インドにおける医薬品の製造管理および 品質管理基...

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49 《研究ノート》 インドにおける医薬品の製造管理および 品質管理基準(GMP)履行 上 池 あつ子 1. はじめに インドにおいて,2005年より WTO の TRIPS と完全に整合的な特許法が施行に なり,物質特許が認められるようになった 1 。2003年にはデータ独占権の導入(data exclusivity)も決まった 2 。こうしてインドは本格的なプロ・パテント時代を迎え, インドが世界的な医薬品生産拠点,さらには世界的研究開発センターになる可能性 が高まってきた。 従来の特許法(1970年特許法)は,物質特許を認めず製法特許のみを認めたため, 多くの在インド外国企業は,インド市場へのブランド医薬品・新薬の投入を控えて 1. はじめに 2. プロ・パテント時代のインド医薬品産業発展のシナリオ− GMP の重要性 3. インドにおける GMP 義務履行と SSI 3.1 GMP とは? 3.2 インドの GMP 3.3 GMP の義務履行と SSI 4.おわりに * 甲南大学経済学部非常勤講師(E-mail : akamiike@hotmail. com) 1 WTO の TRIPS とインドについては,佐藤 [2002 a] を参照されたい。 2 データ独占権(data exclusivity)とは,規制当局に販売許可を得るために提出する新薬の安全性と 有効性を証明する試験データの不正な商業的使用からの保護および開示からの保護義務を規定するも ので,TRIPS において認められている権利である。データ独占権の導入は,臨床研究・臨床試験の アウトソーシングを誘致する上で大変重要である。データ独占権の詳細とインドにおけるデータ独占 権の導入に関しては,上池・佐藤[2006]の第2節を参照されたい。

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49

《研究ノート》

インドにおける医薬品の製造管理および品質管理基準(GMP)履行

上 池 あつ子*

1. はじめに

 インドにおいて,2005年より WTO の TRIPS と完全に整合的な特許法が施行に

なり,物質特許が認められるようになった1。2003年にはデータ独占権の導入(data

exclusivity)も決まった2。こうしてインドは本格的なプロ・パテント時代を迎え,

インドが世界的な医薬品生産拠点,さらには世界的研究開発センターになる可能性

が高まってきた。

 従来の特許法(1970年特許法)は,物質特許を認めず製法特許のみを認めたため,

多くの在インド外国企業は,インド市場へのブランド医薬品・新薬の投入を控えて

1. はじめに2. プロ・パテント時代のインド医薬品産業発展のシナリオ− GMP の重要性3. インドにおける GMP 義務履行と SSI 3.1 GMP とは? 3.2 インドの GMP 3.3 GMP の義務履行と SSI4.おわりに

* 甲南大学経済学部非常勤講師(E-mail : akamiike@hotmail. com) 1 WTO の TRIPS とインドについては,佐藤 [2002 a] を参照されたい。2 データ独占権(data exclusivity)とは,規制当局に販売許可を得るために提出する新薬の安全性と

有効性を証明する試験データの不正な商業的使用からの保護および開示からの保護義務を規定するもので,TRIPS において認められている権利である。データ独占権の導入は,臨床研究・臨床試験のアウトソーシングを誘致する上で大変重要である。データ独占権の詳細とインドにおけるデータ独占権の導入に関しては,上池・佐藤[2006]の第2節を参照されたい。

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きた。植民地期からインドに進出していた外国企業は,1970年代初頭までは,圧倒

的市場シェアを誇っていた。植民地期から1970年代初めにかけて,公企業も含めイ

ンド企業が未発達であったことに加えて,当時は外国資本に対して規制が緩やかで

あったことが,外国企業による圧倒的市場シェアの背景にあった。しかしその後の

1970年特許法3,1970年医薬品価格規制令(Drug Price Control Order 1970),1973

年改正外為規制法(FERA),さらに1978年医薬品政策によって外国企業の活動は

抑制され,次第にその市場シェアを低下させ,2000年にはおよそ25% にまで減少

した。

 2005年新特許法の施行により,物質特許が認められるようになったことで,外国

企業は積極的にインド市場に新薬を投入し,新薬の開発に従事する一方,既存のブ

ランド医薬品の生産をインド企業に委託生産させることでコストの削減と増益とい

う戦略をとろうとしている。インドは,①圧倒的なコスト競争力,②高い技術力,

③英語教育を受けた人材の豊富さ,④巨大な患者人口など,アウトソーシング(外

部委託)に有利な条件を有しているため,世界の製薬大企業(メガファーマ)の研

究開発拠点・製造拠点として注目されている。すでに,ノバルティス(Novartis)

はムンバイにソフトウェア開発センターを設置し,インドを研究開発拠点として位

置づけている。ファイザー(Pfizer)もデーター・マネジメントを拡大しており,

2003年にバイオメトリックス(生物性質測定法)分野の活動規模を拡大し,ファ

イザーの世界研究センターにデータを提供している4。グラクソ・スミスクライン

(Glaxo Smith Kline)は2003年にランバクシーと研究開発の領域で包括的契約を締

結しており,インドを臨床研究の拠点の1つとして位置づけている5。

 インド政府もインドを世界的な医薬品生産拠点,臨床研究・臨床試験センターに

育成するための施策をとっている。1999年に,物質特許体制に備えるため,医薬

品産業の研究開発能力を強化し,国内の研究開発を請け負うインド企業がどのよ

うな支援を必要としているかを明らかにするために,医薬品研究開発委員会(the

Pharmaceutical Research and Development Committee; PRDC)が設置された。

PRDC はインド医薬品産業の SWOT 分析をし,その結果インド医薬品産業の機会

3 1970年特許法をはじめとする当時のアンチ・パテント政策については,西口 [1982] の第Ⅳ章を参照されたい。

4 以上は OPPI&Monitor Company Group, LP.[2003],pp.31-34, 36.5 『日経産業新聞』2005年7月13日付け。

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として,品質管理基準の改善,臨床研究と臨床試験の潜在的機会,海外における研

