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1 鋼構造生産システム研究会 設計部会 B-グループ FEM 解析チーム報告書 テーマ:FEM 解析の実務資料の作成 平成16年4月

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鋼構造生産システム研究会 設計部会

B-グループ FEM 解析チーム報告書

テーマ:FEM 解析の実務資料の作成

平成16年4月

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鋼構造生産システム研究会 設計部会

B-グループ FEM 解析チーム

-報告書目次-

はじめに ─────────────────────────────────── 1

1.FEM を理解するための参考資料 ──────────────────────── 2

1.1 鋼上部構造の設計に FEM 解析を適用するためのガイドライン(案)の概要

1.2 FEM 解析事例一覧

1.2.1 鋼上部構造の設計に FEM 解析を適用するためのガイドライン(案)の付属資料一覧

1.2.2 鋼橋技術研究会調査報告書の事例一覧

2.FEM 解析の流れおよび留意事項───────────────────────── 5

2.1 FEM 解析において技術者に求められる判断

2.2 FEM の用途

2.3 要素モデルの分類

2.5 付加部材の取り扱い

2.6 使用要素選択の原則と応力分布

2.7 解析結果の整理方法

2.8 計算結果に対するモデル検証

3.最近の FEM 解析事例───────────────────────────── 16

3.1 B グループ調査結果一覧(最近の FEM 解析事例一覧)

3.2 FEM 解析事例の総括表

4.FEM 解析計算書作成例──────────────────────────── 34

4.1 解析目的

4.2 解析概要

4.3 解析内容

4.3.1 解析モデル

4.3.2 境界条件

4.3.3 荷重条件

4.4 解析結果

4.5 FEM 解析総括表

5.資料──────────────────────────────────── 43

5.1 片持梁の先端に集中荷重を受ける長方形梁の応力分布

5.2 立体 FEM と平面格子の比較

おわりに──────────────────────────────────── 49

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はじめに

構造材料の応力まで求めようとする解析手法には、一般に骨組みモデルによる解法、FEM による解

法、板の公式による解法、その他構造独自に誘導した解法の4通りが考えられる。このうち、汎用性のあ

るのは骨組みモデルによる解法、FEM による解法の2つであるが、応力集中部や応力の流れが複雑な

構造の応力状態を把握するためには FEM 解析を適用する必要がある。しかし、FEM 解析はモデルの

作成に開して、要素分割、モデル化の範囲など各々の段階で個人差が生じる。また、解が近似式であ

る、計算回数が限られている、出力結果の評価が確立していない等の問題もある。

FEM のこのような問題を解決するために、本州四国連絡橋公団(本四公団)では、1993 年に設計技

術者を対象として、FEM 解析に伴う問題点への対処方法の目安および判断材料を示すガイドラインを

作成している。このガイドラインでは、解析モデルを FEM の対象とする変形、荷重特性から5種類のモ

デルに分類し、それぞれの解析モデルに使用する要素、モデル化の方法、実施例、評価の方法等に

ついて解説している。

その他、FEM 解析を適用するにあたって参考となる資料に、鋼橋技術研究会(鋼技研)の 1995 年研

究調査報告書がある。この報告書では、FEM 解析の適用上の留意点を各種の解析事例を参考にしな

がら理解することは、設計者として重要なことであるという観点から、各種文献を収集し、FEM 解析の適

用例について、調査票にして整理している。また、必要に応じて具体的な設計への反映の方法、実験

の貴重な資料を添付資料として簡潔にまとめている。

このように、FEM 解析を鋼構造に適用する上で要求される技術的な判断は、担当する技術者の知識

と経験がたよりであるので、その経験を補う意味で、本四公団の FEM に関するガイドラインや鋼技研の

調査報告書でも、多くの事例を取り上げている。そこで、ここでは更に多くの事例を取り上げ、FEM 解析

を実施する上での参考の資料とするため、最近実施された FEM 解析例について、FEM 解析の目的、

要素のモデル化、荷重のモデル化、結果の評価について、その考え方を調査票に整理する。

また、FEM 解析を適用した時、信頼性を確認する資料として作成しなければならない総括表やこれ

に類するもの、入力諸元に関するもの、計算結果等を整理した FEM 解析報告書のまとめ方の例を作成

するものとする。

尚、本報告書では、初めに本四公団のガイドラインや鋼技研の報告書の概要と、これらの報告書が

取り扱っている FEM 解析事例の紹介を行なった。次に本四公団のガイドラインを引用し、「FEM 解析に

おける判断の流れと対処方法」について、それぞれの段階での留意点を、モデル化のテクニックに焦点

を当て取り上げた。続いて、最近の FEM 解析事例について紹介を行い、最後に FEM 解析報告書の例

を作成するものとした。

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1.FEM を理解するための参考資料 1.1 鋼上部構造の設計に FEM 解析を適用するためのガイドライン(案)の概要 FEM 解析を行うにあたって理解しておかなければならない事項は「鋼上部構造の設計に FEM 解析

を適用するためのガイドライン(案) 1993 年 8 月 本州四国連絡橋公団」(以下、本四公団のガイドライ

ン)に詳しく述べられており、その内容は弾性域の応力照査に適用するものを対象とし、以下の構成で

取りまとめを行っている。

鋼上部構造にFEM解析を適用する場合、最低限必要な基本事項を初心者が理解できるよう

にする。

「1 章 概要」として、FEM の特性と用途について、「2 章 FEM の基本事項」として FEM の原

理、要素特性、変位関数、応力分布について説明している。

モデル化の方法について具体的な目安を明記するものとする。

「3 章 FEM の適用」として FEM の基本的手順、解析計画、解析領域の設定、境界条件の

設定、荷重条件の設定、要素分割の手法、付加部材の取り扱い、ズームアップ法について説

明している。

FEM 解析で得られた結果の評価法を具体的に規定するものとする。

「4 章 解析結果の評価」の前半で要素分割による特性とその評価について、次に許容値

の取り方について説明している。

解析結果の整理方法について規定するものとする。

「4 章 解析結果の評価」の最後に解析結果の整理方法として、設計上の位置づけとなる記

録、及び結果の信頼性を確認するために整理しておかなければならない、リストをあげている。

本州四国連絡橋公団でこれまで行われた代表的解析事例、およびFEMの各種パラメーター

を変えたときの事例を載せることにより、今後の FEM の適用に資するものとする。

最後に付属資料として鋼上部構造への適用例、平面モデルへの簡略化例、仮想部材の

使用例、曲げ問題のモデル化例、応力集中部のモデル化例、境界条件のモデル化例、3 次

元構造を 2 次元モデルを用いて解いた例、主応力と Von Mises による照査、FEM の許容応

力度についてまとめられている。

以上のように、本ガイドラインは FEM 解析を適用する場合に理解しておかなければならない最低

限必要な基本事項から具体例まで取り上げており、FEM 解析初心者必読の書であるといえます。

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1.2 FEM 解析事例一覧

1.2.1 鋼上部構造の設計に FEM 解析を適用するためのガイドライン(案)の付属資料一覧

「本四公団のガイドライン」の附属資料に、FEM 解析の鋼上部工への摘要例や、FEM 解析実施

結果を取り上げている。ここにそのタイトルを記すので、類似の事例について、FEM 解析を行う場合

の参考にするとよい。

付属資料 A : 鋼上部構造への適用例

(1) 北備讃瀬戸大橋(塔頂サドル:中央リブ、鞍鋳鋼部のど部、マンホール)

(2) 大鳴門橋(ケーブルバンド:フランジつけ根付近の補強構造)

(3) 大鳴門橋(タワーリンク:ピン孔周辺、ブラケット周辺)

(4) 大鳴門橋(中間支点部:各部材が交差するのでその応力状態)

(5) 大鳴門橋(支承部:ローラー反力分散、下沓各部位の応力特性)

