半導体露光用 euv 光源開発の進展と最新動向...15)hakaru mizoguchi:”high ce...

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1 半導体露光用 EUV 光源開発の進展と最新動向 溝口 ギガフォトン株式会社:〒323-8558 栃木県小山市横倉新田 400 1.はじめに 半導体製造の微細加工技術の心臓部である縮小投 影露光装置のリソグラフィ工程では 180 nm 以降 KrF エキシマレーザが、 100 nm 以降では ArF エキシマレ ーザが量産装置として使用され、続く 65 nm 以下の 最先端量産ラインでは ArF 液浸リソグラフィ技術が 使用されている。さらに 32 nm の量産ではダブルパ ターンニング技術を実現する露光装置が導入を検討 され始めている。光源のエキシマレーザは放電励起 ガスレーザであり、紫外線波長領域で高出力を高効 率で得ることができ、半導体リソグラフィ光源を支 える基幹技術として活躍している。現在リソグラフ ィ用エキシマレーザ発振機の市場規模は、500 億円 を超えて 1000 億円市場を目指す勢いで着実に成長 を遂げている。 半導体の微細化の道筋を示す ITRS のロードマッ 2007 年版 1) Fig.1 に示す。左端の数字で微細化 のノードが示され、下に行くに従って数字が小さく 微細化が進んでいる。また右から左に時期が示され、 帯の中には候補技術が書かれている。上に書いてあ るもの程可能性が高いとされる。またデバイスの種 類によって量産開始時期が異なる。この図で最初太 かった帯が細くなり技術の淘汰が進む様子が示され ている。 Fig.1. ITRS Roadmap (2007 edition) 1) このロードマップによれば、45 nm 2007 年に液 浸露光が確定し、2008 年に Flash メモリの量産が開 始された。32 nm はダブルパターニングが選択され 量産技術として使われている。さらに微細化の進ん 22 nm は当初 EUV が有力候補と見られていたが、 光源をはじめとする要素技術開発の遅延から 2013 年の量産立ち上げはマルチパターニングが選択され つつある。16 nm ではマルチパターニングも限界に 達し EUV リソグラフィが本命視されている。本稿で は、世界の注目を浴びている日本発の技術であるリ ソグラフィ用 CO 2 レーザ励起(Laser Produced Plasma 以下 LPP)-EUV 光源の開発の現状・将来動向につい て報告する。 2.EUV 光源開発の経緯 2.1 EUVA による光源開発 Fig.2 Schematic of EUV exposure tool 波長 13.5 nm EUV 光は、反射光学系(反射率 68%程度)による縮小投影が可能であるという特徴 を生かしたリソグラフィであり、 NA=0.3 程度の反射 光学系を使って 20 nm 以下の解像力を実現でき、光 リソグラフィとしては最終波長ともいわれている (Fig.2)。ただし 13.5 nm 光は気体によっても強く吸収 されるため光路は高真空または希薄な高純度ガスの 封入された容器内でしか伝播しない。さらに反射率 68%しかないため、たとえば 11 枚のミラー系で高 NA の縮小投影を行うと元の光の 1.4%しか露光面に 届かない。こうした事情も相俟って実用的スループ ットを実現するには光源は 200 W500 W の出力が 必要とされている。 わが国では EUV リソグラフィ技術開発を目的とし て技術研究組合極端紫外線露光システム技術開発機 ( 以下 EUVA) が途中スキームを変節しながら、難 産の末 2002 年に発足した 2) 。ギガフォトンとコマツ EUVA 光源開発研究室の遠藤彰室長(2002 年当時) を中心に Sn ドロップレットをターゲットとし、CO 2 レーザをドライバとして発生させたプラズマを磁場

