高岡の芸術文化が育んだ 祝辞 卒業・修了制作展 · 卒業・修了制作展...

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「GEIBUN8―富山大学芸術文化学部卒業・修了制作展―」が、平 成29年2月18日から3月5日までの14日間、高岡市美術館において開 催されます。富山大学芸術文化学部および大学院芸術文化研究科では、 絵画、工芸、デザイン、建築、芸術文化研究など多彩な分野で学生が学 び、今春に卒業・修了を迎えます。今回の制作展は、芸術文化学部として 第8回目、研究科として第5回目であり、会場には卒業・修了生の努力の 結晶である作品および研究成果、計116点を展示させていただきます。 このような大学卒業展を公立美術館企画展として開催させていただ くことは、全国でも他に例がありません。毎年変わることなく貴重な機会 を提供してくださる髙橋正樹高岡市長、村上隆高岡市美術館長をはじ めとする関係者各位、ならびに市民、県民の皆様のご理解ご支援に厚く 御礼申し上げます。また、本制作展の開催を企画・実現されてきた実行 委員会の皆様、そして学生諸君を教育、指導いただいた本学関係者の ご努力ご尽力に敬意を表するとともに心よりお祝いを申し上げます。 今世界の人々は、科学・情報技術の急激な進歩・普及が生み出す変 化のなかで、多様な価値観や思考展開を育てながら、新しい将来にむ けて期待と不安の中で努力の日々を送っているのではないでしょうか。 豊かさ、賢さ、便利さなど「文明」の進歩のみが重視され、これまで人類が 作り上げてきた精神性や芸術性など「文化」の大切さが軽んじられては いないでしょうか。このような変化・混沌の時代だからこそ、大学は教育・ 研究・社会貢献の実績を重ね、将来を担う若者を育成する責務を果た していかねばなりません。富山大学では、 「新規性のみを追随するのでは なく、継承することと創造することの両者に視点をおき、腰を据えて真実 を追求できる人材を育成する」ことをモットーに取り組みを続けています。 特に芸術文化学部においては高岡市との包括連携協定を結び、これ までも高岡の銅器、漆器といった伝統工芸の歴史と伝統を現場で学び、 学生・教員ともに成長の糧としてきました。今後とも産学間の連携を図り、 高岡地域の芸術工芸を大きく発展させていただきたいと願っています。 また、 「たかおか共創ビジネス研究所」 「地(知)の拠点大学による地方創 生推進事業(COC+)」など、多くの活動を共同展開できておりますこと、 髙橋市長を初めとする関係者各位に重ねて感謝申し上げます。 芸術・文化(ART)は、まさに人の知識、技能そして情熱が生み出すも のです。卒業・修了制作展は、学生諸君が本学部において学んだ教育 研究の成果を、地域の皆様にご覧いただく場です。高岡市民の皆様はじ め多くの方々に是非制作展に足を運んでいただき、学生諸君への激励 や率直なご意見を賜りますようお願いいたします。 最後に、高岡市、高岡市美術館、および関係者各位の益々のご発展を 祈念し、ご挨拶といたします。 高岡の芸術文化が育んだ 卒業・修了制作展 富山大学長 遠藤 俊郎 002

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Page 1: 高岡の芸術文化が育んだ 祝辞 卒業・修了制作展 · 卒業・修了制作展 富山大学長 遠藤 俊郎 このたび、「geibun 8富山大学芸術文化学部卒業・修了制

