第5章 波の生成と シアー中の重力波について
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- 北上山地はほのかな幾層の青い縞をつくる -. 前章ではおもに重力波の 存在性 (等温静止大気中に波として存在可能であること、さらに大気を強制したときに,条件によっては 鉛直に伝播可能であること )を議論した。 この講義では、内部波が成層圏に行って 何かをすること に興味がある.一方、外部波は強制したところに主に存在するであろう。. 第5章 波の生成と シアー中の重力波について. - PowerPoint PPT PresentationTRANSCRIPT
第5章 波の生成と シアー中の重力波について
前章ではおもに重力波の存在性(等温静止大気中に波として存在可能であること、さらに大気を強制したときに,条件によっては鉛直に伝播可能であること)を議論した。この講義では、内部波が成層圏に行って何かをすることに興味がある.一方、外部波は強制したところに主に存在するであろう。大気にはダンピングが存在するので、常に強制がないとそのうち波動はなくなってしまう。実際には常に波動が観測されるので、何か生成のメカニズムが存在するはずである。そこでこの章の一部では、この問題を議論する。また、シアーの中の波動に振る舞いについて述べておく。
対流と重力波との関係:
Sato et al. ( 1994, J. G. R. ) 対流圏の対流(夏7月の日本、 35N, 136E での観測)と成層圏擾乱が結びついているように見える。つながっていない時もある。対流が強いと、成層圏に影響をあたえるのだろう。
- 北上山地はほのかな幾層の青い縞をつくる -
12 例を集めた composite の図
対流圏 (5.4km-15km) と成層圏 (16-22km) との関係
鉛直流
別例:
台風 Kelly ( 1987, 10 月)とからんだ重力波 (Sato, 1993, J. Atmos. Sci.) この図は南北風が卓越した、水平波長が 600km で鉛直波長が 6km の重力波らしい。周期は地面にたいして6時間程度の重力波(下図の9に対応)。
高分解能の GCM (分解能は 100km 程度)に現れた重力波(右):中緯度の重力波、左は観測で見られるもの、構造がよく似ている。ただし、生成論は未定(対流圏がゆれている?)。 Sato et al., 1999, J. Atmos. Sci. 下はスペクトル図
MU 観測 Model 結果東西風はシグナルが弱い
5−1:赤道ケルビン波の生成について東西波数 k= 1 の 15 日程度の下部成層圏 Kelvin 波の話し >それの簡単な励起の問題です.−前章 GMS のスペクトル図から想像されるように > − 雨の降りかたが振動している。そこで,熱帯対流圏で熱的な強制が時間的に振動すれば,その周りに波動として伝わることが出来るであろう.熱帯対流圏のところで以下の式のような Heating を考える.( Holton, 1972, J. Atmos. Sci. )
Q=Q(y,z)exp(−(λ/λ0)2)cosωt
ここで は Heating の南北,鉛直構造を表し, K/day の大きさ, は経度, , は与えられる Heating の振動数である. Heating Q をフ リエ分解する. −
Q(y,z) λ λ0=36o ω
Q= Qkk∑
+ei(kλ+ωt)+ Qkk∑
−ei(kλ−ωt)
ここでは,熱帯成層圏の応答を考えているので,前に述べた,観測されている Kelvin 波を想定して,周期は 15 日に決め,南北対称な Heating の形を与える. mean zonal wind の profile もある形に仮定.線型の方程式を解いて応答をみる.
Heatingの鉛直構造(実線)
対流圏で局所的な関数形の熱強制を与えているので、図で対流圏は結構複雑である. 熱の強制のない成層圏では大気の運動は波的に振舞う.この場合波数1が卓越している.Kevin 波の分散式で( 1/4H2 は無視):
c=ω/k=2*3.14/1.3x106(15 日) /(2*3.14/4x107)=30m/sm=N/c=2x10-2/30=2/3x10-3 、 Lz=2x3.14x3/2x103
この波の鉛直波長を見積もると約 10 kmとなる.図の鉛直構造の波長とそれほど大差はない.
