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資源開発環境調査 キューバ共和国 Republic of Cuba

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資源開発環境調査

キューバ共和国

Republic of Cuba

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目 次

第 1 部 資源開発環境調査

1. 一般事情 ·································································· 1

2. 政治・経済概要 ···························································· 2

3. 鉱業概要 ·································································· 6

4. 鉱業行政 ·································································· 7

5. 鉱業関係機関 ····························································· 12

6. 投資環境 ································································· 13

7. 地質・鉱床概要 ··························································· 20

8. 鉱山概要 ································································· 21

9. 新規鉱山開発状況 ························································· 22

10. 探査状況 ································································ 24

11. 製錬所概要 ······························································ 26

12. わが国のこれまでの鉱業関係プロジェクト実施状況 ·························· 28

第 2 部 地質解析

1. 地質・地質構造 ··························································· 29

2. 鉱床 ····································································· 30

2-1. 鉱床生成区 ····························································· 30

2-2. タイプ別・時代別分布の特徴 ············································· 32

3. 鉱床胚胎有望地域 ························································· 37

資料(統計、法律、文献名、URL 等)··········································· 40

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- 1 - キューバ

第 1部 資源開発環境調査

1. 一般事情

1-1. 面積 110,922 ㎢

1-2. 人口 1,127.3 万人(2002 年 ECLAC)

1-3. 首都 ハバナ

1-4. 人種 ヨーロッパ系 25%、混血 50%、アフリカ系 25%(推定)

1-5. 公用語 スペイン語

1-6. 宗教 原則として自由

1-7. 地勢等

キューバは、アメリカ合衆国のフロリダ半島とメキシコのユカタン半島との間のカリブ

海に南東方に細長く延びており、全島がさんご礁からなっている。東から、オリエンテ、

カマグエイ、ラスビヤス、マタンサス、ハバナ、ピナルデルリオの 6州に分けられている。

国土の 3/4 が平野であるが、本島の西端から東端近くまでのびる広大な平原は、島国とい

うよりも大陸的な印象をあたえる。東部、中央部および西部の限られた地域に、それぞれ

孤立している山岳地帯があるが、東部の山岳地帯(マエストラ山脈)が も高く、1,000m か

ら 2,000m の山々がつらなっている。中央部の山岳地帯(トリニダド山脈)は 1,000m 級の稜

線をなし、西部の山岳地帯(ロスオルガノス山脈)はさらに低く 600m 級の細長い山脈である。

国土の幅が狭く、かつ山系が主に東西に走っているため、水系は短小である。 長の川は

オリエンテ州のカウト川であるが、それさえ全長 241km にすぎない。中央部の南岸にはシ

エナガデサパータの沼沢地帯が展開する。

出典: MAPQUEST.COM

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1-8. 気 候

亜熱帯海洋性気候で、冬季のごく一部の期間を除いてほとんど一年中、まばゆい太陽の

下にある。しかし、亜熱帯貿易風圏内にあるため、一年中微風があり、割合過ごしやすい。

夏の平均気温は 28℃、冬でも平均 22~23℃で、年平均気温は 25.5℃である。特に 6~9月

の 4ヶ月間は、日射が強く連日、日中は 30℃を越え、 高 35℃に達するときもある。また、

冬の 1~2 月には明け方の 低気温が 10℃を割ることもしばしばで、寒冷前線が南下して

くると内陸では 0℃近くに下がることもある。一年は雨季(5~10 月)と乾季(11~4 月)に分

かれ、年間総雨量は 1,293mm であるが、その大部分は雨季に降り、乾季には稀に夕立がみ

られる程度である。湿度は年間を通じて非常に高く雨季の平均湿度は 82.8%、乾季の平均

湿度は 77.3%で、年平均は 78%である。なお、雨季の期間中の 9~10 月は台風シーズンであ

る。

ハバナの年間気温

1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 平均

平均気温(℃) 22.6 23.0 22.3 24.7 26.4 28.0 28.1 28.2 27.6 26.6 24.7 23.8 25.5

降雨量(mm) 99 187 61 27 158 96 154 187 239 13 33 39 107.8

年間 高気温 29.5℃、年間 低気温 22.4℃、年間平均湿度 78% (1999 年数値)

土地利用:森林 23.5%、耕地 30.4%、牧場 26.8%

2. 政治・経済概要

2-1. 政体 共和制(勤労者の社会主義国)

2-2. 元首 フィデル・カストロ・ルス国家評議会議長(閣僚評議会議長)

2-3. 議会 一院制(人民権力全国議会、589 名)

2-4. 政治概況

93 年 2 月初めて直接選挙による人民権力全国議会を実施。01 年 6 月カストロ議長が政治

集会の 中に昏倒。その後ラウル・カストロを後継者として指名。03 年 1 月人民権力全国

議会選挙を実施、3月、人民権力全国議会はカストロ議長に再選(6選)。90 年代の部分的

な経済開放政策による国民の経済格差の拡大、国営企業の汚職蔓延等の問題が深刻化して

いることから、02 年末頃より党主導による中央集権化及び経済引き締めが強化される傾向

にある。

(略史概略)

ヨーロッパ人渡来以前は、西インド諸島に約数 10 万人の先住民がおり、キューバにはシ

ボニー族、アラワク族などが住んでおり、アラワク族はコヌコ(半径約 1m、高さ約 30cm の

盛り土に作物を栽培)と呼ばれる農業様式で、マニオク、ヤムイモ、サツマイモ、トウモロ

コシ、豆類などのような食料作物の他に綿花を栽培して衣類をつくったり、タバコを栽培

していた。

1492 年コロンブスの第一次航海に際し、ヨーロッパ人がキューバに渡来し、1511 年イス

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- 3 - キューバ

パニョーラ島から遠征したディエゴ・ベラスケスの率いるスペイン軍により征服、以来約

4世紀におよぶスペインの植民地支配を受けた。なお、スペイン人が渡来してから約 75 年

後には先住民はほとんど絶滅した。そのため、労働力として黒人奴隷がアフリカから導入

された。

1898 年の米西戦争における米国勝利の結果、米国の軍政下に入り、その後、1902 年 5

月 20 日、キューバは独立をしたが、不平等条約は継続し、1934 年に撤回された。この 1930

年代にはキューバの基幹産業および公益事業のほとんどが米国資本の支配下にあり、歴代

政権の利権への密着、政治の腐敗・独裁化が助長された。

このような背景のもとにフィデル・カストロが 1959 年 1 月 1日に革命政権を樹立した。

同年 6月に農地改革法を施行し、米国の在キューバ資産を接収した。これに対し、米国は

経済報復を行い、1961 年 1 月には外交関係が断絶した。その後、民族主義的独自路線から

ソ連型路線への移行が行われ、1976 年 12 月より新国家機構が発足した。

1980 年代末から 90 年初頭にかけての旧共産圏崩壊後、キューバは経済危機克服のため

に西側諸国との関係強化を 大課題と捉え、積極的な外交活動を行っており、米国との関

係もある程度の改善がみられる。

米国政府では2000年 10月、条件付ながら食料・医薬品の販売を認める修正法案発効2000

年には対キューバ輸出額はほぼゼロであったが、2001 年には 144 位、2003 年には 35 位に

まで上昇。

(内 政)

1992 年に憲法改正、新選挙法が施工されたが、カストロ議長は国家元首、閣僚会議議長、

軍 高司令官、キューバ共産党第一書記の役職を兼ね、すべての国家権力を集中。

国家機構として以下のものがある。

立法機関 人民権力全国議会 議員数 589 人、任期 5年

執行・行政機関 閣僚評議会 議員数 31 名、人民権力全国議会によって選出

司法機関 高人民裁判所

集団指導機関 国家評議会

人民権力地方議会(人民権力県議会、人民権力市町村議会)

共産党 党員数 76 万人(1997 年 5 月)

共産党をささえる前衛機関 革命防衛委員会、中央労働連盟、全国小農協会、共産主

義青年同盟、大学学生連合、中等教育学生同盟、キュー

バ・ピオニール連盟

(外 交)

非同盟諸国会議の一員で、旧ソ連・東欧諸国との友好関係が基本であったが、旧ソ連・

共産圏崩壊後は、中国、ベトナムとの連帯を強調。中南米諸国のほか、西欧諸国との関係

緊密化に努力。1998 年には、ローマ法王やカナダ首相のキューバ訪問が実現した。米国と

も関係改善の動きがあるが、米国内の対キューバ強硬派の影響力は強く、キューバ側も国

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内の引き締めを強化する傾向にあるため、当面の急速な関係改善は難しいとみられている。

(軍 事)

予算 7.5 億ドル(2001 年)

兵力 4.6 万人(陸軍 3.5 万人、海軍 0.3 万人、空軍 0.8 万人)

2-5. 主要産業 観光業、農業(砂糖、煙草)、工業(ニッケル)、水産業

2-6. GDP 27,600 百ペソ 一人当たり 2,445 ペソ(02 年中銀)

2-7 通貨 キューバ・ペソ(CUP)

2-8 為替レート 1US$=1CUP

2-9. 貿易(2003 年国家統計局)(単位:百万ペソ)

金 額 品 目

輸 出 1,402 砂糖、ニッケル、魚介類、コーヒー、タバコ

輸 入 4,129 燃料、工業製品、化学品、機械

対日貿易(日本通関統計)(単位:億円)

98 年 99 年 00 年 01 年 02 年 03 年

輸 出 30 44 26 32 33 69

品 目 砂糖、魚介類、コーヒー、煙草

輸 入 51 64 41 45 35 33

品 目 一般機械、化学工学機器、電気機械、輸送機械

2-10.経済概況

米国の制裁下(ヘルムズ・バートン法他)。中国、北朝鮮及びベトナムとの連携を強調。

砂糖、ニッケル、コバルト、観光及び水産が主要産業で、国内総生産(GDP)に占める鉱業の

割合は 1.3%である。

旧ソ連・共産圏崩壊前は、社会主義計画経済、砂糖モノカルチャー生産構造及びソ連依

存経済という 3つの大きな特徴をもっていたが、崩壊後キューバ経済は大きな打撃を受け、

変革をせまられた。1990~1993 年までの成長率はマイナス 34%を記録し、基幹産業であっ

た砂糖生産も肥料不足などにより減産を余儀なくされ、経済状況は悪化の一途をたどった。

これに対処するため、1993 年、外貨所持を自由化、自営業の承認、協同組合農場の創設、

農産物自由市場の承認など、経済活性化のための一連の自由化措置および同時に国営企業

の合理化など一連の財政健全化措置を実施した。その結果、経済成長の低下に歯止めがか

かり、1995 年以降回復の兆しを若干見せ、特に観光業が顕著に成長。また、1995 年には新

外貨法が制定され外資振興も進められた。

このように 90 年代半ばから経済改革の動きが見られたが、 近は引き締めの傾向にある。

2001 年以降は、一次産品の国際価格低迷や原油価格高騰、2001 年の米国同時多発テロ事件

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の観光業への影響等により、2002 年の経済成長率は 1.1%と低迷。2003 年は当初予想(1.5%)

を上回って 2.6%を達成。

2004 年 11 月、国内の商取引きにおける米ドルの流通が禁止された。

なお、現在のキューバ経済は、観光、砂糖、ニッケルの 3 本柱からなり、特に観光は過

去 5年間の平均成長率は 18.6%となっており、2003 年の観光客は約 190 万人で、日本人観

光客も近年倍増しており、1万人弱となっている。

日本との関係

概況

1929 年 12 月 26 日国交樹立し、1952 年に再開している。

野球、バレーボール等民間レベルによる文化・スポーツ交流は盛んである。

在留邦人数 201 人、日系人約 800 人(2004 年)。

輸出入

日本とキューバの貿易に関しては低迷を続けている。 貿易収支(単位:億円)

