1

グループディスカッションにおける心理的ストレスの評価に関する研究

A study on evaluation of psychological stress in group discussion

1w143123-5 増田 興己 指導教員 長 幾朗 教授

MASUDA Koki Prof. CHO Ikuro

概要：人は行動をする際、緊張や不安といった心理的ストレスを請ける事がある。心理的ストレスは人に良い影

響や悪い影響を及ぼす。また今日、企業や教育現場では様々な形式のグループディスカッションが催されている。

その多くの場合、参加者は心理的ストレスを感じている。心理的ストレスがグループディスカッションにどのよ

うな影響を与えているのだろうか。本研究では、心理的ストレスの有無でグループディスカッションにどのよう

な影響を及ぼしているのか検証した。その結果、適度な心理的ストレスを加えたグループでは、意思決定の促進

が見受けられた。このような適正な心理的ストレスがグループディスカッションにどのように作用しているのか、

考察した。

キーワード： 心理的ストレス、グループディスカッション、良い意思決定

Key words: psychological stress, group discussion, good decision making

1. 対人コミュニケーション 対人コミュニケーションは以下の関係図式で示

すことができる。

図１ コミュニケーションにおける対人行動の関係図式

（増田,2018）

本研究では対人コミュニケーションのメカニズム

を以上のように定義した。

2. 心理的ストレス 本研究ではストレスを以下の二つに分けた。

1) 心理的ストレス：外の刺激によって体内に発生する心理的問題（緊張、不安、焦りなど）が引き起

こす正常ではない反応

2) 身体的ストレス：外の刺激によって体内に発生する身体体的問題（体調の悪化、筋肉の硬直など）

が引き起こす正常ではない反応

以上２つのストレスと外の刺激からなりうるスト

レスの要因について以下の図にまとめた。

また事前アンケートの結果、グループディスカッシ

ョンにおける心理的ストレスの要因は「グループディ

スカッション内に存在する上下関係による刺激」と

「制限時間の短縮による刺激」と定義した。

図２ 心理的ストレスと身体的ストレスの要因

（増田,2018）

3. グループディスカッション 今日会社等で行なわれている会議の 目的は「グル

ープメンバーの認識を共有させ議論することで良い

意思決定を行うこと」であると定義付けをした。

また以上の定義に記載してある「良い意思決定」の

条件を以下の二つとした。

1) 討論のテーマに沿った的確な選択ができている。 2) 討論の所要時間が短い

2

4. 心理的ストレスとグループディスカッションの関連性と仮説

心理的ストレスを与えた場合のグループディスカッ

ションにおけるコミュニケーションの関係図式を以

下に示す。

図 3 心理的ストレスを与えた場合のグループディスカッシ

ョンにおけるコミュニケーションの関係図式（増田,2018）

もしこの理論が正しければ、「グループディスカッ

ションの際、グループメンバーに心理的ストレスを与

えた場合、良い意思決定の実現が難しくなる」という

仮説が立証される。

5. 実験 事前アンケートの結果に基づき、二つのグループが

以下三回のグループディスカッションを行い、心理的

ストレスの有無におけるグループディスカッション

の評価を行った。

1) 普通のグループディスカッション：同級生 4 人でのグループディスカッション。制限時間は 15 分

2) 制限時間の短縮の刺激による心理的ストレスを抱えた状態でのグループディスカッション：同級

生４人でのグループディスカッション。制限時間

は 10 分。

3) 同コミュニティ内の上下関係の刺激による心理的ストレスを抱えた状態でのグループディスカ

ッション：同級生４人と上級生１人でのグループ

ディスカッション。制限時間は 10 分。

また実験風景を以下に示す。

図 4 実験風景（増田,2018）

評価方法は以下の三点で行った。

1) 発言量による定量評価 2) 被験者による主観アンケート 3) アンケートによるグループディスカッションの

結果の評価

6. 本論文の結論 実験の結果は以下の通りである。

表1心理的ストレスの無いグループディスカッションに対す

る心理的ストレスのあるグループディスカッションの評価

一覧（増田,2018）

よって、本論文では以下のような結論に至った。

「（今回の実験の環境下では、）心理的ストレスはグル

ープディスカッションにおいて良い影響を与える」

またその理由はグループディスカッションの際、心

理的ストレスを与えることで、普段以上の集中力を発

揮させることができ、議論が活発化すると考えられる

からである。

参考文献

1) 齋藤 勇（1990）「対人感情の心理学」 誠信書房 2) P.H.リンゼイ、D.A.ノーマン（1985）「情報処理心理

学入門Ⅰ 感覚と知覚[第 2 版]」 サイエンス社

3) 岩下 貢（2003）「ストラテジック・コミュニケーション３ グループミーティングの戦略」 慶応義塾大学

出版会

図表一覧

[1] 図１ コミュニケーションにおける対人行動の関係図式

（増田,2018）

[2] 図２ 心理的ストレスと身体的ストレスの要因（増

田,2018）

[3] 図 3 心理的ストレスを与えた場合のグループディスカ

ッションにおけるコミュニケーションの関係図式（増

田,2018）

[4] 図 4 実験風景（増田,2018）

[5] 表 1 心理的ストレスの無いグループディスカッション

に対する心理的ストレスのあるグループディスカッション

の評価一覧（増田,2018）