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Fourier変換と流体数学

柴田良弘

早稲田大学基幹理工学部数学科教授,Adjunction Faculty Member of Department of Mechanical Engineering and Materials Science,

University of Pittsburgh, USA

理工総研報告特集号第 16号 2020年 6月 ASTE Special Issue Vol.No16

ISSN 2435-0656

1 はじめに

筆者は長年偏微分方程式研究を行ってきた. 特に近年 R-solverという概念を確立し, R-solverの枠組みの中で流体数学におけるもっとも困難かつ応用上も重要である自由境界問題の数学理論を, 筆者の研究室のメンバーおよび卒業生とともに構築してきた.キャビテーション、血液流、熱変換など、流れを基本とする工学の問題においてその基盤をなす数学は

混相流の自由境界問題として定式化される. 2009年度より始めた CREST研究は「現代数学解析による流体工学の未解決問題への挑戦」という研究主題で行った∗. この研究では数学を基盤に考えるという基本姿勢のもとキャビテーション研究など工学問題の最も基本的かつ困難な問題にチャレンジした. そのさい多くのことを工学者から学んだが, 根っからの純粋数学者である筆者は多くの問題の解決に寄与できる根本原理はなにかということを結局数学者は考えなくてはならないという思いにいたった. まだなかなか現実化できないが, 厳密な数学理論とそれを基盤とする数値解析、そして実験の三位一体の研究体制が理学と工学の垣根が低い早稲田大学理工学術院から発信できる日本の基盤研究である.理工総研の重点研究員として 2009年以来 10年間行ってきた研究総括をこの観点からするべきである

が, 全てがまだ萌芽的なものであり総括できるような段階ではない. しかし上に述べた R-solver理論の確立とその自由境界問題への応用は純粋数学者としての成果として世界に誇れる研究成果である. そこでこの小論では筆者の数学研究の根底にある Fourier解析の観点から 300年以前の Fourierの考え方からはじめR-solverに到達するまでの数学解析を筆者自身の観点からながめ、次にR-solverの枠組みで非斉次の境界条件下での線形放物型方程式に対する初期値境界値問題、周期解の問題を統一的に扱う筆者の理論を紹介し, 最後にR-solverの枠組みの中でNavier-Stokes方程式に対する自由境界問題の数学的厳密解析のあらましを紹介する.

Fourierから始まって R-solverまで 300年の期間を経ているが, Fourierの考え方は数学のみならず, 社会の多くの基本技術のなかで役立っている. 数学が世の中の役に立つようになるにはずいぶんと世の中の進展が早くなったとはいえ、30年から 50年ぐらいは必要である. まだ完成して間もないR-solver 理論がどのように世の中の役に立っていくか楽しみであるが, まだ先のことかもしれない.

∗研究の報告集として柴田と鈴木が編集した [15]が Springer社より 2016年に出版されている

1

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2 Fourierのアイデア

Fourier 変換は Jean Baptiste Joseph Fourier (1792年 3月 21日~1830年 5月 16日) により創始された.

f(x) =∑k∈Z

eikxak =

∞∑k=−∞

eikxak, ak =1

∫ 2π

0f(x)e−ikx dx (Zは整数の全体)

というように三角関数を用いて関数を展開する方法である. 積分の定義, 級数の収束などのついて, 当時のフランス数学会に物議をかもした, そしてその後の数学の大発展を即した. 現代数学では調和解析という分野となり, 純粋数学と応用数学の両面においてますます発展している.理工学術院の授業で扱われる熱伝導方程式を考えてみる. Fourierは熱伝導は熱勾配に比例するという

Fourierの法則を提唱し, 熱伝導現象を記述するいわゆる熱伝導方程式を導き, Fourier変換を用いてこの問題を解いた. 熱伝導方程式 (Fourier方程式)は, 熱伝導体を (0, 2π)区間と同一視し, 温度を u = u(x, t) とするとき, Fourierの法則より

∂u

∂t=

∂x

(κ∂u

∂x

)+ f, u|t=0 = u0

と表される. ただし ∂/∂t, ∂/∂xはそれぞれ時間変数 tと空間変数 xに関する偏微分とする. 熱伝導係数 κ は簡単のため κ = 1とする. 特に固体の両端での温度をゼロ度に固定する場合を考える. すなわちu|x=0 = u|x=2π = 0 なる境界条件をおく. u の Fourier展開を

u(x, t) =

∞∑k=1

ak(t) sin kx

とおくと∂u

∂t=

∞∑k=1

a′k(t) sin kx,∂2u

∂x2=

∞∑k=1

ak(t)(−k2) sin kx.

よって a′k(t) + k2ak(t) = 0, ak(0) = a0 と解く. ただし、ak は

u0 =∞∑k=1

ak sin kx, ak =1

∫ 2π

0u0(x) sin kx dx.

なる初期関数の Fourier展開である. よって常微分方程式を解いて、

ak(t) = e−k2tak, u(x, t) =∞∑k=1

ake−k2t sin kx.

なる温度分布を得た.級数を積分に変えたものが Fourier 変換、逆変換、さらに波数を複素数にしたものが Laplace 変換と現

在では言われる. それぞれ次で与えられる.

F [f ](ξ) = f(ξ) =

∫ ∞

−∞e−ixξf(x) dx, F−1[f ](x) =

1

∫ ∞

−∞f(ξ) dξ,

L[f ] =∫ ∞

−∞e−λxf(x) dx = F [e−γxf ](ξ) (λ = γ + iξ).

積分がうまく定義できるかとか, F−1F [f ] = f が成立するかということは, 長年大問題であり Fourierを含む時代を代表する数学者によりその収束の問題が論じられてきたが, L. Schwartzの超関数の理論ができて

2

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から, 少なくとも急減少関数のクラスとその双対である tempered distributionのクラスでは Fourier変換の収束に関する問題は一応決着した. 上記 Fourier変換は通常次の多重積分で論じられる.

F [f ](ξ) =

∫Rn

e−ix·ξf(x) dx, F−1[f ](x) =1

(2π)n

∫Rn

eix·ξf(ξ) dξ,

x = (x1, . . . , xn), ξ = (ξ1, . . . , ξn), x · ξ =∑n

j=1 xjξj . dx = dx1 · · · dxn, dξ = dξ1 · · · dξn.これを用いて n次元の熱方程式

∂u

∂t= ∆u in Rn × (0,∞), u|t=0

を解いてみる. Fourier 変換, 逆変換は

u(x, t) = F−1[u(ξ, t)] = (2π)−1

∫R3

eix·ξu(ξ, t) dξ.

で与えらえるが, これより

∂u

∂xj= F−1[iξj u(ξ, t)], ∆u = −F−1[(ξ21 + · · ·+ ξ2n)u(ξ, t)].

こうして方程式を Fourier 変換して

∂u

∂t= −|ξ|2u, u|t=0 = u0

である. ただし uは uの Fourier変換である. よってこの常微分方程式を解いて

u = e−|ξ|2tu0, |ξ|2 =n∑

j=1

ξ2j .

よってこれに Fourier逆変換を施して

u(x, t) =1

(4πt)n/2

∫RN

e−|x−y|2/(4t)u0(y) dy

なるよく知られた熱核表示を得る. このように Fourier変換, 逆変換を用いて偏微分方程式の基本解を求めることは一つの確立された手段である ([7]]).ストークス方程式

∂u

∂t−∆u+∇p = 0, divu = 0, u|t=0 = u0

では div を施して ∆p = 0. 整合条件として divu|t=0 = divu0 = 0であるので実際は

∂u

∂t−∆u = 0, u|t=0 = u0

を divu0 = 0の条件下で解いてやはり

u(x, t) =1

(4πt)n/2

∫RN

e−|x−y|2/(4t)u0(y) dy

と熱核で表される.

3

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3 解析半群

こうして少なくとも空間変数が RN 全体を動くとき, または [0, 2π]N なる N 次元トーラスのときは熱方程式や Stokes方程式の基本解を求めることは Fourierの考え方そのものでできる. しかし一般に空間変数が一般領域を動きさらに境界条件が課される場合は Fourierの方法は一般的には空間的には応用できない. しかし時間変数は自由であるからそこをいかして偏微分方程式を考えることができる.

X, Y を2つの Banach空間で Y ⊂ X は稠密とする. A : Y → X を線形閉作用素. ただし閉作用素とは直積空間 X ×XでAのグラフ (x,Ax) ∈ X ×X | x ∈ Y が閉集合である時をいう. この時次の抽象的な常微分方程式を考える

u−Au = 0, u|t=0 = u0.

