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対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 個別プロジェクト名 知識体系テキスト化 資料名 知識体系テキスト化②PPP総論 年度 2009年度 年月 2009.4~7

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Page 1: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト

個別プロジェクト名 知識体系テキスト化

資料名

知識体系テキスト化②PPP総論

年度 2009年度

年月 2009.4~7

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知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト化 PPP総論

テーマ ページ数

Vol.1 2009年4月11日 P   1

Vol.2 2009年4月18日 歴史的アプローチ1 P  13

Vol.3 2009年4月25日 歴史的アプローチ2 P  27

Vol.4 2009年5月9日 経済理論アプローチ1 P  38

Vol.5 2009年5月16日 経済理論アプローチ2 P  54

Vol.6 2009年5月23日 制度手法アプローチ1 P  67

Vol.7 2009年5月30日 制度手法アプローチ1 P  78

Vol.8 2009年6月13日 制度手法アプローチ2(委託、市場化テスト) P  98

Vol.9 2009年6月20日 制度手法アプローチ3(民営化) P 126

Vol.10 2009年6月27日 制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型) P 138

Vol.11 2009年7月4日 制度手法アプローチ5(規制誘導型) P 146

Vol.12 2009年7月11日 金融アプローチ1(PPPをめぐる金融環境、収入安定化 P 157

Vol.13 2009年7月18日 金融アプローチ2(優先劣後関係) P 173

Vol.14 2009年7月25日 まとめ キーワードの復習 P 180

目  次

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PPP総論Ⅰ vol.01

2009.4.11

PPP総論Ⅰ全体の構成

• PPPの定義

• PPPの類型

• 歴史アプローチ

• 経済学アプローチ

• 制度手法アプローチ

• 金融アプローチ

1

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PPPの定義

• 東洋大学では、公民連携を、英語のPPP (Public/Private Partnership)の略語として捉えて

います。

• 公民連携を官民連携と呼ばないのは、英語がGovernment/Private Partnershipではないから

です。

• PPPの定義をみてみましょう。

PPPの定義を有している機関等

・経済産業省・UNISON (UK Public Service Union) ・Irish Government ・Frits Bolkestein (EU commissioner for internal markets)・NCPPP (National Council for Public-Private Partnerships)・CCPPP (Canadian Council for Public-Private Partnerships)・SUEZ・UNDP (United Nations Development Program)

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経済産業省「日本版PPP研究会」

• 「民間でできることは、できるだけ民間に委ねる」との原則の下に、公共サービスの属性に応じて、民間委託、PFI、独立行政法人化、民営化等の方策の活用に関する検討を進めることとしている。これは、我が国における公共サービス分野での官民パートナーシップによる公共サービスの民間開放(以下、「PPP:Public Private Partnership」という。)の推進を目指すものである。

UNISON (UK Public Service Union)

• Public Private Partnerships (PPP) is the umbrella name given to a range of initiatives which involve the private sector in the operation of public services. The Private Finance Initiative (PFI) is the most frequently used initiative.

• 公共サービス、民間セクターの関与、イニシアティブ、包括的名称

http://www.unison.org.uk/pfi/

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Irish Government

• A PPP is a contractual arrangement between the public and private sectors (consistent with a broad range of possible partnership structures) with clear agreement on shared objectives for the delivery of public infrastructure and/or public services by the private sector that would otherwise have been provided through traditional public sector procurement.

http://www.ppp.gov.ie

Frits Bolkestein (EU commissioner for internal markets)

• There is no overarching definition for public-private partnerships. PPP is an umbrella notion covering a wide range of economic activity and is in a constant evolution.

http://www.pwc.com/extweb/pwcpublications.nsf/docid/0CCBDC941900852A85257098007320A0

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NCPPP (National Council for Public-Private Partnerships)

• A Public-Private Partnership is a contractualagreement between a public agency (federal, state or local) and a private sector entity. Through this agreement, the skills and assets of each sector (public and private) are shared in delivering a service or facility for the use of the general public. In addition to the sharing of resources, each party shares in the risks and the rewards potential in the delivery of the service and/or facility.

http://www.ncppp.org

CCPPP (Canadian Council for Public-Private Partnerships)

• A cooperative venture between the public and private sectors, built on the expertise of each partner, that best meets clearly defined public needs through the appropriate allocation of resources, risks and rewards.

http://www.pppcouncil.ca/

5

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SUEZ

• Public-private partnership (PPP): a contractual arrangement adapted to each local situation by which the public sector authority assigns certain missions to a private operator and specifies objectives. The public sector partner retains regulatory control and owner-ship of the infrastructure, as opposed to privatizations which are based on the transfer of ownership of the infrastructure assets.

http://www.suez.com/

UNDP (United Nations Development Program)

• Private-Public Partnerships (PPP) are an effective means of establishing cooperation between public and private actors and to bundle financial resources, know-how and expertise to address these urban environmental needs. PPPs offer alternatives to full privatization, combining the advantages of both the public and the private sector.

http://www.undp.org

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NCPPPの定義・・・一番わかりやすい

• Between public and private –官と民の関係・・・分野は限定しない

• Sharing risks and rewards–リスクとリターンの設計

• Contractual agreement–契約によるガバナンス

本専攻の定義

• 公共サービスの提供や地域経済の再生など何らかの政策目的を持つ事業が実施されるにあたって、官(地方自治体、国等)と民(民間企業、NPO、

市民等)が目的決定、施設建設・所有、事業運営、資金調達など何らかの役割を分担して行うこと。

• その際、(1)リスクとリターンの設計、(2)契約によるガバナンスの2つの原則が行われること。

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PPPの原則1 リスクとリターンの設計

行政

NPO・NGO等

投資家・金融機関

建設・不動産

事業会社

• リスクをもっとも上手に管理できる人が負担する。

• その役割に伴うリスクに見合うリターンを与える必要がある。

リスク

リターン

従来型 PPP

民間

行政

民間

または

PPPの原則2 契約によるガバナンス

官 民 市民

政策目的の決定 全部または一部の実行

契約・監視 契約内容が履行されているか・制裁 契約を守らないときの責任の問い方・報酬 契約を守ったときの動機付け

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PPPの類型

• 「官」と「民」の中間領域 すべてを対象に考える

純粋公共事業

公民連携事業純粋民間事業公共サー

ビス型公共資産活用型

規制・誘導型

事業が行われる空間(土地・建物)

官 官 官 民 民

行われる事業内容(公共サービスか、民間事業か)

官 官 民 民 民

類型ごとの例

• 公共サービス型(PFI、民営化など)

– 美祢社会復帰促進センター(刑務所)

– 我孫子市提案型公共サービス民営化制度

• 公共資産活用型

– 東京ミッドタウン

– 小中学校廃校舎活用事業

– 横浜市新市庁舎候補地提案

• 規制・誘導型

– ユニバーサルスタジオジャパン

– 豊後高田昭和のまちづくり

– 歌舞伎町ルネッサンス

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土地所有 企画募集

企画提案

建設 施設所有

資金調達

運営

純粋公共事業 官 官 官 官 官 官 官

公民連携事業

公共サービス型

業務委託 官 官 官 官 官 官 民

管理委託 官 官 官 官 官 官 民

指定管理者 官 官 官 官 官 官 民

PFI(BTO)

官 官 民 民 民→官 民 民

PFI(BOT)

官 官 民 民 民 民 民

民間化 官→民 官 民 民 官、民 民 民

民営化 官→民 官 民 民 民 民 民

公有資産活用型

公有地活用(賃貸)

官 官 民 民 官、民 民 民

同左(売却) 官→民 官 民 民 民 民 民

公有施設活用(賃貸)

官 官 民 官→民 官 民 民

同左(売却) 官→民 官 民 官→民 民 民 民

規制・誘導型 民 民 民 民 民 民 民

純粋民間事業 民 民 民 民 民 民 民

PPPの4つのアプローチ

経済学アプローチ

歴史アプローチ

制度手法アプローチ

金融アプローチ

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歴史アプローチのキーワード

• 大きな政府、小さな政府

• 労働党政権、保守党政権、国有化、民営化

• サッチャー、中曽根、レーガン

• NPM (New Public Management)• 三セク、PFI、市場化テスト

• 運営委託、管理委託、指定管理者

• 都市再生、地域再生、構造改革特区

経済学アプローチのキーワード

• 物々交換、貨幣、市場

• 公共財、準公共財、非排除性、非競合性

• 外部経済、外部不経済

• 市場の失敗、幼稚産業

• 政府の失敗、ソフトバジェット、コンテスタビリティ

• 政策評価、費用便益分析

• 情報の非対称性、逆選択(アドバース・セレクション)、モラルハザード

• プリンシパル・エージェント理論、ゲーム理論

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制度・手法アプローチのキーワード

• PFI(サービス購入型、独立採算型)

• 運営委託、管理委託、指定管理者、包括民間委託

• VFM、PSC、PFI-LCC、落札者選定基準

• ガバナンス、モニタリング、インセンティブ、ペナルティ

• 長期債務負担行為、直接契約、自治体財政健全化法、債務調整

• 市場化テスト、官民競争入札、民間競争入札

• 都市再生、地域再生、構造改革特区、中心市街地活性化

• TIF、BID

金融アプローチのキーワード

• トランザクショナル・バンキング、リレーションシップ・バンキング、スコアリングモデル

• コーポレート・ファイナンス、プロジェクト・ファイナンス、メザニン、証券化

• 収入安定化、優先劣後関係、分散、保証、マイクロファイナンス

• DES, DDS, DIPファイナンス

• 新株予約権、ストックオプション、MBO、EBO

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PPP総論Ⅰ vol.02

2009.4.18

歴史アプローチ1

英国編

• 現在のPPPは英国からはじまった。

• 19世紀を通じて経済が長期衰退し、世界経済の覇権が米国へ移動。決定づけたのが第二次世界大戦後の米国中心の体制構築。経済再生への取り組みの開始。・・・二つの異なる処方箋

• 2次大戦後~70年代の労働党政権期では、企業国有化を中心とする 「大きな政府」が推進された

• 79年成立のサッチャー政権期以降では、逆に、国営企業を民営化する「小さな政府」が推進された。

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「大きな政府」

• 経済政策の基本方針

–完全雇用達成が目的

–国家による経済への介入(炭鉱、水道、石油・ガ

ス、電力、鉄道、航空、バス、鉄鋼等の国有化)

–所得統制(政府が賃金上昇率を統制)

• 「大きな政府」は成功しなかった

–本来市場原理で存在しうる企業も国有化した。

–政府の支援が恒常化し、財政規律が欠如した。

–高すぎる課税水準と高福祉による労働へのイン

センティブの喪失。

「小さな政府」

• 「小さな政府」政策の基本方針

–民営化、競争原理導入による効率性の向上

–経済全体に占める公的部門の役割の減少

– Value For Moneyの 大化(次葉)

–説明責任の伴った公共サービス提供の仕組みへの転換

– これらを包摂した概念がNPM(New Public Management=新公共経営)。同時期に行われた

ニュージーランドや北欧諸国の政策の動きを総称して名付けられた。

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Value For Money

• 本来は、「費用対効果が高い」の意味の普通名詞。

• 「同じ費用なら高い効果」、「同じ効果なら安い費用」・・・単に安くすることが目的ではない。

• 後年、PFI(Private Finance Initiative)の導入により、

官で行うと仮定した場合との定量的な比較が必要となったため、PFIにおける評価手法として一般化した。

• ただし、日本では現実には、「いくら安くできるか」の指標となっている。

NPM

• クリストファー・フッド・・・英国の行政学者でNPMの

創始者

• Hood, Christopher[1991] “A Public Management For All Seasons?” Public Administration Vol.69

– NPMは「民間経営」と「新制度派経済学」の「結

婚」

• 民間経営の7つの原則(次葉)

• 新制度派経済学・・不確実性が支配する経済を分析、不確実性を減少する法制度の役割(それを操作できる政府の役割)を重視

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民間経営の7つの原則

• (1)実践的マネージメント:経営トップの裁量の余地を拡大するとともに責任を明確化

• (2)業績についての明確な基準と指標の設定

• (3)アウトプットと結果を重視し、資源配分と報酬を業績測定とリンク

• (4)公的組織を細分化:供給主体の分離および契約的手続きの使用

• (5)競争原理(市場メカニズム)の導入

• (6)民間の経営スタイルの取り入れ(顧客志向、サービス志向、権限委譲、柔軟性等)

• (7)資源使用における規律と節約の重視

サッチャー政権のNPM政策

• 1 民営化

– 国有化された企業の民営化の要素が強い

• 2 CCT(Compulsory Competitive Tendering)

– 1980年地方自治体の計画と土地に関する法律

– 強制競争入札、ブルーカラーからホワイトカラーに拡大

– 手続費用が膨大

– 日本の市場化テストのモデル

• 3 エージェンシー

– 1987から導入

– 独立採算制あるいは企業会計原則といった民間の手法を取り入れる

– 日本の独立行政法人のモデル

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サッチャー政権の政策の評価

• サッチャー政権の「小さな政府」の特徴

–一見 も困難なはずの「民営化」から始まった。

–これがあまりにも劇的だったため、NPM=英国、さらにNPMを継承するPPP=英国と

の印象が世界中に植え付けられた。

–実は、その前の労働党政権の「大きな政府」の反動の要素が大きい。(民でできるものを民営化しただけ)

PFIの登場

• 小さな政府の限界

–受益者負担のものは民営化した

–マーストリヒト条約による外圧

–受益者負担でないものにも、民の知恵を発揮できる余地はないのか

• PFI (Private Finance Initiative)を生み出す・・・’92メイジャー政権

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例:刑務所

• 刑務所は代表的な公共サービスであり民営化できないと考えられていた(公共財・・・経済理論アプローチを参照)

• だが、刑務所サービスを分解してみると、民が供給できるものもある(細分化)–建物の設計、建設

–建物の維持管理

–職業訓練

–給食、理髪、医療、カウンセリング

–情報システム

PFIの画期性

• PFIは、公共サービスの決定主体を官に残しつつ、実施主体を民に移転するという発想。

• 民に公共サービスを生産してもらい、それを官が購入するという発想を取った。

• 自分で商品を作るか、外部から購入するかを経済合理的に選択するというきわめて民的な発想!

• 初期にユニバーサル・テスティング(すべての事業に対してPFIの実施可能性の検討を義務

づける)を導入して普及を促進

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大きな政府、小さな政府、PFIの比較

官 民 市民

官 市民

決定・実施

決定 実施

民 市民

決定・実施

大きな政府(純粋公共事業)

小さな政府(純粋民間事業)

税金

料金

PFI

税金

サービス購入料

労働党政権への転換

• ’97 ブレア政権

• より広汎な概念であるPPPとして一般化(その

本質は公共サービスの購入であり、すでにPFIにより始まっていた)

• 政策としては「第三の道」・・・市場の効率性を重視しつつも国家の補完による公正の確保を指向するという従来の保守-労働の二元論とは異なる第三の新しい路線(英国の社会学者ギデンズの提唱)

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ブレア政権期でのPPP

• ベスト・バリュー(CCTからの切り替え)

–公共サービスの実施方式

–プロジェクトの価値(バリュー)を 大化する形態を選択する

–形式的に官民競争であることは変わらないが、効率性重視から、効率性と質の向上の同時実現

ブラウン政権期でのPPP

• ブラウン首相:97年以降財務大臣、ブレア政権でのPPPの主要な推進者

• 金融危機対応や保守党の支持率上昇など多難な状況にあるが、PPP政策自体はブレア政

権を継承している

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Page 23: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

英国の展開

民営化

‘79サッチャー政

‘81

‘87

エージェンシー制度

’80 官民競争入札制度(CCT)

‘92 PFI

メイジャー政権

‘97ブレア政権

ブラウン政権‘07

ベストバリュー

日本編

• 中曽根政権:サッチャー政権の民営化の影響を強く受ける

–国鉄、電電公社が民営化

• インフラ系プロジェクトのために第三セクターが登場した

–第三セクター:行政(国、地方自治体)と民間企業が共同出資して設立された法人

–官の持つ公益性(計画性)と民の持つ効率性が同時に実現できるという目論み

–バブル経済期に重なっていた

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第三セクターの構造

行政

公共事業

行政 民間?