ω=Nkm
GCM の Heating を与えて、東西平均風のある線形的な応答をみる。 GCM の結果との比較。波数 1 成分の時間 高度断面図、上図は− GCM の結果で、下図が線形モデルの結果(線形の方が応答が大きい、自己調節(例えば壊れたりする)が十分でないからであろう)。基本的な応答はよく似ている。
しかし,どうして時間的に振動する強制が大気の中に存在するのでしょうか? >卓越振動数はどうして決ま−るのだろう?
風が振動 ー> 対応して Ozone 振動に現れた k=1変動: Kawamoto et al. (1997, J. M. S. J.) 30mb, equator 上、時間 - 経度断面図( 1979 のデータ)、時間とともに東に伝播している。周期は15日くらい。
Onoze も下部成層圏では のように振動するのであろう。ここで、 χ はオゾンのmixing ratio である。
0''
=∂∂
+∂∂
zwtχχ
より現実的な( GCM 中) Thermal Heating の例:波数 1 で東に伝播する成分。経度 0 での時間変動、緯度 10 度の平均、 Manzini and Hamilton (1997, J. Atmos. Sci.) 、このモデルは湿潤対流調節で対流を起こしている(変動し易い方法)
上のようなオゾン赤道 Kelvin 波の振幅と位相の緯度高度断面図
対応する固有値は √ gh =14m/s(h=20m)の浅い波の赤道波に対応している。鉛直波長は
√gh=N/m →14/1x10-2 x2x3.14->9km (鉛直波長)
半波長では 5km でかなり鉛直スケールが小さい波に対応している。
Wave-CISK (2種条件不安定)の考えによる説明:境界層 top の上昇流に比例して熱 Q をだし、波の位相速度を小さくすることをする。 CISK のように、
Kelvin 波等が不安定になる.3層モデルで固有値問題をとく。下の図は2つの η の鉛直分布と差分化、右図は η 1=0として η 2の値を変化したとき、それにともなって波の固有値 c (時間微分から -ikc がでる)が変化することを示している。 Heating Q をきめる η を変化させることで、位相速度 c を変化させて、比較的ゆっくりした波の速度( 10m/s 程度)を出すことができる( Takahashi, 1987, J. M. S. J )。ある部分はこんなメカニズムで生成されているかもしれない。
問題点 >熱の鉛直分布を決めるパラメ タ− − η に敏感に依存する.
前章図 ( Takayabu, 1994, J. M. S. J ) でみたように、 図は赤道での GMS データのスペクトル解析と赤道波の分散式(線であらわされている)をあらわしている。すべてがのってはいないが、赤道波の分散式にのっている部分がある。
η に依存していろいろの位相速度の波の生成は可能ではある
位相速度
c の虚部 ci
のような熱力学の式を仮定して問題を解く.あとは普通の線形運動方程式を使い、線形の固有値問題をとく (Hayashi, 1970, JMSJ) 。
RH∂T∂t+N2w=η(z)N2wB
補足:より一般的な局所的 wave-CISK <ー ENSO に適用Watanabe and Jin, 2003, J. Climate
熱力学と水蒸気の式
€
∂tT ' .... = Q'c +Q'h∂tq' .... = Q'q +Q'e
Q'c =ec
τ c
(T 'c −T '−δT 'c )
Q'q =ec
τ c
(q'c −q')
雲について、境界層 b の湿潤静的エネルギをつかう
€
h'b = c pT 'b +Lq'bc pT 'c = Ah'b Lq'c = Bh'b
保存則から
€
c pT 'c +φ'c +Lq's (T ,T 'c ) = c pT 'b +φ'b +Lq'b
Lq's = γc pT 'c γ =L
c p
dqs
dT T =T
φ'c = κ c pσ
1
∫ T 'c d lnσ
A,B は Yu and Neelin, 1994, JAS
€
A =1
(1+ γ )exp −κ
1
(1+ γ)σdσ
σ
σ b∫ ⎡
⎣ ⎢
⎤
⎦ ⎥
q c + q'c = qs(T ) +c p
LγT 'c
B = γ A
€
c p Q'cσ t
σ b∫ dσ + L Q'qσ t
σ b∫ = 0
δT 'c =1
c p
