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血漿交換 2013/3/12 東京慈恵会医科大学ICU勉強会 腎臓・高血圧内科 中田泰之

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血漿交換

2013/3/12

東京慈恵会医科大学ICU勉強会

腎臓・高血圧内科

中田泰之

目次

• 総論 – 序論 – 単純血漿交換 – 二重膜濾過法(DFPP) – 血漿分離法

• 各論 – TMA(TTP/HUS) – 肝不全 – 神経疾患(MG)

• 血漿交換療法にまつわる合併症 • 適応疾患 • 最後に

アフェレシスとは

• Apheresis(アフェレシス):ギリシャ語で分離を意味する

• Plasmapheresis=血漿を分離する

• 実際には血漿を除去し、血漿などで置換することをplasma exchange(血漿交換)と呼ばれるようになった。

• 1986年の第一回世界アフェレシス会議で”体外循環による血液処理法を包括してapheresisと呼称する”ことに決めた。

参)日本アフェレシス学会は慢性維持透析を除く体外循環治療のすべてをアフェレシスと定義

血液浄化療法の流れ

瀉血

交換輸血

単純血漿交換

二重膜濾過法

吸着療法

白血球除去療法

血液透析

血液ろ過

肝細胞移植

アフェレシスマニュアル(日本アフェレシス学会)より改変転載

紀元前400年~

1970年代~

血漿交換療法

長浜赤十字病院ホームページより転載・編集

単純血漿交換療法の血液回路

血漿分離器

置換液

血漿分離器で、血漿成分を分離して廃棄 廃棄した分を置換液で置き換える

膜型 遠心分離型

利点

迅速で効果的 クエン酸不要 段階的濾過の適応が可

選択的細胞除去可能 ヘパリン不要

すべての血漿成分の効果的な除去可 QB 50ml/minでOK

欠点

除去物質が限定 選択的細胞除去施行不可 QB 100-150ml/minが必要 ヘパリンが必要

高価 クエン酸が必要 血小板消失(30%/回)

膜型分離器と遠心型分離器

治療

輸血製剤

(a)

(b)

膜型血漿分離器

型式 OP-02W OP-05W OP-08W

膜素材 Polyethylene

孔径 0.3μm※

膜面積 0.2m2 0.5m2 0.8m2

Max TMP 60mmHg

供給液側充填量 25ml 55ml 80ml

濾過液側充填量 35ml 75ml 105ml

本数 1620 2130 3440

患者目安体重※ ~25kg 25-45kg 45kg~

旭化成クラレメディカル

※)血液透析膜:孔径数nm

0.3μm(分子量約300万) 大きさ約2μm

旭化成メディカル株式会社HPより

免疫複合体 分子量約100万

どのくらい血漿を交換すればいいのか?

ヒトの血漿量(Vp) 目安はおおむね35~40ml/kgと予測されている Ex) 体重60kgで2100~2400ml 血漿量推定式(1992 Semin Dial)

Vp=[0.065×体重(kg)]×(1-Ht) Ex) 体重60kgでHt 0.4(40%)であれば2340ml となる

J Clin Apher 2011; 26: 230-238

血漿交換置換量と血漿中物質除去率の関係は指数関数的な関連性を示している。 点線: 体重70kgの人(推定血漿量3.0L)が3.5L置換で血漿交換をした際の例 →69% removal

高分子量物質(免疫グロブリン、コレステロール、クリオグロブリンなど)の除去率と血漿交換量

患者血漿量に対する交換血漿量の割合

除去率

x y

0.5 39%

1.0 63%

1.5 78%

2.0 86%

2.5 92%

3.0 95%

一回の血漿交換で患者血漿量の1.5倍以上交換しても、除去率は著しく増加しない。 一方で、①血漿交換時間の延長、②置換液が大量となる、③副作用の惹起

があり、1.0~1.5倍置換が妥当と判断。

物質 分子量 血管内% 半減期(日)

正常血漿濃度

(mgl/dl)