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1

半導体露光用 EUV光源開発の進展と最新動向

溝口 計

ギガフォトン株式会社:〒323-8558 栃木県小山市横倉新田 400

1.はじめに

半導体製造の微細加工技術の心臓部である縮小投

影露光装置のリソグラフィ工程では 180 nm以降 KrFエキシマレーザが、100 nm以降では ArFエキシマレーザが量産装置として使用され、続く 65 nm以下の最先端量産ラインでは ArF 液浸リソグラフィ技術が使用されている。さらに 32 nmの量産ではダブルパターンニング技術を実現する露光装置が導入を検討

され始めている。光源のエキシマレーザは放電励起

ガスレーザであり、紫外線波長領域で高出力を高効

率で得ることができ、半導体リソグラフィ光源を支

える基幹技術として活躍している。現在リソグラフ

ィ用エキシマレーザ発振機の市場規模は、500 億円を超えて 1000 億円市場を目指す勢いで着実に成長を遂げている。 半導体の微細化の道筋を示す ITRS のロードマップ 2007 年版 1)を Fig.1 に示す。左端の数字で微細化のノードが示され、下に行くに従って数字が小さく

微細化が進んでいる。また右から左に時期が示され、

帯の中には候補技術が書かれている。上に書いてあ

るもの程可能性が高いとされる。またデバイスの種

類によって量産開始時期が異なる。この図で最初太

かった帯が細くなり技術の淘汰が進む様子が示され

ている。

Fig.1. ITRS Roadmap (2007 edition) 1) このロードマップによれば、45 nm は 2007 年に液浸露光が確定し、2008 年に Flash メモリの量産が開始された。32 nm はダブルパターニングが選択され量産技術として使われている。さらに微細化の進ん

だ 22 nmは当初 EUVが有力候補と見られていたが、光源をはじめとする要素技術開発の遅延から 2013

年の量産立ち上げはマルチパターニングが選択され

つつある。16 nm ではマルチパターニングも限界に達し EUVリソグラフィが本命視されている。本稿では、世界の注目を浴びている日本発の技術であるリ

ソグラフィ用 CO2レーザ励起(Laser Produced Plasma 以下 LPP)-EUV 光源の開発の現状・将来動向について報告する。

2.EUV光源開発の経緯

2.1 EUVA による光源開発

Fig.2 Schematic of EUV exposure tool

波長 13.5 nm の EUV 光は、反射光学系(反射率68%程度)による縮小投影が可能であるという特徴を生かしたリソグラフィであり、NA=0.3程度の反射光学系を使って 20 nm以下の解像力を実現でき、光リソグラフィとしては最終波長ともいわれている

(Fig.2)。ただし 13.5 nm光は気体によっても強く吸収されるため光路は高真空または希薄な高純度ガスの

封入された容器内でしか伝播しない。さらに反射率

が 68%しかないため、たとえば 11枚のミラー系で高NA の縮小投影を行うと元の光の 1.4%しか露光面に届かない。こうした事情も相俟って実用的スループ

ットを実現するには光源は 200 W~500 Wの出力が必要とされている。 わが国では EUVリソグラフィ技術開発を目的として技術研究組合極端紫外線露光システム技術開発機

構(以下 EUVA)が途中スキームを変節しながら、難産の末 2002年に発足した 2)。ギガフォトンとコマツ

は EUVA光源開発研究室の遠藤彰室長(2002年当時)を中心に Snドロップレットをターゲットとし、CO2

レーザをドライバとして発生させたプラズマを磁場

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で捕捉する LPP-EUV 光源を独創し開発を進めてきた。Fig.3 にギガフォトンの LPP-EUV 光源のスキームを示す。

Fig.3. Schematic of Gigaphoton EUV source 2-2 EUV リソグラフィの動向 露光装置開発は ASML 社はαデモ機を欧州の

IMEC および米国 SEMATECH の Albany 研究所に2006年に納入され、数々の露光データが公表された。またニコン社は EUV-1 を 2007 年に Selete に納入し露光データを公表した。2009年からは ASML社はフルフィールドの EUVβ機 NXE-3100 を開発した。EXTREME社製の DPP光源を搭載した 1台と Cymer社製 LPP光源を搭載した 6台の計 7台を出荷した。当初 100W級の EUV光源を搭載し 100WPHを目指したが、2012 年時点で 7~10W の出力に低迷し EUVリソグラフィ量産性検証のボトルネックとなってい