 「GEIBUN 8―富山大学芸術文化学部卒業・修了制作展―」が、平

成29年2月18日から3月5日までの14日間、高岡市美術館において開

催されます。富山大学芸術文化学部および大学院芸術文化研究科では、

絵画、工芸、デザイン、建築、芸術文化研究など多彩な分野で学生が学

び、今春に卒業・修了を迎えます。今回の制作展は、芸術文化学部として

第8回目、研究科として第5回目であり、会場には卒業・修了生の努力の

結晶である作品および研究成果、計116点を展示させていただきます。

 このような大学卒業展を公立美術館企画展として開催させていただ

くことは、全国でも他に例がありません。毎年変わることなく貴重な機会

を提供してくださる髙橋正樹高岡市長、村上隆高岡市美術館長をはじ

めとする関係者各位、ならびに市民、県民の皆様のご理解ご支援に厚く

御礼申し上げます。また、本制作展の開催を企画・実現されてきた実行

委員会の皆様、そして学生諸君を教育、指導いただいた本学関係者の

ご努力ご尽力に敬意を表するとともに心よりお祝いを申し上げます。

 今世界の人々は、科学・情報技術の急激な進歩・普及が生み出す変

化のなかで、多様な価値観や思考展開を育てながら、新しい将来にむ

けて期待と不安の中で努力の日々を送っているのではないでしょうか。

豊かさ、賢さ、便利さなど「文明」の進歩のみが重視され、これまで人類が

作り上げてきた精神性や芸術性など「文化」の大切さが軽んじられては

いないでしょうか。このような変化・混沌の時代だからこそ、大学は教育・

研究・社会貢献の実績を重ね、将来を担う若者を育成する責務を果た

していかねばなりません。富山大学では、「新規性のみを追随するのでは

なく、継承することと創造することの両者に視点をおき、腰を据えて真実

を追求できる人材を育成する」ことをモットーに取り組みを続けています。

 特に芸術文化学部においては高岡市との包括連携協定を結び、これ

までも高岡の銅器、漆器といった伝統工芸の歴史と伝統を現場で学び、

学生・教員ともに成長の糧としてきました。今後とも産学間の連携を図り、

高岡地域の芸術工芸を大きく発展させていただきたいと願っています。

また、「たかおか共創ビジネス研究所」「地(知)の拠点大学による地方創

生推進事業(COC+)」など、多くの活動を共同展開できておりますこと、

髙橋市長を初めとする関係者各位に重ねて感謝申し上げます。

 芸術・文化(ART)は、まさに人の知識、技能そして情熱が生み出すも

のです。卒業・修了制作展は、学生諸君が本学部において学んだ教育

研究の成果を、地域の皆様にご覧いただく場です。高岡市民の皆様はじ

め多くの方々に是非制作展に足を運んでいただき、学生諸君への激励

や率直なご意見を賜りますようお願いいたします。

 最後に、高岡市、高岡市美術館、および関係者各位の益々のご発展を

祈念し、ご挨拶といたします。

高岡の芸術文化が育んだ卒業・修了制作展

富山大学長 遠藤 俊郎

 このたび、「GEIBUN 8 富山大学芸術文化学部卒業・修了制

作展」が高岡市美術館において盛大に開催されますことは誠に喜

ばしく、大学院修了生の皆さまや卒業生の皆さま、並びにそのご家

族の皆さまには、心からお祝い申し上げます。

 このGEIBUN 8は富山大学芸術文化学部と高岡市美術館の連

携のもと開催され、今年で8回目を迎えます。この制作展は、地域と

大学との絆を深める素晴らしい機会として多くの方々を惹きつけ、

新しい出会いと対話の場を実現してきました。卒業生・修了生の皆

さんによる自由な発想とアイディアに満ち溢れた作品・論文の数々

は、学生の皆さんの日々の研鑽の集大成であり、必ずやご来場の

方々を魅了することと確信しております。

 高岡市は、二上山、雨晴海岸に代表される豊かな自然と国宝瑞

龍寺や高岡御車山祭などの歴史・文化につつまれるまちです。本

市では、長きにわたり培われてきたまちの魅力を活用し、人と人と

を繋ぎ、新たなまちの魅力の創造を目指し取り組みを進めていると

ころです。本展にご来場の皆さまには、今後とも本市の芸術・文化

活動の振興・発展にお力添えを賜りますようお願い申し上げます。

 卒業・修了される皆さまには、今後は高岡だけでなく県内外に羽

ばたき、文化芸術関連をはじめとした様々な分野で活躍されること

と存じます。その人生の歩みの中で、瑞 し々い感性を磨きあげ、知

識の研鑽に邁進した日々は、かけがえのない青春の一時期として

思い出されることと思います。芸術文化学部のおかれたここ高岡で、

そうしたひとつひとつの経験と学びを積み重ねながら過ごしたこ

とを原点として、「ふるさと高岡」の思いを強くお持ちいただき、これ

からも、高岡を応援していただければと思います。

 結びに、本制作展の開催にあたり、ご支援・ご協力いただきまし

た関係各位に心より感謝申し上げますとともに、卒業生、修了生の

皆さまの今後ますますのご活躍を祈念し、私のごあいさつといたし

ます。

祝辞

高岡市長 髙橋 正樹

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Page 2: 高岡の芸術文化が育んだ 祝辞 卒業・修了制作展 · 卒業・修了制作展 富山大学長 遠藤 俊郎 このたび、「geibun 8富山大学芸術文化学部卒業・修了制

