マイクロ波インピーダンス直視装置 - nict...444 は,第2図のように入力と出...

10
Vol. 7 Nos. 31/32 電波研究所季報 September 1961 研究 UDC621.317.75/.77:621.385.6.029.65 マイクロ波インピーダンス直視装置 岡村総吾* 大越孝敬林 新井益夫木材 AUTOMATICSMITH-CHARTTRACERFORX-BAND By SogoOKAMURA,TakanoriOHKOSIandMasuoARAI Anautom ticSmith charttracer for X-bandhas beendeveloped. It consistsof a ferrite mo:iulator,sixmagic-T sand two microwavephase-sensitivedete:::tors. Thephase-s sitivedete- ctors find out the phase as well as the magnitude of the reflected wave from the unknownimpedance. Herearedescribedtheprinciple,detailsofconstruction,characteristicsand some applications ofthistracer are described. As an application ofthis tracer,the locus of the electronic-admittance ofreflexklystron 2K25 isvisualize:iontheSmith-chartonanoscilloscope. A photographofthe admittancelo::usisshown. Thislo::usiscomparedwithatheoretical curvecalculatedthrough thesimplesttheoryontheelectricadmittanceofreflexklystrons. 1. 緒言 マイクロ波のインピーダンス測定では:,測定すべきイ ンピーダンス量の大小や,測定精度の要求から,種々の 測定法が考案されているが,導波管定在波検出器を用い る方法が最も一般的であり,かつ基本的である。しかし 製造工場でのマイクロ波機器のインピーダンス測定ある いはインピーダンス整合など,速やかにそして・簡単にデ ータを得る必要がある場合もある。一般に精度はあまり 要求されないで,むしろ測定の迅速性が問題となるとき, インピーダンス直視装置が有用である。 以上の理由から現在まで数多くのi 直視装置に関する研 究がなされている。筆者らは 2 年ほど前から,直視装置 の研究∞を進めてし、たが,今回この報告のような比較的 小型で,かつ簡易なものを開発することができた。 2. 原理 この直視装置は,マイクロ波同期検出器を用いて,未 *超高局波研究室料東京大学工学部料水機間諜 443 1 図直視装置D構成 2 7 ェライト変調器 知インピーダンスからの反射波の位相検出を行なう方式 のものである。第 1 図は直視装置の原理図である。まず クライストロン電源からのマイクロ波は, A点におし、て 二分される。その一半の導波管〔工)を通るマイクロ波

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Vol. 7 Nos. 31/32 電波研究所季報 September 1961

研究

UDC 621.317.75/.77: 621.385.6.029.65

マイクロ波インピーダンス直視装置

岡村総吾* 大越孝敬林 新井益夫木材

AUTOMATIC SMITH-CHART TRACER FOR X-BAND

By

Sogo OKAMURA, Takanori OHKOSI and Masuo ARAI

An autom且ticSmith司charttracer for X-band has been developed. It consists of a ferrite

mo:iulator, six magic-T’s and two microwave phase-sensitive dete:::tors. The phase-s阻 sitivedete-

ctors find out the phase as well as the magnitude of the reflected wave from the unknown impedance.

Here are described the principle, details of construction, characteristics and some applications

of this tracer are described. As an application of this tracer, the locus of the electronic-admittance

of reflex klystron 2K25 is visualize:i on the Smith-chart on an oscilloscope. A photograph of the

admittance lo::us is shown. This lo::us is compared with a theoretical curve calculated through

the simplest theory on the electric admittance of reflex klystrons.

