

    摂取するとむし歯になるリスクが高まります。時間と量を決めて、食

    べたらしっかり歯みがきをします。

    飲食の順序を考えて 歯に付きやすく、砂糖が多いキャラメルなどを食べた後に、りんごな

    どを食べることで、歯に付いた粘着性のあるものを落とすことができ、

    むし歯予防になります。

    スポーツドリンク、イオン飲料

    には注意を糖が含まれ、酸性の製品が多いので、飲んだ後は水やお茶を口に含

    んで口中を洗い流し、むし歯を予防します。

    甘味料の種類に注目して ステビア、キシリトール、パラチノースなどの甘味料は、むし歯の原因

    となる酸を発生しないので、むし歯にはなりません。

    25

    栄養・食生活分野における被災後の対応

  • 5 –

    1. かぜ

    5.体調を崩した時の食事のポイント

    被災時は、疲労、睡眠不足、ストレス、暑さ・寒さや食事内容の偏りなどで体調不良になることが

    あります。症状がひどい場合には医師の診断・治療を受けることが重要ですが、すぐにそれができ

    ない場合には、以下の対応をとりながら医師の診断・治療を待ちます。

    脱水に注意 高熱で食欲がない場合には、脱水を起こさないために、こまめな水分

    補給に努めます。【例:水、お茶、野菜・果汁ジュース、イオン飲料、ゼリーなど】

    ビタミン・ミネラルの補給を 鼻やのどの粘膜を強くするためにはビタミンAが、ストレスに対する抵

    抗力にはビタミンCが必要です。【例:野菜・果汁ジュース、栄養素を調整した栄養機能食品など

    (クッキー、バー、ゼリー、ドリンクなど様々なタイプあり)】

    消化がよく、やわらかい食事を

    温かい食事を 体の内側から温めるように、温かい食事をとります。【例:スープ(缶詰)、麺類など】

    食欲がない場合には、やわらかく、あっさりした食事を。【例:おかゆ(レトルト)、魚の水煮(缶詰)、高野豆腐、麺類など】

    5 –

    2. 下痢

    乳児の母乳・ミルクは 比較的軽症の下痢では、母乳は中止しないで続けます。人工栄養

    の場合、ミルクは薄める必要はありません。

    離乳食は、重症なら一時中止を 下痢がひどい時には、一時的に離乳食を中止して、母乳やミルクの

    みとします。

    ウイルスによる下痢の場合は 嘔吐と下痢が突然始まることが多く、大変うつりやすい病気です。吐

    物、おむつを扱った後はせっけんを用い、流水で手洗いを十分に行

    います。

    水分、ビタミン・ミネラルの補給を

    下痢により失われる水分、ビタミン・ミネラルを補給します。冷たい飲

    み物は、腸管を刺激するので、少量ずつゆっくりと飲みます。【例:水、お茶、野菜・果物ジュース、汁物(レトルト)、イオン

    飲料、ゼリーなど】

    消化がよく、やわらかい食事を、

    よくかんで消化機能がおとろえていることも多いので、やわらかく、あっさりした

    食事をゆっくりかんで食べます。一度に多く食べないように。

    【例:おかゆ(レトルト)、魚の水煮(缶詰)、麺類など】

    油や食物繊維の多いものは避けて

    油を多く使った料理や食物繊維の多い野菜はなるべく避けて。【例:油の多いもの(揚げ物、炒め物、サラダのドレッシング)、

    食物繊維の多いもの(ごぼう、きのこ類、山菜、こんにゃく、海藻)】

    26

    栄養・食生活分野における被災後の対応

  • 5 –

    3. 便秘

    水分は十分に 体内の水分が不足すると、大腸での水分の吸収が多くなるので便が硬

    くなり、排便しづらくなります。起床後、冷水を飲み、腸管を刺激することも効果があります。【例:水、お茶、野菜・果物ジュース、汁物(レトルト)、イオン飲

    料、ゼリーなど】

    食物繊維の積極的な摂取を 食物繊維の摂取で排便を促します。【例:野菜・海藻の素材缶詰(コーン、ひじき)、

    野菜などの真空パックの惣菜(きんぴら、筑前煮、芋煮)、乾物類(海藻、きのこ、野菜)など、粉末ファイバー、ジュースなどの食物繊維強化食品】

    ヨーグルトや柑橘系果物を 腸内環境を整えるためにヨーグルトの摂取が勧められます。果物では、柑橘系(みかん、オレンジ、グレープフルーツなど)が便をや

    わらかくします。

    朝食をしっかり摂取する 朝食をしっかり摂取し、便意がなくてもトイレに行き、規則的な排便リズ

    ム(習慣)をつけます。

    適度な運動を 適度な運動(体操、歩くなど)を行い、腸管に刺激を与えます。

    6.食物アレルギーをもつ子どもと家族への配慮

    ■特定の食べ物を摂ると、じんましん、嘔吐や呼吸困難、血圧の低下などの症状が出て、生命

    に危険が及ぶ人もいます。

    ■支援物資に注文を付ける人のなかには、食物アレルギー児の家族がいるかもしれません。こ

    れは自分勝手な行動ではないので、温かく見守りましょう。

    ■食物アレルギー児の家族は、普段からわが子の食物アレルギーを周囲に話して、除去食など

    への理解が深まるように努めておきます。

    27

    栄養・食生活分野における被災後の対応

  • 1

    1)