アルブミン 69,000 40 19 3,500-4,500

IgG 180,000 50 21 640-1,430

IgA 150,000 50 6 30-300

IgM 900,000 80 5 60-350

LDL-C 1,300,000 100 3-5 140-200

主な血漿タンパク・コレステロール

IgMは血管内%が高く、IgGに比べ一回当たりの血漿交換の治療効果が高い。 免疫抑制剤でImmunoglobulin産生を完全に抑制しても、半減期が長いと効果に時間がかかる。

血漿交換によるIgG除去率

①血漿交換により60~70%の血漿が置き換え

られるので、それと同様の割合のIgGが除去される。 ②血管外にあるIgG(IgG

は血管内と血管外の割合が1:1)がreequilibrationする。

高分子物質のReequilibration 比較的ゆっくりである 時間あたり1~3%程度

二重膜濾過法(double filtration plasmapheresis)

• 一次膜(血漿分離器(膜型:孔径0.3μm))で分離された血漿をさらに、二次膜(血漿成分分画器0.01-0.03μm)にかけて、アルブミンなどを体内に返血する方法。

• 日本では川澄化学工業と旭化成クラレメディカルが製品化し一部の疾患で頻用されているが、アメリカでは手に入れられずめったに行われない。

→DFPPにまつわるstudyはその多くがアジア圏

二重膜濾過法の血液回路

二次膜(血漿成分分画器)は、濾過された血漿成分が返血される (一時膜では濾過されなかった血球成分が返血される)

旭化成メディカルHPより転載

型式 EC-20W EC-30W EC-40W EC-50W

膜素材 エチレン・ビニルアルコール共重合体

孔径 10nm 20nm 30nm 30nm

膜面積 2.0m2

供給液側充填量 140ml

本数 14200本

血漿成分分画器

血漿分離器と異なり、膜は孔径によって異なる。

除去対象物質によって膜の型式を選択

旭化成クラレメディカル

旭化成メディカルHPより転載 ふるい係数=濾過溶質濃度/膜入口溶質濃度

免疫グロブリンやコレステロールのふるい係数をあげようとすると、アルブミンを一緒に損なわれる。

血漿流量 30ml/min 排液流量 6ml/min

旭化成メディカルHPより転載

Alb IgG IgM

血漿流量 30ml/min 排液流量 6ml/min

LDL-C

LDL-Cを除去:EC-50W IgGを除去:EC-20W

Albuminも結構除去される→アルブミン置換

・膜型血漿分離器 OP-08W×1本 ※体重40kg以下の場合はOP-05Wを検討 ・生理食塩水 500ml×1本 ・生理食塩水 1000ml×2本 ・FFP(Dr指示)(30U~40Uが目安) Alb置換の場合はアルブミナー5%静注12.5g/250ml×8本+生食1000mlで3000ml置換。アルブミナー5%静注12.5g/250mlに対して生食125mlで計算する。 ・アリメバッグ×1袋(Alb置換の場合) ・抗凝固薬(Dr指示) ・カルチコール(Dr指示)(FFP1Uに対しカルチコール1mlが目安)

当院での単純血漿交換時物品の一部

当院での二重膜交換法時物品の一部 ・膜型血漿分離器 OP-08W×1本 ※体重40kg以下の場合はOP-05Wを検討 ・膜型血漿成分分離器(Evaflux 2A、3A、5A)×1本 ・生理食塩水 500ml×1本 ・生理食塩水 1000ml×3本 ・25%アルブミン 50ml×2本(Dr指示) ・5%PPF 250ml×2本(Dr指示) ・プライミング用抗凝固薬(ヘパリン1000単位) ・治療用抗凝固薬

8.3% Albumin液

3.3% Albumin液

4-1 血漿吸着療法の原理・治療図

20

当院ICUでの2010-2012年の血漿交換治療

疾患 件数

急性肝不全・劇症肝炎 4件

TTP 2件

甲状腺クリーゼ 1件

SLE 1件

視神経脊髄炎(NMO) 1件

後腹膜悪性腫瘍 1件

肺胞出血(ANCA血管炎) 1件

人工関節置換術後 PMX 1件

AML, TMA, CNS病変 1件

目次

• 総論 – 序論 – 単純血漿交換 – 二重膜濾過法(DFPP) – 血漿分離法

• 各論 – TMA(TTP/HUS) – 肝不全 – 神経疾患(MG)