1999 年 2000 年 2001 年 2002 年 2003 年

日本からの輸出 64 41 45 35 33

日本からの輸入 44 26 32 33 69

日本からの輸出品目は、一般機械、化学工学機器、電気機械、輸送機械等で、輸入品

目は、砂糖、魚介類、コーヒー、タバコ等である。

日本からの投資 直接投資はない

二国間協定

日本、キューバ両国間に既締結協定は次のとおりである。 ・ 1960 年 4 月 通商協定締結

・ 1961 年 7 月 通商協定発効

・ 1998 年 3 月 民間債務リスケ基本合意

・ 2000 年 1 月 短期公的債務リスケ署名

経済協力

2001 年初頭までに以下のものを実施。

・ 両国政府は 1997 年、草の根無償協力の実施に合意し、人道的分野において 11 件のプ

ロジェクトを実施

・ 技術協力として 10 プロジェクトに対し専門家を派遣

・ 1999 年、プロジェクト形成調査として『ハバナ湾浄化プロジェクト』を開始

・ 同年キューバに対する文化無償協力の実施を決定し、ハバナ大学に対する LL 機材供与

を実施

・ 自然災害に対する援助

・ 2000 年 10 月 キューバ・プロジェクト確認調査団派遣

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2-11. 治安状況

世界各都市と比較して治安は良いほうであるが、社会主義圏崩壊以降の経済情勢の悪化、

および近年急速に広がりつつある所得格差などを背景として、強盗事件や空き巣などが急

増している。

なお、国家の利益に反する行動、例えば外貨の不正売買、その他の闇取引、反革命活動

とみられるような行動や風紀に関する問題は激しく規制され、監視されている。

2-12. インフラストラクチャー

1) 道路

キューバの道路は全長 10,990 km であり、そのうち 682km がハイウェイである。これら

は各都市間を連絡しているが、道路状況は良い状態ではない。

2) 鉄道

初の鉄道が敷かれたのは、150 年以上前で、ハバナを起点に各主要都市間で運行され

ており、その全長 12,000km であるが、その半分以上は砂糖産業のためのものである。

3) 空港

キューバにはハバナのホセ・マルテ国際空港などの 19 の空港がある。

4) 港湾

キューバは天然の良港に恵まれており、7の主要港と 20 の港がある。

5) 電力エネルギー

発電量は 141kWh で、そのうち火力は 99.2%で大半を占め、0.8%が水力である(1997 年)。

3. 鉱業概要

キューバにおける地質鉱山活動の大部分は、基礎産業省(MINBAS :Ministerio de la

Industria Basica)と建設省(MICONS :Ministerio de Construccion)によって実施されてお

り、その下部組織として、Union del Niquel(ニッケル連合)、Cupet(石油関連)、Geomiera(地

質公社、ニッケル・コバルトを除く金属・非金属鉱物及び塩)、Corporacion de Cemento

Cubano(キューバセメント公社)等があり、建設省は大理石、セラミックス、砂利・砂等の

生産の所管である。

キューバの鉱業史は1582年のコロンブスによる「キューバ発見」から始まる。キュ

ーバを征服したスペイン人は金を探し求めたが、1515 年から 1538 年の間に少量の砂金を

得たにすぎなかった。金探査の過程で Santiago de Cuba 町近くに El Cobre 銅鉱床が発見

され、17 世紀半ばまでに初歩的な開発が行われた。同鉱床は 19 世紀に英国資本により再

度開発された。これ以降、1959 年のキューバ革命まで、キューバの資源開発はすべて外国

資本により行われた。

20 世紀に入り、北米の資本により銅や鉄の鉱山開発が活発になった。銅鉱山の主たるも

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のは Matahambre 鉱山であった。また第2次世界大戦中にマンガンとクロムの鉱山が、また

化学・製錬技術の発達を受け、1944 年にはラテライトからのニッケル回収が開始された。

キューバ革命以降は東側諸国の技術と資本でニッケルを中心に鉱業活動が営まれてきた

が、1990 年以降は東側経済圏の崩壊により東側からの資本と技術の流入が細り、稼働率が

低下した。キューバ政府は西側諸国の資本による探査開発を進めることとし、探査鉱区を

外資に開放した。これに対し、カナダのジュニア企業を中心に多くの外国企業が鉱区を取

得して探鉱し、一種のブームとなっている。特に世界有数の埋蔵量を有するニッケルにつ

いては多くの鉱山会社が深い関心を示している。なかでもカナダの Sherritt 社は Moa ニッ

ケル鉱山・製錬所と合弁企業を 1994 年末に設立し注目をあびた。また、Northern Orion

は合弁(Mantua 鉱山)で 98 年 3 月から金の生産を開始した。一方で、1913年から稼

行していた Matahanbre 銅鉱山が97年に閉山続いて、16世紀から生産してきた El Cobre

銅鉱山が2001年に閉山し、銅の生産量は僅かになっている。

以下に主要鉱産物の生産量を示す。

キューバ共和国の主要非鉄金属の生産量(2003年)

鉱 種 キューバ(A) 世 界(B) (A)/(B)(%) ランク

ニッケル鉱石(千 t) 74.0 1,284.2 5.8 6

ニッケル地金(千 t) 42.0 1,208.0 3.5 11

クロム鉱石(千 t) 50.0 15,826.9 0.3 12

出典:World Metal Statistics Yearbook 2004

以下に鉱物資源埋蔵量を示す。

鉱物資源埋蔵量

鉱 種 キューバ(A) 世 界(B) (A)/(B)(%) ランク

ニッケル(t) 23,000,000 140,000,000 16.4 2

コバルト(t) 1,800,000 13,000,000 13.8 2

出典:Mineral Commodity Summaries 2004

4. 鉱業行政

キューバ政府は外資による鉱業部門への投資を促進する政策をとっており、鉱区の開放、

ニッケル生産への外国資本参入の推進、鉱業法の制定を行った。

鉱業法は 1994 年 12 月 21 日に全国国民会議で可決され、1995 年 1 月 23 日付け官報に公

示、公示日から発効した。キューバの法体系はスペイン植民時代のものであり、1914 年に

集大成されたが、これまで鉱業法はなかった。本鉱業法では、鉱業権者の権利と義務を規

定する他、政府の役割、鉱業登記、鉱山保安等につき規定し、法制面での不確定要素解消

に寄与した。

鉱業分野はニッケルが砂糖に続く輸出商品であり、貴重な外貨収入源となっている。ベ

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- 8 - キューバ

ースメタル、貴金属についても同様に外国資本導入を推進しているが、キューバ政府との

合弁が基本となっている。

4-1. 鉱業活動

キューバ政府は鉱業活動を以下のように分類し、外国企業との合弁事業の場合の調査期

間を決めている。

広域調査(Reconocimiento):1年間。許可を得れば 6か月間延長。

探査(Prospeccion):2年間。許可を得れば 1年間延長。

探鉱(Exploracion):1年間。許可を得れば 1年間延長。

採掘(Exprotacion):25 年間。許可を得れば更に 25 年間延長。

処理(Procesamiento):25 年間。許可を得れば更に 25 年間延長。

販売(Comercializacion)

外国企業と合弁で鉱業活動を行う場合、1.広域調査は外国企業が 100%リスクを負う。2.

探査、3.探鉱の場合にはキューバ側と外国企業が応分のリスクを負い、4.採掘は合弁によ

って行うという考え方である。

キューバ政府は 1993 年に 37 の有望地域の鉱区を外資に提示し、キューバ政府との共同

探査開発を呼びかけた。1994 年末までにはほとんどの鉱区に応募があり、活発な探査がな

されていたが、資金難による調査撤退等により 2002 年 1 月現在活動しているのは、ニッケ

ルの1プロジェクト、ニッケル以外で3プロジェクトになっている。外資はニッケルのB

HPビリトンを除くとカナダの企業だけである。なお、2001年現在、キューバ政府は

資源の可能性のある陸上16地域(各面積1400~6000km2)、オフショア10地

域を提示して外国企業の投資を望んでいる。

4-2. 鉱業関連法規

4-2-1. 沿革及び特色

人民権全国議会は 1994 年 12 月 21 日に開催された第 4 回通常会期の議事において、第

76 号法「鉱山法」を承認した。この第 76 号法「鉱山法」は、1995 年 1 月 23 日に発行され

たキューバ共和国官報の通常版に同議会の議長名で公布され、同日に発効となった。本法

は鉱業への外国資本導入を促進する目的で制定されたものであり、法案作成に際しては諸

外国の法案を参考にし、キューバで活動中の外国企業やキューバ国民の意見を広く聞くよ

う努めたという。

以前はキューバにはいわゆる鉱業法は存在しなかったが、鉱業活動の法的規範となる各

種法的措置が存在していた。歴史的には、1859 年のスペインの鉱業法がキューバに適用さ

れており、ほぼ一世紀に渡って各種改訂がなされてきた。1962 年の第 1006 号法はキュー

バ社会の経済原則に反する全ての鉱業関連法制を無効とし、以前の法制で付与されていた

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- 9 - キューバ

全てのコンセッションと権利を取り消し、1962 年より施行された国有化の諸法を補足する

ことになった。

キューバ共和国憲法では、1940 年の憲法と 1959 年の基本法において「地表の下の土は

国家に帰属する。」という原則を繰り返しており、これは 1976 年の憲法と 1992 年の憲法改

正においても有効性を保っている。同憲法第 15 条 a)項の条文は以下のとおりである。

「第 15 条 a)項:全ての国民、地表の下の土及び鉱山は、社会主義国家の所有物であり、

個人もしくは法人の所有物として譲渡することはできないが、国家開発の目的に供され、

国家の政治的、社会的そして経済的原則に悪影響を及ぼさない場合には、例外として全部

もしくは一部の譲渡を許可することができる。 閣僚会議もしくはその執行委員会がこれ

を許可する。」

4-2-2. 法規の特色

本法は、資源の合理的な開発と利用を促進するため、鉱業政策を確立することを目的と

し、キューバ国土及び領海における鉱物資源に適用される。放射性鉱物及び石油・天然ガ

スには適用されない。本法では鉱業活動を次の 5期に分けている。

広域調査(Reconocimiento):初期的な調査

地質調査(Investigacion Geologia)

探査(Prospeccion):鉱床を探し求める作業

探鉱(Exploracion):鉱床の構造規模の確認、鉱量計算、経済性評価をする作業

採掘(Explotacion):開発準備、採掘、抽出、鉱物運搬作業

処理(Procesaminento):選鉱、精製、梱包作業

販売(Comercializacion)

鉱業活動の許可期間は比較的短く、広域調査は 1年、許可を得られれば 6ヶ月延長

探査は 2年、許可を得られれば 1年延長

探鉱は 1年、許可を得られれば 1年延長

採掘は 25 年、許可を得られれば 25 年延長となっている。

基礎産業省は金鉱区のコンセッションを与える際はキューバ中央銀行と協議する。これ

は金のみの特例である。キューバ人による零細鉱山を保護するため、小規模鉱業生産の章

をもうけ、大規模生産と区別し、その義務を少なくしている。

4-3. キューバ国法律第76号鉱山法(1994 年 12 月 21 日制定抜粋)

