妊産婦死亡報告事業 · 2 母の年齢階層別の妊産婦死亡リスク 0.9 2.5 2.8 4.3...

15
1 妊産婦死亡報告事業 2010年~2016年に集積した事例の解析結果 妊産婦死亡報告事業 調査票回収数と解析数 45 40 61 43 40 50 44 43 5 45 40 61 43 40 50 44 15 0 10 20 30 40 50 60 70 201020112012201320142015201620172018調査票回収数 報告書送付数 報告数:371/8.5=44/解析数:338 (平成30630日現在)

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1

妊産婦死亡報告事業2010年~2016年に集積した事例の解析結果

妊産婦死亡報告事業調査票回収数と解析数

45

40

61

4340

50

44 43

5

45

40

61

4340

50

44

15

0

10

20

30

40

50

60

70

2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年

調査票回収数 報告書送付数

報告数:371/8.5年=44/年解析数:338

(平成30年6月30日現在)

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2

母の年齢階層別の妊産婦死亡リスク

0.9

2.5 2.8

4.3

7.0

11.8

0

2

4

6

8

10

12

14

~19歳 20~24歳 25~29歳 30~34歳 35~39歳 40歳~

年齢別の妊産婦死亡率(2010-2016年)

妊産婦死亡数/100,000出産

1

17

56

111 113

40

0

50

100

150

200

250

300

350

400

0

20

40

60

80

100

120

~19歳 20-24歳 25-29歳 30-34歳 35-39歳 40歳~

年齢別の妊産婦死亡数

妊産婦死亡数 2016年出生数

20代前半に比べ30代後半では2.8倍、40歳以降では4.7倍上昇する

調査票未提出も含む

妊産婦死亡数/100,000出産

年齢別妊産婦死亡率の変化20年間で一般女性・妊産婦とも格段に死亡率は低下した

5.4 4.76

9.5 24.5

124.7

0.9 2.5 2.8 4.3 7.0 11.8

0

20

40

60

80

100

120

140

年齢別の妊産婦死亡率の変化

1991-92年

2010-16年

0.20.3

0.3

0.5 0.7

1.0

1.7

0.1 0.2 0.3

0.3

0.5

0.7

1.1

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

1.8

女性の年齢別死亡率

1990年

2016年

人口動態統計より 女性人口1,000対

一般女性、妊産婦とも死亡率は20年で大きく減少した35-39歳:2012年の一般女性の死亡率は50人/10万人vs 妊産婦6.4人/10万人

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3

経産回数別の妊産婦死亡率

0

5

10

15

20

25

0回 1回 2回 3回 4回 5回以上

経産回数別の妊産婦死亡率

妊産婦死亡率/100,000出生

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

0回 1回 2回 3回 4回 5回以上

経産回数別の妊産婦死亡数

妊産婦死亡数 2016年出生数

経産回数の増加とともに、妊産婦死亡率は上昇する

妊産婦死亡の範疇直接産科的死亡vs間接産科的死亡

直接産科的死亡

55%

間接産科的死亡

33%

自殺

4%

偶発

1%

不明

7%

直接・間接産科的死亡の内訳

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

直接・間接産科的死亡の年次推移

直接産科的死亡 間接産科的死亡 偶発他

• 英国では間接産科的死亡が50%以上であるが、日本では直接産科的死亡が多い。• 全体的な傾向として直接産科的死亡が減少傾向にはある。

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4

妊産婦死亡の原因別頻度

産科危機的出血

22%

脳出血

14%

羊水塞栓(心肺虚脱)

12%心・大血管

10%

肺疾患

8%

感染症

9%

偶発

7%

その他

9%

不明

9%

妊産婦死亡の原因別頻度

0%

20%

40%

60%

80%

100%

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

1. 産科危機的出血による死亡は明らかに減少傾向にある。2. 偶発的な事例の報告が多くなってきている。

感染症

脳出血

心肺虚脱羊水塞栓

心大血管疾患

産科危機的出血

肺疾患

その他

偶発・自殺

不明

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5

妊産婦死亡の原因疾患2018年6月末現在の症例検討結果(n=338)

% (事例数)

産科危機的出血 22% (73)

脳出血・梗塞 14% (48)

古典的羊水塞栓症 12% (41)

心・大血管疾患 10% (33)

大動脈解離 (15)

周産期心筋症 (5)

不整脈 (3)

心筋梗塞・心筋障害 (3)

心筋炎・内膜炎 (3)

原発性肺高血圧症 (2)

心内膜床欠損・僧帽弁狭窄 (1)

鎖骨下静脈破裂 (1)