1. 緒 言

マイクロ波のインピーダンス測定では:,測定すべきイ

ンピーダンス量の大小や,測定精度の要求から,種々の

測定法が考案されているが,導波管定在波検出器を用い

る方法が最も一般的であり,かつ基本的である。しかし

製造工場でのマイクロ波機器のインピーダンス測定ある

いはインピーダンス整合など,速やかにそして・簡単にデ

ータを得る必要がある場合もある。一般に精度はあまり

要求されないで,むしろ測定の迅速性が問題となるとき,

インピーダンス直視装置が有用である。

以上の理由から現在まで数多くのi直視装置に関する研

究がなされている。筆者らは2年ほど前から,直視装置

の研究∞を進めてし、たが,今回この報告のような比較的

小型で,かつ簡易なものを開発することができた。

2. 原理

この直視装置は,マイクロ波同期検出器を用いて,未

*超高局波研究室料東京大学工学部料水機間諜

443

第1図直視装置D構成

第 2図 7ェライト変調器

知インピーダンスからの反射波の位相検出を行なう方式

のものである。第1図は直視装置の原理図である。まず

クライストロン電源からのマイクロ波は, A点におし、て

二分される。その一半の導波管〔工)を通るマイクロ波

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444

は,第2図のように入力と出

力の偏波面を直角にしたフエ

ライト変調器によって変調を

受ける。

この場合7 イクロ波入力お

よびフエライト変調器の変調

電流をそれぞれ

A cos wt, D cos pt 第3図回転角 8 とマイ

クロ波出力Eautとの関係

とすると,偏波面の回転角。は

。=問Dcos pt (1)

であるから,第3図のようにマイクロ波出力 Eautは

E郎 t=Acos wt・sin(mDcospt)

ちAcos wt・mDcospt

=q(t)・coswt (2)

となる。ただし

。《1, q(t)=mADcospt (3)

としTこ。

(2)式で表わされるマイクロ波は,マ少ック T(c点〉

に入り二分され,一半が未知インピーダンス去(反射係

数三=lrleiりにより反射されてマジック T(c点〉の E

アーム(図で上向きのアーム〉に現われる。したがって

その出力 Erは次式のようになる。

ι=呼Lcos(w叫) (4)

この出力は D 点で再び等分され,混合器〈工), (II)に

加えられる。

一方導波管(II)を通るマイクロ波は同期信号として

使われる。これは移相器(工〉で適当な移相量が与えら

れ, B点において更に二分される。このうち導波管(TII)

そ通る波は,位相器(II)により更に π/2だけその位相

が変えられ,また導波管(IV)を通る波はそのまま,各

々同期信号

互い=Scos (wt-¢') 1

E82=Ssin(wt一件つ ) (5)

として混合器〈工), (II)に加えられる。( 5)式中のグ

は,インピーダンス測定の2基準面を短絡した場合,すな

わち〔4)式が

ι={q(t)coswt} 2

である場合に,混合クリスタルの位置において反射波信

電波研究所季報

号と同期信号 E81との間にある位相差である。いま混合

器(工〉について考える。鉱石の検波特性を自乗特性と

すると,混合器出力 eiは

e1 =(E81 +Er)2

=|立与cos(曲川)+Scos(wt-<;b1)lL2v2 J

=雫立[山叫叫〉]

rq(( S「 1方!fLcos(2wt+ゆーゆっ+cos(仰)j

+子[i+cos伽 一 的 ]

したがって引の低周波交流成分げは

e作秀作印刷である。ただし

rq(t) 一一つ=《S2../2

とした。同様に混合標(II)については

e2=(1九2+Er)2

(6)

く7)

(8)

=[鵠ω 川 -Ssin(wtイ(9)

したがって低周波交流成分ザは

e2'=呼主 ω (10)

となる。 et'出力およびザ出力を CRTの水平,垂直

軸に加えると,第4図(a)の線分PQのような映像が得

られる。ことでグ=Oになるように移相器(工〉を調整

しておくものとすれば,

et'の振幅民 rcos¢, e2'の振幅 αrsin世 (11)

であるから,第4図(a)の P点, Q点のいずれかが未

知インピーダンス去の複素反射係数会に対応する。そこ

で更に低周波変調信号 Dcosρtから, それと同じくり

返し周波数をもっパルス信号を得て CRTに輝度変調を

第4図 CRT上白映像

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Vol. 7 Nos. 31/32 September 1961

かけ' ~安光商上の不要な映像を消せば,第4 図(b)のよ

うにrに対応した位置 (P点〉にスポ y トを生じ3 スミ

ス図表上にインピーダンス軌跡を直視できる。

3. 試作および実験結果

前節の原理にしたがって第5図のような直視装置を試

作した。

3.1. 直視装置構成各部品の性能

第5図の直視装置は第6区|のよ うな各部品から成り立

っている。これら各部品の性能は次に示すとおりである。

(1) 無反射端〈ム,L2,La,ム, L5,L6)