第 1 章 法律の目的と適用範囲

第 1条で本法の目的、第 2条で鉱物資源の定義付け、第 3条で本法で使用する用語の定義

付けを行う。

第 2章 鉱物資源の所有制度

第 4条で鉱物資源の統治権は国家に帰属すると規定している。

第 3章 鉱業政策の施行

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- 10 - キューバ

第 5条で閣僚会議あるいはその執行委員会の、基礎産業省を通じた鉱業政策の策定、施行

および運用の管理を定め、第 6章で基礎産業省の権限を規定する。

第 4章 鉱業活動

第 7条から第 11 条にかけて鉱業活動を定義付け、これが国家保安の利益と共存し公共利益

である故に優先権および鉱業用益権の特別制度を享受できると定めている。第 12 条で鉱業

にかけてコンセッションの申請手続きとその用件を定める。申請中のコンセッションは辞

退可能で活動を、広域調査、地質研究(探査と探鉱のサブフェースに細分)、採掘、処理、

販売のフェーズに分類する。第 13 条で鉱物の分類を行い、工業原料鉱物を中心とする1群、

金属鉱物全般である2群、エネルギー鉱物の3群、水と薬用泥の4群、廃さいその他の5

群を定める。

第 5章 鉱業当局

第 14 条で鉱業当局として固化鉱物資源事務所(国家地質基金を改組強化)の設立とその機

能を定める。第 15 条と第 16 条で鉱業登記を規定する。

第 6章 鉱業コンセッション

第 17 条から第 19 条にかけてコンセッションの一般的な定義付けを行う。第 20 条と第 21

条でコンセッションの名義人を定義付けし、第 22 条から第 25 条にかけてコンセッション

を地質研究、採掘または処理に分け、広域調査の作業は基礎産業省の許可が必要であるが

コンセッションの取得は必要としないことを定め、コンセッションにより名義人に与えら

れる権利の内容について定めている。地質研究のコンセッションの有効期間は 3 年で延長

許可が与えられた日から 2年間の延長が可能であり、採掘と処理のコンセッションの有効

期間はその付与の日から 大 25 年で、この期間はさらに 25 年の延長が可能である。コン

セッションが消滅すると、現地の施設等はキューバ政府に接収される。第 26 条から第 35

条あり、政府の承認のないコンセンションの譲渡は禁止され、コンセッションの面積の拡

張と有効期間の延長について規定されている。

第 7章 コンセッションの名義人の義務

鉱業活動を継続して実施する義務、許可された鉱物に限った鉱業活動実施の義務、キュー

バ人を優先的に雇用する義務、採掘コンセッション付与後 2年以内の採掘開始義務、処理

コンセッション付与後 3年以内の処理開始義務を定める。

第 8章 小規模鉱業生産

小規模鉱業生産の規定とその特別な義務を定める。

第 9章 コンセッション名義人の権限

コンセッション名義人の一般的権限と鉱業益権の特別制度を享受する権限を定める。

第 10 章 コンセッションの失効、無効および消滅

コンセッションの失効、無効、消滅を規定。

第 11 章 閉山

一時的閉山は基礎産業省の許可が必要であり、恒久的閉山は閣僚会議または執行委員会の

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許可が必要である。国家の都合による閉山には補償が行われる。またコンセッションの名

義人の閉山期間中またはコンセッション消滅までの義務を定める。

第 12 章 作業の保安と衛生

作業の保安と衛生に関する法令遵守義務を定める。

第 13 章 鉱業留保地域の宣言

閣僚会議またはその執行委員会は鉱業留保地域の宣言を行う権限を有する。

第 14 章 税制

コンセッション名義人は、一般税法に定められているものと、その他の確立された一般的

な各種支払の他に、鉱区料とロイヤルテイを国家に支払う。鉱区料の年額は探査サブフェ

ーズ期間では 1ヘクタール当たり 2ペソ、探鉱のサブフェーズ期間では 1ヘクタール当た

り 10 ペソであり、採掘の期間では 1ヘクタール当たり 10 ペソである。これらは毎年前払

いである。その他、処理施設の建設に使用される土地使用料の支払義務もある。閣僚会議

または執行委員会は、製品の販売価値、取得された鉱産物の国際市場において記録される

四半期平均価格、書面で合意された金額に対してロイヤルテイ支払のための計算式を確立

することができる。適用されるロイヤルテイは、3~5%、1~3%、1%まで、である。

第 15 章 鉱業活動の奨励

探査と探鉱の期間中に生じた支出の償却のために利益の一部をあてることの許可、投資の

加速償却の適用、ロイヤルテイ支払の延期の可能性について定める。

第 16 章 違反、および措置を講じ訴訟の裁定を行う権限を持つ当局

違反について規定し、措置を講じ訴訟の裁定を行う権限を持つ当局を定める。

終措置

施行規則を閣僚会議または執行委員会が発令し、その他の措置を基礎産業省が発令すると

規定。環境措置の遵守を定め、科学技術環境省にその監督推進任務が委託されると規定。

4-4. その他法規

1981 年に制定された法律第 33 号「環境保護及び天然資源の合理的利用に係る法律」が

ある。憲法 27 条に「国民、国家及び社会の健全さを守るため、天然資源を保護する。担当

官庁と国民は水、空気、土、動植物を監視する」とあり、これをさらにおし進めたもので

ある。

即ち、鉱業法では全てのコンセッションの名義人に対して環境影響調査の実施が義務づ

けられており、科学技術環境省がそれを評価し、認可する。また同省は環境状態の査察を

行い、現行法に基づき制裁措置をとる。

4-5. 鉱区設定状況

キューバ政府は 1993 年に 37 の有望地域の鉱区を外資に提示し、キューバ政府との共同

探査開発を呼びかけた。1994 年末までにはほとんどの鉱区に応募があり、一時活発な探査

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がなされたが、金価格の下落、資金難による調査撤退等により 2002 年 1 月現在活動中のプ

ロジェクトはニッケル1、ニッケル以外で3プロジェクトになっている。外資企業として

は、ニッケルのBHPビリトンを除くとカナダの企業だけである。 2001年現在、キ

ューバ政府は資源の可能性のある陸上16地域(各面積1400~6000km2)、オフ

ショア10地域を提示して外国企業の投資を望んでいる。

5. 鉱業関係機関

鉱業は基礎産業省(Ministerio de la Industria Basica:MINBA)の管轄下にある。基礎産

業省は鉱業の他に電力、石油、化学他8分野を統括する公社を有し、労働者数は 98,000

人であり、組織は以下のとおりである。

大臣 副大臣

Ministro Viceministro

5 人

うち 1人主席

副大臣

局(Direccion)

技術(Tecnica)

鉱区及び能力(Cuadro y Capacitacion)

労働資源(Recursos Laborales)

法務(Juridica)

計画(Planificacion)

会計及び査問(Contabilidad y Auditoria)

経済評価及び価格(Evaluacion Economica y Precios)

外務(Relaciones Internacionales)

5-1. 公 社

キューバの鉱山はすべて国営であり、地質鉱山公社(Union Geominera)とニッケル公社

に属する。地質鉱山公社は多くの子会社を有する。生産単位(鉱山、製錬所)別のもの、

県別の生産単位集合体、機能(販売部門、補修部門等)別などのほか、外資との合弁窓口

である GeomineraS.A、研究機関である地質古生物学研究所、鉱山冶金研究所も傘下に有す

る。

ニッケル公社(La Union del Niquel)がニッケル生産を統括する。ニッケル公社の下に

多くの子会社があり、操業等を行う。本社は Moa 市にあり、公社全体の従業員数は 1,400

人。外資との対外折衝、合弁は Comercial Caribian Nickel S.A.が行っている。

地質鉱山公社(Union Geologo-Minera)はニッケルをのぞく金属・非金属鉱山を経営す

る。5つの地質鉱山会社と 5つの塩会社からなる。所有するプラントは、銅選鉱場 3、クロ

マイト選鉱場 1、金選鉱場 3、塩製造場 7、製錬所 1、ゼオライト粉砕場 4、非金属関係プ

ラント 8である。

地質鉱山公社の研究所として、以下のものがある。その他中央分析所と地方分析所4カ所

がある。

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Centro de Investigaciones para la Industria Minero-Metalurgia(CIPIMM)

Centro de Investigaciones de Minerales de Occidente(CIMO)

Instituto de Geologia y Paleontologia

地質鉱山公社は Geominera S.A.と CIMTEC S.A.という子会社を通じ、外国企業と合弁会

社を設立している。Geominera 社は非鉄金属の、CIMTEC 社は非金属の合弁窓口となってい

る。

5-1-1. 民間企業

キューバ資本の民間会社はすべて全額政府資本であり、公社と称すべきものである。従

って、外国資本とキューバ資本との合弁会社のうちの外国資本分のみが純粋な民間資本と

いえる。外国企業はカナダ、イギリス等の企業が進出しており、主な企業は、BHP-ビリ

トン、Sherritt Corp、Holmer Gold Mines、Northern Orion Explorations 等である。

6. 投資環境

外国資本による経済発展を促進するため、1982 年に外国投資法が制定され、キューバ側

と外国資本による合併会社の設立が認められた。1992 年の憲法改正では、資本の国有化原

則を削除し、合併会社の外資側パートナーの財産権に法的根拠を与えた。1995 年 9 月、さ

らに外貨導入を促進するため、新しい外国投資法を承認した。

なお、キューバに参入する外国資本にとって、米国による経済制裁が大きな問題である。

米国のキューバに対する経済制裁法案としては、1992 年のトリチェリ法、1996 年のヘルム

ズ・バートン法の 2法案がある。ヘルムズ・バートン法は第 1項から第 4項まであり、第

3 項が革命によりキューバ政府に没収された資産を保有する米国民へ同資産を使って営業

している外国人・企業に対して損害賠償請求をする権利を与えることを規定し、第 4項は

同資産を使って営業している外国企業の関係者及び家族が米国入国することを禁止してい

る。

6-1. 外国投資法の沿革及び特色

外国資本による経済発展を促進するため、1982 年に外国投資法(第 50 号法)が制定さ

れ、キューバ側と外国資本による合弁会社の設立が認められた。設立にはキューバ側の参

加が不可欠であり、外資側の資本比率は 大 49%であった。1992 年の憲法改正では、資本

の国有化原則を削除し、合弁会社の外資側パートナーの財産権に法的根拠を与えた。

1995 年 9 月、さらに外資導入を促進するため、人民権国家議会は新しい外国投資法(法律

77 号)を承認した。新外国投資法の特色は次の点である。

・外資 100%のキューバ法人の設立を認める(旧法では 大 49%)

・医療、教育、軍事を除くすべての分野を外資に開放した

・個人住宅、観光のための建物・不動産開発、外国法人の住宅・オフィスに限り不動産投

資を認めた(旧法では不可)

