スティーブ・ジョブズ...

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スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション

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スティーブ・ジョブズ

驚異のイノベーション

◆目次

はじめに �世界は多くのジョブズ

︱スティーブ・ジョブズを必要としている 

︱1

第1章 

ジョブズならどうするだろうか? 

︱11

法則1

大好きなことをする 

︱22

第2章 

自分の心に従う 

︱11

第3章 

キャリアをシンク・ディファレント 

︱11

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目次

法則2�

宇宙に衝撃を与える 

︱22

第4章 

エバンジェリストを奮いたたせる 

︱11

第5章 

ビジョンをシンク・ディファレント 

︱11

法則3�頭に活を入れる 

︱22

第6章 

新しい体験を探しだす 

︱11

第7章 

考え方をシンク・ディファレント 

︱11

法則4�

製品を売るな。夢を売れ。 

︱22

第8章 

その異常こそ天賦の表れ 

︱11

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第9章 

顧客をシンク・ディファレント 

︱11

法則5�

1000ものことにノーと言う 

︱22

第10章 

洗練を突きつめると簡潔になる 

︱11

第11章 

デザインをシンク・ディファレント 

︱11

法則6�

めちゃくちゃすごい体験をつくる 

︱22

第12章 

我々はみなさんの成長をお手伝いするためにいるのです 

︱11

第13章 

ブランドをシンク・ディファレント 

︱11

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目次

法則7�

メッセージの名人になる 

︱22

第14章 

企業社会最高の語り部 

︱11

第15章 

ストーリーをシンク・ディファレント 

︱11

最後にもうひとつ…… 

まぬけに足を引っぱられるな 

︱1

謝辞 

︱1

訳者あとがき 

︱1

解説 

︱1

参考文献 

︱1

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はじめに

世界は多くのジョブズ

︱スティーブ・ジョブズを必要としている

 

ニューヨークタイムズ紙コラムニストのトーマス・フリードマンは、バラク・オバマ大統領

への公開質問状で、「イノベーションと起業家精神に対するあこがれを、天才だけでなく、何

百万ものアメリカの子どもたちに取りもどしてもらう必要がある[1]」と

、たくさんのスティーブ・

ジョブズを生みだすべきだと提案した。条件のよい雇ジョブズ用

を増やしたければ、イノベーションを

進める気になる環境、イノベーションが成功する環境をつくる必要がある。アップルの共同創

設者でCEO(最高経営責任者)のスティーブ・ジョブズがもっと大勢、必要だと言ってもい

い。この10年でもっとも画期的な機器だと言われるiPhoneなどにより、2010年、アッ

プルの市場価値はマイクロソフトを抜いてテクノロジー企業のトップとなった。すごい成果

だ。特に、実家の空き部屋でスタートした企業がここまで成長したのは驚きだ。

 

21世紀に入って10年がすぎた今、米国はさまざまな問題に直面している。何百万もの人々が

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はじめに  世界は多くのジョブズ──スティーブ・ジョブズを必要としている

職や家を失った。米国人の6人にひとりは、政府から食料切符をもらってしのいでいる。公教

育は抜本的な改革が必要だし、企業や個人事業者は生き残りに必死の苦労をしている。タイム

誌も、「同時多発テロに始まり世界的な金融危機に終わった21世紀最初の10年間は、第二次世

界大戦後、最低最悪の10年として記憶されるだろう」など終わったことしか喜ぶべきものがな

かったとして、この10年間を「地獄の10年」と表現した[2]。

 

不況は世界的で、経済基盤が虚弱だったり、インフラストラクチャーが不足していたり、環

境問題や信じられないほどの貧困に苦しんだりしている国々にもその影響が広がっている。こ

の状況を次の10年で大きく改善するためには、創造的で画期的なアイデア、今まで誰も考えた

ことのないアイデアが必要となるだろう。大事なのはイノベーションを継続することだとマイ

クロソフトの共同創設者、ビル・ゲイツも言う。

「イノベーションのおかげで、200年前と比べて私たちの寿命は倍以上に伸びましたし、エ

ネルギー価格は低下し、食料は豊富になりました。医療やエネルギー、食料といった面のイノ

ベーションを継続しなかった場合、10年後の世界は暗いものにならざるをえないと思います[3]」。

 