( A + B )h'b −c p T ' − L q'[ ]
isvertical averagebetweencloudbase and top
ec = min(M
Mc
,1−ε)
Q'h =g
P sδσρCh W 0(T 's −T '0 ) + W '0 (T s − T 0)[ ]
Q'e = β eg
P sδσρCh{W 0 c pL−1γ (T s)T 's −q'0[ ] + W '0 qs(T s) − q 0[ ]}
+ β 'eg
P sδσρCh{W 0 qs(T s) − q 0[ ]}
W '0 =1
W 0(u 0u'0 +v 0v'0 )
上から SST の差( ENSO-LaNina の差)、 OLR の差、500mb の高度差
定常解:ドライな Linear Baroclinic Model に対する (a)鉛直平均加熱Q’c と、 (b)500mb の height応答、 Moistな LBM に対する加熱 (c) 、と500mb の高度差 (d) の応答(赤道で高気圧偏差)
Relaxation 型の heating
Heating と moisture sinkバランス
表面での顕熱,潜熱 flux による
5—2:シアー流中の重力波前書き:高さに依存する基本風の中での伝播の問題−>流れの不安定による生成問題はあとで議論。
基本的な流れ(一般風?)の中の内部重力波について考察する。例えば、東西方向に平均をした東西風を考えれば最も簡単な一般風とみなせる。それは実際には時間変動をしている(例えば太陽放射が時間的に変っていたり、非線形のため)がここではその事は考えない。
この様な基本状態に prime のついた摂動(それを内部重力波とする)がつけ加わり、その摂動の振幅が小さいと仮定して前と同様にして線形方程式を導く。長波で東西・鉛直の2次元運動の仮定をおく。
以下の話しに必要なため、運動量と熱力学の式に線形の小さな damping を入れておく。1:特異点( critical level と呼ばれる)の処理のため2:実際はいつもdampingが存在 これを簡単に一次近似で表す.−3: Newton 冷却は現実的であろう
すると(2) ∂ u
∂ t+ u
0(z) ∂ u
∂ x+ w
du0
dz= − ∂
∂ x(
pρ
0) − a u
するとその東西風は高さと南北方向の関数である。しかもそれは地衡風バランスと静力学平衡のバランスから、温度も高さと南北方向の関数でもあるが、
ここでは簡単のために東西風が高さのみの関数と仮定する。さらに温度場は話しの簡単化のために等温大気と仮定する。すなわち速度場として、前章の拡張として以下の形を仮定する。(1)
(3) ∂∂z(pρ0) =−g
ρρ0
(4) ∂∂ x
(ρ0u) + ∂
∂ z(ρ
0w) = 0
(5) ∂∂ t
( θθ
0
) + u0(z) ∂
∂ x( θθ
0
) + w S = − a θθ
0ρρ
0= − θ
θ0(6)
高さに依存する平均風 u0(z)
u =u0(z) + u′ , w=w′
Newtonian cooling について成層圏ではいい近似で成り立っていることは2章で議論した。とにかく a を一定として以下議論を進める。また Rayleigh friction と Newtonian cooling の係数が同じというのもおかしいのですが(変えるとおもしろいことも起こる、 cf. Andrew and McIntyre ( 1976, J. Atmos. Sci. ); Takahashi and Uryu ( 1981, J. M. S. J. ) 。
これまでと同様に(8)
w =W(z)ez2H exp(ik(x −ct))
の形を仮定する。ここで c は波の東西方向の位相速度であり、 ω= c k である。 damping の効果は(9) c =c+ i ak
のように複素数の位相速度を導入して使い分ければよい。 (8) を使うと以下のような方程式が導かれる。(10)
d2W
dz2 + N2
(c−u0)2 +
(d2u0
dz2+ 1Hdu0dz )
(c−u0)− 1
4H2
⎧⎪⎪⎨⎪⎪⎩
⎫⎪⎪⎬⎪⎪⎭W =0
non-Hydro の場合は { } の中に − k 2 がつく。
