ノカルジア症の薬剤感受性研究について...
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ノカルジア症の薬剤感受性研究について
◆目的
◆現状と問題点
サルファ剤(スルファモノメトキシンナトリウム(SMM-Na):商品名ダイメトンソーダ)の薬効を正確に現場評価し,ノカルジア症の治療対策の確立と既承認抗菌性薬剤の有効性を検証し,新薬開発に向けた基礎的知見を得る。
◆方法①サルファ剤の薬効を評価する標準法の開発:Resazurinを添加したマイクロダイリューション法(REMA法)によるMIC測定法の開発②疫学調査:ノカルジア症野外分離株のα-グルコシダーゼ活性とサルファ剤及び既承認抗菌性薬剤のMIC値の関連性を調査③最適治療方法の調査: SMM-Na投薬方法の整理とエリスロマイシン(EM),塩酸オキシテトラサイクリン(OTC)の治療効果の探索
◆ブリ類の魚病被害額(全体)に占めるノカルジア症被害額の推移
594.2
872.6
463.5
463.3
403.0
1,810.1
2,271.4
2,253.9
1,844.3
1,535.3
1,145.4
768.8
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500
平均
H20
H19
H18
H17
H16
年度
ノカルジア症 その他疾病
被害額(百万円)
被害割合:24.7%
( 5年間の平均 )
水産食品部 研究専門員 柳 宗悦
chromIDTM MRSA培地による判定●
【 α-グルコシダーゼ活性の判定】
ノカルジア症に2つのタイプが存在※コロニーの色で判定
緑 色 陽性株乳白色 陰性株
【MIC測定法の開発】
従来の測定法
105 cfu/well
104 cfu/well
103 cfu/well
102 cfu/well
REMA法
◆結果
●α-グルコシダーゼ陽性株 : ①カンパチに多い(5割強) ②ほとんど当歳魚で確認(9割) ③春先~初夏で多く確認
図3.α-グルコシダーゼ陽性株の魚種別確認状況
4
2
4
11
14
19
8
0 5 10 15 20 25
クロマグロ
ヒ ラ メ
ブ リ
カ ン パ チ
魚 種
α-グルコシダーゼ陽性株 α-グルコシダーゼ陰性株
分離数(株)
図4 カンパチのα-グルコシダーゼ陽性株の年齢構成
90.9%
9.1%
当歳
2歳
図5 カンパチのα-グルコシダーゼ陽性株の月別出現割合
0
1
2
3
4
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
月
分離数
(株
)
α-グルコシダーゼ陽性株
α-グルコシダーゼ陽性株の分析
N=62
N=11
N=11
MIC分布は4~32μg/mLで,陽性株は16~32μg/mLで確認された。
(陽性株:低感受性)
図2 REMA法によるNocardia seriolaeのMIC分布
MIC分布は1~64μg/mLで,陽性株は4~64μg/mLで確認された。
(陽性株:低感受性)
MIC分布は0.5~512μg/mLで,陽性株は<0.5μg/mLでのみ確認された。
(陽性株:感受性)
α-グルコシダーゼ活性とMIC値の関連性菌が増殖 菌の増殖なし
0
5
10
15
20
25
<0.5 1 2 4 8 16 32 64 128 256 >512
MIC(μg/ml)
分離数
(株
)
α-グルコシダーゼ陽性株α-グルコシダーゼ陰性株
0
5
10
15
20
25
<0.5 1 2 4 8 16 32 64 128 256 >512
MIC(μg/ml)
分離数
(株
)
α-グルコシダーゼ陽性株
α-グルコシダーゼ陰性株
0
5
10
15
20
25
<0.5 1 2 4 8 16 32 64 128 256 >512
MIC(μg/ml)
分離数
(株
)
α-グルコシダーゼ陽性株
α-グルコシダーゼ陰性株
SMM-NaOTC EM
N=62 N=62N=62
感受性(高) 感受性(低) 感受性(高) 感受性(低) 感受性(高) 感受性(低)
抗生剤を倍々希釈していき,そこに細菌を入れて培養し,どの濃度で細菌の発育が抑制されるかを判定した値最小発育阻止濃度
●MICとは?
1週目 2週目 3週目 4週目 備 考
対 照 区
OTC区 投薬 休薬 投薬 休薬 水産用OTC散
SMM-Na区 投薬 休薬 投薬 休薬 水産用ダイメトン散
無 投 薬
(注) ①用量「水産用医薬品の使用について」の第25報に基づき,オキシテトラサ
イクリン(OTC),ダイメトン(SMM-Na)とも50mg/kg/日を基準に,1週間当 たり5日間連続投与とした。
0%
20%
40%
60%
80%
100%
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
攻撃後日数
生残率
(%
)
試験区1 試験区2 試験区3
試験区4 対照区
塩酸オキシテトラサイクリンOTC治療試験
●まとめ
●α-グルコシダーゼ活性はSMM-Na,OTC,EMの薬剤感受性との関連性が高く,当該活性のモニタリングは薬剤耐性
菌発生の有益な指標になり得るものと推察された。
。●SMM-Na及びOTC 陽性株:低感受性,陰性株:感受性 ●EM 陽性株:感受性,陰性株:低感受性
●EM はSMM-Naとほぼ同等の治療効果が,OTCは治療効果が低いことが示唆されたが,SMM-Na,EMとも生残魚
で保菌個体が確認されており,完全には除菌できておらず,治療効果の高い新薬及びワクチン開発が望まれる。
図6 EM治療効果試験の生残率の推移
図7 EM治療効果試験の生残率の推移
図8 Nocardia seriolaeによる攻撃試験 図9 治療効果試験中・終了時の供試魚の状況
● レサズリンResazurin(色素)を添加することで,視覚により薬剤感受性を容易に判定することが可能となった。
●ピンク色:菌が増殖(薬が効いていない),紫色:菌の増殖が認められない(薬が効いている)
○投薬 休薬 投薬 休薬のパターンが最も治療効果に優れていた。
○EMはSMM-Naとほぼ同等の治療効果があることが示唆された。
1週目 2週目 3週目 4週目試験区1 投薬 休薬 投薬 休薬試験区2 投薬 休薬 休薬 投薬試験区3 投薬 休薬 休薬 休薬試験区4 投薬 休薬 投薬 休薬対照区
試 験 設 定 の 概 要
備 考
水産用ダイメトン散(スルファモノメトキシン)
水産用エリスロマイシン無 投 薬
(注) 用量は「水産用医薬品の使用について」の第24報に基づき,ダイメトン,エリスロマイシンとも 50mg/kg・日 を基準に,1週間当たり5日間連続投与とした。
エリスロマイシン(EM)治療試験
○投薬 休薬 投薬 休薬のパターンをベースに投薬を実施。
○OTCは感染初期(1週間程)は有効性を示すが治療効果は低いと推察された。
試 験 設 定 の 概 要