血液透析患者における服薬コンプライアンス...

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血液透析患者における服薬コンプライアンス に関する検討 医)清陽会 東岡山ながけクリニック 1) E薬局 2日野奈美 1) 三宅よしえ 1) 藤本昌子 1) 光岡香織 1) 山田美由紀 1) 伴奈津子 1) 山根昌江 1) 川藤志津代 1) 西田典数 1) 長宅芳男 1) 山路和彦 2

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  • 血液透析患者における服薬コンプライアンス に関する検討

    医)清陽会 東岡山ながけクリニック1) E薬局2) ○日野奈美1) 三宅よしえ1) 藤本昌子1) 光岡香織1) 山田美由紀1)

    伴奈津子1) 山根昌江1) 川藤志津代1) 西田典数1) 長宅芳男1) 山路和彦2)

  • はじめに

    当院で服薬調査を行ったところ、透析期間が長く、自立して認

    知機能が正常であり、社会性に問題がなくても、服薬コンプラ

    イアンスが不良であるとの結果が得られた。また、薬剤の一包

    化の有無とは関連性が認められなかったため、患者が薬を選り

    分けて服用していることを懸念した。そこで、私たちは一包化

    を行っていない患者を対象に再度調査をおこない、服薬コンプ

    ライアンスに与える要因に関して検討した。

  • 対象・方法

    ①当院維持血液透析患者のうち、薬剤を一包化していない同意の

    得られた患者36例をMoriskyアドヒアランススケールを基に分

    類した服薬良好群18例 不良群18例を対象とした。

    ②その2群間で「薬剤の種類の理解」、「飲み忘れの時間帯」、

    「自己調整している薬剤」、「自分で大切と思っている薬剤」に

    ついて聞き取り調査を行った。

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    全くわからない

    降圧剤 不整脈 リン吸着剤 カリウム吸着剤 抗血小板剤 胃薬

    薬剤種類の理解(1)

    良好群 不良群

    両群に差は認めなかった。

    (複数回答)

  • 糖尿病の薬は、良好群は理解されているが、不良群は理解されてなかった。

    両群ともK吸着剤、眠剤、利尿剤は理解されていた。

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    K

    一部不明

    全くわからない

    便秘薬 糖尿病薬 眠剤 利尿剤 その他

    薬剤種類の理解(2)

    良好群 不良群

    (複数回答)

  • 不良群で特に昼が多く、その理由として外出と昼食の欠食などが理由とされていた。

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    朝 昼 夕 寝る前 その他

    飲み忘れの時間帯

    不良群

    (n=18)

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    自己調整している薬剤

    良好群 不良群

    降圧剤・便秘薬が最も多く、ついでP吸着剤だった。不良群でP吸着剤・K吸着剤・胃薬・眠剤が多かった。

    (複数回答)

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    自分で大切と思う薬剤

    良好群 不良群

    不良群が良好群に勝っている薬剤はなく、良好群が降圧薬をより大切に思っていた。

    (複数回答)

  • 結果まとめ

    「薬剤種類の理解」について両群で差は認めなかった。なお2名は

    全くわからないと回答していたが、共に視力障害があった。

    「飲み忘れの時間帯」は、不良群で昼に多かった。

    「自己調整している薬剤」はP吸着剤、K吸着剤、胃薬、眠剤が、

    不良群で多かった。

    「自分で大切と思っている薬剤」では、不良群が良好群に勝って

    いる薬剤はなく、良好群では降圧剤、胃薬がより多かった。

  • 考察(1)

    服薬コンプライアンスについて畑中は、服用率に影響を及ぼす要因は、1)認

    知力低下、2)不規則な食事、3)自己調節で服用しない、4)乱雑な薬の管理

    などをあげている。また、加藤は、自己管理不可能な要因のうち、患者側の要因

    として①ADLの低下や機能的障害(手や視力障害、嚥下障害も含む)②理解力低

    下、③意欲欠如、コミュニケーション不足などを挙げている。医療側の要因とし

    て、①用法が複雑や②多剤であること、③説明不足などを挙げている。

    「薬剤種類の理解」において「全くわからない」が2名あり、共に視力障害を有

    していた。

    また、認知力低下に問題がない患者では、昼の服薬率低下要因として、外出や

    昼食の欠食が挙げられた。

  • 考察(2)

    不良群では、さらに当院では認知機能が正常で、なおかつ社会性のある

    患者が服薬コンプライアンス不良である要因として、上野らが報告して

    いるように、薬の使用が身体症状の緩和に不可欠な場合には服薬アドヒ

    アランスや服薬遵守が高く、自覚症状に乏しく服薬の必要性について感

    じられにくいとされている場合には服薬遵守が低いとされていることが

    考えられた。

    事実、「便秘薬」・「降圧剤」・「眠剤」は概ね理解されて自己調整さ

    れていた。

    「自己調整している薬剤」 として不良群では、「P吸着剤」、「K吸着

    剤」、「胃薬」、「眠剤」が多く、服薬指導のポイントとすべきであ

    る。

  • 考察(3) これらのことより、服薬継続のためには、

    A)自己の体調管理について医療者と共同しながら、患者自身が薬の必要性を理

    解し服薬していくこと

    B)個々の患者の服薬に対する認識を把握し、治療計画を日常生活にうまく合致

    するよう、より個別的で具体的な服薬支援が重要であると考えられた。

    服薬遵守を支援する上でのポイントとして、今回の調査により、血液透析患

    者は制限の多い療養生活を送っているからこそ、その生活のなかで様々な経験

    をし、経験に基づいた手段を患者のほうがより豊富に獲得し、自己の身体に

    あった最もよい方法を体得、決定しているといった視点が必要ではないかと考

    えた。

  • 結論

    患者は、大切と思う薬剤を自己調整しており、ライフス

    タイルに応じた服薬をする傾向にある。患者のライフスタ

    イルに合わせた処方を行うことが大切だとわかった。した

    がって、日々の指導で、薬剤の服薬意義をまず認識させ、

    次に自己調節している薬剤を中心に服薬行動に結びつくア

    プローチをすべきである。医師、薬剤師、看護師などが連

    携して、チーム医療の一環としての服薬指導を行うことが

    重要である。

  • 引用参考文献

    1)畑中典子他:在宅患者のアドヒアランスに及ぼす背景因子の解析,薬学雑誌,772-734,2009

    2)加藤祥子:薬剤師からみた高齢者の服薬支援ー現状と課題、老年医学,46(7),761-763,2008

    3)上野治香:日本の慢性疾患患者を対象とした服薬アドヒアランス尺度の信頼性及び妥当性の検討,日建教誌,22(1),13-29,