• 血漿交換療法にまつわる合併症 • 適応疾患 • 最後に

TMA(TTP/HUS)

血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura, TTP)は,1924年,米国のMoschcowitz)によって最初に報告された。

16歳女性:高熱と多臓器障害で入院 1 週間の急性経過にて死亡。 この患者の病理解剖では肺を除く脳,心,肝,腎など全身諸臓器の細小動脈と毛細血管に,広範なガラス様血栓(ヒアリン膜血栓)を認めた。

1966年,Amorosi &Ultmannは自験例16例と文献報告を合わせて255例の類 似疾患を解析することにより,Moschcowitzの「ヒアリン膜血栓症」に該当する疾患は, ① 細血管障害性溶血性貧血, ② 破壊性血小板減少, ③ 血小板血栓による臓器(特に腎臓)機能障害, ④ 発熱, ⑤ 動揺性精神神経障害 の 5 徴候からなる「古典的診断基準」を述べた。

TMA(TTP/HUS)

TMA(TTP/HUS)の治療

• 1950年台まで致死率はほぼ100%

• 1959年に血漿輸注により救命できた症例が初めて報告された。

• その後、血漿療法(輸注、交換)が効果的とする報告が散見されるようになった。

N Engl J Med 1991; 325: 393-397

研究デザイン:RCT 方法:TTPと診断された102人の患者を以下のようにわけた。 ①血漿交換(N=51) 最初の3日間はFFP1.5倍置換→以降1.0倍置換 ②血漿投与(FFP投与) (N=51) 初日は30ml/kg→翌日から15ml/kg Outcome:“血小板数>15万”“神経学的所見の増悪なし”で治療反応性をみる 致死率 治療開始9日後と6か月後に評価

N Engl J Med 1991; 325: 393-397

治療開始9日後、および6ケ月後いずれにおいても、治療反応性・致死率においてplasma exchangeの方がplasma infusionよりも優れていた。

N Engl J Med 1991; 325: 393-397

しかし・・・

Plasma exchange群はplasma infusion群よりも圧倒的に(約3倍)FFPを投与されていた。

FFP投与量が多かったか

ら予後がよかったのか、それともPlasma exchangeというmodalityがよかったのかがはっきりしなかった。

N Engl J Med 1991; 325: 393-397

N Engl J Med 1998;339:1578-84.

すでに発見されていたvon willebrand factor-cleaving proteaseがTTPおよびHUSに認められているかを53人の患者のsumpleを用いて評価。

TTP患者は①vWF protease活性低下、非家族性で②vWF inhibitor高値

ADAMTS13 a disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondine type 1 motifs13

vWF-cleaving proteaseがADAMTS13でvWF-cleaving protease inhibitorはADAMTS13 inhibitorであることが2003年に報告された。 血漿交換により

① ADAMTS13を補充 ② ADAMTS13 inhibitorを除去 されることが病態からも説明され、血漿輸注ではなく血漿交換がされるように・・・

TTPのメカニズム

内皮細胞から産生された超巨大分子量vWFマルチマー(UL-VWFM)が、ADAMTS13活性が低下し

ていると切断されず、細小血管など高いずり応力が生じる部分で過剰な血小板凝集、血栓形成が起きる。

TTP治療における問題点

①臨床診断でTTP/HUSの

診断は比較的容易であり、ADAMTS13の重度欠乏(<5%)があればHUSも除外できる(Specificity 90%)が、検査感度が不明確。 ②TTP/HUSの原因によっ

て、血漿交換が効果的でないものもある(右図)。 ③Aquired TTPの再発率は20~50%と依然高い。

J Clin Apher 2012; 27: 112-116

Blood. 2011;118(7):1746-1753

両群ともに単純血漿交換は連日行い、血小板数が>15万/Lに2日間続いたところで終了とした。 Rituximab 投与群(N=40) 診断されてから3日以内に375mg/m2投与 血漿交換と次のPEX治療までは最低4時間空けた 1週間ごとに1回ずつ、合計4回投与した(for 4 weeks)。 ステロイドは両群とも1g/day mPSL×3日間のpulse