究開発費上昇による,アウトソーシングとネットワーキングの機会が増大している

ことを指摘した。一方,インド医薬品産業に対する脅威として,国際レベルの品質

・製造管理基準の急速な変革を指摘した。

 その後,医薬品の製造管理および品質管理基準(Good Manufacturing Practice;

GMP)の規制強化が図られた。インド政府は2001年12月11日,インドにおける

すべての医薬品企業(生産単位)に対して,GMP の要件に従うことを義務付け,

2003年12月末の期限までに義務履行できなかった場合は,生産ライセンスの取り消

しと製造施設の閉鎖を強制執行する方針を打ち出した。GMP は1986年医薬品政策

で導入が決定され,1988年に施行となった。この GMP の確立により,インドの医

薬品は国際的に信頼されるものとなり,インドの医薬品産業の国際競争力の向上に

つながった6。

 GMP は医薬品産業の国際競争力を強化し,インドの医薬品輸出の拡大に寄与し

たように,医薬品の貿易において重要である一方,アウトソーシングや外国直接投

資(FDI)を誘致する上でも,GMP の確立は必要不可欠である。大・中規模企業の

製造施設は既に GMP の基準を満たしており,実際に規制対象となるのは,19,000

程度存在する小規模工業部門(Small Scale Industry; SSI)であった。SSIは独立以後,

政府による SSI 政策により保護・育成されてきた。とりわけ留保制度は,特定の品

目を SSI のみの生産に指定し,大規模工業を排除してきた。SSI による医薬品の輸

出は増加しているし,さらに SSI は製造受託者として重要な役割を担うと期待され

ている。しかしながら,SSI のほとんどが GMP 基準を満たしていないのが現状で

ある。物質特許が導入され,従来のように特許期間が満了していない医薬品をジェ

ネリック薬として生産することが不可能になるうえ,さらに GMP の義務履行は巨

額の追加投資を必要とするため,SSI の経営は非常に難しいものになることが予想

された。物質特許導入と GMP の規制強化によって, SSI 企業の大規模な淘汰も予

想され,インド医薬品産業の産業構造は再編の時期を迎えている。本稿では,SSI

の GMP 義務履行を中心に医薬品産業の構造再編について考察していく。

 本稿は第2節では,①先進国へのジェネリック輸出拡大,②インドにおけるアウ

トソーシングの誘致と拡大,というプロ・パテント時代におけるインド医薬品産業

6 インド医薬品産業の国際競争力については、上池・佐藤 [2006] を参照されたい。

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の2つのシナリオにおける GMP の重要性について整理し,第3節では GMP の解

説と,インドにおける SSI の GMP の義務履行の現状を整理し,第4節で本稿の内

容をとりまとめ,今後のインド医薬品産業について展望する。

2. プロ・パテント時代のインド医薬品産業発展のシナリオ                      − GMP の重要性

 2005年1月1日より,WTO の TRIPS と完全に整合的な物質特許体制が始まり,

インド医薬品産業は新しい局面を迎えた7。本格的なプロ・パテント時代を迎え,今

後インド医薬品産業の国際競争力の維持・向上と持続的な成長と発展のためには,

以下の2つのシナリオが考えられる。

 まず1つ目のシナリオは,ジェネリック薬の輸出を拡大しつつ,他方で新薬開発

に向けた基礎研究を進めることで,ジェネリックメーカーから新薬メーカーへと漸

進的にシフトしていくというシナリオである。すなわち,ジェネリック薬の輸出

の拡大と新薬開発を目標とした基礎研究や新しいドラッグ・デリバリー・システム8

(Drugs Delivery System; DDS)の開発を目標とした製法の開発の促進である。物

質特許の導入は,物質特許満了前の医薬品をリバースエンジニアリングによって複

製を禁止するものである。従来のように特許医薬品をリバースエンジニアリングを

使ってジェネリック薬として生産し,輸出することは不可能となる。しかしながら,

インドの医薬品産業にとって物質特許導入による影響は即時的なものではない。今

後10年間で,米国や EU において,多くの医薬品の特許が満了する。つまり,イン

ドは特許侵害をせずに,従来どおりジェネリック薬を生産することが可能であるし,

同時にジェネリック薬の輸出機会も拡大することにもなる。今後は新薬開発のため

の基礎研究とジェネリック薬の高付加価値化を目的とした製法研究に研究開発の重

点をシフトさせていく必要がある。 実際にランバクシーやドクター・レッディー

ズ(Dr.Reddy's)をはじめとするインド製薬大手は新薬開発のための基礎研究を開

始する一方で,米国やヨーロッパで現地企業を買収し販路を確保し,先進国のジェ

ネリック市場進出を果たしている。

7 インド医薬品産業の発展については,上池・佐藤[2004,2006]を参照されたい。8 ドラッグ・デリバリー・システムとは,薬剤が最適な時間に必要な部位に到達し,効果的に作用す

るように工夫された薬剤の投与法である。

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 しかしながら,欧米のジェネリック市場進出は簡単なものではない。Ray &