本直視装置は6個の無反射綿を使用している。これら

試作した無反射の V.S.W.R.および抵抗板の形状は第

1表および第7図に示した。マツァクTNI3に付加され

ている未知インピータンス比較用の標準無反射端として

は V.S.W.R.の比較的良好な ん をj自いた。

(2) マツ J T (MJ, M2, M,, NI,, M5, M6)

マツック TのE商, H面よりみた Vs.w. R およ

びE面,H面聞の isolationは第2表のとおりである。た

だし H面から V.S.W.R.を測定する場合は, 他の三百

には無反射端を付加する。 E商からの場合も同じである。

マジック帯号 Aイt

1.02

E耐I 1. 27

isolation

本新型マジックT

445

v.s.w.R. J i.16 J i.06 J 1.04 J 1.01 J 1.06 J 1.13

容反 J号J L, J L, J r, J ム ILs Iム

L1. L,, L,, L,, Ls. L,

M.,M,,M「,, M.,Ms.Ms

F,, F,

MIX,, MIX,

u,, u, A,, A,

C.R. T プラク Y'l'.fォνロユコープ

o.s.c,低周波(llil¥l

無反射地

マジッタ T

位相調盤器

混合器

lji向'I'.¥'

トランジ7-jl低周波増幅器

フエライト変澗招

o.s.c,マイクロi!l:¥TI富l

p パルス発生部

第6図直視装ii'.i'.の構成図

第2表マジック T 申 VS.W.R.

M, M,本 M,本 Ms M,•

I 910;JMc 1.0 1.03 9400 1. 02 9400 1. 01 1.11 9400 1.02

9700 1. 05 9700 1. 07 9700 1.06

1.08

1.26 9400 1. 03 9400 1.01 1.16 9,100 1.01

9700 1. 05 9700 1.08 9700 1.04

I 40 dB以上 l叩以上|

立l5図 マイクロi止イソピーダγ兵直視主主位①タライストロ Yl(;i!i;l、②パッド減荻:l:l①移杭lilllCI )①7エライト変調烈 @位相Rf}([[) c未知イシピーダYス(可愛、短絡板〉⑦供拭用反射主lクライストロ" 2K25 ①補助トヲ γ ジスタ低周波WI服部①プラ~ >'1'.rォνロスコープ eパルス発生l*i

@低周波発振器 ⑬7エヲイ F励磁m;i:;力増幅器

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446

単位’mm 「-25一一寸

////|予市 l

(3)位棺調整器 (Fi.FD

位相器F2はMIX(II)に到達する同期信号ふと,

MIX(工〉の同期信号S1の位相を π/2だけ異なわせるも

のである。第8図(b)は凡の位相特性である。

なお F2のみでは Si.S2の位相差を ir/2とすること

ができず,補助固定位相器 F2’(移相量約 90つをカス

ケードに接続した。これは F2の目盛りが零のとき(位

相変化量が最小のとき〉同期信号 S1とS2の位相関係

が第9図(a)の S1,S2のようであったものと思われる。

第8図の位相特性より, F2の位相可変範囲は O~120。

12oh可骨醐100

80 梧4日

~60

40

。。

(il)!P.1::1:回路

f 9.400附

20 40 60 BO 100 120 140 邑盛り

(bl世相時特

第B図位相器 (J<i)の位相特性

S2

ta> (b)

第9図 F,. Fa’による s.白位相可変範囲

第10図測定回路

電波研究所季報

である。したがって問図(a)の S’zまでしか調整できず 3

Si. S2の位相を π/2とすることができない。そこで補

助固定位相器凡’(大路 90つを付加すると,同図(b)

のようにすることができる。また前記の移相特性を測定

するには,第8図(a)のように接続し,被測定移相器を

加減してs.w.計上の定在波パターンを移動させる。そ

の移動距離をs.w.計で測定し,これから移相角8を求

めれば, 0/2が求める移相量(度)となる。

(4)単向導波管(U1,U2)

第10図のような測定回路で,単向導波管の順方向と逆

方向の相対減衰量を測定した。すなわち鉱石検波器(V.