る。現在はさらに 250W の EUV 光源を搭載し

200WPH 以上の生産性を実現すべく設計されたフルフィールドの EUVγ機 NXE-3300が開発中である。

3.EUV光源の要素技術開発

3-1 変換効率の向上 SnターゲットをCO2レーザで照射するスキームはギ

ガフォトンの独創技術で、九州大学岡田教授の測定結

果 3)をきっかけに 2006年から力を入れて開発を行ってきた。その甲斐があって、今や世界の主流となってい

る。2008年に YAGレーザと CO2レーザを時間差を置

いて照射するダブルパルス法を独創し、生成プラズマ

のパラメータを最適化した。Fig.4にプリ・プラズマ法によるプラズマ生成の方式を示した。

“ETS experiment clarified 3 key challenges are essential”– C E  (C onvers ion  E fficiency)  improvement– Debris  mitigation  =  S tability  and  s ize  of  droplets– C O2 laser  load  =  power  x  duty

- Stable and small droplet- high power CO2 laser- the best plasma creation

main-pulse

Pre-pulseCO2 laserpre-pulse laser

Droplet generator

Fig.4. pre-pulse plasma formation scheme

最初に小出力の波長1µm 帯のパルスレーザでドロ

ップレットを細かいミスト状に砕き、適切な条件で

CO2 レーザパルスで加熱すると完全に蒸発させること

ができる(Fig.5)。

P roper  pre-­‐pulse  condition

a) without main-pulse laser

pre-pulse irradiation TimeMain pulse laser/ EUV emission after EUV emission

b) with main-pulse laser

Back

illuminator

CCD

camera

EUV

sensor

Drive laser

Tin dropletLIF

camera

EUV/DebrisMeasurementport

Corrector mirror

Intermediate focus

EUV/DebrisMeasurementport

Back

illuminator

CCD

camera

EUV

sensor

Drive laser

Tin dropletLIF

camera

EUV/DebrisMeasurementport

Corrector mirror

Intermediate focus

EUV/DebrisMeasurementport

Back

illuminator

CCD

camera

EUV

sensor

Drive laser

Tin dropletLIF

camera

EUV/DebrisMeasurementport

Corrector mirror

Intermediate focus

EUV/DebrisMeasurementport

Back

illuminator

CCD

camera

EUV

sensor

Drive laser

Tin dropletLIF

camera

EUV/DebrisMeasurementport

Corrector mirror

Intermediate focus

EUV/DebrisMeasurementport

Perfectvaporization!

100micron

20 micron droplet

Fig.5. Image of double pulse EUV plasma

しかもイオン化の効率も同時に改善される。特に小

さなドロップレットほどプラズマ温度が高くなるため

効率は高くなる。この実験でドロップレット直径 20 µm で変換効率 3.3%を達成した 9) (Fig.6)。この結果はリーディングプロジェクトの大阪大学西原教授、砂

原准教授のグループの理論計算の結果4)と変換効率に

おいて良く一致している。

Fig.6 EUV conversion efficiency of double pulse delay さらに 2012 年にはプリパルスレーザーのパルス幅の最適化を行い画期的な約 50%の効率改善を実現した。すなわち、これまでパルス幅約 10 ns のプリパルスを約 10 psのパルスに変更して CO2レーザパルスで

加熱することで変換効率が 3.3%から 4.7%に向上した。これは世界最高記録で画期的なデータである(Fig.7)。15)

Fig.7. EUV conversion efficiency15)

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3

効率向上のメカニズムについては、パルス幅の違い

でスズ材料原子の分散がより均一になったため Sn イオンの生成効率が高まったためと考えられる。製品レ

ベルでこの効率が実現できれば、平均出力 21 kWパルス CO2レーザで 250 Wの EUV出力が、40 kWパルスCO2レーザで EUV500 Wが達成できることになる。またイオン化率の高いプラズマが生成することにより磁