第三セクター

行政のリスクは減るが、民間がリスクを負っているわけではない。NPMの中の責任、契約、報酬などの概念は導入され

ていない。

第三セクターの課題

• 事前のリスク分析の不十分さ

– リスク分析能力の不足、過去のトラックレコード(実績)がない種類のプロジェクトが多い

• リスクとリターンの設計の不存在

– プロジェクト推進のみによって恩恵を被る民間企業が多い(建設、金属、エンジニアリング)

– 終的にはコーポレート信用で補完、プロジェクト収益率の概念が薄い

• 契約によるガバナンスの不存在

– 設計が不十分である以上契約も曖昧

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Page 25: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

三セク以降のビジネスモデル

• すべての第三セクターが崩壊したわけではないが、多くが赤字となったことも事実。

• 持続可能な官と民の連携のビジネスモデルが必要。新しい手法が生み出せない状態がバブル崩壊以降続いた。

• 同時に海外事例が調査され、客観主義(リスク事前評価)、透明性、契約主義など新しい原則を持つPFIが注目された。

第三セクターに比べてPFIがもたらしたもの

• 特定事業の選定、民間事業者の選定において公平性が担保されること。(公平性原則)

• 特定事業の発案から終結に至る全過程を通じて透明性が確保されること。(透明性原則)

• 各段階での評価決定について客観性があること。(客観主義)

• 公共施設等の管理者等と選定事業者との間の合意について、明文により、当事者の役割及び責任分担等の契約内容を明確にすること。(契約主義)

• 事業を担う企業体の法人格上の独立性又は事業部門の区分経理上の独立性が確保されること。(独立主義)

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Page 26: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

• 前ページに加えて以下の原則あり

• 公共性のある事業であること。(公共性原則)

• 民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用すること。(民間経営資源活用原則)

• 民間事業者の自主性と創意工夫を尊重することにより、効率的かつ効果的に実施すること。(効率性原則)

(参考)PFIの原則

民営化

‘82 中曽根政権

‘86

市場化テスト‘06

専売公社国鉄

民活法施行

‘01 小泉政権

第三セクター

‘99

‘03指定管理者

バブル崩壊後の空白の時代

独立行政法人

PFI

日本での展開

郵政民営化

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Page 27: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

英国 日本

民営化

80年代以前

中曽根政権発足

市場化テスト

小泉政権発足

第三セクター

指定管理者

PFI

サッチャー政権発足

90年代

民営化

PFI

00年代

官民競争入札制度(CCT)

労働党政権の国営化

ブレア政権発足 ユニバーサルテスティング廃止

バブル崩壊後の空白の時代

ブラウン政権発足

英国のPPPの歴史(まとめ)

• 労働党政権:雇用対策としての“大きな政府”が財政赤字と非効率な経済を生み出す失敗

• 保守党政権:“小さな政府”が方法論としての民営化などNPMを生み出す

• 民営化一段落後、民営化できない場合でも使える新しい形態としてPFIが誕生した。

• その後の労働党政権でも基本政策は変わらず、より大きな枠組みとしてのPPPおよび第三

の道につながった。

• 現在でも英国の経済政策の柱となっている。

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Page 28: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

日本のPPPの歴史(まとめ)

• 戦後復興~高度成長期の“大きな政府”、中曽根政権期の“小さな政府”の流れは英国の歴史と同じ。

• 社会資本整備のリスクを民に移転するために、第三セクターが設立された。だが、リスク分担や契約概念への理解はなされなかった。

• 三セクは、バブル経済崩壊により多数破綻し、ビジネスモデルとしては失敗。暗中模索の結果、英国で実績を上げていたPFIにたどり着く。

• はじめてPFIがもたらした客観主義、透明性、契約主

義などは、他分野にも大きな影響を与えて、指定管理者制度、市場化テストなどを生み出し、より大きなPPPへと広がった。

英国と日本の対比

• “大きな政府”と、その弊害の是正策としての“小さな政府”誕生の経緯は共通している。

• その手段として、市場メカニズムを活用した点も同様。

• だが、英国がPFIを早期に生み出した一方、日本は第

三セクターの隆盛から失敗、暗中模索に約7年の時間を要した。

• 理由

• 市場メカニズムの本質であるリスク、客観性、契約概念が一般的でなかった。その問題がバブル経済の中で表面化せず、バブル経済崩壊、三セク事業破綻という大きな衝撃によりはじめて認知された

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Page 29: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

PPP総論Ⅰvol.03歴史アプローチ2

2009.4.25

根本祐二

前回の確認問題

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フランスのPPP 歴史1

• 伝統的に国家資本主義

• 2次大戦以降、国有化が進められた

– 交通、エネルギー、通信、金融、製造業・・・

– 英国労働党政権の大きな政府と重なる

• ’86 シラク首相 民営化プログラムの導入

– しかし、その後も、政府が過半の議決権株式を保

有、また、電気、ガス、運輸等では国営企業が維

持されている

– 小さな政府ではあるがサッチャー政権とは異なる

• 一方、歴史的に委託分野は先行している。

– ジェランス(単純業務委託)、レジー・アンテレッセ

(業績連動型委託)、アフェルマージ(リスク移転

型委託)、コンセッション(リスク包括移転型委託)

– コンセッション

• 施設は官が保有するものの、資金調達、維持

管理/運営はすべて民が行う形態。

• 19世紀から、鉄道、電灯、ガス灯照明事業な

どで導入されてきた歴史ある形態。法制化:

1992年。

フランスのPPP 歴史2

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Page 31: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

• EU経済統合による規制緩和により、官の所有権自

体も移転可能とする選択肢が加わる。

• PPPの導入(英国PFIを参考にしたもの)

– 01~ 警察署、刑務所、病院、国防など個別法に基づくサービス購入型PFIが認められた

– 04 協働契約に関するオルドナンス

• 一般法化された。

• 街路灯システム、路面電車、競技場、議会、駐車場、家庭廃棄物焼却施設等が進捗中

• サルコジ政権でも基本は変わらず。

フランスのPPP 歴史3

フランスのPPP 民間委託類型比較

ジェランス

レジー・

アンテレッセ

アフェルマージ

コンセッション

PPP

根拠法 共和国地方行政に関する92年法 2004 年6 月17 日行

政令

施設所有 官 官 官 官 民

資金調達 官 官 官 民 民

維持管理/運営

民 民 民 民 民

料金徴収 官 官(ただし業績連動報酬あり)

民 民 官

契約期間 1~数年 1~数年 10~15年 20~30年 20~30年

29

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フランスのPPPの歴史

‘86 シラク首相(’86~’88)

コンセッション

‘92

PPP(行政令)‘04

法制化(共和国地方行政に関する92年法)

ジェランス

アフェルマージュ

レジー・アンテレッセ

民営化

PPP(個別法)

ミッテラン大統領

シラク大統領

サルコジ大統領

‘96

‘07

‘01 サルコジ内相、財務相

フランスのまとめ

• “大きな政府”、“小さな政府”、“PPP”の進展は

同じ。

• ただし、官が所有権を持つという形でのPPP形態として伝統的にコンセッション他の形態がある。

• 所有権移転型のPPPの進展の契機は、EU経済統合だった。

• その際、英国のPFIが導入された。PFIが世界

標準の一つとなった。

30

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米国のPPPの歴史 1

• 伝統的に地方分権国家(そもそも州が国)+民主導、いわば“小さな政府”が国是

• NCPPP(National Council For Public/Private Partnership, 米国PPP協会)によると

– 17c ボストン 上水道サービス

– 18c フィラデルフィア 道路(農家の配達用)

– 19c エリー湖運河

– 大陸横断鉄道プロジェクト

– などがすでにPPPによって実現されたとしている。

• 2次大戦後、世界的な不況への対応として積極的な財

政政策が実施された。“大きな政府”と言える。

• ’81 レーガン政権(~’89)

– 減税による供給サイドの刺激、福祉支出の削減は

レーガノミックスと呼ばれ、サッチャー政権と並び小

さな政府を推進した。

– しかしながら、上記の成功を前提に推進するはず

の軍事支出増大が先行する形となり、財政赤字が

著しく拡大した(後年の景気拡大には貢献した)

– ‘85 バランスバジェットを法制化

米国のPPPの歴史 2

31

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米国のPPPの歴史 3

90以降、財政再建→民間活用の方向性がより明確

‘91 ISTEA(Intermodal Surface Transfer Efficiency Act)

余剰道路財源の利用

都市再生PPP(規制・誘導型)に転用(土壌汚染

対策、開発)

都市再生PPPの拡大

公共サービス型PPPの拡大

電話帳テスト(例:インディアナポリス)

民営化(例:フロリダ州商務省)

米国のPPPの歴史

‘81 レーガン政権発足

’91

90年代

後半~

レーガノミックス

国有化はほとんどない

ISTEA公共サービス民営化

都市再生分野のPPP

結果として財政赤字拡大

民主導の開発指向の強まり 財源確保方策

32

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米国の歴史のまとめ

• もともと民主導の経済としてPPPの歴史は古い。

• 2次大戦後は雇用維持のための財政政策が展開された。(“大きな政府”)

• サッチャー政権と同時期のレーガン政権は、減税に

よる経済活力の振興を図ったが(レーガノミックス)、

結果的に軍事費増大が先行して財政赤字が拡大。

• 財政再建路線の中で、余剰道路財源の転用(ISTEA)が行われたこともあり、都市再生PPPが盛んになっ

た。

ニュージーランドのPPP

• 伝統的には高福祉国家。しかしながら、英国のEUシフトに伴い、主力産業である農業が市場を失う。

• ’84ロンギ政権誕生。英国型の小さな政府を踏襲し、

国営企業(電信電話、鉄道、航空、電力、金融など)民営化された。

• 多くは外資に売却され、経済の発展、財政赤字の解消がもたらされた。

• 反面、所得格差の拡大、医療制度の崩壊を生んだ。

• 現在のクラーク政権は、政府による介入を部分的に復活させている。

• ’93陸上輸送管理法 コンセッション型PPP

33

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北欧のPPP

• 基本的には高福祉高負担。政府部門が大きい=大きな政府

• 教育水準の高さ、高福祉による将来リスクの減少による経済活動が活発化。

• その中で、サービス提供を効率化する動きはある。=行政組織内部での効率化の追求

• また、地域の公共サービスを、官、民(営利)のいずれでもないサードセクター(非営利)が提供する例が多い。

世界各国のモデルの相対比較

• 視点

– 「管理マインド」(伝統型政府)と「経営マインド」(NPM)。

– 「行政組織内部の運営の効率化」 (大きな政府)

と「市場メカニズムの活用」(小さな政府)

• 各国のNPMの変化の分析

– ドイツの行政学者ナショルト

• New Frontiers in Public Sector Management ,1996

– OECD

• Public Management Development, 1991

34

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• 北欧型 「行政組織内部の運営の効率化」

– 行政のスタンスを管理型から経営型に変革する内部改革モデル。官の役割が大きい。

– サードセクターによるサービス提供あり。

• 英国型 「市場メカニズムの活用」

– 市場メカニズムの活用により、管理型から経営型に変革する外部改革モデル。不可避的にPPPが誕生する。

– 英国、ニュージーランドが採用。

– 英国からPFIを導入した日本も結果的に追随。

北欧型と英国型

フランス型と米国型

• フランス型

– 基本的には内部改革モデルと外部改革モデルの中間。

– しかしながら、EU規制への適合から急激に市場メ

カニズムの導入による外部改革モデルにシフトしつつある。

• 米国型

– 伝統的に相対的には小さな政府。

– 80年代後半以降の財政再建に、市場メカニズムによる外部改革モデルがさらに強く導入された。

35

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行政内部組織重視=大きな政府

市場メカニズム重視=小さな政府

経営マインド(NPM)

管理マインド

英国

北欧諸国

フランス

米国

日本

NZ

伝統的な統治システム

各国の比較

歴史アプローチまとめ

• 国によって大きな差があるが、

– 大きな政府

– 小さな政府– PPP

• の基本的な流れ自体は同じ。• 多くの国にとって、“大きな政府”だけでは財政赤字を生むおそれ。

• 民営化を典型とする“小さな政府”だけでは、民営化できる部門だけに限定される。

• この結果、“小さな政府”の発想を公的部門全体に広げる概念としてPPPが誕生した。

36

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途上国への発展系

• 途上国、旧ソ連東欧圏の経済復興などでも、PPPは多く用いられている

– 急速にインフラ整備を図る必要がある

• 予算制約によらない資源の集中投入が可能

• 民間の時間概念の導入により早期化の動機が働く

– 公的部門への信頼性が薄く、その裏返しとしての民間部門の役割が大きい

– 政府制度そのものが脆弱なので、大きな政府、小さな政府とは別の観点

(参考)ビクトール・ペストフのピラミッドとPPP

公的

私的

非営利営利

公式

非公式 政府

企業共同体

狭義PPPのフィールド

サードセクターNPO、NGO

37

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PPP総論Ⅰ vol.04

2009.5.9

根本祐二

経済理論アプローチ1

前回の確認問題

0.0 5.0 10.0 15.0

平均

D(~59%)

C(60%~69%)

B(70%~79%)

A(80%~89%)

S(90%~)

4月25日

4月18日

38

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歴史アプローチまとめ

• 国によって大きな差があるが、

– 大きな政府

– 小さな政府(NPM)

– PPPの進展

• の基本的な流れ自体は同じ。

• 多くの国にとって、失業対策、高福祉のための“大きな政府”(高福祉、高負担)だけでは財政赤字を生む。

• 民営化を典型とする“小さな政府”だけでは、民営化でき

る部門だけに限定される。

• この結果、“小さな政府”の発想を公的部門全体に広げる概念としてPPPが誕生した。

行政内部組織重視=大きな政府

市場メカニズム重視=小さな政府

経営マインド(NPM)

管理マインド

英国

北欧諸国

フランス

米国

日本

NZ

伝統的な統治システム

各国の比較

39

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ビクトール・ペストフのピラミッドとPPP

公的

私的

非営利営利

公式

非公式 政府

企業共同体

狭義PPPのフィールド

サードセクターNPO、NGO

経済理論アプローチのキーワード

市場の失敗

政府の失敗

公民連携の役割

市場の役割

政府の役割

公民連携の失敗

“大きな政府”

“小さな政府”

PPP

40

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市場以前=自給自足

• 自分の必要な財、サービスをどのように確保す

るかは生物にとっての根源的な行動。

• 市場および政府以前の世界では自ら確保。

• 自給自足(生活に必要な物資(食料や衣料、

住居など)を自分自身で生産すること)

• 家族、部族単位での確保(種の保存本能)

物々交換、市場、貨幣

• 人々のニーズが生存から生活へと多様化。生活に

必要な物資を細分化し、それぞれ得意な役割を分

担し合う。=原始的なパートナーシップ

• 物々交換

– 各々の価値(その財、サービスから得られる効

用)が同一の場合物々交換が成立する。

• 何とでも交換できる財が誕生し選択肢を広げる=貨

幣の誕生

• 多くの人が集まり選択肢を広げる=市場の成立

• 市場は、価格を変化させることで望ましい資源配分

を実現させることができる

41

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市場の役割

財の供給・需要量

財の価格

需要曲線

供給曲線 価格が変動して需要と供給が一致する。

市場の役割

• すべての市場参加者が同じ価格で取り引きすること

ができるならば、需要曲線と供給曲線の交点で決ま

る。

• この状態は、すべての資源をもっとも有効に利用し

ている状態である。市場均衡を阻害すること自体が、

否定される。

• 基本的には政府は不必要な存在となる。夜警国家

論。

• だが、市場メカニズムが機能しない場合がある=市

場の失敗

42

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1 公共財

• 公共財の定義 1

• 非排除性・・ある財の利用から他の消費者の利用を

排除することが不可能か、あるいは技術的に困難、

排除費用が膨大であること

• 普通の財(例:パン)は、料金を支払わなければ

消費できない。

• 非排除性のある財(例:国防)は、料金を支払わ

なくても消費できる、料金を支払わない人は守ら

ないという選択が困難。

• 公共財の定義 2

• 非競合性・・同じ財を同時に複数の消費者が消

費できること

• 普通の財(例:パン)は、いったん消費されると

他者はその財を消費できない。

• 非競合性のある財(例:国防)は、誰かが消費

しても他の誰かが消費できなくなることはない。

43

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公共財の分類

• 純粋公共財

• 非排除性、非競合性の両方を満たす財

• 例:国防、警察、消防、公衆衛生、地球環境

• 準公共財

• 非排除性、非競合性の一部を満たす

• 非競合性のみで排除可能=クラブ財

• 例:有線放送、有料道路

PPPとの関連(1)公共サービスと公共財の違い

• 公共サービス型PPPの対象施設・サービスに相当

– PFI、指定管理者、市場化テストなど

• だが、これらの対象は公共財よりもかなり広い

– PFI:公共施設等(PFI法)

– 指定管理者:公(おおやけ)の施設(地方自治法)

– 市場化テスト:特定公共サービス(公共サービス改革法)

• そもそも現実の公共サービスが公共財よりもかなり広いことを意味している

44

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例:PFI法の公共施設等

• 1 道路、鉄道、港湾、空港、河川、公園、水道、下水道、工業用水道等の公共施設

• 2 庁舎、宿舎等の公用施設

• 3 公営住宅及び教育文化施設、廃棄物処理施設、医療施設、社会福祉施設、更生保護施設、駐車場、地下街等の公益的施設

• 4 情報通信施設、熱供給施設、新エネルギー施設、リサイクル施設(廃棄物処理施設を除く。)、観光施設及び研究施設

• 私的財も多く含まれている

価値財(メリット財)

• 公共財は、市場の失敗であるが、一方、市場によって供給可能な私的財であっても、社会にとって価値があると判断されるならば、その財の供給は市場に全面的に任せるのではなく、消費者主権に制限を加えて政府が介入し、その供給に政府が責任を持つことが望ましい。=価値財(メリット財)

• 例:教育、福祉、医療、公共住宅、スポーツ振興、国際交流事業、学校給食、図書館、博物館・・・・・・

• 非常に多くの政府サービスはここに位置づけ可能。

• 政府独自で供給を決定しうるので肥大化傾向をもたらす。

45

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地方公共財

• 全国的公共財(national public goods) – 国防、外交など便益が全国に及ぶ公共財

• 地方公共財(local public goods) – 一般道路,消防,通常の犯罪の取り締まりなど便益が狭い地域にとどまる公共財

• 地方公共財は、中央政府は進んで供給しようとしない。全国的公共財を、地方政府による供給に任せようとしても、各地方政府はフリーライドしようとするので供給は過小になる。=中央政府と地方政府の役割分担の必然性。

• 「地方公共財」への安易な依存と過大な供給傾向

PPPとの関連(2) 細分化

• 経済学上の公共財は大括りの概念。PPPでは、仕事

内容を細分化することで官民の役割分担をさらに具体的に分解することが可能と考える。

– 例:刑務所PFI・・・公共財としては、刑務所は典型的な純粋公共財。PPPでは、刑務所サービスを細

分化する。刑務執行は官の仕事だが、職業訓練、体育指導、給食、理髪、リネンサプライ、面会者接遇、情報システム、建物建設・維持補修などは民でできる。刑務執行の一部(指示に従わない抵抗者、脱走者の確保など)も、被対象者に接触しない範囲までは可能。

46

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2 外部性

• 外部性の定義

• ある経済主体の活動が他の経済主体に及ぼす

影響

• 市場を経由しないで波及する場合(例:生垣によ

る地域の美観維持、大気汚染などの公害)

外部不経済(負の外部性)

価格

需要曲線

ある主体の供給曲線

社会全体の本来の供給曲線(負の外部性を加算したもの)