付属資料 B : 平面モデルへの簡略化例

(1) 面外剛性を無視してモデル化している例

1) 主構トラス上弦材の断面変化部をモデル化

2) 主構トラス中間支点上ピンプレートのモデル化

(2) 板部材ごとに逐次解析していく例

(3) 中実体を平面モデルへ簡略化した例

付属資料 C : 仮想部材の使用例

(1) 仮想部材等により等価な条件を作る(柱基礎)

(2) 回転を拘束しない支承条件(吊橋のウィンドシュー)

(3) 曲げ部材を表現する場合(ケーブル定着部)

(4) 中実弾性体ばねの評価(ケーブルバンド)

付属資料 D : 曲げ問題のモデル化例

(1) 長方形要素を用いた片持梁の曲げ応力

(2) 三角形要素を用いた片持梁の曲げ応力

付属資料 E : 応力集中部のモデル化例

(1) 半円形切欠きを有する板の引張り

付属資料 F : 境界条件のモデル化例

床トラス下弦材ウィンドシュー接触部

付属資料 G : 3次元構造を2次元モデルを用いて解いた例:吊り橋主塔ブラケット

付属資料 H :主応力と Von-Mises による照査

付属資料 I : FEM の許容応力度

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1.2.2 鋼橋技術研究会 1995 年報告書の実例一覧

1995 年に鋼橋技術研究会が、下記の FEM 解析事例について、各種文献を調査し一覧表を作

成している。調査項目は、橋梁名、発注先、対象部位、出典、一般図、モデル図(境界条件、節点

数、要素数)、解析ケース数、解析モデルと要素、解析プログラム、解析目的、対象荷重、応力評価、

許容値、解析結果、特記事項、以上の15項目である。また、これだけでは実際の設計作業の参考

には不十分であると思われる場合は、具体的な設計への反映、実験等の貴重な資料を添付資料と

して簡潔にまとめている。ここでも、そのタイトルを下記に記すので、類似の事例について、FEM 解

析を行う場合の参考にするとよい。

橋名 客先 構造形式

1 横浜市道高速 2 号線 首都高速道路公団 鋼製橋脚

2 OJ13 工区 首都高速道路公団 鋼製橋脚

3 OJ14 工区(その 2) 首都高速道路公団 鋼製橋脚

4 横浜市道高速 2 号線 首都高速道路公団 鋼製橋脚

5 BY 工区大黒インタチェンジランプ橋 首都高速道路公団 鋼製橋脚

6 1242 工区上部工概略設計 首都高速道路公団 鋼製橋脚

7 市道高速 2 号東片端(その 1) 名古屋高速道路公社 鋼製橋脚

8 市道高速分岐 2 号本町(その 2) 名古屋高速道路公社 鋼製橋脚

9 IS42 工区鋼製橋脚 首都高速道路公団 鋼製橋脚

10 大阪府道高速湾岸線 阪神高速道路公団 鋼製橋脚

11 肋松工区鋼製橋脚 阪神高速道路公団 鋼製橋脚

12 中央環状王子線 首都高速道路公団 鋼製橋脚

13 琴似発寒川橋 日本道路公団 単弦ローゼ

14 名取川橋 日本道路公団 単弦ローゼ

15 木津川新橋 大阪市 バランスドアーチ

16 木津川新橋 大阪市 バランスドアーチ

17 遠入川橋 日本道路公団 逆ローゼ

18 天狗橋 日本道路公団 V 脚支柱

19 梅町橋梁 阪神高速道路公団 V 脚支柱

20 横浜市道高速湾岸線高架橋 首都高速道路公団 横梁

21 関西国際空港連絡橋 関西国際空港(株) 鋼床版箱桁

22 プレートガーダー

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2.FEM 解析の流れおよび留意事項 2.1 FEM 解析において技術者に求められる判断 FEM 解析において技術者に求められる判断は「本四公団のガイドライン」P34、P35 によると下図