場によるミチゲーションも容易になるため、工学的に

も非常に有用な成果である。 3-2 プラズマ生成用の CO2レーザシステム プラズマ生成用の CO2レーザシステムには、独自

の産業用の CW-CO2レーザヘッドを増幅器として用

いた MOPAシステムを採用している。発振段の高繰り返しパルス光(100 kHz, 15 ns)を、複数の CO2増幅

器により増幅することにより最大約 13 kWの出力を得た 5)(Fig.8)。現在は、オシレータレーザのマルチライン化をすることで ns パルスからくる複数本あるCO2 レーザの回転遷移間のエネルギー移乗ロスを補

って増幅効率を高めることと、アンプの多段化で 23 kW のレーザー出力を目指している。その際のキー

技術は多段アンプ間の寄生発振を如何に制御するか

が高出力化の技術的な鍵となっている。

Fig.8. Driver CO2 laser system 3-3ドロップレットターゲット生成技術 ターゲットは Sn を融点に加熱して、液体 Sn ドロップレットの生成を行っている。直径 30 μm、速度60 m/sの Snドロップレットが安定に生成されている(Fig.9)。さらに、現在は 20 µm級のドロップレットの安定生成にも成功している。

Fig.9. Sn droplet (Dia=30 µm)

3-4 磁場ミチゲーション EUV集光ミラーは、プラズマ近傍に設置され、EUV光を露光装置の照明光学系へ反射集光する。高速イ

オンによるミラー表面の多層膜のスパッタリング損

傷が発生するが、独自の磁場を用いたイオン制御で

その緩和を行っている。2009年には軸対称磁場の中心に固体の Sn ターゲットを置いて、LPP-Sn プラズマを発生させ磁場の配位との関係により、デポジシ

ョンされる量の違いを観測し磁場と直交する方向に

ミラーを配置することでデポジションの防止ができ

ることを検証した(Fig.10)。

Fig.10. Magnetic field mitigation experiment 次に微小の錫液滴にプリパルスレーザを照射する

系でもそのイオン化の実験を行った。光および炭酸

ガスレーザ光が照射されると錫は主に3つの状態間

を遷移する。すなわち「細かく砕かれた液滴(フラ

グメント)」・「錫中性原子」・「錫イオン(Sn+)」である。炭酸ガスレーザ光を吸収して発生した錫プラズ

マ中の錫イオン状態になった錫がEUV光を発し、

その後錫はチャンバの中に飛散し内壁に付着する。

付着した錫は EUV出力・プラズマ・液滴を観測する窓および集光ミラーに付着してその透過率を低下さ

せる。したがって、その付着量を極力低減させるこ

とが装置の長寿命化のポイントとなる。 Fig.11 に筆者らが開発を進めている錫デブリの緩和のスキームを示す。まず EUV光を増大させ、錫を効率良く捕捉するにはいかに多くの錫イオンを効率

よく生成するかにかかっている。すなわち効率の良

いイオン生成は出力、デブリ緩和両方に良い効果を

もたらす重要なポイントである。現実にはプリパル

スレーザ光の照射条件を調整し錫の形状を整え炭酸

ガスレーザ光の吸収を増やしている。まず、錫液滴

にプリパルスレーザ光が照射されると液滴が破壊・

分散し時間と共に拡散していく。そこに炭酸ガスレ

ーザ光が照射されEUV発光する。その後磁場によ

りガイドされた錫イオンが磁力線に沿って排出され

る。

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4

Droplet

(liquid)

Crashed-mist

(liquid)Plasma

(gas)

mist size <1.2µm,

100% vaporization to atom

droplet ~20µm,

Mist size<1.2µm

CO2 laser irradiation

100% ionization

Guided ionAtom

• scattered by ion

• Charge exchange

Ions with low energy trapped by B field

Atoms tapped by charge exchange with ions

pre-pulse main-pulse

No Large Fragments

Atom 0 Ion 0

Droplet

(liquid)