ただし u = u′ は uの微分を表す. ここでの話のポイントは Y = X である. 例えば X = Y = Rn, Aをn× n 行列として n-元連立常微分方程式

u−Au = 0, u|t=0 = u0

を考えればこれは

u = eAtu0, eAt =∞∑j=0

(At)j

j!

と求まる.しかし、 A : Y → X、Y = X のときに eAtを定義することがここで論ずる問題である. 例えば, A = ∆

(Laplace 作用素)のとき, 形式的には

e∆t =∞∑j=0

(t∆)j

j!

であり, 結局 Y = C∞ でないと定義できない. しかもこの無限級数の収束は問題となる. よってこの考えで問題を扱うのは一般的には厳しい.

eAtは級数だけでなく, 複素関数論における留数を用いても定義できる. a ∈ Cのときは

eat =1

∫|z−a|=ϵ

ezt

z − adz.

このアイデアを一般の作用素に拡張したのが解析半群の理論である. この理論は熱方程式, Stokes方程式などの放物型方程式系を扱うために有用な理論である. これを少し説明する. いま留数の定理における (z− a)−1

を拡張するためにレゾルベント方程式:λv −Av = u0

を考える. 実際これは uの Laplace 変換から導かれる. v =∫∞0 e−λtu(t) dt とおいて,

λv =

∫ ∞

0λe−λtu(t) dt = −

∫ ∞

0(∂te

−λt)u(t) dt = u0 +

∫ ∞

0e−λt∂tu(t) dt

= u0 +A

∫ ∞

0e−λtu(t) dt = u0 +Av.

そこでρ(A) = λ ∈ C | (λ−A)−1が存在する .

とおく. これは作用素 Aのレゾルベント集合と呼ばれる. ここで複素平面上のセクター

Σϵ,λ0 = λ ∈ C | | arg λ| < π − ϵ, |λ| ≥ λ0

4

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(0 < ϵ < π/2, λ0 > 0)において ρ(A) ⊃ Σϵ,λ0 かつ

|λ|∥(λ−A)−1f∥X ≤M∥f∥X λ ∈ Σϵ,λ0

が成立するとすれば、

eAtu0 =1

2πi

∫Γeλt(λ−A)−1u0 dλ

が定義される. ここで Γは Σϵ,λ0 ないの複素積分の道である.A = ∆ ならば F [(λ−∆)u] = (λ+ |ξ|2)u(ξ) であるから

u = F−1[ f(ξ)

λ+ |ξ|2].

こうしてこれが定義できるのは λ+ |ξ|2 = 0 (ξ ∈ R3) すなわち、λ ≤ 0 ではない複素数であればよい. 即ち

Σϵ,λ0 = C \ (−∞, 0]

ととれる.

4 Navier-Stokes equations

非圧縮性粘性流体の運動を記述する Navier-Stokes方程式について少し紹介する. 質量密度 1, 流速 u =(u1, u2, u3), 圧力 pとして R3上のNavier-Stokes 方程式は

∂tu+ u · ∇u− ν∆u+∇p = 0, divu = 0, u|t=0 = u0.

と与えられる. ここで , ∇ = (∂/∂x1, ∂/∂x2, ∂/∂x3), u · ∇u|i =∑3

j=1 uj∂ui∂xj

. 方程式に div をとってdiv (u · ∇u) + ∆p = 0 より

p = −∆−1div (u · ∇u) =1

∫R3

div (u · ∇u)(y, t)

|x− y||dy.

こうして方程式は微分・積分方程式

∂tu+ u · ∇u− ν∆u−∇∆−1(u · ∇u) = 0, u|t=0 = u0.

方程式と uの内積をとって R3上積分すると, 運動エネルギー保存式

1

2

∂t

∫R3

|u(x, t)|2 dx+ ν

∫R3

|∇u(x, t)|2 dx = 0

を形式的に得る.

Navier-Stokes方程式解法の数学的現状

• J.Lerayの 1930年代の研究によりエネルギー不等式,

1

2

∫R3

|u(x, t)|2 dx+ ν

∫R3

|∇u(x, t)|2 dx ≤ 1

2

∫R3

|u0(x)|2 dx

を満たす弱解の存在が示された. この結果はE. Hopfにより一般領域に拡張されいまでは Leray-Hopf解と言われる. Leray-Hopf解の一意性は未解決で今世紀の数学ミレニアム問題の一つである.

5

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• 一方, 一意性を満たす強解の存在の研究は戦後に始まり、現時点では、任意の初期値に対してある時刻 T > 0まで一意解が存在するか、初期値に制限を設けたときに時間大域的に一意解が存在することが示されている.

Navier-Stokes方程式の強解についての Fujita-Kato理論

Navier-Stokes方程式の強解の一意存在についてのパイオニアである藤田-加藤理論にここでふれる. Stokes方程式

∂tu− ν∆u+∇p = 0, divu = 0, u|t=0 = u0

は先の節で示したように解析半群(Stokes半群) T (t)t≥0を生成する. 即ち, Stokes方程式は u = T (t)u0

という一意解をもつ. いま右辺のある解

∂tu− ν∆u+∇p = f , divu = 0, u|t=0 = u0

を考えると, Duhamelの原理によりこの方程式の解は

u(t) = T (t)u0 +

∫ t

0T (t− s)f(s) ds

と表せる. 特に f = −u · ∇uとおくと、定式的にNavier-Stokes方程式の解は

u(t) = T (t)u0 −∫ t

0T (t− s)(u · ∇u)(s) ds

とあらわせる. 半群 T (t)t≥0の評価を用い,

uj+1(t) = T (t)u0 −∫ t

0T (t− s)(uj · ∇uj)(s) ds

なる逐次近似を用いて 常微分方程式のとこと類似の方法である時刻 T > 0までの解の一意存在を示した.さらに初期値 u0 が十分小さい場合は任意時刻でこの逐次近似が収束することを示した. これは 1964年前後の研究である. このころ、ロシア学派も同様の結果を得ていたが, 当時はお互いの交流はなかった (藤田談). その後この議論の改良が多くの数学者によりなされ実りある成果を上げた. 筆者に限れば 1960年代初頭R. Finn Stanford大学教授によって提唱されたNavier-Stokes方程式の定常解の安定性に関する startingproblemを 1995年前後に解いた. これはOseen半群の安定評価を導くことで成功した [4, 8, 11]. さらに回転する障害物の外側を流れる流体の安定性を示した [6]. これも回転流体が生成する半群の安定な評価を示すところがポイントであった. 筆者の流体数学における当時の仕事はレゾルベント方程式の解析, 特に圧力項の取り扱いにこれまでにない評価を与えたところが鍵であった. 伝統の解析半群理論をベースにしながら, 半群による定式化では忘れられる圧力項を評価する方法を偏微分方程式論独自の方法により加味することにより, 難問といわれていた上記の問題を 3次元の場合に解くことができた. starting problemはより困難な 2次元の場合に京都大学教授の前川泰則氏により最近解決された. 私の仕事から 20年以上の時間を要している. また回転障害物の starting problem に関する問題については時間に依存する係数を持つ問題となりとてつもなく難しい問題となるが, これは最近名古屋大学教授の菱田俊明氏により解決された. 数学の問題の本質的解決なので 10年から 20年あるいはそれ以上の時間が必要である. しかし着実に研究は進んでいる.

5 Fourier multiplier theorem

話をまたFourier変換に関する純粋な問題に戻す. 1930年代のポーランドの数学者MarcinkewitzのFourier級数

∞∑k=−∞

aj(k)eiktf(k), FT[f ](k) = f(k) =

1

∫ 2π

0f(t)e−ikt dt, eikt = cos kt+ i sin kt.

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が Lp収束するための級数 aj(k)k∈Zに対する十分条件の研究に端を発し, Fourier multiplier の Lp有界性に関する研究が盛んにおこなわれた. Fourier multiplier (Fourier掛け算作用素)とはm(ξ)を R上の関数として作用素

Tm[f ](t) = F−1[m(ξ)F [f ](ξ)](t) =1

∫ ∞

−∞eitξm(ξ)F [f ](ξ) dξ

のことである.

Lp(R) = f | ∥f∥Lp =(∫ ∞

−∞|f(t)|p dt

)1/p<∞

とおく. L2はヒルベルト空間でありここにおいては Plancherelの定理が知られている. すなわち、ある定数 cがあって

∥F [f ]∥L2 = c∥f∥L2

こうして∥Tm[f ]∥L2 = c−1∥mF [f ]∥L2 ≤ c−1max |m|∥F [f ]∥L2 ≤ max |m|∥f∥L2

なる不等式を得る。 これを p = 0にするのは 1950-1970の課題であった.

