(2) 食生活の動向と食育の取組 - maff.go.jp137 第1部 第1章...

7
135 (脂質の過剰摂取、野菜の摂取減等が継続) 我が国の食生活は、戦後大きく変化してきましたが、特に顕著な現象としては、米の消 費減等により炭水化物摂取が減少した一方、畜産物や油脂の消費増等により脂質摂取が 大幅に増加したことがあげられます。「日本人の食事摂取基準(2010 年版)」によると、 脂肪エネルギー比率の目標量は 18 〜 29 歳は 20%以上 30%未満、30 歳以上は 20%以上 25%未満とされていますが、平成 21(2009)年において、脂肪エネルギー比率が 30% 以上の者の割合は、男性で 20%、女性で 28%となっています(図 1 − 58)。 脂質の過剰摂取は、先進国に共通してみられる傾向です。我が国の脂質の供給熱量割合 は、米国、フランスの水準ほどではありませんが、以前に比べて相当程度高まっています(図 1−59)。近年急速な経済発展を遂げている中国でも、我が国同様に炭水化物の摂取が大 きく減少し、脂質の摂取がふえている傾向がみられます。 また、野菜の摂取について、「健康日本 21」では成人 1 人 1 日当たり 350g 以上を目 標として掲げていますが、近年は 300g 以下で推移しています。年齢別にみても、どの年 齢層でも 350g に達しておらず、20 歳代から 40 歳代の摂取量は 250g 前後となっていま す(図 1 − 60)。食塩の摂取量は年々減少しているものの、平成 21(2009)年で男性が 11.6g、女性が 9.9g と、それぞれ摂取目標量を超えている状況です(図 1 − 61)。 (2) 食生活の動向と食育の取組 % % 資料:厚生労働省「国民健康・栄養調査」(平成21(2009)年) 注:脂肪エネルギー比率とは、脂肪からのエネルギー摂取割合 (男性) (女性) 総数 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 70 歳 以上 総数 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 70 歳 以上 30% 以上 25~ 30% 20~ 25% 20% 未満 0 20 40 60 80 100 0 20 40 60 80 100 図1-58 年齢別脂肪エネルギー比率の状況(20 歳以上) 20.0 20.0 23.0 23.0 26.9 26.9 30.0 30.0 37.0 37.0 26.3 26.3 21.2 21.2 15.5 15.5 28.4 28.4 26.2 26.2 28.0 28.0 17.4 17.4 22.6 22.6 24.9 24.9 29.1 29.1 23.4 23.4 23.5 21.9 23.5 23.5 26.2 26.2 28.4 28.4 14.5 14.5 23.5 23.5 29.1 29.1 32.9 32.9 9.0 9.0 17.4 17.4 25.5 25.5 48.1 48.1 27.6 27.6 26.0 26.0 23.9 23.9 22.5 22.5 44.2 44.2 27.9 27.9 17.1 17.1 10.8 10.8 38.3 38.3 30.4 30.4 18,1 18.1 13.1 13.1 35.2 35.2 29.2 29.2 19.1 19.1 16.4 16.4 32.4 32.4 26.7 26.7 22.9 22.9 18.0 18.0 21.0 21.0 26.1 26.1 29.0 29.0 23.9 23.9 13.1 13.1 20.5 20.5 29.1 29.1 37.3 37.3

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Page 1: (2) 食生活の動向と食育の取組 - maff.go.jp137 第1部 第1章 (朝食欠食率が引き続き高いなど食生活の乱れ) 朝食欠食率をみると、平成21(2009)年において、男性全体で14%、女性全体で10

135

第1部

第1章

(脂質の過剰摂取、野菜の摂取減等が継続)我が国の食生活は、戦後大きく変化してきましたが、特に顕著な現象としては、米の消

費減等により炭水化物摂取が減少した一方、畜産物や油脂の消費増等により脂質摂取が大幅に増加したことがあげられます。「日本人の食事摂取基準(2010 年版)」によると、脂肪エネルギー比率の目標量は 18 〜 29 歳は 20%以上 30%未満、30 歳以上は 20%以上25%未満とされていますが、平成 21(2009)年において、脂肪エネルギー比率が 30%以上の者の割合は、男性で 20%、女性で 28%となっています(図 1 − 58)。

脂質の過剰摂取は、先進国に共通してみられる傾向です。我が国の脂質の供給熱量割合は、米国、フランスの水準ほどではありませんが、以前に比べて相当程度高まっています(図1 − 59)。近年急速な経済発展を遂げている中国でも、我が国同様に炭水化物の摂取が大きく減少し、脂質の摂取がふえている傾向がみられます。