 「GEIBUN 8―富山大学芸術文化学部卒業・修了制作展―」が、平

成29年2月18日から3月5日までの14日間、高岡市美術館において開

催されます。富山大学芸術文化学部および大学院芸術文化研究科では、

絵画、工芸、デザイン、建築、芸術文化研究など多彩な分野で学生が学

び、今春に卒業・修了を迎えます。今回の制作展は、芸術文化学部として

第8回目、研究科として第5回目であり、会場には卒業・修了生の努力の

結晶である作品および研究成果、計116点を展示させていただきます。

 このような大学卒業展を公立美術館企画展として開催させていただ

くことは、全国でも他に例がありません。毎年変わることなく貴重な機会

を提供してくださる髙橋正樹高岡市長、村上隆高岡市美術館長をはじ

めとする関係者各位、ならびに市民、県民の皆様のご理解ご支援に厚く

御礼申し上げます。また、本制作展の開催を企画・実現されてきた実行

委員会の皆様、そして学生諸君を教育、指導いただいた本学関係者の

ご努力ご尽力に敬意を表するとともに心よりお祝いを申し上げます。

 今世界の人々は、科学・情報技術の急激な進歩・普及が生み出す変

化のなかで、多様な価値観や思考展開を育てながら、新しい将来にむ

けて期待と不安の中で努力の日々を送っているのではないでしょうか。

豊かさ、賢さ、便利さなど「文明」の進歩のみが重視され、これまで人類が

作り上げてきた精神性や芸術性など「文化」の大切さが軽んじられては

いないでしょうか。このような変化・混沌の時代だからこそ、大学は教育・

研究・社会貢献の実績を重ね、将来を担う若者を育成する責務を果た

していかねばなりません。富山大学では、「新規性のみを追随するのでは

なく、継承することと創造することの両者に視点をおき、腰を据えて真実

を追求できる人材を育成する」ことをモットーに取り組みを続けています。

 特に芸術文化学部においては高岡市との包括連携協定を結び、これ

までも高岡の銅器、漆器といった伝統工芸の歴史と伝統を現場で学び、

学生・教員ともに成長の糧としてきました。今後とも産学間の連携を図り、

高岡地域の芸術工芸を大きく発展させていただきたいと願っています。

また、「たかおか共創ビジネス研究所」「地(知)の拠点大学による地方創

生推進事業(COC+)」など、多くの活動を共同展開できておりますこと、

髙橋市長を初めとする関係者各位に重ねて感謝申し上げます。

 芸術・文化(ART)は、まさに人の知識、技能そして情熱が生み出すも

のです。卒業・修了制作展は、学生諸君が本学部において学んだ教育

研究の成果を、地域の皆様にご覧いただく場です。高岡市民の皆様はじ

め多くの方々に是非制作展に足を運んでいただき、学生諸君への激励

や率直なご意見を賜りますようお願いいたします。

 最後に、高岡市、高岡市美術館、および関係者各位の益々のご発展を

祈念し、ご挨拶といたします。

高岡の芸術文化が育んだ卒業・修了制作展

富山大学長 遠藤 俊郎

 このたび、「GEIBUN 8 富山大学芸術文化学部卒業・修了制

作展」が高岡市美術館において盛大に開催されますことは誠に喜

ばしく、大学院修了生の皆さまや卒業生の皆さま、並びにそのご家

族の皆さまには、心からお祝い申し上げます。

 このGEIBUN 8は富山大学芸術文化学部と高岡市美術館の連

携のもと開催され、今年で8回目を迎えます。この制作展は、地域と

大学との絆を深める素晴らしい機会として多くの方々を惹きつけ、

新しい出会いと対話の場を実現してきました。卒業生・修了生の皆

さんによる自由な発想とアイディアに満ち溢れた作品・論文の数々

は、学生の皆さんの日々の研鑽の集大成であり、必ずやご来場の

方々を魅了することと確信しております。

 高岡市は、二上山、雨晴海岸に代表される豊かな自然と国宝瑞

龍寺や高岡御車山祭などの歴史・文化につつまれるまちです。本

市では、長きにわたり培われてきたまちの魅力を活用し、人と人と

を繋ぎ、新たなまちの魅力の創造を目指し取り組みを進めていると

ころです。本展にご来場の皆さまには、今後とも本市の芸術・文化

活動の振興・発展にお力添えを賜りますようお願い申し上げます。

 卒業・修了される皆さまには、今後は高岡だけでなく県内外に羽

ばたき、文化芸術関連をはじめとした様々な分野で活躍されること

と存じます。その人生の歩みの中で、瑞 し々い感性を磨きあげ、知

識の研鑽に邁進した日々は、かけがえのない青春の一時期として

思い出されることと思います。芸術文化学部のおかれたここ高岡で、

そうしたひとつひとつの経験と学びを積み重ねながら過ごしたこ

とを原点として、「ふるさと高岡」の思いを強くお持ちいただき、これ

からも、高岡を応援していただければと思います。

 結びに、本制作展の開催にあたり、ご支援・ご協力いただきまし

た関係各位に心より感謝申し上げますとともに、卒業生、修了生の

皆さまの今後ますますのご活躍を祈念し、私のごあいさつといたし

ます。

祝辞

高岡市長 髙橋 正樹

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Page 3: 高岡の芸術文化が育んだ 祝辞 卒業・修了制作展 · 卒業・修了制作展 富山大学長 遠藤 俊郎 このたび、「geibun 8富山大学芸術文化学部卒業・修了制