定理 1. 1 < p <∞とする. multiplier m(ξ)が

supξ∈R\0

|m(ξ)|, supξ∈R\0

|ξ||m′(ξ)| ≤M

を満たすとき ∥Tm[f ]∥Lp ≤ CpM∥f∥Lpが成立する. すなわちFourier multiplier operator は Lp有界である.

これを Fourier multiplier theoremといい、Marcinkiewitz-Mikhiln-Hormander の定理と言われる†

Fourier 級数は (0, 2π)上の周期関数 f(t), 即ち, f(t)は t ∈ R で定義され, f(t+ 2π) = f(t) (t ∈ R)なるものをいう. 例えば f(t)が連続な周期関数とは f(t)はR上定義された連続関数で f(t+ 2π) = f(t)なるものをいう. Fourier 級数に関する Fourier multiplierは

Tm[f ](t) = F−1T [(m(k)FT[f ](k))k∈Z](t) =

∞∑k=−∞

eiktm(k)FT[f ](k)

と定義される. Fourier積分でのmultiplierと Fourier級数でのmultiplierには深い関係がある. 次の定理はde Leeuw [9]により示された.

定理 2 (Fourier級数の場合のFourier multiplier theorem). 1 < p <∞とする. Tm[f ] = F−1[m(ξ)F [f ](ξ)](t)が

∥Tm[f ]∥Lp(R) ≤ C∥f∥Lp(R)

を満たせば Tm|Z [f ](t) =∞∑

k=−∞eiktm(k)FT[f ](k) に対して

∥Tm|Z [f ]∥Lp((0,2π)) ≤ C∥f∥Lp((0,2π)).

が成立する.

†私の著書 [12]の最終章に日本語による詳しい証明と応用例が与えられている.

7

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6 Operator valued Fourier multiplier theorem

はじめに 3節の解析半群の理論を再考する.

u−Au = f (t > 0), u|t=0 (6.1)

を考える. 4節のところで述べたように, Aが半群 T (t)t≥0を生成するときはDuhamelの原理により uは形式的には

u(t) = T (t)u0 +

∫ t

0T (t− s)f(s) ds (6.2)

と表される. いま形式的に ∂teAt = AeAt より

∥∂teAt∥ = ∥AeAt∥ = t−1∥(tA)eAt∥ ≤Mt−1

なる評価が成立することがわかるであろう. こうして

∥∂t∫ t

0T (t− s)f(s) ds− f(t)∥ ≤

∫ t

0∥∂tT (t− s)f(s)∥ ds ≤M

∫ t

s(t− s)−1∥f(s)∥ ds

なる評価を得る. この積分は (t−s)−1の s = tでの特異性により収束しない.こうして Duhamelの原理で書いた uの (6.2)での形は方程式 (6.1) の真の解ということは言えないのである. Navier-Stokes方程式では解の概念を弱めて解の一意存在を示しており, 右辺の正則性に対し対応する解の最大の正則性を求めていたわけではなかった. この事実は自由境界問題など応用上最重要な流体方程式の数学的に厳密な理論を作る場合の一つのネックであった. 流体方程式のいわゆる最大正則性原理とその自由境界問題への応用についての研究は Solonnikov先生とそのロシア学派によるH”older空間や L2 Sobolev-Slobodetskii空間での研究が先駆的なものであった. しかしこの研究では解の正則性を少し高めのところ (C2+α,1+α/2, W

2+α,1+α/22 (α > 0))

に設定する必要性があるため, 初期値の整合条件を高くする必要があり, 応用上の困難とともに数学的にも最良とは言えなかった. 私の知るところではスイスチューリッヒ大学名誉教授の Hebert Amann先生の音頭取りで Solonnikov理論をもっと現代的にするという研究活動が 2000年初頭くらいから始まった. ここでは最大正則性原理とその流体方程式への応用という課題を Solonnikov先生の流派とは全く違うもので与えようということであった. チューリッヒ大学のカフェテリアでAmann先生とお話をしていたときに先生はこの提案をされ, Halle大学の Jan Pruß先生を紹介するから一緒にやれとおっしゃったのを昨日のように覚えている. 私はふざけて Roll over Solonnikovですかと言ったら、先生は真剣なお顔でそうだとおっしゃっていた. それからほぼ 20年ぐらいたったが, Jan Pruß氏も私もそれぞれ annisotropic W 2,1

q,p spaceで独自の理論を構築した. Jan はH∞ calculus, 私は R-solver理論である. もっとも現在 Solonnikov先生は 90歳近くになられたが, 揺り起こすどころかいまだに精力的に研究をされており, 不謹慎ながら死以外 Solonnikov先生を止めることはできないという状況である.この論説の目的は私の R-solver理論の簡単な説明と Navier-Stokes方程式の自由境界問題への応用だ

が, 核心に行く前にもう少し私の理論基盤を説明する. X, Y を2つの UMB Banach空間とし L(X,Y )をX から Y への連続線形写像の全体, m : R → L(X,Y ), m(ξ) ∈ C1(R \ 0,L(X,Y )) とする. ここでC1(R \ 0,L(X,Y )) は L(X,Y )値の R \ 0上の C1級関数の全体を表す

Tm[f ] = F−1[m(ξ)F [f ](ξ)]

を operator valued Fourier multiplier とよぶ. ここで私の理論基盤をなすカールスルーヘ工科大学の LutzWeis教授より与えられた定理 [19]を導入する. そのために作用素のR-有界性という概念をまず導入する.

定義 3. X, Y を2つのBanach空間とする. 作用素の族 T ⊂ L(X,Y ) がR有界であるとは, ある定数Cと指数 p ∈ [1,∞)が存在して任意の自然数 m, T の任意の m個の元 Tkmk=1, Xの任意の m個の元 xjmj=1

に対して不等式 ∥∥∥ m∑k=1

rkTkxk

∥∥∥Lp((0,1),Y )

≤ C∥∥∥ m∑k=1

rkxk

∥∥∥Lp((0,1),X)

.

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が成立する. ここで Rademacher関数 rk, k ∈ Nは rk: [0, 1] → −1, 1, t 7→ sign (sin(2kπt))で与えられる. このような定数 C の最小値を T のR ノルムとよび RL(X,Y )(T )で表す.

定理 4 (Weis’ operator valued Fourier multiplier theorem). 1 < p <∞, X, Y をUMB Banach空間とする. m(ξ), ξm′(ξ) が L(X,Y )値の R-有界な関数とする. 即ち

RL(X,Y )m(ξ) | ξ ∈ R \ 0) = κ0 <∞RL(X,Y )ξm′(ξ) | ξ ∈ R \ 0) = κ1 <∞

このとき∥Tm[f ]∥Lp(R,Y ) ≤ Cp(κ0 + κ1)∥f∥Lp(R,X). (6.3)

ここで Cpは pにのみよる定数である.

Weisの operator valued Fourier multiplier theoremを偏微分方程式の周期解の存在を示すために使えるよう Thomas Eiter, Mads Kyedとともに次の定理を示した [3]. これは de Leeuwの定理を operator valuedの場合に拡張したものである.

定理 5 (Transference theorem for operator valued multipliers).   1 < p < ∞, X, Y を Banach空間, Yを反射的とする. このときもし operator valued Fourier multiplier Tm[f ]に対して評価 (6.3) が成立すれば,operator valued Fourier series multiplier:

Tm[f ](t) =∞∑

k=−∞eiktm(k)FT[f ](k)

に対して∥Tm[f ]∥Lp((0,2π),Y ) ≤ Cp(κ0 + κ1)∥f∥Lp((0,2π),X).

が成立する.

上記定理で純粋に Fourier解析の定理であった de Leeuw理論を偏微分方程式の応用できるようにした.次の節で上記 2つの定理を偏微分方程式に応用する R-solver理論を解説する.

7 R-solver framework

ふたたび抽象的な方程式を考える. 3節で説明した解析半群の理論では境界条件が非斉次(ゼロでない)場合は扱えない. これでは自由境界問題は扱えない. そこで非斉次境界条件もこめた抽象的な方程式の枠組みで考える.

X, Y は UMB Banach空間, Y は X の稠密な部分空間とする. Z = (X,Y )1/2をX, Y のオーダー 1/2の複素補間空間とする. 作用素 A ∈ L(Y,X), B ∈ L(Y, Z) ∩ L(Z,X) として次の抽象的な初期値境界値問題を考える.

u−Au = f, Bu = g (t > 0), u|t=0 = u0. (7.1)

ただし, Bu = gは非斉次境界条件を表す. これに対応して次の一般化レゾルベント問題を考える.

λv −Av = F, Bv = G. (7.2)

次の性質を満たす作用素の族M(λ) の存在を仮定する.

• 各 λ = γ + iτ ∈ Σϵ,λ0 に対してM(λ) : X ×X ×Z → Y ; λM(λ) : X ×X ×Z → Xなる作用素として正則関数である.