Bhaduri [2003] は次のような指摘をしている。米国には,1984年医薬品価格競争

及び特許期間回復法(the Drugs Price Competition and Patent Term Restoration

Act of 1984),通称ハッチ・ワックスマン法(the Hatch-Waxman Act)が,研究

開発に対して完全なインセンティブを残しつつ,生物学的同等性の研究を提出する

のみで米国食品・医薬品局(U.S. Food and Drug Administration; FDA)が販売認

可を与えることによって,ジェネリック薬を奨励している。しかしながら,米国の

ジェネリック市場は非常に競争が厳しく,参入するためには,厳格な品質基準の必

要要件を満たさなければならない。日米欧の規制主体と医薬品産業の代表が集まっ

た組織である ICH(International Conference of Harmonaization; 日米 EU 医薬品

規制調和国際会議)9 は,1991年以来,定期的に会議を開催し,臨床試験に関する手

続きの標準化を行っており,GMP の国際調和に関する取り組みも行う。つまり米

国市場をはじめ,先進国のジェネリック市場に参入するためには,インドは GMP

を ICH の GMP ガイドラインと調和させる必要がある10。

 2つ目のシナリオはアウトソーシングを積極的に受け入れ,インドを製造受託と

臨床研究・臨床試験の世界的中心地にすることである。現在,世界的に,とりわけ

メガファーマによるアウトソーシングが増加する傾向にある。効率を高めて,より

迅速かつ低コストでより多くの新薬を開発するための研究に特化するため,メガ

ファーマはアウトソーシングを増加させている。

 世界の医薬品のアウトソーシング市場は急速に成長している。インドの3大医薬

品業界団体の1つであり11,主として外国企業を代表しているインド製薬企業機構

(Organization of Pharmaceutical Producers of India; OPPI)のレポートによれば,

1998年330億米ドル→1999年362億米ドル→2000年395億米ドル→2001年435億米ドル

→2002年480億米ドル→2003年532億米ドル規模であり,10%近い成長率で成長して

9 ICH については,厚生労働省の「日米 EU 医薬品規制国際会議(ICH)について」[http://www.nihs.go.jp/dig/ich/aboutich/altext2.html] を参照した。

10 Ray & Bhaduri[2003].11 インドの医薬品産業の業界団体は,外国企業,インド大企業,中小企業の3層からなる業界の構

造を反映している。外国企業を代表する OPPI,インド大企業を代表するインド製薬連盟(Indian Pharmaceutical Alliance; IPA)、そして中小企業を代表するインド医薬品製造業組合(Indian Drug Manufacturers Association; IDMA)が3大団体である。

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いる12。

 OPPI のレポートによると,アウトソーシングは,①製造受託(contract manu-

facturing),②研究受託(contract research),③販売受託(contract marketing),

④ファーマ・インフォマティクス(pharma infomatics)に大別される13。①は医薬品

物質と調剤形態の生産のための中間生成物,活性成分,カスタム・ソリューション

を開発し供給する,②は医薬品産業,バイオテクノロジー産業そして医療用装置産

業に研究開発の受託と製品とサービスの提供を行う,③は医薬品のスポンサー ( 提

供者 ) に商品化と認可後のサポートサービスを提供する,④は医薬品開発を通じて

生じた大量のデータから価値を引き出すことを目的とした情報基礎技術ソリュー

ションと情報技術システムのソフトウェアツールを供給することであり,全体的な

ヘルスケア領域に及ぶものである。

 アウトソーシング全体において最も大きなシェアを占めるのが,①の製造受託で

あり,2000年において市場規模は260億米ドル,2005年には365億米ドルになると予

想されている。製造受託は,伝統的なアウトソーシングの1つであり,最大のアウ

トソーシング分野である。その他の分野については,現在そのシェアは小さいもの

の,急速に成長することが予測されている。特に,受託研究とファーマ・インフォ

マティクスの両分野でのアウトソーシングは高い成長が見込まれている14。

 世界の医薬品産業は生産量で8−10%で成長すると予想されている。その一方で,

高齢化社会,長期的ケアを必要とする疾病の罹病率の上昇による医療費の負担の増

加など,政府への財政負担が増加しており,それによる価格圧力が厳しいものになっ

ている。そのため,コストパフォーマンスをあげ,低価格で高品質の医薬品を製造

するために,医薬品企業は製造受託に目を向けざるを得ない。また今後は,バイオ

テクノロジー企業による,バイオ医薬品の製造受託が増加することが想定される。

バイオ企業は,ほとんど製法開発の技術や医薬品の製造能力を有していないからで

ある。今後製造受託メーカーとって,製造受託のチャンスが拡大する可能性がある。

 インドは,①圧倒的なコスト競争力15,②高い技術力,③英語教育を受けた人材

の豊富さ,④巨大な患者人口など,アウトソーシングに有利な条件を有している。

12 OPPI & Monitor Company Group, LP.[2003],p7.13 Ibid., p12.14 Ibid.,p12..15 インドの研究開発費は先進国の25%,人件費は米国の10‐15%,臨床試験の費用は15% といわれている。

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 特にインドのコスト競争力は高く,米国と比べても基礎的生産コストは50%近く

低い。FDA の認可を得た工場設備はインドにおいて30‐50%低いコストで建設す

ることができる。またインドでは,バルク薬は企業内で40‐50%のコストで製造す

ることができる。賦形剤や中間生成物はインド国内で20‐30%低いコストで調達す

ることができる16。さらにインドでの医薬品の販売価格は米国の生産コストよりも

低い。たとえば,抗高血圧薬は米国の生産コストを1とした場合,インドでの販売

価格は0.85に相当する。ベータ遮断薬では米国の生産コストを1とした場合,イン

ドでの販売価格は0.31に相当する17。

 技術力について,1970年特許法体制のもと,インド企業はリバース・エンジニア

リングを発達させてきた。インド企業は,特許医薬品の導入後数ヶ月以内に分子を

分解・解析する能力を有している。さらに製法開発(process development)におい

ても,多くのインドのメーカーは複雑な分子を合成する能力を持ち,製造プロセス

を改良する能力も有している。インド企業は最新の技術の利用にも熟達している。

たとえば,ウォッカード(Wockhardt)やバイオコン(Biocon),ドクター・レッディー

ズなどは酵素やホルモンなどを合成するバイオテクノロジーに集中しているし,多

くのメーカーはキラル合成18やペプチド合成などの技術に熟達している19。

 インド医薬品産業には製造受託での確かな実績もある。イーライ・リリー(Eli

Lilly)やブリストル・マイヤーズ・スクイブ(Bristol Myers Squibb)のようなメ

ガファーマはインド製薬大手のランバクシーやウォッカード,ルパン(Lupin)か

ら医薬原体(Active Pharmaceutical Ingredients; API)を調達している20。

 コスト競争力や高い技術力などのほかに,インドにおける製造受託を支える制度

的基盤として GMP はなくてはならないものである。現在インドには,米国国外で

FDA の認可を受けている(米国の c-GMP 基準を満たしている)製造施設が最も

数多く存在しており,途上国のなかでは突出している。

16 以上は,OPPI & Monitor Company Group, LP.[2003],p.24.17 Ibid., p.25.18 1つの物質を合成していても化学的に特徴の異なる2種類の同じ物質ができる場合があり、これを

