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中央大学商学部久保知一研究室第 4 期生卒業論文 1 広告の誇張表現が消費者購買意図に与える影響 國枝陽輔 中央大学商学部 久保知一研究室 第 4 要約:製品やサービスの効果を強調する目的で、非現実的な演出を用いる広告は数多 く存在する。広告内の誇張表現が消費者の製品評価を高めることは、Cowley (2006) などの既存研究によって明らかにされているが、誇張表現が消費者に与 えるであろう負の影響は軽視されてきた。そこで、本研究では 2 つのスタディ を行い、この問題を検討した。スタディ 1 では、誇張表現が与える負の影響を 考慮し、消費者の広告視聴後から購買意図形成に至る一連のプロセスを明らか にする目的で共分散構造分析を行った。スタディ 2 では Porter (1976) の商品 2 分類と買物リスクの概念を用いて、誇張広告の与える影響が商品の種類や広告 表現によって差があることを明らかにするために分散分析を行った。2 つの分 析の結果、広告への不信感が主観的規範と確信に負の影響を与えること、そし て、誇張広告の購買意図に与える影響が非最寄品の場合に低下することを明ら かにした。 キーワード:誇張広告、Howard モデル、行動意図モデル、商品分類、買物リスク 1. イントロダクション 「現実には有りえない」、そのような内容の広告を目にすることがしばしばある。世 間で製品の安全性や信頼性が問題視される中で、企業はなぜ明らかに事実でないと分か る演出を用いて、その効果を強調しようとするのだろうか。また、そのような広告を行 うことで、製品に対する悪影響が及ぶことはないのだろうか。 2007 年、海外で男性化粧品ブランドとして有名であった、ユニリーバの AXE が日本 に進出した。その際に行われた広告は、「男性が AXE のスプレーを使用すると、それを かぎつけた大勢の女性が一挙に押し寄せてくる」という内容であったが、これが話題を

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中央大学商学部久保知一研究室第 4 期生卒業論文

1

広告の誇張表現が消費者購買意図に与える影響

國枝陽輔

中央大学商学部 久保知一研究室 第 4 期

要約:製品やサービスの効果を強調する目的で、非現実的な演出を用いる広告は数多

く存在する。広告内の誇張表現が消費者の製品評価を高めることは、Cowley

(2006) などの既存研究によって明らかにされているが、誇張表現が消費者に与

えるであろう負の影響は軽視されてきた。そこで、本研究では 2 つのスタディ

を行い、この問題を検討した。スタディ 1 では、誇張表現が与える負の影響を

考慮し、消費者の広告視聴後から購買意図形成に至る一連のプロセスを明らか

にする目的で共分散構造分析を行った。スタディ 2 では Porter (1976) の商品 2

分類と買物リスクの概念を用いて、誇張広告の与える影響が商品の種類や広告

表現によって差があることを明らかにするために分散分析を行った。2 つの分

析の結果、広告への不信感が主観的規範と確信に負の影響を与えること、そし

て、誇張広告の購買意図に与える影響が非最寄品の場合に低下することを明ら

かにした。

キーワード:誇張広告、Howard モデル、行動意図モデル、商品分類、買物リスク

1. イントロダクション

「現実には有りえない」、そのような内容の広告を目にすることがしばしばある。世

間で製品の安全性や信頼性が問題視される中で、企業はなぜ明らかに事実でないと分か

る演出を用いて、その効果を強調しようとするのだろうか。また、そのような広告を行

うことで、製品に対する悪影響が及ぶことはないのだろうか。

2007 年、海外で男性化粧品ブランドとして有名であった、ユニリーバの AXE が日本

に進出した。その際に行われた広告は、「男性が AXE のスプレーを使用すると、それを

かぎつけた大勢の女性が一挙に押し寄せてくる」という内容であったが、これが話題を

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呼び大ヒットを記録した1。もちろん、実際のスプレーにそのような効果はないが、商

品の魅力的な香りを伝えるうえで、その広告は非常に重要な役割を果たした。

AXE の例に限らず、商品やサービスの効果を強調するために、広告内で非現実的な

演出が用いられることは多い (表 1)。多くの企業は、その誇張表現によって、消費者に

商品が高く評価されることを期待するのであろう2。

表 1 非現実的な演出を利用した広告の具体例

企業名 / 製品 / 放送国 広告内容

Budwiser ビール カナダ

ビールを手に入れるために、壁を壊して隣家の冷蔵庫に侵入す

るという内容。それほどのことを行ってでも手に入れたい、ビ

ールのおいしさを表現した。 Hewlett-Packard

カラープリンター シンガポール

人間が火星の映像だと思い込んでいたのは、火星人がプリンタ

ーで複写した映像だったという内容。カラープリントの美しさ

を表現した。 Sealy

ベッドマットレス メキシコ

元気いっぱいで遊んでいた子供が、マットレスに入った途端に

一瞬で寝てしまうという内容。マットレスの快適さを表現し

た。 Mandom 洗顔料 日本

お笑い芸人 (岩尾望) が洗顔料を使用すると、男性アイドル

(木村拓哉) の顔に大変身するという内容。洗顔料の劇的な効果

を表現した。 Panasonic

デジタルカメラ 韓国

タンクトップ姿でアイスバーに入った男性が震えながら写真

を撮るが、ぶれることなく撮影できているという内容。カメラ

の高性能な手振れ修正機能を表現した。 Visa

クレジットカード アメリカ

非常に効率よく買い物がすすむ店内で、1 人の男性がカード払

いではなく現金払いをして大惨事になるという内容。カード払

いの普及率とその効率の良さを表現した。 Lotte

チューインガム 日本

救急隊が出動するほど口臭のきつい男性が、ガムを食べだけで

すっきりとした口臭に変化するという内容。ガムの防臭効果を

表現した。 Nissan 車

ポルトガル

男性が車に乗った直後に、仕掛けられていた爆弾が爆発してし

まうが、その後、何事もなかったように走り出すという内容。

頑丈な車体を表現した。 Teva

鼻スプレー イスラエル

購入した鼻スプレーを路上で使用し、深呼吸すると、路上を歩

く女性の傘を吸い込んでしまうという内容。鼻の通りが非常に

良くなることを表現した。

広告の誇張表現が消費者の製品評価や購買意図に影響することは、既存研究でも明ら

かにされている (e.g. Wyckham, 1987; Cowley, 2006)。また、広告内での非現実的な演

1 発売から約 6 か月で累計発売本数 500 万本を達成した。なお、内容はユニリーバジャパン株式

会社のウェブサイトに掲載されている (http://www.unilever.co.jp/)。 2 しかし、非現実的内容を伴う広告は消費者に誤認を与える危険性も考えられる。そのため、「過

剰な演出を含む」といった注意書きを行うなど、消費者への配慮を欠いてはならないだろう。な

お、広告規制に関する詳しい内容は、長尾 (1991), 第 3 章や岡田・梁瀬 (2006), 第 3 章を参照の

こと。

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広告の誇張表現が消費者購買意図に与える影響

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出は、その独特な表現方法から、ユニークな広告としても効果が期待できそうである。