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• 任意の λ ∈ Σϵ,λ0 , F ∈ X, G ∈ Z に対して v =M(λ)(F, λ1/2G,G)は方程式 (7.5)の一意解を与える.

• M(λ), λM(λ)のRノルムはある正定数 rbがあって各 ℓ = 0, 1に対して次の評価をもつ.

RL(X×X×Z,Y )((τ∂τ )ℓM(λ) | λ ∈ Σϵ,λ0) ≤ rb,

RL(X×X×Z,X)((τ∂τ )ℓ(λM(λ)) | λ ∈ Σϵ,λ0) ≤ rb(7.3)

特に R有界ならば有界であるので, λ ∈ Σϵ,λ0 に対して

∥v∥Y + |λ|∥v∥X ≤ 2rb(∥f∥X + |λ1/2|∥g∥X + ∥g∥Z) (7.4)

が成立する.方程式 (7.1)は線形であるので2つの方程式に分ける.

v −Av = f, Bv = g (t > 0), v|t=0 = 0, (7.5)

w −Aw = 0, Bw = 0 (t > 0), w|t=0 = u0. (7.6)

まず (7.5)を考える. 時間について Laplace 変換をするために f , g を t < 0に拡張する. f0(t) = f(t)(t > 0), f0(t) = 0 (t < 0), g0(t) = g(t) (t > 0), g0(t) = φ(t)g(−t), ただし, φ(t)は φ(t) ∈ C∞(R), φ(t) =(t > −1), φ(t) = 0 (t < −2)なるものとする. この拡張の違いは f には時間についての正則性を課さないが, gには H

1/2p の微分可能性を課すためである. こうして方程式 (7.5)に対しては

v −Av = f0, Bv = φg0 (t ∈ R)

を考える. Laplace 変換してλv −Av = f0, Bv = (φg0).

である. こうして R-solverを用いて

v = M(λ)(f0, λ1/2(φg0), (φg0))

と表わせる. Laplace変換, Fourier変換, Laplace逆変換, Foueir逆変換には λ = γ + iτ ∈ Cとおいて

f(λ) =

∫ ∞

−∞e−λtf(t) dt =

∫ ∞

−∞e−iτte−γtf(t) dt = F [e−γtf ](τ),

L−1[g](t) =1

∫ ∞

−∞eλtg(τ) dτ = eγtF−1[g](t).

である. こうしてv(t) = L−1[v](t) = eγtF−1[M(λ)F [e−γt(f0,Λ

1/2γ (φg0), g0)]],

但し,

Λ1/2γ (φg0) = L−1[λ1/2(φg0)(λ)] = eγtF−1[λ1/2F [e−γt(φg0)(t)]].

いまH1/2

p (R, X) = f ∈ Lp(R, X) | ∥f∥Lp(R,X) = ∥F−1[(1 + τ2)−1/4F [f ](τ)]∥Lp(R,X) <∞

とおくと評価 (8.1)より

∥e−γtv∥Lp(R,Y )) + ∥e−γtv∥Lp(R,X) ≤ C(∥e−γtf0∥Lp(R,X) + ∥e−γtφg0∥H1/2p (R,X)

+ ∥e−γtφ0g0∥Lp(R,Z))

を得る. これが方程式 (7.5)に対する解の存在とその最大正則性をもつ評価である.

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次の (8.1)を考える. これは評価 (7.4)から対応するレゾルベント問題

λz −Az = f, Bz = 0 (7.7)

に対して ρ(A) ⊃ Σϵ,λ0 かつ|λ|∥z∥X + ∥z∥Y ≤ C∥f∥X (7.8)

なる評価を得る. こうして作用素 Aとその定義域をD(A)を

D(A) = f ∈ Y | Bf = 0, Af = Af (f ∈ D(A))

と定義する. このとき方程式 (8.1)は

w −Aw = 0, w|t=0 = u0 (7.9)

と表せる. また (7.8)より Aは連続解析半群 T (t)t≥0 を生成する. こうして u0 ∈ (X,D(A))1−1/p,pなる初期値に対して方程式 (8.1)は解 w ∈ H1

p ((0,∞), X) ∩ Lp((0,∞), Y ) を持ちさらに wは次の評価を満足する.

∥−γtw∥Lp((0,∞),X) + ∥e−γtw∥Lp((0,∞),Y ) ≤ C∥u0∥(X,Y )1−1/p,p.

ただし γ > 0, C は A, Bより決まるある定数である. 以上がR-solverを枠組みとする初期値境界値問題に対する最大正則性原理である.次に時間周期問題

u−Au = f, Bu = g (t ∈ (0, 2π)) (7.10)

を考える. ここで右辺 f , g は f(t+ 2π) = f(t), g(t+ 2π) = g(t) (t ∈ R) を満たす 2π周期の周期関数である. これについて u(t + 2π) = u(t) (t ∈ R) なる周期 2πを持つ周期関数解を求める枠組みを述べる. 周期関数に対する Fourier 変換, 逆変換を

FT[f ](k) = f(k) =1

∫ 2π

0e−iktf(t) dt, F−1

T [(ak)k∈Z)(t) =∞∑

k=−∞eiktak

で定義する. 方程式 (7.10)に Fourier変換を施して

iku−Au = f , Bu = g. (7.11)

いまM(λ)は λ ∈ Σϵ,λ0 にのみ定義されているので, k0を k0 > λ0なる自然数でψ(k) ∈ C∞(R)を ψ(k) = 1(|k| ≥ k0+1), ψ(k) = (|k| ≤ k0+1/2)に取る. |k| ≥ k0に対しては (7.5)に注意すれば方程式 (7.11)の解は

u = M(ik)(f(ik), (ik)1/2g(ik), g(ik))

と表せるので,uφ = FT[φ(k)M(ik)(f(ik), (ik)1/2g(ik), g(ik))]

とおくと uφは方程式uφ −Auφ = φf, Buφ = φg (t ∈ (0, 2π))

を満たす. さらに定理 5の transference theoremより uφは次の評価を満たす.

∥∂tuφ∥Lp((0,2π),X) + ∥uφ∥Lp((0,2π),Y ) ≤ C(∥f∥Lp((0,∞,X) + ∥g∥H

1/2p ((0,2π),X)

+ ∥g∥Lp((0,2π),Z)).

こうして方程式 (7.10)の解 uはu = uφ +

∑|k|≤k0

uk

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の形をもつ. ただし ukは次の定常問題の解である.

ikuk −Auk = f(ik), Buk = g(ik).

これは個別の kについて解かなくてはならないが, 有限個である. とくに k = 0の場合が通常の定常問題である.以上がR-solverによる私のアプローチであるが, 方程式 (7.9)からもわかるように解析半群の理論を含

む非斉次境界条件をもつ放物型方程式系に対する一般理論である. これは今までにはなかった枠組みの構築であり, はじめに述べたように新しい放物型方程式系の理論だけでなく, いままでのすべての議論を包含する理論であり, これからの放物型方程式研究はここに立脚して行うことが望ましい. 解析半群が複素関数論に基づいていたのに対し, 私の理論は無限次元調和解析に基づいている。

8 Navier-Stokes 方程式の自由境界問題

この節ではNavier-Stokes方程式の自由境界問題の初期値境界値問題に対する時間局所解、時間大域解の一意存在および時間周期解の存在について簡単に触れる. 詳しくはGaldi-Shibata編 [5]第3章に初期値境界値問題については述べている. また周期解については Either-Kyed-Shibata [2]に述べている.

Navier-Stokes方程式の自由境界問題はΩtを時刻 t > 0に依存する領域としてそこで次のNavier-Stokes方程式を考えることとなる.

∂tu+ u · ∇u−Div (µD(u)− pI) = f in Ωt,

divu = 0 in Ωt,

(µD(u)− pI)nt = σH(Γt)nt, VΓt = u · nt in Γt.

(8.1)

初期値問題であれば初期値u|t=0 = u0, Ωt|t=0 = Ω0.

を課して問題を t ∈ (0, T )で考える. また時間周期解の場合は外力 f が f(t+ 2π) = f(t)なる周期条件を課して, Ωt, u, pも 2π周期の周期解の存在を示す.ここで reference domain ΩはN 次元Euclide空間 RN の領域. またΩt ⊂ RN とする. u = (u1, . . . , uN )

は流速、 pは圧力, D(u) = ∇u+ ⊤∇u = ( ∂ui∂xj

+∂uj

∂xi) を変形応力, IはN ×N の単位行列, µ > 0は粘性係

数、 σ > 0は表面張力係数, H(Γt) は自由表面 Γt の平均曲率のN − 1倍, K = (Kij)なるN ×N 行列関数に対してDivK はその第 i成分DivK|iが

DivK|i =N∑j=1

∂Kij

∂xj.