この式と前章で求めた式とを比較してみると中括弧の第2項の部分がつけ加わっている。もちろん第1項の u0 は高さの関数である。上式は解析的には解けないので、普通は数値的に解くことになる。 u0 が高さの一次関数のときは、解は合流型の超幾何関数で表される(例えば Rosenthal and Lindzen, 1983 参照)。鉛直に伝播するとき、どんな風に振舞うかがここでの問題である。
と思えばよいであろう。ここで は鉛直方向の、渦による(考えている擾乱のスケールより小さい)拡散係数で、 m は波の鉛直波数。
ν
ここで prime は省略。前章との違いは東西方向の運動方程式において基本流による移流の項、及び基本流の鉛直シアーの項がつけ加わったこと、熱力学の方程式に基本流による温位の水平移流の項がつけ加わったことである。 運動方程式での linear damping を Rayleigh friction ( a を Rayleigh friction coefficient )、熱力学での linear damping を Newtonian cooling と呼ぶ。運動方程式の中の線形減衰は物理的におかしいが(運動量がその場で消えてなくなる?)簡単なので(微分の階数が上がらない)よく使われる。物理的には運動量は拡散するので例えば(7) ν ∂
2u
∂ z2 ≈ − ν m 2u = − a u
5—3:WKB近似
さらにWKB近似解を求めるために、教科書に従って無次元のパラメータを導入して (11) を以下のようにかくことにする。(12)
解き方の1例である: あとの評価(振幅の2次の order )のときに使う。適当な物理数学の教科書を見る。寺沢寛一編の’自然科学者のための数学概論(応用編)’を眺めてみよう。するとまず基本場 u0(z) は緩やかに変化していることが必要とかいてある。ということで
d2u
0
dz2 ≈0 ,du0dz ≈0
とおけそうである。そうすると (10) は以下のようになる。(11) d
2W
dz2 + N2
(c−u0)2 − 1
4H2
⎧⎪⎨⎪⎩
⎫⎪⎬⎪⎭W =0
ここで u0 が一定ならば前章と同じになる。しかし今は u0 が高さの関数となる。前章とのつながりから
N2
(c −u0)2 − 1
4H2 =m2(z)
d2W
dz2 + b2m2(z)W =0
d2W
dz2 + N2
(c−u0)2 +
(d2u0
dz2+ 1Hdu0dz )
(c−u0)− 1
4H2
⎧⎪⎪⎨⎪⎪⎩
⎫⎪⎪⎬⎪⎪⎭W =0
ここで b は無次元のパラメータで ある。いま波の位相速度 c が u0 より速いとしよう。
u0(z)
c
このとき上向きに伝わる波を考える。前章の群速度の議論を思い出して
W =exp( −i bϕ (z))
の形の解を選ぶことにする。微分して
∂W∂z=−ib
∂ϕ∂zexp(−i bϕ(z))
∂2W∂z2
=(−ib∂ϕ∂z)2exp(−i bϕ(z))−ib
∂ 2ϕ∂z2
exp(−i bϕ(z))
上式を (12) に代入すると(13)
−b2(
∂ϕ∂ z
)2
− ib∂
2ϕ
∂ z2 + b2
m2(z) = 0
z
−b2(∂ϕ∂ z
)2
− ib∂
2ϕ
∂ z2 + b2
m2(z) = 0
ϕ0
= m dz∫
となる。次の order に高めるにはbが大きいとして
ϕ =ϕ0
+ϕ
1
b+
ϕ2
b2 + …
を (13) に代入して、(14)
−b2(
∂ϕ0
∂ z+ 1
b
∂ϕ1
∂ z+ … )
2− ib (
∂2ϕ
0
∂ z2 + 1b
∂2ϕ
1
∂ z2 + … ) + b2m2 = 0
b2 の項は前と同じ。 b 項として(15) −2
∂ϕ0
∂ z
∂ϕ1
∂ z− i
∂2ϕ
0
∂ z2 = 0
上式に0次の項を代入すると ∂ϕ1
∂ z= − i
2∂
∂ z( ln m )
だから(16)
W ≈exp( −ib mdz− i2b lnm∫{ } )
最終的に b=1 とおいて(17) w = Ae
z2H
m1 / 2 exp( −i mdz∫ ) ⋅exp( ik(x −ct) )
が求めるWKB近似解である。 A は境界条件から求められる。m1/2 のように振幅が変化する事は大事である.臨界層( u0=c) では 大 w は小、 一方 u は大になるm
N2
(c −u0)2 − 1
4H2 =m2(z)
だから(前と同様、以下 m は正を選ぶことにする)
となる。 b2 のみの項から第0近似を取り出せば
(∂ϕ 0
∂ z )2=m2
赤道波にたいしては、 Lindzen, 1971, JAS を参照のこと、力作ですが、式の変形がめんどうくさい.