% (事例数)

感染症 9% (30)

劇症型GAS感染症 (13)

感染症・敗血症 (10)

肺結核 (2)

血球貪食症候群 (2)

細菌性髄膜炎 (1)

その他 (2)

肺疾患 8% (28)

肺血栓塞栓症 (24)

肺水腫 (2)

肺胞出血 (2)

肝疾患 1% (5)

肝被膜下出血 (2)

急性脂肪肝 (1)

劇症肝炎 (1)

特発性肝破裂 (1)

% (事例数)

子癇・痙攣 1% (5)

その他 2% (8)

内科疾患 (3)

麻酔・蘇生の問題 (3)

膀胱破裂 (1)

多臓器不全 (1)

悪性疾患 3% (11)

胃癌 (4)

血液疾患 (4)

尿管癌 (1)

子宮頚癌 (1)

脳腫瘍 (1)

自殺・交通事故 7% (24)

自殺 (21)

交通事故 (3)

不明 9% (32)

産科危機的出血の原因別頻度

羊水塞栓症(子宮型)

47%

胎盤早期剥離

11%

子宮破裂

10%

弛緩出血

8%

癒着胎盤

5%

子宮内反症

5%

産道裂傷

4%

異所性妊娠

3%その他

7%

N=73

羊水塞栓症(心肺虚脱41+子宮型33+混合型1) 合計 75例

妊産婦死亡338例中22.2%は羊水塞栓症

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6

産科危機的出血:原因疾患頻度の年次推移

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

羊水塞栓症(子宮型) 子宮破裂 弛緩出血 胎盤早期剥離 子宮内反症 その他

N=73

• 羊水塞栓症の割合が漸増している(2016年は減少しているものの)。

子宮内反症

胎盤早期剥離

弛緩出血

子宮型羊水塞栓症

子宮破裂

その他

羊水塞栓症血清検査事業への検体提出率の年次推移

0%

20%

40%

60%

80%

100%

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

羊水塞栓症血清検査事業は年々その活用率が上昇している

N=73

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7

初発症状の出現時期と分娩様式

未分娩

17%

正常分娩

27%

クリステレル

8%

吸引・鉗子

12%

帝王切開

36%

※重複あり

総合病院

29%

産科病院

10%

有床診療所

24%

助産施設

1%

施設外(含・自宅)

35%

不明

1%

妊娠中

39%

第1期

6%

第2期

6%

帝王切開中

5%

第3期

4%

産褥

37%

その他

3%

初発症状の出現場所 初発症状の出現時期 分娩様式

• 発症場所:有床診療所≓総合病院• 分娩前の発症が40%と多い。• 分娩・帝王切開中の発症は20%程度。• 産褥期の発症が多い。• 56%に急速遂娩が行われている。

妊産婦死亡はハイリスク妊娠のみではなく、一般集団からも多く起こっている。

初発症状に対応して分娩介入が行われている(初発症状が胎児心拍異常も多い)。

初発症状から心停止までの時間の分布

53

64

36

21

29

93

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0.5時間未満 0.5-2時間未満 2-4時間未満 4-8時間未満 8-24時間未満 24時間以上

18% 40% 52% 59%

妊産婦死亡では、初発症状発現から比較的短時間で心停止にまで至る事例が多い

※偶発事例、時間不明を除く

累積率

(%)

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8

初発症状から心停止までの時間の分布原因疾患別の時間経過

0

5

10

15

20

25

30

35

0.5時間未満 0.5-2時間未満 2-4時間未満 4-8時間未満 8-24時間未満 24時間以上

産科危機的出血 肺血栓塞栓症 心肺虚脱型羊水塞栓症 脳内出血 感染症 心血管疾患

初発症状から心停止までの時間の比較古典的羊水塞栓症 vs 子宮型羊水塞栓症

0%

20%

40%

60%

80%

100%

0.5時間未満 0.5-2時間未満 2-4時間未満 4-8時間未満 8-24時間未満 24時間以上

古典的羊水塞栓症 子宮型羊水塞栓症

子宮型羊水塞栓症

心肺虚脱型羊水塞栓症

N=75

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9

妊産婦死亡例での剖検率の推移

0%

20%

40%

60%

80%

100%

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

病理 行政 司法 なし 他 (Ai) 不明

司法解剖率は低下してきているものの、病理解剖率はなかなか上昇していない。

行政解剖

病理解剖

司法解剖

解剖なし

再発防止に関する検討

0 10 20 30 40 50 60 70

異常の認識

事前の準備

輸血(赤血球)

輸血(FFP)

集中治療(内科的)

集中治療(外科的)