数量

• マイナスの影響を与える外部性

過剰供給

47

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外部経済(正の外部性)

価格

需要曲線

供給曲線

数量

• プラスの影響を与える外部性

社会全体の本来の供給曲線(正の外部性を加算したもの)

過少供給

外部性への対処法

• 政府による対応

• 課税・罰金

• 補助金

• 規制

• コースの定理

• 外部性の原因に所有権を設定し、取引費用(交

渉のコスト)が存在しなければ、当初の権利がど

のように分配されていても、常に全員の厚生が

改善できるような結果をもたらす契約に到達しう

る。(政府の介入は不要)

48

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PPPとの関連

• 外部性は、規制・誘導型PPPの根拠となる。

• 現実の規制・誘導型PPPでは外部経済を期待する

ケースが多い。

• 外部経済性の客観的な測定が必要。

• たとえば、補助金による商店街のアーケード整備

(撤去)費用と、来街者消費増加の関係。

• 広い意味でのVFMの計測に等しい。

3 自然独占

• 固定費が膨大な場合(規模の経済)、生産規模が大

きいほど低い価格で供給できることが生じる(限界

費用逓減)。・・・右下がりの供給曲線

• 生産規模の小さい企業は合併されるまたは撤退せ

ざるを得ない。

• この結果独占が生じる。価格を自由に設定できるの

で価格による調整機能が働かない(完全競争の前

提が崩れる)。

• 政府による介入が認められる(独占禁止政策、価格

政策(規制)、公営企業化)。

49

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埋没費用(サンクコスト)

• 設備投資のうち、撤退しても回収できない費用。

• 独占の前提は、設備投資は埋没費用であること。

• もし、埋没せず再利用可能であれば、売却して撤退

することも可能であることを意味し、参入が容易にな

る。つまり、潜在的な競争状態にあるので、政府の

介入は不要とする考え方。

• ウィリアム・ボーモルの「コンテスタビリティ理論」

• 80年代以降の米国の産業規制緩和の流れをつ

くった。

PPPとの関係

• 地方公営企業の存在理由、その民営化の動き(制度手法アプローチの「民営化」参照)

– ガス、バス、水道、医療分野で実績または予定あり

– 競争性の確保とコンテスタビリティ

50

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4 情報の非対称性

• 取引主体が保有する情報に差があるとき、資源配

分は最適化されない。その構造を情報の非対称性

(asymmetric information) と呼ぶ。

• ジョージ・アカロフ “The Market for Lemons: Quality Uncertainty and the Market Mechanism”(1970)• 中古車市場:消費者が質に関する情報をもって

いないので、悪い質の中古車にも良い質の中古

車と同じ価格がつけられる。そもそも中古車市場

が崩壊する。

情報の非対称性がもたらす問題

• 取引開始前の隠された情報

• 価格に見合う質かどうかを選べない。

• 悪いものを選んでしまう・・・逆選択(アドバースセ

レクション)

• シグナリング、スクリーニング

• 取引開始後の隠された行動

• 質を発揮しているかどうか識別できない。

• さぼっても見抜けない・・・モラルハザード

• モニタリング、インセンティブ、ペナルティ

51

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PPPとの関連

• PPPは定義上、情報の非対称性を生みやすい。

官 民 市民

官 市民

決定・実施

決定 実施

民 市民決定・実施

公共事業

民間ビジネス

税金

料金

PPP

税金

サービス購入料

民側の情報の非対称性がもたらす問題例

• 能力のない民間事業者を選定してしまった。(例:看護師や介護従事者を確保できないPPP老人ホーム)

• 多数の選択肢から選べない(例:競争性の低い事業者

選定)。

• モニタリングが行き届かず手抜きをされてしまった。

(例:天井が落下したプール)

• モニタリング費用を含めるとVFMが出ない。(例:多数)

• 経営努力をすることがマイナスになる(例:PPP図書館

で入館者数が増えると費用が増える)

• ペナルティがあいまい(例:仕事の成果の出ない外郭団

体や市民団体を切れない)

52

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対応策の例

• 選定段階

• シグナリング:資格要件の客観化、実績重視

• スクリーニング:高次の競争性の導入、提案内容

の具体性の確認

• 実施段階

• モニタリング:事業者自身・第三者・依頼人による監視、KPI指標の導入

• ペナルティ:契約を履行しない場合の罰則の明示

と実現

• インセンティブ:経営努力と利益のリンク

官側の情報の非対称性

• 取引開始前の隠された情報は官にも多い

• PPP実施に必要な情報が開示されていない

• 例:公共資産活用型(建物のデューデリジェン

ス情報)、公共サービス型(受益者の情報)

• 情報開示、市民参加、民間提案の重要性(制度

手法アプローチ参照)

官 民

53

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PPP総論Ⅰ vol.05

2009.5.16

根本祐二

経済理論アプローチ2

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0

平均

D(~59%)

C(60%~69%)

B(70%~79%)

A(80%~89%)

S(90%~)

5月9日4月25日4月18日

前回の確認問題

54

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経済理論アプローチのキーワード

市場の失敗

政府の失敗

公民連携の役割

市場の役割

政府の役割

公民連携の失敗

無限のわな

解消

公共財

外部性

自然独占

情報の非対称性

4 情報の非対称性

• 取引主体が保有する情報に差があるとき、資源配

分は最適化されない。その構造を情報の非対称性

(asymmetric information) と呼ぶ。

• ジョージ・アカロフ “The Market for Lemons: Quality Uncertainty and the Market Mechanism”(1970)• 中古車市場:消費者が質に関する情報をもって

いないので、悪い質の中古車にも良い質の中古

車と同じ価格がつけられる。そもそも中古車市場

が崩壊する。

55

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情報の非対称性がもたらす問題

• 取引開始前の隠された情報

• 価格に見合う質かどうかを選べない。

• 悪いものを選んでしまう・・・逆選択(アドバースセ

レクション)

• シグナリング(質の表象)、スクリーニング

• 取引開始後の隠された行動

• 質を発揮しているかどうか識別できない。

• さぼっても見抜けない・・・モラルハザード

• モニタリング(監視)、インセンティブ(報酬)、ペナ

ルティ(制裁)

例) 上司と部下の関係

• 取引開始前の隠された情報

• 逆選択・・・能力のない社員を採用してしまう

• シグナリング・・・会社が必要とする能力を代表する資格(英語:TOEICスコア)

• スクリーニング・・・試験

• 取引開始後の隠された行動

• モラルハザード・・・さぼっていることを見抜けない

• モニタリング・・・業務報告、抜き打ち検査

• インセンティブ・・・ノルマ達成の昇給、昇進

• ペナルティ・・・ノルマ未達の減給、降格

56

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政府の役割

• 民間ビジネス・・・取引の双方が必要とする情報の収集・評価・生産・開示が必要(統計、認証制度、公

的資格、法律など)

• 例)不動産取引の環境整備・・・地価統計、不動

産業免許、宅建資格、建築基準法

• 公共事業・・・自らが取引の相手方となるため、取引

の当事者としての積極的な情報収集・評価・制作・

生産が必要

• 例)公有資産取引の環境整備・・・公有資産デー

タベース、個別物件のデューデリジェンス(事前

評価)

PPPとの関係

• 前記の政府の役割を民間が代理する

• 民間ビジネス・・・統計、認証制度、公的資格制度の

運用

• 公共事業・・・データベースの制作、個別物件の

デューデリジェンスの代行

• PPPによって、政府による市場の失敗(情報の非対

称性に基づく)の解決がより行いやすくなる。

• しかし、PPPによって、情報の非対称性が発生しや

すいという事情がある。

57

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PPPから発生する情報の非対称性

• PPPは定義上、情報の非対称性を生みやすい。

官 民 市民

官 市民

決定・実施

決定 実施

民 市民決定・実施

公共事業

民間ビジネス

税金

料金

PPP

税金

サービス購入料

民側の情報の非対称性がもたらす問題例

• 能力のない民間事業者を選定してしまった。(例:看護師や介護従事者を確保できないPPP老人ホーム)

• 多数の選択肢から選べない(例:競争性の低い事業者

選定)。

• モニタリングが行き届かず手抜きをされてしまった。

(例:天井が落下したプール)

• モニタリング費用を含めるとVFMが出ない。(例:多数)

• 経営努力をすることがマイナスになる(例:PPP図書館

で入館者数が増えると費用が増える)

• ペナルティがあいまい(例:仕事の成果の出ない外郭団

体や市民団体を切れない)

58

Page 61: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

対応策の例

• 選定段階

• シグナリング:資格要件の客観化、実績重視

• スクリーニング:高次の競争性の導入、提案内容

の具体性の確認

• 実施段階

• モニタリング:事業者自身・第三者・依頼人による監視、KPI指標の導入

• ペナルティ:契約を履行しない場合の罰則の明示

と実現

• インセンティブ:経営努力と利益のリンク

官側の情報の非対称性がもたらす問題例

• 取引開始前の隠された情報は官にも多い

• PPP実施に必要な情報が開示されていない

• 例:公共資産活用型(建物のデューデリジェン

ス)、公共サービス型(受益者の情報)

• 情報開示、市民参加、民間提案の重要性(制度

手法アプローチ参照)

官 民

59

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政府の役割

• 市場の役割

• 財の配分上の効率性が最大化される

• 市場の失敗

• 財の配分上の効率性が達成できない

• 政府の役割

• 市場の失敗の補正(効率性)

• 公共財供給、外部性に対する規制・誘導、独占に

対する公営企業化・規制、不完全情報の補正

• 所得再分配(公平性)

政府の失敗

1 政府の情報が不完全な場合

2 政府事業の失敗(ソフトバジェット問題)

3 政府規制の失敗(天下り問題)

• 政府の失敗には諸説あるが、上記の整理は、大山

道廣「PPP経済理論序説」(東洋大学経済論集、

2009年3月)による。また、より本格的な考察は大山

道廣「市場開放の経済効果」(日本経済研究no.31, 1-40)、1996年)を参照すること。

60

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1 政府の情報が不完全な場合

• 市場の役割が完全に発揮されるためには、市場に関す

る情報(財の質や価格)が当事者にとって明らかになっ

ていることが必要である。

• これが明らかでないと、市場の失敗を招く。

• 政府は、完全な情報を実現させるための役割を担う。=

政府の役割

• しかし、実際には、政府も完全な情報を持ち得ないこと

がある。

政府の情報が不完全な事例

• 専門的な情報を有していない

• 非政府(民間ビジネス)固有の情報(NPMで経営

マインドは高まっても、政府が扱わない私的財の

情報がないことには変わりない)

• 技術的な問題へのキャッチアップの遅れ

• 政府の役割に対する社会的なニーズを把握してい

ない

• 公共財のニーズ(特定の住民・議員のニーズしか

把握しない)

61

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PPPとの関係

• 専門的な情報の提供

• 政府の役割に対する社会的なニーズの把握

官 民 市民

専門的な情報の提供

政府の役割に対する社会的なニーズの把握

2 政府事業の失敗(ソフトバジェット問題)

• ソフトな予算制約(soft budget constraint)とは、ある

主体の収入が調整可能であることにより支出が過

大になること。政府は徴税権や公債発行権がある

ので、現在の収入が低くても最終的には確保される

と考えて無駄遣いがおきる。

• ハンガリーの経済学者J.Kornaiが旧社会主義経済

の重大な弊害として注目した。

62

Page 65: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

• 大山【2009】は、政府の活動は、企画部門と実行部

門によるゲーム均衡であるとする。(市場メカニズム

が利かない)

• 実行部門は、公共サービスの量以外の動機にも基

づいて行動する。

• 企画部門は、公共サービスの量には妥協しないが、

予算の制約は妥協する。

• この結果、目標とする公共サービスの量が、より多

額の予算によって実現する。=政府の非効率性

PPPとの関係(1)

• 大山【2009】ではこの問題の解決のためにPPPが有

用としている。

1 実行部門を政府組織から切り離し、民間企業やNPOにゆだねる。

• (根本注)

• 複数の実行部門の間で競争させることで、本

来の目的を実現する上でもっともふさわしい主体に委ねることができる。民間企業やNPOには、

リターンが必要だが、競争により超過利潤は

解消される。(リスクとリターンの設計)

63

Page 66: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

PPPとの関係(2)

2 両部門を第三者の厳しい監視の下に置く

• (根本注)

• 競争の結果得られた公共サービスの量を実現

できるのか、正当な理由なく競争により決定さ

れた価格(予算)を上げないかを、実行部門の

みならず企画部門も監視することが必要。=

契約によるガバナンス、議会・市民の役割

3 政府規制の失敗(天下り問題)

• 一般的な政府規制の分類

• 経済的規制・・需要変動、自然独占、信用秩序

• 社会的規制・・環境、安全、衛生、社会秩序

• 大山【1996, 2009】の分類。上記はあいまい、適用対

象となる主体が差別的かどうか。

• 差別的規制・・参入規制、保護貿易など

• 非差別的規制・・独占禁止、不公正取引禁止、環

境・安全・衛生にかかわる基準の遵守など

• 差別を通じて資源配分をゆがめることがない

64

Page 67: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

• 規制は政府の決定のもとに、民間企業の行動に委

ねられる。

• 決定者である政府は、規制に従って、民間企業の

行動を厳格にガバナンスしなければならない。

• だが、政府から非規制先の企業に天下っている場

合はガバナンスできない。

天下りとは

• 大山【2009】は、この問題をゲーム理論で解明して

いる。

• 2つの命題が得られる

• 天下りを認めると、差別的な規制は社会的に最

適な水準を超えて過剰に行われる。

• 天下り先の企業が有利になるように差別的規

制をかける

• 非差別的規制は、社会的に最適な水準に届かず

過小にしか行われない。

• 天下り先企業をも同様に規制する動機がない

天下りのゲーム論的解明

65

Page 68: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

• 大山【2009】の結論

• 「天下りのような官民の癒着を誘発する関係を根

絶しなければならない。」

• (根本注)

• 天下り以外の癒着についても同様の考察が成り

立つ。(意中の企業)

• PPPの民間事業者選定が透明で客観的であれ

ば意中企業を優遇できない。=PFIの透明性原

則、客観主義

• 指定管理者では公募されずに自治体の外郭団

体が選ばれる場合が多い

PPPとの関係

政府の失敗の総括

• 政府制度においては、何らかの「政府の失敗」は起

きると考えたほうが良い。

• かといって、市場に委ねると「市場の失敗」が再びを

起きる可能性がある。(ただし、当初は市場では供

給できなくても市場の成熟により可能になっている

場合は多い=幼稚産業の成熟により民営化可能)

• そこで、市場と政府の失敗を起こさない知恵として

PPPが登場する。

66

Page 69: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

PPP総論Ⅰ vol.06

2009.5.23

根本祐二

制度手法アプローチ1

前回の確認問題

67

Page 70: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

市場の失敗

政府の失敗

公民連携の役割

市場の役割

政府の役割“大きな政府”

“小さな政府”

PPP

経済理論アプローチと歴史アプローチ

歴史アプローチ経済理論アプローチ

“大きな政府”派は市場の失敗を重大視、“小さな政府”派は政府の失敗を重大視する。PPPは、ケースバイケースで考える。

PPPの役割

• PPPでは、ケースバイケースで「社会的な費用対効果」を

最大化する方法を考えるべきと発想する。

• 社会的・・・外部性を含む概念。きれいな生垣を整備す

れば街への来訪者が増えてビジネスが活発になる。

• 費用・・・政府の関与の費用であり、SPCの費用そのも

のではない。サービス購入料(PFI)、委託料(指定管理

者)、公共資産の機会費用(公共資産活用型)、補助

金・税金の免除(規制・誘導型)、ガバナンス費用。

• 効果・・・公共的な成果(例)サービスの質、雇用、安全・

安心、商店街への来訪者数、サービスの価格

• 異なることがらからなる費用対効果を総合的に表すた

めの指標を定める必要がある

68

Page 71: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

実務的な指標 総合評価(値)

• 異なることがらを総合的に表すために制作される指標。

PPPの発注者である官が決定する。

• 例)A図書館における指定管理者導入の選定基準

• 貸し出しを増やす工夫(最高30点)、サービスの質

(最高70点)

サービスの質70

30貸し出しを増やす工夫

総合評価値=100総合評価値=70

50

20

食料

衣類

効用=高い

効用=低い

(参考)経済学上の無差別曲線

• 異なる財、サービスを消費して得られる効用を同一にする

ための消費量の組み合わせ。原点に向かって凸。

• 総合評価値とは、官にとっての効用を最大化する提案内

容を決める方法である。

69

Page 72: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

• 前記では、総合評価値を最大化する(官の効用を最大化する)提案内容を選択することを意味していた。=“内容の選

択”• “内容の選択”以前に、“手法の選択”にも使える。

• 仕事の内容をできるだけ細分化して官民の役割分担

を多様に決める。

• どの程度民に依頼するのが良いかによって手法が変

わる。

“内容の選択”から“手法の選択”への拡張

“手法の選択”の際の総合評価値最大化

• 役割分担を変えて総合評価値を試算する。

• 直営(企画、建設、所有、資金調達、運営すべて官)

• 運営委託系(運営のみ民に移転)

• 所有権移転系(建設、所有、資金調達も民に移転)

• 完全民営化(すべて民に移転)

• これらのケースバイケースの総合評価値曲線を描く。

• その結果、直営<委託系>所有権移転系>完全民営化と

なったとする。

70

Page 73: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

民への移転

総合評価値

純粋民間事業

純粋公共事業

PPP(所有権移転系)

PPP(運営

委託系)

民への移転

総合評価値

純粋民間事業

純粋公共事業

PPP(所有権移転系)

PPP(運営

委託系)

総合評価値試算による最適手法選択

71

Page 74: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

純粋公共事業

委託

企画 建設 資金調達 所有 運営純粋民間事業 設計

BOT (build-operate-transfer)

企画 建設 資金調達 所有 運営設計所有権移転

BTO (build-transfer-operate)