・フリー・ゾーンと工業団地を設置し、税関、為替、租税、労働、資本投資、対外貿易関

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連の特別制度を適用する

1960 年にキューバの外国企業を国営化して以降、1988 年までは外国からの投資はなかっ

た。1982 年に外国投資法制定され、1988 年に初めて外国企業との合弁会社が設立された。

その事業はバラデロ海岸のリゾート開発であった。1992 年以降、合弁会社の設立が相次ぎ、

1997 年の 1年間で 69 の新しい合弁企業が承認され、97 年末までに承認された合弁企業は

計 317 社となり、98 年も増加し 1998 年 9 月現在では 340 社以上承認されている。そのう

ちの 1/3 はヘルムズバートン法発効後に設立されたもので、更に検討中のものが 120 件あ

る。これらの投資は 40 カ国以上から来たもので、主な出資国はスペイン、カナダ、イタリ

ア、フランス、メキシコ、オランダ、英国、ドイツ等となっている。投資分野は当初観光

分野が主であったが、石油、ニッケルを含む鉱業、観光、通信・輸送産業、工業の分野へ

広がっており、その分野は 34 分野となっている。

鉱業分野では、カナダの Sherritt Corp.がニッケル公社と合弁会社 3社を 1994 年 12 月

に設立し、Moa ニッケルプラントの操業等に関与している。同社は以後数年で 1.5 億ドル

を投資する計画。その他、多くの外国企業が探査開発を実施している。石油探査開発では、

カナダ、フランス、イギリスが積極的に活動している。

6-2. 税制の概要

キューバ企業およびキューバ国民に対する税制と、外国資本とキューバ資本の合弁会社

および外資系企業の税制は異なる。合弁会社および外資系企業は以下の租税を支払う義務

がある。

・純利益税

・労働力使用税および社会保障税

・関税その他税関で徴収しうる税

・陸上輸送税:陸上輸送の四輪車の財産または所有に課税される

・文書税:特定文書の申請、取得または更新にかかわる税・手数料

なお合弁会社の出資者または契約連合体当事者である外国人投資家は、キューバ国内に

再投資する純利益に対する税金の支払いを一部または全額免除することが可能等外国投資

法は特別のスキームで合弁企業と契約連合体を優遇するために独自の税制度を設けている

(インセンティブ)。一方、外資 100%の企業が法 73 号に準じて納税する場合には一般法

を適用している。

6-2-1. 各種税制概要

1)純利益税:合弁企業や契約連合体の場合、課税率は 30%である。100%外資企業の場

合で税制の第 73 条が適用される場合には 35%である。鉱業企業の場合には 50%まであげ

ることが出来るようなっている。支払は、金額が国内通貨建てで表記されている場合でも、

自由両替可能な通貨で徴収される。

2)労働力使用税および社会治安税:賃金および労働者が受け取るすべての収入の合計に

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対して課税される。ただし経済奨励金として支給されたものは除かれる。合弁企業と契約

連合体は投資法によって特別制度が認められており2種類の税率の合計は 25%である(労

働力使用税は 11%、社会保障税は 14%)。100%外資企業に対する適用税率は労働力使用税

25%、社会保障税 14%となっているが、毎年、国家予算法で決定される。支払は、金額が

国内通貨建てで表記されている場合でも、自由両替可能な通貨で徴収される。

3)関税:現行の輸入関税率は 1990 年の法律第 124 号で定められた。GATT ウルグアイラ

ウンドに従い、関税は 5%、10%、15%、20%の 4 グループに分けられる。20%以上の高

税率を適用する場合は限られる。平均税率は 23.8%であり、 恵国の場合は 11.9%である。

支払は、金額が国内通貨建てで表記されている場合でも、自由両替可能な通貨で徴収され

る。

6-3. 労働事情概要

外資とキューバ資本の合弁企業または全額外資企業(以下「外資系企業」と呼ぶ)は、

キューバ人を雇用する義務がある。しかし特定の上級管理職または技術者ポストに非キュ

ーバ人を就任させることができる。

外資系企業はキューバ人労働者と直接雇用契約を結ぶことはできない。雇用契約はキュー

バ人労働者とキューバ政府が組織した人材派遣機関との間で結ばれる。キューバ人労働者

は、人材派遣機関との間に労使関係を結ぶ。例えば外国企業の駐在員事務所は、ACOREC 社

(Agencia de Contratacion a las Representaciones Comerciales,S.A.)を通じてキュー

バ人と雇用契約を締結する。合弁会社の場合は、その合弁会社設立のために公布された法

規に従って雇用契約が結ばれる。

キューバ人への給与支払は、人材派遣会社が国内通貨で行う。外資系企業から労働者へ

の直接支払行為は禁止されている。このため、外資系企業は人材派遣会社へ自由に変換可

能な通貨で従業員の給与の総額と労働力使用税、社会保障税を給与とボーナスやその他の

報酬、そしてコミッションを含めた総額等算出した金額を支払う。

また、労働者への経済奨励金制度創設の承認を外資系企業は受けることができる。奨励

金額は外資系企業と外国投資経済協力省との間で合意される。

6-4. キューバ共和国法律 77 号外国投資法(1995 年 9 月 6日制定抜粋)

第1章 目的と内容

第1条 本法律は国家主権と独立の尊重並びに天然資源の合理的使用という基盤のもと

に、わが国の経済力強化と持続的発展に貢献するよう営利活動を実施するため、キューバ

共和国領土内に外国投資を促進、奨励し、さらにその下で外国投資が実施さるべき主要法

規定を制定することを目的とする。

第2条 本法律に含まれる規定は、投資家に与えられるギャランテイ外資受け入れ可能

な国家経済部門、外資が採用できる形態、出資の種類、承認手続き、これらの投資のため

の銀行・特別税・労働制度並びに環境保護と天然資源の合理的使用等に関するものである。

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第2章 語彙

第3章 投資家へのギャランティ

第3条 公共の利益や社会的利害を事由にキューバ国憲法、現行法、キューバが調印し

た相互投資促進保護に関する国際協定に基づき政府が接収を宣言し、双方の合意で決定さ

れた商業価値に対し自由両替可能な通貨による事前の賠償が支払われる場合を除き、外国

人投資家は国内領土内で完璧な保護と安全を享受し、国家による接収はできない。

第8条 1.国家は外国人投資家に対し当該送金に関連した税の支払または他のいかなる

不当徴税なしに、自由両替可能な通貨による外国への以下の自由送金を保障する。

a)投資開発によって得た純利益または配当金

b)本法律第3、4、6条に関するケースで受け取るべき金額(注:国家による接収賠

償金、解散時の支払金、国家への譲渡金)

第9条 混合企業と国際経済提携契約当事者は承認された期間が失効するまで、本法律

が定める特別制度に示された税を支払う。

前文節の規定は、社会治安税及び現行法に基づく受入債務を除き 1994 年 12 月 21 日付

「鉱山法」または天然資源関連で制定される他の法令に含まれ各々の規 定を形態・量的

に充たしている利率、税、支払義務には適用されない。

第4章 外資受け入れ部門

第 11 条 国民の保険・教育事業および企業システムを除く軍部機関を例外に、あらゆる

部門への外国投資が承認される。

第5章 外国投資

第 12 条 外国人投資家は以下の形態のいずれかを採用する。

混合企業

b)国際経済提携契約

c)全額外資企業

第6章 不動産への投資

第 16 条 1.本法律の庇護のもとで不動産への投資を実行しその所有権または他の実質

権利を取得できる。

2.前項の不動産投資は以下のものに向けることができる。

a)キューバの永住権をもたない自然人の個人住宅または観光目的のための住宅および

建物

b)外国法人の住宅またはオフィス

c)観光目的の不動産開発

第7章 出資財産とその評価

第8章 外国投資の交渉と承認

第 20 条 1.国際経済提携の創設のため、内国投資家は外国人投資家と、経済フィージビ

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リティ、各々の出資財産、経営管理形態および公式化するための法的書類などを含めた投

資内容を交渉せねばならない。

2.全額外資企業の場合、外国投資経済協力省が指名する投資先の経済部門・業種・活動

の所轄当局との間で、案件を分析し文書による当該認可を取得せねばならない。

第 21 条 1.国内領土で外国投資を実施するための承認は閣僚理事会執行委員会または

同委員会が指名する分科会により付与される。

2.以下に示される部門、または以下の性格を有する場合、外国投資の承認は閣僚理事会

執行委員会の独占権限となる。

a)内国・外国陣投資家の出資財産総額が1千万米ドル相当の自由両替可能通貨による

金額を上回る場合;

b)全額外資企業;

c)輸送、通信、水道などの公共サービスを開発し、または、ある公共事業を建設及び

開発するために実施される場合;

d)他国の国家資本が参加する外国企業が介入する場合;

e)環境保護および天然資源の合理的使用に関する法規則に基づき、天然資源の開発が

含まれる場合;

f)国有財産またはその実質的権利の移転と解釈されるもの;

g)軍部の企業システム

3.前項に記されてない外国投資の承認は政府分科会の所轄となる。

第 22 条 全額外資企業のための承認を取得しようとする外国人投資家は、当該キューバ

機関と合同で、外国投資経済協力省に申請書を提出する。

第 23 条 混合企業または国際経済提携契約締結のためには、申請書は外国人投資家と内

国投資家が合同で調印した申請書が外国投資経済協力省に提出されねばならない。

4.外国投資経済協力省により受理された申請は、必要な瀬部手の当該機関・組織の審

査に委ねられ裁定を受ける。

5.上記の手続き完了後、外国投資経済協力省は閣僚理事会執行委員会または、必要な

場合、政府分科会に当該書類を提出市、評価と決定を受ける。

6.外国投資の否認または承認決定は、申請が提出された日から 60 暦日以内にくだされ、

申請者に通知されねばならない。

第 24 条 1.承認の中で、その条件及び当該投資の目的・形態が指定される。

2.承認された投資の目的が公共サービスまたは天然資源の開発あるいは公共事業の開

発・実行である場合、閣僚理事執行委員会が、定められた条件に基づき当該開発権を付与

できる。

第9章 銀行制度

第 26 条 混合企業、共同・個別を問わず国際経済提携契約の当事者である外国人投資家

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及び内国投資家、全額外資企業は、国内銀行システムのすべての銀行に自由両替可能な通

貨建ての口座を開設し、それを通じ業務から生じる代金回収および決済を実施する。

2.混合企業、国際経済提携契約の当事者である内国投資家は、キューバ国立銀行の事前

承認を得て、外国にある銀行に自由両替可能な通貨での口座を開設し運用することができ

る。

第 10 章 輸出・輸入制度

第 29 条 混合企業、国際経済提携契約の当事者である外国人投資家および内国投資家、

全額外資企業は、当該規定に基づき、製品を直接輸出し、または企業目的のために必要な

品を同じく直接輸入する権利を有する。

第 11 章 労働制度

第 31 条 1.外国投資に相当する諸活動に勤務する労働者は、一般的基準として、キュー

バ人またはキューバに永住する外国人である。

2.しかしながら、混合企業、全額外資企業の経営管理部門、国際経済提携契約の当事者

は、特定の上級管理職または技術的性格の一部のポストに非キューバ永住者を就任させる

ことが可能であり、この場合、これらの労働者の労働条件や権利と義務を決定する。

契約された非キューバ永住者は、キューバの現行移民法・外国人法の適用対象となる。

第 32 条 1.混合企業、国際経済提携契約の当事者、全額外資企業は、外国投資に相当す

る諸活動に勤務するキューバ人およびキューバに永住する外国人労働者のための経済奨励

基金創設の承認を受けることができる。

2.経済奨励基金は取得した利益から形成される。金額は混合企業、国際経済提携契約の

当事者である外国人投資家および内国投資家、全額外資企業により、外国投資経済協力省

とのあいだで合意される。

第 33 条 1.経営管理部門のメンバーを除き混合企業に勤務するキューバ人またはキュ

ーバに永住する外国人従業員は、外国投資経済協力省が提起し労働社会保障省が認可した

人材派遣機関によって契約される。

混合企業経営管理部門のメンバーは株主総会で任命され、労使関係も混合企業とのあ

いだで結ぶ。

例外としてのみ、混合企業への承認が与えられる際、現行労働法との調整を行う限り

において、当該企業が社員全員を直接契約する条項が定められる。

2.国際経済提携契約の従業員は、労働契約に関する現行労働法との調整を行ったうえで、

キューバ側当事者により契約される。

3.全額外資企業では、上級管理職を除き、キューバ人またはキューバに永住する外国人

労働者の仕事は、外国投資経済協力省が提起し労働社会保障省が認可した人材派遣機関と

企業との契約を通じて提供される。

全額外資企業の経営管理部門メンバーは企業により任命され企業と労使関係を結ぶ。

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4.キューバ人およびキューバに永住する外国人従業員への支払は国内通貨でおこなわれ、