S.W.R. 1.1以下〉に対し,単向導波管をl噴方向あるい

は逆方向に接続した場合,検流計のフレが同ーの大きさ

になるように標準減衰器を加減し,このときの減衰器の

値から求めた。測定結果は第3表のとおりである。また

島田理化工業の社内規格によると,これら単向導波管の

挿入損失は ldB以下, V.S.W.R. 1.1以下である。

第3表単向噂波管相対減衰度の測定結果

単向導波管

u, u.

(5)低周波増幅器(A1,A2)

相 対 減 衰 皮

15 dB

20

MIX(工), (II)の低周波出力は微弱であるから,そ

のまま CRTに加えても十分な映像を得ることができな

い。そこで低周波増幅器 Ai,A2を掃入した。 A11A2は

トランクスタ ST-333を用いた低周波2段増幅器で,そ

の回路を第11図に示す。また第12図のような測定回路で

標準 Attを加減して, MIX-低周波増幅器-CRTを含

めた系の直線性をしらべた。さらにv.v.の読みと CRT

上の大きさを比較して低周波増幅器の増幅度をしらベた

結果を第12図(b)に示す。すなわち増幅度は 65.SdB,そ

の直線性は MIXの低周波出力が 0.6mVまで直線性が

保たれている。ただし低周波変調周波数は500c/s,CRT

の偏向感度は 0.26V(実効値)/lOmmであった。

ST-333 L二三

第11図低周波増幅器回路図

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Vol. 7 Nos. 31/32 September 1961 447

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第四図 1000T(4分割〉線輸田イシピーダ"';<.特性20 I邸2