広告に対して消費者が好意的な感情を抱けば、その製品に対する態度を高めることがで

き、最終的な購買を後押しする結果につながるだろう。

しかし、広告内の誇張表現がもたらすものは上記のようなメリットばかりではない。

例えば、「この広告は信用できないから購買を控えておこう」といったように、広告と

しての信憑性の低さから、消費者が購買を躊躇することも考えられる。しかし、既存研

究では、広告内の誇張表現が消費者の購買意思決定に与える負の影響について、十分に

言及がされていない。広告の効果や影響を十分に理解するためには、その演出がもたら

すメリットとデメリットを考慮し、消費者の広告視聴から購買意図を形成するまでの一

連のプロセスを明らかにする必要があるだろう。そのため、本論のスタディ 1 では、「製

品やサービスの効果を強調するために、非現実的な演出を用いる広告」を誇張広告と定

義し、Howard (1989) が提唱した消費者意思決定モデルを中心的に用いて、誇張広告視

聴後の消費者が、購買意図形成に至るまでの心理プロセスを明らかにする。そして、続

くスタディ 2 では、Porter (1976) の最寄品-非最寄品の商品分類を用いて、商品の種類

によって、誇張広告が消費者に与える影響に差があることを明らかにする。国内での誇

張広告に関する研究が乏しいことを考えると、2 つの実証分析を行うことには、非常に

大きな意味があると言えるだろう。

本論は以下のように構成される。まず、第 2 節では誇張広告に関連する先行研究のレ

ビューを行う。そして、続く第 3 節ではスタディ 1 を行う。具体的には、スタディ 1 に

関連する先行研究のレビュー、仮説の提唱、調査設計の紹介、分析および分析結果の考

察を行う。つづく第 4 節では、前節と同様の手順でスタディ 2 を行う。そして、最後の

第 5 節では、2 つの実証分析から得られる知見と課題をまとめ、学術的・実務的な視点

から本研究の意義を見出す。

2. 誇張広告に関連する先行研究のレビュー

○誇張広告の定義について

本論が研究の対象とする広告内の誇張表現は、 誇大広告 (Advertising puffery、Implied

superiority claims) や誤認広告 (Deceptive product claim、misleading claim) とも関連が深

い。そのため、本研究が対象とする誇張広告と同様に、広告内の非現実的な内容を対象

とした研究は数多く存在する (e.g. Olson & Dover, 1978; Holbrook, 1978; Rotfeld &

Rotzoll, 1980; Shimp & Preston, 1981; Wyckham, 1987; Kamins & Marks, 1987; Gilbert , Krull

& Malone, 1990; Cowley, 2006)。しかし、関連があるとはいえ、当然ながら研究の対象と

なる広告は少しずつ異なっている。例えば、Olson & Dover (1978) は、消費者が明らか

に間違った解釈をしてしまう広告を研究対象としているのに対し、Wyckhan (1987) は

「A ブランドより優れた広告は存在しない(no brand is better than brand A)」といったよう

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に、直接的ではないが、暗に他ブランドに対して優位であることを含意した広告を研究

対象としている。また、Cowley (2006) のように、極端に非現実的な (fanciful) 内容や

曖昧な (vague) 内容を伴う広告をまとめて研究対象とする場合もある。そして、定義の

方法についても研究により異なっており、先に述べた Wyckhan (1987) のように、対象

とする広告を独自に定義することもあれば、法的規制を検討するために Rotfeld &

Preston (1977) のように連邦取引委員会 (Federal Trade commission: FTC) の定義をその

まま用いることもある。

上記したとおり、既存研究が対象とする広告やその定義は多様であり、本研究を行う

にあたっては、誇大広告や誤認広告いった違法な広告と区別する意味でも、対象となる

広告を独自に定義する必要がある。そのため、本研究では「製品やサービスの効果を強

調するために、非現実的な演出を用いる広告」を誇張広告と定義し、議論を進めていく。

○誇張広告の効果について

既存研究は、広告内で製品の効果が誇張されると、消費者はその製品に対する評価を

高めてしまうという見解で一致している (e.g. Olson & Dover, 1978; Wyckham, 1987

Cowley, 2006)。また、調査対象については、Olson & Dover (1978) や Kamins & Marks

(1987) では、非現実的な広告内容を信じている消費者を対象としていた。しかし、

Gilbert , Tafarodi & Malone (1993) の知見3をもとに行った Cowley (2006) の研究では、消

費者は広告内容が信憑性の低いもの (less credible) であると認識していても、製品に対

する評価を高めてしまうことを明らかにした。具体的に、Cowley (2006) は、店舗内サ

ービス4について、Preston (1996, 1998) を参考にした誇張度の異なる広告を用いて実験5

を行い、結果として広告の誇張度が増加するにつれて信頼性が低下し、製品評価が高ま

ることを明らかにした。

本研究で定義した誇張広告も、消費者が広告内容を事実でないと理解していることを

前提としているため、このCowley (2006) の研究内容を参考に研究を進めていく。特に、

スタディ 2 では現実的広告と非現実的広告という異なる誇張度の広告を用いて、Cowley

(2006) が対象としていなかった有形財について実証分析を行う。

3. スタディ 1

誇張広告に関連する既存研究 (Cowley, 2006) によって、広告内での誇張表現が、消

費者の製品に対する評価を高める一方で、広告に対する信頼性を下げることが明らかに

3 Gilbert, et al. (1993) は、人間は誤った情報を信じないようにしても、その情報を理解する段階

で、無意識的にその情報を取り込んでしまうことを明らかにした。 4 居酒屋 (Harbor Bistro、Alternative Bar) やクルージング (City Cruising Line) のサービスが対象

である。 5 広告は、現実的 (Fact)、やや誇張 (Low Puffery)、かなり誇張 (High Puffery) という 3 段階に分

かれており、被験者がパソコンを操作しながら広告を視聴していく形式がとられている。

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広告の誇張表現が消費者購買意図に与える影響

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された。誇張広告のように非現実的な内容を伴う広告については、消費者に誤認を与え

る可能性を危惧する声も多いが、広告としての有効性や危険性を議論するうえでは、消

費者の広告視聴から購買意図を形成するまでの一連のプロセスを明らかにする必要が

あるだろう。

消費者が外部の情報を受けてから意思決定に至るまでの一連のプロセスは、消費者行

動研究の分野では、包括的意思決定モデル6によって表現されている。そして、数多く

の包括的意思決定モデルの中でも、本研究では、製品ライフサイクルの議論に合わせて

消費者の意思決定方法を段階分けした、Howard (1989) の消費者意思決定モデルを中心

に取り扱う。なぜなら、説得的広告7の一種である誇張広告は、市場の成長期から成熟

期前半にかけて用いられることが多く、モデル構築を行う際に、製品ライフサイクルの

議論を加味する必要があるからである。

スタディ 1 では、上記した Howard (1989) のモデルを中心に、誇張広告に関する独自

のモデルを構築し、共分散構造分析を用いて、消費者が購買意図形成に至るまでの一連

のプロセスを明らかにしていく。

3-1. 先行研究のレビュー

本節では、まず、スタディ 1 でモデルの中心となる、Howard (1989) の消費者意思決

定モデルについてレビューを行う。そして、その後に、援用モデルとなる Fishbein &

Ajzen (1975) の行動意図モデルについて先行研究のレビューを行う。

○Howard の消費者意思決定モデル

消費者行動研究は 1950 年代から盛んに行われるようになり、1960 年代に入ると、消

費者の意思決定プロセスを包括的に捉えるために、Howard & Sheth モデル8や EKB モデ

ル9など、数多くの「刺激―反応型」モデル10が作られた。しかし、刺激―反応型モデル

は、その複雑さゆえに概念モデルの域をでることはなく、マーケティング戦略にそのま

ま応用できないという難点を抱えていた (清水, 2006)。

そういった状況の中、Howard (1989) は、1970 年代の情報処理研究での成果を付加し

6 企業から与えられる刺激、その刺激に対する消費者の認知的対応、そして、それを通じて導か

れる消費者の反応、という一連の流れで消費者の行動を体系立てたモデル。詳しくは、清水 (1999) を参照のこと。 7 説得的広告とは、消費者の選好を変化させようとする広告である (Cabral, 2000, p.224)。なお、

これに対して、製品の存在や特性 (重さや大きさなど) を伝える広告を情報的広告と呼ぶ。 8 Howard & Sheth (1969) を参照のこと。 9 Engel, Kollat & Blackwell (1968) を参照のこと。 10 従来の行動主義に基づくモデルでは、人間行動が刺激 S とその反応 R で説明されていたのに

対し、刺激反応モデルでは、S と R の間に、それまでブラックボックスとされていた生体 O の

条件を加え、人間行動を明らかにしようとした (新行動主義)。詳細については、清水 (1999), 第4 章を参照のこと。

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ながらも、消費者の情報取得から購買に至る一連のプロセスを、6 つの変数を用いてシ