Blood. 2011;118(7):1746-1753

Rituximab群の方がPEXの回数が少なくて済んだ(mean 14 vs 21, P=0.005)

再発率がrituximab群で少なかった(左図) 10% , 57%; P=0.0011

有害事象に両群で差はなかった

Guidelines on the diagnosis and management of thrombotic thrombocytopenic purpura and other thrombotic microangiopathies Marie Scully et al

Br J Haematol 2012; 158: 323-335

2012年に発表されたUK resistryのTTP guidelineでは、RituximabのTTPの再発率を下げることに言及。

神経・心病変があるようなTTPでは致死率が高い為、Rituximabを導入することを考慮すべきとしている。

TTP治療におけるRituximabの有用性が示されつつある

研究デザイン:opne-label prospective study

Efficacy and safety of first-line rituximab in severe, acquired thrombotic thrombocytopenic purpura with a suboptimal response to plasma exchange. Experience of the French Thrombotic Microangiopathies Reference Center Antoine Froissart et al

Crit Care Med 2012; 40: 104-111

TTPに対するRituximab投与の安全性と効果性を評価(N=21) Historical control(N=53)と比較して臨床的予後を比較

Rituximab群は、PEX開始日、3日目、7日目、14日目に375mg/m2

ステロイドは両群ともに1mg/kg/dayを3週間投与 血漿交換は初日が1.5倍置換、翌日から1.0倍置換 remissionしてからも減量しながら3週続ける

Efficacy and safety of first-line rituximab in severe, acquired thrombotic thrombocytopenic purpura with a suboptimal response to plasma exchange. Experience of the French Thrombotic Microangiopathies Reference Center Antoine Froissart et al

Crit Care Med 2012; 40: 104-111

再発率が両群で差がない(P=0.68) Remissionまでの時期はRituximab群で早かった。

Froissart et al Crit Care Med 2012; 40: 104-111

Scully et al. Blood. 2011;118(7):1746-1753

ADAMTS13活性とADAMTS13 inhibitorを比較してみると…

再発率が低かったScullyの試験のRituximab群は、12か月後もADAMTS13活性低下、inhibitor上昇がない。

① Rituximab投与法が違う ② ステロイド投与法が異なる ③ 血漿交換の仕方が異なる

2試験の治療上の相違点

J Clin Apher 2010; 25: 83-177

Br J Haematology, 2012; 158: 323-335

British Committee for standards in HaematologyによるTTP guideline (2012) 診断したら4-8時間以内に、連日1.5倍置換(置換液FFP)でPEXを行う。 臨床症状、L/Dが安定化したら1.0倍置換 血小板>15万/L以上になっても、その後2日間はPEXを続ける

American Society of Apheresis(ASFA)のGuideline(2010)

J Clin Apher 2010; 25: 83-177

American Society of Apheresis(ASFA)のGuideline(2010)

TTPと血漿交換のまとめ

idiopathic TTPにおけるplasma exchangeの有用性については確立されている。 TTPはその再発率の高さがひとつの問題であるが、近年Rituximabの使用により再発率が軽減する可能性が示唆されつつある。 TTPに対する血漿交換の報告は、そのほとんどが血小板数が2日間連続して15万/mclになるまで連日実施(1.0~1.5倍置換)するのが通常で、重症度によっては1日2回実施する例もある。 しかし本邦では、週3回(月13回)で3か月以内という保険上の制限があり、根拠となっているEvidenceに合わせた使用量が使えないのが現状。 骨髄幹細胞移植後や悪性腫瘍にともなうTTPでは、血漿交換の有用性はない。(原疾患の治療)

急性肝不全(Acute liver failure) 劇症肝炎(fulminant liver failure)

Acute-on-chronic liver failure

A bioartificial liver (BAL) 商品名:HepatAssist

中空糸の外側に豚の肝細胞を移植 商品名:ELAD ヒト肝芽腫を使用

いずれも肝細胞の持つ解毒作用や合成作用を期待したいわゆる“人工肝”

BAL membraneを使用(豚の肝細胞がFiber外にある) Pore size: 0.15μm

171人の劇症肝炎・肝移植後機能不全患者を ①BAL群(N=85) ②Control群(N=86) に無作為に分けた

Prospective, Randomized, Multicenter, Controlled Trial of a Bioartificial Liver in Treating Acute Liver Failure A A. Demetriou et al