のようになる。これらの判断項目のうち、FEM の用途、要素モデルの分類、付加部材の取り扱い、使

用要素選択の原則と応力分布、解析結果の整理方法に着目し、「本四公団のガイドライン」で述べら

れている要点を以下にまとめる。

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2.2 FEM の用途

FEM 解析を適用する場合、初めに解析の目的は何か、着目部はどこなのかを明確にする必要がある。

尚、解析手法として FEM の適用が必要な代表例としては、次のよ

うな場合が挙げられる。

(1) 応力集中が予想される場合

円孔部を有する板を左右から引張った場合最大応力はσ=

P/2L の 2.43 倍にもなる。

(2) 応力の流れが不明な場合

ラーメン隅角部などのように、力の作用点と支承となる点が上下に

隔たっているとき。応力削減のためフィレット部の形状をいろいろ変え

て検討することから、各々の形状に対する FEM 解析が必要となる。

(3) 応力の分配が不明な場合

腹板からブラケットを張出した構造で、右端に荷重 P が作用した場合、

左端の腹板に合計反力として P が伝えられることは明かである。しかし、

その分布は一様ではなく、これを P/2L と考えて、次の腹板の解析に作

用する荷重分布とするのは危険である。腹板の応力が限度ぎりぎりのよ

うな場合、FEM によって反力分布を求める必要が生じる。

(4) 構造モデルの形状から FEM 以外の解析法がない場合

吊橋のサドル部、ケーブルバンド、タワーリンク等は、境界の形状が複雑で、連続体の力学では微

分方程式等の解析が不可能である。このような場合は、FEM 解析が唯一の応力推定法となる。

(5) 多くの部材が結合された状態で応力の流れ、分配等が不明な構造の場合

接合部ではガセットの形状に応じて応力の流れ方が変化

する他、フランジとウエブの間でも応力の分布は部材中央部

とは異なるはずである。従って、この部分の正確な応力状態

を知りたい場合などに、FEM による計算が必要となる。

(6) 多数の方向の異なった板が結合されている場合

吊橋の塔頂部のように、多数の方向の異なった板を配して塔柱へのスムーズな力の流れを目的と

した構造部分では、特に応力の流れを明かにする必要があり、この構造部分の合理的な設計および

安全性の確認等のためにも、FEM 解析が必要となる。

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2.3 要素モデルの分類

通常の鋼構造では、右図のa-1からb-

3までの5種のFEM解析のどれかの挙動を

示し、それぞれに対応して①から⑤での要

素、または2種以上の要素の混合されたも

のが用いられる。先ず与えられた構造物が

どの解析モデルに該当するかを、着目部を

中心とした板と荷重の向き、力の流れ等か

ら判定しなければならない。

① 平面要素

その要素が置かれた平面内の2方向に

のみ変形自由度を有する要素であり、一つ

の要素の材質及び要素厚は一定とする。

応力もこの平面内にのみ生じ、板厚方向に

一様な2方向の軸方向応力とせん断応力

が生ずる。

② 平面曲げ要素

要素形状は平面要素と同一であるが、床

版のように変形方向がその平面とは直角の

方向に生ずる要素をいう。応力は曲げ応力

となり、板厚方向に変化し、中立軸におい

て0、要素の上・下・緑端で正・負の最大応

力が生ずる。

出力されるものは通常2方向の単位長当

り曲げモーメントMX 、My、ねじれモーメン

トMz の3つである。

③ 平面シェル要素

上記2方向の自由度を共に有する要素。平面板構造では、解析上は両方向単独に解析して結果を

重ね合わせてもよい。

④ 曲面シェル要素

シェル要素で要素自体が1方向または2方向の曲率を持っているものである。円筒、球、ドーム等の解

析に用いられる。

⑤ ソリッド要素

中実体モデルを解析するために用いる要素であり、3方向の変位自由度を有する。考えている中実

体のみ取り出して解析するのが一般的である。また、中実体は全体構造を解く骨組モデルの中では剛

体として扱われる。

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2.4 付加部材の取り扱い

通常の鋼構造は、主要部材の他にスチフナ、フランジ、ダイヤフラム等の付加部材により補強されて

おり、着目している部材への影響を考えて、適正にモデル化しなければならない。以下に付加部材の

取り扱いの原則を示す。

(1)付加部材を無視してモデル化をしてもよい事例

次に示すようなリブやダイヤフラムは無視してよい。

(a)応力の流れに直角方向のリブ

(b)荷重点、支点、応力集中部のいずれにも連結されていないリブ

(a)のリブやダイヤフラムは面外方向の力にほとんど抵抗しないため、応力がほとんど0であり、その方

向の解析には存在しないに等しい。(b)については、リブの効果がある範囲に限定され、着目部に影響

が及ばないことによる。例えば下の右図の場合、斜線部のリブに応力は分担するけれども、リブと板を含

めた部分の受ける力は不変であり、リブがあってもなくても着目部に影響がない。

(2)スチフナのモデル化の原則

スチフナのモデル化については、主に以下の方法があり、解析で着目している部材への影響、計算

機の容量等を考えて、適正に選定しなければならない。

(a)棒要素としてのモデル化(板は平面要素)

考えている板の面に直角に配され、荷重方向に平行なスチフナとダイヤフラム、ウェブに着目したとき

のフランジ、着目板に直角な主構板等は棒部材としてモデル化してよい。

棒要素の断面積は、そのスチフナなどが、考えている平面と一体となって有効に作用する面積とする。

原則として、棒部材の節点を確実にそれと重なる要素の節点に一致させて、応力の均等化を図るものと

するが、棒部材軸力の小さい部分では要素節点をとばしてもよい。

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曲げを受ける板に付されたリブなどのモデル化には、以下の( b)~( d)の方法がある。

(b)はり部材として断面2次モーメントIを与えてモデル化(板は平面曲げ要素で中立軸のずれは無視)

曲げを受ける板に強度を補う程度に付されたリブなどで、高さの比較的小さいものは、はり要素と

してよい。断面二次モーメントIの計算にデッキ板は含まれない。このモデル化が一番容易である。

(c)平面要素としてのモデル化(板は平面曲げ要素で中立軸のずれは考慮される)

スチフナの曲げが大きい場合、解析モデルは3次元モデルとし、スチフナは平面FEM要素とする。

図の例では、板からスチフナには鉛直力のみが伝えられ、スチフナはこの鉛直力を受けて面内曲

げ変形をする。板とスチフナの間では、共有節点以外は変形が連続しない。スチフナは長方形要

素分割とし、高さ方向を最低4等分するのを原則とする。(c‐1)参照。

曲げの大部分をスチフナの応力で分担するときは、スチフナのみをモデル化し、デッキ板を無視

するのが一般的であるが、デッキ板の有効幅分だけを棒要素としてもよい。(c-2)参照。

(d)はり要素と剛体ばり要素によるモデル化(板は平面曲げ要素で、中立軸のずれは考慮される。)

スチフナの下にもフランジが配されるなど、スチフナが大きく中立軸が低い場合、中立軸のずれを考

慮するために、はり要素と板を分離しその間に連結材を置してモデル化する。両者に曲げが生じたとき

は、はり要素と板は同一量だけ伸縮できないので、軸力が生ずる。はり要素に軸力が作用すると、板に

この偏心によるモーメントが発生する。(d)参照。

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2.5 使用要素選択の原則と応力分布

目的に即した FEM 解析を行うためには要素の特性を知り、適切な要素選択をしなければならない。

FEM 解析理論の誘導は

(Step1) 対象とする構造の境界条件、剛性等の分布が任意に与えられた問題を、架空の境界線を

引くことにより多数の要素に分割し、

(step2) 個々の要素のつり合いと全体のつり合いの条件を定式化する

手法である。

その要素間の力の受渡しは、節点のみで行われる。

2.5.1 使用要素選択の原則

a.鋼構造物の場合、応力急変部はモデル全体からみれば局所的なことが多い、従って、この種の構造

モデル全体に高次要素を用いることは不経済である。また、応力変動部はその部分が狭いため、高次

要素でも小さな要素を用いることになり、小数の大きな要素を使う高次要素のメリットは少ない。

b.三角形要素は、応力急変部を精度よく近似するためには、拡大図を必要とする程要素を細分しなけ

ればならない。また、同じ大きさの四辺形要素を2つの三角形要素に分けると、要素数は2倍となるが精

度は逆に落ちるので、特に必要とする場合以外用いない方がよい。

c.従って、鋼構造物の FEM 解析でのモデルの分割は、長方形または四辺形要素を基本として行ない、

応力急変部ではこの要素をより細分するのがよい。

d.三角形要素の使用は、要素寸法に比して応力変動の少ない個所を原則とし、次のような場合に限定

するのがよい。

イ.粗い分割と細かい分割のつなぎの部分。

ロ.板の角部など、四辺形で分割した後に三角形が残った部分。

ハ.四辺形要素では形がいびつになる部分。

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2.5.2 応力分布

① 要素応力は隣接要素間で連続しない。

三角形要素は要素内で応力が一定であるから、隣り合う要素間では辺をはさんで応力が一定値だけ

離れる。従って、応力に着目している部分では、要素を細分して要素間の応力差を小さくする必要があ

る。

四辺形要素の応力は要素内で直線的に変化する。従って、辺や節点上で三角形要素程大きな応力

差は生じないが、理論的に連続しないので要素の両側で若干の応力差は生ずる。しかし、工学的根拠

はないが、節点部の応力については、接続要素の平均をとっても大きな誤差はない。高次要素につい

ても同様である。尚、経験的には、曲げ問題などで三角形要素を用いて四辺形要素と同程度の精度を

得るためには、その部分で4倍の要素数を必要とする。

応力分布

② 要素分割を細分すれば最大応力は一般的に大きくなる。

1つの要素を2つの要素に細分すると、新しい要素の応力は前の要素より大きなものと小さなものに分

かれる。両者の応力とも前回より小さくなる状態は、2つの要素全体に作用する断面力が前回より小さく

なったことに相当し、応力の全体的流れが変らない限り、力のつり合い上では起り得ない。この傾向は

特に三角形要素において顕著であり、応力集中部では要素を細分する程、応力は大きくなりながら一

定値に収束する。これはFEM解析で得た近似値は常に厳密値より小さいという事実にも対応している。

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③ 要素応力は荷重点及び支点に接する要素で大きくなる。

支点と荷重点は系の外からの集中力が作用する点であり、それを直接うける要素はこの外力に抵抗

しなければならない。荷重点から離れるに従って、節点力は多くの要素に分散されたり節点間で均等化

されたりするので応力も分散されて小さくなる。

要素応力が特に大きくなるのは、最端外力作用点、最端支点、最大反力支点、最大荷重点等に接

する要素である。従って、連続した要素間で支点や荷重点をとびとびにとるのは、応力が支点ごとに大

きくなって好ましくない。

良い例 悪い例

④ 棒部材の使用を誤ると応力集中が生ずる。

例えば、荷重点又は支点から出たスチフナ部材など、棒要素が他の支点に達しないで途中で切れて

いると、それに接する要素の応力が大きくなる。これは棒要素で伝えられてきた軸力が外力と同じ効果

で作用するためである。

また、棒部材の数を減らす目的などで、途中の要素を飛び越えて離れた節点に棒部材を結ぶと、棒

部材による集中力も途中の要素で吸収されることなく離れた点に直接伝えられてしまうので、応力分布

が実際と異なってくる。

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下図は、回転を拘束しない支点を表現するために棒部材を用いた例であるが、棒要素の軸力がアン