ンプルにモデル化した11。

図 1 Howard の消費者意思決定モデル

モデル内の各変数に関する説明は以下のとおりである12。情報 (Information) とは、刺

激によって引き起こされる知覚である13。ブランド認識 (Brand Recognition) とは、当該

ブランドをカテゴリー分けするのに際して、その基準を十分に理解しているかという認

識の程度である。確信 (Confidence) とは、当該ブランドに対して下す、自身の判断に

対する信頼の程度である。態度 (Attitude) とは、当該ブランドへの、特定のニーズを充

足すると想定する、期待の程度である。購買意図 (Intention) とは、特定の期間内に、

特定のブランドを、特定の数量購入しようとする、消費者の精神状態である。購買

(Purchase) とは、特定の期間内における、特定単位の、当該ブランドの実際の購買、ま

たは売買契約である。

このモデルでは、Howard & Sheth モデルの考え方を踏襲し、情報取得から購買に至る

までの消費者の問題解決方法が、時間の経過に合わせて 3 段階に変化することを想定し

ている。そして、各段階における消費者の問題解決方法と、時間の経過とともに変化す

る企業のマーケティング戦略を考慮し、モデル全体を製品ライフサイクルの理論に適応

させている (表 2)。

11 Howard (1977) でもこのモデルに少し触れてはいるが、各変数の詳細などが記述されたのは

Howard (1989) である。 12 Howard (1989), p. 27-36 を参照のこと。 13 Howard (1989) は、「知覚」の基本的な測定方法は「記憶」であると述べている。また、後述

するが、今回は広告視聴後で情報を知覚した後の消費者心理プロセスをモデル化するため、モデ

ル構築の際には「情報」を含めない。

ブランド 認識

情報

確信

態度

購買意図 購買

出典:Howard (1989), p.29 より筆者作成

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広告の誇張表現が消費者購買意図に与える影響

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まず、市場に革新的な新製品が投入される導入期では、消費者は、製品に対する知識

や評価基準を有していないため、情報探索に時間をかけて慎重な意思決定を行う (包括

的問題解決行動)。その後、市場の成長につれて、新たなブランドが多数参入してくる

成長期になると、消費者は、それまでの情報から得た自身の評価基準と新製品に関する

情報を統合することで、同じ製品群にある数多くのブランドを比較・検討して、最良の

意思決定を行おうとする (限定的問題解決行動)。そして、新ブランドの市場への参入

がほとんど無くなり、消費者が各ブランドに対しても十分な知識を持っている成熟期で

は、価格や入手可能性といった最小限の情報をもとにして意思決定を行うようになる

(日常反応的問題解決行動)。

表 2 各段階の意思決定の特徴 導入期 成長期 成熟期 意志決定の方法 包括的問題解決 限定的問題解決 日常反応的問題解決 利用情報量 多い 中間 少ない 意志決定のスピード 遅い 中間 早い

今回の研究対象となる誇張広告は、企業間での顧客の奪い合いが激化する成長期後半

から成熟期前半に用いられることが多い。そのため、消費者の意思決定方法としては、

限定的問題解決行動を想定しモデルを構築する14。

○行動意図モデル

特定の行動を起こそうとする個人の行動意図について、Fishbein & Ajzen (1975) は、

その決定要因に、自身の態度だけでなく、他者からの影響を取り入れたモデルを提唱し

た。このモデルは、製品を利用することの望ましさを示す「態度」と、自分にとって重

要な他者からの期待を示す「主観的規範」が、製品を利用する意志を示す「行動意図」

を高め、それが「行動」につながることを表現している。

図 2 行動意図モデル

14 限定的問題解決行動のモデルでは、消費者の情報探索行動と購買行動が統合された形がモデル

化される。しかし、今回は情報取得後の探索行動はモデル化の対象としないため、図 1 と同じ形

のモデルが採用される。

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変数の一つである主観的規範は、消費者が自身の判断や態度を形成する際に拠り所と

する集団 (準拠集団) や個人 (準拠個人) の期待に対する信念と、それに対する従順度

の積和として表現される。本研究が対象とする誇張広告においても、「友人達は、この

広告の商品を自分が使うことに期待するのではないか」、「友人達の前でこの広告の商品

を使いたくない」といったように、広告視聴後の消費者が、広告および製品に対する準

拠集団・個人の評価を考慮して、購買意図を形成することは十分に考えられる。そのた

め、今回の研究にこのモデルを援用する。

3-2. 仮説の提唱

本節では、前節で行ったレビューをもとに、誇張広告が消費者購買意図に与える影響

について因果モデルを導出する。具体的には、まずモデル全体の中心となる Howard

(1989) の消費者意思決定モデルと、Fishbein & Ajzen (1975) の行動意図モデルの 2 つの

モデルを統合し、因果仮説を導出する。その後、誇張広告視聴後の購買行動に影響を与

えると考えられる「広告への不信感」、「知覚ユーモア」、「広告態度」、「訴求属性の理解

度」の概念を追加していく。

○本研究の基本モデルの提唱

まず、第 2 節でレビューした Howard の消費者意思決定モデルを本研究に合わせて変

更する。今回の研究では、消費者の広告視聴から購買意図形成に至るまでの心理プロセ

スを明らかにすることが目的であり、それ以前の、消費者が情報を知覚するかどうかと

いった点は研究の対象としていない。全ての消費者が情報を知覚しているという前提の

下で議論を進めるために、モデル内の変数である「情報」は採用しない。また同様に、

購買意図形成後の消費者が、実際に購買行動を起こす段階までは想定しないため、モデ

ル内の変数である「購買」も採用しない。したがって、Howard の消費者意思決定モデ

ルから導出される仮説は以下の 4 つである。

H1:ブランド認識は、確信に正の影響を与える。

H2:ブランド認識は、態度に正の影響を与える。

主観的規範

態度

行動意図 行動

出典:Fishbein & Ajzen (1975), p.334.

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広告の誇張表現が消費者購買意図に与える影響

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H3:確信は、購買意図に正の影響を与える。

H4:態度は、購買意図に正の影響を与える。

次に、Fishbein & Ajzen (1975) の行動意図モデルであるが、これは製品に対する「態

度」と、自分が依存する重要な個人および集団の評価を示す「主観的規範」が、「行動

意図」に影響を及ぼすというものであった。前節でも述べたとおり、広告視聴後の消費

者が、自身の準拠集団・個人の影響を考慮して購買意思決定を行うことは、十分に想定

される。そのため、本研究のモデルに「主観的規範」を追加する。よって、以下の仮説

が追加される。

H5:主観的規範は、購買意図に正の影響を与える。

以上、Howard (1989) の消費者意思決定モデルと Fishbein & Ajzen (1975) の行動意図

モデルの 2 つを統合した、本研究の基本モデルは図 3 のとおりである。

図 3 本研究の基本モデル (統合済み)

○広告への不信感

誇張広告では、製品・サービスの効果を強調するために、広告内で非現実的な演出が

用いられる。この非現実的な演出に対して、消費者が「この広告は信用できない」、「こ

の広告内容は胡散臭い」といったように、否定的な感情を抱いてしまうことは容易に想

像される。そのため、今回は「広告への不信感」をモデルに追加する。

近年の誇張広告に関する研究では、広告内の非現実的内容によって、広告に対する信

頼性が低くなったとしても、消費者の製品評価は低下しないということが明らかにされ

ている (Cowley 2006)。しかし、広告に対する信頼性が購買意図に影響を与えることは

多くの既存研究 (eg. Petty & Cacioppo, 1986; MacKenzie & Luts, 1989; MacInnis &

H5 (+)

H4 (+)H2 (+)

H3 (+)H1 (+)

主観的規範

購買意図

製品態度

確信 ブランド

認識

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Jaworski, 1989) によって支持されているため、その影響を無視することはできない。そ