Ann Surg 2004; 239: 660-670

生存率に差はみられなかった。 肝移植をした患者、しない患者でも差なし。

MARS (Molecular Adsorbent Recirculating System)

①MARS moduleでアルブミン結合物質が透析される。 ②通常の透析膜でHDが行われる(水溶性物質・小分子物質の除去) ③吸着カラムで、アルブミン結合物質が活性炭・イオン交換樹脂により吸着される。 →そのまま透析液として①に戻り循環を繰り返す

アルブミン浮遊液

欠点;4本も1回路につがなり プライミングが煩雑, 回路凝固しやすい

回路内は 20% Alb 600ccで プライミングが必要

Bench-to-bedside review: Current evidence for extracorporeal albumin dialysis systems in liver failure Crit Care 2007; 11: 215

Table 1, AOCLF RCTだけを見ると、生存率はバラバラの結果。 全ての研究を見るとCVS/CNSの改善はありそう。

Table 2, ALF RCTだけを見ると、生存率はバラバラの結果。 全ての研究を見るとCVS/CNSの改善はバラバラ。

ALFのRCTは2編しかない。有効性の評価は困難。 AOCLF患者におけるMARSは意識レベル改善に有効かもしれない。

2010.8.24 ICU勉強会より引用・一部改変

Extracorporeal Albumin Dialysis With the Molecular adsorbent Recirculating System in Acute-on-Chronic Liver Failure: The RELIEF Trial R Banares et al

Hepatology 2013; 57: 1153-1162

研究デザイン:multicenter randamized controlled clinical trial 欧州の19施設で2003年4月~2009年3月までに採用 急性の非代償性肝硬変のある患者 ・誘因となるeventがあった ・血清ビリルビン値>5mg/dL ・以下のうち最低一つ見られる

・肝腎症候群 ・肝性脳症(>Grade Ⅱ) ・急速なビリルビン上昇(入院時より50%以上) ・ビリルビン値がrandomization時20mg/dl以上

Primary endpoint: 28日後生存率

MARS群 SMT群

Extracorporeal Albumin Dialysis With the Molecular adsorbent Recirculating System in Acute-on-Chronic Liver Failure: The RELIEF Trial R Banares et al

Hepatology 2013; 57: 1153-1162

介入時肝腎症候群があった患者が、day4でS-Cr 1.5mg/dL以下だったのはMRAS群で多い傾向(統計学的有意差なし P=0.07) 肝性脳症も同様の結果(P=0.07)

Fig.2 28日生存率に差なし

ITT Per-protocol

Table.3 28日生存率の独立したrisk factorは ・肝性脳症(>Grade 2) ・MELD scoreの上昇 ・day4でのS-bil値の10%以上の上昇

比較的大規模なRCTでもMARSの有用性は示されず

Prometheus fractionated plasma separation and adsorption (FPSA)

アルブミンフィルターと透析カラムを直列でつなげた。 アルブミンフィルター(ふるい係数0.6)

なので、回路内をアルブミンプライミングする必要はない。

全血を血液透析できるので、水溶性物質の除去に優れる。

Bench-to-bedside review: Current evidence for extracorporeal albumin dialysis systems in liver failure

Crit Care 2007; 11: 215

CVS/CNSの改善はなさそう。 生存率を検討したRCTはない。 合併症は特になかったとのこと。

理論上はMARSよりも有効性が期待されるが、 それを証明した研究はない。 CNSの改善がないのが残念。 現在『HELIOS study』が進行中らしいが、情報が 確認できなかった。

2010.8.24 ICU勉強会より引用・一部改変

ヨーロッパ7か国10大学病院で行われた多施設前向き無作為化コントロールパラレルグループ試験 2005年6月から2008年1月に入院した慢性肝障害の重度増悪患者(N=145) ・S-Bil≧5mg/dl and ・Child-Pugh score≧10 ①Fractionated plasma separation and absorption(FPSA, Prometheus)とstandard medical therapy(SMT)の併用群(N=77) (FPSAは第1週に5回、第2週に3回、その後Child-Pugh scoreが2points以上低下 or 10点未満に低下してなければさらに3回追加可) ②SMT only群(N=68) Primary outcome: 28日、90日後の致死率