企画 建設 資金調達 運営設計所有権移転

BOO (build-operate-own)

企画 建設 資金調達 運営設計 所有

企画 建設 資金調達 所有 運営設計

企画 建設 資金調達 所有 運営設計

得られる示唆

• 個別性・・・対象事業ごとに異なる。常に何らかの手法が最善とは限らない。市場か政府かの単純な二分論は無意味。

• 普遍性・・・純粋公共事業や純粋民間事業はPPPの極端なケ

ース。

• 客観性・・・発注者の効用を表す総合評価値算出方法の客観性が非常に重要。

• 現実にはこうしたプロセスはない。官僚、首長、議会の判断で決定されている。最適でない手法が選択される可能性あり。

72

Page 75: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

制度手法アプローチのキーワード

業務委託・指定管理者

地域再生・都市再生・中心市街地再生・特区など

地方行財政

PFI

民営化

公共財

外部性

自然独占

情報の非対称性

市場化テスト

PFIの時代背景

• 中曽根政権:サッチャー政権の民営化の影響を強く受ける

– 国鉄、電電公社が民営化

• インフラ系プロジェクトのために第三セクターが登場した

– 第三セクター:行政(国、地方自治体)と民間企業が共同出資して設立された法人

– 官の持つ公益性(計画性)と民の持つ効率性が同時に実現できるという目論み

– バブル経済期に重なっていた

再掲

73

Page 76: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

第三セクターの課題

• 事前のリスク分析の不十分さ

– リスク分析能力の不足、過去のトラックレコード(実績)がない種類のプロジェクトが多い

• リスクとリターンの設計の不存在

– プロジェクト推進のみによって恩恵を被る民間企業が多い(建設、金属、エンジニアリング)

– 最終的にはコーポレート信用で補完、プロジェクト収益率の概念が薄い

• 契約によるガバナンスの不存在

– 設計が不十分である以上契約も曖昧

再掲

• 92年~ バブル崩壊後の空白の時代

– 三セク計画を引きずっている時代(止めるか、進むかの選択)

• 95年頃より新しいビジネスモデルの模索

• 96年頃よりPFIが注目され始める

– 世界各国の手法を研究

– 三セクのアンチテーゼを確立していたPFIが高い

評価を得た

• 98年、議員立法準備

• 99年、PFI法成立、施行

日本での導入の過程

74

Page 77: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

• 公共性のある事業であること。(公共性原則)

– あくまでも公共サービスの供給(公共サービス型)

– 公共財とは異なる、価値財を多く含む

– PFI法で列挙されている(次葉)

• 民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用すること。(民間経営資源活用原則)

– 高い能力の発揮を期待(value)

• 民間事業者の自主性と創意工夫を尊重することにより、効率的かつ効果的に実施すること。(効率性原則)

– 資源の有効配分(money)

PFIの原則・主義(1)

• 以下の各施設の建設、改修、維持管理もしくは運営、企画をいい、国民に対するサービスの提供を含む。

• ○道路、鉄道、港湾、空港、河川、公園、水道、下水道、工業用水道等の公共施設

• ○庁舎、宿舎等の公用施設

• ○公営住宅及び教育文化施設、廃棄物処理施設、医療施設、社会福祉施設、更生保護施設、駐車場、地下街等の公益的施設

• ○情報通信施設、熱供給施設、新エネルギー施設、リサイクル施設(廃棄物処理施設を除く)、観光施設及び研究施設等

公共性原則・・・PFI法上の対象施設

75

Page 78: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

• 民間特定事業の選定、民間事業者の選定において公平性が担保されること。(公平性原則)~競争原理の導入

• 特定事業の発案から終結に至る全過程を通じて透明性が確保されること。(透明性原則)~情報公開

• 各段階での評価決定について客観性があること。(客観主義)– VFMの客観性、総合評価値の客観性

• 公共施設等の管理者等と選定事業者との間の合意について、明文により、当事者の役割及び責任分担等の契約内容を明確にすること。(契約主義)~契約によるガバナンス

• 事業を担う企業体の法人格上の独立性又は事業部門の区分経理上の独立性が確保されること。(独立主義)

– 法的、財務的な権利義務の明確化、SPCの設立または区

分経理

PFIの原則・主義(2)

• 一括発注

– 分離分割発注では規模の経済、範囲の経済を発揮することができない

• 長期契約

– 短期契約では長期的な観点からの経営資源の投入ができない(例:雇用、設備投資)

• 性能発注

– 仕様発注では同一性能を発揮できる相対的に優れた方法を採用できない(目的と手法の不一致)

PFIの原則・主義(3)

76

Page 79: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

一括発注

長期契約

• 長期債務負担行為

– 民間企業では、長期契約を結んだ場合は、それに基づく義務を履行するのが当然とされる。(債務不履行、金銭的債務不履行は銀行取引停止)

– 行政(国、自治体)は当然には長期契約はできない。議会による長期債務負担行為の議決が必要。

– 国:従来は5年→PFI法では上限30年

– 自治体:もともと制限はなかったが事実上タブー視されていた→堂々と認められるようになった

77

Page 80: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

PPP総論Ⅰ vol.07

2009.5.30

根本祐二

制度手法アプローチ1

制度手法アプローチのキーワード

業務委託・指定管理者

地域再生・都市再生・中心市街地再生・特区など

地方行財政

PFI

民営化

公共財

外部性

自然独占

情報の非対称性

市場化テスト

78

Page 81: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

純粋公共事業

委託・指定管理者

企画 建設 資金調達 所有 運営純粋民間事業 設計

BOT (build-operate-transfer)

企画 建設 資金調達 所有 運営設計所有権移転

BTO (build-transfer-operate)

企画 建設 資金調達 運営設計所有権移転

BOO (build-operate-own)

企画 建設 資金調達 運営設計 所有

企画 建設 資金調達 所有 運営設計

企画 建設 資金調達 所有 運営設計

PFI、業務委託・指定管理者

PFIの時代背景

• 中曽根政権:サッチャー政権の民営化の影響を強く受ける

– 国鉄、電電公社が民営化

• 公共施設建設のために第三セクターが登場した

– 第三セクター:行政(国、地方自治体)と民間企業が共同出資して設立された法人

– 官の持つ公益性(計画性)と民の持つ効率性が同時に実現できるという目論み

– バブル経済期に重なっていた

再掲

79

Page 82: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

第三セクターの課題

• 事前のリスク分析の不十分さ

– リスク分析能力の不足、過去のトラックレコード(実績)がない種類のプロジェクトが多い

• リスクとリターンの設計の不存在

– プロジェクト推進のみによって恩恵を被る民間企業が多い(建設、金属、エンジニアリング)

– 最終的にはコーポレート信用で補完、プロジェクト収益率の概念が薄い

• 契約によるガバナンスの不存在

– 設計が不十分である以上契約も曖昧

再掲

• 92年~ バブル崩壊後の空白の時代

– 三セク計画を引きずっている時代(止めるか、進むかの選択)

• 95年頃より新しい公共施設整備手法の模索

• 96年頃よりPFI(Private Finance Initiative)が注目され

始める

– 世界各国の手法を研究

– 三セクのアンチテーゼを確立していたPFIが高い

評価を得た

• 98年、議員立法準備

• 99年、PFI法成立、施行

日本での導入の過程

80

Page 83: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

• 第三セクターとの違い。

– 官民の役割分担の明確化。契約。

• 「リスクとリターンの設計」、「契約によるガバナンス」

• 委託との違い。

– 設計、建設、資金調達のリスク移転により、より効率的に、かつサービスの質を高めることができる(=VFMをより高く

することができる)

従来型のPPPとのポイント

• 公共性のある事業であること。(公共性原則)

– あくまでも公共サービスの供給(公共サービス型)

– 公共財とは異なる、価値財を多く含む

– PFI法で列挙されている(次葉)

• 民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用すること。(民間経営資源活用原則)

– 高い能力の発揮を期待(value)

• 民間事業者の自主性と創意工夫を尊重することにより、効率的かつ効果的に実施すること。(効率性原則)

– 資源の有効配分(money)

– → Value For Money

PFIの原則・主義(1)

81

Page 84: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

• PFI法上の対象施設

– 以下の各施設の建設、改修、維持管理もしくは運営、企画をいい、国民に対するサービスの提供を含む。

– 道路、鉄道、港湾、空港、河川、公園、水道、下水道、工業用水道等の公共施設

– 庁舎、宿舎等の公用施設

– 公営住宅及び教育文化施設、廃棄物処理施設、医療施設、社会福祉施設、更生保護施設、駐車場、地下街等の公益的施設

– 情報通信施設、熱供給施設、新エネルギー施設、リサイクル施設(廃棄物処理施設を除く)、観光施設及び研究施設

• 公共財の定義よりもかなり広い

公共性原則

• 客観的評価の手法。

• PSC (Public Sector Comparator)

– 公共が自ら実施する場合の事業期間全体を通じた公的財政負担の見込み額の現在価値

• PFI-LCC(PFI事業のLife Cycle Cost)– PFI事業として実施する場合の事業期間全体を通じた公

的財政負担の見込み額の現在価値

• VFM (Value for Money)

– 本来は、質と価格の両方の要素を比べるべき。

– 実際にはPSCとPFI-LCCの差。要求されたサービスは満た

したとして、その費用の差を求めている。

VFM評価

82

Page 85: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

同一の公共サービスの提供水準の下で評価する場合

PSCとPFI-LCCが等しい前提

の下で評価する場合

VFM

• 民間特定事業の選定、民間事業者の選定において公平性が担保されること。(公平性原則)~競争原理の導入

• 特定事業の発案から終結に至る全過程を通じて透明性が確保されること。(透明性原則)~情報公開

• 各段階での評価決定について客観性があること。(客観主義)– VFMの客観性、総合評価値の客観性

• 公共施設等の管理者等と選定事業者との間の合意について、明文により、当事者の役割及び責任分担等の契約内容を明確にすること。(契約主義)~契約によるガバナンス

• 事業を担う企業体の法人格上の独立性又は事業部門の区分経理上の独立性が確保されること。(独立主義)

– 法的、財務的な権利義務の明確化、SPCの設立または区

分経理

PFIの原則・主義(2)

83

Page 86: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

• 一括発注

– 分離分割発注では規模の経済、範囲の経済を発揮することができない

• 長期契約

– 短期契約では長期的な観点からの経営資源の投入ができない(例:雇用、設備投資)

• 性能発注

– 仕様発注では同一性能を発揮できる相対的に優れた方法を採用できない(目的と手法の不一致)

PFIの原則・主義(3)

一括発注

84

Page 87: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

長期契約

• 長期債務負担行為

– 民間企業では、長期契約を結んだ場合は、それに基づく義務を履行するのが当然とされる。(債務不履行、金銭的債務不履行は銀行取引停止)

– 行政(国、自治体)は当然には長期契約はできない。議会による長期債務負担行為の議決が必要。

– 国:従来は5年→PFI法では上限30年

– 自治体:もともと制限はなかったが事実上タブー視されていた→堂々と認められるようになった

事業期間別

85

Page 88: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

事例1 美祢社会復帰促進センター(PFI)

• 犯罪率の増加により刑務所が不足

• 脱獄防止から再犯防止へ目的を変化

• 社会復帰を促進するための職業訓練やインターネットスキルを教える(民の役割)

• 結果的に再犯防止により刑務所が少なくて済む(官の目的の達成)

事例2 東京都原宿警察署PFI

• 広大な都有地に警察署を建設。

• 余剰地に自由提案型の住宅+商業施設を建設。余剰地は有償賃貸。

• 全体を一体的なPFI事業として設計。

• 自由提案部分は民間ファイナンス、リスク遮断のため別会社方式

86

Page 89: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

事例3 神奈川県立近代美術館

日本政策投資銀行HP

PFIのプロセス

0 発案

1 実施方針

2 特定事業選定

3 公募(募集要項、選定基準、契約書案)

4 応募

5 選定

SPC 市民6 設立7 実施

87

Page 90: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

• PFI法上は、(民間事業者の発案に係る受付、評価等を行う

体制の整備等)が規定されている=民間発案

• 事例はない。

• 理由

• 提案の検討義務なし

• 提案の知的所有権が保護されない

• 事業者選定は公平性の原則により実施されるので、自分が受注できる可能性は低い。

• 現実には、官自ら発案している。

• 民間提案の工夫

0 発案

1 実施方針

• 公共サービスとしての妥当性、PFIで行うことの妥当性(リスク

分担が可能であること)

• 事業の目的が記載される。ここが曖昧だと最後まで曖昧なまま。

• 複数の目的が混在することが通例

• 例:給食センター(食の安全の確保、給食による教育(食育)、偏食是正、地元企業の活用、全体事業費の圧縮

88

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2 特定事業選定

• PFIで行うことの妥当性

• VFM>0であること

• 官が決定するプロセスではあるが、VFMを入れることで

客観性を維持することが可能

3 公募

• 伝えるべき決定事項を潜在的実施者に明確に伝える

– 決定者として必ず実現すべきこと(必須)、できれば実現してほしいこと(推奨)、実現してはならないこと(不可)

– 官が行うこと、もしくは行わないこと

• 民にとっての情報の非対称性を解消する効果→民にとってのリスクが減少→リスク分上乗せされないので提案金額が低下する、より明確な提案を誘導できるメリットあり。

89

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• 総合評価一般競争入札

– 予定価格の範囲内で申し込みをした者のうち、価格だけではなくその他の条件(維持管理・運営のサービス水準、技術力等)を総合的に勘案し、落札者を決定する方式

– 価格以外の要素による得点と価格要素による得点を加算する「加算方式」

– 価格以外の要素による得点を価格で除算する「除算方式」・・・国の場合、財務大臣との個別協議は不要

• 公募型プロポーザル方式

• 地方自治法上、随意契約が認められている。

• ただし、競争性の担保、評価結果の数量化により客観性を確保することが必要(PFIガイドライン)

• 公募により提案(プロポーザル)をつのり、優先交渉権者を選定し、当該者と随意契約により契約を締結する。

90

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WTOルール

• WTO 政府調達協定( The Agreement on Government Procurement: 略称GPA

• 物品+サービス分野(建設サービス、設計・コンサルティング業務が含まれる)が対象

• 国の機関に加えて、都道府県、政令指定都市、特殊法人、独立行政法人等が対象

• 随意契約(含む公募型プロポーザル方式)は認められない

91

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落札者選定基準

• 提案内容の質及び価格を数値化する

– 一般競争入札では金額により最優秀提案が一つに定まる

– 総合評価一般競争入札では、金額と質の合計点(総合評価値)により定める必要がある。

– 募集要項で伝えるべき決定事項を定量的に表現する。その中で、異なる質相互および価格との評価のバランスを決める必要がある。

– 複数の異なる目的を総合的に合算することは実際には非常に困難

– この段階で募集者の目的は総合評価値最大化、提案者の目的は総合評価値最上位

92

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• 段階的接近のアプローチ

• 過去の類似事例の結果評価をもとに、当該案件との相違を加味して修正する。類似事例の結果が良好と評価されれば、それを用いることは合理的。

• 費用効果的なアプローチ

• PSCのコストのウェイトを使う。かけた費用に応じた効果が

得られると擬製する。提案者は費用あたりの獲得点数を比較するので、これを同一にすることで万遍なく注力する。

• 政策評価理論のアプローチ

• 部分的に個別政策評価を行う(交通、環境など)。金額表示できるのであれば合算が可能。

• 住民参加的なアプローチ

• 行政の素案を公開し公聴会にて修正を加える(事例なし)

選定基準の定め方

加算方式・除算方式

• 除算方式・・質の点数/価格の点数

– 恣意的ではない

– 価格の影響を高めたり低めたりできない

• 加算方式・・質の点数+価格の点数

– 異なる性質の数字を単純には足せないので、共通化する係数が必要(そこに恣意が入る)

– 価格の影響を高めたり低めたりすることは可能

– 国の場合は、加算方式の採用には財務大臣の承認が必要=除算方式が一般的

93

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自治体は加算方式が主国は除算方式が主

競争的対話

• 平成18年11月27日PFI 関係省庁連絡会議幹事会

申合せ

• 運営内容を規定するために民間の知見が重要となるような事業では、発注者のみの能力で要求水準等を作成することが困難(病院、刑務所)

• 実施方針の公表以降において、必要に応じて応募者ごとの対面での口頭による対話も可と明示。

• 通常は透明性原則に基づいて、すべての質疑は公開される。そうすると、ノウハウを含む質問自体がなされなくなる。

• 情報の非対称性を埋めるプロセス。

94

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• 個別対話形式の容認

– 応募者毎に対面による対話を行う

• 秘匿すべき情報の明確化

– 民間事業者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある情報は秘匿する

• 漏洩禁止

– 第三者に漏洩する、ほのめかすような行為や、特定の応募者に限り提案内容を誘導するような行為を行わない。

• 機会の公平性

– 対話の回数、時間、出席者等の各種条件について、応募者間での公平性が保たれるようにする必要がある。

• 条件変更の明確化

– 発注者が新たなニーズや条件を認識した場合は、その都度、全応募者に通知することが必要である。

競争的対話のポイント

官 SPC 市民

民民

金融

議会

プロジェクトファイナンス契約

長期債務負担行為設立

PFI事業権

契約

直接契約

サービス提供

SPC (Special Purpose Company)

株主間契約

典型的な仕組み(選定以降)

95

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契約書案

• 権利・義務、監視(モニタリング)・報酬(インセンティブ)・制裁(ペナルティ)を明確化する

• 契約を履行することをどう監視するか

– 監視費用との関係

– 成果指標管理に基づく自主的なガバナンス

– KPI(key performance indicator)

• 契約を履行しない場合の制裁

– サービス購入料の減額

– 契約解除

• 契約を過剰達成したときの報酬

– PFIでは通常ない(←→指定管理者にはしばしばある)

