一般演題発表座長集約第31回日本診療放射線技師学術大会...

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31 日本診療放射線技師学術大会 2015. 11. 21 Sat. )~ 23 Mon. 国立京都国際会館

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  • 第 31回 日本診療放射線技師学術大会

    一 般 演 題 発 表 座 長 集 約2015. 11. 21(Sat.)~23(Mon.)

    国立京都国際会館

  • 2 ◆ 日本診療放射線技師会

    口述発表

    O001~366

     本セッションは,エックス線CT検査に関して6演題の発表が行われた. 演題O-001 本多氏らは,加算画像を用いてVeoの効果を従来のASiRと比較評価し,Veoはノイズ量により自動で処理強度を変化させ,低コントラスト領域において低線量ほど効果があると報告された.画像加算を用いる方法はまだ確立されていない手法と思われ,引き続き検討を行っていただきたい. 演題O-002 佐藤氏らは,従来のASiRと新しい逐次近似応用再構成法ASiR-VをSD,NPSで比較評価をし,ASiR-Vの方が強度を強くするとノイズ低減率が高くなると報告された.同メーカーの異なる逐次近似応用再構成法の比較であったが,スライス厚の変化が気になるところである.さらなる検討を期待したい. 演題O-003 江崎氏らは,低電圧撮影時における線量不足を2管球およびStellar Detectorでの解消を検討し,2管球では困難であるがStellar Detectorにより線量不足の解消の可能性は示唆されると報告された.Stellar Detectorの有用性があらためて確認できる報告であった. 演題O-004 亀井氏らは,線量と実効エネルギーからPHITSコードを使用したモンテカルロシミュレーションを行い,Bowtieフィルターの形状把握が可能であることを報告された.とても独創的で斬新な検討であり,今後どんな分野に役立つのか展開に大いに期待したい. 演題O-005 関根氏らは,頭部CTにおいてノンヘリカルスキャン時,ビーム幅の違いでコーン角の影響の有無を性能評価し,ビーム幅で違いがないと報告された.コーン角の影響を排除するため,使用する検出器を絞る施設もある中,この検討は貴重である. 演題O-006 大村氏らは,ボーラストラッキング時のPrep画像に逐次近似応用再構成法を用いて,その効果の検証を確認し,管電流低下に伴い,画像に大きな変化はないことやCT値も真値に近いことが報告された.ボーラストラッキング時の管電流の設定を低くすることが可能であり,再構成時間も全く問題ないことが確認できた. 以上,演者のこれからのますますの活躍に期待して座長集約とする.

    O-001~006セッション:エックス線CT検査①

    小澤 友昭 青森市民病院

  • 座長集約 ◆ 3

    第31回 日本診療放射線技師学術大会

    一般演題発表 座長集約(口述発表)

    O-013~018セッション:エックス線CT検査③

     演題O-007 村田らは,頭部撮影におけるチルトボリュームスキャンとチルトヘリカルスキャンのCT

    検査室内の空間線量を詳細に評価した.その結果より同一範囲をスキャンする場合は,ボリュームスキャンの空間線量はヘリカルスキャンよりも約30%低値を示した.村田らの報告は,CT検査における介助者の被ばく線量低減への有用な情報を提供すると考えられる. 演題O-008 村山らは,O-armイメージングシステムにおける画質を診断用CTと比較し評価を行った.O-armの高コントラスト分解能は,診断用CTよりも高いことを示したが,画質評価にはさらなる検討の余地があり今後に期待する. 演題O-009 杉野らは,CNR-AECの有用性を被ばく線量とCNRを用いて評価を行った.CNR-AECはCNRを維持しつつ被ばく低減が可能で,簡便な設定によりそれが達成できることから,特に低管電圧撮影における有用な技術であると考えられる. 演題O-010 上門らは,撮影位置がCT-AECに与える影響に関して検討を行った.結果より回転速度を0.5秒から1.0秒にすることでCT値のわずかな上昇が見られたが,臨床上問題がないレベルと考えられる. 演題O-011 岩崎らは,CT透視検査における撮影法の検討の中で,CT-AECを使用した通常撮影時の線量を基にし,位置および体格を考慮したCT透視時の線量を決定するためのTableを作成した.非常に有効な手法であると考えられ,さらなる検討が望まれる. 演題O-012 岩元らは,MDCTにおけるオーバーレンジングの評価をDLPによる切片法,照射時間から算出する方法,イメージングプレートを使用した方法の3手法を用いて評価した.評価手法によってオーバーレンジングの値が異なり,最適な評価法の確立が望まれる.

    O-007~012セッション:エックス線CT検査②

    丹羽 伸次 中津川市民病院

  • 4 ◆ 日本診療放射線技師会

    描出能に及ぼす影響について」は,3TMRIでは,高いSN比を有するため,NEX,MPG印加軸数の違いによる拡散テンソルトラクトグラフィの描出能に有意差が認められないという発表であった.今回,錐体路と脳梁での比較であったが,今後,神経線維の少ない部位での描出能の検討を期待したい.

     本セッションは,拡散MRIに関する5題の発表が行われた. 演題O-019 「体幹部の拡散強調画像で稀に出現する格子状アーチファクトの検討」は,b値:0sec/mm²の画像にのみ,まれに出現するアーチファクトの改善方法に関する発表であった.アーチファクトが出現するスライスも決まっており,Matrix,saturation pulseが影響するということであった.STIR法とも比較検討し,ルーティン検査に取り入れていってもらいたい.

     演題O-020 「肝細胞がんの治療効果判定における拡散尖度画像の有用性の検討」は,拡散尖度画像のmean kurtosis(MK値)が肝細胞がんの治療効果判定に有用かどうかの発表であった.検査時間との兼ね合いもあり,3軸での撮像ではあるが,MK値はADC値に比べて,感度・特異度・AUCが優位に高値を示し,肝細胞がんの治療効果判定における拡散尖度画像の有用性が示唆されたということであった.今後,MRI装置上での計算も含め,さらなる検討を続けていただきたい.

     演題O-021 「1.5T-MRI装置を用いたDTI(Dif-fusion Tensor Imaging)による腰部神経線維描出のための基礎的検討」は,自作ファントムを用いて,1.5TMRIの拡散テンソル画像による腰部神経線維を描出する撮像条件を得るための検討で,FA値に影響を及ぼす複数の要因を抑える撮像条件が得られたという発表であった.

     演題O-022 「Single-shot echo planar imag-ingとFOCUSの比較」は,自作ファントムを用いて,局所励起技術を用いたFOCUSとSingle shot-EPIの歪みと空間分解能についての比較検討の発表であった.3断面ともファントムの中央と端で,FOCUSの方がSingle shot-EPIよりも優れていたということであった.

     演題O-023 「MPG印加軸数と画像加算回数が3T-MR diffusion tensor tractography(DTT)の

    O-019~023セッション:MRI検査①

    清水 郁男 愛知医科大学病院

  • 座長集約 ◆ 5

    第31回 日本診療放射線技師学術大会

    一般演題発表 座長集約(口述発表)

    する検討 順天堂大学医学部付属順天堂医院の川崎らは,Synthetic MRIで用いる基本データの撮像条件によって再構成画像の均一性が異なることを明らかにした発表であった.画像コントラストを自由に操れるSynthetic MRIであっても,基本データの収集条件がいかに重要であることを再認識できる教育的な報告であった.

     演題O-024 STAR-VIBEによる基礎的検討 青森市民病院の工藤らは,脂肪抑制併用STAR-VIBEを自然呼吸下で用いた際の基礎的検討を行った発表であった.実験には呼吸運動を想定した自作動態ファントムを用いており,呼吸に関する定量的な評価を行う上で,本実験方法は有効な手段であると思われる. 演題O-025 マルチバンドスキャン導入についての検討 順天堂大学医学部付属順天堂医院の杉山らは,近年注目を集めているマルチバンドスキャンのreference scanが再構成画像にどのような影響を与えているかを検討した発表であった.今回の検討により,マルチバンドスキャンは撮像断面とreference scanが同一断面であることが望ましいことを明らかにした. 演題O-026 異なるB1シムモードによる画像均一性の評価 新緑脳神経外科の大川らは,既存3T装置で使用可能な3種類のB1シムモードについて,画像均一性をファントム実験にて比較した発表であった.本報告は,オプションであるB1シムモード導入を検討する上での一助になると思われる. 演題O-027 下腿筋BOLDイメージにおいてextrapolated TEを用いた血液代謝評価の可能性 神戸大学医学部附属病院の京谷らは,下腿筋の血流代謝をT2*値といった緩和時間から求めるのではなくT2*減衰曲線から算出したプロトン密度に相当する値を用いて評価するという発表であった.本法は,T2*値の最大の問題である周囲の磁化率の影響が排除できる可能性を秘めており,今後の展開が楽しみである. 演題O-028 Pencil Beam型Presaturation pulseを用いた頭部選択的MRAの初期経験 神戸大学医学部附属病院の京谷らは,さまざまな症例に対し,Pencil Beam型Presaturation pulseを用いた頭部選択的MRAが頭部血管造影X線検査と同等の描出能であることを報告した.Pencil Beam型Presaturation pulseはASLやアーチファクト低減などにも応用できる可能性があるため,シーケンスのさらなる改良を期待したい. 演題O-029 Synthetic MRIにおける均一性に関

