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越境する宗教とその可能性 グローバル帝国主義と国民国家 鈴木繁夫 (名古屋大学・名誉教授)

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  • 越境する宗教とその可能性

    グローバル帝国主義と国民国家

    鈴木繁夫 (名古屋大学・名誉教授)

  • 政治・統治権力:国民の作り方1. 原初主義:言語、血筋、地域、経済生活、宗教、文化的共通性などの実体を根拠

    2. 道具主義:国家が民衆を統治するための道具として創造

  • 想像の共同体Imagined Communities• ベネディクト・アンダーソン• 道具主義:創出されたもの:

    –標準語の確立と使用の義務付←出版資本主義• 公定ナショナリズム:権力層が、政治力を使い「国民」を創出

  • ethine(文化的共同体)という核

    • アントニー・D・スミス• 原初主義:

    –共通の祖先・歴史・文化をもち、ある特定の領域との結びつきをもち、内部での連帯感をもつ、名前をもった人間集団

    – 人々の感情に訴える、詩的・道徳的な物語としての歴史

  • グローバル化:資本主義 vs. 民族主義• 資本主義:

    –人間の均一性:• 労働=商品化=金銭に換算• 金銭増殖が自己目的化

    • 民族主義:–超越性を埋める、自己同一性の基盤

  • グローバル化資本主義 vs. 自国優越民族主義

    態度 神性(超越性)信仰 既存宗教

    への態度グローバル資本主義 弱肉強食優勝劣敗 財産

    投資する蓄財

    無視迷信

    民族主義 自国優越移民排斥 国体

    国体を護持

    国体反映のみ可

  • 勝者一人勝ちWinners Take All

    https://www.theguardian.com/books/2019/feb/14/winners-take-all-by-anand-giridharadas-review

  • 国体を護持

  • 資本主義の土台にのる民族主義

  • 宗教を掘り崩す資本主義• 中国にあっては、次のようなことも起り得る。ある男が他人に家を売ったが、暫くして後に、買い手の所へやって来て、貧乏してしまったからもとの家に入れてくれという。

    • 買い手がもし同胞扶助という古代中国の掟を無視するならば、神霊のたたりがある。そこで、貧乏した売り手は、強制借家人として、家賃なしに、もとの家に住み込むことになるのである。

    • こういう法律をもっては、資本主義が経営を行うことは不可能である。資本主義に必要なのは、機械の如く計算の可能な法律である。祭祀的・宗教的及び呪術的見解は、何等の役割も演じてもならないのである。そういう法律は、近代国家が国力増強の要求を貫くために法律家と提携することによって、始めて生れ出たのである。 (マックス・ヴェーバー『国家社会学』)

  • グローバル資本主義vs. 自国優越民族主義

    既存宗教=不要・無信仰

    https://www.twincities.com/2018/02/21/conservatory-arts-groups-hope-to-move-into-st-pauls-summit-avenue-church-on-the-hill/

  • 無宗教の啓蒙思想• 啓蒙思想:フランス革命期

    –理性と科学技術とに頼ることで、人間は理想的な社会をつくることができる。

    • 神なしに、世界は進歩する• 心のなかの絶対者の位置:民族国家

    –宗教の相対化

    叡智の元にある諸宗教

  • 啓蒙思想と宗教• 宗教の衰退と勃興

    –心のなかの絶対者:神 or 理性

    トーマス・ハックスリー真理に導かれる宗教

  • 宗教>社会>政治>経済• 「経済の背後に政治あり、政治の背後に社会あり、社会の背後に道徳あり、道徳の背後に、宗教あり。宗教は始めにして経済は終わりなり。宗教の結果はついに経済において顕わる。隆興しかり、敗滅またしかり」(内村鑑三)