    消防庁「防災マニュアル-震災対策啓発資料-」

    http://www.fdma.go.jp/bousai_manual/index.html

    2)

    消防庁「地震などの災害に備えて」

    http://www.fdma.go.jp/html/life/jisin2jisin.html

    3)

    財団法人消防科学総合センター「地震・・・その時に備えて【その時・その後どうするか編】

    」CD-ROM、PDF版防災マニュアル

    http://www.bousaihaku.com/bousai_img/jisin_cd/sonotoki/index.html

    http://www.bousaihaku.com/bousai_img/jisin_cd/sonotoki/pdf/earthquake-2008jp.pdf

    4)

    消防庁「わたしの防災サバイバル手帳」

    http://www.fdma.go.jp/html/life/survival/pdf/survival2204_all.pdf

    平成24年3月26日

    5)

    日本助産師会「助産師が伝える災害時の知恵ぶくろ」

    http://www.midwife.or.jp/pdf/chiebukuro/chiebukuro.pdf

    平成24年3月

    6)

    東京都福祉保健局少子社会対策部子ども医療課「地震がくる前に子どものためにできること」

    http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/shussan/nyuyoji/saitai_pamphlet.html

    平成19年3月

    【③

    災害にあったら】

    【②

    日頃の備え―非常時の必需品と心の準備】

    1)

    消防庁「わたしの防災サバイバル手帳」16−17p

    http://www.fdma.go.jp/html/life/survival/hyo1-4_01.html

    平成24年3月26日

    2)

    つながる.com 「被災ママ812人が作った子連れ防災手帖」(メディアファクトリー)14-15p

    平成24年3月2日

    3)

    仙台市子育てふれあいプラザ

    のびすく仙台「子育てファミリーのための地震防災ハンドブック

    大切な人を守るために

    今できること」

    平成23年9月

    4)

    横浜栄・防災ボランティアネットワーク「乳幼児のママとパパへ

    わが子を災害から守るために

    これだけは知っていてほしいこと」11-12p

    http://emap-yokohama.ecom-plat.jp/fbox.php?eid=11883

    平成22年12月(2刷)

    5)

    神奈川県安全防災局安全防災部災害対策課「かながわけんみん防災カード」

    http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/613996.pdf

    平成25年8月8日

    6)

    農林水産省「緊急時に備えた家庭用食料品備蓄ガイド」

    http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/pdf/140205-02.pdf 平成26年2月5日

    7)

    食育学会編「災害時でも健康的な食生活を!」

    http://www.shokuiku-gakkai.jp/pdf/bousai_pamphlet.pdf

    平成24年3月1日

    8)

    三重県健康福祉部 「災害時栄養・食生活支援活動ガイドライン(初版)」

    http://dheat.umin.jp/tiikibousai/pdf/F24-2-02.pdf

    平成24年10月

    9)

    内閣府(防災担当)「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」

    http://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/youengosya/h25/hinansien.html

    平成25年8月

    10)

    茅ヶ崎市こども育成部こども育成相談課「考えてみましょう!! わが家の防災対策」

    http://www.city.chigasaki.kanagawa.jp/dbps_data/_material_/localhost/bo-saimanyuaru.pdf

    平成24年3月

    参考文献

    28

    【①

    身のまわりの安全チェック】

    1)

    消防庁「防災マニュアル」

    http://www.fdma.go.jp/bousai_manual/

    2)

    横浜栄・防災ボランティアネットワーク「乳幼児のママとパパへ

    わが子を災害から守るために

    これだけは知っていてほしいこと」

    http://emap-yokohama.ecom-plat.jp/fbox.php?eid=11883

    平成22年12月(2刷)

    1)

    東京都福祉保健局少子社会対策部子ども医療課「妊婦・乳幼児を守る災害対策ガイドライン」

    http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/shussan/nyuyoji/saitai_guideline.files/guideline_all.pdf

    平成19年3月発行

    2)

    横浜栄・防災ボランティアネットワーク「乳幼児のママとパパへ

    わが子を災害から守るために

    これだけは知っていてほしいこと」

    http://emap-yokohama.ecom-plat.jp/fbox.php?eid=11883

    平成22年12月(2刷)

    3)

    日本プレイセラピー協会「遊びを通した子どもの心の安心サポート~つらい体験後の未就学児(乳幼児)のためのマニュアル~」

    http://www.ja4pt.org/japt_manual.pdf

    平成26年1月8日(2刷)

    4)

    仙台市子育てふれあいプラザ

    のびすく仙台「子育てファミリーのための地震防災ハンドブック

    大切な人を守るために

    今できること」

    平成23年9月

    5)