    O-024~029セッション:MRI検査②

    内田 幸司 えだクリニック

  • 6 ◆ 日本診療放射線技師会

     MRI④は,最新の静音技術の臨床利用に向けて,4演題の研究発表が行われた. 演題O-035 静音型非造影MRAシーケンスにおける手指動脈描出の検討 この演題は,スピンラベリング(ASL)法による非造影MRAシーケンスを用いて手指動脈を描出する検討であった.この技法は,ゼロTEとASLの効果で比較的流速の遅い血管の描出が可能である.演者らは,1セグメント当たりのspoke数による描出能を検討し,その結果,最も少ないspoke数192が良好であった.データ収集時間が短くなることで,ASL信号を効率よく収集できたことが要因とのこと.収集時間が延長するが画質向上に向けて基礎的な検討であった. 演題O-036 スリューレイトの異なる装置における静音機能使用時の性能評価 この演題は,スリューレイト200と125 mT/m/msの同機種名1.5T-MRIを用いて,静音技法使用時の画像性能評価であった,SNRやCNRなどを比較した結果,静音技法使用の有無による有意な差は見られなかった.対象装置の静音技法は最大スリューレイトには依存していないと判断された. 演題O-037 SilentMRAにおける撮像条件の検討 この演題は,スピンラベリング(ASL)法による非造影頭部MRAシーケンスについてパラメータ至適化の検討であった.その結果,良好な頭部MRAを収集でき,その収集時間は約7分であった.本技法は,一般的なタイムオブフライト法に置き換わる技法という位置付けにはなっておらず,臨床的有用性は検討中であるとのことであった. 演題O-038 3T-MRI静音技術:Quite Suiteシーケンスにおける騒音および画質評価 この演題は,静音技法による静音の低減を騒音計で測定し,画質を担保した場合の音圧を評価した検討であった.その結果,85%の音圧低減が可能であった.静音技法が可能なシーケンスは現在では限られている.実際の検査では,従来のシーケンスを最初に施行し,静音技法のシーケンスを後に施行することで患者の快適性に貢献しているようだとのことであった.

    O-035~038セッション:MRI検査④

    豊嶋 英仁 秋田県立脳血管研究センター

     演題O-030は,頸部を固定する目的のPhiladel-phia Collarを装着したまま施設の使用MRI装置でより良い検査が実施可能となるコイルセッティングについて,演題O-033は,頭部検査にもかかわらず,頭部用コイルが使用できない状況下でOPEN型MRI装置の利点を生かし,別の受信コイルでの検査法について,演題O-034は,自作した補助固定具システムを用いて,膝用コイルを使用して手部のMRI撮像を可能とする検討された演題であった. この3演題は,自施設MRI装置の利点を生かし,診断可能な画質を担保した上で,より優しい検査を実施するための検討を行った内容であった.良い検査を行うために各施設ではさまざまな検討が行われ実践されていることと思われるが,今後も今回の検討についてさらなる向上および新たに違った手法についても検討を行い,報告をしていただきたい. 演題O-031は,自施設MRI装置の頭部用コイル3種類について基礎的な性能評価を行い,今後の使用について検討した演題であった.使用装置の性能評価を行い,結果を把握することは機器管理の基本であり重要なことである.今回の結果を踏まえた上,臨床においてコイル選択などの使い分けと画質についてさらなる検討などを行っていただきたい. 演題O-032は,2台の同機種MRI装置のうち1台をグラディエントコイルの性能向上を視野にバージョンアップを実施後,性能差が画質に与える影響について基礎的検証した演題であった.今回の性能向上による装置間格差について臨床例なども交えながら検証を行うとともに,あらゆる観点から検証を行っていただき,費用対効果など今回のバージョンアップによって得られた恩恵などについても検討していただきたい. 総評として,このセッションはMRI検査の最新技術というよりも,より良い検査を提供するために,いかに装置性能を理解した上で使用できるか検討を行った内容であったが,今後もより良く・より優しい検査が行われるよう研

    けん

    鑽さん

    を重ねていただきたい.

    O-030~034セッション:MRI検査③

    髙島 宏輔 徳島県立中央病院

  • 座長集約 ◆ 7

    第31回 日本診療放射線技師学術大会

    一般演題発表 座長集約(口述発表)

     演題O-039は,腹部大動脈ステントグラフトが腰椎MRI画像に及ぼすメタルアーチファクトの影響について検討した演題であった.Zenithでは大きなアーチファクトが見られ,読影が不可能になる可能性があるということであった. 演題O-040は,腹部大動脈ステントグラフト内挿術後患者の腰椎MRI検査の可否に,単純X線写真を用いることについて検討した演題であった.術後腹部単純写真を用いることでステントグラフトは,種類の判別が可能であり,MRI検査の可否に有用であるということであった. 演題O-041は,頚部MRI領域における脂肪抑制効果改善に向けた補助具を検討した演題であった.脂肪抑制効果改善に向けた補助具の材料として白米,発砲ビーズが優れており,より静磁場不均一を改善させることができるということであった. 演題O-042は,栄養補助食品によるMRI画像への影響を検討した演題であった.栄養補助食品の鉄含有量によって画像歪みが変化し,時間によっても変化するということであった.MRI検査は,栄養補助食品の剤形が崩れる6時間後まで控えることが望ましいということであった. 演題O-043は,吸湿発熱素材着用時におけるMRI撮像についての基礎的検討であった.検討を行った吸湿発熱素材においては,ごくわずかの変化はあったが,皮膚に影響がでるような温度変化や画像の極端な変化は起こらないということであった. 演題O-044は,クエン酸第二鉄水和物がMRI画像に与える影響についての演題であった.クエン酸第二鉄水和物はMRI検査において,T1強調像で陽性作用,T2強調像で陰性作用に優位に働くということであった. 演題O-045は,MRI検査における膀胱用超音波画像診断装置を用いた膀胱内蓄尿量測定の有用性についての検討であった.蓄尿量は,超音波装置とT2強調像で強い相関があり,超音波装置を検査直前に使用することは無駄な時間を省くことに有用であるということであった.

    O-039~045セッション:MRI検査⑤

    山﨑 敬之 静岡済生会総合病院

    演題O-046 聖隷浜松病院の渥美らは,インシデントレポートなどの取り組みや放射線部内の安全管理活動を積極的に行い,医療の質の向上に努めているという発表であった.放射線部内の活動に7人で組織され,積極的なレポート活動や緊急時トレーニングに取り組むことで,放射線部内の安全管理の環境が整っていると感じた.このような熱心な活動により多くのレポートが提出されているようである.今後も取り組みを拡充して医療安全活動に取り組んでいくことを望む.演題O-047 山の辺病院の前田らは,病院内の医療安全管理者としての取り組みや課題について発表した.医療安全管理者は診療報酬上でも,平成22年に「専従の医療安全管理者の設置では85点,専任の医療安全管理者の設置では35点」へと改定され,組織的な医療安全推進と質の向上が強く求められるようになってきた.医療事故をなくすために他職種と協働して対策をすることは大変な職務だと感じられた.施設内の医療安全管理者として今後ますます活躍することを望む.演題O-048 国立病院機構九州がんセンターの杉下らは,手術後の異物遺残再発防止に向けた取り組みを画像診断の精度を上げることで改善した取り組みを発表した.モニターの視認角度や勉強会を開催して画像の視認性を向上させた.また多職種と一緒にチームで再発防止に取り組む姿勢も評価できる.日本医療機能評価機構の報告では,年間数件から30件余りの「ガーゼ遺残事故」が起きている.この取り組みを十分に生かして取り組んでいき再発防止に取り組んでいくことを望む.演題O-049 厚木市立病院の甲斐らは,ハイブリッド手術室内の散乱線の空間線量分布から,周りのスタッフへの注意喚起をしてスタッフの意識向上を行った.2011年にICRPにおいて水晶体の線量限度が引き下げられ,多くの施設が取り組んできていると思われるが,注意喚起境界線を設定して,スタッフの意識の改善を図った取り組みであった.水晶体被ばくについて,線量把握をせずに防護されている施設も多いことから,このように現状を把握することが重要なポイントであり,そ

    O-046~051セッション:医療安全①

    山崎 厳 市立敦賀病院

  • 8 ◆ 日本診療放射線技師会

     演題O-052は,SPACE法を用いた頸動脈プラークイメージングにおける,Blood Suppressionの有用性と題して,SPACE法にMSG(Motion Sensitiza-tion Gradients)を印加すると血流信号は低下したがファントム,ボランティアともにCNRは向上有用であったとの報告である.臨床患者では,血管狭

    きょう

    窄さく

    よる乱流の影響が多く見られることにより,今後,臨床での症例を行い報告していただくことを期待する. 演題O-053は,取り下げであった. 演題O-054は,胸部ステントグラフト治療における展開角度の検討と題して,胸部ステントグラフト治療の術前,術後のCT画像を用いて動脈瘤の前後のランディングゾーンを計測するために一定基準を用いることによりグラフト治療の時間短縮につながったとの報告である.今後,症例を増やしていただき,ステントグラフトを安全かつ迅速に行うためのCT画像を用いたガイドラインの基準を目指して報告していただきたい. 演題O-055は,心臓CT検査と心臓血管造影検査(CAG)による心機能解析の比較と題して,CTとCAGから得られるEFを比較し,ほとんどの場合がCAGから得られるEFの方が高値を示していたとの報告である.誤差の理由として,技師間の特性,乳頭筋の影響,左心室の向きなどの原因を指摘していた.一般に超音波検査でもEFを測定しているので,今後はそれとの比較もしていただき,技師サイドでできる改善点を示していただくことを期待する. 演題O-056は,1.5T MRI装置におけるASL頭部脳血流画像の臨床的評価と題して,ASLで得られた脳血流画像の有用性を報告した.今後,スピンの到達時間の遅れなどのASLでの問題点を踏まえて,mismatch領域の血流評価を安定して得るための技師サイドの注意点を示していただくことを期待する. 当セッションは,臓器別による多種のモダリティーの検討であったが,どの機種においても診療放射線技師が大きく関与する重要なものであり,今後の検討を期待する.