バランスであれば応力集中が生ずる。右下の図は一つの改良例であり、応力平滑化のための要素を途

中に入れたものである。

この緩衝要素は現実には存在しないので、その応力は知る必要はない。

⑤応力集中は領域の自由境界で隣接要素辺が平行でない箇所に生ずる。

これは経験則であるが、応力は曲げなどによって端部で大きく、かつ最外側の要素辺に沿って流れ

ていく。要素辺が折れ曲ってこの応力の向きが曲げられると、主応力はx、y両方向が合成されて大きく

なるものと考えられる。右下図のように要素辺が平行な境界では、応力集中は生じない。

⑥ 全体の最大応力は同一の板厚要素のうち前記③~⑤のどれかの点に生ずる。

これは連続体の性質上ほぼ明らかである。これ以外の点に最大応力が生じたとすれば、それは入力

ミスなどによって、予期しない部分に前記状態が出現してしまったとみてよい。

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2.6 解析結果の整理方法

FEM解析ではその設計上の位置づけとなる記録、及び結果の信頼性を確認する資料として、いくつ

かの整理されたリスト等を提示しなければならない。これらの項目を以下に示す。

(1)総括表またはこれに類するもの

各項目とも数行程度で簡潔に記入

①解析実施年月日、所属、担当者名

②橋梁名、構造ディテール、設計レベル

③解析の目的及び着目点

④解析法、使用プログラム

⑤解析モデル(モデル範囲の根拠)モデルは別紙

⑥作用荷重

⑦境界条件

⑧使用要素(要素特性、要素数、節点教)

⑨発生応力(最大、最小応力)、応力図は別紙等。

⑩結果の評価

(2)入力諸元に関するもの

①基本寸法図

要素分割する前の解析モデルの形状、材質等に板厚、荷重状態等、棒要素がある。ときはその

実体などがはっきりわかるように表示する。

②要素モデル配置図

要素番号、節点番号、支点位置、縮尺等がわかることが必要。

③要素細分領域の拡大図

細分領域があり、全体図では①、②がわかりにくい場合に付する。

④荷重条件

集中荷重の位置と強度。計算結果の図中に記入してもよい。

⑤図示できない基本数値表

各ばね支点のばね常数、各棒要素の断面積、各集中荷重の強度等

(3)計算結果

①変位図

外形線だけの変位図が望ましい。最大値と変位の縮尺を示すものが必要。

②主応力図

最大値とその要素番号を含むものが必要。

⑨応力の等高線図

等高線間隔は最大応力の1/10以下が望ましい。

④特定線上の応力分布図

着目部分の線上に沿って応力変化をグラフのように引き出したもの。

⑤出力リスト

主として図表では十分な情報が得られていないもの(ひずみ等)に対して必要であり、通常の解析

では省略してよい。

⑥その他

上記以外にも、FEM解析の目的達成に必要な資料がある場合は、それを提示しなければならない。

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2.7 計算結果のモデル検証

FEM解析に先立って、このモデルに必要な分割、解析領域、境界条件、荷重、使用要素等は既に検

討されている。しかし、解析モデルがこの検討に従って作られても、計算結果がその意図した通りに得ら

れる保証はない。従って、得られた結果をいくつかのチェック項目について概観し、その妥当性を評価

する必要が生じる。

以下にそのチェック項目を列挙する.

(1)節点変位図

①部分的に異常な変形がないかどうかを見る。この場合、各要素の変位図ではなく、解析境界の外

形線の変位図の方がよい。例えば、本来同一節点であるべき点が異なった2点になっている場合、

変位図で両節点が分離しギャップが認められる。

②局所的に、異常に大きな変形の原因は、

a)板厚,ヤング率等の要素剛性の入力ミス

b)支点数の不足

c)フランジとなる棒要素などの配置ミス

等が考えられる。

(2)主応力図

① 応力の流れを見る。応力の流れが予想と大きく異った場合、その原因としては

a)支点の配置ミス

b)入力したスチフナの配置が現実的でない

等が考えられる。

② 隣接要素間で応力差が大きい結果は好ましくない。例えば隣り合う要素で主応力が2倍~3倍

に変ったり、大きな引張と圧縮の主応力が隣り合って続いている場合などは、要素をさらに細分す

る必要がある。

③ 応力集中個所が予想通りでない場合

既に応力分布のところで述べた応力集中の条件が、入力ミスなどにより別の箇所に作られてしま

ったと考えてよい。つまり、要素または部材の配置が悪い。

④ 応力の流れがなめらかでない場合

a)要素分割が不適当

b)スチフナ等により予想外の力が要素に伝えられた

等の原因が考えられる。

(3)応力等高線

応力等高線のなめらかさをみる。次のような場合は要素の切り方が悪いと言える。

a)ある線に沿ってすべての等高線が折れている場合。本来連続体にこのような線は存在するはず

がなく、三角形要素を不適当に使用したときに四辺形要素との境界部などに見られる。

b)応力等高線の密集部が切れ込んでいる場合。要素の大きさが適当でなく、隣接要素間で応力

差が大きいときに、一つの要素の各辺上で等高線の密度が著しく変りこのような現象が生ずる。

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3.最近の FEM 解析事例

3.1 B グループ調査結果一覧表

Bグループ構成会社で、最近実施したFEM解析について、その構造形式、対象部位、解析目

的についてまとめた表を下記に示す。

No 橋梁形式 対象部位 目的

1 RC 鈑桁橋 鋼 I 桁と鋼製橋脚の剛結構造 応力照査・構造形状の検討

2 PC 床版2主桁橋 床版 有効幅照査

3 PC 床版2主桁橋 主桁上フランジと床版 スタッドジベル配置の検討

4 PC 床版箱桁橋 箱桁上フランジ 応力照査

5 4径間連続鋼箱桁橋 分岐部の上フランジ 応力照査

6 2径間連続鋼床版桁橋 横梁部/合流部の鋼床版 応力照査・構造形状の検討

7 3径間連続鋼床版箱桁橋 下フランジコーナー部 応力照査

8 多室シェル箱桁橋 桁と円柱鋼製橋脚の剛結部 応力照査

9 インテグラルアバット橋 端部剛結部 応力照査

10 逆ローゼ橋 アーチリブ端部補強部 補強材料の断面決定

3.2 FEM 解析事例の概要

これらの収集事例について、目的とする解を得るために、どのようなモデル化をしたのかを主眼を置

いて、次項以下にそれぞれのFEM解析の概要をFEM解析総括表としてまとめる。

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(1) FEM解析事例-1

項 目 内 容

橋 梁 形 式 鋼 I 桁と鋼製橋脚の剛結構造

構 造 デ ィ テ ー ル 剛結部のディテール

設 計 レ ベ ル 詳細設計

解 析 の 目 的

及 び 着 目 点

剛結部の主桁は橋脚に部分的に割り込んでおり構造が複雑なため部材の幅、

板厚を FEM 解析により決定するために実施した。

解 析 法 立体 FEM

使 用 プ ロ グ ラ ム NASTRAN

解 析 モ デ ル

( モ デ ル 範 囲 )

剛結部分を抜き出しモデル化

作 用 荷 重 立体解析により算出された断面力を解析モデルの主桁境界部に載荷。常時の

載荷ケースは各主桁の曲げモーメン最大時の断面力を使用。橋軸直角方向

地震時断面力についても照査をおこなった。

境 界 条 件 橋脚モデルの下端部を完全拘束

使 用 要 素 シェル要素

発 生 応 力

(最大・最小応力)

