飛行力学研究室研究紹介① - 九州大学(kyushu...
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飛行力学研究室 研究紹介①指導教員: 東野 伸一郎 准教授Introductions of Flight Dynamics Laboratory
小型固定翼無人航空機(UAV)のフラットスピンによる垂直着陸
研究背景UAVは人が搭乗しない特徴から特殊な環
境で運用される場合が多く,機体の回収方法が問題となる.
例 : パラシュート降下⇒着地地点への誘導が困難ネット捕捉⇒地上に大規模な装置が必要
フラットスピンとは失速が発生すると左右の翼による揚力と抗力の釣り合いが崩れ,ヨーイング,ローリングモーメントが発生しスピン運動が生じる.
フラットスピンとは迎角𝛼 = 65~90°で発生するスピン運動であり,流入風を受ける面積が増加することで降下速度が通常のスピンに比べて大きく減少する.
垂直着陸への応用
制御方法着陸へ応用するためには以下の項目を達成する必要がある
1. 意図的にフラットスピンを実施する方法2. フラットスピン中の機体の姿勢角を変更する方法3. フラットスピンで降下中の機体を任意の地点に導く方法4. 降下速度を減速する方法
1. 2. 全遊動式水平尾翼とプロペラ回転による効果により機首下げピッチングモーメントを減少
全遊動式水平尾翼⇒流れに対し水平となることで抗力が減少
3.回転中に姿勢角を周期的に変更する
4.カナードによる抗力の増加
水平方向成分の力の差が生じ,一方向への力の偏りが生じる.
カナードを用いることで重心位置より前方に抗力が発生し,ピッチアップさせることで推力の鉛直上向き成分と抗力によって降下速度を低下させる.
自動化されたフラットスピン着陸システムの完成を目指す
具体的な方法
Phoenix LR03
(全長2.9m 全幅3.2m 空虚質量18.3kg)
タグチメソッドを用いたUAV設計法の研究
• 性能推定誤差• 加工誤差• 組み立て誤差• 経年劣化• 気温
様々なノイズ影響するパラメータ性能要求
• 寸法• 材質• エンジン• プロペラ• 飛行速度
• 航続距離• 上昇性能• ペイロードの重量• 機体のサイズ• 安定性
全ての要求を満たす性能の実現にはトレードオフを考慮しつつパラメータを選択していく必要がある
ノイズによる性能のバラつきが小さいロバストな設計にする必要がある
研究目的
エチオピアでの磁場探査,南極でのエアロゾル採集を目的とした長距離飛行ミッションを控えており,その達成に向けて長距離飛行型小型無人航空機の設計及び運用を行う.
→外国の粗悪な質の燃料に起因するエンジン性能の悪化,氷がプロペラ端を破損させることによって生じるプロペラ効率の悪化などの外乱による影響を抑制する設計手法が必要.