同通貨は、本法律第 27 条に記された例外のケースを除き、事前に両替可能外貨を使って取

得されねばならない。

第 34 条 前条に記された人材派遣機関は、キューバ人およびキューバに永住する外国人

労働者を個人的に契約し、労使関係を結ぶ。同人材派遣機関がこれらの労働者に給金を支

払う。

2.混合企業または全額外資企業が特定の労働者に関し職務を満足させていないと考慮す

る場合、他の労働者との交代を人材派遣機関に請求できる。あらゆる労働者による訴えは

人材派遣機関で解決され、同機関が労働者にその権利が生じ所轄当局により決定された賠

償金を支払う。成立するケースでは、規定の手続きに従い、混合企業または全額外資企業

は人材派遣機関にその支払を補償する。すべて現行法に調整されねばならない。

第 35 条 上記の条項とは別に、外国投資の承認において、例外的に特別労働規約を定め

ることができる。

第 12 章 租税・関税制度

第 38 条 混合企業、国際経済提携契約の当事者である外国人投資家および内国投資家は

以下の租税義務の対象となる。

a)純利益税

b)労働力使用税および社会治安税

c)関税その他税関で徴収しうる税

d)陸上輸送税。これは陸上輸送の四輪車の財産または所有に課税される。

e)文書税。これは特定文書の申請、取得または更新に係わる税・手数料。

第 39 条 本法律の目的のため、前条に記された自然人および法人による租税の納税は以

下の恩恵を持つ。

a)純利益税は課税対象となる純利益に 30%の税率が適用される。国益により妥当と判断

される場合、閣僚理事会執行委員会はわが国に再投資される純利益への課税を部分的また

は全面的に免除することができる。

b)再生、非再生資源を問わず天然資源の開発を行う場合、純利益税の税率は閣僚理事執

行委員会の決定により 50%まで引き上げることができる。

c)労働力使用税と社会治安税については、以下を定める。

1.労働力使用税は現行税率が 11%の税率が適用される。

2.社会治安税としては 14%の税率が適用される。

3.上記2項にしめされた税率は賃金および労働者が受け取るその他のすべての収入の

合計金額に対して課税される。ただし、経済奨励金として支給されたものは除く。

d)混合企業の出資者または国際経済提携契約の当事者である外国人投資家は、事業の利

益から得た個人所得への課税は免除される。

第 42 条 税金、関税その他税関で徴収しうる手数料の払い込みは、閣僚理事会執行委員

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- 20 - キューバ

会が定める例外ケースを除き、金額が国内通貨建てで表記されている場合でも、自由両替

可能な通貨で実施される。

第 13 章 積立金と保険

第 45 条 1.混合企業、国際経済提携契約の当事者である外国人投資家および内国投資家、

全額外資企業は、操業中に発生しうる偶発事態に対処するため、義務的に利益の中から積

立金を形成する。

2.前項の積立金の形成、使用、清算方法は財務価格省により規制される。

第 14 章 財務報告及び登録制度

第 49 号 1.本章に記される自然人・法人は、各々の会計年度の終了日から 90 日以内に、

外国投資経済協力省に年次報告書を提出する。

第 15 章 フリー・ゾーンと工業団地制度

第 50 条 輸出と対外貿易を奨励する目的で、閣僚理事会執行委員会は国内領土の限定さ

れた地域にフリー・ゾーンと工業団地の設立を承認することができる。

第 51 条 1.フリー・ゾーンとは、閣僚理事執行委員会の決定により、税関、為替、租税、

労働、移民、公共秩序、資本投資、対外貿易関連の特別制度を適用できる地域であり、外

国人投資家が金融、輸入、輸出、倉庫、生産活動または再輸出の業務を実施するために参

加できる。

2.工業団地とは、閣僚理事会執行委員会の決定により、外国資本が参加する生産活動を

推進するために、税関、租税、労働、資本投資、対外貿易関連の特別制度を適用できるも

のをいう。

第 16 章 環境保護

第 54 条 外国投資はわが国の持続的発展の枠内で考えられ、奨励される。このことは、

その実施期間を通じ環境保護と天然資源の合理的使用への慎重な対処を意味する。

第 55 条 外国投資経済協力省は、根拠がある場合、受け取る投資プロポーザルを科学技

術環境省の審査に委ね、同省は、環境的見地からの妥当性を評価し環境インパクト評価実

施の必要性の有無や必要な環境ライセンス供与の根拠を決定するとともに、現行法に基づ

き防止・検査制度を決定する。

第 56 条 1.科学技術環境省は環境と天然資源の合理的使用への被害、危険またはリスク

を引き起こす状況に適切な解決を与えるために必要な措置を決定する。

2.被害または荒廃の責任者である自然人または法人は、環境状態の復元、物的被害の修

復および被害の賠償を義務づけられる。

第 17 章 紛争解決制度

特別条項、暫定条項、確定条項

7. 地質・鉱床概要

キューバの地質構造発達史は、後期白亜紀から第三紀前期の北アメリカと南アメリカ大

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陸の接近に関連づけられる。すなわち、白亜紀の North Pacific-Caribbean plate の北東

への移動がララマイド造山運動と火成活動をもたらし、始新世の中央アメリカにおける火

山活動と南アメリカ北部に沿う主要な横ズレ断層は、カリブ海がララマイド造山運動の末

期に、North Pacific plate から分離したことを示しており、この時期に Caribbean plate

が向きを変えて西から東に移動し始めたが、この運動は、現在は終息したものと考えられ

ている。

なお、キューバの も古い地層は中部ジュラ紀のもので頁岩、砂岩、変成岩、大理石、

石灰岩な等で構成される。白亜紀の地層は、頁岩、チャート、凝灰質砂岩、火山角礫岩、

溶岩などからなる厚い堆積岩で、薄層の石灰岩を数枚挟む。これらの堆積物は、白亜紀末

期のララマイド造山運動により褶曲した。厚い頁岩と岩塩層のある地域では、衝上が起き、

凝灰岩や石灰岩地域では、単純な褶曲そして溶岩地域では断層が卓越する。また、ララマ

イド造山運動では、大量の超塩基性岩が貫入しており、これがキューバ各地に分布する蛇

紋岩体である。さらに、中期始新世には広範な海進が起こり、大部分の地域で、浅海性の

石灰岩が堆積した。中新世に再度変動があり、下部第三紀の堆積物は褶曲し、現在の島の

中心部分が隆起した。そして、島の周縁やいくつかの堆積盆でのみ、浅海性の堆積が継続

した。このようにして、後期中新世から鮮新世にかけて、広範囲にわたって準平原が形成

された。

主要な構造は、北北東―南南西系と東西系であり、前者には、Pinar、La Habana、Varadero、

La Trocha、Camaguey 及び Nipe-Guacanayabo 断層等、後者には Oriente 断層等がある。

キューバの鉱床区は概ね、東部の Oriental 地区、中部のカマゲイやサンタ・クララ市周

辺の Central 地区及び西部の Occidental 地区の 3地区に分けられる。

Oriental 地区の鉱床としては、オフィオライトに伴なうクロム鉱床、ラテライト・ニッ

ケル鉱床及びキプロス・タイプの硫化物鉱床などがある。なお、Oriental 地区と Central

地区では蛇紋岩中の硫砒鉄鉱に伴なう金鉱床も知られている。Central 地区では、スカル

ン、ポーフィリー・カッパー、鉱脈、Sedex 及び黒鉱タイプが、Occidental 地区では、Sedex、

別子、黒鉱、鉱脈及びスカルンタイプの鉱床が知られている。

8. 鉱山概要

キューバのニッケルは東部の Holguin 県で生産されている。

Moa 鉱山は、ニッケル公社の子会社で、Moa 地区のニッケルプラントの所有社である

General Nickel Co.S.A.と Sherritt Inc.(カナダ)の合弁会社(Moa Nickel Co.、出資

比率 50:50)が1994年以来操業している。Sherritt 社は資本と 新機材を導入した他、

従業員にドル建ての報奨金を支給する等、新しい経営方針を導入し、Moa プラントの生産

性向上に寄与している。100%硫化ニッケル精鉱を生産しカナダで精錬している。20,000

トン/年のフェロニッケル生産計画があり、現在南ア企業と交渉中。

NicaroとPunta Gorda鉱山はニッケル公社管下の国営企業が操業。Nicaroと Punta Gorda

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は、シンター90%、サルファイド 9% 酸化物 1%を生産中。Punta Gorda プラントは、50,000

トン/年への拡張計画があり、現在そのためのファイナンス先を募集中。また、Las

Camariocas で Commercial Caribbean Nickel が第4番目のニッケルプラントを建設中であ

るが中断し、パートナーを捜しているほか、San Felipe において BHP-ビリトン 75%、

GeoMinera25%の J/V で現在プレ F/S 中、ニッケル生産量 42,000 トン/年の計画で 2007

年より生産開始予定。鉱床は埋蔵量 2 億 3500 万トン(Cut off 0.8%)ニッケル 1.33%、

コバルト 0.05%とされている。

1913年に開山した Matahanbre 鉱山が閉山後、銅の生産量は少なくなっていた。さら

に昨年、EL Cobre 鉱山が閉山し、銅の生産は Jucaro 鉱山の僅かな量だけになっている。

国内に製錬所はないことからかつては全量輸出されていた。

2000年の金生産は1t程。Castellanos 鉛亜鉛金鉱床の概要を示す。

位置 Pinar del Rio 県、Santa Lucia の数 km 南

開発者 地質鉱山公社

鉱床 San Cayetano 累層を母岩とする堆積性層状硫化鉱床(SEDEX タイプ)の頂部に

発達する金酸化鉱床。金酸化鉱床の金品位は 4g/t で、鉱量は 1,300 万トンとさ

れている。下部の鉛亜鉛鉱床の鉛亜鉛合計品位は 9.5%、鉱量 1,200 万トン。

現在キューバ政府の地質鉱山公社が小規模な金のヒープ・リーチングを行って

いる(生産能力年 500kg 程度)。下部鉱床の開発については、外資のパートナー

をしている。

キューバの主要鉱山を下表に示す。

9. 新規鉱山開発状況

Moa Bay 鉱山(Ni、Co、Fe;Holguin 郡 Moa 村 Sherritt International 社)

鉱山名 位置 鉱床タイプ 鉱量 品 位Castellanos Occidenta sedex 11.9Mt Au0.8g/t,Ag44g/t,Zn6.3%,Pb3.2%Matahambre Occidenta sedex 13Mt Cu5%(1940-1990) 1997closeSanta Lucia Occidenta sedex 26.2Mt Au1.0g/t,Cu0.5%,Zn6.4%,Pb2.2%Jucaro Occidenta cyprus 0.5Mt Cu1.3~1.6%Delita Occidenta vein 17Mt Au3.1g/t(1948-1951Au1.7t)Antonio Central kuroko 2.7Mt Cu1.6%,Zn3.8%,Ag20g/tSan Fernando Central kuroko 3.6Mt Cu1.8%,Zn3.4%,Ag126g/tVictoria Central sedex 0.9Mt Cu0.6%,Zn0.6%Guachinango Central sedex 5Mt Cu0.8%,Zn0.8%Carlota Central sedex 5.5Mt Cu0.8%,Zn0.5%Arimao Central porphyry 60Mt Cu0.3%Macagua Central porphyry 21Mt Cu0.2%,Mo0.03%El Cobre Oriental kuroko 3Mt Cu2.5~3.2%(1530-2001) 2001closeLa Cristina Oriental kuroko 0.8Mt Cu1.2%Infierno Oriental kuroko 13Mt Zn2.3%,Pb0.5%Moa Oriental laterite 107Mt Ni1.3%,Co0.1%Punta Gorda Oriental ultra-mafic 310Mt Ni1.3%,Co0.1%