    O-052~056セッション:疾病・臓器別①

    大野 誠一郎 岡山大学病院

    れをスタッフに共有することがわれわれの責務だと感じた.演題O-050 聖隷沼津病院の勝浦らは,CTやMRIでの画像処理件数の増加により,画像処理に要する時間の増加とそれに伴ういくつかのリスクの要因について分析し,リスク回避につながった取り組みを発表した.画像処理方法の検討検証し,改善された結果を画像処理にかかる時間で表現した.医師からの評価も高いことから,今後さらに画像処理のニーズが増えてくると思われるため日々検討していくことが必要であろう.演題O-051 昭和大学藤が丘病院の宗岡らは,放射線防護衣に菌を付着させて実験を行い,防護衣の衛生管理方法について検討を行った.防護衣からは感染対策上問題となる菌は検出されなかったようであった.フロアからは実験の方法についていくつか質問があったが,清掃方法の効果を比較することは衛生管理の意識付けにもつながることだと思われた.防護衣の衛生管理を日常点検に入れていない施設も多いと思われるため,われわれはさらに積極的に取り組むことが重要だと感じた.

  • 座長集約 ◆ 9

    第31回 日本診療放射線技師学術大会

    一般演題発表 座長集約(口述発表)

     本セッションは,マンモグラフィーや注腸,胃X線検査に関する内容であった. 演題O-057は,直接変換方式FPDにある線量モードとPMMA厚の違いであった.高線量モードにすると画質は良いが,被ばく線量が多くなる.乳房の厚みが薄い場合には,低線量モードで撮影しても,画質が担保されることが分かった.乳房の厚みに応じて,線量モードを変える撮影者の判断が被ばく低減につながる. 演題O-058は,CR乳房用X線装置と平均乳腺線量についてであった.乳房模擬ファントムを用いて,装置の平均乳腺線量を乳腺濃度別に算出することで,個人レベルの平均乳腺線量が把握できるようになった.被ばくを気にする受診者は多い.受診者へ被ばく線量をお伝えできれば,受診者は安心する. 演題O-059は,乳がん検診の現状についてであった.マンモグラィーの精度は高いが,触診やエコーの検査を組み合わせることで,より多くの乳がんを発見できる.乳腺によって,向き不向きの検査がある.乳腺に合わせた検査が早期発見には大切である. 演題O-060は,トモシンセシスにおけるc-viewについてであった.CDMAMファントムを用いて描出能を調べたところ,現状でc-viewは,コンベンショナル2D像に比べ劣る.しかし,c-viewによって乳がんの範囲診断など分かりやすいメリットがある.今後の動向が楽しみである. 演題O-061は,2w/v%の低濃度バリウム懸濁液を用いた新しい大腸洗浄法であった.以前に比べ,残便が減り,より詳細に大腸を観察できるようになった.受診者の苦痛は以前と変わらない.この新しい大腸洗浄法を研究会など利用して,世に広めてほしい. 演題O-062は,胃X線検査の検査台逆傾斜についてであった.検査台逆傾斜が30度以上で,多くの受診者が苦痛と感じた.撮影台逆傾斜30度未満でも撮影できるのであれば,より苦痛の少ない検査になる.撮影技術の向上が必要である. 皆,熱心に研究され,その成果を発表された.演者の方々のさらなる活躍を期待する.

    O-057~062セッション:疾病・臓器別②

    品川 祐樹 広島原爆障害対策協議会健康管理増進センター 

     本セッションは,頭頸部領域に関する検討と金属アーチファクト低減に関する検討であった.演題O-063 小倉記念病院 山之内雅幸氏は,3.0TでIDEALを使用したBB法について従来の1.5Tで検査しているBB法と比較検討を行った内容であった.IDEALを使用した3.0TのBB法は,コントラストや信号雑音比に優れていたことを報告した.演題O-064 鹿児島大学病院 若松重良氏は,新しいアプリケーションSEMACによる金属アーチファクト低減効果を基礎検討した内容であった.SEMAC factorを高く設定するに従い,金属アーチファクトをより低減できることを報告した.金属アーチファクトは診断を妨げる場合もあるので有用な検討であった.演題O-065 神戸大学医学部附属病院 曽宮雄一郎氏は,CFRPが使用されている頭頸部放射線治療固定具がMRI画像に与える影響について検討した内容であった.ファントムでも人体でもRFの遮蔽によりSNR,均一性が低下することを報告した.演題O-066 東京都済生会中央病院 江田哲男氏は,頸部MRAにおいて血流飽和減少に影響されない撮像条件として,FAとRampedRFについて検討した内容であった.FAとRampedRF の設定によってはVenetian Blind Artifactが顕著に出現することを報告した.演題O-067 いとう横浜クリニック 大原学氏は,脂肪抑制不良であった大動脈弓部領域のプラーク描出のためのVIBE-DIXON法の撮像条件を検討した内容であった.FAを上げることでSNRは低下するが,CNRは上昇し,またVIBE-DIXON法を用いることで脂肪抑制が安定し,大動脈弓部のプラークが描出できることを報告した.演題O-068 苫小牧日翔病院 鳥越大輔氏は,スライス選択的MTCパルスを用いた頭部MRAの最適な撮像条件を検討した内容であった.流速の違いによる流入信号への影響と血管信号に対する脳実質と脂肪組織のコント

    O-063~068セッション:MRI検査⑥

    山崎 達也 香川大学医学部附属病院

  • 10 ◆ 日本診療放射線技師会

     医療安全②のセッションは,MRI1題,CT4題,感染に関して1題の発表が行われた. 演題O-069は,栃木県内の施設にアンケート調査を行い,MRIの検査の現状とインシデントを集約されていた.今後は吸着事故やクエンチを起こした重要な内容の情報発信を行い,安全な検査につなげていくというものであった. 演題O-070は,外来から派遣された複数の看護師の造影剤副作用に関して理解度に差があったため,副作用発生時の対応の研修会を開催し,従事する看護師に周知させ,安全な造影検査体制を確立されていた. 演題O-071は,検査室に技師が一人になる状況があり,若い技師のスキルアップ体制が必要であるため,軍隊用語で状態報告,事実確認の意味であるデブリーフィングをCT検査に応用し,チームのスキルの向上,インシデントの低減につなげていた. 演題O-072は,CT検査の経験者と新人での検査時の目線の違いに着目し,危険予知能力を向上させるための動画テキストを作成し,繰り返し危険な場面のシミュレーションを行うことで危険予知能力を養う新人教育をされていた. 演題O-073は,造影剤副作用発生時の対応を適切に行うために,他職種を交えたシミュレーションをスタッフで実施し,その後のディスカッションを行うことでスタッフ同士の意識を向上し,副作用発生時は迅速に対応できる体制を作られていた. 演題O-074は,病棟のポータブル業務で標準予防策を十分に行えていないため,ポータブル装置のアルコール設置位置などの改善を行い,撮影手順の一部として標準予防策を行う意識をスタッフへ浸透させていた. 各演題とも安全に検査を行う上で,インシデントにつながりそうな事象をなくす工夫をされていた.また会場からの質問も多く,医療安全への関心の高さもうかがえた.情報発信や研修,シミュレーションを繰り返し行うことにより,スタッフ全員への周知や意識の向上がインシデントの低減につながると思われた.

    O-069~074セッション:医療安全②

    田尻 智美 済生会熊本病院

    ラスト,視覚評価によりMTCパルスを用いた最適な撮像条件を報告した.流速を臨床に近い値で検討するとさらに良い研究になったと考える. 各先生方の今後の活躍を期待したい.

  • 座長集約 ◆ 11

    第31回 日本診療放射線技師学術大会

    一般演題発表 座長集約(口述発表)

     以下の6演題のセッションである. 演題O-075「緊急作業被ばくの作業可能時間について」 密封線源治療における事故時対応可能時間を発表している.実際に事故の報告はまだないとのことだが,緊急作業訓練を行い,求められた時間内での作業が可能だと報告していた.