キラル化合物という。キラル化合物として有名なのがサリドマイド剤である。サリドマイド剤は一方が鎮痛剤、一方が催奇性をもつキラル化合物である。キラル合成とは有効である一方の物質を選択的に合成することができる方法で、世界中で開発されている先端化学である。

19 OPPI & Monitor Company Group, LP.[2003],p.26.20 Ibid., p.27.

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 将来,研究受託やファーマ・インフォマティクスの分野において,アウトソー

シング機会を拡大するためには,GLP(Good Laboratory Practice, 医薬品の安全

試験実施基準),GCP(Good Clinical Practice, 医薬品の臨床試験実施基準)などの

基準の確立と強化,そしてめまぐるしく変化する世界基準への対応が必要になる。

GMP は輸出競争力としても,そしてインドが製造受託市場としてさらに成長する

ためにも重要である。物質特許の導入により,研究開発能力を持たない企業,多く

の中小企業にとって,インド内外の大企業との製造受託は生き残り戦略の中心とな

る。製造受託市場で受託メーカーがマーケットを確保するためには,委託メーカー

の要望に応えることが不可欠である。委託メーカーは安心して製造を委託するため

に,受託メーカーに対して,高品質な製品を製造するために,GMP に基準を満た

す厳格な製造・品質管理を求める。反対に,受託メーカーがより多くの製品を製造

受託するためには,委託メーカーからのニーズに応え,GMP のもとで効率的かつ

厳格に製造・品質管理を行うことが必要である。

 日本とインドとの関係でみると,日本企業のインドにおけるアウトソーシングは

欧米に比べて遅れている。インド企業はジェネリック薬での提携などを日本企業に

打診しているが,品質基準の問題で日本企業は対応に慎重である。しかし今後日本

の規制が欧米水準になり, 一方で GMP の規制強化によりインド企業が日本の基準

に適合した製品を製造するようになれば,対日ジェネリック輸出は増加する可能性

がある21。

 インドにとって,アウトソーシングは,FDI の増加や技術移転の促進などのメリッ

トの増加を意味する。積極的なアウトソーシング誘致によって,医薬品産業は更な

る発展の機会を得ることになるのである。受託メーカーとして成功するために,重

要なことは,インド医薬品企業は GMP を含め国際的品質管理基準に合致したイン

フラと生産施設を持つことが前提条件となる。そのためには企業努力はもちろん,

政府による法整備や財政的な支援も必要になる。

21 日本においても企業のアウトソーシングを促進する環境が整ってきた。2005年以降,日本国内で自社生産の義務付けが廃止され,海外で生産した製品を国内に持ち込めるようになったし,2003年以降,ジェネリック薬を新薬価格に比べて最大で6割安い価格でした販売できないという下限規制が撤廃された。

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3. インドにおける GMP 義務履行と SSI

3.1 GMP とは?

 GMP と は 医 薬 品 の 製 造 管 理 お よ び 品 質 管 理 基 準(Good Manufacturing

Practice)の略称である。GMP とは安心して使用できる良質の医薬品を供給す

るために,製造時の管理,遵守事項を定めた基準である。この GMP を最初に導

入したのは米国で,1962年に導入した22。その後,世界保健機構(World Health

Organization; WHO)においても GMP が作成され,1969年の総会で加盟各国が

GMP を採用し,国際貿易において GMP に基づく証明制度を採用,実施するよう

に勧告した。

 WHO よれば,GMP は「医薬品が一貫して品質基準に従って生産され管理され

ることを保証するシステム23」であり,「意図した用途と販売認可当局が要求する

基準に適切な品質基準に従って,製品が一貫して生産・管理されることを保証する

品質保証24」である。

 また,GMP は「完成品を試験することでは除去できないすべての医薬品生産に

おけるリスクを最小限度にするように設計されて25」おり,「すべての医薬品の生

産に内在するリスクを縮小することを第1の目的としている26」。WHO の主張する

リスクとは,①健康に有害なあるいは死に至るような医薬品の予想外の汚染,②患

者が誤った医薬品を受け取ることを意味する容器の不正確なラベル,③効果のない

治療あるいは逆効果を結果的にもたらすような,医薬品中に有効成分が不十分であ

ること,あるいは過剰に有効成分が含まれていること,27である。

22 日本においては,1974年に医薬品に関する GMP が作成され,1980年に厚生省令として公布された。当時は遵守事項としての自主管理項目であったが,1994年に省令が改正され,製造施設の GMP 体制が整っていることが製造業の認可を得るための必要要件となった。

23 WHO[http://www.who.int/medicines/organization/qsm/activities/qualityassurance/gmp/gmpcover.html].

24  WHO[2003].25 WHO[http://www.who.int/medicines/organization/qsm/activities/qualityassurance/gmp/

gmpcover.html].26  WHO[2003].27 WHO[http://www.who.int/medicines/organization/qsm/activities/qualityassurance/gmp/

gmpcover.html].

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 WHO の GMP の要件は以下の10項目である28。

1. すべての製造過程は,明確に区別され,経験に照らして組織的に検閲され,そして

仕様書に従って必要な品質の医薬品を一貫して製造することが可能であることを示す。

2. 資格証明と認可が行われる。

3. すべての必要な資源が提供される。

  ① 適正な資格を有しかつ訓練された人員

  ② 十分な土地と空間

  ③ 相応の設備とサービス

 ④ 適正な原料,成分そしてラベル

 ⑤ 認可された手続きと指示

 ⑥ 適切な倉庫保管と輸送

 ⑦ 製造過程管理のための十分な人員,研究所そして設備

4. はっきりと明快な言語で書かれ,かつ施設に対して正しい指示と手順

5. 手順を正確に実行するように訓練されたオペレーター

6. すべてのステップは規定された手順と指示が必要とするすべてのステップは実際に

とられており,また製品の質と量が期待されることを示すような製造中に,記録が(手

引きを使って,あるいは記録装置を使って)行われる。すべての重大な逸脱は完全に

記録され,調査される。

7. 製造と販売をカバーする記録は,一式の完全な歴史を追跡することを可能にし,わ

かりやすくかつ利用しやすい形式で維持される。

8. 製品の適当な倉庫保管と販売は品質に対するいかなるリスクをも最小限度にする。

9. 販売あるいは供給から製品を何式かリコールすることが可能であるシステム

10.市販製品に関する苦情を調査し,欠陥製品の再発を防止するための適切な措置がと

られる。

 WHO は,「品質の悪い医薬品は健康にとって危険であるだけでなく,政府と個々

の消費者双方の資金を浪費するので,GMP による製造管理・品質管理が重要である29」とその重要性を強調している。完成品をテストすることは不可能であるため,

28 WHO[2003].

29 WHO[http://www.who.int/medicines/organization/qsm/activities/qualityassurance/gmp/gmpcover.html]

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インドにおける医薬品の製造管理および品質管理基準(GMP)履行