複数の契約によるガバナンス

• 株主間契約(private/private) ・・・民間出資者相互の権利義務の明確化

• PFI事業権契約(public/private)・・・官とSPCの間の権利義務を

明確化

• プロジェクトファイナンス契約(private/bank)・・・SPCと金融機関

で権利義務を明確化

• 直接契約(public/bank)・・・官と金融機関で権利義務を明確化

• 長期債務負担行為(public/public)・・・議会が長期的な契約行

為を承認する。

96

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官 市民

金融

議会

長期債務負担行為

直接契約 SPC (Special Purpose Company)

新しい民

直接契約の意味

SPC

新しい民破綻

97

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PPP総論Ⅰ vol.08

制度手法アプローチ2(委託、市場化テスト)

2009.6.13

根本祐二

制度手法アプローチのキーワード

業務委託・指定管理者

地域再生・都市再生・中心市街地再生・特区など

地方行財政

PFI

民営化

公共財

外部性

自然独占

情報の非対称性

市場化テスト

98

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純粋公共事業

委託・指定管理者

企画 建設 資金調達 所有 運営純粋民間事業 設計

BOT (build-operate-transfer)

企画 建設 資金調達 所有 運営設計所有権移転

BTO (build-transfer-operate)

企画 建設 資金調達 運営設計所有権移転

BOO (build-operate-own)

企画 建設 資金調達 運営設計 所有

企画 建設 資金調達 所有 運営設計

企画 建設 資金調達 所有 運営設計

PFI、業務委託・指定管理者

• 私法上の契約に基づく

– (1)事実上の業務

• 施設の維持補修等のメンテナンス、警備、施設の清掃、展示物の維持補修、エレベーターの運転、植栽の管理

– (2)管理責任や処分権限を地方自治体に留保した上で管理や処分の方法についてあらかじめ自治体が設定した基準に従って行われる定型的行為

• 入場券の検認、利用申込書の受理、利用許可書の交付

– (3)私人の公金取扱いの規定に基づく使用料等の収入の徴収

– (4)当該施設運営に係るソフト面の企画

• 保育カリキュラムの策定、各種行事の企画

業務委託

99

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地方自治法(旧法244の2Ⅲ)に基づく

公の施設(おおやけのしせつ)の設置者たる自治体との契約に基づき、具体的な管理の事務または業務の執行を行うもの

当該施設の管理権限及び責任は、設置者たる自治体が引き続き有する

管理受託者となりうる者自治体が1/2以上出資している法人

公共団体(土地改良区等)

公共的団体(農協、生協、自治会等)

管理委託

地方自治体の財産の区分

財産 公有財産

物品

債券

基金

行政財産

普通財産

公用財産

公共用財産

○不動産○船舶、浮標、浮桟橋、航空機○地上権、地役権、鉱業権他○特許権、著作権、商標権、実用新案権他○出資による権利○不動産の信託の受益権

庁舎、研究所等

公の施設を含む

100

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行政財産と普通財産

• 行政財産

– 公有財産のうち自治体において公用または公共用に供し、または供することを決定した財産

– 貸付、私権の設定等を原則として禁止・・・緩和の方向

– 本来の用途または利用を妨げない限度において使用許可を行うことができる

• 普通財産

– 行政財産以外の一切の公有財産を普通財産という

– 経済的な価値に主眼が置かれている

– 貸付、売却、私権の設定等が可能

– 原則として民法等一般私法が適用される

• 公会計の「売却可能資産」とは異なる概念。行政財産も売却可能資産に計上することは可能。

公の施設(おおやけのしせつ)

• 地方自治体が設置する施設のうち、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するために設けられる施設。

• 要件:

– ①住民の利用に供する

– ②区域内に住所を有するものの利用に供する

– ③住民の福祉を増進する目的を持つ

– ④物的施設である

– ⑤地方自治体が施設についての何らかの権原(所有権、賃借権等)を取得している

• 公園、病院、学校、博物館等であり、概念的に、公共用財産に近い。

• 公の施設に指定する条例が必要だが、公共用財産をすべて公の施設とする必要はない。

101

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管理委託制度の矛盾

• PFIと地方自治法のアンバランス

– PFI事業者は管理委託制度上の受託者の要件を満たさない(自治体が1/2以上出資している法人など)ため、PFI事業の対象施設が公の施設であ

るときは、事業者が施設を管理できないという矛盾が生じた。

• 「官から民へ」の一般化の要請

– 総合規制改革会議、地方分権改革推進会議「 PFIは新設施設が対象。既存の公(おおやけ)の施設への民の参画を進めるべき 」

– PFIがもたらした原則・主義を拡大する趣旨。

地方自治法改正に基づく

公の施設の管理権限を指定管理者に委任して行わせることができる。

指定管理者の範囲について、特段の制約を設けず、出資団体に限られない民間事業者も議会の議決を経て指定管理者になれることとした

指定管理者に以下の権限を与えることができることとした

利用者からの料金を自らの収入として収受し、条例により定められた枠組みの中で、自治体の承認を得て自ら料金を設定すること。=利用料金制度

個々の使用許可を行うこと。

以下のことは引き続き不可能

使用料の強制徴収

行政財産の目的外使用許可

指定管理者

102

Page 105: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

指定管理者と管理委託

• 元々、管理委託制度を活用していた施設は、指定管理者に移行するのが原則、不適当なものは直営に戻す。(総務省方針)

• 改正法に3年の期限を設けて検討義務を付した。

• 2006年9月が期限。全国で多くの公の施設が指定

管理者制度に移行した。もともとの管理受託者を突然排除することが妥当でないため、多くの場合、公募せずに管理受託者をそのまま指定管理者にした。暫定的な措置の意味合いから3年期限が多い。

• 現在3年経過施設の次の対応が注目されている。

指定管理者の実例(コナミスポーツの例)

東京辰巳国際水泳場

大阪市立屋内プール、大阪市立スポーツセンター

スポーツプラザ梅若及び両国屋内プール

103

Page 106: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

指定管理者の実例(大新東の例)

鳥取県日南町「ゆきんこ村四季彩(しきさい)」

北海道湧別町総合体育館、町営プール、文化センター、パークゴルフ場、野球場、地場産加工センターなど

島根県安来市 「安来節演芸館」

1 施設の指定

2 公募(募集要項、選定基準、契約書案)

3 応募

4 選定

市民

実施

指定管理者の典型的な仕組み

104

Page 107: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

0 発案

1 実施方針

2 特定事業選定

3 公募(募集要項、選定基準、契約書案)

4 応募

5 選定

SPC 市民

6 設立

7 実施

PFIとの手続き上の違い指定管理者では民の発案は制度上も想定されていない

指定管理者ではSPCの設立は一般的には

想定されていない

指定管理者では公募は必須ではない。

指定管理者は行政処分であり随意契約で構わない。

• どの公の施設を指定管理者にするかは自治体が条例により定める。

– 必ず議会の承諾が必要

• 期間を定めて行う。

– 法令上の定めはなく数十年にわたるものもありうる。

– 実績は3~5年

指定管理者対象施設の指定

105

Page 108: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

• 公募が必須ではない。

• 指定管理者は「法人その他の団体」であり、個人を指定することはできないが、法人格は必ずしも必要ではない。

• 首長や議員本人または親族が経営する会社も法律上は排除されない。

– 自治体と指定管理者が取引関係に立つものではないため地方自治法の兼職規定が適用されない。

– ただし、公正性は必要。排除条例の制定は可能。

公募

• 議決事項

– 公の施設の名称

– 指定管理者となる団体の名称

– 指定の期間

• 議決内容

– 首長の提案に対する議会の賛否を決するものであり、議会が具体的な指定管理者を選定することはできない

• 指定は行政処分の一種であり自治法上の契約ではない。したがって、入札の対象にならない(=随意契約可能)。

– しかし、制度の趣旨からして、適正かつ効率的な管理は必要。そのため、手続きは条例で定めるとともに、指定自体には議会の議決が必要とされた

選定

106

Page 109: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

官 民 市民指定管理協定

サービス提供

議会

毎年の議決

指定管理者の典型的な仕組み(運営段階)

官 SPC 市民

民民

金融

議会

プロジェクトファイナンス契約

長期債務負担行為設立

PFI事業

権契約

直接契約

サービス提供

株主間契約

指定管理者では長期債務負担行為は一般的ではない(単

年度予算)指定管理者では金融機関は

登場しない

指定管理者では単独企業が

一般的

PFIとの比較

107

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• PFIの場合の契約に相当するものを協定と呼んでいるが(行政処分であり契約ではないため)、内容的に

は契約そのもの。

• PFI契約との共通点

– 公募の場合、基本的には、募集要項と提案を組み合わせたもの。

– 監視、制裁、報酬条項あり

• 相違点

– 選定後の調整により修正可能

– 細部を決めていないケースが多い

協定

• 報告

– 毎年度終了後事業報告書を作成し提出する

– 記載事項:管理業務の実施状況、利用状況(利用者数、使用拒否等の件数・理由等)、利用料金収入の実績、管理に要した経費等の収支の状況

• 監督

– 報告を求め、実地について調査し、必要な指示を与えることができる

– 指示に従わないとき、管理を継続することが適当でないと認めるときは、指定を取り消しまたは期間を定めて業務を停止することができる

事業の実施、報告

108

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直営

管理委託

新設

指定管理者

直営

61565件(100%)

53421件(86.8%)

6753件(11.0%)

1391件(2.3%)

公の施設の変遷(2006.9時点)

都道府県の場合、公の施設全体に占める指定管理者の割合は59.2%

指定管理者の法人種別

61565件(100%)

48001件(78.0%)

11252件(18.3%)

民間企業等(会社、NPO、医療法人、学校

法人等)

従来の管理受託者が引き続き指定管理者となった例

109

Page 112: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

7248, 12%

8248, 13%

2417, 4%

37909,62%

5743, 9%

選定方法

公募(職員以外中心)

公募(職員中心)

公募(それ以外)公募によらず従前の管理者を指定

その他

61565件(100%)

手続きの透明性

110

Page 113: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

28887,47%

32678,53%

あり

なし

利用料金制度の導入

2217 2698

29139

5681

17813

278 98 55 99

3487

0

5000

10000

15000

20000

25000

30000

35000

1 2 3 4 5 6 7 8 9 1

0~

指定期間

指定期間

111

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PFIとの違い(1)

• 官民の役割分担

– PFIでは建設・所有・資金調達・運営を行うことができる。

指定管理者では民は原則運営のみ。ただし新設で指定管理者を採用したケースが1361件あり。(官の財政負担

が増えている!)

• 法制度による促進

– PFIは促進措置なし(ユニバーサルテスティングなし)。指定管理者では改正自治法施行後3年以内に選択を迫ら

れたことが促進効果を持った。

• 件数・1件当たり規模

– PFIは230件、約1兆8千億円。1件当たり100億円弱。

– 指定管理者は61505件。金額は不明も運営だけで、かつ

短期のため平均規模は非常に小さいと推測。C

新設施設の指定管理者利用

• 制度制定当初は、新設・・PFI、既設・・指定管理者の役割分担が想定されていた。実際には、自治体PFIの総件数(21年5月時点313件)を超える新設施設で指定管理者が活用されて

いる。

• PFIでは、厳格な手続きが要求されるために固定的な手続き

費用(経済学的には取引費用)がかかり、一定規模以上の事業費がないとVFMが出ない(一般的には最低2~30億円以

上)。

• それ以下の規模であれば指定管理者を使う方が合理的。

112

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新設案件の手法選択の概念図

事業規模

VFM

PFI

指定管理者

20~30億円

民が設計・建設することのVFM引き

上げ効果が大きい

アドバイザー費用等固定費負担が大きくVFMが出ない

事例 川崎市立多摩病院

●救急医療、小児救急医療、災害時医療●24時間365日体制●小児科を含む全科対応型●病床数:376床

113

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• 法人種別

– PFIは原則SPC(会社)。指定管理者は財団法人、

公共的団体が大半。

• 分野別

– PFI法上の公共施設等と、指定管理者の対象とな

る公の施設は結果的に非常に近い。

• 選定方法

– PFIは総合評価一般競争入札かまたは公募プロ

ポーザル方式。いずれにせよ、競争性あり。指定管理者は行政処分であるため競争を要しない。結果的に公募によらない選定が7割。

PFIとの違い(2)

• 手続きの透明性

– PFIでは透明性が原則。指定管理者では指定手

続きが公表されているものが半分程度。

• 利用料金制度

– 指定管理者では料金の設定や収受を管理者に委託することができる。PFIではできない。→次葉

参照

• 指定期間

– PFIでは15年前後、20年前後が多い。指定管理者では3年または5年が多い。

PFIとの違い(3)

114

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• 利用料金制度は指定管理者の最大の魅力。PFIで使えないというアンバランス。

• 指定管理者の対象には地方自治法上の制約がないので、PFI事業者であるSPCも含まれる。

• 自動指定

– PFIの手続きにおいて、予め、選定事業者を指定

管理者に自動的に指定することを条件とすることで、PFI事業者の自由度(=魅力)を高めることが

可能。

指定管理者とPFI

1 実施方針

2 特定事業選定

3 公募(募集要項、選定基準、契約書案)

4 応募

5 選定

SPC 市民

6 設立

7 実施

指定管理者とPFIを併用した仕組み

公募時点から当選者を指定管理者にすることを

定めておく

実際に当選者を指定管理者にして協定を結ぶ

115

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事例 盛岡市火葬場

盛岡市

SPC 市民

建設会社

設計会社

焼却炉会社

運営会社

PFI事業権契約

指定管理者協定

制度手法アプローチのキーワード

業務委託・指定管理者

地域再生・都市再生・中心市街地再生・特区など

地方行財政

PFI

民営化

公共財

外部性

自然独占

情報の非対称性

市場化テスト

116

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市場化テスト

官 民 市民

決定 実施

PFI指定管理者

官 民 市民

決定 実施

市場化テスト(官民競争入札)

企画 建設 資金調達 所有 運営設計官が落札

民が落札 企画 建設 資金調達 所有 運営設計

歴史的経緯

• 1970年代以降のNPM (New Public Management)の中で生み出された手法の一

つ。

• 英国:Market Testing, Market Test

• 米国:Competitive Sourcing, Managed Competition

• 豪州:Competitive Tendering and Contracting

117

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基本的考え方

• 官と民が対等な立場で競争入札に参加し、価格・質の両面で最も優れた者が、そのサービスの提供を担う仕組み

• 「官と民が競争を行う」というところに主眼が置かれ、単純に公共サービスを民に任せるというものではない。

• 目的は、競争環境をつくり出すことで、公共サービスの質の向上とコスト削減をめざし、その担い手は官民問わず、最も適した者に任せるということ。

• むしろ、官の効率化も目的の一つ。

官民競争入札・民間競争入札

• 官民競争入札

– 公共サービスについて「官」と「民」が対等な立場で競争入札に参加し、質・価格の両面で最も優れた者が、そのサービスの提供を担う仕組み

• 民間競争入札

– 「官」が参加しない。

– 通常の業務委託と同じだが、法が要求する公平性、透明性が担保される。

118

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1 実施要綱

2 公募

3 応募

4 選定

市民

5 実施

市場化テスト(官民競争入札)の仕組み

0 特例要望

0 意見聴取

意見聴取

• 対象事業が限定されていない。

• 現在法律により公務員しか担うことができないとされているような業務であっても、法令の特例を設けることにより、民間事業者がその業務を担うことが可能。

• 自治体が所管する公共サービスについて官民競争入札等を実施するうえで、民間事業者の参入を妨げる法律がある場合、特例を設けることを国に提案することができる。

• 自治体版市場化テストで対象を限定しない募集が行われていることの根拠

119

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自治体が実施する官民競争入札・民間競争入札

• 本法律の規定による法令の特例(規制緩和等の特例)が適用される「特定公共サービス」を対象とするものについて、その手続に関する規定等、所要の措置を講じられている。

– 窓口6業務(住民票、戸籍謄本、印鑑証明書、納税証明書、戸籍付票、外国人登録原票の写しの交付)

• 法令の特例を適用する必要がない業務については、地方自治法等に基づき、規則等に手続を規定することで、自治体は、官民競争入札等を実施することができる。

– 自治体版市場化テストは、「法令の特例を適用する必要がない業務」を対象に行われている。

実施要項、入札の実施、落札者の決定

• おおむねPFIのプロセスと同じ

• 相違点

– 対象公共サービスの従来の実施状況(情報の非対称性による優位性を官に与えない)

– 入札を取り仕切る公務員と応札者として参加する公務員との間の入札の公平性を阻害するおそれのある情報の交換を遮断するための措置

• 同じ役所内でも電話もメールもさせない

120

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契約の締結、事業の実施、モニタリング

• 民間事業者が落札した場合には、実施要項と入札時の提案内容に従って契約が締結され、その契約に基づいて事業が実施されることになる。・・・PFIと同じ

• 官が落札した場合には、実施要項と入札時に作成した書類(いわゆる入札提案書)に従って、責任をもって実施される。

• いずれの際も、報告、立入検査、指示等を行い、事業の改善に努める。契約解除等も可能。

事例(法に基づく事業)

• 長野県南牧村

– 野辺山出張所窓口業務

• 特定公共サービス窓口6業務(受付及び引渡し)

• 福祉医療費支給申請書、児童手当現況届、村営住宅収入申告書の受付などの窓口業務

• 村が出資する第三セクターが落札

• 北海道由仁町

– 三川支所窓口業務

• 特定公共サービス窓口6業務(受付及び引渡し)

• 高額療養費の申請の受付、乳幼児医療助成申請の受付、児童手当

• 現況届の受付などの窓口業務

• 一般の民間企業が落札

121

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事例(法に基づかない官民競争入札)

• 東京都職業訓練校

• 愛知県自治研修所職員研修業務、旅券センター旅券申請窓口業務

• 歌山県庁南別館管理運営業務

• 岡山県職員公舎等管理業務

• 奥州市水道止水栓開閉栓業務

• 倉敷市車両維持管理業務

(事例)東京都版市場化テストモデル事業

• 職業訓練校(IT、医療事務など)