     演題O-076「軽さを優先したX線防護衣の選択方法」 鉛の厚さと遮蔽能力の関係を示すと,管電圧100kVのX線装置における散乱X線の遮蔽能力は0.25mm鉛当量で93.8%以上,0.35mmで97.1%,0.5mmで98.9%.発表では,鉛当量0.25mm(含鉛)と0.35mm(無鉛)が大差なしとのこと.比較的低エネルギーの遮蔽能力は大差がないと理解してよいようだ.

     演題O-077「聖隷放射線部被ばく防護検討委員会による診療放射線技師の個人被ばく線量削減の試み」 組織的に比較することは大切である.一つの組織内では被ばく線量の適正が分からない.他の仕事にも通じること,他施設の発表を聞くことで自施設の現状を知ることができる.大変素晴らしい発表である.

     演題O-078「ERCPにおける看護師の水晶体被ばく線量の簡易計算式の作成」 2011年ICRP勧告「水晶体の組織等価線量の線量限度年間150mSvから5年平均20mSv(単一年度に50mSv)を超えないようにすべき.また水晶体のしきい線量は0.5Gy」となった.簡易計算式により,おおよその水晶体被ばく線量が分かり,看護師への被ばく指導がしやすくなると思われる.

     演題O-079「I-131アブレーション時における診療放射線技師の内部被ばくリスクの検討」 131Iカプセル(20mCi:1110MBq)投与後,1時間は院内で監視可能な場所(待機室)が必要な理由がこのことから明確になった.体内に吸収されるまでの時間で呼気から空気中に浮遊すると考えられる.

    O-075~080セッション:放射線安全管理①

    鈴木 晋 公立昭和病院

     演題O-080「放射性医薬品の投与量調整システムの開発」 「小児核医学検査適正施行のコンセンサスガイドライン」に準拠した計算により動作する自動分注器を開発した報告である.分注量の誤差は少なく,少量でも可能である.今後,分注時間と投与時間の補正など実用性を実験してもらい,商品化されれば素晴らしいと感じた.

  • 12 ◆ 日本診療放射線技師会

     本セッションは,デジタル装置の長尺撮影について4題あった.最初は,海外メーカーの立位で長尺撮影正側が一度に撮影可能なEOS装置とCR装置撮影時の体位についての診断指標比較.また近年急速に普及している2ショット・3ショットFPD長尺撮影について,CRとの線量比較や計測精度比較.今後,FPD更新時のために,長尺撮影のつなぎ合わせ方法の検討,最新の長尺1ショットFPD撮影の有用性についてであった.デジタル撮影装置のFPD化が進んでいる現在,可搬型FPDを動かし2または3ショット撮影を行うもの,大きな1枚もので1ショット撮影型も販売され,現在どの装置を導入するかが悩ましいところであるが,FPD装置を使用した全ての発表で,従来のCRと比べFPD装置では線量低減が図られていた.今後もCRからFPDへの更新は必須である.これからCRからFPDへ更新を行う施設は,今回の発表などを参考にし,また装置の物理データのDQEなども参考にしながら,長尺撮影はもとよりその他の撮影も大幅な線量低減を図っていくことがわれわれ診療放射線技師の責務であると考える. 他2題は,FPD装置のワイヤレス化による手術室での使用に関して発表で,ワイヤレス化により麻酔時間短縮につながるとのことである.またカテ先・ガーゼ強調処理の検討で,線量低減を検討されていた.カテ先・ガーゼを見つけるには,画像処理が必須であり,線量低減を含めたさらなる検討が望まれる.

    O-087~092セッション:エックス線撮影①

    岸本 健治 大阪市立大学医学部附属病院

     放射線安全管理②のセッションは6演題の発表があり,開催初日の最初のセッションであったにもかかわらず,それぞれの演題で活発な発言が会場より多数あった.被ばく管理の発表が4演題となっており,施設の被ばく管理の意識の高さがうかがえた.個人被ばく管理の発表であったように,健康診断,教育訓練などとの一元管理が可能となること,管理者の負担が軽減されることは施設にとっての大きなメリットであると考えられた.CT,一般撮影,AGの発表では,それぞれの施設で患者被ばくの最適化が図られており,他施設が導入する際にも,有効に利用できる方法であった.今後は,DRLs2015と関連した評価も必要となってくる.放射線ホルミシス効果と診療放射線技師の果たす役割の発表においては,放射線に対する国民への正しい知識の普及について提言しており,放射線のプロフェッショナルとして,診療放射線技師の担う役割は大きいことが再度確認された.造影CT時のアナフィラキシーショックへの対応の発表については,心肺停止時の対応を経験したことにより,病院スタッフの造影剤副作用への意識を高めることとなった報告があった.継続的な勉強会や副作用対応シミュレーションを行うことの重要性が認識された.放射線安全管理は診療報酬を生み出すわけではないが,ひとたび事故が起こると病院経営にも大きな影響を与える.放射線被ばくについても,従事者と患者の線量管理を行うことで,安全に放射線を利用することにつながるため,本セッションの発表は非常に有用な内容であったと考えられた.

    O-081~086セッション:放射線安全管理②

    浅沼 治 札幌医科大学附属病院

  • 座長集約 ◆ 13

    第31回 日本診療放射線技師学術大会

    一般演題発表 座長集約(口述発表)

     本セッションは,エックス線撮影に関して肘関節4題,膝関節1題,股関節1題の計6演題が報告された. 演題O-093は,肘関節正面の定義を再検討し,肘の伸展が不可能な場合でも通用する撮影法を検討した発表であった.CT・MRI画像より,指標を上腕二頭筋とし前腕を優先してカセッテに密着させるという結論を導いた. 演題O-094は,尺骨神経溝撮影として知られる2つの撮影法を比較し,さらに最良な撮影法を提案した発表であった.尺骨神経溝の解剖や従来法の欠点を踏まえ新しい撮影法を2つ推奨したが,どちらも簡便で有用な撮影法と考えられた. 演題O-095は,肘関節正面像から側面のポジショニング予測を行うための角度計開発の報告であった.前腕輪郭中心線,尺骨切痕隆起という新たな指標を用いた専用の角度計は大変興味深く,正確な写真を提供するための惜しまない努力を感じた. 演題O-096は,肘関節外反自重ストレス撮影の補助具を作成し,技師・患者間の再現性を検討した発表であった.補助具の使用により再現性が高い結果を報告したが,補助具なしの場合との比較を今後検討されたい. 演題O-097は,膝側面撮影において屈曲角120度から130度にするために,膝体表面からの角度計測方法について検討し,撮影補助具を作成した発表であった.さまざまな体形,術後膝でも使用可能で,再現性良く撮影できるとのことであり有用性を感じた. 演題O-098は,股関節正面X線画像から骨盤の傾きを予測可能かについて3DCT画像を用いて検討した発表であり,先行研究と同様に単純X線像からは予測困難であったと結論付けた.

     会場は立ち見が出るほどの盛況で,質疑応答も活発に行われX線撮影の関心の高さがうかがわれた.一般撮影分野においても,根拠に基づいた撮影のため旧知の撮影方法を再考する必要性を感じた.最後に,演者の皆さまの今後のさらなる研究活動に期待し,座長集約とさせていただく.

    O-093~098セッション:エックス線撮影②

    田畑 るみか 特定医療法人社団勝木会やわたメディカルセンター

     本セッションは,前半部分は診療放射線技師の職責の一つである放射線防護の最適化の実践についての報告.後半部分は本会事業である医療被ばく低減施設の取得や更新についての報告が行われた. 前半部分,演題O-099は,自施設のX線CTの被ばくについて,2015年6月に公表されたDRLsを指標とし検討したものであった.演題O-100は,自施設の透視装置について,被ばくに影響を与え得る因子一つ一つの特性を把握し,さらなる被ばく低減に結びつけようとするものであった.演題O-101は,地域における診療放射線技師の役割として,地域医療機関における一般撮影の代表的部位について入射表面線量を測定し,この結果を基に助言を行い,被ばく低減に結び付けるものであった.いずれの演題においても診療放射線技師ならではのポイントに着目し,放射線防護の最適化の実践を進めるものであった. 後半部分,演題O-102は,医療被ばく低減施設の取得に当たって具体的な取り組みや工夫点,苦労した点などが報告された.演題O-103は,認定後5年目の更新を迎え,さらなるレベルアップにチャレンジした経験や更新のポイントが報告された.演題O-104は,認定取得後2年を経過し運用を進め,経験を重ねることで,認定時には気付きの少なかった問題点や今後の方向性についての報告となった.いずれの報告もこれから医療被ばく低減施設を取得しようと考えている視点では非常に参考になるものであり,本会事業の普及拡大という点からもふさわしいものであった. 本セッションは,われわれ診療放射線技師の職責たる部分をまっとうし,広く国民からの期待に応えようとする日々の実践を紹介しあう場となった.本セッションを傍聴した会員諸兄が,これら取り組みを自施設や地域に持ち帰り,おのおのの取り組みとして実践することを期待する.

