フランチャイズ・システムにおける 意思決定権の集...

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中央大学久保知一研究室第 3 期卒業論文 1 フランチャイズ・システムにおける 意思決定権の集権化と分権化 ―環境不確実性と資産の契約可能性に着目して― 白石秀壽 中央大学商学部久保知一研究室 第 3 E-mail: [email protected] 要約:小売業やサービス業においては、フランチャイズ・システムが広く普及 している。フランチャイズ・システムでは、契約に基づいて企業間の意思決定 の調整が図られている。フランチャイズ・システムにおいては、本部が加盟店 に適切なインセンティブを付与し、システムが効率性を実現するためには、意 思決定権の配分が重要な問題となる。しかし、本部と加盟店間の意思決定権の 配分という論題は、既存研究が軽視してきた領域である。この論題を扱った実 証研究は、著書の知る限り、Windsperger (2004)しか存在していない。しかし、 Windsperger (2004)は、企業が直面している環境要因を考慮していないという 問題を抱えている。 そこで本論では、環境不確実性に着目することで、Windsperger (2004)の議 論を拡張し、フランチャイズ・システムにおける意思決定権の配分メカニズム を説明する理論モデルを構築し、さらにその経験的妥当性を吟味すべく、フラ ンチャイズ企業に対するアンケート調査によってデータを収集し、実証分析を 行った。分析の結果、本部のフランチャイズ・システム特定的ノウハウが無形 であり、契約によって移転することができない場合には、意思決定権は本部が 保有することが示された。 キーワード:フランチャイズ・システム 所有権理論 残余コントロール権 残余利益 意思決定権 不確実性 新制度派経済学 回帰分析

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中央大学久保知一研究室第 3 期卒業論文

1

フランチャイズ・システムにおける

意思決定権の集権化と分権化

―環境不確実性と資産の契約可能性に着目して―

白石秀壽

中央大学商学部久保知一研究室 第 3 期

E-mail: [email protected]

要約:小売業やサービス業においては、フランチャイズ・システムが広く普及

している。フランチャイズ・システムでは、契約に基づいて企業間の意思決定

の調整が図られている。フランチャイズ・システムにおいては、本部が加盟店

に適切なインセンティブを付与し、システムが効率性を実現するためには、意

思決定権の配分が重要な問題となる。しかし、本部と加盟店間の意思決定権の

配分という論題は、既存研究が軽視してきた領域である。この論題を扱った実

証研究は、著書の知る限り、Windsperger (2004)しか存在していない。しかし、

Windsperger (2004)は、企業が直面している環境要因を考慮していないという

問題を抱えている。

そこで本論では、環境不確実性に着目することで、Windsperger (2004)の議

論を拡張し、フランチャイズ・システムにおける意思決定権の配分メカニズム

を説明する理論モデルを構築し、さらにその経験的妥当性を吟味すべく、フラ

ンチャイズ企業に対するアンケート調査によってデータを収集し、実証分析を

行った。分析の結果、本部のフランチャイズ・システム特定的ノウハウが無形

であり、契約によって移転することができない場合には、意思決定権は本部が

保有することが示された。

キーワード:フランチャイズ・システム 所有権理論 残余コントロール権

残余利益 意思決定権 不確実性 新制度派経済学 回帰分析

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白石秀壽

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1. はじめに

チェーンスストア・オペレーションを採用して多店舗展開する企業にとって、店舗展開に

あたっては直営店とフランチャイズ店舗の 2 つの選択肢がある。近年、小売業やサービス業

において、広く「フランチャイズ・システム」が普及しており、多くの企業がフランチャイ

ズ店舗を用いて店舗展開を行っている。社団法人日本フランチャイズ・チェーン協会 (以下、

JFA と略記) の調査によれば、1983 年から 2007 年まで、企業数、店舗数、売上高のすべて

がプラスの成長をみせている。この 25 年の間に、チェーン数はおよそ 2.5 倍、総店舗数お

よそ 3 倍、売上高についてはおよそ 7 倍となっており、フランチャイズ・ビジネスは大きな

産業へと成長している。企業にとって、フランチャイズ・システムによる事業展開は魅力的

な戦略の 1 つであるといえよう。

一般的に、フランチャイズ・システムとは、ある事業者 (本部・フランチャイザー) が他

の事業者 (加盟店・フランチャイジー) に自社の製品・サービスを販売する権利や商標を使

用する権利を与え、その見返りとして、加盟店は本部へロイヤルティを支払うといった 2 つ

の独立した企業間の契約と定義される1。本部と加盟店との契約は製品・サービスの販売権

や商標の使用権のみにととまらず、マーケティング、接客、品質管理といったビジネス・フ

ォーマット全体を含む契約となっている。我が国において、フランチャイズ・システムとは、

このような「ビジネス・フォーマット型フランチャイズ (business format franchising)」を指

すことがほとんどである2。

フランチャイズ・システムの研究は、多くの領域で研究者を魅了してきた分野でもある。

Dant & Kaufmann (2003) は、フランチャイズの研究は経済学、経営学、法学、ファイナンス、

マーケティングといった異なる領域から注目を集めてきたと指摘している。その主題は、フ

ランチャイズ・システムを選択する要因やその所有構造であり、1970 年以降、多くの研究

者が理論研究および実証研究を行っている (e.g. Oxenfeldt & Kelly, 1968; Hunt, 1973; Caves &

Murphy, 1976; Brickley & Dark, 1987; Brickley, Dark & Weisbach, 1991; Norton, 1988a; Dant,

Kaufman & Paswan,1992; Lafontaine, 1992; Lafontaine & Kaufmann, 1994; Dahlstrom & Nygaard,

1994, 1999; Dant, Paswan & Kaufman, 1996; Dant & Paswan, 1998; Dant & Kaufmann, 2003;

1 社団法人日本フランチャイズ・チェーン協会の定義によれば、「フランチャイズ・システムとは事

業者が他の事業者との間に契約を結び、自己の商標、サービスマーク、トレード・ネームその他の営

業の象徴となる標識、および経営のノウハウを用いて、同一のイメージのもとに商品の販売その他の

事業を行う権利を与え、一方、加盟店はその見返りとして一定の対価 (ロイヤルティ) を支払い、事

業に必要な資金を投下して本部の指導および援助のもとに事業を行う両者の継続的関係」である。 2 その他の形態として、「商標ライセンス型フランチャイズ (product and trade name franchising)」が挙

げられる。自動車ディーラーやガソリンスタンドなどに見られる伝統的な形態であり、企業は他の特

定の企業に対し、自社の商標のもとで製品・サービスを販売する権利を与えるものである。

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フランチャイズ・システムにおける意思決定権の集権化と分権化

―環境不確実性と資産の契約可能性に着目して―

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Lafontaine & Shaw, 2005; Windsperger & Dant, 2006)。