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医薬品の品質は製造過程で確保されなければならない。GMP によって,完成品の

品質管理では除去することができない欠陥を回避することが可能になる。医薬品の

製造段階で欠陥が見つかるよりも完成品の段階で欠陥が見つかるほうがはるかに不

経済であり,GMP はこのような不経済を回避することに有効である。GMP が政府

と消費者双方にとっての不利益を回避するのである。  

 また WHO は GMP が医薬品の輸出機会を増大させるとも主張する。つまり,

WHO‐GMP 証明制度により,ほとんどの国が国際的に認知された GMP に従って

製造された医薬品のみを輸入し販売することになり,またインドのように医薬品

輸出を促進しようとしている政府はすべての医薬品生産に GMP を義務付けそして

GMP 要件を検査する検査官を訓練することで,医薬品の輸出を増大させることが

できるというのである。つまり GMP を履行するということは品質のよい医薬品に

投資をするということであり,GMP の履行は医薬品メーカー,消費者双方にとっ

て大きなメリットがある,と WHO は主張している。WHO 加盟国は WHO-GMP

に従い,個別に GMP 基準を作成する。

3.2 インドの GMP

 インドでは1986年医薬品政策で GMP の導入が決定され,1988年に施行された。

インドの GMP は医薬品・化粧品法(Drugs & Cosmetics Act and Rules)のスケ

ジュール M(Schedule M)に規定されている。2001年12月11日,インド政府は医

薬品・化粧品法のスケジュール M を改正し,2001年12月11日以前に製造業者のラ

イセンスを受けた,すべてのメーカー(製造施設)に対して,2003年12月末日ま

でに GMP の義務履行を実施することを通達した。もし期限までに義務履行できな

かった場合は,生産ライセンスの取り消しと製造施設の閉鎖が強いられる事になっ

た30。

 改正スケジュール M のもとでのインドの GMP は以下のとおりである31。

29 WHO[http://www.who.int/medicines/organization/qsm/activities/qualityassurance/gmp/gmpcover.html]

30 アーユルヴェーダ,シッダ,ユナニなどのインドの伝統療法の薬についても,2000年6月23日にGMP を導入した。医薬品・化粧品法のスケジュール T に規定されており,2002年6月23日が履行期限となった。

31 GOI[2001a].

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    1.全体的必要条件(所在と環境,建物と敷地,水系,廃棄物の処理)

    2.倉庫業務

    3.生産

    4.付属

    5.品質管理

    6.人員

    7.労働者の健康・衣類・衛生設備

    8.製造の実施と管理

    9.製造建物と衛生設備

    10.原材料

    11.工場設備

    12.文書・記録

    13.ラベルとその他印刷材料

    14.品質保証

    15.自己監察と品質監査

    16.品質管理システム

    17.仕様書

    18.マスター製法記録

    19.包装記録

    20.一括包装記録

    21.一括加工記録

    22.標準的運用手順

    23.参照サンプル

    24.再処理・再生

    25.流通

    26.確認手続き

    27.製品回収

    28.苦情・有害作用

    29.基本データ

 

 インドの GMP の要件は以上の29項目の規定からなる。1.全体的必要条件につ

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インドにおける医薬品の製造管理および品質管理基準(GMP)履行

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いて,所在と環境に関して,「医薬品製造のための工場建物は,むき出しの下水汚

物や排水,そして嫌な臭気,悪臭,過度の煤煙,粉塵,噴煙,化学薬品流出,生物

学上の流出を生み出す公衆トイレあるいはすべての工場を含めた外部環境からの汚

染の危険を避けるような立地であり,避けるような措置(施策)をすべきである」

と規定されている。建物と敷地については,「工場に使用される建物は,衛生に良

い条件の下で医薬品の製造が可能になるように,製造・生産過程に適合するように,

デザインされ,建築され,そして管理され,維持されるべきである。それらは1948

年工場法(the Factory Act, 1948,63 of 1948)で定められている条件に従わなけ

ればならない32」と規定されている。

 工場立地が条件に適していなければ,工場の移転をせざるをえず,工場設備につ

いても建替えが必要になる。工場の移転・工場の建替えには相当な追加投資が必要

であるし,その他の要件も同時に満たさなければならないことを考慮すれば,企業

が負う財政的負担が巨額になることは想像に難くない。

3.3 GMP の義務履行と SSI

 GMP の義務履行はすべての製造施設に対して課されるが,実際に大・中規模企業

の製造施設はすでに GMP の基準を満たしており,主として規制の対象となるのは,

SSI であった。

 1950年代以来,インド政府は雇用を創出し,平等な所得分配を促進するために

SSI を支援してきた。インド政府は SSI に対してさまざまな優遇政策を実行してき

た33。それは SSI が情報の非対称のために十分な信用を得ることができない,また

SSI は原材料の購入やマーケティングにおいて規模の経済を享受することができな

いと仮定されていたからである。SSI 優遇政策には商業銀行や開発金融機関からの

金融支援や課税控除,SSI への留保品目,特恵的政府機関による買い入れ,原材料

への優先的アクセス,インフラ施設の供給などが含まれる。1950年代において,こ

れらの優遇政策は一時的・過渡的措置と認識されていた。しかし実際には,これら

優遇政策は結果的に競争的環境のもとでの企業の独立というよりはむしろ脆弱な企

業の保護となった。この状況は今日まで継続している。

32 Ibiid.33 SSI 政策については,二階堂[2001,2006],近藤[2003]を参考にした。

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 インドにおける SSI は,広義には,基本的にほかの企業の子会社や所有となって