12AU 7 J7 12AU7~

10 IQ26 , ,

PO 2 4 6 8 JO 12 JI v.v.の量豊島 Xtci可V>

(b)直線住

第12図 MIX-低周波増幅穏ーCRTの寵線性等16図パルス発生器の回路

(6) フエライト変調器

本直視装置に用いられたフエライト変調器仰は,

〔i)励磁用コイルを4分割にし,(ii)円形導波管は

アクリル樹脂製で,内面を銀鏡反応したものであるなど,

特に変調周波数を上げるように考慮されたものである。

第13図は励磁電流 (lkc低周波電流〉対回転特性の

測定回路である。すなわち低周波電流出力を加減した場

合,検波器出力が最大になるようにフエライト変調器を

rだけ回転すると,。は求める回転角である。ただし

低周波変調電流は,高周波抵抗(R)とそ

の両端における電圧降下を真空管電圧計

(V.V.)で測定して求めた。この測定結果

は第14図に示す。励磁電流を零としても,

約 4。の残留回転角があるのは,プッシュ

プル増幅器の出力側の不平衡により,直流

電流が流れているものと思われる。また低

周波電源出力を増加して低周波励磁電流を

5mA以上にすると,低周波電源ープヅシュ プル増幅

器の直線性がなくなり,変調出力波形に著しい歪みが生

じる。また第15図は4分割励磁コイルのインピーダンス

特性(めである。

これによると 30kcぐらいまでは大略一定のインピー

ダンス特性を示し,この周波数までは十分使用できるは

ずであるが,当初の実験では変調周波数はコイルインピ

ーダンスの極めて少ない領域をとり, l~4kcを用いた。

(7) パルス発生器

CRT蛍光面上に第4図のよ

うなスポット状の映像を得るた

めに,低周波信号と同じくり返

し周波数をもっ正のパルスで,

CRT に輝度変調を加えた。パ

ルス発生器の回路は第16図に示

した。

, ,

/ ν

I

/ /

/ 回----e-圃民7-

一--ヤ・・・・・・ーーーー一@ーーーー

マ固

p

n

u

r

内d

ω3.2. 実験結果

前述の性能をもっ各部品で組

み立てられた直視装置の精度を

しらべるために,周波数 9,200

~9,500Mc で,未知インピー

ダンスとして可動短絡板を用い,

これを移動したときのインピー

4

2

。D「 I 2 3 4 5 ダンス軌跡を画いた。この直視脇憧電出足 CIRA】

帯14図励磁電流対回転角特性 結果を第17図に示す。通常可変第13図回転特性の測定回路

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448 屯波研究所 季報

O' 短絡J阪の損失は*~視できるから.そのインピー

ダンス軌跡はスミス図表の最外周を移動し,~

円を画くはずである。 第17図, 第18図の直視

結果ではtr円から少しずれているが,この原因

については後述する。また第19図はこれらの直

視結果から,本直視装置の測定精度を, 周波数

をパラメ ーターとして表わしたものである。こ

の図から周波数 9,200~9,500Mc の範囲につ

いて

a. 半径方向の誤差は最大 7.5%, 平均 3%,

b. 位相誤差は最大7。,平均 30

であることがわかった

4. 試作インピーダンス直視装置

についての考察

前節の基1礎実験から,本直視装置の測定誤差の原因お

よび今後周波数掃引を行なう場合の諸問題をしらべた。

色(%ll (Q)ま位百向の'" 筈5

4

2

ー2

-4

-6

-2

-4

(IJ!")

0 45 90 135 ISO 225 270 315 ~)

首H9図 イγピーダンス測定精度

-Y〆

1d

f」

〆-v’

J

一線

L影

・P

内川付

宮l21図 マジック T 内の多虫反射

宮l18図 イソピ-YYス軌跡測定t'i.'.i!・

第17図 イシピーダγニス軌跡直視結果

CJ-9,400 Mc)

4.1. 測定誤差

の原因

ここでは単一

周波数の直視で

問題となる誤差

について考察す

る。

c 1)無反射端

(L3)の残留反射

による誤差

第20図におい

て未知イ ンピー

ダン スの反射係

数をr,んのそ

れをpとする。

もし p=Oなら

Eアー ム出力は

?に対応するが,

PキO であると

Cr-p〕に対応

し誤差を招 く。

この誤差は

CRT上で中心

の移動(ーめ と

なって現われる。

測定の結果によ

;f1,ば, La とし

て使用した無反

射端はvS.W.R

=l. 04, したが

って l.Ol=0.02

で,半径の 2%

180

lQJ J-= 9,200門c。

90

蹴変

F41J ω

糊繍

gぴ

(() fニ Q,400Mc

•90°

18ぴ

(d,J 1 = 9,500 門c

ー← 矧 ttifi 知用液数 33QCf<ートー理店直 ー

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Vol. 7 Nos. 31/32 September 1961

の中心点の移動を来たすことになる。

(2) 多重反射による誤差

第21図の回路中には種々の多重反射があるが,単一周

波のインピーダンスを直視する際,誤差の動因となるも

のは下記のようなものであるが,ここでは簡単のため二

重反射だけを考えて,三重以上の反射はこれに起因する

誤差が微小であると考えて無視した。

まず次の諸量を定義する。

(i) xアーム,却アームに完全な無反射端をつけたと

仮定したとき, Z アームからみた反射係数をんとする。

ただし B面を基準面とし, B面と A面の聞の等価長を

l1とする。

(ii) c面を基準面として, zアームをみた反射係数を

んとする。ただし C面と A面聞の等価長を l2とする。

(iii) D面を基準面として, gアームをみた反射係数を

ぬとする。ただしD面と d面閣の等価長を lsとする。

いま yアームからの入射波を D面において E,とする

と, C面の出力Eoは

品=tE,み-jp(I

+trii2e叫 +i;.んe叫} (12 )

となる。ただしここでマヲック Tはz→w,z z→x,y

勾→z,w と電力を二等分するものとみなした。

(3)条件持ドSが満たされないときの誤差

(6)式において上記の条件が満たされていないと 2P

の成分が混入し,誤差の原因となる。本装置ではそれぞ

れのマヲック Tにより,各電力が二等分されること,

およびフエライト変調器による減衰などを考慮すると,

推定で約一33dB以上の比が得られているものと思う。

(4) その他混合器,低周波増幅器, CRTを含めた系

の直線性,移相器の π/2移相の不完全などが考えられる。

4.2. 周波数を掃引する場合の問題

4.1では直視装置を単一周波数で用いるときの誤差を

考察したが,インピーダンス直視装置はマイクロ波電源

の周波数を掃引し,スミス図表上の周波数軌跡を直視す

るのが本来の目的である。この場合の問題点を挙げると

(1) 移相器〈工), (II)の周波数特性

移相器〈工), (II)の周波数特性は,次のような特性

すなわち可変短絡板が未知インピーダンスの基準面に来

たときび=ーl+jO)で,必要な周波数帯域内の任意の

周波数で (i)混合器〈工〉の出力が最大となり,(ii)混

合器(II)の出力が零となることである。

この条件を満たすためには移相器(工), (II)をいず

449

れも(i)位相回転が周波数によって比較的大きく変わる

移相器と, (ii)あまり変わらない位相器をカスケードに

組み合わせたものとすればよい。

例えば移相器(II)の周波数特性より,同期信号 E,i.