これからの10年間、企業も個人も、創造性とイノベーションを2本の柱としてゆく必要があ

る。できなければ進歩は止まる。進歩が不可欠な時代だというのに。

 

ある意味、救いなのは、不景気なときほどイノベーションが生まれやすいことだ。IBMの

ゼネラルマネージャー、アダリオ・サンチェスもそう指摘している。

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「頭を働かせるしかない状況、少ないものから多くの成果を出さなければならない状況に追い

込まれたとき、いつもの自分ではありえないほどの創造性やイノベーションが生まれるもので

す。お金を増やさなければイノベーションを増やせないということはありません。問題は、お

金をどう使うのかですから[4]」

 

経済がきびしい時期に優れたイノベーションが登場することは歴史が証明している。コンサ

ルティング会社のブーズ・アンド・カンパニーが2009年に出した報告書にも、こう書かれ

ていた

︱「テレビ、コピー、電気シェーバー、FMラジオなど、さまざまな進歩が大恐慌の

時期に実現された。たとえばデュポン社では1937年、売上の40%を1930年以降に発売

した製品が占めていたが、そのような企業が大恐慌を生きのびるためにイノベーションを追求

した結果、利益ある成長をその後何十年間も続けられる基盤が生まれたのだ[5]」。

言い換えると、

厳しい時代が伝説的なイノベーターをはぐくむのだ。困難に直面したときこそ、イノベーター

は本領を発揮し、大胆な行動を起こしてチャンスをつかみ、新たな価値を生みだす。

 

ストレスや対立、必要性は、「新しい方法をみつけろ」と自然が語りかける言葉なのかもし

れない。今後、ワインの世界で有名になると目されているカリフォルニア州パソロブレスを訪

れたとき、とあるワイナリーのバーに石が飾ってあるのに驚いた。人気のジンファンデルをつ

いでいる女性に「どうして石が?」とたずねてみた。

「このあたりの土地は、そういう石灰石でできているんです。このように石が多い土地では、

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はじめに  世界は多くのジョブズ──スティーブ・ジョブズを必要としている

水を得るため、がんばって根をはる必要があります。その結果、香りの高いブドウになるので

す。いいワインをつくるためには、まず、いいブドウが必要ですからね」

 

ストレスなどないほうが快適でよいが、ブドウと同じことがビジネスの世界でも起きている

と思う。ここ2年ほど、私の手元には、失職をチャンスととらえ、自分の情熱にしたがって新

しく画期的なものをつくりたいと書かれた電子メールが男性からも女性からもたくさん届いて

いる。ウォールストリートジャーナル紙によると、就職難に直面し、企業への就職をあきらめ

て起業の道を選ぶ新卒大学生が増えているらしい。この年代は2000年世代と呼ばれ、わが

ままで軽率、衝動的だとされることが多いが、その彼らが重要なスタートアップを驚くほど次々

と立ちあげているのだ。10年後、この「地獄の10年」とは、実は、新しい製品やサービス、手

法、アイデアが数えきれないほど生みだされた期間だったと認識が変わることさえあるかもし

れない。ガレージ、キュービクル、ラボ、教室……世界のありとあらゆる場所で、多くのイノ

ベーターがテクノロジーや医療、科学、環境などにブレークスルーをもたらそうとがんばって

いる。

「我々にとっては戦うことが救いなのかもしれない」とリック・ハンプソンがUSAトゥデイ

紙に書いている。「米国人は、最悪の事態に直面していると考えては、事態の打開にむけて努

力する傾向がある。1957年のスプートニクもそうだったし、1975年のサイゴン陥落も、

1980年代に日本が経済的に台頭してきたときもそうだった。よい時代は終わったと、米国

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人はいつもそう思っていたように感じる……そして、がけっぷちに立たされていると思うがゆ