<ーそれぞれの場所の u0 を感じている
<ー
<ー 波の位相がきまる
<ー 波の振幅変化がきまる
5 4:山岳強制波−
w = dhdt at z=0
図:奥羽山脈で作られた重力波?
これまでシアー流中の重力波の存在性について議論した。
重力波の生成問題で最も簡単な問題は山岳による強制問題であろう。それは東西に一様な風が吹いており、下端に凸凹した山がある場合である。図にその様にして生成されたと思われる山岳重力波の写真をのせておく。但しこの波の水平スケールは小さいことに注意。このような問題を考察する。
山で励起される時、波の位相速度 c=0 、水平波長=10 km、 U = 10 m/s, N =10ー2 ならば、分散式 N2 /U2 — k2 で評価してみると:N2 /U2 = 10-4/102=10-6 > k2=(2x3.14)2/108
として、この仮定のときは鉛直伝播で内部波。
簡単のために sin または cos の形の山を考えよう。実際の山は非常に複雑な形をしているが、それをフーリエ分解して1つの成分を取り出してみたとする。すると山の形は以下のようにかかれるであろう。
(18)
ここで h0 は山の高さの振幅、 k は sin 的な山の波長の逆数の 2 倍である。
このような山があって、風が吹いた時にどのような波が生成されるかが今の問題である。山のところにある流体粒子はどんな運動をするだろうか? 流体粒子の鉛直変位の時間微分が鉛直速度であろうから、鉛直の変位と鉛直の速度とは
(19)なる関係を満たす。この関係を山のところにある流体粒子に適用すると、地上( z=0 とおく)において
とおけばよいであろう。
山は時間変化しないこと、及びいま東西に一様な風が吹いており線形の近似をおこなえば山岳強制重力波の境界条件として
(20) w =u0(z=0) ∂ h∂ x atz=0
とおけばよいであろう。
h =h0exp(ikx)
w =dζdt
地上で西風( u 0 (z=0) > 0 )とする。この西風は高さの関数ではあるが東風にはならないと仮定する。西風から東風に変化する所は c=0 の波に対して critical level と呼ばれる。 (10) からわかるように方程式の特異点になっているのできちんと議論しないといけない。これについては次の節で議論する。
w = Aez2H
m1 / 2 exp( ikx + i mdz∫ )
と選ぶべきである。境界条件から山岳波の解は(22)
w=m01/2iku0(z=0)h0
m1/2exp( ikx+i mdz∫ )
但しこれは WKB 近似解が使える場合である。
補足 >あくまでも定常状態である。例えば風が急に吹き出して波が出来る時にはラプラス変換か何かを使っ−てきちんと初期値問題を解く必要があろう。そのときは、はじめいろいろの位相速度の波がでるであろうが、そのうち時間がたてば c=0 の波が残るであろう。
実際は図のようにかなり複雑な様相をしていて数値実験になってしまう。流体は非線形ですし。
図:観測された Rocky Mountain による山岳波の一例。横軸は mile ではかってある。 Lilly (1978) 引用は Gill から。
数値実験の例: Satomura and Bougeault(1994, J. M. S. J. )から、ピレネー山脈の風下波。計算では運動量 Flux が多く見積もられすぎている?
この z=0 での境界条件と基本流のある (17) 解をむすびつける。そのとき、位相速度は c=0 とおけばよい。
このような状況においては、山岳波は基本流に対して西に伝播している。だから前章の群速度の話しから、波の形は(21)
衛星による山岳重力波の観測について:Eckermann and Preusse, 1999, Science
重力波の分散式から、山で c=0 とおき鉛直波長をみつもる。上図から U= 20 m / s の風で、数百 kmの長波として(アンデスで長いであろう) , 94年 11 月
€
Lz = 2 × πU
N= 2 × π
20
2 ×10−2= 6km
€
U∂
∂x
R
HT '+N 2w ≈ U
∂
∂x
R
HT '+N 2U
∂
∂xh = 0
T ' ≈ −N 2 H
R(h ≈1000m) ≈1×10−4 7000
2871000 = 2.5K
程度の温度にはなる(対流圏の N2 を使ってある)
熱力学の式から
30 km で急に波が違ったようにみえる?
€
u' ≈ φ /U ≈R
HT '(7K)
Lz
2π/U(20m /s) ≈14m /s
山岳波の breaking が起こっているか?