いない企業で,土地や建物への投資を除いて機械類および装置類に対する粗資本投

下額が1,000万ルピー以下のものとなっている。SSI 部門は製造業部門の総売上高の

40%,製造業輸出の45%,インドの総輸出のおよそ35%を占める。SSI 部門の雇用

はおよそ1,720万人で,農業部門に次いで雇用を創出している。

 1991年に始まった経済自由化以降34,SSI を取り巻く環境は劇的に変化した。SSI

は外国企業との厳しい競争にさらされている一方,ますます国民経済の成長のエン

ジンとして期待されている。「順応性のある革新的な性質を利用することで,SSI

は下請け産業あるいは輸出志向産業として期待されている35」のである。SSI の監

督・実施機関である小工業開発機構(Small Industries Development Organization:

SIDO)は,SSI 部門の成長途上にある産業(Sunrise Industries)として,IT(情

報技術),バイオテクノロジー,医薬品産業,ナノテクノロジー産業を成長途上に

ある産業を挙げている。そしてインドはこれらの産業において競争的であり,これ

ら産業が急速に変わりつつある経済的,技術的,そして世界的な文脈に調和してい

ると評価している。SSI はこれら成長途上にある産業において限られたプレゼンス

しかもっていないが,価値連鎖のなかで存立する機会があり,当局はこれら部門に

より多くの新設企業を設立することを促進し,将来勝ち組になる可能性を持つ成長

途上産業を促進する必要性を訴えている36。

 インドには,現在およそ20,000社の医薬品企業が存在しているといわれ,その

うち19,000が SSI に属するといわれている。医薬品産業全体で直接に460,000人雇

用されており,うち170,000人を SSI で雇用している。SSI はインドの総医薬品生

産のおよそ50%を占めており,農村の医薬品需要の大部分は SSI が供給する低コ

ストの医薬品によって満たされている。インド医薬品産業において,民間企業部

門のほとんどが SSI であり,SSI はインドの医薬品産業の発展に大きく貢献してお

り,SSI から大企業へと成長したケースもある37。SSI 部門は抗生物質,サルファ

剤,ホルモン剤,ステロイド,ビタミンなど,すべての種類の配合薬と広範囲に

34 1991年以降のインドにおける経済改革と経済自由化の詳細については,佐藤 [2002b] を参照されたい。

35 Nikaido[2003],p.592.36 SIDO[ http://www.laghu-udyog.com/sido/boardmeeting/48/promosun48.htm].37 ウォッカードは SSI からインドを代表する大企業へと成長した代表的事例である。Chaudhuri[2004].

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インドにおける医薬品の製造管理および品質管理基準(GMP)履行

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わたってバルク薬を生産している。SSI はローン・ライセンス(the loan licensing

system)制度のもと,配合薬を生産している38。

 1988年に施行された GMP によって,インド医薬品の品質に対する国際的信頼

は高まり,それが国際競争力の強化につながった。1999年の医薬品研究開発委員

会(PRDC)レポートでは,輸出における GMP の重要性に加えて,アウトソーシ

ングを誘致する上での GMP の重要性を認識した。そして2001年12月11日,インド

政府は医薬品・化粧品法のスケジュール M を改正し,すべての製造施設に対して,

2003年12月末日までに GMP の義務履行を実施することを通達した。もし期限まで

に義務履行できなかった場合は,生産ライセンスの取り消しと製造施設の閉鎖が強

いられる事になった。

 実際には,インドにおけるほとんどの大規模・中規模企業はすでに GMP を履行

していたため,改正スケジュール M の主たる対象は SSI であった。SIDO も成長

途上産業の1つとして,医薬品産業の SSI に対して,GMP に従わなければならな

いと明言している39。

 前述のとおり,GMP を定めたスケジュール M には医薬品製造建物,工場設備,

機械類,操業の手順,記録の維持など詳細な基準を明記している。GMP の必要条

件をすべて満たすためには追加投資が必要になってくる。工場施設全体を GMP 基

準に従って改良するには,追加投資額は最低で120万ルピー,最高で1,000万ルピー

は必要であると伝えられている。GMP 履行に伴う巨額の財政的負担は,多くの

SSI にとって陥穽になる。さらに GMP 履行のための猶予期間が2年で,かなり多

数の企業が2003年12月までに製造施設を閉鎖あるいは休業を選択すると予想され

た。GMP 履行によって,今後は GMP の基準を満たさなければ新規の製造ライセ

ンスは発行されない。GMP は義務化され,新規にライセンスを得るための,そし

てライセンスを更新する上での重要な条件となった。

 2001年12月14日,第10次5カ年計画(the Tenth Five Year Plan )のための医

薬品・製薬に関する特別調査委員会が設置された。この特別調査委員会は,第9次

計画の生産と輸出目標の達成度も含め,医薬品産業の現状を検討し,国際的医薬品

38 Chaudhuri[2004],p.154.ローン・ライセンス制度は,医薬品・化粧品法の69‐A に規定されており,ローン・ライセンスの保有者は,配合薬に関連する医薬品を自社で生産する必要がなく,他の企業が製造した製品を得て,その製品を自社名で販売する権限が与えられる。

39 SIDO[ http://www.laghu-udyog.com/sido/boardmeeting/48/promosun48.htm ].

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産業と比較してインドの医薬品産業の強さと弱さの原因をつきとめることを主目的