えに、がけから落ちずにすんでいるのではないだろうか。我々は問題を過小評価することがな

く、過剰に反応するのだ。これこそ、我々が競争の世界で成功している鍵なのだと思う[6]」。

 

停滞から国を救うためにはイノベーションが必要だ。深刻な状況の国や会社、そしてキャリ

アを救い、元気にするためには、創造的で大胆、ビッグなアイデアが必要だ。その道しるべを

求めるとしたら、フォーチュン誌が「10年間で最高のCEO」に選んだスティーブ・ジョブズ

が最高だろう。

 

前著『スティーブ・ジョブズ 

驚異のプレゼン

︱人々を惹きつける18の法則』(日経BP社)

の原著は、2009年10月にマグロウヒル社から発売された。この本は、世界各地でベストセ

ラーとなったが、その過程がおもしろかった。ロンダ・バーンの『ザ・シークレット』(角川

書店)やスティーブン・R・コヴィーの『7つの習慣

︱成功には原則があった!』(キング

ベアー出版)といった有名な自己啓発本と並ぶものとしてベストセラーの仲間入りをしたのだ。

書評には、この本を読んだ結果、仕事やキャリアに対するアプローチが変わったという話が書

かれていた。Javaワールド誌には、プレゼンテーションのスキルを高めたいと思って買っ

たが、ITマネージャーやCIO(最高情報責任者)がリーダーとして成長するために必要な

知恵が詰まっていたという記事も掲載された。このようなフィードバックが返ってきたこと

は、私にとって大きな喜びだった。前著は、プレゼンテーションにとどまらず、成功のツール

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はじめに  世界は多くのジョブズ──スティーブ・ジョブズを必要としている

を探していた人々に大きな影響を与えたわけだ。本書は前著と互いに補完する関係にある。本

書はコミュニケーションの重要性を大きく取りあげているが(まわりの人を巻き込めなければ

イノベーションに意味はない)、その内容は、むしろ、スティーブ・ジョブズがこれまでガイ

ドとして活用してきた法則の徹底的な分析が中心である。この分析結果を活用すれば、仕事で

も人生でも、自分の可能性を最大限に発揮できるようになるはずだ。

 

スティーブ・ジョブズを世界有数のイノベーターとした法則を検討する前に、まず、イノベー

ションとは何かということをあきらかにしよう。あらゆる人に共通する定義、CEOやマネー

ジャー、社員、研究員、教師、アントレプレナー、あるいは学生など、どのような肩書きの人

にも共通する定義だ。「イノベーションとはものごとの新しい進め方で、よい方向の変化をも

たらすもの」である。暮らしをよくするものと言ってもいいだろう。

 

経済学者のタパン・ムンローも、こう指摘している。

「経済的な繁栄の維持にイノベーションが一番であることは多くの人が認めるところです。イ

ノベーションは生産性を高めてくれますし、生産性が高くなれば収入が増え、利益が増え、雇

用が拡大し、新製品が登場し、経済が発展する可能性が高くなります。世界経済へのカーテン

を開ければ、日の光がさし込みます。すべてが雲に覆われているわけではないのです。現実の

問題に対処し、解決してくれる優れたアイデアを発展させ、多くの人が望む製品やサービスに

仕上げる必要があります[7]」

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ゲイツやフリードマンと同じようにムンローも、今後はイノベーションをスローガンにすべ

きだと主張する。

「イノベーションというのは幅広いコンセプトです。イノベーションには小文字のi4

がらみと

大文字のI4

がらみのものがあります。インターネットや内燃機関、バーコードをつくるなどは、

いずれも、大文字のI4

がらみです。タイプが異なるイノベーションもあります。ちょっとした

改良のくり返しで暮らしやすくする、小さな事業の成長を助ける、会社の製品や生産性を高め

るといったイノベーションです[8]」

 

