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リモートセンシングとGISを用いた 有明海・諫早湾の水質評価 佐賀大学大学院工学系研究科都市工学専攻 永渕麻理絵 海岸工学者の集い2010

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Page 1: リモートセンシングとGISを用いた 有明海・諫早湾の水質評価リモートセンシングとGISを用いた 有明海・諫早湾の水質評価 佐賀大学大学院工学系研究科都市工学専攻

リモートセンシングとGISを用いた有明海・諫早湾の水質評価

佐賀大学大学院工学系研究科都市工学専攻

永渕麻理絵

海岸工学者の集い2010

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研究背景と目的

有明海・諫早湾は海苔や魚介類生産の場として重要な水域である。

1990年、諫早湾では洪水対策と農地拡大を目的として諫早湾干拓事業が着工され、1997年、諫早湾は完全に干拓堤防により締め切られる

2000年の有明海海苔不作問題に代表されるように、有明海において水質悪化が懸念されており、諫早湾干拓事業による海洋環境への影響を調べる中・長期開門調査が求められている。

そこで、開門調査後に比較・検討ができるよう、これまでの有明海・諫早湾の長期的な水質環境特性を知る必要がある。

本研究ではリモートセンシングとGISを用いて有明海・諫早湾の季節的、空間的な水質特性や水質動態を把握することを目的とする。

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リモートセンシングによる成果図

諫早湾内の各水質についてGISを用いて整理

リモートセンシングとGISを用いて有明海・諫早湾の季節的、空間的な水質特性や水質動態を把握する

有明海で生じたイベント情報

使用衛星画像:LANDSAT‐TM 1972年~2001年LANDSAT-ETM+ 2000年~2003年TERRA-ASTER 2000~2004年水質項目:

SST, 透明度, クロロフィルa, 塩分濃度

使用データ:月1回諫早湾モニタリング調査(1989年~2008年)

週1回諫早干拓調整池(1995年~2008年)

水質項目:SST, PH, COD, DO, T-N, T-P,塩分濃度、クロロフィルa

・有明海流入域において完成したダム、堰、干拓事業

(六角川河口堰、筑後川大堰、嘉瀬川大堰、諫早湾干拓事業)

・海苔、漁獲量の変遷(酸処理剤の使用)

・赤潮発生

・自然災害(台風、雲仙普賢岳大火砕流、渇水)

・貧酸素水塊の発生

方法

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研究方法

①調整池内の水質濃度と、調整池からの汚濁負荷の変遷の把握

(1997年~2008年)

③衛星画像(LANDSAT-TM)

(透明度、クロロフィルa)

(2000年)

② GIS 諫早湾内の水質変化

(クロロフィルa,COD,T-N,T-P)

(1999年~2001年)

汚濁負荷、気象条件、潮汐の関連について考察する

ノリ不作の年である2000年の前年度、後年度の水質状態を把握するため

研究対象地域

調整池

大村市

島原半島諫早市

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2002年調整池内の濃度は6000(mg/l)を超えている

→2002/4/24~2002/5/20に行われた短期開門調査の影響

濃度の傾向夏に減少し、冬に増加する

→降水量が関係している(夏季に多雨)

塩化物イオン

調整池の平均濃度九州農政局の週1回水質調査

①負荷量と調整池内の平均濃度(1998年~2008年)

調整池からの負荷量の算出負荷量=日排水量×調整池内の平均濃度(mg/l)

負荷量(t)

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平均濃度(m

g/l)

COD

クロロフィルa

クロロフィルa 増加傾向

COD濃度は増加傾向

1999年~2000年にかけて負荷量が多い

月合計降水量が、年間を通して多い

負荷量(t)

負荷量(t)

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T-P

T-N

T-P,T-N共に

濃度の傾向冬場に上昇し、12月にピークを迎え、夏場に下降する

1999年~2000年にかけて負荷量が多い

負荷量(t)