チェーンストア・オペレーションを採用する多くの企業が、フランチャイズ店舗以外に直

営店も運営している。しかし、それらを外観から区別することは不可能である。なぜなら、

本部は各店舗の統一的なイメージを重視し、契約に基づいて加盟店は本部の意思に沿う形で

販売活動を行っているからである。丸山 (2003) は、一般的にフランチャイズ・システムに

は 2 つの特徴があると述べている。第 1 に資本的に独立した加盟店を通じて、製品・サービ

スを販売するために、加盟店に意思決定の自律性が残されており、直営店のように本部が販

売に関する意思決定権を完全に支配する「垂直統合」とは異なっている。第 2 に、本部と加

盟店とが共同事業へのコミットメントを伴う形で継続的な取引関係を結ぶとともに、契約を

通じて意思決定の調整が図られている (丸山, 2003)。

本部と加盟店は契約関係に影響を与えうる将来の状況の異動について、契約書にすべてを

明記することは不可能である。つまり、契約は不完備となる。フランチャイズ・システムで

は、加盟店は本部によってコントロールされているわけであるが、各店舗において、契約書

に明記されていない事態が生じた場合、意思決定の所在はどのようになるのであろうか?こ

のことは、本部が加盟店にどの程度の自由裁量を与えるのかという問題、つまり本部と加盟

店間の意思決定権の配分の問題である。この問題は、適切なインセンティブを付与し、組織

が効率性を実現するために非常に重要である。

この本部と加盟店間の意思決定権の配分という論題は、既存研究が軽視してきた領域であ

る。この論題を扱った実証研究は、著書の知る限り、Windsperger (2004) しか存在していな

い3。彼は所有権理論を用いて、残余利益を生成する無形資産が意思決定権の配分に及ぼす

影響を明らかにしている。しかし残念なことに、彼の研究は環境要因を考慮していないとい

う問題がある。市場が不安定であり顧客ニーズが頻繁に変動するといったように、市場の不

確実性が高い場合、本部あるいは加盟店にとって、残余利益を生成するための無形資産がよ

り重要となると考えられる。たとえば、市場が不確実な場合、売上の予測は困難となる。こ

のとき、加盟店にとって、従業員の教育やトレーニング、品質の管理、その地域に適応した

仕入れやサービスは、より効率的に店舗を経営するために重要となる。かくして、本論の目

的は既存研究が軽視してきた環境不確実性に着目し、フランチャイズ・システムにおける意

思決定権の集権化と分権化のメカニズムを明らかにすることである。

我が国において、フランチャイズ・システムが広く普及しているにもかかわらず、既存研

3 Arrunada, Garicano & Vazquez (2001) は自動車ディーラーに限定し、同様の論題について実証分析を

行っているが、フランチャイズ・システム一般を対象とした研究は Windsperger (2004) しか存在して

いない。

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究の多くは米国や北欧諸国のフランチャイズ・チェーン (以下、FC と略記) を基に分析され

ており、我が国を対象とした実証研究はほとんど行われていない。この点に関し、丸山・山

下 (2010) は既存研究の仮説を他の地域でも検証し、頑健性を確認すべきであると指摘して

いる。しかし、我が国を対象とした実証研究は Maruyama & Yamashita (2010) しか存在して

おらず、さらに意思決定権の配分といった論題は、これまで扱われてこなかった領域である。

それゆえ、我が国の FC を対象として、意思決定権の配分メカニズムの解明を試みる本論は

学術的に意義のあるものと主張できよう。

本論の構成は以下の通りである。まず次節にて、我が国の FC の現状とフランチャイズ・

システムの特徴についてまとめる。つづく第 3 節では、3 つの観点から既存研究のレビュー

を行う。まず、フランチャイズ・システムに関する研究のレビューを行う。次に、理論モデ

ルの背景となる所有権理論および取引費用理論を説明し、意思決定権に関する研究のレビュ

ーを行う。第 4 節では、所有権理論に基づき、理論モデルを吟味し、実証分析の可能な因果

仮説を提唱する。第 5 節では、調査方法について言及し、第 6 節では、回帰分析の結果につ

いて吟味する。最後に第 7 節にて、本論の知見および貢献をまとめ、本論の限界と今後の課

題に触れて結びとする。

2. 日本のフランチャイズ・チェーンの成長・現状

本節では、議論の焦点となる我が国の FC の成長や現状について簡単に説明する。表 1 は

1983 年から 2009 年までのチェーン数、店舗数、売上高を年次別でまとめたものである。2008

年と 2009 年には成長率がマイナスになっているが、1983 年から 2007 年にかけてチェーン

数、店舗数、売上高はプラスの成長を続けている。1983 年と比較すると、FC は最大で 2007

年に 1246社と約 2.5倍、店舗数は最大で 2007年に 23 万 5,686 店舗と約 3倍に増加しており、

過去 20 数年で、FC が急激に増加・発展していることがわかる。また、売上高についてはお

よそ 7 倍の成長を遂げている。小売業に着目すると、1985 年の小売業の総売上高は 101 兆

円 7,188 億円であり、FC はそのうちの 2%を占めていたにすぎなかった。しかし、2007 年に

は約 7%を FC が占めており、我が国の小売業において、フランチャイズ・システムの存在

感が増しているといえるだろう4。

2009 年、日本国内の FC は 1,246 社あり、店舗数は 23 万 5,686 店舗、総売上高については

20 兆 3,037 億円となっている。JFA の統計調査では、FC は小売業 (コンビニエンス・ストア、

総合スーパーマーケット、ディスカウント・ストア、宅配販売、食料品・衣料品などの各種

専門店)、サービス業 (ホテル、リース、レンタル、学習塾、スポーツ・クラブなど)、外食

4 これらの数値は、各年度の商業統計と比較し、算出した

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フランチャイズ・システムにおける意思決定権の集権化と分権化

―環境不確実性と資産の契約可能性に着目して―

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業 (ファスト・フード、レストラン、居酒屋、喫茶店など) の 3 つの業種に分類されている。

表 1 は 2009 年度の各業種のチェーン数、店舗数、売上高を示したものである。

表 1 年次別のチェーン数・店舗数・売上高 (1983 年-2009 年)

年次 チェーン数 成長率

(%) 店舗数

成長率

(%)

売上高

(百万円)

成長率

(%)

1983 512 67,578 3,443,539

1984 588 14.8 86,908 28.6 3,985,910 15.8

1985 596 1.4 89,267 2.7 4,515,362 13.3

1986 617 3.5 99,579 11.6 5,160,834 14.3

1987 626 1.5 104,488 4.9 5,939,078 15.1

1988 626 0.0 113,267 8.4 6,357,701 7.0

1989 666 6.4 118,650 4.8 8,013,949 26.1

1990 680 2.1 123,365 4.0 8,857,254 10.5

1991 688 1.2 127,821 3.6 10,158,676 14.7

1992 703 2.2 131,506 2.9 10,936,852 7.7

1993 714 1.7 139,788 6.3 11,421,647 4.4

1994 734 2.8 146,045 4.5 12,254,036 7.3

1995 755 2.9 158,223 8.3 13,058,716 6.6

1996 803 6.4 177,196 12.0 14,181,817 8.6

1997 890 10.8 189,556 7.0 15,175,989 7.0

1998 923 3.7 192,450 1.5 16,190,025 6.7

1999 968 4.9 195,335 1.5 16,585,846 2.4

2000 1,048 8.3 205,609 5.3 16,871,437 1.7

2001 1,049 0.1 209,980 2.1 16,996,271 0.7

2002 1,063 1.3 215,710 2.7 17,368,873 2.2

2003 1,074 1.0 220,710 2.3 17,868,851 2.9

2004 1,088 1.3 225,957 2.4 18,722,286 4.8

2005 1,146 5.3 234,489 3.8 19,388,888 3.6

2006 1,194 4.2 235,440 0.4 19,603,579 1.1

2007 1,246 4.4 235,686 0.1 20,303,777 3.6

2008 1,231 -1.2 230,822 -2.1 20,808,749 2.5

2009 1,206 -2.0 231,660 0.4 20,808,124 0.0

出所) JFA フランチャイズ・チェーン統計調査 (1983 年度-2009 年度)

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白石秀壽

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表 2 業種別のチェーン数・店舗数・売上高 (2009 年)

業種 チェーン数 店舗数 売上高 (百万円)

総数

小売業

1206

330

231,666

89,680

20,803,124

8,914,177

(うち CVS) 27 45,006 8,119,490

外食 512 54,426 3,932,675

サービス 364 87,560 662,543

出所) JFA フランチャイズ・チェーン統計調査 (2009 年度)