– 法によらない市場化テスト

– 公共サービスであるのは就職弱者対策– 最重要の要求水準は就職率(70%)・・・KPI– 官民競争入札

– 総合評価一般競争入札

– 実施場所も提案事項(民間の教育施設も可)– モデルのため1年

– 7件実施し6件で民間が落札、都は1件

122

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KPI (Key Performance Indicator)

• 重要成果指標

• 可能な限り、定量的かつ客観的な指標によって公共サービスの要求水準を示す。

• 東京都のモデル事業では、「就職率70%」を採用した。

• これにより細部を決めずとも、ガバナンスが可能になる。

• 市場化テストだけでなくすべての公民連携に共通して応用できる概念。

制度 市場化テスト PFI 指定管理者

根拠法

公共サービス改革法、地方自治法

PFI法 地方自治法

対象 公共サービス。法令特例により行政処分も対象になる

公共施設等

公の施設

民間事業者との関係

私法上の契約関係を基本としつつ、契約関係に一定の制限を課す仕組み

私法上の契約関係

行政処分により管理権限の委任を行う

選定方式

入札により決定(官も参加)

入札により決定

指定(公募)

3つの制度の比較(1)

123

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制度 市場化テスト

PFI 指定管理者

特徴 官民競争入札

DBFOを含めたVFMの発揮

利用料金制等管理者権限の行使

官民競争入札

◎ 想定されていない

想定されていない

DBFO 想定されていない

◎ 一般的には×、民間ビル賃借(権)の場合は民が実施している

利用料金制

想定されていない

想定されていない

3つの制度の比較(2)

• 「官民競争入札」、「設計、建設、資金調達、所有を含めた総合的なVFMの発揮」、「利用料金制等管理

者権限の行使」はいずれも優れた特徴。

• 本来の趣旨が異なるため、最も趣旨に合致する制度を使えばよい(政府見解)。

• だが、優れた特徴は複合的に使えるようにすべきではないか。

3つの制度の比較(3)

124

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市場化テスト(官民競争入札)

指定管理者

PFI

PFI事業者を

指定管理者とすることは可能(平成16年12月15日総

務省通知)

特定公共サービス以外で指定管理者の対象になりうる事業でも官民競争入札は可能(自治体版市場化テスト)

PFIでの官民

競争入札導入(PFI法によら

ない手続きで官民競争入札を実施)

スーパーPPP

• 基本はPFI、また、厳密に法に基づかないPFI的手法でも良い

• 入札=官民競争入札

– 官も参加(PSCではなくて競争を前提にした応札 PFI-LCC(Pu))

– 民も参加(PFI-LCC(Pr))

• 選定=客観性

– PFI-LCC(Pu)またはPFI-LCC(Pr)のうちPSCを下回り、かつ低い

ほうを選定する

• 実施=契約主義

– 官が落札したらPFI-LCC(Pu)によって実施・・・確実に従来よ

り改善する

– 民が落札したらPFI-LCC(Pr)によって実施

• 管理者権限

– 民が落札したら指定管理者に指定

superPPP

125

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PPP総論Ⅰ vol.09

制度手法アプローチ3(民営化)

2009.6.20

根本祐二

制度手法アプローチのキーワード

業務委託・指定管理者

地域再生・都市再生・中心市街地再生・特区など

地方行財政

PFI

民営化

公共財

外部性

自然独占

情報の非対称性

市場化テスト

126

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民営化

• 松原聡の定義(「民営化と規制緩和」)– Privatizationの一般的な定義(世界)

• 規制緩和、公企業を民営化したり、事業分野の分割、事業地域の分割、売却、行政サービスの民間委託、市民の株式保有増大、受益者負担方式を導入すること

• 要するに「経済全体の効率を上げるために市場メカニズムを重視し、政府の財政・社会に関する関与を縮減すること」・・・小さな政府そのもの、民間化と言ったほうが良い

–民営化・・・公企業を民営化すること

公共事業 私企業

国営企業

特殊法人 規制産業 純粋私企業

公団、事業団、公庫など

特殊会社

強い規制

弱い規制

国有林野事業

財務省印刷局・造幣局

郵政公社

都市再生機構

水資源開発公団

日本政策投資銀行

NTTJR各社

日本たばこ

運輸

通信

電力

ガス

金融

保険

流通

建設

農業

公経営(公企業) 私経営(私企業)

松原聡の分類

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PPP総論での定義

• 業務委託、指定管理者、PFI、市場化テストと区別する必要がある。

• 民営化–国の公的企業の民営化。(GDP統計の概念)

–自治体の公営企業の民営化。

–電気・ガス・水道、交通局事業、病院事業など受益者負担型事業の民営化は当然に含む。

–非受益者負担型の事業の民間への委託は委託であり民営化ではない。我孫子市のケースなど民営化と呼ぶ場合もあるが、あくまでも委託(もともと受益者負担型ではなければ委託(またはサービス購入)となるのは不可避)。

市 民 市民

決定 実施発案

NPO

NPO

• 我孫子市提案型公共サービス民営化制度

–全事務事業が対象(初の試み)

–提案者の知的所有権保護のため随意契約を認める(初の試み)

階層別研修・専門別研修・派遣研修、スケジュール管理等秘書業務、暮らしの便利帳の作成・発行 、地下水環境調査、障害者を対象としたIT講座 、保健センター・休日診療所施設維持管理、街路樹の維持管理 、公園維持管理・公園管理(樹木、草刈) 、市民カレッジ「文学歴史コース」 、市民カレッジ「女性魅学」 、助産士会しあわせママパパ教室

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官 市民決定 実施純粋公共

事業

官 民 市民

決定、実施

民営化後の構造

民営化の概念

事業の権利義務の譲渡

受益者負担

受益者負担

経済的給付はない

官 市民

決定 実施

非受益者負担型 民

納税

経済的給付あり

時代 政権 民営化された公企業

70年代以前

日本通運(50)、帝国石油(50)、日本合成ゴム(69)

80年代 中曽根康広

日本電信電話公社(84)、日本自動車ターミナル(85)、日本専売公社(85)、東北開発(86)、日本国有鉄道(86)、日本航空(87)、沖縄電力(88)

00年代 小泉純一郎

電源開発(03)、道路関係四公団(05)、郵政公社、日本政策投資銀行、商工中央金庫

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例:郵政民営化

郵政公社 市民

サービス地域・料金決定、実行

郵政公社 民間 市民

決定、実施

郵便料金支払い

郵便料金支払い

特別な規制(過疎地域のサービス維持など)

仮定

自治体と民営化

• 公営企業のもともとの必要性

– (1)規模の経済による自然独占

• ガス、上下水道

– (2)市場性が低い地域での純粋公共財、価値財

• 病院、バス

– (3)幼稚産業

• 介護、国民宿舎

• 民営化可能となる理由

– コンテスタビリティ

–緩やかな関与でも可能

–民間の成熟

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自治体における民営化の意味

• 官

– 「民でできるものは民で」にもっとも該当しやすい

– PFI、指定管理者と異なり根拠法がないため自由

度が大きい

• 民

–ビジネスチャンスが増える

–非効率性であればあるほど可能性が増える

• 市民

–公立では維持できなくなる可能性のあるサービスが維持される

1 3 8 11 1322

2 2

27

1114 14

2

6

9121

1

1

11

11

2

5

7

1112

4

19

36

45

49

0

20

40

60

80

100

120

15年度 16年度 17年度 18年度 19年度

介護

観光その他

とちく場

市場

港湾

病院

ガス

電気

交通

過去5年間の民営化・民間譲渡の実施状況(累計) 総務省調

131

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例:ガス事業の民営化

公営ガス事業

市民ガス管網・料金決定、生産・販売

自治体

民間ガス事業者

市民決定、実施

事業の権利義務の譲渡(金額の精算)

ガス代支払い

ガス代支払い

一般的規制

西川町ガス事業民営化

• 新潟県西川町(人口12千人)の市営ガス事業を民

営化。熱量変更が契機。

• 隣接区域で都市ガス事業を行っている蒲原ガスが事業を承継。

• 保安の確保、サービス体制の整備や譲渡後当分の間の料金体制の据え置きなど市の要求する基本的条件を満たすことが条件となっている。

• 一般会計には追加負担なし。非常勤職員は民間に移籍、常勤職員は市内部で配置転換。

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仙台市ガス事業民営化

• 2010年度よりの民営化を見込んで、公募を実

施。東京ガス、東北電力、石油資源開発グループが参加資格者となった(1グループのみ)。

• 市は譲渡代金で地方債(公営企業債)の一括償還を目指したが、民間は、経済環境の悪化を理由に地方債残高並みの譲渡代金の提示を拒否、交渉が決裂した。

• 他の参加希望者はいなかったために民営化計画は中断している。

例:バス事業の民営化

公営バス事業

市民バス路線網・料金決定、運行

自治体

民間バス事業者

市民

決定、実施事業の権利義務の譲渡(金額の精算)

バス代支払い

バス代支払い

過疎地域の路線維持条件

過疎路線補助金

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函館市営バス事業民営化

• もともと民間バス事業を市営バスに移管したもの。年間4億円程度の赤字を計上し累積赤

字が肥大化。

• 民間事業者(函館バス)は、市出資、機械化投資助成、赤字路線への補助を条件にバス車両のみを市場価格で購入。土地、建物は一般会計に有償譲渡。

• 職員111名のうちロープウェイ7名、一般会計等89名、退職15名。

例:国民宿舎の民営化

自治体

市民市民保養施設運営

自治体

民間旅館事業者

市民決定、実施

事業の権利義務の譲渡(金額の精算)

利用料支払い

利用料支払い

134

Page 137: 対象プロジェクト名 知識体系化プロジェクト 知識体系テキスト … · Vol.10 2009年6月27日制度手法アプローチ4(公共資産活用型、規制誘導型)

八雲町国民宿舎民営化

• 老朽化(築35年)、陳腐化(洗面共同)著しい国民宿舎を維持すること自体が困難として民営化を決定。

• 土地は有償、建物は無償譲渡し建替が条件。撤去費用、新築工事の補助金あり。

• 地元の老舗温泉旅館八雲遊楽亭が落札

国民年金健康保養センター「ひみ」民営化

• 国の行財政改革の一環として独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構が富山県氷見市所在の保養センターの公募売却を実施。

• 当時の支配人他従業員が出資して新会社を設立。不動産等の譲渡を受けて九殿浜温泉ひみのはなとして営業を継続した。MBO(managed buy out)の一種。

135

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例:病院の民営化

自治体

市民公立病院サービス

自治体

民間病院事業者

市民決定、実施

事業の権利義務の譲渡(金額の精算)

診療料支払い

診療料支払い

福岡県立病院事業民営化

• 累積債務の解消が困難。一部病院廃止による病床数減少も効果なし。

• 残存5病院の改革

–4病院を民営化。1病院(精神医療センター太宰府病院)に指定管理者制度を導入することを決定(精神保健福祉法の必置義務)。

–民営化では譲渡価格を明示するとともに、公的医療サービスを具体的に明示。

–公募により事業者を募集し、民営化4病院はそれぞれ別々の事業者が決定。

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民営化の課題

• 公共サービスの維持– 契約によるガバナンスは可能

• 資産譲渡代金の算定– 純資産額または年間キャッシュフロー(償却前利益)が目安(次葉参照)

– 市場価値以上では譲渡できない、簿価と乖離している場合は損切り(write down)

– 負債が残存する場合は、一般会計で引き受ける– 利益が出れば負債償還+内部留保もありうる

• 競争条件– 受益者負担(市場を知っている)、技術要件から参加企業が限られる。

• 雇用の維持– 民間に移籍する例もある– 他は配置転換、高齢化のため自然減も多い

(参考)大阪市営地下鉄民営化

• 前回市長選の争点。推進派が敗北し中断。• 19年度高速鉄道事業会計

• (a)純資産額=買取額 1兆3180億円

• 全会計地方債残高5兆4千億円(指定市ワースト1位)の25%・・・大きく貢献

• (b)キャッシュフロー=年間返済可能額 618億円

• (a)/(b)=21.3年・・・民でも投資可能

• 実際には土地等転用可能資産も多く、譲渡代金はもう少し少なくて済むはず

• 利益が出ているからこそ民営化して負債を圧縮する意味がある。

137

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PPP総論Ⅰ vol.10

制度手法アプローチ4 (公共資産

活用型、規制誘導型)

2009.6.27

根本祐二

公共資産活用型PPP、規制誘導型PPP

• 特徴

–公共資産活用型PPP(空間は官、内容は民)

• 官は民に対して公共資産売却・賃貸で関与する

–規制・誘導型PPP(空間は民、内容は民)

• 官は民に対して規制・規制緩和・補助・税制・金融で関与する

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関与の理由

• 公共サービスではない(公共財ではない)にもかかわらず、なぜ、官が関与するのか

–収入確保(普通財産の経済的活用)

–雇用維持、税収増加、経済活性化、地域イメージの向上など(外部性)

–公共資産の「無条件単純売却」の場合は、「無条件の完全民営化」同様PPPとはならないが、何らかの公共的な条件を付せばその限りにおいてPPPとなる(実際は無条件であることはほぼない)。

市場日産自動車

企業活動

横浜市

例:日産自動車本社移転のケース(公有地活用)

(1)横浜市の政策目的と企業誘致(公募)

雇用増、税収増、消費増、地場産業振興効果

市有地の売却(価格固定)、助成金、インフラ整備(地下鉄など)

(2)民の提案

日産自動車が本社を立地、2千人の就業

(3)官民間の契約

市有地の売却条件、助成金の条件として本社維持が必要

一定期間内に違背した場合は契約解除、土地買戻

土地売却

代金 事業による利益

139

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横浜市から見た費用対効果

助成金(税制優遇も含む)インフラ整備費用土地価格の割引分交通渋滞コスト・

土地に関する借入負担軽減雇用効果税収増効果消費増効果地場産業振興効果・

対象は民間事業でも、地域での社会的な費用対効果がプラスであれば政策として推進すること(官の関与)が認められる。

費用 効果

例:世田谷ものづくり学校のケース(公有建物活用)

テナントイデー

企業活動

世田谷区

(1)世田谷区の政策目的とアイデア募集(公募)

廃校舎の有効活用、地域での産業の振興

手段としての企業誘致:条件として建物賃貸(安価)

(2)民の提案

イデーがデザイナー向けSOHOビルとして運営

(3)官民間の契約

区の賃貸条件として提案内容の履行が求められている

違背した場合は契約解除

建物賃貸

テナント料賃借料

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世田谷区から見た費用対効果

割安な賃貸料一部改修投資・・・・

雇用効果税収増効果消費増効果地場産業振興効果安全安心効果・

対象は民間事業でも、地域での費用対効果がプラスであれば政策として推進すること(官の関与)が認められる。

費用 効果

助成金

利用者

市ヤマト運輸

助成金公有建物賃貸

コールセンターサービス提供

ヤマト運輸南魚沼コールセンター

新潟県と南魚沼市が、合併対象自治体の議場を、ヤマト運輸のコールセンターに貸し出した。

地域の効果:遊休建物活用、雇用効果(最終200名)

141

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公共資産活用型のパターン

土地 建物

売却

公有地売却行政財産では原則不可で普通財産に変更する必要あり

公有建物売却行政財産では原則不可で普通財産に変更する必要あり底地に対する私権の設定(借地権)を行うため、土地も普通財産である必要あり

貸付

公有地貸付行政財産なら目的外使用許可が必要普通財産なら可能

公有建物貸付行政財産なら目的外使用許可が必要普通財産なら可能

類型 プロジェクト 内容

公有地売却

秋葉原都有地 市場跡地活用。鹿島建設等がITセンターを有する複合ビル(UDX)を建設。

みなとみらい21地区66街区

日産自動車本社が東京銀座から移転。就業者数2千人。2009年完成予定。

公有地貸付

神宮前1丁目都有地

原宿警察署PFI。余剰空地に自由提案型の民間事業を実施。

みなとみらい21地区61街区

横浜マリノスのクラブハウス、練習場、スタンド棟として使用。

公有建物売却

中野サンプラザ

国の施設を区、民間企業が出資して新たに設立した三セクが譲り受ける。

公有建物貸付

世田谷ものづくり学校

区立中学校廃校舎をデザイナー等のスモールオフィスとして転用。

ちよだプラットフォーム

区の中小企業センタービルを起業家、NPO等のSOHOに転換。

142

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公共サービス型と公共資産活用型の比較

公共サービス型 公共資産活用型

主目的 公共サービスの実施(≒公共財)

民間事業による地域振興効果(外部性)

官の役割 公共サービスの決定

民への事業権の賦与

委託料、サービス購入料の支払い

モニタリング、ペナルティの実施

公共資産の提供

補助金等の供与

売却代金、地代・賃貸料の収受

モニタリング、ペナルティの実施

民の役割 公共サービスの実施 民間事業の実施

資金の流れ

官から民への流れ(公共サービス提供の対価を税収から支払う)

民から官への流れ(資産活用の対価を事業収益から支払う)

市民・市場

民官

公共資産活用型(売却)

金融機関

投融資

収入

公共サービス型(サービス購入型)

土地購入

返済

市民民官

金融機関

投融資

サービス購入料

返済

初期投資の資金調達の流れ

返済資金の流れ

143

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市民・市場

民官

公共資産活用型

利用者負担収入

公共サービス型(サービス購入型PFI、委託)

購入・賃借料

市民民官

サービス購入料

税金

公共資産活用型PPPをめぐる環境変化(1)

• 従来の自治体資産の有効活用

–最初から経済的な活用を前提にした普通財産(土地開発公社、工業団地・・・)

• 売れ残り、デフレによる含み損の発生

• 公共サービスとしての領域の厳格化

–行政財産の不要が出た状態で断片的に対応

• 量的に少なくなる、低未利用の資産を認識できない

• 処分方法が部分最適的(例:周辺住民の意向だけで決める)