で与えられるN -次ベクトル. ntは Γtの単位外法線, VΓt は自由表面 Γtの nt方向への時間発展速度, nt · uは流速 uの nt成分である.

Ωtは未知なので未知関数 ρ(y, t)を用いてΓt = x = y+ρ(y, t)n(y) | y ∈ Γと表されるとする. ただし,ΓはΩの境界である. さらに写像 x = y + ρ(y, t)n(y)をΩ全体に適当に拡張して、Ωt = x = y +Ψ(y, t) |y ∈ Ωと表されているとする. ただし, Ψ|Γ = ρ(y, t)n(y, t)かつ

∥Ψ(·, t)∥H1∞(Ω) ≤ δ

が考えている時間 tで常に成立するという条件のもと方程式 (8.1)を解く. ここで δ > 0は十分小な定数で,写像 x = y + Ψ(y, t)が各 tについて単射となるようにとる. こうしてこの写像の逆写像 y = Ψ−1(x, t)が存在するとして,

Ωt = x = Ψ(y, t) | y ∈ Ω, Γt = x = Ψ(y, t) | y ∈ Γ

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また v(y, t) = u(Ψ(y, t), t), q(y, t) = p(Ψ(y, t), t) とおいて変数変換 x = y +Ψ(y, t) よりNavier-Stokes方程式は quasi-linear equations に変換される. その形は極めて複雑であるが、次のように線形部分と非線形部分に分けられる.

∂tv −Div (µD(v)− qI) = F+ f(v,Ψ) in Ω,

divv = g(v,Ψ) = div g(v,Ψ) in Ω,

(µD(v)− qI)n− σ(B +∆Γ)ρ = h(v,Ψ) on Γ,

∂tρ+ < ∇Γρ | v > −n · v = d(v,Ψ) on Γ.

(8.2)

ここでBは Γで定義されたC1級の関数で, BとBの一回微分は全て Γ上で有界である. また∇Γρは ρのΓ上での接平面方向の微分であり, < · | · >は Γ上の内積を表す. すなわち

< a | b >=N−1∑i,j=1

gij < a, τi >< b, τj >

ただし, τiN−1i=1 は Γ の接平面の basesであり, (gij)は Γの第一基本計量 (gij)の逆行列である.

8.1 時間局所解

方程式 (8.2)が初期値 v0 = u0(Ψ(y, 0))の大きさに応じて時刻 T > 0が存在して方程式 (8.2) が時刻 T までは解けることを示す. 初期値問題において ρの初期値 ρ0は時刻 t = 0での領域を決める関数なので極端にいえば Ω0 = Ωととれば ρ0 = 0ととれる. こうして ρ0は十分小さいと仮定することができる. 一方初期流速 v0は小ささを仮定できない. いま方程式 (8.2)において < ∇Γρ | v >は非線形項であるが, これを右辺に回して逐次近似を行うと各段階で v0が小さいことを要求しないと逐次近似が回らないことになる. この困難をさけるために Solonnikov先生のアイデアを拝借する. もとは Nash-Moser型の陰関数定理の証明に端を発すると思う. 任意の 0 < κ < 1に対して vκ ∈ H2

q (Ω)を

∥v0 − vκ∥Lq(Ω) ≤ Cκa∥v0∥B2(1−1/pq,p (Ω)

,

∥vκ∥B2(1−1/p)q,p (Ω)

≤ C∥v0∥B2(1−1/pq,p (Ω)

,

∥vκ∥H2q (Ω) ≤ Cκ−b∥v0∥B2(1−1/p

q,p (Ω).

なるものとする. ただし, a > 0, b > 0はある定数である. これを用いて線形項と非線形項を

∂tv −Div (µD(v)− qI) = f(v,Ψ) in Ω× (0, T ),

divv = g(v,Ψ) = div g(v,Ψ) in Ω× (0, T ),

(µD(v)− qI)n− σ(B +∆Γ)ρ = h(v,Ψ) on Γ× (0, T ),

∂tρ+ < ∇Γρ | vκ > −n · v =< ∇Γρ | vκ − v > +d(v,Ψ) on Γ× (0, T ),

(v, ρ)|t=0 = (v0, ρ0) in Ω× Γ.

(8.3)

と分けることができる. よって線形化問題は

∂tv −Div (µD(v)− qI) = f in Ω× (0, T ),

divv = g = div g in Ω× (0, T ),

(µD(v)− qI)n− σ(B +∆Γ)ρ = h on Γ× (0, T ),

∂tρ+ < ∇Γρ | vκ > −n · v = d on Γ× (0, T ),

(v, ρ)|t=0 = (v0, ρ0) in Ω× Γ.

(8.4)

となる. この問題に対して 7節の R-solverの枠組みで問題を考える R-solverをこの問題について構成しなくてはならない. これは Stokes方程式に対する問題であるが, 論文 [13, 14]で構成されている. そこではモ

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デル問題に対してどのように R-solver を構成するかということと, モデル問題の R-solverを単位分解を用いて領域全体で定義されたR-solverを構成するかという 2つの部分に分かれている. 前者は放物型方程式全般に通じる研究で実際最近ではここでの方法を拡張して多重成分流体や磁気流体 (MHD)の閉じ込め問題から現れる線形化問題の最大正則性原理を示した. また後者は Stokes方程式独自の問題である圧力項をいかに扱うかということがメインのテーマとなる. 困難さは圧力項は線形化問題であっても non-localな項なのでいわゆる通常の cut-off techniqueが使えないということである. 上記の論文 [13, 14]では圧力項がレゾルベント parameter λに対して

∥p∥Lq(D) ≤ CD|λ|−(1+1/q)/2 (|λ| → ∞) (Dは任意の有界領域)

なる評価を得るところが一つのポイントである. Navier-Stokes方程式研究で最も重要な部分の一つは圧力項の取り扱いに新しい知見を導入するかということである. 例えば少し前に, Navier-Stokes方程式の解が時間有限で爆発することを示すヒントとして Feffermanや Taoなどが例を挙げていたがこれらは全て圧力項を無視した偽 Navier-Stokes 方程式に対するものであり,ナンセンスの極致である. 現時点では私の研究仲間も含めて多くの方がNavier-Stokes方程式のミレニアム問題に挑戦しているようではあるが, 本質的に4節で述べたこと以外はできていないと思う. なにが難しいかということはいろいろあると思うが, 圧力項の扱いもその一つである.こうして R-solverが一般レゾルベント問題:

λv −Div (µD(v)− qI) = f in Ω,

divv = g = div g in Ω,

(µD(v)− qI)n− σ(B +∆Γ)ρ = h on Γ,

λρ+ < ∇Γρ | vκ > −n · v = d on Γ.

(8.5)

に対して構成されれば (ただし, λ0 = κ−bλ1の形にとれる. ここで λ1は κには依存しない十分大な定数である) 7節の議論より次の線形化問題 (8.4)に対する定理が得られる.

定理 6. T > 0, 1 < p, q < ∞. Ωは C3 級の一般領域で, weak Dirichlet問題が一意可解であることを仮定する. このときある γ0 があって, v0 ∈ B

2(1−1/p)q,p (Ω), ρ0 ∈ B

3−1/p−1/qq,p (Γ), f ∈ Lp((0, T ), Lq(Ω)

N ),

d ∈ Lp((0, T ),W2−1/qq (Γ)), さらに g, g, hの Rへの拡張 g, g, h で任意の γ ≥ γ0 に対して

e−γtg ∈ Lp(R,H1q (Ω)) ∩H1/2

p (R, Lq(Ω)),

e−γtg ∈ H1p (R, Lq(Ω)

N ),

e−γth ∈ Lp(R,H1q (Ω)

N ) ∩H1/2p (R, Lq(Ω)

N )

なるものが存在するとする. また整合条件

divv0 = g|t=0 = div g|t=0 in Ω, (D(u0)n)τ = h|t=0|τ on Γ

が成立するとする. ただし dτ = d− < d,n > n. このとき方程式 (8.4)は一意解 v, q, ρ で

v ∈ H1p ((0, T ), Lq(Ω)

N ) ∩ Lp((0, T ),H2q (Ω)

N ),

∇q ∈ Lp((0, T ), Lq(Ω)N ),

ρ ∈ H1p ((0, T ),W

2−1/qq (Γ)) ∩ Lp((0, T ),W

3−1/qq (Γ))

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次の評価をもつものをもつ.