3. 既存研究レビュー

本節の既存研究のレビューは、3 つの構成から成る。はじめに、フランチャイズ・システ

ムの研究群のレビューを行う。次に、本論の理論モデルの背景となる取引費用理論と所有権

理論について説明し、最後に、意思決定権に関する研究のレビューを行う。以上の既存研究

を踏まえて、その問題点について言及し、次節の仮説提唱への橋渡しを行う。

3-1. フランチャイズ・システムを対象とした研究

フランチャイズ・システムに関する研究は、(1) 所有構造のパターンに着目した研究群と、

(2) フランチャイズ契約におけるロイヤルティに着目した研究群に大別される5。本論では、

前者の所有構造のパターンに関する研究を中心にレビューを行う。

フランチャイズ・システムの所有構造についての研究には、概して 2 つのアプローチが存

在している。第 1 に、資源依存理論 (Pfeffer & Salancik, 1978) に基づく資源制約アプローチ

の研究群である。第 2 に、エージェンシー理論の視点からアプローチしたインセンティブ・

アプローチの研究群である。

3-1-1. 資源制約アプローチ

前者の資源依存理論 に基づく研究群は、企業が直面している資源制約の問題に着目して

いる。Pfeffer & Salancik (1978) は、組織行動の理解のためには組織とその環境における他の

社会的行為者との関係を理解する必要があると主張して、組織間の依存関係にあわせた。

フランチャイズ・システムの文脈において、資源制約アプローチを初めて主張したのが

5 ロイヤルティに着目した研究として、Caves & Murphy (1976)、Rubin (1978)、Brickley & Dark (1987)、Lal (1990)、Lafontaine (1992)、Sen (1993)、Bhattacharyya & Lafontaine (1995)、丸山 (2003)、Varquez (2005) などが挙げられる。

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フランチャイズ・システムにおける意思決定権の集権化と分権化

―環境不確実性と資産の契約可能性に着目して―

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Oxenfeldt & Kelly (1968) である。その後、彼らの議論は多くの研究者によって、拡張され (e.g.

Hunt, 1973; Caves & Murphy 1976; Norton, 1988a; Dant, Kaufman & Paswan,1992; Dant, Paswan

& Kaufman, 1996; Dant & Kaufmann, 2003; Windsperger & Dant, 2006)、現在でも企業がフラン

チャイズ・システムを採用する要因を説明するための有用な理論の1つである。

資源制約の問題に直面している企業が資源を確保するための選択肢として、資本市場から

の資金調達とフランチャイズ・システムの導入が挙げられる (Dant & Kaufumann, 2003)。本

部が新規店舗を直営店として開設するのに必要な資本金を集めることが困難な場合、フラン

チャイズ・システムを採用する (Caves & Murphy, 1976)。このOxenfeldt & Kelly (1968) を嚆

矢とする議論の一般的な主張は以下の通りである。組織のライフサイクルの初期の段階にお

いて、企業は資本金、人材、情報などの資源制約の問題に直面している。そこで、企業は資

源制約問題を克服するためにフランチャイズ・システムを採用し、店舗および事業の拡大を

遂行するものと主張された。

Norton (1988a) によれば、資本市場では資本金の調達は可能であるが、フランチャイズ・

システムは資本金、人材、情報などの資源の効率的なバンドル調達が可能となる。また、高

岡 (1999) は資源制約問題の観点から、コンビニエンス・ストアの最大手セブンイレブンに

焦点を当て、考察を行っている。彼女は、セブンイレブンは自社の戦略を実行するために必

要とされる資源と自社の保有している資源との格差を解消するためにフランチャイズ・シス

テムを採用したと指摘している。

以上の議論は、Rubin (1978) によって、リスク・シェアリングの観点から批判されている。

Rubinは、1店舗に投資することは、チェーン内のすべての店舗をポートフォリオとして投資

することよりもリスクが高いと考えられることから、この資源制約アプローチを批判してい

る。加盟店はフランチャイズ・システムにおける集中的な投資を補うためにリスクプレミア

ムを要求すると考えられる。Rubinは、たとえ本部が店舗拡大のための費用を資本市場から

集めることが困難であり、資金を有する企業家に頼る場合であっても、その個人を加盟店の

経営者として採用するよりも、チェーン全体でポートフォリオを構築して、その個人に債権

を販売したほうが効率的に資本金を集めることができると主張した。つまり、彼の主張では、

企業が資源制約の問題に直面していたしても、フランチャイズ店舗よりも直営店のほうが効

率的なのである。

しかし、Rubinの主張も様々な理由で批判されている。加盟店による資本金の供給の取引

費用は、外部サプライヤーのそれよりも低い。企業の能力と戦略に関し、公的な情報しか利

用できない投資家と比べると、加盟店は企業の能力と戦略に関してより局所的な情報を持っ

ている (Combs & Ketchen, 1999a, 1999b)。さらに、金融逼迫の状況下においては、未成熟な

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加盟店は貸付制限によって市場を締め出される可能性もある (Martin, 1988)。この場合、本

部は成長率を安定した水準に保つために、フランチャイズ店舗比率が高い形態を採用する。

また、消極的な投資家は直営店の低いインセンティブを懸念すると考えられる6。それゆえ、

消極的な投資家はフランチャイズ店舗比率の高い企業への投資に比べて、直営店比率の高い

企業に対しては、高いリスクプレミアムを要求するだろう (Lafontaine, 1992)。

Rubin (1971) の批判以外にも、資源制約アプローチにはいくつかの問題点が指摘されてい

る。第1に、フランチャイズ・システムが成長し、成熟するにつれて、加盟店を使用する必

要性はなくなる点である (Lafontaine, 1992)。成功しているフランチャイズ・システムでは、

本部は加盟店を買い戻そうとするので、最終的に100%が直営店に帰結するはずである。こ

のことから、FCにおいて多くの直営店が観察されるべきであるが、現実は理論の予測に反

している。第2に、店舗や土地などを本部が所有し、店舗の経営を委託するような方式が存

在している (Lafontaine, 1992)。このことは、本部が資源の供給源としてフランチャイズ・シ

ステムを採用しているわけではないことを示唆している。

3-1-2. インセンティブ・アプローチ

資源制約アプローチは、実務の世界では通説となっており、フランチャイズ・システムの

所有構造を説明する有用な理論の1つであることは確かであるが、上述のレビューを踏まえ

ると、資源制約アプローチのみでフランチャイズ・システムの所有構造を説明するのは不十

分である。この点に関し、Lafontaine (1992) は資源制約問題を店舗レベルでのインセンティ

ブ問題 (プリンシパル・エージェント問題) と組み合わせる必要があると述べている。

既述のように、フランチャイズ・システムの研究は資源依存理論の視点に加えて、エージ

ェンシー理論によっても検証されてきた (e.g. Brickley & Dark 1987; Brickley, Dark &

Weisbach, 1991; Lafontaine 1992; Lafontaine & Kaufmann 1994; Dahlstrom & Nygaard 1994, 1999;

Lafontaine & Shaw, 2005)。

本部にとって、加盟店の販売活動を監視することは困難である。需要の不確実性のために、

加盟店の売上を予測することができず、売上高によって加盟店のモラルハザードを判断する

ことも困難である。本部が加盟店の販売活動をモニタリングできない場合には、加盟店には

怠けるインセンティブが生じうる。このため、加盟店のモラルハザードが発生しやすい場合

には、固定給よりも変動給によって、販売に勤しむ強いインセンティブを付与する必要があ

6 この問題は後述するが、このことは直営店の店長は固定給であるがために、その販売活動に関して、

怠けるインセンティブを持っているという、標準的なプリンシパル・エージェント問題に起因してい

る。

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フランチャイズ・システムにおける意思決定権の集権化と分権化