とし,WHO‐GMP 証明の現在の状況を評価し,インドのすべての医薬品メーカー

が WHO‐GMP 証明を得るために必要なおおよその期間を提案すること,現在の

医薬品・化粧品法を再検討し,GMP を確実にすることを含めて医薬品・化粧品法

を改正することを提案することも付託されていた。特別調査委員会は,医薬品の品

質保証と国際基準に合致する有効な規制メカニズムを構築するための措置を早急に

取るように勧告した40。

 この特別調査委員会はレポートの中で,資格があると認められた SSI に対して

GMP の履行期限を1年延期(2004年12月末まで)することを提案した。さらに,

中規模企業に対しては,インフラのアップグレードのために金融機関から長期低利

貸付(ソフトローン)を受けることを認めることを示唆した。将来,先進国への輸

出基準となる ICH のガイドラインと規制基準にインドの品質管理基準を合致させ

ることを強調している。そして委員会は,SSI の製造施設を国際的な GMP 基準と

同等になるように計画委員会が補助金を出すことも討議している41。

 そして2003年12月29日,政府は改正スケジュール M の履行期限の1年延期(2004

年12月31日)を認め,改正スケジュール M は2005年1月1日に発効することになる。

 改正スケジュール M の期限延期決定の背景の1つには,業界団体のロビー活動

がある。

 まず,インド医薬品製造業組合(IDMA)の政府への働きかけがある。IDMA は

インド国内資本の医薬品・製薬企業を代表する団体であり,中小企業が加盟企業の

大半を占め,加盟企業数は500社を超える。

 IDMA は,改正スケジュール M は劇的な変化をもたらし,インドの医薬品産業

を WHO‐GMP に近づけるものであると評価する一方,多くの SSI が市場から徐々

に撤退していくことについて懸念していた42。

 政府は1999年,SSI の投資制限を3,000万ルピーから1,000万ルピーに削減してい

たが43, IDMA は2003年6月初旬,政府に対して SSI の投資制限を現在の1,000万ル

ピーから5,000万ルピーに引き上げるように強く迫った。IDMA は小規模工業・農

40 GOI[2001b].41 EPP[2002], Hindu Business Line[2002].42 EPP[2003].43 近藤 [2003],pp.19‐20。

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インドにおける医薬品の製造管理および品質管理基準(GMP)履行

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業関連工業・村落工業局(Dept. of Small Scale, Agro & Rural Industries)の C.P. タ

クール(C.P.Thakur)博士に医薬品産業における SSI が直面しているさまざまな

問題に関する非公式の意見書を提出した44。海外市場を獲得するためには必要な基

準を達成し維持しなければならず,さらに改正スケジュール M に含まれる GMP

を法的に遵守するために,SSI は工場の機械設備,装備に巨額な投資をしなければ

ならない。そのためには,低利で返済期限が長い融資が利用できることが必要不可

欠であると IDMA は主張した。IDMA は政府に,SSI で唯一,工場設備に実質的

な投資を必要とする GMP に従わなければならない医薬品産業の特別な性質を考慮

して,医薬品産業の SSI に対する投資制限を5,000万ルピーまで引き上げるべきだ

と主張した45。それに対して,政府は,輸出の将来性を考慮して,13の指定バルク

薬を製造している企業だけその投資制限を引き上げた46。

 さらに,IDMA は政府に消費税を16%から8%へ引き下げるように求めている。

それは,消費税の支払い分を GMP の履行に利用するためである47。

インド小規模医薬品産業連盟(Confederation of Indian Pharmaceutical Industries

<Small Scale>;CIPI)は,「新しい GMP のノルマは SSI 部門の医薬品企業全体を

叩き潰し,ライフセイビングドラッグの価格を先例のないほど引き上げる48」と警

告した。CIPI によれば,ノルマ履行は,非常に多数の SSI 企業の閉鎖をもたらし,

万一の場合,500社ほどの中規模・大規模企業は増大するライフ・セイビング・ドラッ

グの需要を満たすことができないと主張する。

 CIPI は2003年10月に,厚生大臣と面会し,改正スケジュール M の履行を5年間

延期するように要求し,さらに,延期期間内(5年間)で SSI が製造施設をアップ

グレードすることを支援するために,4もしくは5%での長期低利貸付を求めた49。

 CIPI は「近代化に抵抗しているのではない。しかし履行を遂げるためにはかな

44 EPP[2003].45 Ibid.46 医薬品のほか,メリヤス製品やスポーツ製品など,特に機械および技術の近代化が必要であり,今  後の輸出の貢献が大いに期待される産業に関しては資本投下額を5,000万ルピーまで許容している。  二階堂[2006]。47 EPP[2005].48 PHARMABIZ.com[2003].49 Ibid.50 Ibid.

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りの時間が必要である50」と主張している。さらに厚生大臣に対して,CIPI は,投

資の最高限度を増やすという SSI 側の要求の援護をしてくれるよう要請した51。

 CIPI の政府が最低2年間の延長を認めるだろうという期待に反して,実際の延

期は1年にとどまった。

 業界からの圧力もあり,政府は2003年12月31日から2004年12月31日に履行期限を

延長した。その後も SSI は政府への強いロビイングで改正スケジュール M に適応

するようにその製造施設をアップグレードするための追加的時間を得ようとした。

政府は再び SSI 部門の要求に屈服し,改正スケジュール M の履行をさらに6ヶ月

延長して,2005年6月30日とした。結局,GMP 履行期限は,当初の2003年12月31

日から1年半延期された。1年半の延期は,政府が SSI の閉鎖を必ずしも望んでい

ないことを示している。履行期下延期措置のほかに,政府は SSI の義務履行をス

ムーズにするための措置を講じている。改正スケジュール M に従う企業により長

い猶予期間を与える自由裁量権を州の許認可局に与えるように改正もしている52。

さらに2004年11月には,SSI の必要条件について緩和をしている。その緩和とは,

2002年1月1日以前に登録した企業と外用調合薬,経口液状調合薬,錠剤,粉末薬

(散剤),カプセル,眼科用調合薬,注射用(非経口)調合薬の製造をしている企業

に対して,付属品分野の必要条件を適用しないことを通知している53。

4.おわりに

 GMP 履行に関して,SSI の選択肢は,① GMP を単独で期限内に履行する,②単

独で履行が不可能な SSI 企業同士で合併し,財政的困難を克服し,GMP を履行する,

③外国企業,インド大企業と合併し,子会社になる,④ GMP 履行を断念し,閉鎖

する,以上の4つが考えられる。

 履行期限が過ぎた現在,政府は改正スケジュール M に違反している(GMP 不履

行)企業に対する措置を講じ始めている。再び操業しないように,最近閉鎖した企

業は監視下におかれている。GMP という新しいノルマによる打撃で,2,000ほどの

51 Ibid.52 EPP[2005].53 Ibid.54 Ibid.

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インドにおける医薬品の製造管理および品質管理基準(GMP)履行