こで、今回は、広告への不信感が購買意図に直接影響するのではなく、間接的に影響す

ることを想定してモデルを考える。具体的には、「あの広告は信用できないから自分の

判断は間違っているかもしれない」、「友人たちの前でこの広告の商品を使いたくない」

といったような状況である。そのため、以下の仮説を提唱する。

H6:広告への不信感は、確信に負の影響を与える。

H7:広告への不信感は、主観的規範に負の影響を与える。

○知覚ユーモアおよび広告態度

「鼻スプレーをした結果、鼻の通りがよくなりすぎて、路上を歩いている婦人の傘ま

で吸い込んでしまう」といった広告のように、誇張広告は、その非現実的演出によって、

一般的な広告より異質でユーモア (滑稽さ) に富んだ広告になりやすい。こういった

「ユーモア」が消費者の購買行動に影響することは、数多くの既存研究で主張されてお

り (eg. Gelb & Pickett, 1983; Duncan & Nelson, 1985; Madden, Dillon & Twible, 1986;

Madden & Weinberger, 1982; Zhang, 1996)、今回の研究でも消費者購買意図に影響を与え

る変数として、「ユーモア」をモデルに追加する。

既存研究では、ユーモア広告と非ユーモア広告を比較するなど、広告内の「ユーモア

の有無」を操作化することで、ユーモアが消費者に与える影響を分析・解明しようとし

てきた。しかし、Duncan, Nelson, & Frontczak (1984) が指摘するように、消費者が感じ

取るユーモアには個人差があり、ユーモアの有無について広告を操作化することは一般

的に困難である15。そのため、本研究では、変数として「知覚ユーモア」を採用する。

また、知覚ユーモアは、製品態度や購買意図に直接影響するというよりも、広告への

態度を介して、製品態度や購買意図に影響を及ぼすことが主張されている (Duncan &

Nelson, 1985; Madden, Dillon & Twible, 1986)。そのため、今回の研究でも、知覚ユーモア

は、広告態度を介して製品態度に間接的に影響を与えると考え、以下の仮説を提唱する。

H8:知覚ユーモアは、広告態度に正の影響を与える。

H9:広告態度は、製品態度に正の影響を与える。

○訴求属性の理解度

広告内でキャラクターを用いる、広告にストーリー性を持たせる、広告内で他ブラン

ドとの比較を行うなど、広告の演出には様々な方法が用いられる。また、その目的は、

製品・サービスの存在を示すことであったり、他ブランドとの差別化を図ることであっ

たりと、様々である。とりわけ、他ブランドとの差別化を図る目的で広告を用いる場合

15 詳しくは、李 (1996) を参照のこと。

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広告の誇張表現が消費者購買意図に与える影響

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には、広告内の演出によって自社の製品・サービスがより魅力的に見えるかということ

だけでなく、その広告によって、製品・サービスのどういった点が他ブランドよりも優

れているかを消費者に理解してもらうことが重要となる。というのも、認知的な消費者

行動分析の代表的モデルである、多属性態度モデル16にもとづけば、消費者は、製品・

サービスが含むと考える属性と、各属性に対する重要度の積和によって、製品に対する

全体的な評価を行うからである。製品・サービスが特定の属性をどれほど内含するかと

同様に、製品・サービスがどのような属性を有しているかを消費者に理解してもらうこ

とは、広告の演出にとって非常に重要な問題である。以上のような観点から、今回の研

究では、広告視聴後の購買行動に影響を与える変数として、「訴求属性の理解度」をモ

デルに追加する。

誇張広告で用いられる非現実的な演出は、対象となる製品・サービスの効果を強調す

る効果がある。そして、広告視聴後に、製品・サービスについてどの属性が訴求されて

いたかを消費者が理解していれば、同じ製品群の中で、当該ブランドがどのカテゴリー

に属する製品なのか、分類が行いやすくなるだろう。逆に、広告内で訴求されている属

性を消費者が理解できていなければ、その情報はカテゴリー分類の助けにならず、製品

の差別化および最終的な購買意図形成に影響を及ぼさない結果となってしまうだろう。

つまり、広告に対する訴求属性の理解度は、当該ブランドがどのカテゴリーに分類され

るかという「ブランド認識」と関係している。そのため、以下の仮説が提唱される。

H10:訴求属性の理解度は、ブランド認識に正の影響を与える。

ここまでに提唱された仮説は、図 4 に示す構造方程式モデルとして表現される。この

モデルを誇張広告受容モデルと命名し、実証分析を行うことで、仮説の経験的妥当性を

テストする。

図 4 誇張広告受容モデル

16 多属性態度モデルについての詳しい内容は、中西 (1984), 第 2 章を参照のこと。

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國枝 陽輔

12

3-3. 調査方法

提唱されたモデルの経験的妥当性をテストするために、質問票調査を行った。調査は、

被験者に紙媒体で作成した広告を見てもらった後に、指定した回答用紙に記入してもら

う形で行った。なお、作成した広告については、実際に用いられていた広告に、価格や

企業名が映らないよう編集を加え、状況説明を伴った 8 つの画像をコマ送りする形で見

ていく内容にした。

測定尺度の作成にあたり、「広告への不信感」は、MacKenzie & Lutz (1989) と Choi &

Nora (2002) の「信頼性」の尺度を参考にして作成した。「知覚ユーモア」は、Zhang (1996)

の尺度を本論に合わせて修正し採用した。「広告態度」は、MacKenzie, Lutz & Blech (1986)

と Mitchell & Olson (1981) を参考にして作成した。「主観的規範」は、Fishbein & Ajzen

(1975) と Ryan &Kerry (2003) を参考にして作成した。「製品態度」と「購買意図」は、

MacKenzie, Lutz & Blech (1986) と Mitchell & Olson (1981)、および Howard (1989) を参考

にして作成した。「ブランド認識」と「確信」は、Howard (1989) を参考にして作成した。

そして、「訴求属性の理解度」のみ本研究に合わせて独自に開発した。また、尺度に関

しては、リカート法にもとづく 5 点尺度を採用した。

本調査を行う前に 2 度のプリテスト (n=40) を実施し、質問文や広告内容について検

討を行った。同時に、調査対象となる財についても検討を行い、最終的にチューインガ

ムを採用した。その理由としては、実際に誇張広告が行われていることや、購入頻度が

高く購買が想定しやすいことが挙げられる。また、調査対象についても検討を重ねた。

Wells (1993) が主張する17ように、学生のみを対象とするサンプルには消費者の代表性

17 Wells (1993), p.491 を参照のこと。

H2 (+)

H1 (+)

H5 (+)

H7 (-)

H6 (-)

H4 (+)

H9 (+)H8 (+)

H3 (+) H10 (+) 訴求属性

の理解度

広告への

不信感

ブランド

認識

広告態度

確信

知覚

ユーモア 製品態度

主観的

規範

購買意図

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広告の誇張表現が消費者購買意図に与える影響

13

として疑問が残る。一般的な消費場面を想定すると、明確な理由なしにサンプルを学生

に限定することは望ましくないと考え、今回は学生のみならず、さらに購買力の高い社

会人にもアンケートの協力を依頼した。また、誇張広告のように、広告としてのインパ

クトや話題性の強い広告に関心を寄せるのは、流行に敏感な比較的若い年齢層であると

考え、調査を依頼する社会人は 20 代に限定した。

こうして、2011 年 12 月 27 日から 2012 年 1 月 16 日の期間に実施されたアンケート

調査では、324 (回収率 100%) の回答が得られた。また、内訳としては、学生によって

得られた回答が 191、社会人によって得られた回答が 133 であった。その内、欠損値や

著しく回答に隔たりがあるものを除くと、有効回答は 321、有効回答率 99.07% であっ

た。

3-4. 分析結果

図 4 に示されたモデルを、統計ソフト IBM SPSS Statistics 19 および Amos 19 を用い

て、共分散構造分析によって経験的にテストした。まず、信頼性分析を行ったところ、

クロンバックの係数は表 3 のような結果になった。すべての潜在変数において係数

は 0.7 以上となり、測定尺度は信頼に足るものであることが示された。

表 3 観測変数と信頼性係数 (n=321)