Crashed-mist

(liquid)Plasma

(gas)

mist size <1.2µm,

100% vaporization to atom

droplet ~20µm,

Mist size<1.2µm

CO2 laser irradiation

100% ionization

Guided ionAtom

• scattered by ion

• Charge exchange

Ions with low energy trapped by B field

Atoms tapped by charge exchange with ions

pre-pulse main-pulse

No Large Fragments

Atom 0 Ion 0

Fig.11 Schematic of Magnetic mitigation Fig.5に、その過程を実際にシャドウグラフ法にて観測した結果を示す。錫を細かく分散する照射条件を

設定すると、その後の炭酸ガスレーザ光を効率よく

吸収して錫の微少液滴はすべて蒸発・消散する。Fig.5のように完全に蒸発した錫は中性の原子あるいはイ

オンになっていると考えられる。その状態を直接観

測するために、筆者らは LIF( Laser Induced Fluorescence:レーザ誘起蛍光法)を用いて錫原子の分散の状態をプリパルスレーザ光照射後と炭酸ガス

レーザ光照射後において観察した。Fig.12 にその結果を示す。上段はプリパルス光のみを照射してプリ

パルスの効果を確認した結果、下段はプリパルスレ

ーザ光と炭酸ガスレーザ光を照射してダブルパルス

の効果を確認した結果を示している。プリパルスの

照射条件は前述の最適化された条件である。プリパ

ルスレーザ光のみを照射した場合は図中で青く見え

る錫の中性の原子から発する蛍光が観測時点で約直

径 5 mmの大きさに分散している様子を示している。

Tl

CO2 laser

T1

pre-pulselaser

T0Time

LIF laserscale 5mm

X10 scale

w/o CO2laser

X10 scale

w/ CO2laser

no fragment

fragment remaining

20um DL

20um DL

Tl

CO2 laser

T1

pre-pulselaser

T0Time

LIF laserscale 5mm

X10 scaleX10 scale

w/o CO2laser

X10 scaleX10 scale

w/ CO2laser

no fragment

fragment remaining

20um DL

20um DL

almost no neutral atoms observed

neutral atoms remain

DETAIL DETAIL

DETAIL

x10scale

Tl

CO2 laser

T1

pre-pulselaser

T0Time

LIF laserscale 5mm

X10 scale

w/o CO2laser

X10 scale

w/ CO2laser

no fragment

fragment remaining

20um DL

20um DL

Tl

CO2 laser

T1

pre-pulselaser

T0Time

LIF laserscale 5mm

X10 scaleX10 scale

w/o CO2laser

X10 scaleX10 scale

w/ CO2laser

no fragment

fragment remaining

20um DL

20um DL

almost no neutral atoms observed

neutral atoms remain

DETAIL DETAIL

DETAIL

x10scale

Fig.12 LIF法による中性スズの空間分布計測 プリパルスレーザ光照射後に炭酸ガスレーザ光を

分散の大きさがほぼ炭酸ガスレーザの集光径になる

遅延時間で照射すると錫原子がイオン化して錫中性

原子から発生する LIF信号は観測されなくなる。 観測された信号の比率から 93%の錫がイオン化し約 7%が錫原子として残っていることが確認された。所定エネルギ以上の炭酸ガスレーザ光を照射すると

錫は十分イオン化され、その比率は強度によらずほ

ぼ一定であることがわかる。Fig.13 にここまでの結

果をまとめて示す 10)11)。イオン化した錫は磁場によ

って捕捉量を計測した結果磁場の強度を上げるとと

もに磁場が収束する方向にイオンが集まってきて、

集光ミラーの方向に飛散する錫イオンの量が減少し

約 98%イオンが回収されている 14)。

onlyPre-pulse Irradiation

pre-pulse laser + CO2 laser Irradiation

onlyPre-pulse Irradiation

pre-pulse laser + CO2 laser Irradiation

Fig.13 プリ・メインパルス照射時の粒子種の違い 4. EUV光源システムの開発

2002~2007年度までの 5年間で LPP方式と放電生成プラズマ(DPP:Discharge Produced Plasma)方式による EUV光源開発をギガフォトン、ウシオ電機、コマツで進め 50 W の実験実証を行い両方式が生き残