山岳波だろう、数値実験から、ただし6 月
5—5:臨界層 ( Critical Level ) での線形重力波の振舞い
d2W
dz2 + N2
(c−u0)2 +
(d2u0
dz2+ 1Hdu0dz )
(c−u0)− 1
4H2
⎧⎪⎪⎨⎪⎪⎩
⎫⎪⎪⎬⎪⎪⎭W =0
ここでちょっと数学的な話し(重要なので少しは述べないと)をします。それは特異点の話しです。線形の critical level の話しは何とか理解出来るから。非線形の話しはまあ数学の得意な人に任せましょう。数学が好きでそういうことをやってみたい人に例えば Kelly and Maslowe (1970) など
方程式 (10) まで戻りましょう。基本流と重力波の位相速度が同じになったらどうなるかという話しです。この問題をはじめて解いたのは Booker and Bretherton ( 1967, J. Fluid ) です。ここではあとの話しに必要なさわりのみ。
山
一定の風
高さの1次関数の基本風
上のような状況を考えます。t<0 の時 w=0t>0 w=a coskx z= 山のところで
こんな問題をきちんと解く。高さの1次関数なら解は第1種の modified Bessel function で表現できる。時間的にどんな変化をするか? —> Laplace 変換なんかして、詳しいことは Booker and Bretherton を見てください。
U=c ->
(10)
ここでは Critical level を z=0 におきます。
話しをわかり易くするために基本流の設定をしておきます。c があってもいいとしておきます。
z < 0 で位相速度 c は基本流より速く動き、 z > 0 で基本流の方が速く動いているとします。すなわち z<0 で波は相対的に東に、 z > 0 で波は西に伝播しているとします(左図のような状況)。ここで z = 0 の近傍のみを議論する。このとき基本流は
u0=c+
du0dz z
と書かれる。ここでいまの場合 du0 / dz > 0 である。すると、 z=0 近傍において (10) 式は次のようになる。
d2W
dz2 + N2
(du0dz )
2z2
+
1Hdu0dz
−du0dz z
− 14H
2
⎧⎪⎪⎨⎪⎪⎩
⎫⎪⎪⎬⎪⎪⎭
W =0
なぜ重要かというと Ri < 1 / 4 のとき流れが不安定となり大気中に擾乱が発生する(可能性があると書いた方が正確か)からである。不安定のための必要条件が積分定理から導かれるが、ここでは述べない。積分定理の基本論文は Miles (1961) と Howard(1961) 。応用数学の世界です。とにかく Ri を導入すると、(27)
である。これからの議論は Ri が十分に大きいときのみに限る —>(波が吸収されるはなし)
Ri ≡ N2
(du0dz )
2
ν =1 ± 1 − 4Ri2
おおざっぱに Ri を評価しておく。 N2 は成層圏で 4x10-4 程度。 shear は50kmで100ms— 1とすると、 Ri = 100 になる。このように普通の状況では Ri は 1/4 に比べて非常に大きい。そこでそのような仮定をしておく。すると解は(28) W =z1 / 2e± iμ ln z
ここで μ = Ri − 1 / 4
Critical levelu0 =c
u0(z)
ここで重要な無次元量 Richardson 数( Ri と書く)は以下のように定義される。(26)
ν (ν − 1) + N2
(du
0
dz)
2= 0とおいてみる。これを (23) に代入して、
(25)
この方程式はオイラー型(の特別な形)ということで、(24)
ここで基本流の二階微分の項は落とした。 z=0 の近傍では中括弧の第一項が大きいのでその項のみを残すと方程式は以下のようになる。(23)
<—不安定は別章
今 z が大きい所で一定の風が吹いているとする。
そして基本流に対しての波の位相速度の関係(基本流が位相速度より速い)が z >0 近傍と同じとする。そのとき波の鉛直波長に比べスケール・ハイトが非常に大きいとして、 m > 0 に選んで、
m ≈ Nu0 −c
となる。書き直すと
m
Nuc −= 0 ω=ku0−
Nmk
∂ω∂ m
= Nm2 k
だから の形が上向きの波であることがわかる。 これを、 Critical level 近傍の波につなげる。€
exp(ikx − ikct + imz)
W =Azν
c
d2W
dz2 + N2
(du0dz )
2z2W =0
波の形は exp (ikx ikct− + imz) だから (28) において z > 0 の解として(29) W =z1 / 2eiμ ln z