また、野菜の摂取について、「健康日本 21」では成人 1 人 1 日当たり 350g 以上を目標として掲げていますが、近年は 300g 以下で推移しています。年齢別にみても、どの年齢層でも 350g に達しておらず、20 歳代から 40 歳代の摂取量は 250g 前後となっています(図 1 − 60)。食塩の摂取量は年々減少しているものの、平成 21(2009)年で男性が11.6g、女性が 9.9g と、それぞれ摂取目標量を超えている状況です(図 1 − 61)。

(2) 食生活の動向と食育の取組

% %

資料:厚生労働省「国民健康・栄養調査」(平成 21(2009)年) 注:脂肪エネルギー比率とは、脂肪からのエネルギー摂取割合

(男性) (女性)

総数 20~29歳

30~39 40~49 50~59 60~69 70 歳以上

総数 20~29歳

30~39 40~49 50~59 60~69 70 歳以上

30%以上

25~30%

20~25%

20%未満

0

20

40

60

80

100

0

20

40

60

80

100

図1-58 年齢別脂肪エネルギー比率の状況(20歳以上)

20.020.0

23.023.0

26.926.9

30.030.0

37.037.0

26.326.3

21.221.2

15.515.5

28.428.4

26.226.2

28.028.0

17.417.4

22.622.6

24.924.9

29.129.1

23.423.4

23.521.9

23.523.5

26.226.2

28.428.4

14.514.5

23.523.5

29.129.1

32.932.9

9.09.0

17.417.4

25.525.5

48.148.1

27.627.6

26.026.0

23.923.9

22.522.5

44.244.2

27.927.9

17.117.1

10.810.8

38.338.3

30.430.4

18,118.1

13.113.1

35.235.2

29.229.2

19.119.1

16.416.4

32.432.4

26.726.7

22.922.9

18.018.0

21.021.0

26.126.1

29.029.0

23.923.9

13.113.1

20.520.5

29.129.1

37.337.3

Page 2: (2) 食生活の動向と食育の取組 - maff.go.jp137 第1部 第1章 (朝食欠食率が引き続き高いなど食生活の乱れ) 朝食欠食率をみると、平成21(2009)年において、男性全体で14%、女性全体で10

136

%

米国

昭和40(1965)年 2,926kcal

  55(1980)  3,188kcal

平成19(2007)  3,748kcal

フランス

昭和40(1965)年 3,238kcal

  55(1980)  3,374kcal

平成19(2007)  3,532kcal

日本

昭和40(1965)年 2,459kcal

  55(1980)  2,563kcal

平成21(2009)  2,436kcal

中国

昭和40(1965)年 1,832kcal

  55(1980)  2,206kcal

平成19(2007)  2,981kcal

インド

昭和40(1965)年 1,945kcal

  55(1980)  1,991kcal

平成19(2007)  2,352kcal

P:たんぱく質 F:脂質供給熱量 C:炭水化物

資料:農林水産省「食料需給表」、FAO「Food Balance Sheets」を基に農林水産省で作成 注:日本は年度ベースの値

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

図1-59 各国の PFC バランスの推移

13.213.2 34.834.8 52.052.0

12.412.4 36.236.2 51.451.4

12.112.1 38.538.5 49.449.4

12.712.7 32.532.5 54.854.8

13.313.3 39.439.4 47.347.3

12.812.8 42.042.0 45.245.2

12.212.2 16.216.2 71.671.6

13.013.0 25.525.5 61.561.5

13.013.0 28.428.4 58.658.6

10.510.5 14.714.7 74.874.8

9.39.3 12.812.8 77.977.9

11.911.9 27.727.7 60.460.4

10.110.1 13.813.8 76.076.0

9.89.8 15.015.0 75.275.2

9.89.8 18.518.5 71.771.7

総数 20~29歳

30~39 40~49 50~59 60~69 70 歳以上

295.3

241.9266.8 268.5

303.5 306.4

g/日

資料:厚生労働省「国民健康・栄養調査」(平成21(2009)年) 注:緑黄色野菜とは、カロテンを豊富に含む野菜のこと

で、トマト、にんじん、ほうれんそう、ピーマン、かぼちゃ等

0

50

100

150

200

250

300

350

400339.6

資料 : 厚生労働省「国民健康・栄養調査」、「日本人の食事摂取基準(2010 年版)」

平成 15年(2003)

16(2004)

17(2005)

18(2006)

男性

男性の食塩摂取の目標量(9g未満)女性

19(2007)

20(2008)

21(2009)