このように小さなイノベーションは毎日どこかで生まれ、人々の暮らしを助けている。

「いつもどおりは不幸を招くレシピだ」という意見もある(カーティス・カールソン『イノベー

ション』(Innovation

))。「ビジネスの世界は今、大きく変化しており、その状況に適応・繁栄

するためには今までのようなトレーニングでは不十分で、新しいイノベーションのスキルも身

につける必要がある。顧客価値を生みだす方法がわかれば、どのような仕事でも成功のチャン

スは大きくなるし、職業人として最後まで役に立つことが可能になる。逆にわからなければ、

過去の人として捨てられるおそれがある[9]」。

航空宇宙の学位を持っていたり金融アナリストや

会計士、保険の専門家などでも話は同じで、新しい世界にあわせて専門家としての知識や経験

を変化させてゆかなければならないというのがカールソンの意見だ。適応するためには、目の

前にある問題や今後おきるかもしれない問題を今までにない創造的なやり方で検討する必要が

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はじめに  世界は多くのジョブズ──スティーブ・ジョブズを必要としている

ある。

 

創造には努力が必要だ。「イノベーションとは、何かをしたら後はゆっくり待つだけという

ようなものではありません」とムンローも指摘する。あらゆる人が自分の担当部分を改善する

努力を続けなければイノベーションは生まれない。「経済の予測をするコンサルティング事業

を例に考えてみましょう。画期的な存在になるため、私なら、自分が持つ一番の強みが生きる

サービスを提供しようと考えます。それに似たサービスをほかに5社が提供していたなら、優

れた顧客サービスを提供する、分析の質を高める、独自性を高める、優れたコミュニケーショ

ンを提供する、明快なコミュニケーションを提供する、顧客が意思決定に利用できる使いやす

い資料を提供するといった形で差別化します」。そして、差別化に必要なのは、「自分が何をす

れば、顧客は仕事が進めやすくなるだろうか」と自問することだとムンローは言う。「その答

えがわかれば、それがイノベーションなのです][[[

」。

 

世界的な金融危機を引き起こしたやり方をくり返せば、当然、同じ結果がもたらされるだろ

う。やり方を変え、DNAにイノベーションを組み込むためには、「シンク・ディファレント」

というアップルの流儀を事業やキャリア、人生に適用する必要がある。製品が買い手を興奮さ

せられないのであれば、提供するものについて今までとは異なる考え方をしなければならない。

売上が落ちているのであれば、顧客がよい体験をできるように今までとは異なる考え方をしな

ければならない。21世紀最初の10年、職を転々としてきたのであれば、キャリアに対する考え

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方を変えなければならない。

 

スティーブ・ジョブズ流の考え方ができるようになれば、実業界だけでなく、教育も変わる

はずだ。『金持ち父さん貧乏父さん』(筑摩書房)を書いたロバート・キヨサキも、「米国の教

育には多くのイノベーションが必要だ」と考えている。

「米国の学校は、ヘンリー・フォードやスティーブ・ジョブズといったアントレプレナーが形

づくったビジネスの世界を参考にする必要がある。彼らは道しるべを示してくれたのだ。教育

の世界にはイノベーションを注入する必要があるが、それこそ、アントレプレナーが得意とす

ることだからだ。教育制度も、社員になる人向けとアントレプレナーになる人向けの2種類を

用意すべきだ……社員に適した人間を育てる教育とアントレプレナーに適した人間を育てる教

育は大きく異なる][[[

 

本書では、学界という象牙の塔で展開される複雑で難解なイノベーション理論は取りあげな

い。とある経済学者も、それがいいと賛同してくれた。

「イノベーションについて書かれた博士論文は、その多くが複雑でとても難解ですが、それは

一般向けに書かれていないからです。そのような論文は、博士に読ませるために博士が書いて

います。理論がなまくらなほど、仲間内では評価されたりすることも多いんですよ。私が生き

てきた世界はそういうところです」

 