E,2聞の位相差が π/2一定でなく,第22図(A)のよう

な特性であったとする。

この場合(B)および(C)

のような特性をもっ移相

器を用意すれば,前記の

方法から特性(A)を実

現できる。特性(B)は

導波管の横幅をせばめる

ことから,後者はリッヅ

導波管を用いることで実

位栂団結角

ll’ 周浪数

第22図複合製広帯域移相器

の周波数特性白1j;IJ

現できる。このようにす

れば少なくとも帯域中の2点の周波数においては,上記

の条件を完全に満たせるはずである。

(2)振幅特性の要求

I rl=lに対応する線の長さ(第4図(a))が,周波数

によって変わらないことが必要である。そのためには

(i)発振器出力 (ii)各回路要素(マヲック T,フエライ

ト変調器,移相器など〉の挿入損および反射損 (iii)混

合器の能率がt周波数特性を持たないことが必要である。

マイクロ波電源にクライストロンを使うと,以上の3項

目中最も問題になるのは(i)である。 (i)はAPCの付加

により,かなり除去することができる。これには無反射

端 Laの位置に鉱石検波器をおき,その出力が一定にな

るようにフエライト励磁用低周波交流電流の振幅を制御

する方式を採用する予定であり,すでに基本APC部分

の試作と検討を一応完了した。 (ii), (iii)については

(a)各要素の広帯域化を行なう方法(いわば正攻法〉と,

(b)例えば混合器能率の周波数特性に故意に傾斜をもた

せ,残りの回路要素の損失の周波数特性を相殺させる方

法などが考えられる。後者の方法によれば少なくとも帯

域中の2点の周波数で,上記の条件を満たせるはずであ

る。

く3)その他 4.1で指適したb,ん,ん,んが必要な

帯域内で十分小さくなければならない。

5. 応用実験例

応用実験例としては,単一周波で反射型クライストロ

ン2K25の電子アドミタンスを直視し,さらに簡単な理

論との対応を試みた。

5. 1. 電子アドミタンスの直視縄県

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450

fl,'よ合ループ、、、九、、、i

ヨ~23図反射型lクライストロ y とそのマロント

第23図で示されるようなクライストロンマウン卜を製

作し,これを未知lインピー タンスとして直視装置に負荷

して, CRT 上にアドミタンス執跡を直視した (第211図

参照〉。測定周波数は 9,475Mc で, まず供試管 2K25

と冷状態にし,その空胴問lijl\のみを変えると第25図曲線

(A)を得る。次に空胴を測定周波数に同調させ(a)点,

さらに空JI河電圧 117v,空胴電流 Sm.Aでクライストロ

ンを動作させ, リペラー電圧を ー190~ー350Vの聞に

変化すると第24図あるいは第25図曲線(B)のような

spiral状の軌跡が観測される。このように空胴電圧を定

格値より下げて測定した理由は負の電子コンダクタンス

の大きさ〈絶対値〉を故意に小さ くし 2 安定に測定する

ためである。

5.2. 理論曲線との比較

反射型クライストロンの空胴間際における電子アドミ

タ‘ンスの値については,多くの研究があるが,ここでは

最も簡単な理論による理論曲線と,直視曲線と の一応の

対照を試みることにする。

(1) 空JI問の結合回路の等価回路

第25図の曲線(λ〉の形状から,クライストロンの空

胴同, Iif11i5Iき出し線およびマウントを含む系の等価回路

は第26図(a)のように推定される。

第24図 2K25屯子アドミy ',/;えの直視結Q~

でめる。

電波研究所季報

ただしここで

J:第25図の角度引こ対応す

る ~~]Hi!各長すなわち

l=l-/2・り/2rr

,. 直列損失第25図のb'点 の

読みより pY0=0.08

G。空!!同の並列コンダクタン

Bo・空胴の並列サセプヲンス

Ye:電子アドミタンス

九 ri11u定端子の線路アド ミタ

ンス

理論曲線との対応をしやすくするために,第25図の曲

線(A),(B)を次の手順で処理した。

c i) スミス図表上で反時計方向にゆだけ回転する。〈第