    O-099~104セッション:公衆安全①

    佐藤 洋一 公益社団法人 山梨勤労者医療協会石和共立病院

  • 14 ◆ 日本診療放射線技師会

     演題O-111は,体動により使用できないデータがあった場合には,どの程度のデータであれば定量値や定性画像が担保できるかの検討を行った.その結果,レファレンスを20分収集とすると定量値については15分まではほぼ同等であり問題がないこと,10分程度では同等であるがバラツキがあるとの結果であり,定性画像については,収集時間の影響が大きく注意が必要であるとの報告であった.臨床でも体動時の報告体制が整っており,今後もこの方向で進んでいただきたいと思う. 演題O-112は,補正法によって解析結果の違いがどの程度あるかの検討を行ったが,吸収補正によりZスコアに影響を与えるが解析結果に有意差を認めなった.吸収補正によっては閾

    しきい

    値ち

    を超える症例があり,診断支援が変わるため注意が必要であるとの報告であった. 演題O-113は,ファントム実験によりSPECT回転中心を外れて撮像される可能性がある患者を想定し定量値への影響について検討を行った.回転中心を外れた場合と回転半径を広げて回転中心で撮像した場合を検討したが,回転中心を外れた場合はカウントが4%程度上昇するが画像のひずみによるものと考えられるので,回転中心を保持して回転半径を広げて撮像することがよいとの報告であった. 演題O-114は,ファントム実験において再構成法と吸収補正法を変更して収集条件の異なる2施設においてSBR値への影響を検討したが2施設でのSBR値は良好な相関があること,自施設で行った検討ではSBR値およびAI値は疾患ごとに特徴があるとの報告であった.先行する論文などを参考に今後も検討を続けていただきたい. 演題O-115は演題取り下げ. 演題O-116は,ファントム実験によりキュリーメータ値とxSPECTBone値との検討を行った.テクネチウム濃度の違いによる定量評価では±6%であり,SUVでは±4.7%以下であった.内径の異なる散乱体では19mm以下の内径ではキュリーメータ値より低くSUVも低くなったがこれは部分容積効果による影響がみられるとの報告であった.

    O-111~116セッション:核医学①

    藤下 稔雅 社会医療法人春回会長崎北病院   

     演題O-105 倉敷中央病院の福島らは,MRI検査が可能な心臓植込み型電気的デバイスについて,救急検査への対応を開始,独自の手順マニュアルを作成し報告した.細やかな工夫から安全性が担保されており,今後各施設の手本となる内容であった. 演題O-106 埼玉医科大学国際医療センターは,国内大学病院として初となるJCI認証を受審,取得した.これに伴い松田らは,放射線治療部門のSetup確認手順を大幅に見直し,これを報告した.IPSGに準拠し,院内policyよりも厳格な手順で,実施と記録の医療安全を厳密に追求した内容だった. 演題O-107 済生会熊本病院の枦山らは,MRI安全管理教育の取り組みを報告した.対面型講義だけでなく,認識度テストやe-ラーニング,出張講義,実地体験も交えた教育が成果を上げているという.多職種への教育体制が難しい中,MRI安全管理,啓発活動に工夫を凝らした内容だった. 演題O-108 昭和大学藤が丘病院の秋山らは,一般X線撮影検査の再撮影データをインシデントレポートとして取り上げ,分析,フィードバックする取り組みを報告した.個々の事例に対し教育することで再撮影減少につながり,医療安全向上に効果があったとの内容だった. 演題O-109 京都第二赤十字病院の松山らは,インシデントレベル0を拾い上げる試みを報告した.紙ベース,匿名,期間限定などで工夫し施行した結果,個人の危険予知能力向上,放射線科全体の安全性向上,重大エラーへの発展防止に寄与できたとの内容だった. 演題O-110 京都第二赤十字病院の松山らは,院内MSM委員会とは別に,放射線科独自の医療安全委員会を設置した試みを報告した.原因や対策を効率よく考案でき,情報共有することで再発防止につながる.他部署との連携もスムーズになったとの内容だった.

     どの報告も診療放射線技師会の大きな役割である「医療安全」に対し,非常に高い意識で取り組んでいる様子が印象的だった.今後も継続した「創意工夫の活動」を期待したい.

    O-105~110セッション:医療安全③チーム医療・倫理・カウンセリング②

    廣瀬 準司 山梨県厚生連健康管理センター 

  • 座長集約 ◆ 15

    第31回 日本診療放射線技師学術大会

    一般演題発表 座長集約(口述発表)

     心臓血流Gated SPECT検査では,古くからゲートを用いた心壁運動の解析がQGSソフトウエアを中心に,いくつかの解析ソフトウエアで行われている.QGSの特徴として,小心臓の解析の解析結果がESVで過小評価し,EDVでは過大評価,EFが過大評価することはよく知られている.今回の演題は,メーカーが新しく開発したGated SPECT解析ソフトウエア(cardio REPO)とQGSの比較の演題が多くあった.この新しい解析ソフトウエアは,小心臓の解析に補正処理がされていることで,解析値が超音波装置による値に近い値を算出するとの報告があった.Gated SPECT解析ソフトウエアにはいろいろ特徴があるが,絶対値といえるゴールドスタンダードはなく,各ソフトウエアについては,直線的に相関があることから,相互の利用は可能であるとこれらの演題から示唆される. また 99mTc製剤の場合,心筋外集積を低減することが画質改善の大きなカギである.一般的に,高脂質のものを飲ませることで心筋外集積の影響が強い胆のうを低カウントにすることが知られている.演題の中にあったが近年高齢化が進み,高脂質のものが飲めない患者さんのため,水を飲ませる程度の対応をしていると報告があった.高齢化に伴う撮像手法が今後の検討課題と考える. 123I-MIBGの解析の演題では,ROIの位置ズレにおけるH/M値の評価であった.報告では,心臓に一周り小さい円形でROIを囲むことで,ROIが数ピクセルずれても大きく値が変化しないとの報告であった.安定したH/M比を臨床側に提供することは重要で,有用な報告であったと思う. SPECTによる心筋のViabilityとFFRの相関については,想像通りの結果ではあったが,1枝,2枝病変では,側副血行路によって必ずしもViabilityとFFRの相関が崩れる症例が生じる可能性もあるので,症例を増やし,今後の検討をお願いしたい.

    O-117~122セッション:核医学②

    岩永 秀幸 山口大学医学部附属病院

     本セッションは,チーム医療について4演題,Aiについて1演題,その他1演題の計6演題の発表が行われた. チーム医療では診療放射線技師の読影も含め,各施設の取り組みや問題点を取り上げている.そんな中,全ての施設で重要と感じていたのは情報の共有である.連携において他職種とのコミュニケーションは必要不可欠であり,お互いが理解,補完し合うことがチーム成功の鍵となる. また読影の補助の観点から積極的に一次読影を行う施設もあり,院内での貢献度および地位向上を目指している. ただし,一抹の疑問として「読影の補助=技師による一次読影」「チーム医療=補完」という傾向が強すぎるように思えてならない.読影の補助は技師に一次読影だけを求められているわけではなく,必要に応じた追加処理や依頼内容に無いその患者の主訴や容体を明記するなど,多岐にわたるはずである.またチーム医療は目標に向かい情報を共有し,おのおのが最高のパフォーマンスをすることが患者への最良の還元であり,補完の意味合いばかりが先走るとチームとしての完成度は落ち,結果医療の質が低下するのではないかと思われる.あくまでも施設の環境に左右されるため個人的な意見を主張するわけではないが,もっと広義な意味で捉えてもよいのではないかと考える. Aiについては,死因究明に必要なツールとなるべく,少しずつではあるが各県に普及しつつある.中でもCTやMRIなどを操作できる診療放射線技師への要望は多く今後の活躍が期待される. その他としては,X線・CTで描出可能な義歯の開発である.金属部分の無い多くの義歯はアクリル樹脂でできており,これらがX線による描出を困難にしている.そのためある加工を施すことで画像診断の精度を高め正確に把握でき,誤嚥患者に適切な処置が行えるというものである.ただ値段との折り合いで普及には少しかかりそうだが,今後楽しみな発表である.

    O-123~128セッション:チーム医療・倫理・カウンセリング①

    上久保 賢二 独立行政法人 地域医療機能推進機構滋賀病院            

  • 16 ◆ 日本診療放射線技師会

     演題O-135 緩下剤を用いた新たな大腸CT前処置法の検討 緩下剤として酸化マグネシウムと難消化性デキストリン含有飲料水を用いた前処置でのCTCの評価であった.残便の可動や解析評価から有効性を評価したものであった. 緩下剤は有効性の高い前処置法でCTCの前処置として有用性が高いと思われる.今後のさらなる使用経験の報告に期待する. 演題O-136 大腸憩室疾患におけるCT colonog-raphyの診断能の検討 大腸憩室の診断能をCTCと注腸検査と比較したもので,前処置の方法はCTCと注腸と同じ条件での比較であった.大腸疾患の診断能はCTCに仮想注腸像にMPR画像を組み合わせることで,注腸検査と同等の診断能が得られるものであった. 演題O-137 加算画像を用いた低コントラスト分解能向上の試み 140kVと80kV,二回の撮影の加算画像は120kVよりもコントラスト分解に優れる検討であった.CNRの評価では加算画像の方が優れるといった結果であった.動きで加算にズレが生じるのが2回撮影の欠点ともいえる.1回撮影で関数を変えるなどの検討はできないものだろうか. 演題O-138 人工膝関節(TKA)術前CT計測における当院の新たな試み TKA手術で大腿骨外反角は,オペや予後にも影響があると考えられ重要な要因の一つのようである.座標を使った計測での計算を用いることで計測値の信頼がよくなると考えられる. 臨床での有用性をオペ後の評価からも検討をしていただきたい. 演題O-139 CT画像読影モニタにおける格子状ノイズの検討 モニタ診断で画像を拡大させると格子状ノイズが出現するものであった.4分割などではわずかな拡大でも格子状ノイズが出現するため,過去画像との比較の際の拡大では問題となる.補間計算のアルゴリズムの影響もあるとの検討であった.今後の対策に期待をしたい.