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SSI 企業が閉鎖するという不安が生じている54。

 GMP の履行は医薬品価格にマイナスの影響をもたらすと懸念されている。多く

の SSI が閉鎖することで,企業が減少し,医薬品の供給も減少し,最終的に医薬品

の価格が上昇する可能性がある。また GMP によるコスト増大が医薬品の価格を引

き上げることも十分に考えられる55。

 一方,外国企業を含め大企業にとっては,SSI の市場からの撤退は市場の拡大をも

たらし,市場シェア拡大の機会を得ることになる。それは GMP が市場への参入障

壁として機能するからである。一説には,外国企業が SSI の改正スケジュール M

履行を遅らせようと後押ししている,あるいは外国企業が改正スケジュール M の

履行を強制するように政府に働きかけたともいわれている56。外国企業とインド大企

業は,自社のブランドを騙る偽造薬によってこれまで損害を被ってきた。SSI の中

には偽造薬を製造・販売している企業があるといわれ,GMP の規制強化には,その

ような悪質な企業を市場から排除し,インドの医薬品の信頼を確保する狙いもある57。

 SSI の医薬品生産と輸出における役割は大きい。SSI にとっても,GMP 履行は

決してマイナスではなく,必要なものであり,SSI 側もそれを認識している。医薬

品産業の大部分は改正スケジュール M の履行は不可欠であり,インドの品質基準

を国際標準と同等にする手段として理解している。今日,インドの医薬品産業は品

質の高い製品を輸出しており,海外でも確かな信頼を得ている。これは GMP 履行

によってもたらされたものである。GMP 履行期限延期を政府に訴えてきた IDMA

も,政府の立場を支持し,GMP の強制が SSI に影響を与えるものではあるものの,

インドが国際市場で競争するために必要であるため,改正スケジュール M の履行

は必須であると考えている。CIPI も,SSI は GMP に反対・抵抗しているのではな

55 IDMA は SSI が GMP を履行できない理由として,医薬品価格規制令(DPCO)が利潤率を規制しているため,利益が減少したことを主張している。IDMA は GMP 履行支援のために DPCO の廃止を訴えている。DPCO の廃止問題に関しては,別稿上池 [2005] を参照されたい。

56 EPP[2004].57 政府は,2003年11月に,「偽造薬問題を含む医薬品規制問題包括的検討専門委員会」(The Expert

Committee on A Comprehensive Examination of Drug Regulatory Issues, Including The Problem of Spurious Drugs,通称 The Mashelkar Committee)を設置した。同委員会は,偽造薬の製造および販売に対する規制強化(罰則強化)を勧告しており,GMP 強化は偽造薬の製造を減少させることに貢献すると考えられている。

58 PHARMABIZ.com[2003].

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く,GMP 履行のためにある程度の時間が必要であり58,期限延期を政府に求めて

きたのだ。

 今後,中国やブラジルのようなジェネリック薬輸出国との差別化を図る上で最

も重要なものは,価格よりむしろ品質と安全性,そして有効性であろう。WHO‐

GMP や ICH と調和の取れた GMP の確立は,インドにとって必要不可欠である。

インド政府は独立以来 SSI 部門を保護する政策スタンスを一貫して採ってきてお

り,SSI に対する厳しい規制は回避されてきた。しかし,GMP 履行に関して,政

府は幾らかの譲歩は見せたものの,厳しい対応に終始したといえる。医薬品産業に

おいては,GMP のほかに DPCO の廃止問題や GCP などの規制導入,ICH との調

和など,クリアしなければならない課題が多くあり,バランスの取れた政策運営が

必要であり,今後も政府の果たすべき役割は大きい。

 WTO の TRIPS と GMP 履行がインド医薬品産業の構造再編を促すだろう。SSI

の淘汰が必至である一方,外国企業は,その活動を活発化させ,1970年以来縮小さ

せられてきた国内市場シェアを回復してくるだろう。構造再編にともない,世界市

場をターゲットとした戦略的提携など新たなビジネスモデルの登場も予想される。

今後の動向に注目したい。

(追記)本稿は「財団法人 トヨタ財団」(2003年度)より研究助成を受けた研究成果の一部である。インドにおけるヒアリング調査(2004年4月17日〜5月30日)に際して,Dr. Nagesh Kumar(Research And Information System For The Non-Aligned & Other Developing Countries:RIS),Prof. K. J. Joseph (Research And Information System For The Non-Aligned & Other Developing Countries:RIS),Dr. Aradhana Agarawal (Indian Council for Research on International Economic Relationns: ICRIER),S.K. Arya(Indian Drug Manufacturing Association:IDMA),D.G.Shah(Indian Pharmaceutical Alliance:IPA),Daara. B.Patel(IDMA),V. Gopalakrishnan(Wockhardt Limited.),S. Ramkrishna

(Pfizer Limited),Vishal N. Jajodia(BASIC CHEMICALS,PHARMACEUTICALS & COSMETICS EXPORT PROMOTION COUNCIL:CHEMEXCIL),Homi Bhabha

(Organisation of Pharmaceutical Producers of India:OPPI),Rajiv Shukla(OPPI),永盛明洋(日本貿易振興機構〔ジェトロ〕ムンバイ)の各氏より,有益な情報及び資料を提供していただいた。さらにムンバイにおけるヒアリング調査においては,ジェトロ・ムンバイのトレード・アドバイザーである Malcolm F. Mehta 氏にご協力を賜った。これらすべての方々にこの場をかりて心より感謝申し上げたい。もちろん,本論文に含まれるであろう誤りについては,全て筆者の責任であることはいうまでもない。

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インドにおける医薬品の製造管理および品質管理基準(GMP)履行

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