26区l(a)の 2-2'面 からみた正規化アドミタンスが得ら

れる〉

c ii) アドミタンス図表からインピーダンス図表。\変換

する。

(iii)直列抵抗分 rYo(=0. 08)を差百|く。

(iv) 再びアドミ守ンス図表に変換する。

得られた結果を第27図に示す。これは第26図(a) 3-3'

面から左方をみた正規化アドミタンスあるいは向図(b)

の正規化アドミ タンスにほかならない。第27図α点の読

みから, 冷状態においては がGo/九=1.4であることが

わかる。しかし屯子ビー ムを流すと空JJ同の温度上昇によ

りy Goの値は当然変化する。電子アドミタンス直視の

際.空JJ同は共振点(α点〉に同調させたつもりであった

が,曲線 (B)の形状からすれば,竜子ビーム を流すと

とによ って空胴自身のアドミタンスが a点から d 点へ

活動したと考えるのが妥当であろう。 d点、の正規化アド

ミタンスの値は,付録の計算結果から

u2Go'/}乍= 2.6, η2Bo'/Y0=0.7

w 1rn~] ぺ申:争

百,25図 rr:子アドミタyス測定結果百126図反射!1'1.7ライストロンおよびそのマ?ントの等価回路

知27医l理論曲線と直視1!11線との比較

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Vol. 7 Nos. 31/32 September 1961

である。

(2)電子アドミタンスの計算

電子アドミタンスは次式で与えられるものとするω。

主=丘笠ιei(f-0)2Vo

(13)

ただしここで九:ビーム電圧, Io:DCビーム電流,

F:電子流結合係教,。:リペラー空間の電子送行角,

r:電子流有効係数である。 (13)式の導出では小信号の

件,空間電荷効果を無視するなどが仮定されている。

(13)式において電子送行角 8は

。=2trf.I互i亙ニDー.., "甲 Vo+VR-

(14)

で与えられる。ただしここで守=e/m:電子の比電荷,

f:周波数, VR:リペラー電圧, D:リペラー空間長で

ある。

リペラー空間長 D を知るために,次の方法をとった。

電子アドミタンスが負の純コンダクタンスを呈するリペ

ラー電圧を第図から読みとれば

①点にて VR=ー327(V)

③点にて VR=ー266(V)

⑤点にて VR=ー226(V)

を得る。一方,電子アドミタンスが純負コンダクタンス

を呈するのは走行角。が

8=2π(n+{-) =制作:整数〉 (15)

を呈する場合である。そこで各点に対にnを仮定しなが

ら (14)式を用いてリペラー空間長Dを逆算し, Dが

ー値定をとる条北から各点のモード番号および D を求

めた。 D の計算結果は第28図に示した。これらから

①点にて N=6. 75

@点にて N=7.75

@点にて N=8. 75

また D=4.35mm と推定される。 この Dの値を用い

れば,任意の VRに

対して走行角Pを計6

算できる。さらに電 \、ト\ 、花=10.~55

子流結合係数8は 、 、 、D

、、 、、、 、、主JS、、、、 、、

sin8u/2 (相111) 、 、、息百/3 、 、、、

。u/2 4 、、、

。g wd wd 、、 、、、 、、、.p5、、、 、、、

0 ~~五、

、、自:753 、、、、、

、、、4.75

、、~75

(16) 2

'3.75

で表わせる。ただし

。。:空胴間隙の電子-327 ーお6 ・'226 VRM

送行角, d:空胴間 第28図 リベヲ空間長計算結果

451

隙長, Vo:空網間隙に入る電子の速度である。

いま dを 0.55mm(レントゲン写真による値) とし

て計算し, /3=0.212を得た。また電子流有効係数 rは

推定値0.5をとった〈旬。

以上の諸量を用いて電子アドミタンス九を計算する

と第29図のような結授を得る。

第29図電子アドミタyス計算結果

(3)理論曲線と直視曲線の比較

第27図の直視曲線 (B)を y問 (VR)とすると

y.,,.(VR)=主主需品込+~がY.(VR]