潜在変数 観測変数 (質問項目 : 1-5 の 5 点尺度で測定) 係数

訴求属性 の理解度

この広告が何を訴えているかを理解した この広告から商品の特徴を理解できる

.775

広告への 不信感

この広告を信用できない この広告内容は現実とかけ離れている この広告内容を信じることはできない

.882

知覚 ユーモア

この広告は独特である この広告にはユーモアがあると思う この広告はおもしろい

.901

広告態度 この広告が好きである この広告を見ることは楽しい この広告に対して好意的である

.906

主観的 規範

あなたがこの商品を買うことに周囲の友人は賛成すると思う あなたがこの商品を買うことを周囲の友人は望むと思う

.854

ブランド 認識

このガムの特徴が分かっている このガムの良い点 or 悪い点を理解している

.894

確信 このガムの評価について、自分の判断は間違っていないと思う このガムの評価について、自分の判断は妥当であると思う このガムの評価について、自分の判断に自信がある

.977

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國枝 陽輔

14

製品態度 このガムは良い商品であると思う このガムは満足できる商品だと思う

.917

購買意図 このガムを買いたいと思う 今度このガムを見つけたら買ってみたいと思う 近い将来このガムを買ってみたいと思う

.930

つづいて、妥当性のチェックのため、確認的因子分析を行った (n=321)。2 値は

1883.059 で、自由度は 218、有意確率は.000 であった。適合度指標 GFI および自由度調

整適合度指標 AGFI は、各々.719 および.640 で、推奨値18よりも低い適合度を示した。

また、平均二乗誤差平方根 RMSEA は.148 となり、このデータのモデルへの適合度は低

いものとなった。

次に、構造方程式を共分散構造分析によって推定した (n=321)。まず、このモデルの

全体的評価を行う。2値は 1649.628 で、自由度は 220、有意確率は.000 であった。適合

度指標 GFI および自由度調整適合度指標 AGFI は、各々.765 および.697 で、こちらも推

奨値より低い適合度を示した。平均二乗誤差平方根 RMSEA は.133 であり、確認的因子

分析同様に、このデータのモデルへの適合度は低いものとなった。以下では、そのこと

を考慮してモデルの解釈を続けていく。

続いて、モデルの部分的評価を行う。まず、本研究での基本モデルに準拠する仮説 1

から 5 に関して、その評価を行う。ブランド認識は、確信に正の影響を与えていた

(=.481, t=8.747, p<0.01)。これは仮説 1 を支持する結果である。次に、ブランド認識は、

製品態度に正の影響を与えていた (=.302, t=7.088, p<0.01)。これは仮説 2 を支持する結

果である。次に、確信は、購買意図に正の影響を与えていたものの、有意確率について

は 10%の水準をやや下回り、仮説 3 は棄却された (=.078, t=1.620, p>0.1)。次に、製品

態度は、購買意図に正の影響を与えていた (=.534, t=10.265, p<0.01)。これは仮説 4 を

支持する結果である。次に、主観的規範は、購買意図に正の影響を与えていた (=.319,

t=6.092, p<0.01)。これは仮説 5 を支持する結果である。

ここからは、基本モデルに新しい概念を組み込んだ、仮説 6 から 10 に関して評価を

行う。広告への不信感は、確信に負の影響を与えていた (=-.173, t=-3.143, p<0.05)。こ

れは仮説 6 を支持する結果である。次に、広告への不信感は、主観的規範に負の影響を

与えていた (=-.598, t=-9.033, p<0.01)。これは仮説 7 を支持する結果である。次に、知

覚ユーモアは、広告態度に正の影響を与えていた (=.722, t=11.599, p<0.01)。これは仮

説 8 を支持する結果である。次に、広告態度は、製品態度に正の影響を与えていた

(=.735, t=13.280, p<0.01)。これは仮説 9 を支持する結果である。次に、訴求属性の理解

18 豊田 (2008) によれば、GFI の値は 0.9 以上を目安とすることが多い。また、GFI と AGFI の間には GFI ≥ AGFI という関係があるため、その推奨値は 0.9 よりもやや低くなることが予想さ

れる。

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広告の誇張表現が消費者購買意図に与える影響

15

度は、ブランド認識に正の影響を与えていた (=.609, t=8.397, p<0.01)。これは仮説 10

を支持する結果である。以上の分析結果は、表 4 および図 5 に示される。

表 4 構造方程式モデルの推定結果

H1 ブランド認識 → 確信 (+) .481 (t=8.747) ** H2 ブランド認識 → 製品態度 (+) .302 (t=7.088) ** H3 確信 → 購買意図 (+) .078 (t=1.620) H4 製品態度 → 購買意図 (+) .534 (t=10.265)** H5 主観的規範 → 購買意図 (+) .319 (t=6.092)** H6 広告への不信感 → 確信 (-) -.173 (t=-3.143)* H7 広告への不信感 → 主観的規範 (-) -.598 (t=-9.033)** H8 知覚ユーモア → 広告態度 (+) .722 (t=11.599)** H9 広告態度 → 製品態度 (+) .735 (t=13.280)** H10 訴求属性の理解度 → ブランド認識 (+) .609 (t=8.397)**

* : 5%水準で有意、** : 1%水準で有意

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16

図 5 誇張広告受容モデル 分析結果

以上の分析から、まず、本研究の基本モデルに準拠する仮説 1 から 5 について考察を

行う。既存研究のとおりブランド認識は、確信と製品態度に正の影響を与えていた。ま

た、製品態度と主観的規範は購買意図に正の影響を与えており、こちらも既存研究と同

様の結果となった。しかし、既存研究とは異なり、確信は購買意図に影響を与えていな

かった。これは、調査対象となる財にチューインガムを採用したことが影響していると

考えられる。家電用品などの頻繁に買い換えを行わない財に比べ、価格が安く繰り返し

購買が行われるチューインガムでは、「自分の判断に自信がある」ということ自体が重

要視されないのかもしれない。今後の研究では、対象とする財を考慮に入れたモデルの

構築が求められる。

次に、本研究で新たに組み込んだ概念とその仮説 6 から 10 についての考察を行う。

知覚ユーモアは、広告態度を介して製品態度を高めていた。加えて、訴求属性の理解度

もブランド認識を介して製品態度に正の影響を与えていた。また、この 2 点の数値から、

広告に対して抱く感情の方が、製品の特徴を理解することよりも、製品態度に強い影響

を与えていることも明らかになった。そして、広告への不信感は主観的規範と確信に負

の影響を与えることが明らかになった。これは、携帯電話のように、常に人目に付く製

品や長い期間保有する製品の場合には、誇張広告がマイナスに作用する可能性があるこ

とを示している。この後のスタディ 2 では、そういった財の違いも考慮して、誇張広告

の影響力の違いを明らかにしていく。

.302**

.481**

.319**

-.598**

-.173*

.534**

.735**.722**

.078.609** 訴求属性

の理解度

広告への

不信感

ブランド

認識

広告態度

確信

知覚

ユーモア 製品態度

主観的

規範

購買意図

**:1%水準で有意、*:5%水準で有意。 実線:有意、破線:非有意。

2=1649.628 (d.f.=220), p<.001GFI=.765, AGFI=.697

RMSEA=.133

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広告の誇張表現が消費者購買意図に与える影響

17

4. スタディ 2

消費者の購買行動は非常に多様であるが、購買の対象となる商品の種類に注目して考

えると、多様な消費者の購買行動の中にも、ある程度の類似性がみられる。この類似性

に着目し、消費者の購買行動を各グループ間で単純化して予想することは、マーケティ

ング戦略を策定するうえで、有用な示唆を与える。このような理念の下、Copeland (1923)

の 3 分類を基礎として、現在に至るまで、商品分類に関する数多くの研究が行われてき

た (e.g. Aspinwall, 1958; Holten, 1958; Luck, 1959; Bucklin, 1963; Kaish, 1967; Porter, 1976)。