 富山大学芸術文化学部の卒業生のみなさん、ご卒業おめで

とうございます。そして、大学院修士課程を修了されたみなさん

にもお祝いの言葉を贈りたいと思います。指導にあたられた先

生方、またご家族もさぞお喜びのことと存じます。

 高岡市美術館がみなさんの作品や研究の発表の場となって

今回で8回目を迎えます。入学当初から、自分たちの学生生活

の集大成が高岡市美術館に並ぶことを意識して学生生活を

送ってきたのではないでしょうか。いよいよその発表の時を迎え

ました。「GEIBUN 8」のテーマが「つむぐ」とのこと、個性豊か

なみなさんの学びの成果がどのようにひとつの展覧会としてま

とまりをみせるのか、楽しみにしています。

 大学の開放的な雰囲気で自由度を満喫してきたみなさんが、

若い感性とエネルギーに満ちた作品や研究を美術館という公

共の場で展示するまでには、困難や制約を感じることがあった

かもしれません。しかしこれを機会に、みなさんの立ち位置をも

う一度確認してみてください。その上で、公共の場で作品や研

究を発表することの意義、あるいは美術館の使命とは何かをあ

らためて考えていただき、本展がこれから社会へ巣立っていく

みなさんにとっての第一関門になると意識していただければ幸

いです。

 高岡市美術館では、「クリエイティブ・たかおか~未来に輝

く 高岡市児童生徒作品展~」と本展をあわせ、地元の若い人

たちと時間と空間を共有できる貴重な機会と考え、これからもさ

らに充実した親しみやすい美術館をめざしたいと思っています。

また、より総合的な観点から、文化を振興するという公益性の高

いミッションを担う美術館が本来どうあるべきかを、みなさまと

ともに考えていきたいと思います。今後とも、みなさまのご支援を

賜りますようよろしくお願いいたします。

 最後になりましたが、富山大学芸術文化学部の益々のご発

展を祈念しますとともに、「GEIBUN 8」の開催にご尽力、ご協

力いただきました方々に心から感謝いたします。

メッセージ

高岡市美術館長 村上 隆りゅう

004

Page 4: 高岡の芸術文化が育んだ 祝辞 卒業・修了制作展 · 卒業・修了制作展 富山大学長 遠藤 俊郎 このたび、「geibun 8富山大学芸術文化学部卒業・修了制