った 7) 。さらに 2008年度からは、マッチングファンドで EUVAを継続し第 1世代光源装置の開発が行われ 100 W 以上の出力を達成し 2010 年度に終了した。民間では第 2世代以降の量産用 EUV光源システムの開発が進んでいる。 4-1 第 1世代機開発 現在はこれらの要素技術を集積したシステム化装

置 ETS: Engineering Test Standの試作を行い高速 Snドロップレットと 100 kHzの高出力 CO2レーザを用

いた EUV発生の実験を進めきた。装置には超伝導マグネットを用いて 1.0 T程度の強磁場の実現し、LPP方式での Sn デブリに含まれる高速イオンの抑制の効果も実証している 6) (Fig.14)。

Fig.14. LPP-EUV source system “ETS” 第 1世代である ETS装置の改良を進めた結果、最

新データで中間集光点(Intermediate Focus 以下 I/F) 104 W(Duty 20%, 21 W ave.)の EUV光の数時間の連続運転に世界で初めて成功した 8) 。さらにドロップ

レット径を半分の 30 µmにて出力 42Wレベルで 7時

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5

間に渡る長時間運転にも成功した。第 1 世代機の最近のデータ一覧を Table 3に示す。

0

5

10

15

20

25

30

0 1 2 3 4 5 6 7 8

Time [H]

EU

V p

ower

@ IF

cle

an [W

]

Long time system operation demonstrated Operation duration: >7 hours Droplet 30 µm diameter Full repetition rate: 100 kHz In burst clean power: 20W (average)

25W (max)

Conditions;Control: Droplet position control ON, EUV energy control OFFCO2 laser = 3.6kW @ 100kHzDuty=5% (50msecON、950msecOFF)

25W= CE 2.6%20W= CE 2.1%

Fig.15. Long term operation data12)

Table 3. EUV operation data of ETS

S P IE  2010

(F eb.2010)

E UVS ympos ium

(Oc t.2010)

L ates t  Data

(F eb,2011)E UV  power  (  @  I/F ) 69  W 104  W 42  WEUV  power  (  c lean  @  I/F )

33  W 50  W 20  W

Duty  c yc le 20  % 20  % 5%Max.  non  s top  op.  time >1  hr <1  hr >7  hrAverage  C E 2.3  % 2.5  % 2.1%Dos e  s tability  :s imulation (+/-­‐ 0.15% ) -­‐Droplet  diameter 60µm 60µm 30µmCO2 las er  power 5.6  kW 7.9  kW 3.6kW

S P IE  2010

(F eb.2010)

E UVS ympos ium

(Oc t.2010)

L ates t  Data

(F eb,2011)E UV  power  (  @  I/F ) 69  W 104  W 42  WEUV  power  (  c lean  @  I/F )

33  W 50  W 20  W

Duty  c yc le 20  % 20  % 5%Max.  non  s top  op.  time >1  hr <1  hr >7  hrAverage  C E 2.3  % 2.5  % 2.1%Dos e  s tability  :s imulation (+/-­‐ 0.15% ) -­‐Droplet  diameter 60µm 60µm 30µmCO2 las er  power 5.6  kW 7.9  kW 3.6kW

4-2 第 2世代機開発 10)11)

“ETS”装置の実験データを元に現在は第 2 世代機(Gigaphoton GL200E)の開発を進めている。

Fig.16. Overview 2nd generation EUV source GL200E Fig.17 に概観を示す。サブファブと呼ばれる階下スペースにプリパルスレーザ光、メインプラズマ加