とりわけ、Porter (1976) が指摘するように、商品の種類が異なれば、小売業者や広告が

消費者の購買行動に与える影響力にも違いが出てくる。

そこで、スタディ 2 では「商品の種類の違いや広告表現の違いが、消費者の製品評価

や購買意図にどのような違いをもたらすか」という観点から、更なる実証分析を行う。

具体的に、商品の種類については、Porter (1976) の最寄品と非最寄品の商品 2 分類を用

いる。また、広告表現の種類については、製品の効果を誇張していない現実的広告と非

現実的広告 (誇張広告) を用いる。そして、この商品や広告表現の違いが、製品評価、

信頼性、購買意図の変化という 3 つの従属変数に与える影響の違いを明らかにしていく。

4-1. 先行研究のレビュー

本節では、まず商品分類に関する先行研究のレビューを行い、その後に、仮説提唱に

あたり重要な概念となる買物リスクについて、先行研究のレビューを行う。

○商品分類

Copeland (1923) は、最寄品と買回品の商品分類に、専門品の分類を追加して、商品 3

分類を提唱した。それぞれの定義については以下のとおりである。まず、最寄品とは、

消費者が容易にアクセスできる店舗で習慣的に購入する商品である。また、買回品とは、

消費者が購入時に価格、品質、スタイルを比較することを望む商品である。そして、専

門品とは、消費者がそれを購入するために特別な努力を支払ってもよいと考えるほど特

別な魅力をもつ商品である19。この Copeland (1923) の分類は、暗黙的に、消費者の「移

動努力」、「ブランドの比較努力」、「ブランド固執」という 3 つの次元に基礎がおかれて

いた (Holbrook & Howard, 1977)。しかし、その定義が非常に曖昧であったために、その

後は、分類基準の改善を目的とした研究が長きに渡って続くことになった (表 5)。

19 Copeland (1923), pp.282-284 から該当箇所を引用した。

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國枝 陽輔

18

表 5 商品分類に関する諸研究

研究者 分類基準についての内容

Aspinwall (1958)

購買頻度、消費速度、探索時間、粗利益、サービス必要度の 5 つの商品特性

によって商品分類を行った。また、すべての商品を一元的な連続体に構成し

ようとした20。

Holton (1958)

商品の探索費用と探索から得られる価値の差によって商品を分類。専門品と

買回品の違いについては、購買努力を「厭わない (willingness)」か「やむを

得ない (necessity)」によって分類できるとした。

Bucklin (1963)

選好マップ (各属性や品目に関する大雑把な順位づけ) が事前に形成されて

いるかによって、買回品と非買回品を区別した。これについては、Luck (1959) も少し触れている。また、最寄品と専門品については、追加的努力の大きさ

によって分類を行うとした。

Kaish (1967)

認知的不協和の概念 (Festinger, 1957) を購買前の不安の解消にまで拡張し、

「購買の重要性」によって最寄品と非最寄品を区別した。購買の重要性は価

格、耐久性、関与の 3 要因によって構成され、Bauer (1960) の知覚リスクの

概念とほぼ同義である (Enis & Roering, 1980)。また、買回品と最寄品につい

ては、その後の買い回りにより、知覚リスクを軽減できるかどうかで分類を

行った。

Porter (1976)

消費者が買回りを行うか否かによって、商品を最寄品と非最寄品に分類した。

加えて、消費者の探索行動によって小売業者や広告などの影響力が変化する

ことを述べた (例えば、最寄品の場合には、小売業者が消費者の購買意思決

定に大きな影響を及ぼすことができないため、広告等の手段を用いて広く販

売促進を行うなど)。

○買物リスク

消費者が商品を購買する以前には、「購買時に抱いた期待が商品によって満たされる

か」ということに加え、「購買を行った後の使用過程で、自分がその商品に今後どのよ

うな期待を抱くか」ということについて、懸念を抱く。石原 (2003) は、このように消

費者が購買に先立って伴うリスクを総じて「買物リスク」と呼んだ。そして、Kaish (1967)

の「購買の重要性」を構成する 3 要因 (価格、耐久性、関与) をもとに、商品の種類に

よって、買物リスクが異なることを指摘した。具体的に、最寄品は、に購入単価や耐久

性 (消費時間)、消費者の関与 (思い入れ) が一般的に低い商品であるため、買物リスク

は小さい。逆に、非最寄品は、購入単価、耐久性 (消費時間)、消費者の関与 (思い入れ)

が一般的に高い商品であるため、買物リスクは大きくなる (表 6)。

表 6 商品間での買物リスクの違い

最寄品 非最寄品

購入単価 耐久性 (消費時間) 関与 (思い入れ) 買物リスク

低い 低い 低い 小さい

高い 高い 高い 大きい

20 この点についての詳しい内容は、田村 (1978) や成生 (1994), 第 2 章を参照のこと。

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広告の誇張表現が消費者購買意図に与える影響

19

また、この買物リスクの違いは、消費者の行動や意思決定に大きな影響を与える。買

物リスクの小さな商品を購買しようとする際には、消費者は、十分な知識を持たなくと

も容易に購買の意思決定を行う。逆に、買物リスクの大きな商品を購買しようとする際

には、試用期間が長いために、商品の色で迷うなど、購買の意思決定が慎重に行われる。

次節では、商品の種類によって異なる買物リスクが、消費者の意思決定方法を左右す

ることを考慮し、仮説の提唱を行う。

4-2. 仮説の提唱

この節では、前節で行った既存研究レビューをもとに、異なった種類の広告が、商品

の評価、信頼性、購買意図に与える影響の違いについて、仮説を提唱していく。

○商品評価および信頼性に関する仮設

Cowley (2006) は、広告内で誇張表現が用いられた場合に、その主張が信頼に値しな

いことを理解していても、消費者は広告されたブランドの評価を高めてしまうことを明

らかにした。Cowley (2006) が対象としていたのは、無形財のサービスに関する広告で

あるが、本論が対象とする最寄品や非最寄品といった有形財の広告についても、同じよ

うな影響があると考えられる。そのため、商品評価と信頼性について、以下の 2 つの仮

説を提唱する。

H1:最寄品・非最寄品の違いにかかわらず、非現実的な演出によって製品の効

果が強調されているため、現実的広告よりも非現的広告 (誇張広告) を行

った方が、製品への評価は高い。

仮説 1 を図示すると、以下の図 6 のようになる。

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國枝 陽輔

20

図 6 仮説 1 のモデル

H2:最寄品・非最寄品の違いにかかわらず、広告内で非現実的な演出が用い

られているために、現実的広告よりも非現的広告 (誇張広告) を行った方

が信頼性は低い。

仮説 2 を図示すると図 7 のようになる。

図 7 仮説 2 のモデル

○購買意図の変化に関する仮設

「買物リスク」とは、購買に先立って伴うリスクの総称であり、そのリスクの高低に

商品分類低

信頼性

最寄品 非最寄品

非現実的広告

(誇張広告)

現実的広告

商品分類低

製品評価

最寄品 非最寄品

非現実的広告

(誇張広告)