  • 無信仰へ流れる啓蒙• 「嗚呼信仰なき国民、嗚呼確信なき国民、嗚呼方針なき国民、嗚呼勇断なき国民、富士山よ、恥よ、我等は漂流の民と化しぬ」

    内村鑑三「時勢の観察」

  • 資本主義と民族主義の共在

    価値:想像の共同体

    グローバル資本主義

    自国優越民族主義

    価値:投資蓄財

  • 資本主義と民族主義の共在

    価値:想像の共同体

    グローバル資本主義

    自国優越民族主義

    価値:投資蓄財

    生きる意味の不透明

    バブル崩壊

  • 資本主義と民族主義の共在

    価値:想像の共同体

    グローバル資本主義

    自国優越民族主義

    価値:投資蓄財

    生きる意味の不透明

    バブル崩壊

    生きる意味の不透明

    2016年政変

  • Brexit

  • 議会分裂

  • Trump: America first

  • アメリカ国民の分裂

    https://gizmodo.com/doj-demands-troves-of-data-about-visitors-to-anti-trump-1797839322

  • 宗教の支え

    佐藤初女https://youtu.be/xdw5AF_Z8lI?t=15

  • 資本主義と民族主義の共在

    価値:想像の共同体

    グローバル資本主義

    自国優越民族主義

    価値:投資蓄財バブル崩壊

    2016年政変

    宗教を介した生きる意味

  • グローバル資本主義• 社会・宗教からの反発 + 政治からの制約

    経済 政治

    社会宗教

  • 「<生きる意味>が見えない」という病

    安全• 衣食住が保証される

    安心• 病・老・死・苦が身近でなくなる

    自己非決定

    • 主体的に自己開拓していく意欲の減退

    犠牲者意識• 病・老・死・苦に襲われる

    加害者• 病・老・死・苦を自ら招く

  • 「他者の欲求」を生きる社会

    安定

    • 他人が欲しがるモノを自分も欲しがる

    視界不透明• バブル崩壊→同調圧力はがれる

    自己決定• 主体的に自己開拓していく意欲

    犠牲者意識

    • 意欲を湧かせる動機は?• 犠牲者意識から自由になるには?

  • 経済

    賃上げ抑制による雇用確保

    政治

    NPO・NGOへの権限と資金移

    社会

    合意形成の重視, 問題の制御

    宗教

  • 消えつつある宗教

  • 参考文献• Baudrillard, J. (2015) 消費社会の神話と構造. 今村仁司 塚原史訳. 紀伊國屋書店.

    • 星野克美. (1984) 消費人類学: 欲望を解く記号. 東洋経済新報社

    • Girard, R. (1971) 欲望の現象学.古田幸男訳. 法政大学出版局.

  • • 教育水準の上昇からは、己の責任性を自覚した、本当に上質の新たな上層階級、すなわちいつでも全体のために献身する構えの数百万の哲人たちが出現すると期待することもできたはずである。

    • 内側に破裂した上層集団、すなわち、宗教からもイデオロギーからも無縁となり、獰猛なまでに己自身を気にかける、バラバラの個人の群なのである。彼らは肉体的、性的、美学的自己実現への執念に駆り立てられている。

    エマニュエル・トッド『デモクラシー以後』

  • 内村の生きた時代• 1861年-1930年

    –江戸・明治68-12・大正-26 ・昭和–開国・経済成長・民主制・帝国主義

  • 帝国主義• 1870年代~第一次世界大戦

    – 「主要国の資本主義が発展し、相互の競合が激しくなると、将来の発展のための資源供給地や輸出市場として、植民地の重要性が見直された。

    • 不況と低成長が続いた1870年代以降には、本国と植民地との結びつきを緊密にし、まだ植民地となっていない地域を占有しようとする動きが高まった。

    • この背後には、欧米諸国に、ヨーロッパ近代文明の優越意識と非ヨーロッパ地域の文化への軽視が広まり、

    • 非ヨーロッパ地域の制圧や支配を容易にする交通・情報手段や、軍事力が圧倒的に優勢であるという状況があった。」

    (『詳説 世界史』山川出版社、309頁)