    WHO「心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド:PFA)」金吉晴、鈴木友理子 監訳

    http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/44615/18/9789241548205_jpn.pdf

    2011年

    6)

    福島県精神保健福祉センター「福島県心のケアマニュアル」

    http://www.pref.fukushima.jp/seisinsenta/data/mental_care_manual/25c-all.pdf

    平成25年5月22日

    7)

    つながる.com「被災ママ812人が作った子連れ防災手帖」(メディアファクトリー)

    平成24年3月2日

    8)

    小宮信夫「犯罪は「この場所」で起こる」(光文社新書)

    平成17年8月

    9)

    内野真「子どもを犯罪から守る」(明石書店)

    平成18年5月

    10)

    国崎信江「犯罪から子どもを守る50の方法」(ブロンズ新社)

    平成17年12月

    11)

    刈間理介「子どもの防犯能力の概念構造分析と防犯教育プログラムの体系化」(独)日本科学技術振興機構

    社会技術研究開発センター開発プログラム「犯罪からの子ど

    もの安全」

    研究開発プロジェクト「犯罪からの子どもの安全を目指したe-learningシステムの開発」(代表

    藤田大輔)

    http://ir.lib.osaka-kyoiku.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/25599/4/mental6-3.pdf

    平成21年

    12)

    安心子育て応援サイト「子どもの安全ブログ」

    http://www.secom.co.jp/kodomo/a/20131111.html

    平成25年11月11日

    【④

    被災後や避難生活で気をつけること】

    1)

    日本未熟児新生児学会、日本周産期・新生児医学会の共同声明「母乳中の放射性物質に関する見解」

    http://plaza.umin.ac.jp/~jspn/shinsai/pdf/bonyu_houshasei_fainal.pdf

    平成23年5月13日

    2) 母乳育児団体連絡協議会

    「災害時の乳幼児栄養」に関する指針

    改訂版」

    http://www.unicef.or.jp/kinkyu/japan/pdf/japan20110406_02.pdf

    平成23年4月

    3) 「大規模災害発生時における口腔ケア活動の意義と実際」厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究推進事業)、大規模災害

    時における歯科保健医療の健康危機管理体制の構築に関する研究(研究代表者

    中久木康一)

    http://www.niph.go.jp/topics/koukuukea.pdf

    4) 兵庫県健康福祉部健康局健康増進課「いざという時の心構え

    災害時の食に備える」

    https://web.pref.hyogo.lg.jp/hw13/documents/saigai_syoku_h23.pdf

    5) 北海道保健福祉部地域保健課「災害時・緊急時の簡単栄養確保の手引き」

    http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/kth/kak/tkh/framepage/saigaie.htm

    6) 三重県健康福祉部「災害時栄養・食生活支援活動ガイドライン(初版)」

    http://dheat.umin.jp/tiikibousai/pdf/F24-2-02.pdf

    平成24年10月

    (HPは平成26年1月28日現在)

    【⑤

    栄養・食生活分野における被災後の対応

  • < 連絡先カード

    >迷子になったり外傷などで意識をなくしたりした時のために、切り取って大人も子どもも各自が持ちます。

    家族

    との

    待ち

    合わ

    せの

    場所

    ふり

    がな

    ふり

    がな

    ふり

    がな

    ふり

    がな

    ふり

    がな 防

    災用

    連絡

    カー

    ド家

    族、

    親戚

    、所

    属先

    など

    緊急

    の連

    絡先

    続柄

    /関

    係電

    話/メ

    ール

    アド

    レ/住

    所/所

    在地

    など

    ふり

    がな

    ふり

    がな

    氏名

    (ふり

    がな

    )(男

    ・女

    生年

    月日

    住所

    電話

    所属

    先(学

    校/

    勤務

    先な

    ど)

    血液

    (A

    ・B

    ・O

    ・A

    B )

    Rh(

    +

    -)

    持病

    、ア

    レル

    ギー

    なし

    ・あ

    り(

    年月

    かか

    りつ

    けの

    病院

    ・医

    家族

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    合わ

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    がな

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    がな 防

    災用

    連絡

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    氏名

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    年月

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    病院

    ・医

    切り取り線

  • わが家の備蓄品チェックリスト現在、自宅にあるものに○をつけてみましょう。わかれば量も記入してみましょう。

    分 類 用 品 例チェック欄

    (○) 備 蓄 量

    食料品 飲料水

    1人1日分は、3L

    ご飯(アルファ化米、レトルトご飯)、パン、シリアル

    乾麺(うどん、そば、パスタ)、即席麺、カップ麺

    レトルト食品、肉・魚・豆などの缶詰

    ロングライフ牛乳、ロングライフ豆腐

    ビスケット、乾パン、板チョコ

    育児用ミルク、離乳食、幼児食

    食関連の

    災害用生

    活用品

    卓上コンロとガスボンベ

    ナイフ、紙皿、紙コップ、割り箸、ラ