常時において、主応力最大は主桁腹版で生じ、主応力最小は主桁下フランジ

で生じた。主応力が許容応力度以内になるように断面を FEM 解析で決定し

た。地震時断面力に対する最大応力は横桁腹板で生じた。その値は許容応

力度以内であった。

結 果 一般部の下フランジ断面は、幅が520mm、板厚は 28mm~39mm であったも

のを、剛結部については FEM 解析の結果が許容応力以下にするため、フラン

ジ幅は700mm、板厚は G1,G3 で 58mm、G2 で48mmとした。橋軸直角方向

地震時の解析結果より横桁の板厚アップ、補剛材のサイズアップを行った。

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(2) FEM解析事例-2

項 目 内 容

橋 梁 形 式 PC 床版2主桁橋

構 造 デ ィ テ ー ル 主桁上フランジと床版

設 計 レ ベ ル 詳細設計

解 析 の 目 的

及 び 着 目 点

少数主桁と長支間床版を組み合わせた橋梁形式の施工例が多く見られるよう

になってきた。しかし、解決すべき課題や基本的な検討も未だ残されている。

そこで、ここではそれらの一つとして、床版有効幅に着目した検討を行った。一

般的な合成2主鈑桁橋をモデル化し、FEM 解析により床版の応力分布形状を

求め、有効幅を算出した。そして、道路橋示方書の有効幅算出式による結果と

の比較検討を行った。

解 析 法 立体 FEM

使 用 プ ロ グ ラ ム

解 析 モ デ ル

( モ デ ル 範 囲 )

対象橋梁は支間長 45m の単純合成2主鈑桁橋、支間長 45m+45m の2径間連

続合成2主鈑桁橋とした。床版は、PC 床版及び合成床版の2つの形式を想定

し、それぞれ主桁間隔は 5.7m 及び 10m とした。簡略化のため、主桁断面は全

長にわたり一定とし、合成床版の底鋼板は 6mm とした。以上の橋梁全体をモ

デル化した。尚、壁高欄はモデル化を行わなかった。床版のコンクリートは引

張応力に対して全断面有効と仮定した。

作 用 荷 重 単純桁は集中荷重と等分布荷重を載荷した。連続桁には等分布荷重を載荷

した。ただし、連続桁では中間支点部に着目する場合は全支間に、端支間中

央部に着目する場合は端支間のみに載荷した。

境 界 条 件

使 用 要 素

・ 要 素

特 性

・ 要 素

・ 節 点

床版、ハンチ:ソリッド要素。床版は厚さ方向に5等分割。

鋼桁、スタッド、合成床版の底鋼板:シェル要素

発 生 応 力

(最大・最小応力)

結 果 合成床版と PC 床版の有効幅は 95%以上の精度で一致した。

FEM による有効幅(各5等分割断面の平均値)と道示の算出式による有効幅

は良好に一致し、特に単純桁においては3%以下の誤差で一致した。

床版厚方向の有効幅の変動は連続桁の中間支点部において最も大きくなり、

有効幅の最大は最小の8割程度大きくなった。

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(3)FEM 解析事例-3

項 目 内 容

橋 梁 形 式 PC 床版2主桁橋

構 造 デ ィ テ ー ル 主桁上フランジのスタッドジベル

設 計 レ ベ ル 詳細設計

解 析 の 目 的

及 び 着 目 点

PC 床版2主桁橋は床版支間が長いので橋軸直角方向のたわみが大きくな

る。特に中間横桁位置では、主桁フランジが拘束されるため、スタッドジベルに

引き抜き力が作用する。その影響により、スタッドジベル配置が適切でないと、

床版とフランジとの間に離間が生じ、そこに雨水や結露水が浸入し、悪影響を

及ぼす懸念がある。そこで、横桁取付部のスタッドジベルの配置に着目し、こ

の離間に対して検討を行った。着目個所は、上フランジ縁とスタッドジベル中

間位置の離間、およびスタッドジベルに作用する鉛直方向力と橋軸直角方向

せん断力とする。

解 析 法 立体 FEM

使 用 プ ロ グ ラ ム

解 析 モ デ ル

( モ デ ル 範 囲 )

床版は橋軸方向に、中間横桁

部を中心として設計計算にお

ける有効範囲である前後1m

(合計2m)を取り出した。スタッ

ドジベルの配置は橋軸方向に

4本、上フランジからの縁からの

距離は50mm、橋軸方向は20

0mm間隔とした。

作 用 荷 重 PC ケーブルは橋軸方向に500mmピッチで配置し、有効プレストレスを温度

荷重として載荷する。荷重は死荷重の他、活荷重は T 荷重と衝撃係数を考慮

する。載荷面は橋軸方向幅 200mm、直角方向幅 500mm とする。載荷ケースは

床版張り出し部、床版支間部に着目した2ケースを考慮する。風荷重として、

水平力と偏心モーメントを載荷する。

境 界 条 件 主桁下フランジを鉛直方向に支持する支点とし、張り出し部の一方を水平方

向に支持する支点とした。

使 用 要 素

・ 要 素

特 性

・ 要 素

・ 節 点

床版コンクリート:ソリッド要素。

スタッドジベル:梁要素。

上フランジと床版コンクリートの接触部は GAP 要素として結合。

スタッドジベルと床版コンクリートはダミー要素(ばね要素)で結合し、水平方向

せん断力のみ伝達させる。(次項参照)

発 生 応 力 -

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(最大・最小応力)

結 果 -

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スダッドジベル及びコンクリート床版とフランジの接触部のモデル化

スタッド平面配置図

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要素分割図と境界条件

断面

平面

側面

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(4) FEM 解析事例-4

項 目 内 容

橋 梁 形 式 PC床版1主桁箱桁

構 造 デ ィ テ ー ル 上フランジおよびダイアフラム、リブ

設 計 レ ベ ル 詳細設計

解 析 の 目 的

及 び 着 目 点

後打 PC 床版の横締プレストレスの影響による主桁フランジ、ダイアフラム、リブ等

の安全性を FEM 解析により照査を行った。

解 析 法 立体 FEM 解析

使 用 プ ロ グ ラ ム NASTRAN

解 析 モ デ ル

( モ デ ル 範 囲 )

断面の半分をモデル化。橋軸方向はダイアフラム間隔をモデル化。

作 用 荷 重 350mm 間隔および 750mm 間隔に導入プレストレスを載荷。

境 界 条 件 箱桁中心で Y (橋軸直角方向)、θx(橋軸回り)、θz(鉛直回り)を固定。

橋軸方向端部で X (橋軸方向)、θy(橋軸直角回り)、θz を固定。

主桁腹板上で Z(鉛直方向)を固定

使 用 要 素 床版:ソリッド要素

主桁:シェル要素

発 生 応 力

(最大・最小応力)

最大の主応力はダイアフラムの上フランジと腹板のコーナー部に生じた。

結 果 後打 PC 床版の横締プレストレスの影響による主桁フランジ、ダイアフラム、リブ等

の安全性が確認できた。

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(5) FEM解析事例-5

項 目 内 容

橋 梁 形 式 4径間連続箱桁

構 造 デ ィ テ ー ル 主桁の分岐部フランジ

設 計 レ ベ ル 詳細設計

解 析 の 目 的

及 び 着 目 点

1 主桁開断面箱桁から2主桁閉断面箱桁に変化する4径間連続箱桁の分岐部

に着目。この部位の応力伝達を明確にし、詳細構造の妥当性を検証するため

に FEM 解析を行った。また、合成桁として、床版載荷時の挙動や活荷重によ

る影響を確認した。

解 析 法 立体 FEM

使 用 プ ロ グ ラ ム

解 析 モ デ ル

( モ デ ル 範 囲 )

4径間連続箱桁が並

列しており、拡幅側端

支点以外の各支点上

で相互に連結された

構 造 と な っ て い る た

め、並列橋の影響も考

慮し、全径間、全幅員

をモデル化し、中間ダ

イアフラム等の配置も

行った。着目する分岐

部付近は3次元シェル

要素を用いてメッシュ分割を行い、その中でも応力集中等が考えられる個所は

細分割を行った。

作 用 荷 重 以下の3ケースを行い、それらを足し合わせる。

ケース1:鋼重、ハンチ、床版(鋼殻含む)荷重(合成前死荷重を想定)