―環境不確実性と資産の契約可能性に着目して―

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る (Brickley & Dark, 1987)。さらに、Brickley & Darkは直営店の給与は本部から固定的に支払

われるために、サービスや品質の手を抜き、売上が減少したとしても、その分の損失をすべ

て負担するわけではなく、直営店はフランチャイズ店舗よりも怠けるインセンティブが高い

ことを示している。

以上は、加盟店のモラルハザードを問題としてきたが、実際には、本部側のモラルハザー

ド問題も存在している。ビジネス・フォーマット型フランチャイズにおいて、本部は広告や

プロ―モーションを通して、ブランド価値を維持し、スーパーバイザーやエリア・マネジャ

ーなどの本部担当者による継続的な経営指導を行う。これらの活動はフランチャイズ・ビジ

ネスの成功にとって、重要である。しかし、加盟店が本部の努力をモニタリングできない場

合には、本部にも怠けるインセンティブが発生する。これは本部と加盟店の努力がともに第

三者に立証可能ではないため、その両方を契約で拘束できない状況であり、ダブル・モラル

ハザード (double-sided moral hazard) と呼ばれる問題である7。この種の問題をフランチャイ

ズ・システムに拡張したのがRubin (1978) である。その後、この問題はLal (1990) がより定

式化した分析を行っており、Bhattacharyya & Lafontaine (1995) によって、一般化された。実

際に、Lafontaine (1992) は、本部は加盟店との目標を調和させ、各自の努力への適切なイン

センティブを付与するためにロイヤルティを利用していると報告している。ダブル・モラル

ハザードの状況下において、本部と加盟店にインセンティブを与えるためには契約にロイヤ

ルティを含める必要がある (丸山, 2003)。

このインセンティブ・アプローチはエージェンシー理論に依拠しているが、エージェンシ

ー理論は完備契約を仮定しているという問題がある。現実の世界では、将来の状況の異動に

ついて、契約書にすべてを明記することは不可能である。契約が不完備な場合、契約の内容

について事後的な交渉が行われる。そのため、インセンティブ・アプローチのみを用いて、

本部と加盟店の関係を説明することは不十分であるといえる。

3-1-3. フリーライダーとシグナリング

フランチャイズ・システムの所有構造のパターンに関する研究は、資源制約アプローチと

インセンティブ・アプローチ以外の研究も存在している。その1つとして、加盟店によるフ

リーライダー問題が挙げられる。Lafontaine & Shaw (2005) はフランチャイズ・パッケージ

のブランド価値が高い場合、直営店が増加すると指摘している。加盟店は本部のブランドに

フリーライドし、サービスや品質の手を抜くといったインセンティブを持っている。このと

7 これに対し、一般的なモラルハザードは「シングル・モラルハザード (single-sided moral hazard)」という。

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白石秀壽

10

き、サービスや品質の低下によって当該加盟店は低費用を享受し、評判へのダメージは本部

とその他の全店舗が負担することになる。また、Brickley & Dark (1987) は、フリーライダ

ー問題は消費者が同一店舗で繰り返し製品・サービスを購入することが少ない業種で発生し

やすいと指摘している8。

さらに、その他のアプローチとしてシグナリングが挙げられる (e.g. Tirole, 1988; Gallini &

Wright, 1990; Beggs, 1992; Gallini & Lutz, 1992; Lafontaine, 1993)。シグナリングとは、Spence

(1973) によって提唱された理論である。売り手にとって、製品・サービスの品質が明瞭であ

るが、買い手は品質についての情報を持っていない場合、つまり、売り手と買い手の間に「情

報の非対称性 (information asymmetry)」が存在する場合、「逆選択」の問題が生じる (Akerlof,

1970)。シグナリングは、逆選択を解消するための 1 つの方法である。シグナルとは、売り

手が買い手の知覚できない製品・サービスの品質について、多大な費用をかけて、信頼に足

る情報を伝えるためにとる行動である。フランチャイズ・システムを用いて事業展開を行う

企業は、情報の非対称性という問題に直面している。すなわち、潜在的な加盟店にとって、

フランチャイズ・ビジネスの安定性や潜在的な利益についての情報は不完全なものとなる。

企業は様々な方法でシグナルを送り、情報の非対称性に起因する逆選択の問題を解決しよう

としている9。フランチャイズ・システムにおけるシグナルとは、FC が多くの店舗を直営す

ることによって、システムの利益の潜在性、実行可能性、安定性といった強力かつ信頼に足

るシグナルを送ることである (Tirole, 1988; Gallini & Lutz, 1992)10。

フランチャイズ・システムは資源制約アプローチ、インセンティブ・アプローチ、フリー

ライダー問題、シグナリングというように様々な観点から研究されている。しかし、所有構

造のパターンを説明しうる唯一有用なアプローチは存在せず、いくつかのアプローチを組み

合わせる必要がある。

3-2. 取引費用理論と所有権理論

流通チャネル研究における取引形態の選択問題を説明しうる、有用な理論の1つとして取

引費用理論が挙げられる。取引費用理論とは、Coase (1937) によって提起された、市場と組

織の選択問題をWilliamson (1975, 1985) が操作化・精緻化したものである。その一般的な主

張は、市場取引の費用が内部調整の費用よりも高い場合に、組織が選択されるというもので

8 たとえば、ホテル、レストラン、レンタカーといった業種である。 9 たとえば、製品・サービスの品質のシグナルとして、保証、価格、広告などが挙げられる。 10 この主張は Leland & Pyle (1977) の主張と近似している。Leland & Pyle によれば、企業家は事業に

対し、私的な投資を行うことによって、その事業の実行可能性を潜在的な投資家に、容易に示すこと

ができる。

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フランチャイズ・システムにおける意思決定権の集権化と分権化