世界的な不況から回復しなければならない今、お遊びの時間はない。今、必要なのは、我々

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はじめに  世界は多くのジョブズ──スティーブ・ジョブズを必要としている

の内に潜む創造性を解放し、その力をぞんぶんに使えるようにするツールや法則だ。本書では、

シンプルで価値があり、かつ、どのような仕事の人にも使える法則を紹介する。CEOからマ

ネージャー、アントレプレナー、コンサルタント、クリエイティブ系のプロフェッショナル、

個人事業主、教師、医師、弁護士、不動産業者、専業主婦、そして、自分の研究で人々の状況

を改善したいと心から願っていれば博士であっても活用できる。

 

イノベーションは発明と混同されることが多い。このふたつは、互いに補完する関係にある

が大きく異なるものだ。発明とは、新しい製品やプロセスの設計・開発・構築を意味する。イ

ノベーションは創造的なアイデアからスタートし、最終的に、発明やサービス、プロセス、手

法などに至る。発明家になれる人は限られているが、イノベーターには誰でもなれる。店を訪

れた人に何か買ってもらうアイデアを思いつけば、その人はイノベーターだ。会社を経営して

おり、社員のやる気を引きだす新しい方法を実現すれば、その人もイノベーターだ。転職に嫌

気がさし、キャリアを大きく変えた人

︱その人もイノベーターだ。地域の学校を活性化する

方法を思いついた専業主婦もイノベーターだ。

 

イノベーションは、すばらしい人生を送るために普通の人が日々、行うことだ。本書では、

スティーブ・ジョブズ流のイノベーションでビジネスやコミュニティー、人生を変えている

人々の例を数多く紹介する。

 

イノベーションを検討すると、頭をさえた状態に保つことができる。最近の研究によると、

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年をとったとき、知識は失われるのではなくニューロンのはざまで迷子になるだけなのだそう

だ。同時に、脳が全体像をとらえる力は強くなる。だから、さまざまなものにつながりをつけ

る作業を続けると脳がよく働くようになるらしい。シナプスに刺激を与えるためには、自分と

違うタイプの人間やアイデアに接し、自分の考え方をゆさぶってもらうのがよいのだ。19歳の

とき、緑におおわれたカリフォルニアを離れ、ダニエル・コトケとふたり、インドを旅して歩

いたスティーブ・ジョブズの選択は的確だったのかもしれない。この旅の経験からジョブズ

は、エキゾチックな国、インドについて持っていたさまざまな幻想に疑問を抱くようになる。

「世界に対する貢献は、カール・マルクスと聖者ニーム・カロリ・ババを合わせたよりトーマ

ス・エジソンのほうが多いんじゃないかと考えるようになったのは、たぶん、あのころなんじゃ

ないかと思う][[[

 

インドへの旅で悟りを開けなかったジョブズは、自分の道を突きすすむと心に決めてカリ

フォルニア州ロスアルトスの実家に戻った。それから30年間、ジョブズは仕事についても私生

活についても驚くほどの乱高下を経験する。成功があった。失敗があった。償いがあった。そ

して、人生最大の問いに対する解答を得ようとインドまで旅した男は命にかかわる大病を2度

も経験し、2004年、非凡な知恵を得た。

「人生を左右する分かれ道を選ぶとき一番頼りになるのは、いつか死ぬ身だと知っていること

だと私は思います][[[

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はじめに  世界は多くのジョブズ──スティーブ・ジョブズを必要としている

 

トーマス・フリードマンが考えるように、もし、スティーブ・ジョブズのようなリーダーが

もっとたくさん必要とされているのであれば、お手本として「スティーブ」以上の存在はない。

ジョブズが表に出てくることは珍しいが、ヒントは、すさまじいばかりの成功に至る道のあち

こちに落ちている。そのヒントをよく見てみればいいのだ。