  • グローバル化≒帝国主義独占資本が国家と結びつく1. 資本の集積と集中によって、寡占(独占)が出現2. 産業資本と金融資本の結びつきで、金融資本の優位

    3. 商品輸出と区別された、資本輸出が重要4. 多国籍企業が形成され、国境の制約から生じる資本間の軋轢を回避

    5. 主要国による勢力圏の分割が完了• レーニン『帝国主義』 (宇高基輔訳)岩波文庫、145─146頁)

  • 携帯☎:グローバル化=帝国主義独占資本が国家と結びつくソフトバンク 日本1. 資本の集積と集中によって、寡占(独占)が出現

    優位のソフトバンク2. 産業資本と金融資本の結びつきで、金融資本の優位

    ソフトバンクと住信SBIネット銀行3. 商品輸出と区別された、資本輸出が重要

    Yahoo Alibaba Uber への出資4. 多国籍企業が形成され、国境の制約から生じる資本間の軋轢を回避5. 主要国による勢力圏の分割が完了

    日中・日韓関係を静視する

  • 資本 vs 国家• 国家独占資本主義

    –国家が統治権力を用いて、資本の暴走を抑えこむ• 労働者の利益へ

    –権力発動の動機:• 善意?• 資本主義維持のため

  • グローバル化=新・帝国主義1. 植民地を持たない

    2. 全面戦争を避ける

    3. 国際協調範囲内での自国要求のつきつけ

  • 国民国家の誕生• 国境はいつからできた?

  • 帝国主義を支える国民国家nation state

    • フランス革命 1789年1. 男性普通選挙2. 徴兵制

    国民・民族が国家を作る

  • 国民の作り方• 二つの方法

    1. 原初主義:言語、血筋、地域、経済生活、宗教、文化的共通性などの実体を根拠

    2. 道具主義:国家が民衆を統治するための道具として創造

  • 想像の共同体Imagined Communities• ベネディクト・アンダーソン• 道具主義:創出されたもの:

    –標準語の確立と使用の義務付←出版資本主義• 公定ナショナリズム:権力層が、政治力を使い「国民」を創出–危険性:統治者は、国民の代表として、国民のために統治。失敗すると、国民からは同胞に対する裏切り行為と糾弾

  • 民族主義運動が民族を生む• アーネスト・ゲルナー• 原初主義:産業化により流動化した人々のなかに生まれていく同質性→外部要因により内的にまとまる運動

    • 四つの誤解(1)ナショナリズムは自然で自明であり、自己発生的(2) ナショナリズムは観念の産物だが、不可欠

    →近代特有の現象で消去不可能(3) 階級(労働者)による統治(4) 元型(先祖の血や国土)の力の現れ

  • エトニ(文化的共同体)という核

    • アントニー・D・スミス• 原初主義:エトニとの連続性:

    –共通の祖先・歴史・文化をもち、ある特定の領域との結びつきをもち、内部での連帯感をもつ、名前をもった人間集団

    – 人々の感情に訴える、詩的・道徳的な物語としての歴史

  • 民族主義は殺戮を生む• 「ひとつの島にふたつの異なる態度があったのです。すなわち、フランスでイギリス国王と帝国のために戦い、死をも辞さないアイルランド人がいる一方で、ダブリンで国王と帝国に対して死ぬ気で戦いを挑んだアイルランド人がいたのでした。」

    – 『イギリスの歴史【帝国の衝撃】』

  • 啓蒙思想と宗教• 啓蒙思想:フランス革命期

    –理性と科学技術とに頼ることで、人間は理想的な社会をつくることができる。

    • 神なしに、世界は進歩する• 心のなかの絶対者の位置:民族国家

    –宗教の相対化

    叡智の元にある諸宗教

  • 啓蒙思想と宗教• 宗教の衰退と勃興

    –心のなかの絶対者:神 or 理性

    トーマス・ハックスリー真理に導かれる宗教

  • 無信仰へ流れる啓蒙• 「嗚呼信仰なき国民、嗚呼確信なき国民、嗚呼方針なき国民、嗚呼勇断なき国民、富士山よ、恥よ、我等は漂流の民と化しぬ」

    内村鑑三「時勢の観察」

    民族主義への訴え→民族=信仰心の民(キリスト教徒である必要はない)

