血液吸着(ha)・血液透析(hd)によって除去さ...

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血液吸着(HA)・血液透析(HD)によって除去される薬物・除去不可能な薬物 薬効 薬剤 分子量 (dalton) Vd (L/kg) PBR %選択される 血液浄化法 抗躁剤 炭酸リチウム 67 0.8 0 HDアルコール メタノール 32 0.6 0 HD* アルコール エタノール 46 0.6 0 HDアルコール イソプロパノール 60 0.6 0 HD* 不凍液 エチレングリコール 62 0.6 0 HD* 殺菌剤 ホウ酸 62 不明 不明 HD睡眠薬 ブロムワレリル尿素 223 不明 不明 HD浸透圧利尿剤 D-マンニトール 182 0.2 0 HD 抗ウイルス薬 アシクロビル 225 0.7 15 HD抗ウイルス薬 ガンシクロビル 255 0.6 2 HD抗真菌剤 フルコナゾール 306 0.8 11 HDアミノグリコシド系抗菌薬 ゲンタマイシンなど 400700 0.3 10 HD鎮痛薬 アスピリン 180 0.2 80 HDHA 気管支拡張薬 テオフィリン 180 0.5 60 HDHA 強心薬・中枢賦活薬 カフェイン 194 0.6 36 HDHA 抗てんかん薬 フェノバルビタール 232 0.7 50 HDHA 睡眠薬 バルビタール(ペントバルビタールなど) 248 1 60 HA抗てんかん剤 フェニトイン 252 0.6 90 HAキノコ毒 アマニチン 373990 0.3 0.3 HA除草剤 パラコート 186 1 6 HA抗マラリア薬 塩酸キニーネ 397 2.5-7.1 78-95 除去不能?* 殺虫剤 有機リン(パラチオンなど) 2.8 50 除去不可能 抗うつ剤 アミトリプチリン 314 15 95 除去不可能 強心配糖体 ジゴキシン 781 58 25 除去不可能 パーキンソン病治療薬 アマンタジン 188 6.8 55 除去不可能 抗不整脈薬 シベンゾリン 380 410 65 除去不可能 メジャートランキライザー プロメタジン 321 13 80 除去不可能 メジャートランキライザー クロルプロマジン 355 21 98 除去不可能 分子量100Da以下の尿素やエタノールなどは活性炭に吸着しない(100~5000Daの物質を吸着しやすい)が、血 液透析による拡散によって低分子物質は除去されやすい。血液透析ではタンパク結合率が90%以上の薬物は 除去されにくいが、血液吸着ではタンパク結合率が95%程度の物質まで除去可能である。活性炭への吸着は疎 水結合による物理的吸着であり、非特異的で可逆的である。 HD: hemodialysis血液透析、HA: hemoadsorption血液吸着(活性炭使用) *エチレングリコール、メタノール、イソプロパノールなどの中毒にはアルコールデヒドロゲナーゼを競合阻害するエタノールの経口投与も 行われる *キニーネはHAで除去可能という識者もいるが、Vdが大きいため、効率的な除去は難しいと思われる。HDでは除去できない ✩:標準治療で推奨された方法、⋆:標準治療で考慮された方法 上記標準治療は冨岡譲二, 村田厚夫: 中毒研究 20:365-366, 2007より引用 HD◎:腎排泄性のため、 透析患者の中毒 に対して用いられ る場合が多い *フェノバルビタールは腸肝循環するため、活性炭を4時間ごとに投与する方法もある

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Page 1: 血液吸着(HA)・血液透析(HD)によって除去さ …...液透析による拡散によって低分子物質は除去されやすい。血液透析ではタンパク結合率が90%以上の薬物は

血液吸着(HA)・血液透析(HD)によって除去される薬物・除去不可能な薬物

薬効 薬剤分子量(dalton)

Vd 

(L/kg)

PBR

(%)

選択される血液浄化法

抗躁剤 炭酸リチウム 67 0.8 0 HD✩

アルコール メタノール 32 0.6 0 HD✩*

アルコール エタノール 46 0.6 0 HD✩

アルコール イソプロパノール 60 0.6 0 HD✩*

不凍液 エチレングリコール 62 0.6 0 HD✩*

殺菌剤 ホウ酸 62 不明 不明 HD✩

睡眠薬 ブロムワレリル尿素 223 不明 不明 HD⋆

浸透圧利尿剤 D-マンニトール 182 0.2 0 HD

抗ウイルス薬 アシクロビル 225 0.7 15 HD◎

抗ウイルス薬 ガンシクロビル 255 0.6 2 HD◎

抗真菌剤 フルコナゾール 306 0.8 11 HD◎

アミノグリコシド系抗菌薬 ゲンタマイシンなど 400~700 0.3 10 HD◎

鎮痛薬 アスピリン 180 0.2 80 HD・HA

気管支拡張薬 テオフィリン 180 0.5 60 HD・HA

強心薬・中枢賦活薬 カフェイン 194 0.6 36 HD・HA

抗てんかん薬 フェノバルビタール 232 0.7 50 HD・HA

睡眠薬 バルビタール(ペントバルビタールなど) 248 1 60 HA⋆

抗てんかん剤 フェニトイン 252 0.6 90 HA⋆

キノコ毒 アマニチン 373~990 0.3 0.3 HA⋆

除草剤 パラコート 186 1 6 HA⋆

抗マラリア薬 塩酸キニーネ 397 2.5-7.1 78-95 除去不能?*

殺虫剤 有機リン(パラチオンなど) 2.8 50 除去不可能

抗うつ剤 アミトリプチリン 314 15 95 除去不可能

強心配糖体 ジゴキシン 781 5~8 25 除去不可能

パーキンソン病治療薬 アマンタジン 188 6.8 55 除去不可能

抗不整脈薬 シベンゾリン 380 4~10 65 除去不可能

メジャートランキライザー プロメタジン 321 13 80 除去不可能

メジャートランキライザー クロルプロマジン 355 21 98 除去不可能

分子量100Da以下の尿素やエタノールなどは活性炭に吸着しない(100~5000Daの物質を吸着しやすい)が、血液透析による拡散によって低分子物質は除去されやすい。血液透析ではタンパク結合率が90%以上の薬物は除去されにくいが、血液吸着ではタンパク結合率が95%程度の物質まで除去可能である。活性炭への吸着は疎水結合による物理的吸着であり、非特異的で可逆的である。

HD: hemodialysis血液透析、HA: hemoadsorption血液吸着(活性炭使用)

*エチレングリコール、メタノール、イソプロパノールなどの中毒にはアルコールデヒドロゲナーゼを競合阻害するエタノールの経口投与も行われる

*キニーネはHAで除去可能という識者もいるが、Vdが大きいため、効率的な除去は難しいと思われる。HDでは除去できない

✩:標準治療で推奨された方法、⋆:標準治療で考慮された方法

上記標準治療は冨岡譲二, 村田厚夫: 中毒研究 20:365-366, 2007より引用

HD◎:腎排泄性のため、透析患者の中毒に対して用いられる場合が多い

*フェノバルビタールは腸肝循環するため、活性炭を4時間ごとに投与する方法もある