    O-135~139セッション:エックス線CT検査⑤

    磯部 好孝 JCHO 四日市羽津医療センター

     演題O-129 一宮市立市民病院 山田晃弘氏,救急頭部CTの際,正しいポジショニングができない場合,MPRで画像を再構成することがあるが,その場合の画質に与える影響についての検討.CNRはやや下がるものの,診断に影響を与えることはなかった. 演題O-130 四日市羽津医療センター 磯部好孝氏,管電圧120kVと低管電圧80kVとの造影剤低減に関する検討.低管電圧にすることで動脈相でのヨードのCT値が約1.5倍になり,肝実質も増強され,脂肪は低下するので,造影剤量を67%に減らすことができる. 演題O-131 水戸済生会病院 佐々木充氏,腎機能低下患者に対する大動脈3D-CTAの低管電圧による造影剤低減の検討.管電圧120kVの時,300HUの造影剤と同等のCT値を得るために必要な造影剤量は,おおよそ80kVで50%,100kVで75%,120kVで120%であった.よって腎機能低下患者に低管電圧を用いることにより,造影剤量を減らすことが可能であった. 演題O-132 JR札幌病院 河野通晴氏,64列MDCTによる副腎静脈サンプリング検査支援のための副腎静脈および副肝静脈の3D画像描出の検討.後期動脈相と門脈相の撮影を行うことにより,右副腎静脈は31/50例で同定良好な画像を得て,9例で可能,10例が不可であった.左副腎静脈は全て同定可能であり,副肝静脈は27例が同定可能であった. 演題O-133 豊見城中央病院 金城一史氏,320列CTによる原発性アルドステロン症(PA)に対する副腎サンプリング(AVS)検査支援のための副腎静脈3D撮影についての検討.64列CTの使用経験より右腎動脈と右腎静脈レベルのIVCは相関を認め,320列Volume Scanでは100kVp,600mgI/kg,28秒注入,腎動脈より約22秒後に1.5秒/rotで撮影することにより,CT値および視覚評価で改善がみられた. 演題O-134 土谷総合病院 舛田隆則氏,低管電圧を用いた小児躯幹検査における実効線量の実測値とDLPより算出される推定値との比較検討.小児型ファントムに蛍光ガラス線量計を封入し,管電圧80kV,100kV,120kVでCT-AECを用いたヘリカルスキャン時の各実効線量において実測値と推定値に大差は見られなかった.

    O-129~134セッション:エックス線CT検査④

    森田 英稔 済生会松阪総合病院

  • 座長集約 ◆ 17

    第31回 日本診療放射線技師学術大会

    一般演題発表 座長集約(口述発表)

     本セッションは,学生セッションであり全国の放射線を学ぶ大学生,院生から6演題が発表され,その内容は多岐にわたった. 演題O-140は,EPIDを用いてリニアックのエネルギー変動を簡易的に測定することを目的に検討された.厚さの異なる金属板をEPID上に配置することで安価,簡便にX線エネルギー変動を確認することができたといった結論であった.日々の測定を行う上で簡便に行えることは魅力であり期待したい. 演題O-141は,教科書などによる学習から立体的な画像による学習を行うことで,よりリアルな画像学習をすることを目的に,ヘッドマウントディスプレイ上での画像をマウスと同様に,手のジェスチャーで操作することを目的とした発表であった.今後,これを利用しカンファレンスなどで多くの人が参加できることを期待したい. 演題O-142は,演題O-141と同じく画像の学習支援として人体ファンム上を指で示した高さにあった断層画像を投影させるシステムの開発についての発表であった.今後,オブリーク画像などに瞬時に対応できるシステム開発に期待したい. 演題O-143は,シリコンフォトマルとGSOシンチレーターを組み合わせたTOF-PET装置において,Ceの添加量の違いによる時間分解能を評価した発表であった.Seの添加量は1.5mol%で良い結果が得られており,今後の臨床応用に期待したい. 演題O-144は,医用画像表示モニターのカラー画像表示品質管理のために,輝度一定のまま色度のみを変えるカラーパターンをモニター上に表示し人間の色差弁別能の測定を行った発表であった.会場より観察者21人の視力の違いによる評価についての質問があり,今後さらに研究を進めていただきたい. 演題O-145は,画質と線量の両立を目的に,ウェブレット変換を用いてデジタルX線画像での画質の改善についての有用性の検証を行った発表であった.今後他のモダリティーなどについても検討し,臨床に応用できることを期待したい. 演者の方々には,今後臨床の場でもさらに研究を進めご活躍を期待して座長集約とさせていただく.

    O-140~145セッション:学生セッション

    川上 裕 渋川総合病院

     MR Elastography単独の演題が4題,MR Elas-tography+他の指標の評価が1題,MRSと他の指標の評価が1演題であった.MR Elastography(肝臓)において,与える加振周波数は,当院では体重を記録し,技師の見た目の判断で高低2種のマルチ周波数法を用いているが,より客観的な評価法であるBMI値を用いた演題があった.BMI値の判定基準は一般的には,18.5未満で「やせ」,18.5以上25未満で「標準」,25以上30未満で「肥満」,30以上で「高度肥満」と判定されている.発表では25以上と25以下に分けて撮影.検討結果より25以下では50Hz,25以上では50 or 80Hzで撮影しているということであった.基本はマルチ周波数法ではなく,単一周波数法ということであった.客観的な指標であるBMI値を使い,加振周波数を決定するとても良い方法であり,標準化の指標になり得ると考えられる.MRSを用いてNAFLDの評価を試みた演題があった.対照法として超音波で得られるCAPという指標を用いていた.どちらも強い相関を示し,NAFLDと標準者肝の指標としてMRSは使えるということであった.MRSは約20秒の息止めで撮像でき,単純に脂肪と水のピーク比を測定するということであった.簡便に測定できるので良い方法であると考えられる.加振周波数をマルチ周波数とし,得られた弾性率に相違があるのは,粘性の影響ではないかという検討があった.周波数を高くすると,弾性率は高くなる傾向があり,粘性の評価に使えるということであった.MR Elastographyは息止めで撮像された画像を解析するのが前提となっている.長い撮像時間を回避するためにPIを使用した演題があった.息止め時間が短くなることで,息止め可能となり,測定領域が広がったということであった.非常に興味のある演題ばかりであった.

    O-146~150セッション:MRI検査⑦

    高橋 光幸 国家公務員共済組合連合会横浜栄共済病院    

  • 18 ◆ 日本診療放射線技師会

     今回,私が担当した全ての演題に共通して言えることは,新しい撮像法に挑戦している点が,非常に素晴らしいといえる. 取り組むきっかけは,医師から “これって撮像できる” 日常業務中に “うまく撮像できなかったことの改善” など,さまざまであるが “一人の技術者” として非常に立派な志を持ち,日夜研鑽を積んでいる人たちのセッションだといえる. 演題O-151 MRIでは,時間分解能的に描出が厳しいAgamkiewicz動脈の描出するため希釈した低容量造影剤を使用する先行した症例報告を,基礎実験で検証を行い,再現性を担保し臨床の現場に生かしている.着目点のアイデアは素晴らしいといえる. 演題O-152 心臓の拍動を模した自作ファントムを作成し,門脈の描出に一般的ではない3DT2スピンエコーのSPACE法をあえて用いるところは,若い技師さんならではの発想で,情熱とそして柔軟な感覚は素晴らしいといえる. 演題O-153 下肢の末梢動脈の描出は,非常に難しい分野である.安定して末梢動脈が描出できれば,造影剤が使用できない患者さまには非常に利点が大きい撮像方法といえる.今回の発表は,ボランティアのみということであったが第2報を期待したい. 演題O-154 3.0T冠動脈MRA検査を安定して行うための指標として,採血結果から得られるBMIという指標を利用し,MRI検査を行うところが素晴らしいと思う.放射線技師の業務以外の知識がなければ,今回の研究発表ができなかったといえる. 演題O-155 今回発表された最短TEの非造影剤MRAで,十分にステント内腔の評価ができることが分かった.明日からの業務に役立つ発表は,とても素晴らしいといえる. 演題O-156 非造影の腎動脈検査は,下大静脈が一緒に描出されたため再撮像を行ったり,患者さまの心拍動が撮像に大きく影響したりと,非常に難しい分野の撮像だといえる.今回の発表では,心拍動の影響についての発表が無かったと思われるので,第2報としてこの辺りを含んだ発表を聞きたくなる発表だったといえる.