    →宗教への回帰

  • グローバル化:資本主義・民族主義・無信仰• 資本主義:

    – 人間の均一性:• 労働=商品化=金銭に換算• 金銭増殖が自己目的化

    – 超越的なもの(「目に見えない世界」)を忘れる

    • 民族主義:– 超越性を埋める、自己同一性の基盤

    宗教=不要・無信仰

  • 民族主義

    価値:見えるもの

    グローバル資本主義

  • 宗教>社会>政治>経済• 「経済の背後に政治あり、政治の背後に社会あり、社会の背後に道徳あり、道徳の背後に、宗教あり。宗教は始めにして経済は終わりなり。宗教の結果はついに経済において顕わる。隆興しかり、敗滅またしかり」(内村鑑三)

  • 生活世界の四大基盤

    経済

    資本・労働力

    政治帝国主義

    社会民族主義

    宗教

    複数共存

    人種差別の徹底化

    身分差別の解消

    教派差別の解消

    貧富差別の解消

  • 参考文献• 佐藤優 (2015) 世界史の極意. NHK出版.• Anderson, B. (2007) 定本想像の共同体.白石隆, 白石さや訳. 工房早山.

    • 亀井俊介 (1977) 内村鑑三. 中公新書

  • 経済:貧富差を政治的に解消• 宗教の衰退と勃興

    –心のなかの絶対者:理性

    プロテスタント

    「理性を解放したいとする気持ちの痕跡はあるが、そこに新たに見いだされるものはせいぜい、主人を変えてみてはという申し出だ。知性は、教皇制の奴隷から、聖書の奴婢となる運命あった。」(トーマス・ハックスリー)

  • 啓蒙思想と宗教• 宗教の衰退と勃興

    –心のなかの絶対者:神

    • 従来と異なった教義• (1)宗教を復興• (2)哲学の誤りを正す• 資本主義を補完する個人の意図的慈善

  • 経済:資本家の意図的慈善

    WedgewoodCadbury

    越境する宗教とその可能性政治・統治権力:国民の作り方想像の共同体Imagined Communitiesethine(文化的共同体)という核グローバル化:�資本主義 vs. 民族主義グローバル化資本主義 vs. �           自国優越民族主義勝者一人勝ち国体を護持資本主義の土台にのる民族主義宗教を掘り崩す資本主義グローバル資本主義     � vs. 自国優越民族主義無宗教の啓蒙思想啓蒙思想と宗教宗教>社会>政治>経済無信仰へ流れる啓蒙資本主義と民族主義の共在資本主義と民族主義の共在資本主義と民族主義の共在Brexit議会分裂Trump: America firstアメリカ国民の分裂宗教の支え資本主義と民族主義の共在スライド番号 25スライド番号 26グローバル資本主義「<生きる意味>が見えない」という病「他者の欲求」を生きる社会スライド番号 30スライド番号 31消えつつある宗教参考文献スライド番号 34内村の生きた時代帝国主義グローバル化≒帝国主義携帯☎:グローバル化=帝国主義資本 vs 国家グローバル化=新・帝国主義国民国家の誕生帝国主義を支える国民国家nation state国民の作り方想像の共同体Imagined Communities民族主義運動が民族を生むエトニ(文化的共同体)という核民族主義は殺戮を生む啓蒙思想と宗教啓蒙思想と宗教無信仰へ流れる啓蒙グローバル化:�資本主義・民族主義・無信仰スライド番号 52スライド番号 53宗教>社会>政治>経済生活世界の四大基盤参考文献経済:貧富差を政治的に解消啓蒙思想と宗教経済:資本家の意図的慈善