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予想鉱量;60 百万 t(Ni 1.29%、Co 0.13%)

生産量;32,282t(Ni、2002 年)

2003 年 6 月、Sherritt 社はニッケルの供給が世界的に不足する傾向にあるので、Moa Bay

鉱山の生産を拡張する計画があると発表した。しかし、具体的な計画には言及していない。

キューバと中国がニッケル共同開発(MW Nov.29,2004)

キューバと中国はキューバのニッケルの生産能力を 2007 年までに 20 千 t/年増強し 100

千 t/年にするための 3件の契約に調印した。APEC サミットに出席した中国の胡錦濤国家主

席とキューバのカストロ国家評議会議長は 16 件の二国間貿易協定に調印し、この中で中国

五礦集団公司(ミンメタルズ)は建設工事が中断されているモア地域のカマカリオス・フェ

ロニッケル・プラント(能力 22.5 千 t/年)を共同開発することに合意した。JV の株主構成

はキューバニッケル 51%、ミンメタルズ 49%。キューバニッケルとミンメタルズはまた、サ

ンフェリペ・ニッケル鉱床を共同探査することに合意した。さらに、ミンメタルズはキュ

ーバからニッケル・シンター及びコバルトを 4 千t/年購入するとともに、1990~1994 年

に支払期限が到来した対キューバ融資の返済期限を 10 年延長する。モア地域には 3ヶ所の

ニッケル・プラントがあり、生産能力合計は 71 千 t/年。このうちモア・ニッケルはシェ

リット(加)との JV プロジェクトで、ミックスサルファイド生産能力 33 千 t/年。ミックス

サルファイドはシェリットのフォートサスカチュワン精製工場(加)で精製処理される。

キューバ政府は 2020 年までにニッケル生産能力を 150 千 t/年に増強する計画で、埋蔵量

はロシア、カナダについで世界第 3 位。エネルギー・インフラも改善され、停電も大幅に

減少したという。

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- 24 - キューバ

10. 探査状況

以下のプロジェクトが実施されている。

Project Name Type Company Location

Aguas Claras Au Government of Cuba Central

Camaguey Au Caribgold Resources Inc. Oriental

Castellanos Cu,Pb,Zn Inmet Mining Corp. Occidental

Cupey Ni,Co Commercial Caribbean Nickel Oriental

Delita Au Northern Orion Explorations Ltd. Occidental

Descanso/Melonera Au Union Geologo-Minera de Cuba

EL Cobre Cu Union Geologo-Minera de Cuba Oriental

EL Cobre/Barita Au Union Geologo-Minera de Cuba Oriental

Gaspar Au KWG Resources Inc. Occidental

Golden Hill Au.Cu Union Minera Geologica Oriental

Holgun Cu Chariot Resources Oriental

Lela Au Northern Orion Explorations Ltd. Occidental

Lomo Hierro Ag Holmer Gold Mines Ltd. Occidental

Los Mangos Ag,Cu,Zn Holmer Gold Mines Ltd. Central

Mantua Copper Cu Northern Orion Explorations Ltd. Occidental

Mantua Gold Au,Ag,Cu Northern Orion Explorations Ltd. Occidental

Mantua West Au,Cu,Co Holmer Gold Mines Ltd. Occidental

Mina Grande/Metahamb Cu,Co Union Geologo-Minera de Cuba Occidental

Moa Bay Ni,Co Sherritt International Corp. Oriental

Nicaro Ni,Co General Nickel Co.Sa. Oriental

Pinares de Mayari Ni,Co WMC Ltd. Oriental

Punta Gorda Ni,Co General Nickel Co.Sa. Oriental

Purial Au.Cu KWG Resources Inc. Oriental

San Felipe Cu,Ni,Co QNI Ltd. Oriental

San Fernando Cu,Zn Holmer Gold Mines Ltd. Central

Santa Clara Area Au.Cu Union Geologo-Minera de Cuba Central

Santa Lucia Au,Pb,Zn Union Geologo-Minera de Cuba Occidental

Sierra Maestra Area Cu,Pb,Zn Union Geologo-Minera de Cuba Oriental

(JMEC 内部資料)

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主要なプロジェクトについて述べる。

Lomo Hierro プロジェクト

対象鉱種 銀

開発者 Holmer Gold Mines、地質鉱山公社

埋蔵量 推定鉱量 2.25 百万トン(平均銀品位 190g/t)

概 要 これまでに163本のボーリングが行われ、98年後半F/Sが終了する予定。

プレ F/S は 1996 年に終了した。オープンピットの生産で年産 50t、キャ

ッシュコストが 60g/t を前提とした場合、鉱山開始するためのキャピタ

ルコストは6百万ドルとなっている。

Camaguey プロジェクト

位 置 キューバ中央東部、カマグエイの北東70km

対象鉱種 金

開発者 Caribgold resources LTD.、地質鉱山公社

埋蔵量 鉱量 1,650,000t、金品位 4.0g/t

鉱 床 方解石石英脈中の金

概 要 Caribgold 社はカナダのジュニアカンパニーでキューバ中央東部に

82km2の鉱区を持っている。

San Felipe プロジェクト(ニッケル鉱床)

位 置 キューバ中央東部、カマグエイの南

対象鉱種 ニッケル、コバルト

開発者 BHP-ビリトン 75% GeoMinera25%

埋蔵量 235,000,000 トン、ニッケル品位 1.33%、コバルト品位 0.05%(Cut off

ニッケル 0.8%)

鉱 床 ラテライト・ニッケル鉱床

概 要 鉱区面積 106 ㎡、97 年に調査開始され現在プレ F/S 段階。2007 年生産開

始予定、10 億ドルの投資計画(含精錬所建設)、42,000 トン/年の生産

計画

Mantuna プロジェクト

位 置 Pinar del Rio 県、Santa Lucia の 40km 南西

対象鉱種 金、銅

開発者 Northern Orion Exploration.と地質鉱山公社の J/V

埋蔵量 二次富化帯は金 1.44g/t、銀 11g/t、200 万トン、初成鉱体は銅 2.8%、

620 万トン、資源量としては銅 1.01%、2,260 万トンとされる。

鉱 床 ジュラ系(Esperanza 累層)火山岩を母岩とするキプロス型硫化鉱床。二

次富化帯に金が濃集している。

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概 要 1998 年 3 月に 10 百万ドルの金リーチング設備が導入して、mantuna 銅鉱

床上部の金リッチ部の採掘、ヒープリーチングが開始されたが、金価格の低

迷により現在は中断している。また、金鉱床下部の銅鉱床もボーリング

で確認されており、SX-EWを前提とした開発のための評価を行って

いる。

11. 製錬所概要

キューバのニッケルは主に東部の Holguin 県で生産されており、製錬所を伴っている。

鉱山名 製錬所名 生産開始年 製錬方法 生産能力

Moa Cdte. Pedro

Sato Alba 1961 酸浸出法 30,000t/y

Nicaro Cdte. Rene

Ramos Latour1943 炭酸アンモニア法 18,000t/y

Punta Gorda Cdte. Ernesto

Che Guevara 1987 炭酸アンモニア法 32,000t/y

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鉱山製錬所位置図

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操業鉱山 Moa Bay Oriente pv Holguin 郡 Moa 村 北緯 20 度 37 分、 西経 74 度 58 分 Nicaro Oriente pv. Moa Bay W 約 60km 北緯 20 度 35 分、 西経 75 度 33 分 Punta Gorda Oriente pv 北緯 20 度 35 分、 西経 74 度 51 分 Cubaniquel(注;Nicaro 鉱山や Punta Gorda 鉱山などを集合したものと推測される) 探鉱開発 Mantuna Santa Lucia(Pinar del Rio 県)の南西 40Km Lat; 22° 17' 20N,Long; 84° 17' 4W San Felipe Camaguey Prov, 550 Km east of the city of Havana (http://www.cubatrade.org/eyeonz12.html#15) Lat; 20° 52' 0N,Long; 77° 46' 0W 精錬所 Nicaro Punta Gorda

12. 我が国のこれまでの鉱業関係プロジェクト

実施実績なし。

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第 2部 地質解析

1. 地質・地質構造

大きくみるとキューバを含む大アンチレス群島(キューバ、ジャマイカ、イスパニオラ、

プエルトリコ、バージン諸島)は、後期白亜紀~第三紀前期の造山帯によってその骨格が

形成されている。西印度諸島で化石によって確かめられている も古い地層は、キューバ

西部の Sierra de los Organos の中部ジュラ紀の San Ceyetano Formation と Jagua

Formation である。続いて下部白亜紀の地層がキューバからバージン諸島まで続いて分布

している。白亜紀の地層は、頁岩、チャート、凝灰質砂岩、火山角礫岩、溶岩などからな

る厚い堆積物で、間に薄い石灰岩を何枚かはさむ。白亜紀の末期にララマイド(Laramaide)

造山運動によって褶曲した。その後造山運動の中心は西から東へと次第に移動していった。

キューバでは 初の強い変動は上部白亜紀の Campanian と Santonia の間におきているが、

ジャマイカやイスパニオラでは、白亜紀と始新世との間におきており、一方プエルトリコ

では、始新世になってからおきている。キューバではララマイド末期の変動もみられてい

る。

ララマイド造山運動によって作られた構造型は、主に変動を受けた物質(堆積物)によ

って変化が見られる。キューバでは厚い頁岩と岩塩層とのある地域では、衝上がおきてい

て、その規模は西アルプスの“Decke”にも相当するといわれている。凝灰岩や石灰岩の分

布する地域では、単純な褶曲がみられる。一方、溶岩の多い地域では、褶曲よりもむしろ

断層が卓越している。

西印度諸島の多くのところでララマイド造山運動に続いて広域的な隆起と急激な浸食が

行われた。隆起した地域のまわりの堆積盆には、礫岩、砂岩、頁岩が厚く堆積した。

中期始新世には新たに広範な海進がおこり、アンチレスはいくつかの分離した島となり、

大部分の地域で、塊状の浅海性の石灰岩が堆積した。

中新世にもう一度変動があり、下部第三紀の堆積物は褶曲し、今日の島の中心部が隆起

した。そして島の周縁やいくつかの堆積盆でのみ、浅海性の堆積が行われた。

このようにして、後期中新世から鮮新世にかけては、広範囲にわたって準平原が形成さ

れた。すなわち、西キューバの Guaniguanico Peneplain などがそれである。また石灰岩

地帯にはカルスト地形がつくられた。その良い例が西キューバの Sierra de los

Organos などにみられる。

アンチレスにおける も若い運動は、断層運動と島の隆起であり、同時にいくつかの

trough が形成された。そして も若い堆積物は第四紀のサンゴ石灰岩で、各島の沿岸をと

りまき、海岸段丘は今日300mの高さにあって、新しい時代に急激な隆起がおこってい

ることを示している。

西インド諸島では、造山運動と火成活動との関係がかなりはっきりとわかる。火成岩活

動は白亜紀におこっているが、それは海底火山活動であって、玄武岩、安山岩、石英安山

岩、スピライトが噴出した。ララマイド造山運動の少し前、またはララマイドの変動の

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中に大量の超塩基性岩が貫入し、キューバ各地に分布する蛇紋岩岩体となっている。