144

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公共資産活用型PPPをめぐる環境変化(2)

• 公会計改革・資産債務改革

–台帳から資産評価会計への変化

–今年度中に公開が義務付けられている

• PRE(パブリック・リアルエステート)

–公的不動産を戦略的に活用しようとする動き

–国土交通省において検討中

–民間不動産有効活用(CRE)と対をなす

• 民においても実は十分にできていない

145

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PPP総論Ⅰ vol.11

制度手法アプローチ5 (規制誘導

型)

2009.7.4

根本祐二

規制・誘導型のパターン

手段として規制を用いる

手段として経済的インセンティブを用いる

政策として明示する ①ビジョン

②規制創設、強化

③規制緩和、特例、規制に基づく許認可

④補助金・交付金

⑤税制上の優遇

⑥金融(低利融資、保証)

民間事業、プロジェクト

146

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店子家守

賃借

①ビジョン 千代田区のSOHOコンバージョン

(1)千代田区の政策目的

中古ビルの空室解消のための新しいタイプの利用者の発掘

(2)民の提案

区に提案するものはない。

(3)官民間の契約

なし。民にとっては政策変更のリスクはある。

賃借

家賃

大家家賃

ビジョン明示

建築物所有者

②規制 建築基準

(1)官の政策目的

国民の生命、健康及び財産の保護

(2)民の提案

建築許可を得るためには規制に適合する必要がある。

(3)官民間の契約

規制に強制力があれば違背するとペナルティが課されるという意味で契約と同等の効果を持つ。

規制国民

147

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③規制緩和 許認可:千葉市フィルムコミッション

市民映画会社

制作・配給

千葉市

誘致

(1)千葉市の政策目的

映画・映像撮影による地元消費増、知名度引き上げ、企業誘致

(2)民の提案

映画のロケ地として申請

(3)官民間の契約

便宜供与(交通規制、公共施設の使用許可、空間占有など)

違背した場合は便宜供与停止

許認可

入場料

市場コンテンツ企業

企業活動

横浜市

④助成金 横浜市映像コンテンツ企業等立地促進助成

(1)横浜市の政策目的と企業誘致(公募)

映像文化都市づくりに貢献できる企業

設備投資、改装投資を対象に最大5000万円を助成

(2)民の提案

横浜市内に立地し、コンテンツ制作または人材育成を実施する

(3)官民間の契約

助成金の条件としてコンテンツ制作または人材育成が条件

一定期間内に違背した場合は契約解除、助成金返還

誘致補助金

事業利益

148

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三類型の比較

公共サービス型 公有資産活用型 規制・誘導型

事業空間

官 官 民

事業内容

官 民 民

主目的

公共サービスの実施(≒公共財)

民間事業による地域振興効果(外部性)

民間事業による地域振興効果(外部性)

官の役割

公共サービスの決定

事業権の賦与

委託料、サービス購入料支払い

モニタリング、ペナルティの実施

公共資産の提供(売却、賃貸)

補助金等の供与

売却代金、地代・賃貸料の収受

モニタリング、ペナルティの実施

規制、規制緩和(含む許認可)

補助金・税制・金融等の提供

モニタリング、ペナルティの実施

公共サービス型

公有資産活用型 規制・誘導型

民の役割

公共サービスの実施

民間事業の実施 民間事業の実施

資金の流れ

官から民への流れ

民から官への流れ

官から民への流れ(補助金)

市民民官

金融機関

投融資

サービス購入料

返済

市民・市場

民官

金融機関

投融資

収入土地購入

返済

市民民官

金融機関

投融資

補助金

返済

149

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三類型の共通点

• 官民の役割分担とそれぞれにとっての合理的な動機が必要

– “リスクとリターンの設計”

• 約束事は守られる必要がある

– “契約によるガバナンス”

• 守られない規制は無意味

• PPPの2原則の重要性は同じ

• ただし、資金の流れは大きく違うので、資金が調達できるように組み立てる必要がある

• → 金融アプローチの必要性

公共資産活用型、規制誘導型に用いられる手法

• 官の恣意的な関与は不適当となったため、予め、規制緩和や補助金支給のメニューを透明な手続きで示しておく。

• 地域において頻繁に用いられる手法

–地域再生

–構造改革特区

–都市再生

–中心市街地再生

–従来の縦割りの手法を横断的にまとめたもの(内閣府が所管、使う側からすると窓口が一元化された)

150

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地域再生(根拠法:地域再生法)

海士デパートメントストアープラン~「選ばれし島」まるごと届けます~ (島根県海士町)地域提案型雇用創造促進事業(パッケージ事業)【厚生労働省】

時間と距離という離島物流のハンディを解消するため、CAS(キャス・細胞を壊さない冷凍新技術)を活用した農水産物保存加工の新産業を興すことで、雇用を確保、定住者増加による島の再生を図り、次世代への持続可能な発展を目指す。

文化芸術創造都市の形成「としまアートキャンバス」計画 (東京都豊島区)

地域再生に資するNPO等の活動支援 【内閣府

まちづくり関連

廃校校舎を転用し、劇団や文化芸術団体の稽古・作品制作の場とするとともに、アートNPOが地域住民との交流を図るなど、多様な主体の協働により文化芸術を基軸としたコミュニティの再生を図り、文化芸術創造都市を目指す。

地域再生の事例(1)

観光サービスを企画・提供する人材の育成により、中心市街地の街並みの“古さ”を逆手にとった「昭和30年代」をコンセプトとする「昭和の町」づくりに取り組む。

豊後高田「昭和の町」づくり計画~「昭和の町」を核とし

た商業と観光の一体的振興を目指して~(大分県豊後高田市

地域提案型雇用創造促進事業(パッケージ事業)【厚生労働省

雇用対策関連

潤い、文楽、そよ風でつづるまちづくり計画(熊本県、山都町)

道整備交付金、補助金で整備された公立学校の廃校校舎等の転用の弾力化 など

少子化の中、小中学校の統合を進めるとともに、廃校校舎をコミュニティ施設等に活用し、これらを有機的につなぐネットワークを効率的に整備する。

まちづくり関連

雇用対策関連

151

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山梨県、山梨大学、地場ワイン産業、生産農家などが一体となって、ワインに関する人材の生涯養成拠点の整備、ワイン科学士認定制度の創設、起業家支援などの取組を推進し、高品質ワイン生産システムの構築、地域ブランドの確立を図る。

山梨県ワイン人材活性化計画(山梨県)

「地域再生人材創出拠点の形成」プログラム【文部科学省】

地場産業振興

こうべ「健康を楽しむまちづくり」構想~安心で健やかな地域社会をめざして~(兵庫県神戸市)「高齢者活力創造」地域再生プロジェクトの推進【厚生労働省

神戸大学を中心に、兵庫県、神戸市、NPO、民間事業者などの連携により、 「こうべ健康ウォーク」

の開催など、高齢者の活力創造と生活習慣病予防のための歩く健康づくりを推進し、地域産業の活性化と都市魅力の向上を目指す。

健康志向高品質かんきつ産地形成による地域再生 (愛媛県松山市)地方大学等の知的・人的資源活用による農林水産研究の実用化促進【農林水産省】

地場産業振興

愛媛大学等の研究機関、農協、行政等が連携し、地場特産品の柑橘類について、付加価値の高い新品種の生産技術の確立、加工品の開発・商品化を推進し、農業や食品加工産業等の地場産業の活性化を目指す。

金型関連産業の人材力強化による地域ものづくり基盤再生構想 (岐阜県、大垣市)

「地域再生人材創出拠点の形成」プログラム【文部科学省

地場産業振興

ものづくり基盤を支える金型産業の集積地において、岐阜大学や金型産業、行政等が連携して、次世代の金型技術人材の育成、地元企業への定着を推進し、企業の競争力強化、地域経済の活性化を図る。

健康・医療

地域再生の事例(2)

構造改革特区(根拠法:構造改革特別区域法)

<民間・地方公共団体 >

規制の特例について提案

構造改革特別区域計画の実施

<地方公共団体>

<国>

地域活性化統合事務局と各省庁で折衝し、対応方針を決定

(約2カ月で結論。折衝

過程を全てHPで公表)

構造改革特別区域計画の認定

評価・調査委員会による評価

<地方公共団体>

構造改革特別区域計画の作成・申請

1,077の特区を実

現特区の全国化に伴い、現在の特区は363

全国展開を決定した特例措置:75

この他に各省庁が自ら全国展開を決定した特例措置:53

641の規制改革を実現特区として対応:215

全国的に対応: 42

特区で当分の間存続する特例措置:1

152

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「どぶろく」の製造免許の要件緩和の特例を認めるなどして、地域資源、多彩な人材等を活用し都市との交流拡大を図るとともに、地域に根ざした新たな起業を促進する。

日本のふるさと再生特区(岩手県遠野市)

農業・都市農村交流関連

小豆島・内海町オリーブ振興特区(香川県内海町)

農業の担い手不足、地場産業の停滞する中、株式会社の農業経営参入の特例を活用し、地域資源であるオリーブを、加工する企業自らが町内の遊休農地を有効活用して栽培。町の活性化を図る。※町名は認定時のもの

太田外国語教育特区(群馬県太田市)

教育関連

学習指導要領等の教育課程・基準によらない特例を活用して、大半の授業を英語で行うことにより、子どもたちが生きた英語や世界に通用する感性・国際感覚を身につけられる教育環境を構築する。

富山型デイサービス推進特区(富山県、富山市ほか

福祉関連

高齢者向けの指定デイサービス事業所における障害児の受け入れなどにより、身近なところでサービスを受けることができるようにする。

農業関連

特区の事例(1)

全国化済

全国化済

全国化済

アジアに近いという地理的優位性、充実した社会基盤等を活用し、産業の集積、港湾の国際競争力の強化により、地域経済の活性化を図る。

北九州市国際物流特区(福岡県北九州市)

国際物流関連

美祢社会復帰促進センターPFI特区(山口県、美祢市)

誘致した刑務所事務の民間委託等により地域雇用を創出し、人口定住や地域活性化を図るとともに、行刑施設内の診療施設を地域住民に開放することで地域医療の充実を図る。

国 際 自 動 車 特 区(愛知県、豊橋市、蒲郡市、御津町、田原町)

国際物流関連

自動車回送時の仮ナンバー取り付け方法の柔軟化などの特例を活用し、自動車の流通機能や研究開発機能の強化を通じた、国際自動車産業都市の実現

を目指す。※町名は認定時のもの

風を感じる北のまちづくり・札幌カーシェアリング特区

(北海道札幌市)

環境・新エネルギー関連

無人の自動車貸出を認める特例を活用し、自動車の"所有"から"共有"という「脱マイ

カー」の発想をもとにカーシェアリング事業を行うことにより、環境にやさしい新しいコミュニティづくりを進める。

まちづくり関連

特区の事例(2)

全国化済全国化済

153

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都市再生(都市再生特別措置法)

○解決を図るべき都市の課題に関する具体

的な行動計画

○関係省庁、地方公共団体、関係民間主体

等が参加・連携し総力を挙げて取り組む

○各課題に応じて必要な手法・手段を活用

(実現手段の限定なし)

○これまでに23プロジェクトを決定・推進

(第1次決定13年6月~ 第13次決定19年6月)

※最新のプロジェクト決定

「国際金融拠点機能の強化に向けた

都市再生の推進」

担い手・担い手支援機関の連携強化、活動促進、位置づけの明確化等

自治会、町内会など地縁による団体、商店会、NPO、大学、開発事業者、企業・企業コミュニティなど、様々な担い手による都市再生活動が全国で進展

地域の底力の向上

都市再生プロジェクトの推進都市再生プロジェクトの推進

全国都市再生のための緊急措置~稚内から石垣まで~(14年4月本部決

定)

全国都市再生モデル調査(15~19年度)○地域の知恵とチャレンジに対する支援

「まちづくり交付金」創設(16年度)○都市再生特別措置法改正

都市再生基本方針改定16年度新規 355地区,17年度新規 385地区18年度新規 362地区,19年度新規 254地区20年度新規 163地区

地方の元気再生事業(20年度~)○地域の自由な取組を国が直接支援

「稚内から石垣まで」全国の都市再生の推進

「稚内から石垣まで」全国の都市再生の推進

「都市再生の担い手」について(18年7月本部決定)

「都市再生の担い手」について(18年7月本部決定)

民間都市開発投資促進のための緊急措置(13年8月本部決定)

民間都市開発投資の促進民間都市開発投資の促進

○地方公共団体の申し出に基づき国が指定

○65地域(約6,612ha)

(第1次指定14年7月~第6次指定19年2月)

※最新の指定:第6次指定

浜松駅周辺地域(40ha)難波・湊町地域(31ha→36ha

都市再生緊急整備地域

都市再生特別措置法の制定(14年6月1日施行)

札幌市2地域 163ha

仙台市2地域 125ha

千葉市柏市4地域 185ha

那覇市1地域 11ha

静岡市浜松市2地域 91ha

名古屋市3地域 428ha

東京都8地域 2,514ha

さいたま市川口市2地域 115ha

横浜市 5地域 265ha

川崎市 3地域 264ha相模原市藤沢市厚木市

3地域 86ha

京都市向日市長岡京市4地域 254ha

神戸市尼崎市4地域 371ha

岐阜市1地域 30ha

大阪市堺市守口市寝屋川市豊中市高槻市

12地域 1,077ha

高松市1地域 51ha

福岡市 3地域 341ha

北九州市 2地域 110ha

岡山市1地域 47ha

広島市福山市2地域 84ha

京浜臨海都市再生予定地域約4,400ha

都市再生特別地区 43地区札幌(2)・仙台(2)・東京(16)・横浜・浜松・名古屋(2)・岐阜・大阪

(12)・高槻・神戸・広島(2)・高松・北九州

民間都市再生事業計画認定 28事業川口・東京(14)・横浜(2)・川崎・相模原・名古屋(2)・大阪(2)・堺・

守口・神戸・高松・福岡

都市再生緊急整備地域(民間都市開発投資促進)65地域 6,612ha

154

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中心市街地の活性化を図るための基本的な方針 (平成18年9月8日閣議決定)

中心市街地活性化基本計画<市町村が作成>

基本計画への意見

認定中心市街地活性化基本計画

認定計画の実施等について意見

内閣総理大臣

関係行政機関の長

協議

同意

内閣総理大臣による認定制度

認定申請

認 定

中心市街地活性化協議会

(まちづくり会社・商工会議所・市町村・民間事業者・地域住民等)

地域ぐるみの取組

(例)

認定基本計画への重点的な支援

商業の活性化等

市街地の整備改善

まちなか居住の推進・街なか居住再生ファンド :民間の多様な住宅供給事業等を出資により支援

都市福利施設の整備

・まちづくり交付金〔提案事業枠の拡大〕

・暮らし・にぎわい再生事業 :空きビル等の改修・コンバージョンに対して支援・中心市街地共同住宅供給事業 :優良な共同住宅の供給支援

・戦略的中心市街地商業等活性化支援事業 :商店街のファサード整備、テナントミックス等に支援

中心市街地活性化(中心市街地の活性化に関する法律)

○認定状況 (現在、75市、77件の基本計画を認

定)(参考)認定75市、77件の内訳

平成19年2月 8日 2件 (富山県富山市、青森県青森市)

5月28日 11件 (岩手県久慈市、石川県金沢市、岐阜県岐阜市、広島県府中市、山口県山口市、

香川県高松市、熊本県熊本市、熊本県八代市、大分県豊後高田市、長野県長野市、

宮崎県宮崎市)

8月27日 5件 (北海道帯広市、北海道砂川市、千葉県千葉市、静岡県浜松市、和歌山県和歌山市)

11月30日 5件 (青森県三沢市、富山県高岡市、福井県福井市、福井県越前市、鳥取県鳥取市)

12月25日 1件 (鹿児島県鹿児島市)

平成20年3月12日 8件 (北海道滝川市、千葉県柏市、新潟県新潟市、静岡県藤枝市、兵庫県宝塚市、

福岡県久留米市、宮崎県日向市、奈良県奈良市)

7月 9日22件 (北海道小樽市、青森県弘前市、青森県八戸市、岩手県盛岡市、秋田県秋田市、

山形県鶴岡市、福井県大野市、長野県飯田市、岐阜県中津川市、愛知県豊田市、

滋賀県大津市、兵庫県神戸市(新長田地区)、兵庫県尼崎市、兵庫県伊丹市、

島根県松江市、愛媛県西条市、高知県四万十市、福岡県北九州市(小倉地区)、

福岡県北九州市(黒崎地区)、長崎県諫早市、大分県大分市、大分県別府市)

11月11日 13件 (北海道岩見沢市、北海道富良野市、山形県山形市、栃木県大田原市、群馬県高崎市、

新潟県長岡市、新潟県上越市(高田地区)、山梨県甲府市、長野県塩尻市、

三重県伊賀市、鳥取県米子市、愛媛県松山市、熊本県山鹿市)

平成21年3月27日 10件 (岩手県遠野市、福島県白河市、静岡県静岡県(静岡地区)、

静岡県静岡市(清水地区)、静岡県掛川市、愛知県名古屋市、滋賀県守山市、

兵庫県丹波市、和歌山県田辺市、山形県酒田市)

155

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例:富山市中心市街地活性化基本計画(計画期間 19年2月~24年3月)

市長の強いリーダーシップの下、賑わいの再生を目的として、①中核商業地区における商業・サービス施設、文化施設、住宅等施設の重点的整備、②既存の路面電車の再活性化を含む公共交通依存度の向上により、コンパクトなまちづくりに取り組む。

目標 指標 現況値目標値(H23年

公共交通の利便性の向上

路面電車市内線一日平均乗車人数

10,016人(H17)13,000人(約1.3倍)

賑わい拠点の創出

歩行者通行量

24,932人(H18)32,000人(約1.3倍)

まちなか居住の推進

居住人口 24,099人(H18)26,500人(約1.1倍)

33,000人32,000人

24,932人

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

平7 平8 平9 平10 平11 平12 平13 平14 平15 平16 平17 平18 平19 平20 平21 平22 平23 平24 平25 平26

(人)

【目標】

(歩行者通行量の動向と数値目標)

【中心市街地を巡る状況】

○郊外における住宅地・商業地の開発

○持ち家率(約8割)・住宅平均延床面積(146㎡/世帯)が全国1位

○1世帯あたりの自動車保有台数も全国2位(1.73台/世帯)

○低密度の市街地が郊外に拡散

※人口集中地区の人口密度が、全国の県庁所在地で最下位(41人/ha)

○中心市街地の人口減少(H7:27,233人 → H18:24,099人)

○中心市街地の商業機能の衰退(小売販売額 H6:1,973億円 → H16:1,182億円)

24,932

集客施設の整備等により増加を図

西武百貨店閉店

映画館・飲食店の閉店等

郊外大規模店出店

*毎年1回、8月休日に定点調査

156

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PPP総論Ⅰ vol.12

金融アプローチ1(PPPをめぐる金融環境、収入安定化)

2009.7.11

根本祐二

金融アプローチの論点

資金調達の役割が官と民のいずれか選択できる。

税収、交付税、地方債=財政

投資、融資、社債=金融

民=SPC官

金融機関市民、金融機関

独立採算型PFI、公共資産

活用型、規制・誘導型、民営化、純粋民間事業

純粋民間事業、委託・指定管理者、サービス購入型PFI

157

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バブル期以前の資金調達

民=SPC官

金融機関金融機関

民(親会社)

国全体の枠組み

終的には国が面倒を見る

終的には親会社が面倒を見る

ソフトバジェット

悪い意味でバランスが取れていた!