Gastroenterology 2012; 142: 782-789

Effect of Fractionated Plasma Separation and Adsorption on Survival in Patients With Acute-on-Chronic Liver Failure A Kribben et al

Gastroenterology 2012; 142: 782-789

28日後の生存率はFPSA 66%, SMT 63%(P=.70) 90日後の生存率はFPSA 47%, SMT 38%(P=.35) (Kaplan-Meier survival curve, logrank P=0.3872) 試験期間中に肝移植を受けたのは FPSA 15人(19.5%), SMT 13人(19.1%) 有害事象に差はなかった。

SOFA score, bleeding, female, S-Cr値が独立した危険因子 MELD score>30の場合は、FPSAが致死率が低下する因子(HR 0.47(0.22-0.99))。

Specific subsetsでのFPSA

の効果について更なる研究が必要と著者らは締めくくっている。

Systematic review and meta-analysis of surviving following extracorporeal liver support B. M. Stutchfield et al

Br J Surg 2011; 98: 623-631

Acute liver failureは全死亡率が改善した(ただ一つ一つのstudyでは改善なし)

Acute on chronic liver failureでは全死亡率は変わらなかった

Modalityもバラバラであり、これだけでacute liver failureにELSを使用する根拠には乏しい

1995年1月~2010年1月までのRCTsのみをmeta-analysis Primary outcome:最大フォローアップ期間後の全死亡率

J Clin Apher 2010; 25: 83-177

Therapeutic plasma exchangeについて American Society of ApheresisのGuidelineでは・・・

そもそもPlasma exchangeとacute liver failureについてのRCTが存在しない。(2013.03.12現在でも同様)

Recommendation Grade 2B: weak recommendation Category Ⅲ: apheresis therapyが最適な治療ではなく、個々の症例に判断がゆだねられる

明日、肝不全患者に出会ってしまったら・・・ (1)劇症化していなければ、いわえるStandard medical therapy -凝固因子の補充(FFPの投与) -水分電解質の補正、場合によりCRRTによる血液浄化療法(腎補助) -平均血圧の維持→重要臓器血流の維持(特にCPPの維持) -栄養管理 -場合により抗生物質投与 -体温管理(高体温は避けたい) -肝不全原因の治療、抗ウイルス剤・薬物中毒の治療 (2)劇症化したら・・・ -緊急生体肝移植術を視野に、転院搬送する。 -血液浄化療法による肝補助療法に関しては、SPE+CHDFが第一選択か? →慣れた方法であり、人手負担も許容範囲か? →血液浄化による脳浮腫のリスクを避けたい。 (緩徐に行う。血液浄化量が足りないとの批判はそもそも血液浄化に確立した Evidenceが無いと反論したい) →ただし、SPE+CHDFによる肝性脳症改善に関してはEvidenceが弱い。 (血液浄化療法によるALSを全く施行しなくてもよいかもしれない。)

やってもやらなくてもいいような気がするが、HD/HF/HDFは 避けたほうが無難ではなかろうか? 更なるRCTの結果を待ちたいが、はたしていつになるやら。

結論

血液浄化による肝補助療法・・・

2010.8.24 ICU勉強会より引用・一部改変

今回出た結果では、結論は変わらないものだった・・・

ASFA: American society for Apheresis AAN: American academy of Neurology

ASFAとAANが2010年と2011年にそれぞれ神経疾患に対する血漿交換のguidelineを発表

この差は?