次に大アンチレス群島各地では、ララマイド造山運動に伴って石英閃緑岩、花崗閃緑岩

の貫入があった。ただし、キューバではこの種の深成岩の貫入はあまり顕著ではない。

以上はキューバの地質について記載的な事実であるが、この地域の地質構造の発達史を

Malfait と Dinkelman は、プレートテクトニクスの見地から次のように説明している。

後期白亜紀~第三紀前期の北アメリカと南アメリカの接近と、East Pacific

Caribbean プレートの北東への移動がララマイドの構造運動と火成活動をもたらし、それ

らはカリブ海地域の地質に記録されている。

後期始新世の中央アメリカにける火山活動と南アメリカ北部に沿う主要な横ズレ断層の

はじまりは、カリブ海地域がララマイド造山運動の末期に、East Pacific プレートから

分離したことを示している。大アンチレス群島地域で始新世以降の構造運動がほとんどみ

られないことは、始新世になってから、カリブプレートが向きをかえて東に移動し始めた

ことと調和している。

Cayman Trough の形成史と、キューバにおける造山運動の歴史は、Trough が西から東へ

と次第に形づくられていった結果、カリブプレートが、アメリカプレートに転化(つけ加

えられる)していったと考えれば説明できる。あらたなプレートが東の方へ次々に追加さ

れていった結果、新しいトランスフォーム断層がカリブプレートの中に生じて、Trough が

延びてその東の端はキューバの Trench へつながるようになった。プレートの境が次々に西

から東へ移っていった結果、カリブプレートの一部はアメリカプレートに転化していった。

キューバでは、西部よりも東部でより後期まで造山運動が続いている。キューバの基盤の

地質が全体として西から東へと新しくなる傾向にあることもこれによって理解することが

できる。図 1-1 に地質及び鉱床を示す。

地質構造

主要な構造は、北北東―南南西系と東西系であり、前者には、Pinar、La Habana、Varadero、

La Trocha、Camaguey 及び Nipe-Guacanayabo 断層等、後者には Oriente 断層等がある。図

1-2 に地質構造図を示す。

2. 鉱床

2-1. 鉱床生成区

キューバの鉱床区は概ね、東部の Oriental 地区、中部のカマゲイやサンタ・クララ市周

辺の Central 地区及び西部の Occidental 地区の 3地区に分けられる。

以下に各地区の主要鉱山等について述べる。

2-1-1. Oriental 地区

キューバのニッケル・コバルト主要鉱山がこの地区に集中しており、Moa 鉱山、Nicaro 鉱

山及び Punta Gorda 鉱山等がある。これらの一般的な品位はニッケル 1.5%以上、コバルト

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0.2-1.5%程度である。オフィオライトに伴なうクロム鉱山として Cayoguan 鉱山や Potosi

鉱山などがあり、Cr2O3 品位は 38-40%程度である。

ボーキサイトは、オフィオライト起源のものとして Cantarana、炭酸岩起源のものとして

Alta Clarita、Sierra de Guasa 、Sierra de Caujeri、Punta de Maisi 等がある。

金鉱山としては、Nuevo Potosi 鉱山があり、石英脈中の黄鉄鉱に含有されている。

銅鉱山としては、El Cobre があるが、これは 1530 年に発見され、19 世紀には世界有数の

産銅地であったが、2001 年に閉山した(鉱量 3百万、2.5-3.2% Cu)。なお、Sierra Maestra

にも多数の銅鉱山が知られている。

キューバの主要なマンガン鉱床も、この地区にあり、1942 年から 1945 年には 60 万 8 千 t

を生産した。Charco Redondo、El Cristo 鉱山などがあり、いずれも火山-堆積性の鉱床

である。

2-1-2. Central 地区

この地区にもオフィオライトに伴なう多くのクロム鉱山がある。

ボーキサイトは、炭酸岩起源のものとして Sierra Cubitas がある。

金鉱山としては、Florencia 鉱山があり、火山岩中の 1~1.5m の脈で品位は 15.6g/t Au(鉱

量 60 万 t、品位 5.6g/t Au)。

黒鉱タイプとして、Antonio や San Fernando 鉱山が、Sedex として Victoria、Carlota、

Guachinango 鉱山が、ポーフィリー・カッパーとしては Arimao 鉱山がある。

2-1-3. Occidental 地区

この地区では、Pinar del Rio、Bahia-Honda そして Juventud(Pinos)島の 3つに細分さ

れる。

ラテライト・ニッケル鉱床として、Cajarabana や Sun Miguel de los Banos がある。

ボーキサイト鉱床として、Sierra Azul や San Francisco などがある。

この地区には非鉄金属鉱床が多く存在している。Sedex として銅鉱床である Matahambre

鉱山(1997 年閉山、13Mt、5% Cu)や Santa Lucia(5% Pb+Zn)、Castellanos(8.5% Pb+Zn)、

Hierro(3-4% Cu)、Nieves(鉱量 24Mt、品位 4.7% Zn0.6% Pb0.6% Cu) など、キプロス・タ

イプとしては Jucaro がある。

Pinos 島には、金鉱山として Delita 鉱山があり、これはジュラ紀の緑色片岩中の脈で、金

は黄鉄鉱や硫砒鉄鉱に含有されている。1948~51年に1.7t の金が産出された(鉱量17Mt、

品位 3.1g/t Au)。さらに、Lela のタングステンのスカルン鉱床もある。

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図 1-1 地質及び鉱床位置

図 1-2 構造

2-2. タイプ別・時代別分布の特徴

西印度諸島の金属鉱床は、成因的には次のようなタイプに分けられる。

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①海底火山活動に伴うもの。一部の硫化物鉱床もこのタイプに属する可能性があるが、主

たるものは、火山―堆積性のマンガン鉱床である。

②酸性貫入岩に伴う、金、銅、鉛、亜鉛などの鉱床。接触交代鉱床やポーフィリー・カッ

パー鉱床もこれに分類できる。

③超塩基性岩/蛇紋岩に関係あるものとして、クロマイト鉱床とラテライトニッケル鉱床。

古第三紀の石灰岩の風化によるボーキサイト鉱床

以下、これらについて述べる。

1) 火山性塊状硫化物鉱床(VMS)

キューバの火山性塊状硫化物鉱床(VMS)は、図 2-1 に示すように、地質時代や地域を問わ

ず、分布している。但し、上部白亜紀層には、その存在は知られていない。

図 2-1 火山性塊状硫化物鉱床の分布

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以下にタイプ毎に記す。

キプロス・タイプ

オフィオライト分布域に胚胎しており、首都ハバナの西の Júcaro 鉱床は、塊状・レンズ

状で、層準規制を受けているが、鉱脈や鉱染状の形態も存在する。母岩は、前期白亜紀・

アルビアン-セノマニアン期(112-90.4Ma)の斑状玄武岩、玄武岩質凝灰岩、凝灰岩質泥岩、

石灰岩で構成される Encrucijada 累層で、鉱石鉱物は、黄鉄鉱、白鉄鉱、黄銅鉱、少量の

閃亜鉛鉱、磁硫鉄鉱、硫砒銅鉱、斑銅鉱である。変質鉱物は、石英、緑簾石、セリサイト、

緑泥石等である。

一方、首都ハバナの東側の鉱床は、Margot 累層に胚胎する。Margot 鉱床は、塊状と鉱染

状で、黄鉄鉱を主とし、黄銅鉱と閃亜鉛鉱を伴なう。鉱化作用は、蛇紋岩との境界付近の

玄武岩溶岩で生じている。その近くの América 鉱床では、蛇紋岩の角礫岩にレンズ状の黄

鉄鉱があり、そのレンズは、磁硫鉄鉱や微量の黄銅鉱を含む 75%以上の黄鉄鉱である。キ

ューバ東部にも Cuba Libre 鉱床や Monte Rojo 鉱床のような未開発の小鉱床がある。

Camagüey 付近の Cuba Libre 鉱床は、玄武岩、輝緑岩、斑糲岩と伴なわれ、銅品位 1%、鉱

量 1.0Mt と推定されている。Monte Rojo 鉱床は、蛇紋岩と斑糲岩の境界の塊状硫化物レン

ズである。

なお、中部の Escambray Terrane にもキプロス・タイプと思われる鉱床がある(Sedex

に分類されることもある)。鉱床は、大理石や黒雲母片岩の変成岩体の断層帯に沿って生じ

た超塩基性岩や塩基性岩に伴なっている。3つの主鉱床があり、走向延長 10km 以上で、黄

鉄鉱レンズは 40km 以上連続する。Guachinango 鉱床は微量の磁硫鉄鉱、黄銅鉱、閃亜鉛鉱、

方鉛鉱を伴なう縞状・塊状のレンズで、銅品位 0.81%、鉱量 5Mt と推定されている。Carlota

鉱床も類似のもので、銅品位 1.13%、鉛・亜鉛品位 0.28%である。Victoria 鉱床は銅品位

0.86%、鉛・亜鉛品位 0.39%である。

黒鉱タイプ

中央部では下部白亜紀に、東部では古第三紀の時代のものが知られている。

中央部では、下部白亜紀の Los Pasos 累層が分布し、これはスピライト化作用を受けた塩

基性火山岩と珪長質火山岩で構成される。この Los Pasos 累層に Antonio、Los Mangos-San

Fernando や Los Cerros のような塊状硫化物鉱床が胚胎する。これらの鉱床は同一層準で

珪長質火砕岩に伴なわれる。

東部では、古第三紀のもので、El Cobre 鉱床があるが、これは 1544 年に鉱山開発され

た、

新世界では 初の鉱山(鉱量 3百万、2.5-3.2% Cu)であった。但し、この鉱床は、上部は黒

鉱タイプで、下部は鉱脈タイプと考えられている。El Cobre 鉱床の西側にも、La Cristina

鉱床や Infierno 鉱床があり、母岩は安山岩や安山岩・玄武岩質凝灰岩で、変質している。

別子タイプまたは Sedex タイプ

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西部の Gauaniguanico Terrane には、多くの Sedex タイプが存在する。Matahambre 鉱山