負荷量(t)

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②GISによる諫早湾内の各水質濃度の分布(1999~2001年)月1回諫早湾モニタリング調査の観測結果をもとに作成

負荷が多い月の前後で諫早湾内の水質濃度が高い→月合計降水量が多いと排水量も増え、負荷が多い

COD濃度2000年7月~10月にかけて4.5(mg/l)を超えている

水産用水基準

ノリ養殖場2(mg/l)以下

COD

2000

1999

2001

COD(mg/l)Jan Feb Mar Apr May Jun

Jul Aug Sep Oct Nov Dec

Jan Feb Mar Apr May Jun

Jul Aug Sep Oct Nov Dec

Jan Feb Mar Apr May Jun

Jul Aug Sep Oct Nov Dec

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月平均気温と月合計降水量

(気象庁長崎県長崎市、諫早市観測)

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GISによるクロロフィルaの分布(1999~2001年)

夏季から晩秋にかけて濃度が高い排水門近辺と、湾北部の濃度が高い傾向

(どの水質にも見られる)

クロロフィルa(μg/L)Jan Feb Mar Apr May Jun

Jul Aug Sep Oct Nov Dec

2000

1999

2001

Jan Feb Mar Apr May Jun

Jul Aug Sep Oct Nov Dec

Jan Feb Mar Apr May Jun

Jul Aug Sep Oct Nov Dec

Jan Feb Mar Apr May Jun

Jul Aug Sep Oct Nov Dec

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1 2 3 4 5 6

7 8 9 10 11 12

1 2 3 4 5 6

7 8 9 10 11 12

1 2 3 4 5 6

7 8 9 10 11 12

GISによるT-Nの分布(1999~2001年)

T-N

2000

1999

2001

水産:1mg/L以下

ノリ養殖:0.07-0.1mg/L以下

CODと同様、負荷量が多い月、翌月に湾内の濃度も高い

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GISによるT-Pの分布(1999~2001年)

水産3種:0.09mg/L以下

ノリ養殖: 0.007-0.014mg/L以下

月合計降水量が多いと排水量も増え、負荷量が多い負荷量が多い月は諫早湾内の水質濃度も高いノリ養殖が始まる10月以降、基準を超えている

1 2 3 4 5 6

7 8 9 10 11 12

1 2 3 4 5 6

7 8 9 10 11 12

2000

1999

20011 2 3 4 5 6

7 8 9 10 11 12

0.01-0.02

0-0.01

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③衛星画像による透明度(2000年8月、9月、11月)

調整池内の透明度は0~2m

11月 南部排水門付近に濁りが見られる

2000080620000907

20001110

透明度(m)

0 1.3 1.5 2.0 2.5

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20000907

8月,9月は諫早湾内の濃度が高い→日射量

11月 調整池内の濃度が一番高い→11月1、2日の降雨(70㎜、90㎜)により栄養塩の供給が増えたため

衛星画像によるクロロフィルa濃度(2000年8月、9月、11月)

20001110

20000806

0 10 20 30 70 90

CHL-a

(μg/l)

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気温(℃ 平均風速 風向日照時間

(h

17.8 2.1 北 8.9

排水時間

下潮

2000/11/10の潮位変化

衛星画像取得時間10:32

2000年11月10日の衛星画像

透明度、CHL-a共に、南部排水門から島原半島にそって狭い範囲で変化が見られた

・衛星画像撮影前の9~6時間前に南排水門より、1010(千m3)排水

0 10 20 30 70 90

CHL-a

(μg/l)

透明度

(m) 0 1.3 1.5 2.0 2.5

排水負荷量との関係性

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まとめ

GISの解析結果より、排水門または湾北部において濃度が高い傾向がみられた

調整池からの物質負荷量が多い月とその翌月は諫早湾内の物質濃度が高い傾向にある

衛星画像解析により、排水門から排出された負荷量との関係性が推測される