9.9

11.6

g/日

女性の食塩摂取の目標量(7.5g 未満)

目標値

その他の野菜

緑黄色野菜

0

7

8

9

10

11

12

13

図1-60 年齢別野菜の摂取量 図1-61 食塩摂取量の推移(20歳以上)

184.1184.1

82.782.7

171.4171.4

70.570.5

196.2196.2

99.199.1

185.5185.5

83.083.0

204.0204.0

99.599.5

221.5221.5

118.1118.1

192.7192.7

113.7113.7

第2節 健全な食生活に向けた取組

Page 3: (2) 食生活の動向と食育の取組 - maff.go.jp137 第1部 第1章 (朝食欠食率が引き続き高いなど食生活の乱れ) 朝食欠食率をみると、平成21(2009)年において、男性全体で14%、女性全体で10

137

第1部

第1章

(朝食欠食率が引き続き高いなど食生活の乱れ)朝食欠食率をみると、平成 21(2009)年において、男性全体で 14%、女性全体で 10

%となっています(図 1 − 62)。年齢別にみると男女ともに 20 歳代と 30 歳代でその割合が高くなっています 。これら朝食欠食率が高い層では夕食の開始時間が遅い傾向もあるなど、食生活の乱れがみられます。このような朝食の欠食や既にみた脂質の過剰摂取等は、生活習慣病の引き金の一つになっていると指摘されています。

コラム  米国のフードスタンプと国民運動レッツムーブ

米国においては、4 人家族で 2,500 ドル以下等月収が一定の額を下回る受給資格者の申請に基づき、食料品を購入するための金券「フードスタンプ」(1 人当たり月額 100 ドル程度。たばこ、ビール等のし好品を除く)を支給する制度が昭和 39(1964)年に開始されています。

これまで米国は、貧困者対策として、フードスタンプや保護者の所得が低い児童・生徒に無料または低価格で給食を供給する事業等、栄養支援策に重点を置いてきました。しかし、これらの支援では脂質やカロリーが高いファストフードやスナック、飲料等安い食品を中心とした食生活となり、栄養・健康面で問題があるとの指摘もなされるようになっています。

そこで、フードスタンプの他に、新たな試みとして、新しい国民運動「レッツムーブ」が展開されようとしています。ミッシェル・オバマ米国大統領夫人の提唱により、平成22(2010)年 2 月に開始されたこの運動は、肥満児童をなくすことを目的とし、「健康的な食事」や「活動的な生活様式」に焦点を当て、肥満を引き起こす行動要因や環境要因を改善することを提唱しています。「レッツムーブ」の提唱を受け、各食品メーカーや小売店では、現在より平均で塩分を 25%カットする、トランス脂肪酸の入った食品は製造しない等の対策をとる動きがみられ、また、家庭、学校及び地域社会が協力して日常生活のなかで子どもたちに運動させようとする動きも出ています。

現在、米国では、健康に配慮した食生活が一般的になってきています。例えば、肉類等の摂取を控え、野菜中心の食生活を送る人々「ベジタリアン」が増加しており、ファストフード店にも野菜を中心とした「ベジバーガー」がメニューに用意されたり、日本食も食の選択肢として定着したりしています。また、その一方で、買い物アクセスが悪い、食事の準備に時間をかけられない等の理由で、生鮮品を調理することがほとんどなく、ファストフードやスナック中心の食生活を送る人々もいることから、児童の 3 分の 1、成人の20%が肥満といわれています。

米国政府は、このような動きを踏まえ、単に食べ物を提供するだけではなく、健全な食生活、健康的な生活を国民が送ることも考慮するようになりつつあります。

図 1-62 年齢別朝食欠食率(平成 21(2009)年)

0

5

10

15

20

25

30

35

全体 1~6歳

7~14

14.1

10.1

5.93.5

5.8 6.0

15.5

10.2

33.0

23.2

29.2

18.1 19.3

12.1 12.410.6 9.17.2

4.9 4.7

15~19

30~39

40~49

50~59

60~69

70歳以上

20~29

資料:厚生労働省「国民健康・栄養調査」(平成 21(2009)年)

男性

女性

Page 4: (2) 食生活の動向と食育の取組 - maff.go.jp137 第1部 第1章 (朝食欠食率が引き続き高いなど食生活の乱れ) 朝食欠食率をみると、平成21(2009)年において、男性全体で14%、女性全体で10