∥v∥Lp((0,T ),H2q (Ω)) + ∥∂tv∥Lp((0,T ),Lq(Ω)

+ ∥ρ∥Lp((0,T ),W

3−1/qq (Γ))

+ ∥∂tρ∥Lp((0,T ),W2−1/qq (Γ))

≤ Cecκ−bT ∥v0∥N2(1−1/p)

q,p (Ω)+ κ−b∥ρ∥

B3−1/p−1/qq,p (Γ)

+ ∥f∥Lp((0,T ),Lq(Ω)) + ∥d∥Lp((0,T ),W

2−1/qq (Γ)

+ ∥e−γt(g, h)∥H

1/2p (R,Lq(Ω))

+ ∥e−γt(g, h)∥Lp(R,H1q (Ω)) + ∥e−γt∂tg∥Lp(R,Lq(Ω))

ここでC, cは κ ∈ (0, 1)に依存しない正定数である. また γ ≥ γ0 は任意である, ただし γ0は κに依存する.

この線形定理を用いて通常の Banachの不動点定理の議論より次の定理を得る.

定理 7. 1 < p, q < ∞, 2/p +N/q < 1. T0 > 0, Ωは C3級の一般領域で, weak Dirichlet問題が一意可解であるとする. このとき任意の初期値 u0 ∈ B

2(1−1/p)q,p (Ω)N と外力 F ∈ Lp((0, T0), Lq(Ω)

N ) に対してある

ϵ > 0と T ∈ (0, T0)があって, ρ ∈ B3−1/p−1/qq,p (Γ) が ∥ρ0∥B3−1/p−1/q

q,p (Γ)≤ ϵならば方程式 (8.3) は一意解 v,

q, ρ で

v ∈ H1p ((0, T ), Lq(Ω)

N ) ∩ Lp((0, T ),H2q (Ω)

N ),

∇q ∈ Lp((0, T ), Lq(Ω)N ),

ρ ∈ H1p ((0, T ),W

2−1/qq (Γ)) ∩ Lp((0, T ),W

3−1/qq (Γ))

なるものを持つ.

注 8. (1) この定理より Navier-Stokes方程式に対する自由境界問題は reference bodyが一様 C3 級でweak Dirichlet問題が一意的に解けるような空間であれいばよい.

(2) この定理と x = y +Ψ(y, t)なる写像を用いて,

Ωt = x = y +Ψ(y, t) | y ∈ Ω, Γt = x = y + ρ(y, t)n | y ∈ Γ,u(x, t) = v(Ψ−1(x, t), t), p(x, t) = q(Ψ−1(x, t), t)

が求める自由境界問題 (8.1)の解で初期値 u|t=0 = u0, Ωt|t=0 = Ω0 を満たすものとなる. ただし,Ω0 = x = y +Ψ0(y, 0) | y ∈ Ω, Γ0 = x = y + ρ0(y)n(y) | y ∈ Γである.

8.2 時間大域解

Navier-Stokes 方程式の自由境界問題における時間大域解の存在は Solonnikov [17, 18] による L2 枠のSobolev-Slobodeski spaceW

2+α.1+α/22 での結果とPadulaとSolonnikov [10]によるH”older空間 C2+α,1+α/2

での結果がある. ともに初期の領域は十分球に近く初期値も十分小を仮定している. もっとも初期領域が例えば強凸領域でないと領域のトポロジーが変わっていくことは数値解析の結果ではあるがわかっている. これは表面張力が原因である. しかし数学的にこの現象を厳密に示したものはない. Solonnikov達の先駆的結果は α > 0であるために初期値の整合条件が高く必ずしも最良の結果とは言えない. 私の仕事の動機はこれまでに述べた最大正則性原理が成立する空間で時間大域解が存在することを示すことで,Solonnikov達の結果を解の正則性を最良にするというところが焦点である. もちろんアプローチは異なるので手法としては異なるが, 基本的考え方は Solonnikovと変わらない. 結果も解の正則性を除けば同じである. すなわち領域が初期時間において球に十分近く, 流体の初期速度が小さければ時間大域的に解が存在し, 時間無限では領域は球となりその近づき方は指数速度である.

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より詳しく述べる. 方程式は (8.1)に初期値を与えたものである. 簡単のため外力 f = 0とする. referencebodyを Ω = BR := x ∈ RN | |x| < Rのとり Γ = SR = x ∈ RN | |x| = Rとして次の半沢変換を方程式 (8.1)に施す. まず座標系として重心を原点にとる. 即ち重心

ξ(t) =1

|BR|

∫Ωt

x dx

を導入する. ここで divu = 0 in Ωt から質量は変わらないので |Ωt| = |BR|を仮定する.ただし RN のルベーグ可測集合D対してそのルベーグ測度を |D|で表す. また重心は t = 0で原点にあるとする. すなわち. ξ(0) = 0とする. Γt は未知関数 ρ(y, t)をもって

Γt = x = y + ρ(y, t)R−1y + ξ(t) | y ∈ SR

と表す. ただし SR の単位外向き法線 nは n = R−1y (y ∈ SR)であることに注意せよ. Hρは ρの適当なBRへの拡張で

∥Hρ∥Hkq (BR) ≤ C∥ρ∥

Wk−1/qq (SR)

for k = 1, 2, 3,

∥∂tHρ∥Hkq (BR) ≤ C∥∂tρ∥Wk−1/q

q (SR)for k = 1, 2

を満たすとする. このとき Ωtを

Ωt = x = y +Hρ(y, t)R−1y + ξ(t) | y ∈ BR

と表す. ρ|t=0 = ρ0 で ρ0は十分小さいとする. これが初期領域Ω0 が十分 BRに近いことを表す. 重心を原点に取るアイデアは Solonnikov先生から私は学んだ. 8.1節と同じく半沢変換を行った式は

∂tv −Div (µD(v)− qI) = f(v,Ψ) in BR × (0, T ),

divv = g(v,Ψ) = div g(v,Ψ) in BR × (0, T ),

(µD(v)− qI)n− σ(N − 1

R2+∆SR

)ρ = h(v,Ψ) on SR × (0, T ),

∂tρ− n · Pv = d(v,Ψ) on SR × (0, T ),

(v, ρ)|t=0 = (v0, ρ0) in BR × SR.

(8.6)

ここで ∆SRは SR上の Laplace-Beltrami operator, また Pv = v − 1

|BR|∫BR

v(x, t) dxなる作用素である.

すなわち vからその平均を引いている. これは重心を座標系の中心にとったために現れる. この作用素は線形化して得られる, Stokes方程式の自由境界条件つきの一般化レゾルベント問題の, レゾルベントパラメーター λ = 0 の近傍での点スペクトルの解析に本質的役割を果たす. 重心を座標系の中心にとらないと時間大域解の存在証明はできない. Jan Pruß の安定性解析は抽象論でありこの工夫がみられないのにも関わらず, 時間大域解の存在を述べているのは不明瞭である. これは Solonnikov先生とも一致した見解である.問題の本質は線形化問題の解の時間減衰を示すことである. もちろん λ = 0は点スペクトルになるので

商空間をとって減衰する部分とそうでない部分に解を分けなくてはならない. しかし結果的には初期値が回転運動を行わないということ, |ΩR| = |BR| ということ, および座標系の中心を重心にしたという 3点から,減衰しない部分をうまくコントロールすることができ時間大域解が得られる. 解は時間局所解の存在より存在しているとしてよいので, この解が時間に依存しない値で上から評価されているということを示せば, 時間局所解は時間大域的に延長することができる. 時間に依存しない値で上から抑えるためには線形化問題の解の時間減衰評価が本質的となる. その評価を遂行するために必要な ρに対する条件は |Ωt| = |BR| よりΩt = x = rω + ξ(t) | 0 < r < R+ ρ(Rω, t), ω ∈ S1と極座標表示して

|BR| = |Ωt| =∫S1

∫ R+ρ

0rN−1dr =

1

N(R+ ρ)N = |BR|+

N∑k=1

NCkRN−k

N

∫Ωρk dω.

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より ∫Ωρ dω = −

N∑k=2

NCkRN−k

N

∫Ωρk dω.

また ξ(t) = |BR|−1∫Ωtx dx = |Ωt|−1

∫Ωtx dx より

0 =

∫Ωt

(x− ξ(t)) dx =

∫S1

ω dω

∫ R+ρ

0rN dr =

∫S1

ρω dω +N+1∑k=2

1

N + 1N+1Ck

∫S1

ρkω dω.

この二つの恒等式から ∫S1

ρ(Rω, t) dω = −N∑k=2

NCkRN−k

N

∫Ωρk dω

∫S1

ρ(Rω, t)ω dω = −N+1∑k=2

1

N + 1N+1Ck

∫S1

ρkω dω.