ケース2:地覆、壁高欄、遮音壁、舗装、付加荷重(合成後死荷重を想定)

ケース3:活荷重を着目部位に一番不利になるように載荷。並列橋側には従荷

重を考慮した。

境 界 条 件

使 用 要 素 シェル要素

発 生 応 力

(最大・最小応力)

上フランジ、下フランジのコーナー部に高い応力が発生した。最大値は許容応

力程度に収まった。

結 果 コーナー部に高い応力が生じたが、閉断面から伸びる縦リブがこの位置で無く

なり、開断面側のフランジ剛性との違いによって生じるもので、局部的な応力

集中ではないと考えられる。構造詳細は分岐部を橋軸方向に長く取り、曲線加

工することで、応力集中を緩和させている。2主桁分岐部には応力緩和の目的

で下フランジに補強 PL を取り付けた。尚、分岐部の格点の前後 1.0m の位置

には充腹板構造のダイアフラムを配置することで、剛性の確保、断面形状の保

持、局部集中荷重の円滑な桁への伝達を計った。

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(6) FEM 解析事例-6 項 目 内 容

橋 梁 形 式 ランプ桁が結合された5径間連続箱桁

構 造 デ ィ テ ー ル 分岐部鋼床版

設 計 レ ベ ル 詳細設計

解 析 の 目 的

及 び 着 目 点

活荷重が本線、またはランプ桁

に偏載した場合、5径間連続箱

桁の中間支点からランプ桁が

分岐している分岐部には変形

が生じる。よって FEM 解析を実

施しこの分岐部近傍の横桁形

状、鋼床版の細部構造の検証

をおこない、採用構造を決定し

た。

解 析 法 平面 FEM

使 用 プ ロ グ ラ ム

解 析 モ デ ル

( モ デ ル 範 囲 )

支点上横桁Web、本線、ランプの側縦桁と、それらに囲まれた鋼床版の範囲と

する。分岐部の支点上横桁は I 形状および箱形状にした場合について検討す

る。応力緩和を目的として鋼床版分岐部にスカーラップを設けたタイプと設け

ないタイプについて計算する。

作 用 荷 重 常時活荷重編載の検討を行う。検討の方法は分岐部端部に鋼床版ねじれ(板

曲げ)の影響として単位変形量 1.0mm を与える(次項参照)。本線とランプの相

対変位は格子解析結果より求める。横桁が箱形状の場合主桁の変位角より算

出する。I形状の場合は変位角と横梁のねじれ拘束の影響を加える。

境 界 条 件 支点上横桁、側縦桁上の辺は完全拘束(X,Y,Z:Fix MX,MY,Mz:Fix)

使 用 要 素

・ 要 素

特 性

・ 要 素

・ 節 点

鋼床版:平面板曲げ要素

横桁、側縦桁:梁要素

発 生 応 力

(最大・最小応力) 作用応力度は許容応力度以下であった。

結 果 横桁を箱桁にすることで、活荷重偏載による変形を制限する効果があった。し

かし、横桁から鋼床版の張り出し長を変更すること、また分岐部にスカーラップ

を設けることの方が応力低減により効果的であった。従って横桁に箱形状を採

用することは構造が雑となり、管理上も問題があるので、鋼床版のディテールを

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変更しI形状を採用した。

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載荷荷重(強制変位)

分岐部端部に鋼床版ねじれ(板曲げ)の影響として単位変形量 1.0mm を与え FEM 解析を行った。

スカーラップ無しの場合

スカーラップ有りの場合

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(7) FEM 解析事例-7

項 目 内 容

橋 梁 形 式 鋼床版箱桁

構 造 デ ィ テ ー ル 下フランジコーナー部

設 計 レ ベ ル 詳細設計

解 析 の 目 的

及 び 着 目 点

鋼床版箱桁橋の下フランジが桁端部において R 付き区間から矩形区間に変

化する箇所について、FEM 解析によりダイヤフラム、下フランジ及び補強材に

おける応力集中の有無を確認する

解 析 法 3 次元 FEM 解析

使 用 プ ロ グ ラ ム MSC NASTRAN

解 析 モ デ ル

( モ デ ル 範 囲 )

鋼床版(リブ含む)・ウェブ・下フランジ・ダイヤフラム・横桁・補強版等をモデル

化。曲線橋であるがモデル範囲が橋梁全体に対して部分的であることから平

面曲線を無視した。

作 用 荷 重 設計時の格子計算結果より着目位置に発生する上部工断面力が最大となる

常時の反力を作用力として支承位置に載荷。

境 界 条 件 端部を拘束

使 用 要 素

・ 要 素 特 性 4 節点シェル要素

・ 要 素 数 18678 要素

・ 接 点 数 18229 節点

発 生 応 力

(最大・最小応力)

ダイヤフラムマンホ-ル部に少し応力集中が見られる(140 N/ mm2以内)

結 果 フランジ及びウェブに

目立った応力集中は

なく、ダイヤフラムマン

ホール部に少し応力

集中が見られるが、そ

の応力度はいずれの

成分においても許容

値以内となっており安

全 で あ る こ と が わ か

る。 ミーゼス応力 右支承

XY

Z

111.8

104.9

97.99

91.11

84.22

77.34

70.45

63.57

56.69

49.8

42.92

36.03

29.15

22.26

15.38

8.496

1.611

V1L2C1G51

Output Set: mageContour: Plate Top VonMises Stress

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(8) FEM 解析事例-8

項 目 内 容

橋 梁 形 式 多室シェル箱桁

構 造 デ ィ テ ー ル 桁と円柱鋼製橋脚の剛結部

設 計 レ ベ ル 詳細設計

解 析 の 目 的

及 び 着 目 点

簡易計算では想定し得ないような変形や応力集中が生じていないかを確認し

た。主桁から脚への応力の伝達機構について確認を行い、上下フランジが大き

く張り出した特殊隅角部に対して、通常の隅角計算のようなモデル化と簡易計算

式による隅角部計算を適用することの妥当性の確認。

解 析 法 立体 FEM

使 用 プ ロ グ ラ ム COSMOS/M2.6

解 析 モ デ ル

( モ デ ル 範 囲 ) 隅角部分および橋脚下端までをモデル化

作 用 荷 重

ケース 1 隅角部 設計時の面内曲げ最大(死荷重+活荷重)

ケース 2 隅角部 地震時荷重(死荷重+橋直地震:震度法レベル)

ケース 3 隅角部 プッシュオーバー(死荷重+橋直荷重:プッシュオーバー)

ケース 4 隅角部 プッシュオーバー(死荷重+橋軸荷重:プッシュオーバー)

境 界 条 件 橋脚部をバネ支持

使 用 要 素

シェル要素:主桁、横リブウェブ、ダイヤフラム、横梁ウェブ、柱、柱ダイヤフラム

ビーム要素:縦リブ、水平補剛材、横リブフラランジ、各開口部のリブ、柱内リブ、

基礎部分、端部剛結部、荷重要部材

スプリング要素:基礎の支点バネ

・ 要 素 数 71217 要素

・ 接 点 数 61620 節点

発 生 応 力

(最大・最小応力)

結 果 の 評 価

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実構造 隅角部計算モデル

モデル 全体 鳥瞰図

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モデル 鳥瞰図

モデル 鳥瞰図(その 2)

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モデル 拡大 鳥瞰図

モデル 平面図

モデル 側面図

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拘束条件

荷重条件

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(9) FEM 解析事例-9

項 目 内 容

橋 梁 形 式 インテグラルアバット

構 造 デ ィ テ ー ル 端部剛結部

設 計 レ ベ ル 詳細設計

解 析 の 目 的

及 び 着 目 点

端支点剛結部において、上部構造から下部構造への断面力の伝達状況を把

握し、安全性を検証するために FEM 解析を実施する。

解 析 法 立体 FEM

使 用 プ ロ グ ラ ム COSMOS/M 2.6

解 析 モ デ ル

( モ デ ル 範 囲 )