蘇生

搬送タイミング

搬送システム

輸血システム

コミュニケーション(施設内)

コミュニケーション(施設間)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

(%)最善の対応であっても

救命困難と考えられる事例の割合産科危機的出血による死亡事例 (n=73) において改善の予知がある事項と指摘された事例の割合

(%)

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10

妊産婦死亡報告事例数の年次推移妊産婦死亡報告事業(日本産婦人科医会)

45 40 61 43 40 48 40 44 20

4541 42

36

28

39

34

0

10

20

30

40

50

60

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018

医会報告

母子保健統計

• 2010年に妊産婦死亡報告事業を開始、2015年にJ-CIMELSの活動を開始したが具体的成果が見えてきて来なかった。

• 2018年の事例が激減している状況が具体的成果になる可能性がある。

8月末まで

J-CIMELS発足

2017年度の提言提言1:母体急変の前兆としての呼吸数の変化を見逃さない

提言2:劇症型A群溶連菌感染症の早期発見・医療介入をする

・ Centor criteriaを参考に溶連菌感染症(咽頭炎)の早期発見に努める

・ qSOFAで重症化のリスク評価を行い、早期に高次医療機関への搬送、専門家チームへのコンサルトを行う

・子宮内感染症を疑い、子宮内胎児死亡を合併している症例は劇症型A群溶連菌感染症の可能性を考慮した対応に

移行する

提言3:早剥と癒着胎盤が原因の妊産婦死亡ゼロを目指す

・胎児死亡を合併した早剥は高次施設での集学的治療を考慮する

・癒着胎盤では集学的管理下でより慎重な治療を行う

提言4:妊娠高血圧症候群(HDP;Hypertension disorder of pregnancy)における脳卒中の発症を未然に防ぐ

・妊娠高血圧腎症では入院管理を原則とする

・HDPの分娩中、収縮期血圧が160mmHg以上はニカルジピン等の持続静注により、積極的に降圧をはかる

・Postpartum(特に産後24時間)には正常血圧を目標とした、厳重な血圧管理を行う

提言5:Ai(Autopsy imaging)と解剖の各々の限界を熟知した上で、原因究明のために病理解剖を施行する

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11

提言1:母体急変の前兆としての呼吸数の変化を見逃さない

早期警告サイン(PUBRAT)

心拍数 100bpm以上、51bpm以下

経皮酸素濃度 95%以下

時間尿量 0.5ml/kg/時間未満

収縮期血圧 140mmHg以上、101mmHg以下

拡張期血圧 90mmHg以上

呼吸数 15回/分以下、または25回/分以上

意識レベル JCS1桁を超える

体温 38℃以上

Rapid Response System(RRS)• RRSとは、患者の状態が通常と異なる場合に、現場の看護師等が定められた基準に基づき、

直接、専門チームに連絡し早期に介入・治療を行うことで、ショックや心停止といった

致死性の高い急変に至ることを防ぐシステムのことである。

• 急変を的確に発見することが重要で、発見するためのスコアリングとして早期警戒スコ

アリングシステム(Early Warning Scoring System;EWSS)がある。日本では、同じ目的で

のスコアリングシステムとして、早期警告サイン(PUBRAT)が「母体安全への提言

2010」の中で示された。 RRS導入前後の死亡数と心停止数

導入前 導入後

院内死亡

  死亡数(per 1,000人) 19.5 17.2

心停止

  心停止数(per 1,000人) 3.77 2.05

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12

提言2:劇症型A群溶連菌感染症の早期発見・医療介入をする

・ Centor criteriaを参考に溶連菌感染症(咽頭炎)の早期発見に努める

・ qSOFAで重症化のリスク評価を行い、早期に高次医療機関への搬送、専門家チームへのコンサルトを行う

・子宮内感染症を疑い、子宮内胎児死亡を合併している症例は劇症型A群溶連菌感染症の可能性を考慮した対応に移行する

Centor criteria

咽頭痛を訴えている成人患者の細菌感染の可能性を特定するために使用される基準。

咽頭痛を訴える成人の患者において、A群連鎖球菌感染の存在または連鎖球菌咽頭炎を迅速に診断する方法。

C Cough absent 咳がないこと

E Exudate 滲出性扁桃炎

N Nodes 圧痛を伴う前頸部リンパ節腫脹

T Temperature 38℃以上の発熱

OR young OR old modifier 15歳未満は+1点、45歳以上は-1点

上記の項目をそれぞれ1点としてカウントする。

0~1点:溶連菌感染症の可能性は低い(10%未満)。抗菌薬は処方しない。

2~3点:溶連菌迅速抗原検査を行って判断する。(2点:15%、3点:32%)

