スライド 1①ノロウイルスは温度が低ければ低いほど長期間生存...

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冬季に流行する感染性胃腸炎の予防 -おなかにくる冬の風邪- ノロウイルスを中心に 福岡大学病院感染制御部 高田 徹 2013年11月14日 福大病院健康セミナー

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冬季に流行する感染性胃腸炎の予防

-おなかにくる冬の風邪-

ノロウイルスを中心に

福岡大学病院感染制御部

高田 徹

2013年11月14日

福大病院健康セミナー

白土(堀越)東子,武田 直和 ウイルス 57;181-90,2007

年間の食中毒の患者数の約半分はノロウイルスによるものです

2006 年

月別ノロウイルス食中毒発生事例数

約7割では原因食品が特定できない

インフルエンザウイルス ノロウイルス 95%以上 ロタウイルス アデノウイルス アストロウイルス

冬季感染性胃腸炎の原因ウイルス

ノロウイルスってなあに?

1968年; 米国オハイオ州ノーウォークの小学校で集団

発生した患者の便から分離 (ノーウォーク株)

1972年; 電子顕微鏡下でウイルスの中でも小さく、

球形をしていたことから「小型球形ウイルス」と命名

2002年; 国際ウイルス学会で「ノロウイルス」と命名

ノロウイルス感染症の特徴

感染から発症までの潜伏期間; 24~48時間

ヒトの腸管のみで増殖する

主症状; 吐き気、嘔吐、下痢、腹痛

発熱は軽度

ほとんどは症状が1~2日持続後に治癒

感染しても発症しない場合もあり

多様な遺伝子型を示す(少なくとも33型)

→ 感染の既往があっても複数回感染する

冬場は生ガキなどの二枚貝に注意

カキなどの二枚貝の中で濃縮する

食品の中心温度85℃以上で1分間以上の加熱で失活

ノロウイルスは何故二枚貝に感染するが一枚貝には感染しないの?

アサリ、ハマグリ、赤貝は? お寿司のホタテは大丈夫?

貝柱(内臓は除去)

①ノロウイルスは温度が低ければ低いほど長期間生存し、乾燥にも強いため。 ②冬場になるとカキなどの二枚貝を生食する機会が増えるため。

ノロウイルスはどうして寒い時期に流行するの?

4℃;1~2ヶ月程度, -20℃; 数年間、-80℃; 数十年間生存

ノロウイルスは何故流行しやすい?

① 伝染力が極めて高い

② 感染経路が多岐にわたる

③ 消毒薬に対する抵抗性が強い

ノロウイルスは伝染力が極めて高い

感染力が強く、少量(10~100個)でも発症する 吐物/便からエアロゾル化し、飛沫/空気感染 乾燥環境下で21~28日間生存 ↓ 環境に固着し、接触感染

ノロウィルスは血液型H抗

原を認識して感染を起こす

血液型抗原への結合力が

強い株は感染力が強い

H抗原は赤血球表面の他、

腸管皮細胞にもみられる

ノロウイルスは血液型 O型 の人が罹りやすい

Lindesmith et al. Nature Medicine 9;548-53, 2003 白土(堀越)東子 他 ウイルス 57;181-90,2007

リスク比 0.54 0.82 1.89 未定

血液型抗原合成酵素(Se)が腸管上皮に発現されない人はノロウイルスに罹らない (非分泌型)

Lindesmith et al. Nature Medicine 9;548-53, 2003

腸管上皮細胞

腸管上皮細胞

腸管上皮細胞

AB型

O型

非分泌型

感染率低

感染率高

感染非成立

ノロウイルスの感染経路は多岐にわたる

ノロウイルス/ロタウイルス感染症に罹ったと思ったら

(診断)

臨床症状や周囲の感染状況等から、総合的に推定

便検査 (抗原検査、遺伝子検査)

(治療)

ウイルスに対する特効薬はなし

水分と栄養補給による対症療法が中心

脱水症状がひどい場合には、病院での輸液治療

下痢止め/吐き気止めの安易な服用は治りを遅延

ノロウイルスのワクチン開発に光明

ウイルスの外殻タンパク質だけで作成した“空の粒子”のウイルスで、

感染性はなく免疫のみを誘発

ワクチン群の7割で抗体が産生

ノーウォークウイルス株への曝露後の発症;

ワクチン群37% vs 偽薬群69%

重症化の比率もワクチン群で有意に低率

New England Journal of Medicine 365;2178-87, 2011

ロタウイルス

2度感染を受けると重症化はみられなくなる

生ワクチンが開発 → 2回以上投与が必要

標準予防策 (Standard Precautions) (全ての患者さんのケアに適応)

感染経路別対策

(感染経路の遮断)

(病原体別の感染対策)

感染予防策

・接触感染 ・飛沫感染 ・空気感染

ノロウイルスやロタウイルスはアルコールのみでは死滅しにくい

亜鉛入りエタノール製剤

流水+石鹸による水洗い手洗いを合わせて実施する

マスク 手袋 プラスチックエプロン (必要に応じて)アイシールド

ノロウイルス、ロタウイルス感染対策のポイント

(接触予防策+飛沫予防策; 防護具の使用)

窓を開けるなどして十分な換気

ペーバータオルで汚物を外側

から内側へ包み込む様に拭い

取る→ビニール袋へ密閉

処理セットを準備しておくと便利

汚染した床やドアノブは200~1,000 ppmの次亜塩素酸

Naで清拭消毒 (原則3回以上)

食器、カーテンなど → 200 ppm

おう吐物など → 1000 ppm

→ その後、水で拭き取る、清拭したものもビニールで密閉

感染性廃棄物として処理し、必ず手指衛生を行う

食器・リネン類などの消毒

感染者が使用後や嘔吐物が付着

したものは他のものと分けて洗

浄・消毒

食器:厨房に戻す前に塩素液に

十分浸し、消毒

カーテン・衣類も

食器、カーテン おう吐物など

200ppm 1000ppm

製品の濃度 原液 希釈水 原液 希釈水

12% (業務用) 5 ml 3 L 25 ml 3 L

6% (業務用) 10 ml 3 L 50 ml 3 L

1% (業務用) 60 ml 3 L 300 ml 3 L

塩素液の作成

ハイター

ミルトン

御質問は

福岡大学病院 感染制御部

髙田 徹 [email protected]

御清聴ありがとうございました。