―環境不確実性と資産の契約可能性に着目して―

11

ある11。取引費用とは、製品・サービスを購入・利用する際に生じる、取引相手を探すとい

った「探索費用」、取引相手と価格などの取引条件などで交渉するといった「交渉費用」、契

約書を作成したり、契約通りに取引が実行されているかどうかを監視したりするという「執

行費用」を指す (Dahlman, 1979)。

Williamson (1975) の分析枠組は、「限定合理性 (bounded rationality)」と「機会主義

(opportunism)」の2つの行動仮定と「不確実性 (uncertainty)」という環境仮定から成る。限定

合理性とは人間は意図としては合理的であるが、その能力には限界があること、機会主義と

は自己の利益のために状況を悪用するような陰険な私利の追求と定義される。限定合理性、

機会主義、不確実性の相互作用によって、取引費用が生じるのである。

さらに、取引費用理論における重要な概念の1つとして、「資産特殊性 (asset specificity)」

が挙げられる。関係特定的な資産は、特定の取引相手以外には、ほとんど価値を持たず、そ

の資産を他の取引相手に用いる場合には、生産性の低下や多大なスイッチング・コストを伴

う。資産特殊性が高い状況下では、契約の事前と事後に多大な取引費用がかかる。このとき、

企業はその取引費用を節約すべく、組織を選択するのである。

取引費用理論において、Williamson (1985) は資産特殊性を、立地資産特殊性、物的資産特

殊性、人的資産特殊性、専有資産特殊性の4つの形態に分類している。Subramani &

Venkatraman (2003) やZaheer & Venkatraman (1994) は、取引費用理論に依拠した多くの既存

研究は、資産特殊性を有形資産だけに着目してきたが、無形資産を含む多様な形態が含まれ

ることを指摘している。しかし、その指摘は誤りである。既にAnderson (1985) が電子部品

産業における販売員の内部化について分析を行っており、人的資産の資産特殊性が高い場合、

製品知識と顧客関係性が販売成果を高めることになるため、販売員を内部化すると結論付け

ている。彼女はWilliamsonの挙げている特殊資産の中でも、販売機能担当者を保有する人的

資産が重要である指摘している。人的資産は物的資産と比較して、無形性が高く、契約によ

って移転することは困難である。すなわち、ある資産が契約によって移転できるか否かとい

った識別が重要となる。

ここで本論では、取引費用理論を定式化したものと位置づけられる所有権理論 (property

right theory) に注目する12。所有権理論とはGrossman、Hart、Mooreらが展開しているもので

あり、資産の所有とコントロールの重要性に着目している (e.g. Grossman & Hart , 1986, Hart

& Moore, 1990, Hart , 1995)。

11 取引費用理論において、市場と組織の選択問題は解明する際には、「最初に市場があった」

(Williamson, 1975, p.20) ということを仮定している。 12 本論で取り上げられる所有権理論は、「不完備契約論」とも呼ばれる。

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白石秀壽

12

彼らの議論では、資産の所有者は、契約によって他者に資産の使用権を与えることができ

るが、契約に明記されていない点についての権利は当該資産の所有者にある。すなわち、資

産の所有者はその資産に対する残余コントロール権 (residual control rights) を保有している。

残余コントロール権とは、あらかじめ締結されている契約、慣習、法律に反しない限り、資

産の使用にかかわるいっさいを自由に決定することができる権利と定義される (Hart, 1995,

p.41)。

残余コントロール権の構造は無形資産の配分に起因する (Hart & Moore, 1990; Barzel,

1997)。残余利益を生む無形資産の所有者は、残余利益を最大化するために残余コントロー

ル権を保有する必要がある (Rajan & Zingales, 2000)。不完備契約であったとしても、特定の

資産に対する権利や非残余コントロール権は明確に契約書に記述される。それゆえ、契約書

に書き下し、明記することのできる権利とは、汎用的な知識やノウハウ、そして形式知であ

る。

経営戦略論の領域において、Itami (1984) とItami & Roehl (1987) を発端とし、Hall (1989,

1993) は、所有権理論で用いられる概念と部分的に互換性のある無形資産の概念を展開して

いる。Hallは、無形資産を知的財産権と知的資産の2つに分類している。前者の知的財産権

とは、特許、商標、著作権、登録意匠、そしてデータベースといった比較的に契約可能な無

形資産であり、後者の知的資産はケイパビリティ (スキルとノウハウ)、評判やグッドウィル

といった契約不可能な資産である。資産の契約可能性 (contractibility) とは、資産が契約に

よって移転することができる程度と定義される (Hall, 1989)。ケイパビリティは暗黙知の集

合であることから、契約不可能な資産とされる (Contractor, 2000; Fernandez, Montes &

Vazquez, 2000)。契約不可能な資産は、容易に移転したり、模倣したりすることができない

ので、競争優位の源泉となる (Hall, 1993)。Hallが示している知的資産は、所有権理論で用い

られている無形資産の概念から、派生したものである (Windsperger, 2004)。

以上の議論から、知的資産を考慮し、資産を最適に利用することができる主体に残余コン

トロール権が割り当てられるのならば、最大の資産価値が得られることが示唆される

(Wruck & Jensen, 1994; Aghion & Tirole, 1997; Malone, 1997)。

3-3. 意思決定権に関する研究

Hayek (1935, 1940) によれば、中央計画者が特定の時と場所において専門の知識を有して

いる場合においてのみ、集権化は効果的である。March & Simon (1958) は組織デザインに対

し同様なアイデアを示している。彼らは、経営者の情報処理能力の限界のために、組織はよ

り下位の階層組織に意思決定権を譲渡する必要があると指摘している。所有権理論に依拠し、

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フランチャイズ・システムにおける意思決定権の集権化と分権化

―環境不確実性と資産の契約可能性に着目して―

13

Jensen & Meckling (1992) は、意思決定に関して責任の伴う人には、それに対応した知識があ

ることが、組織の効率性にとって必要であると指摘している。

知識の伴う意思決定は、決定権を持つ人へ知識を移転すること、あるいは知識のある人へ

決定権を譲渡することで達成することができる。経営者へ知識を移転する費用が低い場合に

は、決定権は経営者が持ち続ける傾向にあり、その費用が高い場合には、より下位の階層組

織へ決定権が譲渡する傾向にある (Malone, 1997)。

完備契約の下では、組織の効率性は単純に契約によって達成される。しかし、不完備契約

の場合、契約の他に法律や組織といった制度がそれぞれ補完し合い、効率性の実現やインセ

ンティブのために機能する (柳川, 2000)13。企業は、所有権の配分や企業内の意思決定権の

配分を工夫し、効率性を高めるのである。契約の完備性と効率性の関係は図1のように図式

化される。

図 1 契約と効率性

出所) 柳川 (2000, p84) に一部修正を加えて作成。

以上、第 3 節では、3 つの観点からレビューがなされた。第 1 に、フランチャイズ・シス

テムがレビューされた。1970 年以降、多くの研究者がフランチャイズ・システムを研究対

象とし、理論分析・実証分析を行ってきた。しかし、意思決定権の配分を対象とした研究は

取り扱われてこなかった領域である。第 2 に、本論の理論的な背景となる取引費用理論と所

有権理論についてレビューされたが、所有権理論は取引費用理論のもつ資産の契約可能性の

識別という限界を克服しうる理論であり、本論の論題に援用可能であることが見出された。

13 組織の効率性に対する、法律の役割は「法と経済学」といった領域で扱われてきた論題である。詳

しくは、柳川 (2000) を参照のこと。

完備契約の場合 不完備契約の場合

効率性 効率性

契約

法律

契約

組織

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第 3 に、意思決定権と不完備契約について簡単に説明し、不完備契約となってしまう現実の

世界において、組織の効率性のためには、意思決定権の配分が重要であることが示唆された。

本部と加盟店間の意思決定権の配分メカニズムは重要な論題である。とりわけ不完備契約の

下では、本部と加盟店間の意思決定権の配分はより重要である。しかし、この論題はフラン

チャイズ・システムの既存研究では扱われておらず、所有権理論を援用することで、説明可

能になると考えられる。

次節では、所有権理論を援用し、実証分析の可能な因果仮説を導出する。

4. 仮説

本節では、所有権理論に基づき、フランチャイズ・システムにおける無形資産と意思決定

権の配分について吟味し、実証可能な因果仮説を導出する。フランチャイズ・システムにお

ける無形資産として、本部が保有するシステム特定的ノウハウおよびブランド力 (Klein &

Leffler, 1981; Norton, 1988a) と加盟店が保有する店舗特定的ノウハウ (Sorenson & Sorensen,

2001) が挙げられる。前者のノウハウは、立地選択、店舗レイアウト、製品開発や仕入れに

おける知識やスキルを指し、後者は、広告、顧客サービス、品質管理、人的資産の管理、製

品開発といったノウハウを指している。本論では、データ収集の困難性から本部のブランド

力については除外した。既存研究において、ブランド力の代理変数として「広告費売上高比

率」が採用されているが、多くの企業は複数の FC を経営しており、各事業部の広告費売上

高比率のデータを収集することは困難なためである14。

所有権理論によれば、残余コントロール権の構造は無形資産の配分に起因している (Hart

& Moore, 1990; Barzel, 1997)。本部の知的資産が無形的であるほど、集権的な意思決定がなさ

れる。その一方で、加盟店の知的資産が無形的であるほど、分権的な意思決定がなされる。

そのため効率的な所有権構造は知的資産と決定権の補完性を示唆している (Milgrom &

Roberts, 1995; Hitt & Brynjolfsson, 1997)。以上の議論を踏まえて、Windsperger (2004) はこの

知的資産と決定権の関係を 2 つのケースで説明している。

14 Windsperger (2004) では、広告費売上高比率をブランド力の代理変数として分析している。しかし、

このような測定尺度では、各 FC のブランド力を正しく測定できていないと考えられる。

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―環境不確実性と資産の契約可能性に着目して―

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図 2 本部と加盟店の知的資産の関係 (ケース A)