4~5点:40%以上の可能性があるので、速やかな抗菌薬の投与を考慮する。

これらのスコアリングに加え、妊産婦において「持続する下腹部痛」「性器出血」「子宮内胎児死亡」の所見がある場合は劇症型A群溶連菌感染症へ移行するリスクが高いと考え、早期に抗菌薬投与を開始し、高次施設への早期転院搬送を検討すべきである。

【A群溶連菌感染症の外来処方例】

アモキシシリン(パセトシン®、サワシリン®など)

750~1500mg 分3 10日間

セファレキシン(ケフレックス®など)

1000mg 分4 7日間

qSOFA

• qSOFA(quickSOFAとしても知られている)は、病院前救護・救急外来・一般病棟において感染症が疑われる患者の評価に用いる。

• 臓器障害に関する検査、および早期治療開始や集中治療医への紹介のきっかけとして使用できる簡便なスクリーニング法である。

qSOFA基準

意識変容

呼吸数≧22回/分

収縮期血圧≦100mmHg

2項目以上が存在する場合は、敗血症を疑い集中治療管理を考慮すべきであり、必要なら転院搬送を行う。

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13

提言3:早剥と癒着胎盤が原因の妊産婦死亡ゼロを目指す

・胎児死亡を合併した早剥は高次施設での集学的治療を考慮する

・癒着胎盤では集学的管理下でより慎重な治療を行う

A: 出血顕在型 (Revealed abruption) B: 潜在型 (Concealed abruption)

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14

提言4:妊娠高血圧症候群(HDP:Hypertension disorder of pregnancy)における脳卒中の発症を未然に防ぐ

・妊娠高血圧腎症では入院管理を原則とする

・HDPの分娩中、収縮期血圧が160mmHg以上はニカルジピン等の持続静注により、積極的に降圧をはかる

・Postpartum(特に産後24時間)には正常血圧を目標とした、厳重な血圧管理を行う

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

Antepartum Intrapartum Postpartum

血圧管理

入院管理の遅れ

Terminationの遅れ

母体搬送の遅れ

HELLP・脳卒中診断の遅れ

呼吸・循環管理

輸血の遅れ

血液検査未施行

麻酔管理

Antepartum Intrapartum Postpartum

課題点の個数 32 8 17

課題点を持つ症例数 4 8 7

Page 15: 妊産婦死亡報告事業 · 2 母の年齢階層別の妊産婦死亡リスク 0.9 2.5 2.8 4.3 7.0 11.8 0 2 4 6 8 10 12 14 ~19歳 20~24歳 25~29歳 30~34歳 35~39歳

15

提言5:Ai(Autopsy imaging)と解剖の各々の限界を熟知した上で、

原因究明のために病理解剖を施行する

妊産婦死亡を減らすために必要なこと

• Aiを実施することで正確な死因究明ができる事が広く知られている。

• しかし、妊産婦死亡の原因究明においては、その期待に100%応える事は現時点では難しい。

妊産婦死亡が発生した場合に、ご遺族に伝えること

1)Aiによって診断できる疾患(大動脈瘤破裂、脳出血)はある程度限られていること。

2)解剖によって初めて診断ができる疾患(羊水塞栓症、肺動脈血栓塞栓症や心筋梗塞、脳動

脈解離)があること。

3)癒着胎盤や深部頸管裂傷など、解剖によって除外できる疾患が多数あること。

妊産婦死亡データの特徴妊産婦死亡報告事業 リンケージ解析

実施主体 日本産婦人科医会 厚労科研研究班

データの提供元 医療機関からの任意の報告 死亡届・出生届・死産届などのデータ

特徴 • リアルタイムに状況把握ができる。(例. 2018年8月末での件数は20件)

• 追加調査などにより、正確な診断、詳細な原因分析(死因の解明)や再発防止策の立案が可能である。

• 産婦人科医が主に取り組む直接産科的死亡については多くが報告されている。

• わが国の実態に近いデータである。

精度的な限界 • 産婦人科医からの報告が主体で、自殺、事故、悪性腫瘍死、その他の他科疾患での現病死(間接産科的死亡)は報告されにくい。

• 産後1か月以降の事象を産婦人科医は把握しきれないため、報告がなされにくい。

• 妊娠初期女性の妊娠の把握ができない。• リアルタイムに実数をモニターすることはできない(統計データ確定後の解析になる)。

• 事例の臨床的な診断名しかわからない(当該施設の診断が正しいとは限らない)。

• 事例の原因分析や再発防止への活用はできない。

付録