現実的広告

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広告の誇張表現が消費者購買意図に与える影響

21

よって、消費者の購買意思決定や情報収集活動が変化するというものであった。ここで

は、買物リスクが購買意図の変化に与える影響に注目し、最寄品と非最寄品について、

それぞれ仮説を提唱していく。

まず、買物リスクの低い最寄品については、一般的に、価格が低く購入頻度が高いた

めに、消費者はその購買について、容易に意思決定を下すことができる。また、最寄品

のように慎重な意思決定を必要としない商品については、広告の信頼性を考慮せず、製

品に対する評価が購買意図にそのまま反映されると考えらえる。そこで、以下の仮説を

提唱する。

H3:最寄品の場合には、現実的広告よりも非現実的広告 (誇張広告) を行った

方が、広告視聴後の購買意図の増加幅は大きい。

逆に買物リスクが高い非最寄品については、一般的に、価格が高く購入頻度が低いた

めに、消費者は購買の意思決定を慎重に下すようになる。この場合には、消費者は広告

によって得られる情報の信憑性を非常に重要視することが考えられる。そこで、以下の

仮説を提唱する。

H4:非最寄品の場合には、非現実的広告 (誇張広告) よりも現実的広告を行っ

た方が、広告視聴後の購買意図の増加幅は大きい。

また、最寄品の場合には、非最寄品の場合に比べて、広告が消費者の購買意図に与え

る影響が大きくなるだろう。なぜなら、買物リスクが高い場合は、消費者が能動的に情

報探索を行って購買意思決定を下そうとするため、広告が与える影響そのものが小さく

なると考えられるからである。そこで、以下の仮説を提唱する。

H5:非最寄品の場合には、最寄品の場合に比べて、広告視聴後の購買意図の

変化が小さい。

仮説 3、仮説 4、仮説 5 をまとめて図示すると以下の図 8 のようになる。

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國枝 陽輔

22

図 8 仮説 3、仮説 4、仮説 5 のモデル

4-3. 調査方法

前節で提唱した仮説の経験的妥当性を吟味するために、質問票調査を行った。調査は、

被験者に紙媒体で作成した広告21を見てもらった後に、指定した回答用紙に記入しても

らう形で行った22。また、作成した広告については、実際に利用されていた広告に、企

業名が映らないよう編集を加え、状況説明を伴った 6 つから 8 つ程度の画像をコマ送り

する形で見てもらう内容にした。さらに、買物リスクは価格によって変動するため、今

回の調査では質問票に価格の要素を加えた23。

測定尺度の作成にあたり、「製品評価」と「信頼性」については、Cowley (2006) の尺

度を本論に合わせて修正し、採用した。また「購買意図の変化」については、MacKenzie,

Lutz & Blech (1986) と Mitchell & Olson (1981) の「購買意図」を参考にして、独自に作

成した。尺度に関しては、リカート法に基づく 7 点尺度を採用した。

本調査を行う前に 3 度のプリテスト (n=20) を実施し、質問文や広告内容について検

討を行った。同時に調査対象となる財について検討を行い、最終的にチューインガムと

デジタルカメラを採用した。また、調査を依頼する対象には、所得水準を一定にする目

的で大学生を採用した。加えて、サンプル収集は、授業での大規模サンプリングを行わ

ず、校内のフリースペースにいる学生に個別に依頼した。というのも、被験者は回答に

21 今回の調査では、広告の種類 (現実的、非現実的) と商品の種類 (最寄品、非最寄品) に分け

て広告を作成しているため、合計で 4 種類の広告が調査で用いられた。 22 1 つの広告を見た後に、その広告に対する質問に答えてもらうという形式にした。そのため、

被験者は、広告と回答用紙を交互に行き来するようになっている。 23 価格は商品ごとに一定に設定し、ガムが 100 円前後、デジタルカメラが 20,000 円前後という

表示を行った。

商品分類低

購買意図の変化

最寄品 非最寄品

非現実的広告

(誇張広告)

現実的広告

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広告の誇張表現が消費者購買意図に与える影響

23

あたって 4 つの広告を見る必要があり、回答にはある程度の時間がかかる24。このよう

に、調査者が被験者に実際に広告を見せるだけでなく、被験者が長時間の回答に協力で

きるだけの時間的余裕を持つ必要があることから、今回の調査対象を選定した。

こうして、2012 年 1 月 12 日から 1 月 16 日の期間に、都内大学生を対象とするアン

ケート調査を実施した。今回の調査によって得られた回答数は 74 (回収率 100%) であ

った。また、欠損値や著しく回答に隔たりのあるものはなく、有効回答は 74、有効回

答率 100% であった。

4-4. 分析結果

本研究の目的は、商品と広告表現の種類によって、広告が消費者の製品評価、信頼性、

および購買意図の変化に与える影響が異なることを解明することにある。そのため、分

析方法については、平均値の差を見る分散分析が適切であると判断した。分析に際して

は、統計ソフト IBM SPSS Statistics 19 を利用し、図 6~8 に示された仮説モデルを経験

的にテストした。

まず、仮説 1 のモデルを検証するために、従属変数を「製品評価」とし、分類変数を

「広告の種類」と「商品分類」とした、二元配置の分析 (n=74) を行った。その際の分

析結果は表 7、表 8 のとおりである。

表 7 分散分析表 (1)

ソース 平方和 自由度 F 値 有意確率

モデル 5957.243a 4 995.700 .000 広告の種類 55.351 1 37.006 .000 商品分類 86.486 1 57.822 .000 広告の種類×商品分類 .054 1 .036 .849 誤差 436.757 292 総和 6394.000 296

a:R2=.932 (調整済み R2=.931)

24 プリテストを行った際に、被験者には回答にかかった時間を任意で記述してもらった。その

結果、6 分から 8 分という返答が多かったが、中には 12 分という返答もあり、回答にはある程

度の時間を必要とすることが明らかになった。

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國枝 陽輔

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表 8 記述統計量 (1)

分類変数の組み合わせ 平均値 標準偏差

現実的広告×最寄品 4.55 1.218現実的広告×非最寄品 3.45 1.184非現実的広告×最寄品 5.39 1.259非現実的広告×非最寄品 4.34 1.231現実的広告 4.00 1.320非現実的広告 4.86 1.348最寄品 4.97 1.304非最寄品 3.88 1.284

仮説 1 は、「現実的広告よりも非現実的広告を行った方が製品評価は高くなる」とい

う内容であったが、これについては統計的に支持された (表 7、8 参照)。また、仮説と

は直接的に関係ないが、商品の種類によっても製品評価に有意な差が存在することが明

らかになった (F=57.822、p<0.01)。なお、この結果を図示すると、以下の図 9 のように

なる。

図 9 分析結果 (仮説 1)

次に、仮説 2 のモデルを検証するために、従属変数を「信頼性」とし、分類変数を「広

告の種類」と「商品分類」とした、二元配置の分析 (n=74) を行った。その際の分析結

果は、以下の表 9、表 10 のとおりである。

5.39

4.344.55

3.45

商品分類

製品評価

最寄品 非最寄品

非現実的広告

(誇張広告)

現実的広告

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広告の誇張表現が消費者購買意図に与える影響

25

表 9 分散分析表 (2)

ソース 平方和 自由度 F 値 有意確率

モデル 5287.527a 4 818.688 .000 広告の種類 67.166 1 41.598 .000 商品分類 .571 1 .354 .553 広告の種類×商品分類 .030 1 .019 .891 誤差 471.473 292 総和 5759.000 296

a:R2=.918 (調整済み R2=.917)

表 10 記述統計量 (2)

分類変数の組み合わせ 平均値 標準偏差

現実的広告×最寄品 4.62 1.202現実的広告×非最寄品 4.73 1.197非現実的広告×最寄品 3.69 1.072非現実的広告×非最寄品 3.76 1.560現実的広告 4.68 1.196非現実的広告 3.72 1.334最寄品 4.16 1.227非最寄品 4.24 1.469

仮説 2 は、「現実的広告よりも非現実的広告を行った方が信頼性は低くなる」という

内容であったが、これについても統計的に支持された (表 9、10 参照)。なお、結果を

図示すると以下の図 10 のようになる。

図 10 分析結果 (仮説 2)

4.62 4.73

商品分類低

信頼性

最寄品 非最寄品

3.69 3.76

非現実的広告

(誇張広告)

現実的広告

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最後に、仮説 3、仮説 4、仮説 5 についてのモデルを検証するために、従属変数を「購

買意図の変化」とし、分類変数を「広告の種類」と「商品分類」とした、二元配置の分

析 (n=74) を行った。その際の分析結果は、以下の表 11、表 12 のとおりである。

表 11 分散分析表 (3)