熱用の CO2レーザが配置され、クリーンルーム階に

は EUV 発生用のチャンバが配置され露光装置と光学的に結合されている。この内部でターゲットであ

る Sn ドロップレットにレーザ光を照射し Sn プラズマを生成し Snイオンより EUV光を発生させている。

13.5nm光は減衰を防ぐため伝送路が真空でありかつ反射によるロスが多大であるため、効率的に伝送

するために光源を露光装置の直近に配置して光路

長・反射回数を最小化することが不可欠である。そ

のため光発生モジュールであるチャンバと磁石はス

キャナと同じフロアに配置され、比較的伝送が容易

な CO2レーザはサイズが大きいこともあり真下のサ

ブファブエリアに配置するのが標準的である。CO2

レーザの光は安全性の確保と光学素子の汚染防止の

ため窒素パージされた導光管を用いてチャンバに導

入される。2011年に第 2世代装置の開発が終わり、各コンポーネント毎の性能検証を実施して総合試験

を行った(Fig.17)。

Main-AMP2

Main-AMP1

BDU3

BDU4

Pre-AMP

OSC

Pre-AMP

CO2 laser OSC+Pre-AMP

CO2 laser Main-AMP

EUV-chamber

Fig.17. Assemble of 2nd generation system

その結果、CO2レーザ入力 5 kWで、90 kHz, 7 W

の発光が確認された 14)ものの、ドライブレーザであ

るパルス CO2レーザの寄生発振およびドロップレッ

ト生成装置の不安定性により長時間の安定した運転

が課題であることが明確になった。そこで 2012 年は、CO2 レーザの安定した高出力運転とドロップレ

ットジェネレータの設計の大幅な見直しを行って要

素技術の改良をすすめている。

Fig.18 EUV発光の写真 14) 4-3 今後の性能向上と商品化開発 ギガフォトンでは 2012 年までに第2世代プロト

タイプ装置を完成させ、2013年以降には 250 W(@ I/F)の EUV 光源の実現とその量産化を目指している。次の第3世代機では更なる高出力化 500WEUV出力が要求されており、2011年より NEDOの支援の元で三菱電機との共同プロジェクトで 40 kW CO2レ

ーザ増幅器の開発もすでにスタートしている 15)。

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6

5. おわりに

ギガフォトンの将来の EUVの開発の経緯と現状について詳しく述べてきた。日本の EUVL コンソーシアム EUVA は 2010 年度をもって終了した。すでに民間主体の商用ベースでの国際競争の時代となって

いる。本文でも述べてきたように、EUV光源の出力の低迷がボトルネックになっている中で、筆者は国

産のオリジナル技術の粋を集めた日本発の LPP方式EUV光源技術が、このボトルネックを乗り越える切り札と考えている。すでに世界では 13.6nm EUV 開発の先の 6.7nm EUVの可能性を探る基礎研究も始まっている 12)13)。この分野でも後塵を拝することなく

日本の研究者が世界をリードすることは、今後のこ

の分野でのイニシアチブを取る意味でも重要であ

る。 ビジネスではリソグラフィ工程での主力は依然エ

キシマレーザが支えており、ArF 液浸、多重露光の技術開発にも力を注いでいる 16)。DUVレーザにおいては弊社の高い稼動実績(Availability >99.6%)がエンドユーザから高く評価され各国の主要ユーザに受

け入れられ、2011 年には累計 1000 台以上の出荷実績を記録した。2008年のリーマンショック、2011年の欧州経済危機、それに続く円高と世界の経済が不

透明な中ではあるが、DUVでは 40%のマーケットシェアを確保している(Fig.30)。今後 KrF および ArFエキシマレーザの一層の改良も並行させて進めてゆ

く。ギガフォトンは世界のリソグラフィ技術の更な

る発展に貢献したいと考えている。

Fig.19. Worldwide sales of excimer laser for lithography (Data: Gigaphoton Inc. 16))