橋脚は梁要素とするが、上部工との剛結部付近についてはソリッド要素とす

る。上部工は端部から第一横桁までの範囲を対象とし、シェル要素またはビー

ム要素で立体モデルを作成する。

作 用 荷 重 面内曲げモーメント、せん断力最大(常時)

軸力最大(橋軸方向地震時)

面外曲げモーメント、せん断力最大(橋軸直角方向地震時)

立体解析と同様な断面力状態を再現する。主桁境界部には立体解析で得ら

れた断面力を載荷する。解析対象部分には主桁ウェブ上、及び支点上に線荷

重を載荷する。

境 界 条 件 橋脚下端部を固定支持とする。集中荷重載荷部の主桁自由端には剛体のビ

ーム要素を断面内に配置し、形状保持をする

使 用 要 素

・ 要 素

特 性

・ 要 素

・ 節 点

シェル要素(板厚):主桁、横桁ウェブ、横梁、孔明き鋼板

ソリッド要素:橋脚コンクリート

トラス要素(断面積):主鉄筋、配力筋、接触部材

ビーム要素(断面積、面内、面外曲げ剛度、ねじり剛度):縦リブ、垂直補剛

材、水平補剛材、横桁フランジ、橋脚骨組み部、端部剛部材、荷重用部材

スプリング要素(ばね値):孔明き鋼板バネ

要素数:106,563 要素 節点数:76,596 節点

発 生 応 力

(最大・最小応力)

結 果 -

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(10) FEM 解析事例-10

項 目 内 容

橋 梁 形 式 鋼逆ローゼ橋

構 造 デ ィ テ ー ル アーチリブ端部補強部

設 計 レ ベ ル 詳細設計

解 析 の 目 的

及 び 着 目 点

既設アーチリブ端部補強部材へ作用する地震力が増設補強部材へ分散されて

いるかを確認する、また増設補強部材へ分散されなかった場合、分散するような

増設補強部材の断面変更・増厚検討を目的に FEM 解析を行った。

解 析 法 立体 FEM 解析

使 用 プ ロ グ ラ ム COSMOS/M

解 析 モ デ ル

( モ デ ル 範 囲 )

既設アーチリブ端部補強部材及び増設補強部材のモデル化

作 用 荷 重 立体解析により算出されたアーチリブ支承部の作用力が最大となる断面力をア

ーチリブ端部の節点に集中荷重として載荷する

境 界 条 件 既設支承及び増設支承位置の節点変位を拘束する。

また回転は自由とする。

使 用 要 素 SHELL 要素、SOLID 要素

・ 要 素 特 性 四辺形薄肉シェル要素、3次元8節点アイソパラメトリック・ソリッド要素

・ 要 素 数 30020 要素

・ 接 点 数 23529 節点

発 生 応 力

(最大・最小応力)

結 果 詳細設計で得られていなかった増設補強部材への力の分散効果と発生応力度

が確認され増設補強部材の断面形状及び詳細部の決定に至った。

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4. FEM 解析計算書作成例

4.1. 解析目的

鋼製桁にコンクリート橋脚が剛結される複合構造橋梁について、その結合部分の応力度照査を目的

として FEM 解析を行う。

4.2. 解析概要

解析モデルは橋脚と上部工の剛結部を対象とし、橋脚周辺の主桁、横梁、RC橋脚、充填コンクリート、

鉄筋、スタッドジベルなどをモデル化する。

橋軸方向 隅角部の次の横桁位置までとする。

鉛直方向 下フランジから 5.5m程度とする。

(橋脚の径 5.4mから、せん断力分布 45 度と仮定した時の長さを考慮する。)

図 1-1 モデル 鳥瞰図

Z(鉛直)

Y(橋直)

X(橋軸)

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4.3. 解析内容

解析モデルの規模および使用する解析プログラムを下記に示す。

節点数 94280 節点

要素数 114428 要素

プログラム COSMOS/M Ver2.7

モデル化において使用する要素は下記の通りとする。

SHELL 要素 主桁、横梁、ダイヤフラム

SOLID 要素 充填コンクリート、RC橋脚

BEAM 要素 リブ、補剛材

TRUSS 要素 主鉄筋

SPRING 要素 スタッドジベル

4.3.1.解析モデル

メッシュサイズはスタッドジベル間隔(125mm)程度を基準とする。ただし、主桁先端部と柱下端部につ

いては、着目部でないためアスペクト比(最大 1:5 程度)を考慮しメッシュサイズを荒くして節点数を極力

少なくする。

解析モデルの詳細図を図 1-2~図 1-5 に示す。

図 1-2 モデル 鳥瞰図(鋼材部)

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図 1-3 モデル 鳥瞰図(コンクリート部材)

図 1-4 モデル 鳥瞰図(鉄筋部材)

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図 1-5 モデル 鳥瞰図(スタッド部材)

4.3.2.境界条件

RC橋脚の下端部の節点を拘束する。境界条件を図 2 に示す。

図 2 境界条件

拘束条件

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4.3.3.荷重条件

着目部位に最大不利になるような載荷状態について、下記の2ケースの解析を行う。

ケース1 鋼桁断面着目、主桁ウェブ着目

→ 鋼桁の面内曲げモーメント最大ケースについて解析

ケース2 ダイヤフラム着目

→ 橋脚の面外曲げモーメント(鋼桁の面外)最大ケースについて解析

載荷荷重は詳細設計時の最大となる断面力を使用し、主桁端部の節点にその位置の断面力を集中

荷重として載荷する。また、その最大となる荷重状態の荷重を主桁等に分布荷重で載荷する。

荷重条件を図 3 に示す。

図 3 荷重条件

主桁端部 (最大断面力を載荷)

主桁直上 (最大断面力時の荷重)

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4.4.解析結果

結果は最大、最小主応力で判断する。

4.4.1.鋼部材

各ケースにおける鋼部材の最大、最小主応力および許容応力度を表 1 に示す。

ケース1

(N/mm2)

ケース2

(N/mm2)

許容応力度

(N/mm2)

最大主応力 246.03 244.12 255

最小主応力 -249.84 -227.70 255

表 1

応力図を以下に示す。

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図 4-1-1 応力図 ケース2 鋼部材(剛結部) 最大主応力:N/mm2

図 4-1-2 応力図 ケース2 鋼部材(剛結部) 拡大 最大主応力:N/mm2

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4.4.2.コンクリート部材

応力図を以下に示す。

図 4-2-1 応力図 ケース1 コンクリート部材 最大主応力:N/mm2

図 4-2-2 応力図 ケース1 コンクリート部材 最小主応力:N/mm2

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4.4.3.鉄筋

各ケースにおける鉄筋の最大、最小応力および許容応力度を表 2 に示す。

ケース1

(N/mm2)

ケース2

(N/mm2)

許容応力度

(N/mm2)

最大応力 12.11 8.79 180

最小応力 -28.71 -20.12 200

表 2

4.4.4.スタッド

各ケースにおけるスタッドの最大、最小せん断力および許容せん断力を表 3 に示す。

位置 ケース1

(N)

ケース2

(N)

許容せん断力

(N)

主桁ウェブ面 20801 13016 24919

横桁面 24800 18586 24919

表 3

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4.5. FEM 解析総括表

項 目 内 容

橋 梁 名 ○○○○橋

構 造 デ ィ テ ー ル 鋼製桁にコンクリート橋脚が剛結される複合構造橋梁

設 計 レ ベ ル 詳細設計

解 析 の 目 的

及 び 着 目 点 鋼製桁とコンクリート橋脚の結合部分の応力度照査

解 析 法 立体 FEM 解析

使 用 プ ロ グ ラ ム COSMOS/M Ver2.7

解 析 モ デ ル

( モ デ ル 範 囲 )