は多年にわたり銅を生産した。上部に酸化帯を有する Castellanos 鉱床は、金も生産して

いる。非鉄金属鉱床の胚胎層としては、3 層準ある。南側の Matahambre の胚胎する San

Cayetano 累層、より北側の鉛・亜鉛の Castellanos 鉱床や Santa Lucia 鉱床の胚胎する

Castellanos 累層。両累層の鉱化作用は、大陸縁の炭酸塩-陸源性堆積物中で生じ、堆積

噴気は大規模であった。より北側の鉱化作用は、上部ジュラ紀から下部白亜紀の中部

Esperanza 累層で起こり、炭酸塩に優勢な堆積物であるが、鉱床として Hierro Mantua や

Juan Manuel-Unión などがある。母岩は砂岩、泥岩、炭素質片岩を挟在する石灰岩や炭酸

質片岩で、火山岩は、玄武岩から安山岩組成の調和的なレンズとして出現する。鉱石鉱物

は、黄鉄鉱と黄銅鉱で、微量の磁硫鉄鉱、磁鉄鉱、硫砒銅鉱を伴ない、走向方向 30km 以上

のレンズとして、途切れ途切れに連続する。銅が主要金属であり、鉛・亜鉛はわずかであ

る。Hierro Mantua 鉱床は主に堆積岩中にあるが、鉱化作用は斑状玄武岩に調和的である。

火山岩との組み合わせから、これらの鉱床は Sedex タイプに分類されることもあり、別子

タイプと分類されることもある。

2) 斑岩銅鉱床

カリブ海地域の斑岩銅鉱床としては、大アンティール諸島では、キューバの Arimao 鉱床、

ジャマイカの Connors 鉱床、ハイチの Memo 鉱床、ドミニカの Nieta 鉱床、プエルトリコの

Tanama 鉱床及び小アンティール諸島ではバージン諸島の Point 鉱床、サンマルタン島やサ

ンバルセレミー島では銅の鉱染が確認されている。

カリブ海地域の斑岩銅鉱床を下に示す。

Name Location Grade Age

Cuba

Arimao N22-00-00 W80-00-00 60Mt,Cu0.30%,Au Upper Cretaceous

Macagua 21Mt,Cu0.2%,Mo0.03%

Jamaica

Connors Cu 63Ma

Bellas Gate

Above Rocks Stock

Haiti

Douvray N19-33-00 W71-47-00 Cu0.28Mt

Blondin N19-33-00 W71-47-00 Cu0.51Mt

Memo (Terre Neuve)

The Dominican Republic

66Ma

Nieta Eocene

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Pueblo Vieji 30Mt,Cu,Au

Puerto Rico

Tanama N18-15-30 W66-47-29 Cu0.81Mt Eocene(44.5Ma)

Helecho N18-14-38 W66-48-00 Cu0.54Mt Eocene(35.6Ma)

Piedra Hueca N18-11-50 W66-41-12 Cu0.53M t Eocene(42Ma)

Cala Abajo N18-11-20 W66-40-50 Cu0.38Mt Eocene(41Ma)

Virgin Islands

Point Upper Eocene

カリブ海域の斑岩銅鉱床の生成時期は、西から東に若くなる傾向にある。

これはカリブ海プレートの東進により説明される。

さて、キューバの斑岩銅鉱床について述べる。

キューバには、Arimao や Macagua などの斑岩銅鉱床がある。

これらは、キューバ島中部の Santa Clara の南東に位置する。Macagua 鉱床は上部白亜

紀のgranodiorite、quartz-dioriteなどで構成されるManicaragua batholith中に、Arimao

鉱床は、早期白亜紀の塩基性岩中に分布する。Arimao 鉱床は 1980 年代に発見され、1996

年には新たに 3孔の試錐が実施されている。鉱化は、玄武岩中の珪化作用を被った部分に

発達する。この珪化作用の範囲は、長さ 650m、幅 100m で、走向は東北東―西南西方向、

50~70°西傾斜である。鉱石鉱物は magnetite、chalcopyrite、pyrite などで鉱染状の形

態を示す。試錐によれば、鉱化作用は地表下 100m まで認められ、品位は Au0.10~2.74g/t、

Cu0.33~1.29%であった。その他の斑岩銅鉱床として San Anton、Los Cedros などがある。

3) ニッケル鉱床

キューバは世界第 4位のニッケル埋蔵量、第 6位の生産量である。

Mine Production

2002 2003 Reserves Reserve base

Cuba 73,000 75,000 5,600,000 23,000,000

World 1,340,000 1,4000,000 62,000,000 140,000,000

USGS, Mineral Commodity Summaries 2004

キューバのニッケル鉱床は、白亜紀の超塩基性岩類を源岩として生成した、現地風化残

留性のラテライトニッケル鉱床が大半を占め、島の東部に集中する。

例えば、キューバ島東部の Nicaro は、Baracoa-Mayari Ophiolite complex の西部岩体

に相当する超塩基性岩類を源岩としたラテライトニッケル鉱床である。この地区では、ジ

ュラ系を基盤とし、白亜紀のラテライト化超塩基性岩類、玄武岩類とそれらを覆う第三系、

第四系から構成される。ラテライト化超塩基性岩類の分布は東西方向 65km、 大幅 20km

で、鉱床はほぼ中央に位置する。含ニッケルリモナイト帯の厚さは 20~30m に達し、比較

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的品位の高いサプロライト帯の厚さ(5~10m)に比べ、かなり厚く発達している。

キューバの主要なニッケル鉱床を表に示す。

Ni Deposit Location Size Grade

Moa Bay Oriente 7Mt(Ni) Ni1.4%,Co0.1%

Nicaro Area Oriente 1.4Mt(Ni) Ni1.4%,Co0.07%

Punta Gorda Oriente 160Mt Ni1.33-1.37%

Mayari Area Oriente 1.3Mt(Ni) Ni1.3%,Co0.1%

Las Camariocas/Cupey Oriente 1.4Mt(Ni) Ni1.32%,Co0.115%

Pinares de Mayari West Oriente 1.0Mt(Ni) Ni1.0%,Co0.1%

Taco Bay Oriente Ni1.27%,Co0.1%

San Felipe Central 3.04Mt(Ni) Ni1.3%

Lamberts Hill Central Ni0.15-0.31%

San Miguel de los Banos Occidental Ni0.95-1.10%

Cajalbana Occidental Ni0.04-2.00%

3. 鉱床胚胎有望地域

キューバ島中部のサンタ・クララ市周辺には、火山性塊状硫化物鉱床(VMS)や斑岩銅鉱床

(Porphyry Copper deposit)が分布しており、新たに鉱床の発見される可能性の高い地域で

ある。

この地域について以下に述べる。

サンタ・クララ市の南 20km で、首都のハバナの東 290km に位置する(図 3-1)。

ここには下部白亜紀の Los Pasos 累層が東西 35km にわたり分布しているが、これは火山

岩で特徴づけられており、斜長流紋岩~流紋岩―デーサイト及び玄武岩質岩の二つのタイ

プがあり、貫入岩や岩脈も認められる。下部は流紋岩を挟む玄武岩フロー、中部は細粒の

流紋岩フロー、そして上部は枕状玄武岩溶岩を伴なう斑状流紋岩の爆発性の噴出岩等で構

成される。厚さは 3500m 以上であり、強い交代作用や熱水変質を受けているこの Los Pasos

累層には Antonio 鉱床(鉱量 2.7Mt、1.6%Cu、3.8%Zn、20g/tAg)、San Fernando 鉱床(鉱量

3.6Mt、1.8%Cu、3.35%Zn、126g/tAg)のような黒鉱タイプの塊状硫化物鉱床が胚胎する。他

にも Los Cerros、Independencia、Sambumbia、El Sol、Vaquería などの鉱床、鉱徴が知ら

れている。

西側の地区には、Antonio、San Fernando 鉱床が、東側の地区には Los Cerros 鉱床が分

布している。

なお、Los Pasos 累層の北側には上部白亜紀の Matagua 累層が分布しており、これは安

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山岩―玄武岩溶岩や火山砕屑岩で構成される。また、Los Pasos 累層の南側には上部白亜

紀のgranodiorite、quartz-dioriteなどで構成されるManicaragua batholithが分布する。

これらの岩体中に Arimao や Macagua などの斑岩銅鉱床が胚胎している。

鉱床、鉱徴として、

・Antonio 鉱床:Los Pasos 累層分布域の南東に位置し、現在は閉山しているが、5万 tの

硫化鉱を出鉱した。走向延長 300m、傾斜延長 250m、厚さ 11m の鉱体で、流紋岩―デーサ

イトの噴出岩中に胚胎する。鉱化作用は 2つの塊状黄鉄鉱体からなり、黄銅鉱、閃亜鉛

鉱に富み、少量の砒四面銅鉱、方鉛鉱と微量のエレクトラム、テルル銀鉱を含む。初期

は細粒黄鉄鉱が、後期には黄鉄鉱、黄銅鉱、閃亜鉛鉱の生成が推定される。鉱石には 3

タイプがある。上部は銅・亜鉛品位 1%内外の黄鉄鉱タイプ、中部は銅品位 1~12%、亜鉛

品位 1~12%以上の銅―亜鉛タイプ、下部は塊状鉱石で、硫化物を 20~30%含む脈状、鉱

染状の鉱化作用。

・San Fernando 鉱床:火山礫凝灰岩中に胚胎し、玄武岩フローに被覆される。鉱床は塊状

の黄銅鉱と層状の閃亜鉛鉱からなる。岩石は強い変質を受けており、バライトやチャー

ト層準も連続する。

・Independencia 鉱床:斑状流紋岩中に胚胎し、変質しており、鉱石鉱物は黄銅鉱、閃亜

鉛鉱、黄鉄鉱である。ずり堆の分析品位は銅 3.5%、亜鉛 7%、銀 166g/t、金 3g/t で、ボ

ーリングでは深度97mで厚さ 3mのものを捕捉している。また南側500mの Independencia

Sur ではトレンチで金の異常を検出している。

・Los Cerros 鉱床:鉱化作用は珪化と関係しており、厚さ 1~2m、走向方向 100m、傾斜方

向 80m の 2 つのレンズ状塊状硫化物鉱体であり、鉱石の大半は既に出鉱されている。銅

品位 1~6.8%、亜鉛品位 36.3%である。なお、熱水変質した珪化角礫岩は東方向に 6km、

幅 80~100m で連続しており、鉱化作用を伴なっていると推定される。

・Arimao 鉱床:上部白亜紀の Matagua 累層中の玄武岩中の珪化作用を被った部分に胚胎す

る。鉱量 60Mt、Cu0.30%と見積もられている。

・ Macagua 鉱床:上部白亜紀の granodiorite、quartz-diorite などで構成される

Manicaragua batholith 中に胚胎する。鉱量 21Mt、Cu0.2%、Mo0.03%と見積もられている。

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図 3-1 Central 地区の地質

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資料

・海外生活の手引き 中米・カリブ編Ⅱ 財団法人 世界の動き社

・図説大百科 世界の地理図 中部アメリカ 朝倉書店

・昭和 51 年度 地質解析委員会報告書 金属鉱業事業団 資料センター

・キューバ共和国の資源開発環境(2002 年 11 月) 金属鉱業事業団 資料情報センター

・平成 14 年度資源開発協力基礎調査プロジェクト選定調査報告書

キューバ共和国・エルサルバドル共和国・エクアドル共和国・フィリピン共和国

財団法人 国際鉱物資源開発協力協会

・ラテライトニッケル資源 2004 住鉱コンサルタント株式会社

・キューバの鉱業小史 キューバ共和国基礎産業省 国家鉱物資源事務所

・鉱業統計年報 1998 年 キューバ共和国基礎産業省 国家鉱物資源事務所

・キューバの地質・地理の特徴 キューバ共和国古生物・地質研究所

・キューバの地質 キューバ共和国古生物・地質研究所

・地質と鉱業 GeoMinera 社

・Mining Journal March 6,1998

・Mining Journal August14,1998

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・Gold Resources Latin America Minobras

・Historical Geology of the Antillean-Caribbean Region 1968 Hafner Publishing Co.

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・Geology and Mineral Resources of Cuba GeoMinera,S.A.

・Volcanogenic Massive Sulphide Deposits of Cuba

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Western Cuba. A massive Sulphide Project Havana2001 GeoMinera,S.A.

・Proposal to Complete Regional Geological Investigations and Prospecting Work in

the Isle of Youth Region,South Western Cuba. Havana2001 GeoMinera,S.A.

・Prospection and Exploration of Massive Sulphide Deposits. Los Pasos Formation.

Central Cuba. Santa Clara2001 Central Geological and Mining Enterprise