ソース 平方和 自由度 F 値 有意確率

モデル 3545.459a 4 822.846 .000 広告の種類 24.986 1 23.196 .000 商品分類 102.284 1 94.954 .000 広告の種類×商品分類 107.041 1 99.370 .000 誤差 314.541 292 総和 3860.000 296

a:R2=.919 (調整済み R2=.917)

表 12 記述統計量 (3)

分類変数の組み合わせ 平均値 標準偏差

現実的広告×最寄品 3.04 .985現実的広告×非最寄品 3.07 1.011非現実的広告×最寄品 4.82 1.186非現実的広告×非最寄品 2.45 .953現実的広告 3.05 .995非現実的広告 3.64 1.604最寄品 3.93 1.408非最寄品 2.76 1.028

まず、仮説 3 は、「最寄品では、現実的広告よりも非現実的広告 (誇張広告) を行っ

た方が購買意図に与えるプラスの影響が大きい」という内容であったが、これについて

は統計的に支持された (表 11、12 参照)。

次に、仮説 4 は、「非最寄品では、非現実的広告 (誇張広告) よりも現実的広告を行

った方が購買意図に与えるプラスの影響が大きい」という内容であったが、これについ

ても支持された。(表 11、12 参照)。

最後に、仮説 5 は、「最寄品に比べて非最寄品の場合は、広告視聴後の購買意図の変

化が小さい」という内容であったが、これについては残念ながら棄却された。なお、結

果を図示すると以下の図 11 のようになる。

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広告の誇張表現が消費者購買意図に与える影響

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図 11 分析結果 (仮説 3、仮説 4、仮説 5)

以上の分析から、それぞれの仮説について考察を行う。まず、仮説 1 と仮説 2 につい

ては、現実的な広告に比べて、非現実的な広告を行った方が、製品の評価が高く、信頼

性が低いという結果となった。Cowley (2006) は、無形財で視覚的要素のほとんどない25

広告を用いて調査を行ったが、有形財を対象として、視覚的要素を伴う広告で行われた

今回の調査でも同様の結果となった。これらの結果から、消費者は広告の信憑性が低い

ことを理解していても、製品の評価を高めてしまうことが再確認された。また、仮説 3

と仮説 4 について、商品の違いによって、広告のもたらす効果に差が出ることが明らか

になった。具体的には、価格や耐久性 (消費時間) の低い最寄品の場合には、過剰な演

出を用いた非現実的広告が有効であり、逆に価格や耐久性 (消費時間) の高い非最寄品

の場合には、過度な演出を伴わない現実的な広告が有効であることが明らかにされた。

最後に、仮説 5 については、最寄品と非最寄品の間に広告効果の違いは見てとれるもの

の、広告視聴後の購買意図の変化は必ずしも最寄品の方が大きいとは言えないことが明

らかになった。

5. 本研究の知見と今後の課題

近年では、インターネットの普及による広告媒体の変化や、比較広告の事実上の解禁

など、日本の広告業界を取り巻く環境が大きく変化し、企業が行うプロモーション活動

にもより一層の幅が出てきた。企業が広告に趣向を凝らし、自社製品をより魅力的に見

せようと試行錯誤する中で、誇張広告のように非現実的な演出を伴う広告を目にする機

会も増えているように思われる。本論では、その誇張広告を対象に、スタディ 1 とスタ

25 Bar のミュージカルの様子を伝えるために、1 枚の写真が利用された。

4.82

2.45

商品分類低

購買意図の変化

最寄品 非最寄品

非現実的広告

(誇張広告)

現実的広告

3.04

3.07

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國枝 陽輔

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ディ 2 で、2 つの実証分析を行った。以下では、それぞれの分析から得られた知見と課

題をまとめる。

まず、本論のスタディ 1 では、既存研究で十分に言及がなされていなかった、誇張広

告が消費者に与える負の影響を考慮し、広告視聴から購買意図形成に至る一連のプロセ

スを明らかにすることを試みた。そして、実証分析から以下の 2 つの知見を得た。

1 つ目は、消費者に馴染みのある製品の広告では、「おもしろい」、「つまらない」と

いった広告に対する感情が、製品の特徴を理解すること以上に、製品態度に強い影響を

与えるということである。今回は「チューインガム」を調査に用いたが、誇張広告は市

場での競争が激化する成長期から成熟期にかけて用いられることが多い。成長期や成熟

期では、その製品が消費者にとって既に馴染み深い存在となっているため、この知見は

誇張広告を用いる際に重要な示唆を与えるだろう。

2 つ目は、誇張広告に対する不信感は、主観的規範や確信に負の影響を与え、購買意

図に反映されるということである。つまり、誇張広告を用いて製品評価を高めることが

できたとしても、同時に「この製品はあまり人目に付くところで利用したくない」、「こ

の製品に対する自分の評価が正しいのかわからない」といった感情を想起させてしまう

のである。この点については、既存研究で十分に触れられていなかった領域であり、実

際に誇張広告を利用する際にも、十分に注意が必要な部分である。

つづいて、本論のスタディ 2 では、2 つの異なる製品・広告表現を用いて、広告が消

費者に与える影響力の違いを明らかにしたが、そこから得られた知見をまとめると、以

下の 2 つに集約される。

まず 1 つ目は、誇張広告は消費者の製品に対する評価を高める効果があるが、その効

果は、製品の種類によって変化するということである。具体的には、最寄品のように、

価格が低く購買頻度の高い製品に対しては、誇張広告は非常に効果的である。逆に、非

最寄品のように、価格が高く購買頻度の低い製品であれば、消費者は購買に関する意思

決定を慎重に下すため、誇張広告の効果は現実的広告よりも低くなる。誇張広告を用い

る場合には、この点に注意して製品間で使い分けを行う必要があるだろう。

2 つ目は、最寄品と非最寄品を比較した際に、必ずしも最寄品の方が、広告の影響が

大きいとは言えないということである。もちろん、Porter (1976) が指摘したように、最

寄品と非最寄品では、相対的な小売業者の重要性が変化することに伴い、広告の重要度

が変化することはあるだろう。しかし、非最寄品であっても広告が消費者に与える影響

は大きく、消費者の購買意図を変化させるには、十分な役割を果たす。近年、広告の影

響力を疑問視する声も高まっているが、そういった中でも広告が及ぼす影響を軽視する

わけにはいかないことが再確認された。

以上、2 つの分析から得られた知見をまとめたが、本論には課題も残されている。1

つは、調査設計の問題である。今回は、調査に用いる広告を紙媒体で表現した。雑誌や

新聞といった紙媒体の広告ではなく、テレビやインターネットでの広告を想定した場合

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広告の誇張表現が消費者購買意図に与える影響

29

には、視覚のみならず聴覚的な要素が非常に重要である。そのため、今後の調査では、

テレビやインターネットなどの広告媒体を視野に入れ、ウェブ上での調査や実験室実験

を行うなど、調査方法の更なる改善が必要であるだろう。

また、本論のスタディ 1 で構築したモデルにも問題が残る。分析結果の考察でも述べ

たとおり、今回構築したモデルは、採取したデータに対して適合度が低い結果となって

しまった。モデルの複雑性を考慮しても、今後はその改善が求められるだろう。具体的

に、今回のモデルは、中心となる Howard (1989) のモデルに大きな変更を加えなかった

が、対象となる財を考慮して、モデルの修正を行っていく必要があるだろう。加えて、

より大規模なサンプル採集を行うことで、より広範囲な消費者をモデルに反映していく

ことが求められるだろう。

しかし、上記した課題が残されているとはいえ、本研究は、国内での実証研究の蓄積

が少ない分野において、2種類の実証分析を通じて広告効果の解明を試みたという点で、

学術的・実務的に非常に意義のある研究である。

(記) 本論の執筆に際して、中央大学商学部久保知一先生には大変貴重なご助言を

いただいた。記して、ここに深い感謝の意を表したい。また、慶應義塾大学

大学院商学研究科修士課程の白石秀壽さん、久保知一研究室の皆様にも多大

な協力をいただいた。心から御礼を申し上げたい。

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