橋脚と上部工の剛結部を対象とし、橋軸方向は隅角部の次の横桁位置までと

する。鉛直方向下フランジから 5.5m程度とする。

メッシュサイズはスタッドジベル間隔(125mm)程度を基準とする。ただし、主桁

先端部と柱下端部については、着目部でないためアスペクト比(最大 1:5 程度)

を考慮しメッシュサイズを荒くして節点数を極力少なくする。

作 用 荷 重 載荷荷重は詳細設計時の最大となる断面力を使用し、主桁端部の節点にそ

の位置の断面力を集中荷重として載荷する。また、その最大となる荷重状態の

荷重を主桁等に分布荷重で載荷する。載荷状態は着目部位に最大不利にな

るような2ケースの解析を行う。ケース1は鋼桁断面着目、主桁ウェブ着目し、鋼

桁の面内曲げモーメント最大ケースについて解析。ケース2はダイヤフラム着目

し、橋脚の面外曲げモーメント(鋼桁の面外)最大ケースについて解析する。

境 界 条 件 RC橋脚の下端部の節点を拘束する。

使 用 要 素

・ 要 素 特 性 SHELL 要素:主桁、横梁、ダイヤフラム

SOLID 要素 :充填コンクリート、RC橋脚 BEAM 要素:リブ、補剛材

TRUSS 要素:主鉄筋 SPRING 要素:スタッドジベル

・ 要 素 数 114,428 要素

・ 接 点 数 94,280 節点

発 生 応 力

(最大・最小応力)

鋼部材 最大主応力 246.03 N/mm2 < 255 N/mm2

鋼部材 最小主応力 -249.84 N/mm2 < 255 N/mm2

鉄筋 最大主応力 12.11 N/mm2 < 180 N/mm2

鉄筋 最小主応力 -28.71 N/mm2 < 200 N/mm2

スタッド 主桁ウェブ面最大せん断力 20,801 N < 24,919 N

スタッド 横桁面最大せん断力 24,800 N < 24,919 N

結 果 結合部分の応力度は全て許容値以内であった。

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5.資料

5.1 片持梁の先端に集中荷重を受ける長方形梁の応力分布

ここでは、要素の種類や分割方法によって、応力分布がどのように変化するかを見るために、下記に

示す簡単なモデルについてFEM解析を行なった。

解析モデルは高さ1.0m、長さ10mで左端を固定した片持梁の先端に1000Nの集中荷重を与えた

長方形梁とした。

右の表は単位幅当たりの梁理論による応力

度と四角形要素を用いたFEM解析の縁応力

度を示す。

M = 1000 * Li

W = h2 / 6 = 166,667 mm3/mm

σx = M / W

以下の図は要素分割を変えてFEM解析を実施した結果で、下図はVonMisesの相当応力分布、次項

にせん断応力の分布、たわみの分布を示す。要素分割はそれぞれ、下段は高さ方向を8等分した正方

形のメッシュを切った場合、中段は高さ方向を4等分した正方形のメッシュを切った場合、上段が中断の

正方形を2分割した三角形とした場合を示す。

VonMisesの相当応力の分布

Node L M σx σx(FEM)

接点番号 mm N・mm N/mm2 kN/m2

1059 10000 1.0E+07 60 6.60E+04

1067 9000 9.0E+06 54 5.40E+04

1075 8000 8.0E+06 48 4.80E+04

1083 7000 7.0E+06 42 4.20E+04

1091 6000 6.0E+06 36 3.60E+04

1099 5000 5.0E+06 30 3.00E+04

1107 4000 4.0E+06 24 2.40E+04

1115 3000 3.0E+06 18 1.80E+04

1123 2000 2.0E+06 12 1.20E+04

1131 1000 1.0E+06 6 6.00E+03

1139 0 0.0E+00 0 6.61E+02

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せん断応力分布

たわみの分布

VonMisesの相当応力を示す図から、三角形要素と四角形要素では明らかに応力の等高線の値が異

なることが分る。このことは、三角形要素は要素内で応力が一定なので、要素応力から応力の等

高線を求めるために各要素を平均化した節点応力を用いて、曲げの最大応力を求めることには注意が

必要であることを示している。三角形要素を使用する場合は四角形要素を4等分するように分割すれば、

直線的な応力分布をする四角形要素と同一面内に4種類の階段形応力を設定することになり、精度的

に四角形に対抗できると考えられる。

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5.2 立体 FEM と平面格子の比較

3径間連続4主桁橋において立体FEMと平面格子の比較した事例があるので、ここにその解析モデ

ルと比較した結果を示す。

5.2.1 解析モデル

(1)FEM解析モデル

3径間連続4主桁橋を立体FEMとしてモデル化する。床版と主桁、横桁はSHELL要素でモデ

ル化し、対傾構はBEAM要素でモデル化を行う。床版と主桁の上フランジ部はBEAM要素で剛

結する。

(2)平面格子解析モデル

主桁及び横桁と対傾構位置に格点をとった平面格子モデルを作成する。

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5.2.1 解析結果

(1)変形図

FEM モデル変形図(500 倍)

平面格子モデル変形図(500 倍)

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(2)直応力分布の比較

上フランジの橋軸方向直応力で支点上においてFEM解析と格子解析の値が若干異なり、格

子解析の方が大きな応力が発生している。しかし、全体的な結果としてはFEM解析、格子解析

ともに算出結果に大きな違いは無い。

上フランジの橋軸方向直応力分布

下フランジの橋軸方向直応力分布

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6.おわりに

Bグループで収集した最近のFEM解析事例をみると、近年のパソコンの急速な高性能化、低価格化の

影響もあって、FEM解析はシェル要素やソリッド要素を用いた立体FEM解析を行なうことが多くなった。

また、解析モデルとして構造物の一部を取り出したときの境界条件による個人差の影響を無くすために、

構造物全体をFEM解析の対象とすることも多くなってきている。

しかし、全ての部材にシェル要素やソリッド要素を用いて忠実に構造物をモデル化するのは、効率的

でないので、着目する部位によって付加部材をビーム要素やトラス要素に置き換える必要がある。また、

メッシュの切り方も処理時間に大きく影響するので、着目部位がどこなのかを明確にして、適切な要素

選択とその分割をする必要がある。そのためにはFEM解析の前提となる仮定や分割する要素の特性、

結果の評価の仕方をよく理解しておく必要がある。本報告書ではその全体の流れとその一部について

概要を示したに過ぎないので、FEM解析を実施する際は是非「本四公団のガイドライン」を一読すること

をお勧めします。

尚、本報告書の資料5.1に示す「片持梁の先端に集中荷重を受ける長方形梁の FEM 解析」は平成

15 年4月 10 日に YTI 島村氏、曽我部氏より FEM 解析の概要説明と実際に COSMOS/M 操作し、簡単

なモデルの作成手順やモデリングの注意事項について講習して頂いたときに作成していただいたもの

で、「本四公団のガイドライン 付属資料 D 曲げ問題のモデル化例」で示されていた内容を検証してみ

たものです。この付属資料に示された通り、要素形状によって結果が異なるという大変に興味深い結果

をみることができました。YTI 島村氏、曽我部氏のご協力に感謝いたします。

また、資料5.2 立体 FEM と平面格子の比較は YTI の「鋼橋ネットサービス 設計技術情報 構造解

析事例」に掲載されている事例をここに掲載させていただきました。

本グループでは、「FEM 解析の実務資料作成」というテーマで2年間活動してきました。実務資料とい

える内容とはなりませんでしたが、FEM 解析初心者のための初めの一歩として、少しでも参考の資料と

なれば幸いです。