138

(食生活を今より良くしたいと考える人は半数)内閣府の調査によると、現在の食生活について「少し問題がある」、「問題が多い」とす

る人の割合は 38%となっており、今後の食生活について「今より良くしたい」と考える人の割合は 45%となっています 1。

また、今後の食生活で特に力を入れたいこととしては、「栄養バランスのとれた食事の実践」61%、「食品の安全性への理解」51%、「食べ残しや食品の廃棄の削減」46%、「規則正しい食生活リズムの実践」42%が多くなっています(図 1 − 63)。

このようななかで、どのような情報を普段の食生活に役立てたり参考にしたりしているかをみると、「献立・料理・レシピなど調理に関する情報」50%、「食の安全性や健康被害などの食に関する事件の情報」47%、「健康づくりや食生活改善に役立つ情報」41%が多くなっています(図 1 − 64)。また、情報を入手する媒体については、「テレビ・ラジオ」、

「新聞・雑誌・本」が多くなっています(図 1 − 65)。

図1-63 今後の食生活で特に力を入れたいこと(複数回答)

資料:内閣府「食育に関する意識調査」(平成 21(2009)年) 注:20 歳以上の者を対象に全国 3千人に調査したもので有効回答数は 1,862

0 10 20 30 40 50 60 70

栄養バランスのとれた食事の実践

食品の安全性への理解

食べ残しや食品の廃棄の削減

規則正しい食生活リズムの実践

地場産物の購入

家族や友人と食事を囲む機会の増加

地域性や季節感のある食事の実践

食事の正しいマナーや作法の習得

生産から消費までのプロセスの理解

特にない

分からない

61.1

51.0

45.5

42.1

32.4

30.8

30.1

20.8

9.9

5.3

0.8%

1 内閣府「食育に関する意識調査」(平成 21(2009)年)

図1-64 普段の食生活に参考にしている情報(複数回答)

資料:内閣府「食育に関する意識調査」(平成 21(2009)年) 注:図 1-65 を参照

49.646.6

40.9

29.2

26.54.4

16.20.6

%0 10 20 30 40 50

献立・料理・レシピなど調理に関する情報食の安全性や健康被害などの食に関する事件の情報

健康づくりや食生活改善に役立つ情報人気料理店などグルメ情報

地域の産物や旬の食材に関する情報その他

特にない分からない

第2節 健全な食生活に向けた取組

Page 5: (2) 食生活の動向と食育の取組 - maff.go.jp137 第1部 第1章 (朝食欠食率が引き続き高いなど食生活の乱れ) 朝食欠食率をみると、平成21(2009)年において、男性全体で14%、女性全体で10

139

第1部

第1章

(消費者のニーズに合わせた食育の取組が必要)栄養バランスの崩れや食習慣の乱れ等の問題が続いているなかで、今後、「第 2 次食育

推進基本計画」のもとで、国民が食料の生産から消費等に至るまでの食に関する様々な体験活動を行うとともに、自ら食育の推進のために活動を実践することにより、食に関する理解を深めることを旨として、生涯にわたって間断なく食育を推進する「生涯食育社会」の構築を目指していく必要があります。このため、世代区分等に応じた具体的な取組を提示する「食育ガイド」(仮称)の作成や、地域ぐるみで実践する食育を推進するため、地域の実情に応じた食育活動の支援、学校教育活動全体での取組の推進、食育を行う人材の育成等に取り組むこととされています。その際、食生活に対する消費者の意識が高まり、また多様になりつつあることから、それぞれのニーズに合わせたきめ細かい取組を、国、地方公共団体、学校、保育所、農林漁業者等様々な関係者が緊密に連携・協力して行っていくことが重要です。

図1-65 食に関する情報の入手先(複数回答)

資料:内閣府「食育に関する意識調査」(平成 20(2008)年) 注:20 歳以上の者を対象に全国 3千人に調査したもので有効回答数は 1,745

%0 10 20 30 40 50 60 70 80

テレビ・ラジオ新聞・雑誌・本

スーパーマーケット、食料品店友人・知人

家族インターネット

職場医療機関、保健所・保健センター

生産地食品や外食のメニュー等での表示学校(子どもが通う学校も含む)

その他特にない分からない

75.962.8

32.429.127.0

16.515.4

9.38.07.65.31.33.7

0.2

Page 6: (2) 食生活の動向と食育の取組 - maff.go.jp137 第1部 第1章 (朝食欠食率が引き続き高いなど食生活の乱れ) 朝食欠食率をみると、平成21(2009)年において、男性全体で14%、女性全体で10