Myasthenia Gravis (重症筋無力症)

Myasthenia Gravis(重症筋無力症)の概要

重症筋無力症は神経筋接合部のシナプス後膜に存在する分子に対する臓器特異的自己免疫疾患で、筋力低下を主症状とする。 標的分子の約90%程度はアセチルコリン受容体であり、筋特異的チロシンキナーゼ(MuSK)を標的とする自己免疫疾患も明らかになってきている。 有病率は人口10万人あたり11.8人、患者数は15,100人(2006年) 男女比は1:1.7 女性では30歳、55歳にピーク 男性では10歳から65歳の間に好発年齢が広がっている 眼症状:眼瞼下垂、複視 四肢の筋力低下は近位筋に強い 嚥下障害や構音障害が目立つ患者もいる。 一般的に眼症状(眼瞼下垂、複視)が初発症状となることが多い。 重症例では呼吸筋麻痺により、低換気状態となる。(MGクリーゼ) (1) エドロホニウム (テンシロン) 試験 (2) Harvey-Masland試験陽性 (誘発筋電図によるwaning現象) (3) 血中抗アセチルコリン受容体抗体

Myasthenia Gravis(重症筋無力症)の治療

(1) 胸腺腫例は可能な限り、根治的な拡大胸腺摘除術を施行する。 (2) 眼筋型はコリンエステラーゼ阻害薬で経過を見る場合もあるが、根治的にはステロイド

療法が選択される。早期にステロイド薬を投与して治療することにより、全身型への進展を阻止できるとする意見がある。 (3) 全身型はステロイド療法や、併せて免疫抑制薬(カルシニューリン阻害薬:タクロリムス、

シクロスポリン)の併用がなされる。ステロイド薬は初期に大量に使うことが一般的である。投与方法は、治療施設・医師の判断で隔日投与もしくは連日投与が選択される。カルシニューリン阻害薬はステロイド薬に併用することで、投与ステロイド量を減少させることが期待できる。 (4) 難治例は、さらに血液浄化療法や免疫グロブリン大量療法、ステロイド・パルス療法が併用される。

難病情報センター重症筋無力症(公費対象)より抜粋

Evidence-based guideline update: Plasmapheresis in neurologic disorder Report of the Therapeutics and Technology Assessment Subcommittee of the American Academy of Neurology I. Cortese, MD et al

Neurology 2011; 76: 294-300

プラセボと比較したRCTは同疾患には存在しないことから、AANはrecommendation levelを低く設定している。 ・Myasthenic crisis ・MG prethymectomy (胸腺腫摘出前のPEX)

に対する血漿交換も、同治療をサポートするエビデンスに不十分としている。

Therapeutic plasma exchangeについて American Society of ApheresisのGuidelineでは・・・

J Clin Apher 2010; 25: 83-177

Plasma exchange for generalised myasthenia gravis (Review)

Cochrane Database Syst Rev 2011;4: CD002275

前向き試験が一つ存在している

Effectiveness of Prethymectomy Plasmapheresis on the Short-Term Outcome of Non-Thymomatous Generalized Myasthenia Gravis A Kamel et al

Egypt J. Neurol. Psychiat. Neurosurg., 2009, 46(1): 161-168

エジプトの単施設前向き介入試験 対象:胸腺腫摘出を控えたMG患者 Group 1: 摘出前にPEを施行 Group 2: control

MV期間 ICU滞在期間 がGroup1でいずれも短縮した。

しかし・・・

Effectiveness of Prethymectomy Plasmapheresis on the Short-Term Outcome of Non-Thymomatous Generalized Myasthenia Gravis A Kamel et al

Egypt J. Neurol. Psychiat. Neurosurg., 2009, 46(1): 161-168

血液透析!?

Cochrane libraryでもPEとしっかり紹介しているけど。

Cochrane libraryだから…と鵜呑みにせず、 しっかり原本を確認する必要がある!

Retrospectiveには胸腺腫摘出前にplasmapheresisを行うことで、クリーゼの発症予防、長期での寛解率向上につながったとする報告はある

Jpn J Thorac Cardiovasc Surg 2005; 53: 2-7

Comparing the Autoantibody levels and clinical efficacy of double filtration plasmapheresis, immnoabsorption, and intravenous immunoglobulin for the treatment of late-onset Myasthenia Gravis Jun-Feng Liu et al

Ther Apher Dial 2010; 14(2): 153-160

上海からの報告 高齢発症(late-onset, >50才以上)のMGに対して、 ①DFPP(24-48時間ごとにtotal 3回) ②IAPP(24-48時間ごとにtotal 3回) ③IVIG (0.4g/kg/day×5days) の3群に分けて、MG関連抗体の変化、症状改善、臨床的効果、有害事象について評価 観察期間:14日