品質工学の分野で用いられるタグチメソッドと呼ばれる手法を小型無人航空機の設計に応用 ノイズ(外乱)による性能のバラつきを抑え,性能要求を満たすパラメータの組み合わせを両立 実証のためのプロペラ性能試験,エンジン性能試験,風洞試験によるデータ収集
搭載燃料に対する航続距離(現在の形状とロバスト性の高い機体形状に変化させたときの出力結果)
機体形状をわずかに変えるだけでバラつきが抑えられることがわかる(赤:改善前 青:改良後)
バラつきが約3割減少
機体に作用する力
ネット捕捉パラシュート降下
機首が上向きの場合⇒推力と反対方向に水平成分の力が働く
機首が下向きの場合⇒推力と同一方向に水平成分の力が働くP-factorとGyro Precessionに
よって機体がピッチアップ
飛行力学研究室 研究紹介②指導教員: 東野 伸一郎 准教授Introductions of Flight Dynamics Laboratory
ATM(航空交通管理 )の研究
近年,アジアの経済成長やLCCの参入により,我が国では長期的な航空交通量の増加が見込まれており,空港及び空域における航空交通量増大要望に対する管制処理容量不足や遅延の発生が顕在化しつつある
出発待機する航空機の列 九州上空を飛行する航空機
CARATSの概要
日本では,CARATS(航空交通システムの変革に向けた協調的行動)を掲げ,以下の取り組みを行っている1.産学官の協調2.運航者と管制機関の協調3.シームレスな航空交通を実現するための国際的な協調
4.空域の共通利用者間の協調5.地域社会との協調
福岡空港の滑走路増設案
本研究では以下の取り組みを行っている 滑走路増設後の空港容量シミュレーションの実施 滑走路増設後の地上滑走及び使用スポットの最適化 福岡空港周辺の管制支援システムの構築 AIを使用した福岡空港周辺の混雑予測
福岡空港と他空港の比較
福岡空港について日本の空港の中でも滑走路1本あたりの離発着回数が最も多い現状か
ら,混雑や遅延の悪化によって今後の運用に支障をきたし,離着陸機数の制限が必要と判断された.したがって国土交通省によってピーク時間帯の遅延を解消するべく2016年 3 月 27 日に混雑空港に指定された.そのような背景から, 2019年に誘導路の二重化,2024年に滑走路増設が予定されており.空港容量の増加が見込まれている.
着陸機軌跡離陸機軌跡
ある1日の福岡空港離着陸機軌跡
宅配ドローンの潜在便益評価に関する研究 UTMに関する研究
ICAO(国際民間航空機関)は、2020年代に有人機と無人機が同一空域で運行できる環境の整備を推進 ドローンの空中交通管理システムの開発 JAXAでは、実験用航空機「MuPAL-α」を用いて、有人機と無人機の空域統合に関する研究に着手
有人機と無人機の空域統合
本研究では、ドローンを宅配サービスに用いることで期待できる便益を、数値シミュレーションで定量的に評価する試みを行っている。
図1:トラックのみを用いた宅配経路
1.UTMとは?
有人機と無人機の空域統合を目指すもので、UTM(Unmanned Aerial System Traffic Management(無人機の航空交通管理))と呼ばれている。
2.研究動向
3.今後の研究
複数の機体が互いの干渉を回避しながら、それぞれのミッションを安全に遂行できる手法の実現
有人機と無人機が自由に航行できる空域統合の実現を念頭とした将来の航空交通管理システムの提案
図2:トラックとドローンを用いた宅配経路
図1はデポ(☆印)から全ての家庭(〇印)をトラックのみで宅配する経路、図2はトラックとドローンを組み合わせて宅配する経路を表す。
上記を実現するため、当研究室では「暫定理想点手法」という新しい多目的最適化手法を提案した。下記の図はその結果である。
解析の結果、図2の宅配経路は図1より走行距離を40%、所要時間を26%程度削減できることが分かった。
今後は、交通渋滞や再配達など、計画の変更を余儀なくされる不確実な状況を想定した問題の解析について進めていく予定である。
画像処理によるUAV(無人航空機)の自己位置同定に関する研究・画像処理によるUAVの自己位置同定とは?
UVAが撮影した画像から特徴的な地形を抽出し、データベースのオブジェクトと比較し照らし合わせること(マッチングという)で、UAVの位置や機種方位などを推定する。
つまり
写真を撮影撮影した写真
クレーターを検出して円として近似
自分の位置が分かる!
・昨年度までの成果
→クレーターの輪郭パーツの検出から円近似オブジェクトを用いた同定まで手動で行うことができた。
→クレーターの輪郭の検出に輝度変化の勾配を用いることで、影などができているクレーターでも検出できるようにした。
改良前
改良後
・今後の課題
輝度勾配の条件設定の自動化 輪郭検出方法の見直し 同定の完全自動化
自己位置同定を用いて火星でのUAVの自律飛行を目
指す!!
(JAXA/ISAS提供)