=(2.6-jO. 7)+ニ今ゲ (17)

で与えられる。したがって第29図の理論曲線と第27図の

曲線(B)を比較するには,インピーダンス変成比n2/Yo

を知らねばならない。しかるに第27図曲線(B)のa点か

らがG0/Yo=l.4は既知であるから,空鯛の無負荷並列

コンダクタンス Goがわかれば n2/Yoを求めることがで

きる。

このような場合,通常行なわれる G。の決定法には,

金属小球などを用いる Perturbatio旦法,間隙容量変化

法など〈のがあるが,前者はいまの場合適当でなく,後者

を行なうにもかなりの手数を要する。そこで今回は曲線

の形状の比較にとどめ,理論曲線と直視曲線が比較的よ

り一致する値として Go=25.5μ11と仮定すれば, この

場合の結合係数 n2/Yo=5.45×10'となる。第 29図の曲

線(Bつはこのときの理論曲線を画いたものである。

なお以前にわれわれが行なった測定では2K25の場合

Go=20~50 μ11であったゆ。

6. 結言

以上,比較的小型でしかも簡単な構造のマイクロ波イ

ンピーダンス直視装置を試作し,その誤差原因について

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若干の考察を行なった。またこの直視装置を用いて反射

型クライストロン 2K25の電子アドミタンスを直視し,

かつ理論との対照を試みた。定数1個を仮定すれば理論

曲線と直視曲線との聞に一応の一致をみるととがわかっ

た。

終りに直視装置の研究に際して御援助御討論いただい

た島田理化工業の各位ならびに御討論いただいた東京大

学工学部電気工学部,電子工学部の各位に厚く識意を表

する。

参者 支献

(1)岡村,大越,吉村,吉本;“マイクロ波インピー

ダンス直視装置第1報ヘ昭和34年電気通信学会, No.

241.

岡村,大越,吉本,新井;“マイクロ波インピーダン

ス直視装置第2報ヘ昭和35年四学会連合大会, No.1289

岡村,大越,新井;“マイクロ波インピーダンス直視

装置第3報”,昭和35年電気通信学会大会, No.191

(2)例えば星合r 岡村;“電子管ペ オーム社,また

はJ.R. Pierce & W. G. Shepherd;“Refl位 Os::illator”,

B.S.T.J., July, 1947.

(3) 岡村,平野;“極超短波電子管に関する研究(第

1報〉”,東大工学郎綜合試験所年報,第11号

岡村,田宮,宮川;“向上(第2報〉”, 向上第13号。

岡村,宮川,田宮;“反射型クライストロンの電子ア

ドミタンスの測定ヘ昭和29年三学会連合大会, No.

486.

(4) E.L.Ginzton;“Microwave Measur町阻ts”,

Mc Graw Hill, 1957.

(5)江川;“東京大学工学部昭和34年卒業論文”。

電 波 研 究 所 季 報

付録電子アドミタンス測定時にお廿る空

胴アドミタンスの推定

第30図の a’点の座標を求める。まず a’点の正規化コ

ンダクタンス分 n2Go/Yoを g。とし, 同図の@点,①‘

点,@点の正規化コンダクタンスを 92.Ya. g,,またそ

れらの点の正規化電子コンダクタンスをぬ2• Yea. g,“と

する。そのとき

仇=Yo+Ye2 )

Ya=Y2+Yea ト

g,=g,。+u,剖 J

(A-1)

また第29図の電子アドミタンスの理論曲線(Archim-

edes' Spiral〕がG輸を等間隔に横切ることを考えれば

-2Yea=Ye2+Y,副(A-2)

(A-1), (A-2)式より未知数 Yez,Yea. Ye4を消去して

Yo= 1-ga +よ(Y2+仇) (A-3) 2 4

が得られる。同様にして a’点の正規化サセプタンス分

担2Boも@,①,③の各点のサセプタンス分から求まる,

かくして

n2(G。+jB.。)/Yo=2.6-j0.7

が得られた。

第so図 〈①は@となる〉

(A-4)