    O-151~156セッション:MRI検査⑧

    中室 智之 足利赤十字病院

     本セッションは,心臓・血管系における撮影法や解析,被ばく低減・造影剤低減など臨床に直結する内容が多かった.時間が押しており最後の演題において質疑応答ができなかったことをここで謝罪したい. 演題O-157 ECG Modulationの挙動を把握することで,心拍数が50以上でECG Modulation40%~80%から45%~75%にしてもSD値が同等となりDLPは平均8%減少したということだった.さらなる被ばく低減にはProspective撮影の方が良いと思われる. 演題O-158 肺動静脈分離における造影法の検討では,基本的にTI法を利用することでCT値が安定してるということであった.しかし,検査時間の延長や煩雑さなどが気になるところである.また1回の息止めで2相撮影することで,位置ズレの心配も考えられる. 演題O-159 心臓単純CTを全胸部撮影にすることで,通常の範囲外の心臓外病変を検出できることは有効であると思われる.その中には生命に関係する重要な病変も含まれいた.ただし,被ばくが増えることと,息止め時間が長くなることを考慮しなければならないと考える. 演題O-160 急性動脈解離・大動脈瘤でのfollow up CTAは,発症後から近日中に数回行われることで,被ばくや造影剤の影響が懸念される.follow upでの診断における画質を維持しつつ,被ばくや造影剤を低減することは大変有用性が高いと思われる. 演題O-161 TAG解析を用いた心筋虚血症例では,健常例に比べTAG解析の傾き値が大きいことが分かった.しかし,健常例においてもさまざまな生理的要因(血管径など)・技術的要因(装置依存性など)により解析結果に影響があるということで,大変簡便な方法ではあるが問題はまだ多いということであった. 演題O-162 EVAR術前CT画像から術後のType Ⅱ endoleakの予測する因子としてIMAの場合,血管径や大動脈瘤からの分岐の仕方,LAにおいては血管径や大動脈瘤に依存する本数が関係するということであった.

    O-157~162セッション:エックス線CT検査⑥

    大平 知之 済生会山口総合病院

  • 座長集約 ◆ 19

    第31回 日本診療放射線技師学術大会

    一般演題発表 座長集約(口述発表)

    O-163~168セッション:エックス線CT検査⑦

    演題O-169 空間分解能を向上させることを目的として焦点サイズ,ヘリカルピッチ,回転速度,収集列数を変化させて空間分解能を評価した報告であった.撮影条件を物理,視覚評価することにより最適な撮影条件を設定できた.演題O-170 頸動脈留置後のステント内膜を評価するための最適な再構成関数選択するために,ワイヤー法を用いた物理評価,シュッフェの視覚評価を用いて行った.MTFの結果としてアンダーシュートがなく,かつ周波数特性の一番高い再構成関数が視覚評価でも優れていた.演題O-171 Enterprise VRDを用いたコイル塞栓術は頭部血管内手術において有用な手法であるが,CT撮影時において,コイルから生じるメタルアーチファクトは診断を困難にする.メタルアーチファクトリダクションを目的としたアプリケーションSEMARの有用性の検討を物理,視覚評価で行った.SEMARはアーチファクトが存在する場合のみにその効果があり,検討項目のSDや視覚評価の結果,その臨床使用の有用性が期待できる.演題O-172 頸部CT Perfusion 検査において,解析結果を左右する因子に撮影スライス厚がある.頸部リンパ節を解析する場合,3mmスライス厚が妥当であるとの結果であった.演題O-173 SEMARの特性において,隣り合う物質の急

    きゅうしゅん

    峻なCT値の変化に対しては効果が少ない傾向がある.ファントムを使用した検討においては,金属と隣接部分に水を入れることによりアーチファクトの減少効果が大きい.口腔領域にSEMARを使用する場合,口腔内に水を含んだ状態で撮影することが有用である.演題O-174 mask像に対してAsirを使用し,被ばく線量を減少させる検討を行った.Ziostation2を使用したファントム実験では,SD30以下において良好な結果となった.高コントラスト成分においてはMask像に対してAsir100%使用することにより,SD30の画像であっても良好な結果が得られた.

    O-169~174セッション:エックス線CT検査⑧

    丹羽 正厳 市立四日市病院

  • 20 ◆ 日本診療放射線技師会

     演題O-175は,CNRを指標とした自動露出機構(CNR-AEC)における画質保持効果および線量低減効果の検討である.検出能を担保しつつ100kV使用時には体格による差はあるが,2~3割の線量低減が期待できるとする報告であった. 演題O-176は,従来のCT-AEC(Intelli EC)と逐次近似応用再構成を考慮したCT-AEC(Intelli EC plus)の動作特性についての検討である.これらは同様な動作を示し,Intelli EC plusは画質を考慮して挙動することで,Intelli ECよりも設定SDに制御しやすいことが示唆されるという報告であった. 演題O-177は,オーバーレンジをカットする目的で装備された非対称可変コリメータの動作測定についての検討である.先行研究では2台のリアルタイム線量計を用いたが,1台の線量計で直接線を測定し,コリメータの動作測定が可能であるという報告であった. 演題O-178は,介助者の水晶体被ばくとその低減方法についての検討である.Helical ScanはVolume Scanに比べ,ビームピッチのオーバーラップとオーバースキャニングの影響で高い空間線量を示した.介助者の水晶体被ばく線量の低減にはVolume Scanが有効であり,防護メガネや足台の使用でさらに被ばく低減が期待できるという報告であった. 演題O-179は,逐次近似応用再構成の導入時にOptimize CARE CTを実施した撮影線量最適化についての検討である.経時的に撮影線量を低減し,再構成関数や逐次近似の強度変更により腹部で20%の線量低減ができ,逐次近似応用再構成の有効利用で画質を維持した状態で線量の最適化ができたという報告であった. 演題O-180は,冠動脈CTの臨床画像で,従来の画像再構成法とZioStation2のPhyZiodynamicsを用いた画像について,ノイズ評価と冠動脈の視覚評価を行った.PhyZiodynamicsを用いることでノイズが低減され視覚評価の高い画像を得られる可能性が示唆されるという報告であった.

    O-175~180セッション:エックス線CT検査⑨

    森岡 雅幸 奈良県立医科大学附属病院

     本セッションはX線CTに関する発表が6題で,内容は多岐にわたっていた. 演題O-181は,ODM使用時のピッチと管球回転速度との関係を研究した発表であった.その効果は管球回転速度に依存しないものの,Highピッチ使用時に注意が必要とのことであった.ODMは画質を担保しながら局所の被ばく低減に有効であるので,撮影部位やピッチに留意し,積極的に使用すべきである. 演題O-182は,肺結節のボリューム測定の際の,各種再構成法の影響を研究していた.全ての再構成法で誤差の許容範囲内に収まっており,再現性に問題はなかった.経時的に観察が必要な検査であるため被ばくを考慮した再構成法を選択するべきである. 演題O-183は,読影補助用肋骨展開ソフトの問題点と対策についての研究であった.スライス厚,スライス間隔を最適にすることで問題点を改善できるという研究であった.有用なソフトを生かすのは有効な画像データを提供することが第一であることをあらためて認識した. 演題O-184は,CT透視の撮影法の一つであるOne Shotモードの基礎的な研究であった.一般的にCT透視は照射部位が同一で,また術者の被ばくも懸念されるが,この方法はHalf Scanも使用可能で被ばく低減を実現しながら画像も担保できていた.具体的な被ばく線量も知りたい所である. 演題O-185は,位置決め画像と本スキャン画像の臓器位置の違いによるAECの挙動についての研究であった.ファントム実験ではピッチと管球回転速度によってSD値に変動があるが,実臨床ではAECの設定値や逐次近似応用再構成で対処しているとのことであった. 演題O-186は,大腸CTの超低線量スタディに対する研究であった.逐次近似応用再構成の強度を調整し,画像を担保しながらもかなり低いDLP値に抑えられているという印象を受けた.より患者にやさしい検査になっていく可能性を感じた.