図 3 本部と加盟店の知的資産の関係 (ケース B)

以上の 2 つのケースから以下のことが示唆される。本部と加盟店は高い事後的利益を生む

ために関係特定的投資をしなければならない。残余利益を創出する本部の無形資産が重要な

場合には、知識を有効に活用するために権限が付与されなければならない (Windsperger,

2004)。かくして、以下の仮説が導出される。

H1:本部のフランチャイズ・システムノウハウは、フランチャイズ・システムの集権性に

正の影響を及ぼす。

H1:本部のフランチャイズ・システム特定的ノウハウは、フランチャイズ・システムの集

権性に正の影響を及ぼす。

知的資産

(契約可能)

本部

知的資産

(契約不可能)

加盟店

◯ケース B

加盟店が残余利益を生成する知的資産の大部分を保有し、加盟店のノウハウの特殊性

の程度が低い場合、ランチャイズ・システムの残余利益を最大化するために、残余コン

トロール権が加盟店に移譲される必要がある。そのため、ケースAと比較して、フラン

チャイズ・システムはより分権的になる。

◯ケース A

本部が知的資産 (システム特定的ノウハウ) の大部分を保有し、加盟店の知的サイン

特殊性が低い場合、本部はフランチャイズ・システムの残余利益を最大化するために残

余コントロール権の大部分を保有する必要がある。それゆえ、フランチャイズ・システ

ムはより集権的になる。

知的資産

(契約不可能)

本部

知的資産

(契約可能)

加盟店

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加盟店の保有する無形資産が特殊であれば、残余コントロール権は加盟店に移譲される必

要がある。それはすなわち、知識を移転する費用が非常に高い、すなわち加盟店の保有する

知的資産の契約可能性が低い場合である (Malone, 1997; Brickley, Smith & Linck, 2000)。した

がって、加盟店の保有する知的資産はフランチャイズ・システムの集権性に負の影響を及ぼ

すという仮説が導出される。この仮説は関連する3つの下位仮説を含んでいる。

加盟店の知的資産は大きく2つに分けることができる。加盟店の知的資産とは「探索資産

(exploration assets)」と「活用資産 (exploitation assets)」で構成される加盟店のノウハウであ

る (Thompson, 1994; March, 1991; Bradach, 1997; Sorenson & Sorensen, 2001)。探索資産はロー

カル市場の情報、イノベーションや適応の能力、活用資産は品質管理や人的資産の管理とい

ったマネジメント能力と定義される。また、探索資産は活用資産よりも無形性の程度が高い

ことから、探索資産は本部と加盟店間の資産の残余コントロール権配分により強い影響を及

ぼすであろう (Gu & Lev 2003)。かくして、以下の仮説が導出される。

つづいて、環境の不確実性について吟味する。市場が不安定であり顧客ニーズが頻繁に変

動する場合、売上の予測は困難となる。市場の不確実性が高い状況下では、本部と加盟店は

より効率性を高めることが求められる。このとき、加盟店にとって、従業員の教育やトレー

ニング、品質の管理、その地域に適応した仕入れやサービスは、より効率的に店舗を経営す

るために重要となる。所有権理論によれば、残余利益を最大化するための事後的な関係特定

的投資を行うために、知的資産の構造によって、本部あるいは加盟店に残余コントロール権

が付与される必要がある。これは市場不確実性が高い状況下で、典型的に生じる現象である。

かくして、以下の仮説が導出される。

H5:市場不確実性が高い状況では、本部のフランチャイズ・システム特定的ノウハウは、

フランチャイズ・システムの集権性により強い正の影響を及ぼす。

H6:市場不確実性が高い状況では、加盟店の探索資産は、フランチャイズ・システムの集

権性により強い負の影響を及ぼす。

H7:市場不確実性が高い状況では、加盟店の活用資産は、フランチャイズ・システムの集

権性により強い負の影響を及ぼす。

H2:加盟店の探索資産は、フランチャイズ・システムの集権性に負の影響を及ぼす。

H3:加盟店の活用資産は、フランチャイズ・システムの集権性に負の影響を及ぼす。

H4:加盟店の探索資産は、活用資産よりも、フランチャイズ・システムに強い負の影響を

及ぼす。

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5. 調査方法

本節では、前節で導出された因果仮説の経験的妥当性をテストするための調査概要および

各構成概念と観測変数について説明する。

調査は、2010 年 1 月 12 日から 24 日までの期間において、「日本のフランチャイズ・チェ

ーンの 2006」に掲載されている 740 チェーンから 500 チェーンを無作為に抽出し、質問紙

郵送法で行われた。その結果、54 チェーンから回答が得られ、そのうち部分的無回答票や

著しく偏りのある票を除外すると、有効回答数は 46 であり、有効回答率は 9.2%であった。

回答に際しては、加盟店との取引・契約の担当者に、主要な加盟店との関係について、5 点

リカート尺度での回答を依頼した15。

各構成概念を測定する質問項目は、表 3 の通りである。各構成概念は、既存研究の測定尺

度を参考に作成された。具体的には、「フランチャイズ・システム特定的ノウハウ」に関し

ては、久保 (2003) で用いられている「暗黙知度」を参照した。また、「探索資産」と「開発

資産」は Windsperger & Dant (2006)16、「フランチャイズ・システムの集権性」は Dewer, Whetten

& Boje (1980)、「市場不確実性」は久保 (2003) を基に作成された。複数の項目で測定された

構成概念の信頼性を判断するための指標である Cronbach の係数も同様に表 3 に示される。

フランチャイズ・システム特定的ノウハウの係数は.591 であり、既存研究の示す推奨値を

満たさなかったが、やや甘い基準でこれを採用した。この変数の低い信頼性については、本

論の問題点として指摘されるだろう。しかし、その他の変数の係数は.819 から.899 の値で

あり、既存研究の示す推奨値 0.7 を満たしており、高い信頼性を有していると主張できる17。

フランチャイズ・システムにおける意思決定権の配分に影響を及ぼすと考えられる要因と

して、「モニタリングの困難性」と「フランチャイズ・システムの規模」が挙げられる。モ

ニタリングの困難性を示す変数には、大きく分けて 2 つある (丸山・山下, 2010)。第 1 に、

質問票に基づき、モニタリングの困難性を直接測定することであり、第 2 に地理的分散やモ

ニタリングを行う本部からの距離、FC の進出州数などを代理変数として用いることである。

丸山・山下 (2010) の展望論文によると、モニタリングの困難性について直接的に測定を試

15 リカート尺度の利点としては、被験者の比較が可能、誤謬可能性が低い、時間効率が良い、便宜的

である、などが挙げられる。詳しくは Likert (1932) 他、Aaker & Day (1980) を参照のこと。 16 Windsperger & Dant (2006) では、Bradach (1997, 1998)、Cliquet (2000, 2002)、March (1991)、Sorenson & Sorensen (2001) に基づいて、探索能力と開発能力に関し、直営店の店長と加盟店の店長の相対的な