140

事 例  様々な主体による食育の取組

(1)農家のお母さんによる食育活動北海道 旭

あさひ

川か わ

市し

で活動するグループ「ときめき隊」(農家の女性 13 名により構成)は、地元の食材にこだわった料理づくりという体験を通じて都市に住む人々とふれあい、農村を訪問してもらうこと、つくり手の思いを聞いてもらうことを目的として、公民館等の施設を使って、親子が参加する料理教室の講師を務めるなど食育の取組を展開しています。

この料理教室では、プロの料理ではなく、家族のための家庭料理を教えるため、親子で参加しやすく、毎回参加する人もいます。開催は年 5 〜 6 回程度で、参加人数は 1 回20 人から 40 人程度です。

漁家の女性グループ「浜のかあさん」と一緒に魚料理に挑戦したり、親子で長い巻き寿司をつくったり、豆腐や漬物といった加工品づくりの体験教室を催すこともあります。また、グループのメンバーが各自でつくった野菜を持ち込んで食材として使用するため、参加者の食や地域農業に対する理解が深まります。

ときめき隊のメンバーのなかには、農家レストランや食品加工場を経営する人もいるため、地元産の食材を使った料理をレストランで出したり、加工食品を販売したりするなど、それぞれができる範囲で食についての情報を発信していくこととしています。

(2)町全体が一体となった食生活の改善福島県西

に し

会あ い

津づ

町ま ち

では、以前は脳卒中による死亡が多く、平均寿命も全国、県平均に比べ短い状況にありました。

このため、平成 4(1992)年度から、町民の栄養知識の向上と食生活の改善を通じた平均寿命の延伸の取組が町をあげて行われています。平成 4(1992)年度に実施した健康調査の結果によると、塩分摂取量が特に多かったことから、平成 5(1993)年度から大学の指導を得て、食生活改善推進員の育成に取り組み始めました。食生活改善推進員は年 60 時間(平成 22(2010)年時点では 30 時間)の講義・実習を受けることとなっており、その数は平成 21(2009)年度までで延べ 295 人にのぼっています。

食生活改善推進員は、自治区に出向いて、各家庭で味噌汁の塩分測定を行ったうえでの減塩指導、健康的な食事のレシピが掲載されているカレンダー等の配布、ケーブルテレビでの健康料理番組の放映等の活動を行ってきました。

その結果、平成 5(1993)年に 13.5g(全国平均 12.8g)だった 1 日 1 人当たりの食塩摂取量は、平成 20(2008)年には 10.1g と減少し、全国平均の 10.9g を下回るようになりました。また、平均寿命は、昭和 60(1985)年に男子 88 位、女子 69 位(県内 90 市町村中)となっていましたが、平成 17(2005)年には、男子 26 位、女子 29 位(県内83 市町村中)と大幅に改善しています。

これらをはじめ、健康寿命延伸事業等の取組の結果、老人医療受給者 1 人当たりの医療費(平成 19(2007)年度)についても 66 万円程度と、全国平均 88 万円に比べ非常に低い水準になっています。

料理教室の様子

味噌汁の塩分測定の様子

北海道

旭川市

福島県

山形県新潟県

栃木県

宮城県

西会津町

第2節 健全な食生活に向けた取組

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141

第1部

第1章

コラム  広がる「弁当の日」

「弁当の日」という取組が全国に広がっています。平成 13(2001)年、当時、香川県綾あ や

川が わ

町ちょう

の小学校の校長先生だった竹下和男氏が開始したこの取組は、子どもだけで昼食の弁当づくりを行うものです。当初この取組は、子どもだけでつくること、家庭科の授業で弁当をつくるのに必要な知識や技能を学ぶことができる小学校5年生と6年生を対象にすること、月1回 10 月から2月の年5回実施することの3点をルールとして始まりました。竹下氏はのちに赴任した中学校でも取組を行い、その際には「地元産の食材を使った弁当」、「誰かのためにつくる弁当」等のテーマを設定しました。

この「弁当の日」の取組については、九州のブロック紙で紹介され、その後全国各地で講演会やシンポジウムも多数開催されています。その結果、取組の内容や趣旨が多くの人々に理解され、小学校、中学校だけでなく、高校、大学にも取組は広まり、小中学校全体で取り組む自治体もあります。さらには「弁当の日」を取り入れる企業もみられるようになってきています。

弁当づくりを通じて、単に調理や家事の技術の取得だけでなく、家族との会話がふえる、子どもが取り組む姿勢をみて親も食の大切さを改めて実感する、食をとおしてその向こう側にある農業、さらには命の大切さを理解するなど、「弁当の日」の取組の効果は多岐にわたっています。

個性豊かな弁当を囲む生徒 生徒たちが自らつくった弁当