6. 謝辞

EUV光源開発の一部は 2003年から 2010年にわたり「極端紫外線(EUV)露光システムの基盤技術研究開発 (NEDO) 」の一部として EUVA にてなされてきた。また 2009年以降の開発の一部は「省エネルギー革新技術開発事業(NEDO)」から補助金を受けて実施されている。ここに記し深く感謝の意を表する。

7. 参考文献

1) ITRS ホームページ http://www.itrs.net/.net/ 2) 小特集「リソグラフィ用 EUV 光源研究の現状と将来展望」核融合研究 vol.79,No.3 (2003) 219-262

3) H. Tanaka et. al.: Appl. Phys. Lett. Vol.87 (2005) 041503 4) Katsunobu Nishihara et. al.:Phys. Plasmas 15 (2008) 056708 5) Akira Endo,et al.: Proc. SPIE 6703, 670309 (2007) 6) Akira Endo et. al., : Proc. SPIE 7271, 727108 (2009) 7) 特集「実用間近のレーザー方式極端紫外線リソグラフィ光源開発」レーザー研究 vol36, No.11 (2008) 672-746

8) H.Mizoguchi: “1st generation Laser-Produced Plasma 100W source system for HVM EUV lithography” SO-03, Symposium on EUV lithography (2010.10.18-20, Kobe, Japan)

9) Tatsuya Yanagida, Hitoshi Nagano, Takayuki Yabu, Shinji Nagai, Georg Soumagne, Tsukasa Hori, Kouji Kakizaki, Akira Sumitani, Junichi Fujimoto, Hakaru Mizoguchi, Akira Endo; ”Characterization and optimization of tin particle mitigation and EUV conversion efficiency in a laser-produced plasma EUV light source” Extreme Ultraviolet (EUV) Lithography II. (2011) [7969-100]

10) Hakaru Mizoguchi, Tamotsu Abe, Yukio Watanabe, Takanobu Ishihara, Takeshi Ohta, Tsukasa Hori, Akihiko Kurosu, Hiroshi Komori, Kouji Kakizaki, Akira Sumitani, Osamu Wakabayashi, Hiroaki Nakarai, Junichi Fujimoto, Akira Endo: “1st generation laser-produced plasma source system for HVM EUV lithography” Extreme Ultraviolet (EUV) Lithography II (2011) [7969-07]

11) Junichi Fujimoto, Takeshi Ohta, Krzysztof M. Nowak,

Takashi Suganuma, Hidenobu Kameda, Toshio Yokoduka, Koji Fujitaka, Masato Moriya, Akira Sumitani, Hakaru Mizoguchi, Akira Endo: ”Development of the reliable 20-kW class pulsed carbon dioxide laser system for LPP EUV light source”, Extreme Ultraviolet (EUV) Lithography II (2011) [7969-99]

12) T.Otsuka, D.Kilbane, J.White, T.Higashiguchi, N.Yugami, T.Yatagai,W.Jiang, A.Endo, P.Dunne, G.O’Sulivan: ”Rare-earth plasma extreme ultraviolet sources at 6.5nm”, Appl. Physics Letters 97(2010) 111503

13)V.Banine: ”Next generation of EUV lithography: challenges

and opportunities”, International workshop on EUV sources (Nov. 13-15, 2010 Dublin, Ireland)

14)Junichi Fujimoto; Tsukasa Hori; Tatsuya Yanagida; Takeshi

Ohta; Yasufumi Kawasuji; Yutaka Shiraishi; Tamotsu Abe; Takeshi Kodama; Hiroaki Nakarai; Taku Yamazaki; Hakaru Mizoguchi:” Development of laser-produced plasma-based EUV light source technology for HVM EUV lithography” Extreme Ultraviolet (EUV) Lithography III (2012) [8322]

15)Hakaru Mizoguchi:”High CE Technology for HVM EUV

Source”, EUV Symposium 2012 (2012.9.30-10.4) 16)ギガフォトン株式会社ホームページ

URL; http://www.gigaphoton.com/

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