優位性を測定すべく、観測変数が作成されている。各変数の操作的定義として、探索能力は適応のイ

ノベーションとローカル市場の知識・情報、開発能力は品質管理とマネジメントの能力を参照してい

る (Windsperger & Dant, 2006)。 17 Cronbach の係数は、一般的に 0.7 以上が望ましいとされるが、探索的な研究では 0.6 以上でもよ

いとされる (Bagozzi, 1994)。

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みた分析はいずれも仮説を支持する結果が得られていない (e.g. Anderson & Schmittlein,

1984; Anderson, 1985; Scott, 1995)。そこで、本論ではデータの収集が容易であることから、

Lafontaine (1992) で採用されている進出州数を参照し、各 FC が進出している都道府県数を

モニタリングの困難性の代理変数として採用した。さらに、フランチャイズ・システムの規

模を示す変数として各 FC の「総店舗数」を挙げることができる。以上より、各 FC の「総

店舗数」と「進出都道府県数」を統制変数としてモデルに加えた。

表 3 構成概念と質問項目

構成概念/測定尺度

Y:フランチャイズ・システムの集権性 =.819

101 貴社が承認するまでは、フランチャイジーは新しいことを行うことができない。

102 些細なことであっても、貴社が最終的な権限を持っている。

103 フランチャイジーが何かを行う前には、貴社の指示が必要である。

104 フランチャイジーが新しいことを始める際には、貴社の承認が必要である。

X1:フランチャイズ・システム特定的ノウハウ =.591

201 貴社のノウハウは文書化して、各店舗に伝えられる。(逆転)

202 店舗では、貴社のノウハウはマニュアル化されている。(逆転)

X2:探索資産 =.899

301 直営店の店長に比べ、フランチャイジーの店長のほうが店舗周辺の地域についてよく知っている。

302 直営店の店長に比べ、フランチャイジーの店長のほうが店舗周辺の顧客ニーズをよく把握している。

303 直営店の店長に比べ、フランチャイジーの店長のほうがその地域に適応する能力がある。

X3:活用資産 =.835

401 直営店の店長に比べ、フランチャイジーの店長のほうが品質管理に優れている。

402 直営店の店長に比べ、フランチャイジーの店長のほうが人的資産の管理に優れている。

403 直営店の店長に比べ、フランチャイジーの店長のほうがマネジメントに優れている。

X4:市場不確実性 =.871

501 顧客ニーズは頻繁に変化する。

502 顧客ニーズを把握するのは困難である。

X5:モニタリングの困難性

601FC の進出都道府県数

X6:フランチャイズ・システムの規模

701FC の総店舗数

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―環境不確実性と資産の契約可能性に着目して―

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6. 分析結果

前節で提示された因果仮説の経験的妥当性をテストすべく、古典的最小二乗法 (OLS) に

よる回帰分析を行った。分析に際しては、統計ソフト SPSS Inc PASW Statistics 18 を使用し

た。回帰分析に先立ち、従属変数と独立変数を縮約するために、主成分分析を行った。この

分析結果は表 4 に要約される。各変数の寄与率は 65.548%から 87.919%をとり、すべての変

数で高い値であった。それゆえ、各観測変数は主成分分析に貢献しているといえよう。

表 4 主成分分析の分析結果 (n=46)

Y X1 X2 X3 X4

共通性

101 .747 201 .716 301 .856 401 .574 501 .879

102 .557 202 .716 302 .873 402 .886 502 .879

103 .800 - - 303 .773 403 .804 - -

104 .518 - - - - - - - -

固有値 2.622 1.432 2.502 2.265 1.758

寄与率 (%) 65.548 71.603 83.411 75.486 87.919

次に、各変数の主成分得点をそれぞれ従属変数、独立変数とし、回帰分析を行った。推定

されたモデルの分析結果は表 5 のように要約される。まず、モデルの全体的評価を行う。F

検定の結果、回帰モデルの F 値は 2.534、p 値は.027 であり、5%水準で有意であった。した

がって、推定されたモデルは統計的に意味があるものと主張できよう。また、モデルの説明

力を示す自由度調整済み決定係数は.218 であった。つづいて、モデルの部分的評価を行う。

フランチャイズ・システム特定的ノウハウについて、標準化係数は.377 であり、5%水準で

有意であった (t = 2.651、p<.01)。これは仮説 1 を支持するものである。探索資産および活用

資産の標準化係数はそれぞれ、-.158 と-.164 であり、10%水準でも非有意であった(t = -.908、

p>.10; t = -.908、p>.10)。したがって、仮説 2、仮説 3、そして仮説 4 は棄却された。フラン

チャイズ・システム特定的ノウハウと市場不確実性の交互項について、標準化係数は.254 で

あり、10%水準でも有意であった (t = 1.596、p<.10)。フランチャイズ・システム特定的ノウ

ハウと市場不確実性の交互項の標準化係数はフランチャイズ・システム特定的ノウハウの標

準化係数の絶対値と比較すると、後者のほうが大きい。したがって、仮説 5 は棄却された。

活用資産と市場不確実性のノウハウ交互項は 10%水準でも非有意であった (t = -.154、p>.10)。

探索資産と市場不確実性のノウハウ交互項については、標準化係数は.194 であり、10%水準

で有意であった (t = 1.898、p<.10)。これは、仮説 6 の符号仮説の逆の結果であった。したが

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白石秀壽

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って、仮説 6、そして仮説 7 は棄却された。モニタリングの困難性については、標準化係数

は.015 であり、10 水準でも非有意であった (t = .086、p>.10)。フランチャイズ・システムの

規模の標準化係数は-.409 であり、1%水準で有意であった (t = -2.239、p<.01)。

表 5 回帰モデルの推定結果

標準化係数 t 値 符号仮説

X1 .377 2.651 *** H1(+)

X2 -.158 -.908 H2 (-)

X3 -.164 -1.041 H3 (-)

X1・X4 .254 1.596 * H5(+)

X2・X4 .194 1.898 ** H6 (-)

X3・X4 .025 .154 H7 (-)

X5 .015 .086

X6 -.409 -2.239 ***

F 値 2.534 **

自由度調整済み R2 .218

N 46

注) ***:1%水準で有意、**: 5%水準で有意、*: 10%水準で有意 (片側検定)

7. 結論

以上、本論では、フランチャイズ・システムにおける本部と加盟店間の意思決定権の配分

メカニズムの解明を試みてきた。具体的には、所有権理論を援用し、7 つの仮説を提示し、

実証分析の結果、仮説 1 については支持される結果を得た。このことから、フランチャイズ・

システムにおいて、本部の保有するノウハウが無形であり、契約によってのみ移転すること

ができない場合には、本部は事後的に残余利益を生成するために、残余コントロール権を保

有する必要があることが示唆される。Windsperger (2004) はフランチャイズ・システム特定

的ノウハウとして、開業前の研修の日数と年間の研修日数を採用している。彼が採用してい

る尺度には、本部のノウハウの資産特殊性が増大するほど、対人的な意思伝達の日数が増加

するという暗黙の仮定がある (Johnson & Lundvall, 2001)。しかし、Windsperger (2004) は複

数の質問項目で測定し、妥当性を確認すべきであると述べ、彼らはこの尺度の問題を自らの

研究の限界として指摘している。本論では本部のフランチャイズ・システム特定的ノウハウ

を複数の質問項目で測定され、経験的にも支持された。この点は本論の貢献といえよう。

また、フランチャイズ・システムと市場不確実性の交互項は、フランチャイズ・システム

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フランチャイズ・システムにおける意思決定権の集権化と分権化

―環境不確実性と資産の契約可能性に着目して―

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特定的ノウハウの標準化係数と比較すると、小さい値を示した。このことから、市場が不確