を選ぶのが都合がいい。z>0のとき増加する位相の変化の仕方が同じである。
z
次にこの解をどのように z < 0 につなげばよいか? z = 0 が Branch Point になっている。これを処理するために大気はいつも粘性等があるため damping が存在することをつかう。そのためにわざわざ (2), (5) で linear damping なるものを導入していた。これを導入することにより、 z = 0 の Branch Point をすこしずらすことを考える。 (9) の複素数の位相速度を導入すると、 Critical point は
c + i ak −u0 =c+ iak −(c+
du0dz z) =0
を満足するから、分岐点が虚軸の正の方になる。(30)
z =
aikdu0dz z軸
z軸をマイナスの方へ移動させるとき、位相の変化は− iπ(図)である。だから z < 0 で
z = z e− i
を選ぶべきであるので、解 は z < 0 で
W = z1 / 2e− i
2 eiμ ( ln z − i ) =−i z1 / 2eμ eiμ ln z z < 0
( critical level の近くで m〜N/zなので、 wがWKB的とすれば、m 1/2に逆比例だからwはz 1/2に比例して小さくなる )
となる。ここで critical level の上下で振幅の因子が exp(πμ) だけ異なることに注意(この差はかなり大きい)。 Critical level の下の振幅と比較して Critical level の上の振幅はほとんどゼロになる。さらなる詳しい議論は原論文を読んで頂くとして(例えば時間的にどんなふうに変化するか?)ここでは先に進むことにする。参考として図に Critical level 近傍の鉛直流の振舞い、および実験室で得られた Critical level における波の吸収( Critical level の上で波がなくなっている)の写真をのせておこう(図)。
Critical Level 近傍の重力波(W、鉛直流)の振舞い。松野、島崎(1981)より。
今は風に対して西に動く。
u0-c >0だからpとwは正の相関を持つ -> pwはエネルギーのむきを表すから、これは上向きの波である。
別の見方:波のエネルギーの流れ(フラックス)からw =A (expikx−ikct+ imz)
∂u
∂x+
∂w
∂z= 0 iku =−imw=−imA (expikx−ikct+ imz)
u =−mkw また ik(u0 −c)u=−ikp (u0 −c)u=−p
p =−(u0 −c)u=(u0 −c)mkw
1つの数値実験:
1つは z = 0 (地面)から 20 kmまでは 20 msー1の風、次に 20 kmから 40 kmまでは風はゆっくり減少して 40 kmで− 20 msー1になる(このとき Ri = 100 )、 40 kmから 50 kmまでは− 20 msー1とする。もう一つの風のプロフィールはz= 0 から 20 kmまでは 20 msー1の風、次にすぐ次の差分点なる 20.1 kmから 50 kmまでは− 20 msー1とする(補足図参照、数値計算の差分間隔は 100 mである)。だからこのとき Critical level で Ri = 0.0025 である。山の高さは 100 m、山の波長は 200 kmと仮定して計算をした。そのときの x = 0 の場所の鉛直流の高さ分布を示したのが図aとbである。前者は波が吸収されている。前図と同じ構造をしている。一方後者は Critical level から波が放射している。
図は実験室での Critical Level 近傍の重力波の振舞い。Thorpe(1981) , 引用は Gill の教科書(1982)より。線形の範囲で:吸収と over-reflection ( Ri が1/4以上では波の吸収、1/4以下では不安定と絡んで over-reflection (過剰反射)が起こる )
図a: Critical level absorption の例。縦軸は高度、横軸は w の振幅を表す;波が臨界層で吸収されている。
図b:シアーが強い風のときの波の振舞い。縦軸が高度、風の shear が大きい時、波は成長している。
数値的な方法を使って Critical level 近くの解を数値的に求めてみた。2つの基本状態を以下のように仮定する。
z
d2W
dz2 + N2
(c−u0)2 +
(d2u0
dz2+ 1Hdu0dz )
(c−u0)− 1
4H2
⎧⎪⎪⎨⎪⎪⎩
⎫⎪⎪⎬⎪⎪⎭W =0 を解く