なる減衰しない部分∫S1ρ dω,

∫S1ρω dωに先験的な評価を得る. また流速に関しては運動量保存と角運動量

保存より ∫Ωt

u dx =

∫Ω0

u0 dx,

∫Ωt

(xiuj − xjui) dx =

∫Ω0

xiu0j − xju0i) dx

を得る. こうして初期値において∫Ω0

u0 dx,= 0,

∫Ω0

(xiu0j − xju0i) dx = 0 (8.7)

を仮定すれば流速で減衰しない部分は実はゼロとなり考えなくてよい. すなわち∫Ωt

u dx = 0,

∫Ωt

(xiuj − xjui) dx = 0

を解がある限り仮定してよい. こうして結果的に減衰評価ができて解が時間無限まで延長することができる.BR上では the weak Dirichlet problemは一意可解であることに注意して次の定理をえる.

定理 9. 2 < p <∞, N < q <∞, 2/p+N/q < 1とする.

• |Ωt| = |BR|

• ξ(0) = 0

• 初期流速 u0は (8.9)を満たす

を仮定する. このとき十分小なる定数 ϵ > 0があって, 初期値 v0 ∈ B2(1−1/p)q,p (BR), ρ0 ∈ B

3−1/p−1/qq,p (SR)

が smallness condition: ∥v0∥B2(1−1/p)q,p (BR)

+ ∥ρ0∥B3−1/p−1/qq,p (SR)

≤ ϵ を満たし, 整合条件

divv0 = g(v0,Ψ|t=0) = div g(v0,Ψ|t=0) in BR

(µD(v0)n0)τ = h(v0,Ψ|t=0)

をみたせば方程式 (8.6)は T = ∞として一意解 v, q, ρ で次の正則性と減衰評価をもつものと持つ:

v ∈ Lp((0,∞),H2q (BR)

N ) ∩H1p ((0,∞), Lq(BR)

N ),

∇q ∈ Lp((0,∞), Lq(BR)N ),

ρ ∈ Lp((0,∞),W 3−1/qq (SR)) ∩H1

p ((0,∞),W 2−1/qq (SR));

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∥eηt∂tv∥Lp((0,∞),Lq(BR)) + ∥eηtv∥Lp((0,∞),H2q (BR))

+ ∥eηt∂tρ∥Lp((0,∞),W2−1/qq (SR))

+ ∥eηtρ∥Lp((0,∞),W

3−1/qq (SR))

≤ Cϵ.

ここで η > 0, C > 0 は ϵに依存しないある定数である.

注 10. (1) 定理において Ψ(y, t) = y +R−1Hρ(y, t)y + ξ(t) である. こうして v0(y) = u0(Ψ−1(x, 0)) で

ある.

(2) 自由境界問題 (8.1)の解は次で与えられる.

u(x, t) = v(Ψ−1(x, t), t), p(x, t) = q(Ψ(x, t), t),

Ωt = x = Ψ(y, t) = y +R−1Hρ(y, t)y + ξ(t) | y ∈ BR,Γt = x = y +R−1ρ(y, t)y + ξ(t) | y ∈ SR

8.3 時間周期解

この節では Thomas Eiter, Mads Kyed との共著 [2]に従って方程式 (8.1)に対して外力 f = f(x, t)が周期2πの時間周期関数であるとき t ∈ Rに対して

Ωt = Ωt+2π, Γt = Γt+2π, u(x, t) = u(x, t+ 2π), p(x, t) = p(x, t+ 2π) (8.8)

なる周期 2πの時間周期解を求める. これまで見てきたように半沢変換を通して quasilinear 放物型方程式系の非斉次境界条件つき問題となるためこれまで最大正則性原理に基づく研究がなされていなかった. R-solverにより周期解部分の最大正則性原理を求めることにより世界で初めて時間周期解の存在をNavier-Stokes方程式の自由境界問題に対して示すことができた. これからの放物型方程式系の時間周期解研究に新しい研究方法を与える画期的な研究である.

仮定

pi = ei =⊤(0, . . . , 0,

i−th1 , 0, . . . , 0) (i = 1, . . . , N), pℓ (ℓ = N +1, . . . ,M) を xiej −xjei (1 ≤ i, j ≤ N)

のどれかとする. これは回転を表すD(d) = 0の空間の基底をなす. すなわち N -ベクトル関数 dがD(d) = 0であるための必要十分条件は dが pi (i = 1, . . . ,M)の線形結合で表されることである.さて Ωtを次の条件を満たすように構成する.

det(∫ 2π

0(pℓ,pm)Ωt dt

)ℓ,m=1,...,M

= 0, (8.9)∫ 2π

0

( 1

|Ωt|

∫Ωt

x dx)dt = 0, (8.10)

|Ωt| = |BR| for any t ∈ (0, 2π). (8.11)

これまで用いた関数空間は解析学者には知られているものとして述べなかったが周期解研究はさほど一般的ではないので次の定義を導入する.

H1p,per((0, 2π), X) = f(·, t) ∈ Lp.loc(R, X) | f ∈ Lp,per((0, 2π), X);

H1/2p,per((0, 2π), X) = f(·, t) ∈ Lp.loc(R, X) | F−1

T [((1 + k2)1/4f(k))k∈Z] ∈ Lp,per((0, 2π), X);

∥f∥Lp((0,2π),X) :=(∫ 2π

0∥f(t)∥pX dt

)1/p<∞;

∥f∥H

1/2p ((0,2π),X)

:= ∥F−1T [((1 + k2)1/4f(k))k∈Z]∥Lp((0,2π),X);

(f, g)G =

∫Gf(x) · g(x) dx, (f, g)∂G =

∫∂Gf(x)g(x) dσ.

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Ωt, u, pは方程式 (8.1)と周期条件 (8.8)を満たすとする. ガウスの発散定理より

((µD(u)− pI)nt, ei)Γt = σ(∆Γtx, ei)Γt = −σ(∇Γtx,∇Γtei)Γt = 0;

((µD(u)− pI)nt, xiej − xjei)Γt = σ(∆Γtx, xiej − xjei)Γt

= −σ(∇Γtxj ,∇Γtxi)Γt + σ(∇Γtxi,∇Γtxj)Γt = 0.

(8.12)

いまd

dt(u,pℓ)Ωt = (∂tu+ (u · ∇)u,pℓ)Ωt = (Div (µD(u)− pI),pℓ)Ωt + (f ,pℓ)Ωt

こうして (8.1) と divu = 0, (8.12) より次を得る.

d

dt(u,pℓ)Ωt = (f ,pℓ)Ωt . (8.13)

外力 f に対する仮定.ある領域 D ⊂ Ωtがあって supp f(x, t) ⊂ D が全ての時刻 t ∈ Rで成立する. この条件は実験などで外から一定の範囲で周期的な外力を与えれば気泡が振動することを数学的に厳密

に証明しようということである.さて周期条件 (8.8) と (8.13) より次を得る.∫ 2π

0

(∫Df(x, ·) · pℓ(x) dx

)dt = 0 for ℓ = 1, . . . ,M. (8.14)

方程式 (8.1)に代わり次の方程式を考える.

∂tu+ u · ∇u−Div (µD(u)− pI) +M∑k=1

∫ 2π

0(u(·, t),pk)Ωt dtpk = f in Ωt,

divu = 0 in Ωt,

(µD(u)− pI)nt = σH(Γt)nt on Γt,

VΓt = u · nt on Γt

(8.15)

for t ∈ (0, 2π). 実際 Ωt, u, pが方程式 (8.15)を満たせば (8.14) より次を得る.

(f ,pℓ)Ωt =d

dt(u·, t),pℓ)Ωt +

M∑k=1

∫ 2π

0(u(·, t),pk)Ωt dt(pk,pℓ)Ωt .

これを時間変数について (0, 2π)上積分して周期条件 (8.8)と f が (8.14)を満たすことより

M∑k=1

∫ 2π

0(u(·, t),pk)Ωt dt

∫ 2π

0(pk,pℓ)Ωt dt = 0.

これと仮定 (8.9)より ∫ 2π

0(u(·, t),pk)Ωt dt = 0. (8.16)

こうして Ωt, u and p は方程式 (8.1)を満たす.さて半沢変換を先の節と同様に導入する. ξ(t) を Ωt の重心で

ξ(t) =1

|BR|

∫Ωt

x dx (8.17)

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と与える. ここで仮定 (8.11)より |Ωt| = |BR| である. Reynoldsの transport theorem と divu = 0 より次が従う.

d

dtξ(t) =

1

|BR|

∫Ωt

(∂tx+ u · ∇x) dx =1

|BR|

∫Ωt

u(x, t) dx,d2

dt2ξ(t) =

1

|BR|

∫Ωt

f(x, t) dx. (8.18)

こうして Ωtが確定すればその重心の周期運動はわかる.ρ(y, t) を周期 2πの未知関数として Γtは次のように与えられるとする

Γt = x = y +R−1ρ(y, t)y + ξ(t) | y ∈ SR.