 富山大学芸術文化学部の卒業生のみなさん、ご卒業おめで

とうございます。そして、大学院修士課程を修了されたみなさん

にもお祝いの言葉を贈りたいと思います。指導にあたられた先

生方、またご家族もさぞお喜びのことと存じます。

 高岡市美術館がみなさんの作品や研究の発表の場となって

今回で8回目を迎えます。入学当初から、自分たちの学生生活

の集大成が高岡市美術館に並ぶことを意識して学生生活を

送ってきたのではないでしょうか。いよいよその発表の時を迎え

ました。「GEIBUN 8」のテーマが「つむぐ」とのこと、個性豊か

なみなさんの学びの成果がどのようにひとつの展覧会としてま

とまりをみせるのか、楽しみにしています。

 大学の開放的な雰囲気で自由度を満喫してきたみなさんが、

若い感性とエネルギーに満ちた作品や研究を美術館という公

共の場で展示するまでには、困難や制約を感じることがあった

かもしれません。しかしこれを機会に、みなさんの立ち位置をも

う一度確認してみてください。その上で、公共の場で作品や研

究を発表することの意義、あるいは美術館の使命とは何かをあ

らためて考えていただき、本展がこれから社会へ巣立っていく

みなさんにとっての第一関門になると意識していただければ幸

いです。

 高岡市美術館では、「クリエイティブ・たかおか~未来に輝

く 高岡市児童生徒作品展~」と本展をあわせ、地元の若い人

たちと時間と空間を共有できる貴重な機会と考え、これからもさ

らに充実した親しみやすい美術館をめざしたいと思っています。

また、より総合的な観点から、文化を振興するという公益性の高

いミッションを担う美術館が本来どうあるべきかを、みなさまと

ともに考えていきたいと思います。今後とも、みなさまのご支援を

賜りますようよろしくお願いいたします。

 最後になりましたが、富山大学芸術文化学部の益々のご発

展を祈念しますとともに、「GEIBUN 8」の開催にご尽力、ご協

力いただきました方々に心から感謝いたします。

メッセージ

高岡市美術館長 村上 隆りゅう

「GEIBUN 8」は、公立美術館の企画展として開催される全国的

にも珍しい卒業・修了制作展です。2005年10月、富山県内国立三

大学の再編統合により富山大学芸術文化学部(以下芸文)が創設

されましたが、特色のひとつとして地域と連携した『実践教育』を掲

げています。授業や課外活動などさまざまな場面で高岡市と協働し

てきており、卒業・修了制作展についても地域の関係組織と実行委

員会を組織して、一期生が卒業した2010年から継続して開催して

います。学びの総仕上げとして、高岡市美術館で作品を発表できる

ことはこの上もなく光栄なことです。

今回も第1展示室では、絵画や彫刻、工芸、第2展示室では、デ

ザインと建築、第3展示室では、クラフト、アクセサリー、家具制作な

どの作品展示を行っています。また、地下の展示室では、インタラク

ティブアートや映像作品を展示するほか、卒業研究をまとめた論文

も閲覧できるようにしています。

学部定員は1学年115名、研究科修士課程は8名と小規模なが

ら、多彩な作品の展示となっていますが、これは『実践教育』と並ぶ

芸文のもうひとつの特色である『融合教育』を行っていることの成

果です。芸文では1学部1学科の中に5コースを設けそれぞれの専

門分野が学べると同時に、コースを横断して履修することができる

カリキュラムを編成して、コースの専門分野に縛られない研究・制

作ができるようになっています。学生がグループで話し合いながら

学修するアクティブラーニングを行う機会も多く、日常的にさまざま

な属性や興味、能力を持つ学生が混ざり合って学んでいます。

「GEIBUN 8」の多彩さは、まさに学生が多様性の中で学んできた

ことの証です。

新しいものをつくり出す創造という行為は、天才的なひらめきか

ら生み出されるような印象で語られることがありますが、それは無

から生み出されるものではなく、すでにある要素を別の要素と組み

合わせて成される行為です。日本創造学会でも、「創造とは人が異

質な情報群を組み合わせ統合して問題を解決し、社会あるいは個

人レベルで、新しい価値を生むこと」と定義し、「異質な情報群を組

み合わせ」という文言が、しっかりと盛り込まれています。

日本は海に囲まれた島国であり、各地に高い山々が連なる山脈

があること、四季がはっきりしていることなどから自然は多様性に富

んでいます。人々は千変万化する自然に向き合い臨機応変に対応し

てきました。また、地震や台風などの自然災害が多いことから、厳し

い条件も受け入れ創意工夫してきました。そのような風土に鍛えら

れたのか、日本人は与えられた要素に対して独自の解釈や巧みな

アレンジを加えて、新たな価値を創り出すことが得意であるように

思います。

かつては、大陸から伝えられた漢字や仏教、茶飲を、独自の仮名

文字や座禅、茶道という新たな創造につなげました。この得意技

は、明治維新以降の近世においても発揮されます。今や日本食とし

て世界にファンを広げているすき焼きやラーメンがそうですし、戦

後の高度経済成長の中でつくり出されたラジカセやウォークマン

などの家電製品も該当します。例を挙げればきりがありません。多様

な環境に加えて、異質を受け入れる寛容性、異質なものに対して敬

意を持って対峙したことが学びの姿勢となり、適切な変換が成され

たのです。

芸文が『融合教育』に取り組んでいるのは、創造の源泉が多様性

にあると考えるからです。さらに、その多様性を創造に繋げるため

に、寛容性が育まれる教育環境を重視しています。学生同士は元よ

り、地域の方 と々も少しでも交流できるよう、地域全体をキャンパス

として『実践教育』に取り組んでいることが、作品のユニークさにつ

ながっているのです。和気藹 と々話し合いながら、新たな創造が生

み出されている光景をイメージしながら、作品をご覧いただけまし

たら幸いです。

結びに、「GEIBUN 8」の開催にあたりご尽力いただきました高

岡市並びに公益財団法人高岡市民文化振興事業団・高岡市美術

館に心より感謝申し上げます。

創造を生み出す多様性と寛容性

富山大学芸術文化学部長 武山 良三

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