実な場合には、フランチャイズ・システム特定的ノウハウによって、本部は集権的な意思決

定を行いにくくなることが示唆される。仮説 6 の探索資産と市場不確実性の交互項は正で有

意となり、理論とは異なる結果となってしまった。このことから、市場が不確実な場合には、

加盟店の探索資産が重要であったとしても、本部が意思決定を行っていることが示唆される。

つまり、顧客ニーズが頻繁に変化し、売上の予測が困難な場合、加盟店はその地域の情報を

保有し、その地域に適応する能力があったとしても、本部が集権的に意思決定を行うことが

示唆される。これは、売上の予測が困難である場合には、トップダウン的なマネジメントを

行うことで、加盟店が経営不振に陥ることを防いでいるとも考えられる。

本論はいくつかの限界を含んでいる。第 1 に、本論は所有権理論を援用し、因果仮説を導

出した。所有権理論においては、企業の事後的な投資のインセンティブに起因する無形資産

の所有構造により、意思決定権の所在が決まる。しかし、フランチャイズ・システムにおい

て、ブランドの成長・維持に対する企業の事前の投資は、事業の成功にとって重要である。

とりわけ、企業間競争の激しい産業では、このような投資がより重要となろう。しかし、本

論ではこの問題を勘案していない。したがって、今後は企業間の競争関係の差異を考慮する

必要がある。第 2 に、知覚バイアスの問題である。加盟店の探索資産と活用資産は、本部の

加盟店との取引・契約の担当者の立場から、フランチャイズ店舗の経営者と直営店の店長を

比較することで測定された。このため、探索資産と活用資産の優位性について、正しく測定

できていないことが考えられる。この点に関し、Windsperger (2004) も同様の限界を示して

おり、彼らは加盟店の知的資産については加盟店から収集し、ダイアドデータを使用するこ

とを提案している。また、本部と各店舗が直面している市場不確実性の程度にも差異がある

とも考えられ、より精緻な調査設計が必要であろう。

最後に今後の課題として、以下の 2 点が挙げられよう。第 1 に、加盟店の知的資産である

探索資産と活用資産に関連する仮説群 (仮説 2、3、4、6、7) は、棄却されてしまった。ま

た、仮説 1 についても 5%水準とやや甘い基準であった。この点に関し、より大規模な調査

を行い、再分析を行うことが望まれよう。第 2 に、本部のフランチャイズ・システム特定的

ノウハウは契約可能性の程度、つまり無形性について測定された。しかし、実際には本部の

ノウハウと言っても、1 つに集約することはできない。情報処理、流通システム、フランチ

ャイズ・ビジネス全体といったように本部の知的資産を識別することが必要であろう。

本論はいくつかの限界と課題を含んでいるが、日本の FC を分析対象とし、意思決定権の

配分を取り扱った数少ない実証研究である。また、フランチャイズ・システムの研究に意思

決定権の配分が重要であることを示した研究として、意義のあるものと主張できよう。

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白石秀壽

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(記) 本論の執筆にあたり、格別なるご指導を賜りました中央大学商学部久保知一先生に、心

より感謝いたします。また、私が在籍する久保知一研究室の皆様にも、貴重な助言や多

大な協力をいただき、ここに重ねて感謝の意を表したい。また、多くの方々に協力して

いただいたとはいえ、本論の意図せざる誤りのすべては私に帰するものです。

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フランチャイズ・システムにおける意思決定権の集権化と分権化

―環境不確実性と資産の契約可能性に着目して―

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平成 23 年 1 月 12 日

フランチャイズ・チェーンに関するアンケート

○ごあいさつ

○アンケートのご回答に関してのご説明

・このアンケートは『日本のフランチャイズ・チェーン 2006』に掲載されている企業様に

送らせていただきました。

・ご回答に際しましては、貴社事業部と契約している主要なフランチャイジー (加盟店) と

の取引についてお答えください。

・回答の所要時間は 5 分程度です。

・この調査の集計結果の閲覧をご希望の方はお名前と E メールアドレスをご記入ください。

設問 1. 貴社の経営する店舗についておたずねします。

101 店舗数はどれくらいですか。

102 直営店の比率はどれくらいですか。10%単位でお答えください

(概算でかまいません)。

現在、私は卒業論文として、フランチャイズ・チェーン (FC) におけるフランチャ

イザー (本部) とフランチャイジー (加盟店) の関係について研究を進めており、下

記のようなアンケートを作成いたしました。

このアンケートへの回答は、貴社の事業部において、フランチャイジーとの取引・

契約に関わっておられる方にお願いいたします。回答結果につきましては、すべて

コンピュータで統計的に処理され、企業情報が流出することはございません。また、

学術研究以外の目的で使用されることはなく、研究終了後、回収したアンケートは廃

棄いたします。大変お手数ではございますが、何卒御協力のほど、よろしくお願いい

たします。

中央大学商学部 久保知一研究室 4 年 白石秀壽

店舗

%

お名前:

E メールアドレス:

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白石秀壽

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103 貴社の出店している都道府県は 47 都道府県中いくつですか。

104 開店前の店長の研修期間はどれくらいですか。

105 開店後の店長の研修期間はどれくらいですか。

設問 2. 店舗の運営ノウハウのマニュアル化についておたずねします。あてはまる番号に○

印をお付けください。

201 店舗では、貴社のノウハウはマニュアル化されている。 5-4-3-2-1

202 店舗では、貴社独自の情報システムに基づいて店舗オペレーションが行われている。

5-4-3-2-1

203 貴社のノウハウを店舗に伝える際には、対人的なコミュニケーションが重要である。

5-4-3-2-1

204 貴社のノウハウは、文書化して店舗へ伝えられる。 5-4-3-2-1

設問 3. 主要フランチャイジーの販売活動についてお聞きします。

301 貴社が承認するまでは、フランチャイジーは新しいことを行うことができない。 5

-4-3-2-1

302 些細なことであっても、貴社が最終的な権限を持っている。 5-4-3-2-1

303 フランチャイジーが何かを行う前には、貴社の指示が必要である。 5-4-3-2-1

304 フランチャイジーが新しいことを始める際には、貴社の承認が必要である。

5-4-3-2-1

401 直営店の店長に比べ、フランチャイジーの店長のほうが店舗周辺の地域についてよく知

っている。 5-4-3-2-1

402 直営店の店長に比べ、フランチャイジーの店長のほうが店舗周辺の顧客ニーズをよく把

握している。 5-4-3-2-1

403 直営店の店長に比べ、フランチャイジーの店長のほうがその地域に適応する能力がある。

5-4-3-2-1

501 直営店の店長に比べ、フランチャイジーの店長のほうが品質管理に優れている。

5-4-3-2-1

日間

日間

5 ― 4 ― 3 ― 2 ― 1 とてもそう思う 全くそう思わない

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フランチャイズ・システムにおける意思決定権の集権化と分権化

―環境不確実性と資産の契約可能性に着目して―

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502 直営店の店長に比べ、フランチャイジーの店長のほうが人的資産の管理に優れている。

5-4-3-2-1

503 直営店の店長に比べ、フランチャイジーの店長のほうがマネジメントに優れている。

5-4-3-2-1

601 新商品の投入競争は激しい。 5-4-3-2-1

602 顧客ニーズは頻繁に変化する。 5-4-3-2-1

603 顧客ニーズを把握するのは困難である。 5-4-3-2-1

質問は以上となります。回答にもれがないか今一度ご確認ください。

お忙しい中、大変お手数ではございますが、このアンケート用紙を、同封の日野

郵便局留の封筒に入れ、1 月 21 日 (金) までに御投函ください。

ご協力に心から感謝いたします。