    O-181~186セッション:エックス線CT検査⑩

    佐藤 俊光 山形大学医学部附属病院

  • 座長集約 ◆ 21

    第31回 日本診療放射線技師学術大会

    一般演題発表 座長集約(口述発表)

    O-187~192セッション:エックス線CT検査⑪

     演題O-193 高精度放射線治療を実践するためには,標的の位置を正確に把握する必要があり,呼吸同期放射線治療の際は4DCTが利用される.4DCTは,3DCTに時間という因子を加えた画像であるため,標的の位置精度とCT値の変動について確認する必要がある.この研究では,時間による呼吸位相間の誤差はIsotropic Image内で,CT値の変動は2SDの範囲であったと報告し,4DCTの精度は高いとした. 演題O-194 AAPM TG176にあるようにカウチサイドが起因して線量分布が変化し,皮膚線量を増大させるため,高精度放射線治療のみならず,放射線を利用した医療にとって,カウチの吸収線量を検討することは重要である.この研究では,RTP内に標準搭載される仮想カウチの電子密度を変化させた際,実測値との誤差は1%程度まで改善でき,ガントリー角度が125度と235度で誤差が最大と報告した. 演題O-195 Winston-Lutzテストで使用するガフクロミックフィルムの種類(透過型・反射型)により,照射から解析の間で生じる誤差について検討,フィルムの種類による影響はないとした.ただし,照射線量が400MU以上,読み取り解像度が150dpi以上で解析することにより結果の偏差が小さい結果となると報告した. 演題O-196 頭部VMAT用のQAファントムを自作し,線量誤差・線量分布についてRTP・実測値と比較,高い精度が担保され臨床使用が可能であるとした.幾何学的精度についても高い精度を持つとしたが,頭部を模擬した円柱ファントムであるため,ファントム設置に時間を要すると報告した. 演題O-197 IGRTが実践できる放射線治療システムにおいて,照射系と照合系の座標の一致度を確認することは重要である.この研究では,その管理が総合的に実施できるようファントムと解析ソフトを開発し,高精度なIGRT管理システムを構築,効率的に管理できると報告した.ファントムは,治療室内に併設された診断用CT装置の管理(寝台回転軸の管理など)ができるよう工夫されており,他にHU値の不変性試験などができる機能を備える.

    O-193~197セッション:放射線治療①

    森本 芳美 県立広島病院

  • 22 ◆ 日本診療放射線技師会

     本セッションは,画像誘導放射線治療についての6演題が報告された.サイバーナイフやプロトン,重粒子線などの特殊な装置もあるが,通常のフォトンのIGRT業務改善についても報告された.また外照射だけでなく,RALSについても流行のIGBTについて報告があった. 今回の報告では,過去の実施例からのレトロスペクティブな解析が多くなされており,十分なデータ量からある一定の結果が導き出され,きちんと有意を得ている点では評価できた.しかし,その後の改善に結び付けるさらなる発展に継げるものはなかったため有益な報告とはいえない.今後のさらなる検討に期待したいと思う.また実施報告的な内容の場合,口述発表よりも示説発表の方が,データをじっくり見て自施設の内容と比較できるため聴講者のためになると思われた.

    O-198~203セッション:放射線治療②

    伊藤 照生 東邦大学医療センター佐倉病院

     演題O-204 当院におけるLarge field IMRTでのSplit fieldに関する検証は,DMLC IMRTにおけるSplit fieldのつなぎ目部分の線量分布を二次元半導体検出器とフィルムを用いて実測し,治療計画装置と比較したというものであった.良好な結果が提示されており,コミッショニングが十分行われたことが推測できる発表であった. 演題O-205 陽子線スポットスキャニング法によるパッチ照射の検討は,粒子線治療で照射範囲が広い際に行われるパッチ照射に対して,つなぎ目部分をシャープな線量分布を用いてつなぐのではなく,段階的に線量制約を設けた線量分布を作成することで,つなぎ目の変更を必要とせず,かつ位置ズレに対してロバストな治療計画を作成するというものであった.発表は治療計画装置におけるシミュレーションの結果であったが,臨床での使用を目指し検証を続けていただきたい. 演題O-206 乳房温存術後照射におけるIrregular surface compensatorの有用性と,演題O-207 全脳照射におけるIrregular surface compensatorを用いた線量分布の改善は,共に均一な線量分布を得ることが難しい部位に対してIrregular surface com-pensatorとfield-in-fieldを比較したもので,最大線量の増加がなく,線量均一性が改善されるとのことであった.Irregular surface compensatorはfor-ward IMRTに類する技術であるので,検証作業を行う必要があることと,計画者によって治療計画に差ができにくくする制約や工夫が重要になると思われた. 演題O-208 TrueBeam治療台に関する基礎的検討は,6軸駆動寝台に対して剛性と寝台に荷重をかけた状態でのIGRTの精度を検証したものであった.寝台は荷重によりたわみが発生するが,kV Cone Beam CTを用いたIGRTを施行することで補正することが可能であり,治療計画装置上での寝台モデリングも精度よく再現できるといったものであった. 演題O-209 Jaffe plotを用いたKsの再評価は,2点電圧法とJaffe plotにより求められたksを比較し施設のリファレンス線量計の印可電圧の妥当性を再評価したものであった.結果のいかんによらずリファレンス線量計の印可電圧の変更ならびに公正条件の変更を行う際は,自施設で十分な検討をした上で行うべきである.

    O-204~209セッション:放射線治療③

    阿部 幸直 千葉大学医学部附属病院

  • 座長集約 ◆ 23

    第31回 日本診療放射線技師学術大会

    一般演題発表 座長集約(口述発表)

     本セッションは,デジタル胸部X線撮影に関する演題6題であった. 演題O-210~212は,デジタルX線撮影システム(以下,DRS)ならではの撮影条件最適化について検討した研究発表であった. 演題O-210・211は,同施設からの発表で,発表内容の理由から順番を入れ替えて発表された.この2題では,胸部X線撮影において,線質を考慮したDRSにおける撮影条件の最適化について検討した結果,90~100kV(準高圧)のX線に銅フィルタを付加することにより,良質な線質(X線スペクトル)が得られ,これらのX線を利用することは画質改善および被ばく線量低減につながるとの報告であった.これは,全国的に胸部X線撮影における被ばく線量が増加している原因が,DRSに変更された際に撮影条件の最適化を図らなかった施設が多いことが考えられるとのことであった. 演題O-212は,胸部経時的差分画像の画質を向上させるためには,原画像の向上は必須であり,そのために撮影条件を検討された報告であった.特にGGOのような淡い陰影を対象にした場合,被写体コントラスト向上と被ばく線量低減を考慮すると,100kV前後(準高圧)のX線を利用することが適切であるとのことであった. 演題O-210~212の共通点は,『DRSにおける撮影条件最適化について各施設でよく検討してほしい』と訴えていることであった. 演題O-213・214は,散乱線補正デジタル画像処理に関する演題であった. 演題O-213は,その効果をJISの定めるグリッドの性能試験と比較するための代替法(線量計による測定値の代わりに画素値を用いる方法)について検討したものであった. 演題O-214は,その効果をコントラスト改善能にて評価した結果,この画像処理が有用であったことの報告であった. 演題O-215は,経時的差分システムを利用する際,アーチファクトの原因の一つに呼吸位相による影響があるが,その影響を評価するに当たり,対象2画像の肺野部の面積比を用いた.この方法でも呼吸位相につ

    O-210~215セッション:エックス線撮影③

    今井 方丈 神戸総合医療専門学校

    いて留意すべきであることが確認された. 以上,DRSにおける胸部X線撮影には,改善すべき点が多々あることが再認識された.

  • 24 ◆ 日本診療放射線技師会

     演題O-216は,EIT値を過去データから決定し,被写体圧から適正EI値となる撮影条件を回帰式によって決定する発表だった.EI値は管電圧の影響を受けるのでそれも加味し,管電圧一定でmAsを求めるプロセスは各施設においても応用可能な方法と感じた. 演題O-217は,REX値を用いてCXDI機種間の性能を管電圧とmAsを変化させながら評価した発表であった.同一線量ではシステム感度が高いほどREX値は高値を示し,新旧比較して最大約2倍の感度差となる結果であった.REX値は画像処理後の基準濃度出力値のため,臨床の被ばく評価には難しいが,一定条件でのシステム比較には有用と感じた. 演題O-218は,EI値算出方法の違いが臨床上及ぼす影響を検証した発表であった.関心値の平均を用いる方法と中央値を用いる方法を対象に検証した結果,中央値の方が照射野サイズや撮影位置などによるヒストグラム変化に対し影響が少なかった.EI値の中心傾向は装置ごとに異なるため確認して使用する必要があると感じた. 演題O-219は,CsIのFPDに適した付加フィルタを検討することで,画質を担保しつつ,被ばく低減を行った発表であった.従来Al1.5mmをCu0.2mm+Al1.5mmと変更することで画質を損なうことなく約3割の被ばく低減可能という結果となった.デバイスごとに最適フィルタを検討するのは有用であり,本発表を機に各施設でも付加フィルタの検討を望む. 演題O-220は,FPDの任意回転処理がMTFおよび画質に及ぼす影響を評価した発表であった.任意回転処理は回転角度が大きくなるほどMTFが向上する結果となり,一方で画質に大きな影響はなく,Bicubic補完が関与していると考えられた.画像補完が臨床画像に影響する可能性も考えられるので今後も引き続き検証を期待したい. 演題O-221は,GOSとCsIの蛍光体層の違いによる感度差をREX値とEI値を用いて比較した発表であった.REX値はCsIがGOSより約3割高値となり線量低減の可能性が示唆された.一方で,EI値は7%誤差があり,実験系の精度も影響したのではないかと考え,今後も検討をいただきたい.

    O-216~221セッション:エックス線撮影④

    太田 佳孝 岩手医科大学附属病院

     演題O-222 山田友也さんの「新生児ポータブル撮