Hρは ρの適当な BRへの拡張で

∥Hρ∥Hkq (BR) ≤ C∥ρ∥

Wk−1/qq (SR)

for k = 1, 2, 3,

∥∂tHρ∥Hkq (BR) ≤ C∥∂tρ∥Wk−1/q

q (SR)for k = 1, 2

を満たすとする.Ωt = x = y +R−1Hρ(y, t)y + ξ(t) | y ∈ BR,Γt = x = y +R−1ρ(y, t)y + ξ(t) | y ∈ SR

(8.19)

とおく. J(t) を写像 x = Φ(y, t) = y +R−1Hρ(y, t)y + ξ(t)の Jacobianとする.

supt∈(0,2π)

∥Hρ(·, t)∥H1∞(BR) ≤ δ (8.20)

が十分小なる定数 δ > 0をもって成立するとする. これは写像 x = Φ(y, t) が全ての t ∈ (0, 2π)に対して単射であることを保証するものである. こうして逆像 y = Φ−1(x, t) が存在し Φと同じ正則性をもつ.

運動学的条件

u(x, t), p(x, t) が方程式 (8.1)を満足するとする. v(y, t) = u(Φ(y, t), t), q(y, t) = p(Φ(y, t), t)とおくと運動学的条件 VΓt = u · ntは Γt が x = y + ρ(y, t)R−1y + ξ(t) と表されていることに注意すると v, ρに対し次のようになる.

VΓt =∂x

∂t· nt = (

∂ρ

∂tn+ ξ′(t)) · nt, (8.21)

ただし, n = R−1yである. また Jacobian J(t)を J(t) = 1 + J0(t)と表す. ただし

J0(t) = det(δij +R−1 ∂

∂yi(Hρ(y, t)yj)

)i,j=1,...,N

− 1.

であるが運動は小さい場合を考えているので J0(t)は十分 0に近い数である. このとき

ξ′(t) =1

|BR|

∫Ωt

u dx =1

|BR|

∫BR

v(y, t) dy +1

|BR|

∫BR

v(y, t)J0(t) dy.

これと運動学的条件 (8.21)より次を得る.

∂tρ− (v − 1

|BR|

∫BR

v(y, t) dy) = d(v, ρ) (8.22)

ただし

d(v, ρ) =1

|BR|

∫BR

v(y, t)J0(t) dy +∂ρ

∂tn · (n− nt) + v · (nt − n). (8.23)

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これが ρに対する方程式である.

質量保存と重心座標

8.2節時間大域解のときと同様にしてΩt は十分 BR に近いとする. こうして ∆Γt は∆SRからの小さな

摂動と考えられるので

< H(Γt)nt,nt >= (∆SR+ (N − 1)/R2)ρ− (N − 1)/R+ nonlinear terms.

ここで−(N − 1)/R2は∆SRの第一固有値である. その固有関数は yj/R ( y = (y1, . . . , yN ) ∈ SR)である.

∆SRのゼロと第一固有値を線形解析で避けるために 8.2節と同様の考察をすることにより次を得る.∫

S1

ρ(Rω, t) dω = −N∑k=2

NCkRN−k

N

∫Ωρk dω

∫S1

ρ(Rω, t)ω dω = −N+1∑k=2

N+1CkRN+1−k

N + 1

∫S1

ρkω dω.

こうして解が求まった時にこの条件が成立することが |BR| = |Ωt|と ξ(t) =∫Ωtx dxより従うことを見越し

て運動学的方程式は次のものを考える.

∂tρ+

∫SR

ρ dω +N∑k=1

(∫SR

ρωk dω)yk −

(v − 1

|BR|

∫BR

v dy)· n = d(v, ρ) on SR × (0, 2π). (8.24)

ただし

d(v, ρ) = d(v, ρ)−N∑k=2

NCk

N

∫SR

ρk dω −N+1∑k=2

N+1Ck

N + 1

(∫SR

ρkω dω)yk. (8.25)

以上をまとめて次の方程式を得た.∂tv + LvS −Div (µ(D(v)− qI) = G+ F(v, ρ) in BR × (0, 2π),

divv = g(v, ρ) = div g(v, ρ) in BR × (0, 2π),

∂tρ+Mρ−Av · n = d(v, ρ) on SR × (0, 2π),

(µD(v)− q)n− (BRρ)n = h(v, ρ) on SR × (0, 2π).

(8.26)

ここで G(y, t) = ∇Φ(y, t)f(Φ(y, t), t), F(v, ρ), g(v, ρ), g(v, ρ), h(v, ρ) は非線形項である. また

LvS = 2πM∑k=1

(vS ,pk)T pk, vS =1

∫ 2π

0v(·, s) ds,

Av = v − 1

|BR|

∫BR

v dy; Mρ =

∫SR

ρ dω +N∑k=1

(∫SR

ρωk dω)yk;

BRρ = (∆SR+N − 1

R2)ρ = R−2(∆S1 + (N − 1))ρ.

(8.27)

ここで ∆S1 は単位球面 S1上の Laplace-Beltrami作用素である.この方程式を線形化し, 高周波部分は R-solverに基づく最大正則性原理を用い, また低周波については

各周波数 k (|k| ≤ k0)について定常問題が一意的に解けることを示して (一意的に解けるために上記の工夫をした) 次の定理を得る.

定理 11. 2 < p <∞, N < q <∞, 2/p+N/q < 1とする. D ⊂ BR = x ∈ RN | |x| < R. 次を仮定する.

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• f ∈ Lp,per((0, 2π), Lq(D)N ) かつ任意の t ∈ (0, 2π) に対して supp f(·, t) ⊂ D.

• ∫ 2π

0(f(·, t),pℓ)D dt = 0 for ℓ = 1, . . . ,M, (8.28)

• ある十分小さな定数 ϵ > 0 があって ∥f∥Lp((0,2π),Lq(D)N ) ≤ ϵが成立する.

このとき v(y, t), q(y, t), ρ(y, t) で

v ∈ Lp,per((0, 2π),H2q (BR)

N ) ∩H1p,per((0, 2π), Lq(BR)

N ),

q ∈ Lp,per((0, 2π),H1q (BR)),

ρ ∈ Lp,per((0, 2π),W3−1/qq (BR)

N ) ∩H1p,per((0, 2π),W

2−1/qq (SR)),

(8.29)

なる正則性をもち, さらに写像 x = Φ(y, t) := y +R−1Hρ(y, t)y + ξ(t) は BR上で定義された単射であり,

Ωt = x = Φ(y, t) | y ∈ BR, Γt = x = y +R−1ρ(y, t)y + ξ(t) | y ∈ SR,u(x, t) = v(Φ−1(x, t), t), p(x, t) = q(Φ−1(x, t), t),

は方程式 (8.1)の解であって周期条件 (8.8)を満たす. さらに v, ρ は ϵ > 0に独立な定数 C をもって次の評価を満たす.

∥v∥Lp((0,2π),H2q (BR)) + ∥∂tv∥Lp((0,2π),Lq(BR))

+ ∥ρ∥Lp((0,2π),W

3−1/qq (SR))

+ ∥∂tρ∥Lp((0,2π),W2−1/qq (SR))

+ ∥∂tρ∥L∞((0,2π),W1−1/qq (SR))

≤ Cϵ.(8.30)

9 終わりに

以上で私の重点研究教員としての純粋数学研究についての報告を終わる. 研究報告としてはR-solver理論の概略とNavier-Stokes方程式の自由境界問題についての結果のみを述べたが, はじめにも述べたようにここでの手法は圧縮性粘性流体,流体の 2相問題をはじめとし, 電磁流体の閉じ込め問題, 液晶, 多成分流体,Oldroyd bモデルなどの粘弾性体方程式をはじめとし, 放物型方程式系の非斉次境界条件問題として表される数理物理に現れる方程式系に適用できる. 純粋数学の研究は 18世紀の Fourierの理論が現代社会の基盤技術の基礎をなすように, 21世紀, 22世紀と人類が続く限りその基盤技術の基礎をなす理論であることを願う. またさらに若手数学者によりR-solver理論が, メゾスコピックな方程式系の導出と数学解析に貢献するよう発展させられることを望む. 最後に 10年という長い間お世話なった理工総研の皆様方, 特に中川義英先生, 木野邦器先生, 女性スタッフの武藤恵美さん石崎由香利さんに心より感謝申し上げここにこの小論を終わる.

謝辞

筆者は現在 Top Global University Project, JSPS Grant-in-aid for Scientific Research (A) 17H0109 および Toyota Central Research Institute Joint Research Fund を受けている.

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