ソフトバジェット

政府 市場

バブル崩壊後の世界

親会社が面倒をみない=ノン・リコース(遡及)

×

公共事業へのシフト(民から官へ)

民=SPC官

金融機関金融機関

民(親会社)

政府 市場

国全体の枠組み

終的には国が面倒を見る

ソフトバジェット

ソフトバジェット

158

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官民いずれからの調達もできる場合は、官の方が、より有利かつ楽に調達できるならば、そちらに流れるのは当然。

新設施設における指定管理者とPFIの競合に典型的に見られる。VFMが検証されていない。

例:川崎市立多摩病院

旧 地方財政再建促進特別措置法(再建法)

地方財政再建促進特別措置法(再建法)

赤字額が標準財政規模の5%(都道府県)または20%(市区町村)を超える場合

総務大臣による「財政再建準用団体」指定後は、国の指導・監督のもと「財政再建計画」を策定する。

昭和32年以降 288団体

近年:福岡県赤池町、(鳥取県日野町)、北海道夕張市

159

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夕張市の財政再建団体申請

歴史

1892年 夕張炭山の採炭開始。

1979年 市長に中田鉄治が就任。

81年 北炭夕張新炭鉱ガス突出事故発生。

82年旧夕張炭鉱病院を市立病院として移管。

83年 石炭の歴史村全村オープン。 86年ホテル「シューパロ」オープン。

90年 三菱南大夕張炭鉱が閉山。 炭住、上下水道設

備を市が買収。

02年 マウントレースイリゾート施設を市が取得

07年 財政再建団体となる。

• 過大投資

–石炭産業の負の遺産や民間リゾート施設を引き受け(市場原理により淘汰された施設を官が引き受けた)

–雇用対策、観光集客のためのリゾート投資

• 不透明な資金不足対策

–ヤミ起債

–一時借入金(本来は出納整理期間中の資金繰り対策が目的。収入の目処がないまま借り入れを行い雪だるま的に拡大。)

160

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旧再建法の問題点(総務省)

• 住民に分かりやすい財政情報の開示等が不十分

• 再建団体の基準しかなく、早期是正機能がない

• 普通会計を中心にした収支の指標のみで、ストック(負債等)の財政状況に課題があっても対象とならない

• 対象普通会計のみで、問題を抱えた公営企業にも早期是正機能がない

地方公共団体の財政の健全化に関する法律

• 健全段階 指標の整備と情報開示の徹底

–フロー指標:実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率

–ストック指標:将来負担比率=公社・三セク等を含めた実質的負債による指標

161

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地方債許可基準 早期健全化基準

財政再生基準

実質赤字比率

都道府県2.5%市町村2.5~10%

3.75%

11.25~15%

5%

20%連結赤字比率

- 8.75%16.25~20%

15%30%

実質公債費比率

18% 25% 35%

将来負担比率

- 400%350%

資金不足比率

10% 20% -

162

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早期健全化

• 趣旨:早期是正措置、自助努力が主体

• 財政の早期健全化 自主的な改善努力による財政健全化

–財政健全化計画の策定(議会の議決)、

–外部監査の要求の義務付け

–実施状況を毎年度議会に報告し公表

–早期健全化が著しく困難と認められるときは、総務大臣又は知事が必要な勧告

財政の再生

• 趣旨:破綻回避の強い手段

• 国等の関与による確実な再生

• 財政再生計画の策定(議会の議決)、外部監査の要求の義務付け

• 財政再生計画は、総務大臣に協議し、同意を求めることができる

• 同意を得て、収支不足額を振り替えるため、償還年限が計画期間内である地方債(再生振替特例債)の起債可

163

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旧法の問題点への対応

• 共通の基準による財政情報の開示が行われる(健全化指標)

• 早期是正機能を持つ(健全化計画)

• 一般会計だけでなく、特別会計、公営企業会計を含む(連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率)

• ストックの財政状況も対象とする(将来負担比率)

• 公営企業にも早期是正機能を導入(資金不足比率)

ソフトバジェットは解消したか

• 国の制度の側面

• 当初予想された破綻法制は未実現

• 債務調整(金融機関から見ると債権放棄)が規定されていない・・・金融機関のモラルハザード

• 市場の評価の側面

• 公募債を発行する自治体は少ない、金利も十分に信用格差を反映していない

• 暗黙の政府保証/制度的に保護されていると評価されている・・・市場のガバナンス不在

164

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プロジェクト・ファイナンス登場の背景

民=SPC

金融機関

民(親会社)

親会社が面倒をみない=ノン・リコース(遡及)

×

ソフトバジェット× • バブル期以前のプロジェクトの失敗

• 親会社責任の遡及、格付の低下、経営への悪影響

• 親会社が負担しないときの不良債権化

• 金融機関経営の悪化

• リスクの不明確な投融資への姿勢の変化

プロジェクト・ファイナンスの定義

• 定義:ファイナンスの利払い及び返済の原資を、関与する企業または個人の信用に依存することなく、原則として対象となるプロジェクトから生み出されるキャッシュフロー(収益)に限定し、その担保を当該プロジェクトの資産に依存して行う金融手法 。プロジェクトを行う親会社

は保証しないノンリコースとなるのが一般的。

– キャッシュフロー:会社内部に留保される資金(利益+減価償却費をさすのが一般的)

– ノン・リコース:返済を親会社の保証に依存(=遡求)することなく、子会社であるSPCが当該事業から生み出す収益及びプロジェクト資産のみに依存する こと。

165

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一般的なストラクチャー(エネルギー開発の場合)

SPC オフテイカー

金融機関

投資家

官 市民

建設企業

運営企業

原材料供給者

原料供給契約

投資 融資

EPC (Engineering, Procurement, Construction)契約

O&M(Operation & Maintenance )契約

規制・誘導 長期販売

販売

注:後述

日本初のプロジェクトファイナンス案件

IPPSPC

関西電力

国 市民

投資 融資

長期販売 販売

中山製鋼所

1999年、中山製鋼所IPP( Independent Power Provider(独立系電力卸供給事業会社))

関西電力に長期販売(15年間)

2003年から大阪ガスの傘下に入る(株式譲渡)

金融機関

投資家

出資

大阪ガス株式譲渡

許認可

166

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もともとは一定期間の長期販売契約

技術的には可能でも、販売することが不得意(できない)者は、そのリスクをより得意な者に渡す

「リスクは得意なものがとる」ことによって全体としてのリスクも減少している

SPCは長期販売契約によって収入が安定化している

通常、回収(元本+金利)が可能な融資契約になっているので、融資可能になる

このオフテイクの発想をプロジェクトファイナンスからみると「収入安定化」ここでは安定的な購入者を便宜上オフテイカーと呼ぶ。

オフテイクの意味

収入安定化

SPCの資金調達を実現するためには、この「収入安定

化」を真っ先に検討する。

なにがあれば安定化するか。

サービスの内容の安定性

電気=生活するうえでの必要性が高く、販売しやすい(売れないことはあり得ない)性質を持っている

サービスの販売先の安定性

電力会社=電気の販売先としては 適の者(市民への販売手段を持っている)

この二つがあれば、どのようなサービスでも良い

167

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総投資額

要回収額

N期

収入

N期費用

N期キャッシュフロー=

収入( 大ケース)

収入( 小ケース)

○収入安定化は 小ケースの収入を確保するという意味。○できるだけ多く収入を得るという意味ではないことに注意。

収入安定化の意味

これを安定させる

サービス購入型PFI

• サービス購入型PFIはもっとも典型的に当てはまるケー

• サービスの内容の安定性:公共サービス(廃棄物処理、教育、医療・・・)

• サービスの販売先の安定性:国、自治体

市民SPC官サービス購入料

金融機関

投融資

168

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独立採算型PFI、民営化

独立採算型PFI、民営化の場合は、そのままでは使えない(cf 優先劣後関係(後述))

市民SPC官

金融機関

投融資

利用料

たとえば、テーマパーク

市民に対して長期販売契約(毎年4回ずつ行く)は結べな

い=サービスの販売先の安定性がない

市民SPC官

金融機関

投融資

利用料

これは安定化できない

169

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ところが、オフテイカーを入れることで安定性を実現できる

テーマパークの得意な企業に施設を貸して集客・運営してもらう=サービスの販売先の安定性がある

(例)ユニバーサルスタジオのオフテイクをユニバーサルスタジオ社(米国)が行う

市民SPC官

金融機関

投融資

オフテイカー

利用料

これは安定化できる

出資、補助金

テーマパークの収入安定化

「サービスの内容の安定性」:世界的に評価されている施設「サービスの販売先の安定性」:その運営者

市民SPC官

金融機関

投融資

オフテイカー

利用料出資、補助金

170

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鉄道の場合は、新線建設SPCが線路を建設し、既存鉄

道会社に賃貸する形態がある(上下分離方式)。

鉄道の収入安定化

「サービスの内容の安定性」:鉄道という公共性の高いサービス「サービスの販売先の安定性」:実績のある運営会社

市民SPC官

金融機関

投融資

オフテイカー

料金使用料出資、補助金

オフィスビルの収入安定化

「サービスの内容の安定性」:都心のA級オフィスビル

「サービスの販売先の安定性」:その地区での実績ある企業

テナント

SPC官

金融機関

投融資

オフテイカー

料金許認可

オフィスビルでもテナント探しの得意なオフテイカーが間に入れば収入を安定化させることができる。

たとえば、六本木ヒルズにおける森ビル。

171

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(参考)公共サービス型PPP

市民民官

金融機関

地方債、融資

税金

委託系は安定している(ソフトバジェットの存在)。

これにより委託系へのシフトが起きているが(PFIから指定

管理者へ)、健全化法によりソフトバジェットが断ち切られる方向にある。

収入安定化のまとめ

• 施設を建設し保有する主体が資金調達を行う(運営のノウハウを持っている必要はない)。

• 運営のノウハウを持っている会社に運営リスクを移転する(「リスクは得意なものが分担する」)。

• 収入は安定化する。金融機関は、安定化した収入から安定的に返済を受ければよいので調達もしやすくなる。

• 実務的には、まず収入安定化が使えないかどうか考えるのが第一。

172

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PPP総論Ⅰ vol.13

金融アプローチ2

(優先劣後関係)

2009.7.18

根本祐二

リスク

リターン

収入安定化の限界

オフテイカーはリスクを取るので当然にリターンを要求する。(リスクが高いとオフテイカーがいなくなるおそれ)

主要なリスクを移転しすぎるとSPCのリスクは低くなるので

当然リターンも低くなる。(差別化できない、低付加価値)

SPCのリスク/リターン

オフテイカーのリスク/リターン

リスクとリターンのバランスをもっと多様化する必要がある!↓優先劣後関係

空白

173

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優先劣後関係の基本概念図

総事業費

要回収額

借入金

出資金

総回収額(楽観ケース)

総回収額(悲観ケース)

メザニン

借入金

出資金(普通株)

メザニンへの配当

劣後ローン優先株

出資への配当

出資への配当

社債

種類 内容

社債 格付を得られる最も安全性の高い部分。メザニン以下の部分が十分集まれば、社債発行も可能。

シニアローン 通常の貸付金。劣後ローンの対比でシニアローンと呼ぶ。

劣後ローン 通常の貸付金よりも返済が劣後するがその分金利を高く設定できる。

出資金(優先株) 議決権なし。ただし普通株よりも優先して配当を受けることができる。

出資金(普通株) 通常の株式(議決権等経営参画あり)。

メザニン:中2階の意味。通常の貸付金より返済順位が低いが金利(配当)が高いミドルリスク、ミドルリターンの金融商品。

174

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種類 ウェイト

資本費用(%)

社債 A% a

シニアローン

B% b

劣後ローン C% c

優先株 D% d

普通株 E% e

合計平均 100% X

○まず資本費用の上限Xがある。次いで普通株、シニアローンが決まる。これで足りれば終了。○足りない場合は、A×a+B×b+C×c+D×d+E×e=100×Xとなるような組み合わせを探す。○これを実際に探せるかどうかが鍵を握る。金融機関(アレンジャー)の役割はリスクとリターンの異なる商品を企画し販売すること。

アレンジャーの役割

リスク

リターン

SPCのリスク/リターン

オフテイカーのリスク/リターン

リスク

リターン

メザニンのリスク/リターン

メザニンの登場によって、リスク/リターンの多様性が増し、資金供給者の参画動機が増えた

空白

175

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官 民

SPC

借入金

メザニン

出資金

社債証券会社 市民

金融機関A

金融機関B

優先劣後関係を入れたストラクチャー図

資金調達主体のバランスシートを明示する

出資

融資

融資

引受 購入

資産

(資産売却)

(サービス購入等)

民営化、公有資産型公民連携

• 民営化、公有資産型公民連携はもっとも典型的に当てはまるケース

• それ以外でも応用は可能

• 「収入の安定性」の要素を満たさない場合は、リスクが大きい。リスク/リターンの多様化によって資金を調達する。

市民SPC官

金融機関

投融資

利用料

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優先劣後関係を用いた事例

秋葉原UDX

みずほ銀行大手町ビル

箱根ターンパイク

中野サンプラザ

分野 複合ビル(オフィス主体)

オフィスビル

道路 複合ビル(ホテル、ホール等)

公民連携 公有資産活用型(土地売却)

純粋民間事業(将来再開発)

規制・誘導型(有料道路事業)

民営化+公有資産活用型(土地売却)

秋葉原UDX

東京都有地を公募売却。

公募条件としてITセンターの設置が義務付けられる。

鹿島建設、ダイビルグループが落札。秋葉原クロスフィールドとして開業。

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ユーディーエックス特定目的会社(株)

東京都

都市再生ファンド

一般民間金融機関

日本政策投資銀行東京三菱銀行住友信託銀行富国生命

劣後ローン

シニアローン

土地資本金

売却

テナント

賃貸収入

建物

NTT都市

開発鹿島建設

出資

融資

融資

秋葉原UDXのストラクチャー

メザニンファンド

都市再生プライベートファンド

日本政策投資銀行野村ホールディングス

メザニン資金供給目的のファンドをあらかじめ組成しておく。

優先劣後関係で最も重要なメザニン投資家の発掘を容易にする効果。(情報の非対称性をなくし、競争性を高める)

DBJ-NOMURA都市再生プライベートファンド(不動産向

け投資専門)

出資者A出資者B出資者C出資者D

都市再生プライベートファンドB都市再生プライベートファンドB都市再生プライベートファンドB

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優先劣後関係のまとめ

収入リスクが高いとオフテイカーがいなくなる。

単独ではなく全体で収入リスクを負担する必要がある。

その順番を決めるのが優先劣後関係の意味。

リスクとリターンの関係を細分化すれば、それぞれの当事者のリスク/リターンの選好(好み)を満たすことができる。

リターン重視の商品にすれば販売は可能だが、プロジェクトの費用が増加する。

適切と考えるリスク/リターンの設計でも引き受け手が見つからない場合は、内容、条件の再調整を行う。あるいは停止する。(プロジェクトの自動制御機能)

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PPP総論Ⅰ vol.14

まとめ キーワードの復習

2009.7.25

根本祐二

歴史アプローチのキーワード

• 大きな政府、小さな政府

• 労働党政権、保守党政権、国有化、民営化

• サッチャー、中曽根、レーガン

• NPM (New Public Management)• 三セク、PFI

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経済学アプローチのキーワード

• 物々交換、貨幣、市場

• 市場の失敗

• 公共財、準公共財、非排除性、非競合性、価値財、地方公共財

• 外部経済、外部不経済

• 情報の非対称性、逆選択(アドバース・セレクション)、モラルハザード

• 自然独占、埋没費用、コンテスタビリティ

• 政府の失敗、ソフトバジェット

制度・手法アプローチのキーワード

• PFI(サービス購入型、独立採算型)

• 運営委託、管理委託、指定管理者

• VFM、PSC、PFI-LCC、落札者選定基準

• ガバナンス、モニタリング、インセンティブ、ペナルティ

• 市場化テスト、官民競争入札、民間競争入札長期債務負担行為、自治体財政健全化法、債務調整、公会計改革、資産債務改革

• 都市再生、地域再生、構造改革特区、中心市街地活性化

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金融アプローチのキーワード

• 収入安定化、オフテイカー

• 優先劣後関係、メザニン

• 分散、REIT• 保証、マイクロファイナンス

• リレーションシップ・バンキング

182