※全群でPSL 0.6-0.8mg/kgがbasic treatmentとして行われている。

Comparing the Autoantibody levels and clinical efficacy of double filtration plasmapheresis, immnoabsorption, and intravenous immunoglobulin for the treatment of late-onset Myasthenia Gravis Jun-Feng Liu et al

Ther Apher Dial 2010; 14(2): 153-160

Titin抗体※、AChR抗体ともに治療

後に全群で有意差をもって低下をみせた。

※Tinin抗体:抗平滑筋抗体の一つで、近年高齢発症のnon-Thymoma MGの約40-90%にみられる

Comparing the Autoantibody levels and clinical efficacy of double filtration plasmapheresis, immnoabsorption, and intravenous immunoglobulin for the treatment of late-onset Myasthenia Gravis Jun-Feng Liu et al

Ther Apher Dial 2010; 14(2): 153-160

全群でQMG score※が改善 Remission timeはDFPP, IAPP群がIVIg群よりも短かった。

致死的なAdverse effectなし DFPP群とIAPP群は、apheresis modalityに伴う合併症がみられた(hypotension, hematoma)

※QMG score:運動機能・日常生活機能をScore化(13項目 0-39点)し、MGの治療効果を定量的に評価するもの

1か月後の臨床的改善度が両群で差がなかったことを示した。

Comparison of IVIg and PLEX in patients with myasthenia gravis D. Barth et al Neurology 2011; 76: 2017-2023

日本でも2011年9月よりヴェノグロブリンが保険適応

研究デザイン:RCT 中等度~重症(QMGS>10.5)の重症筋無力症(myasthenia gravis: MG)84例に対して、 ①IVIg 1g/kg/day2日間連続で投与(N=41) ②plasma exchangeを5%アルブミンで1.0倍置換で1日おきに5回実施(N=43)

有害事象に両群で有意差がないことも確認

参考)QMG score

日本神経治療学会 重症筋無力症治療ガイドライン(2003)より

重症筋無力症のまとめ

Placeboをコントロール群としたRCTはこれまでに存在しないが、以前よりplasmapheresisをその治療戦略として用いられてきた。 吸着療法やIVIgをplasmapheresisと比較したevidenceは存在し、同等の結果を得ていて、その簡便性などから今後はIVIg治療にシフトしていく可能性がある。 胸腺摘出前のplasmapheresisについて、その根拠となるエビデンスはないものの、retrospectiveには有用との報告もあり、使用を否定するものではない。 Crisisや重症例、および胸腺腫摘出前におけるplasmapheresisの有用性がより理解できるような研究が望まれる。

参考)MGにおける血漿交換療法の実際

本邦においてはMGに対するアフェレシス療法は急性増悪期、クリーゼ、胸腺摘出術前に行うこととなっている。 γグロブリン製剤が保険適応となったこと、およびアフェレシスとγグロブリン製剤の効果が同等であることから、アフェレシスの使用頻度は減少していくものと思われる。 アフェレシスは血漿吸着療法が用いられる。 イムソーバ TR-350(トリプトファンをリガンド、抗AChR抗体との高い親和性) 具体的治療スケジュール 最初の2週間で5~6回(intensive PP) 症状の軽快・寛解まで2~3週に1回(intermediated PP) さらに免疫抑制剤等長期使用例では2~6週間に1回施行(maintenance PP)

注意点 抗AChR抗体はIgGのサブクラスが1, 3であり吸着カラムの親和性が高いが、抗MuSK抗体陽性症例はそのIgGサブクラスが4で吸着しにくく、DFPP/PEの選択となる。

Guillain-Barre症候群

疫学 • GBSの発症は、報告により異なるが10万人当たり年間1人ないし2人とされている。どの年齢層にもみられ、男性が女性よりもやや多い。

• 3分の2の患者が発症前に上気道感染もしくは下痢を呈する。

• Campylobacter jejuniが最も多い感染(全体の30%)。Cytomegalovirusも多い(10%)

• 他にはEB virus、VZV、Mycoplasma pneumoniaeがある。

• 1976年にSwine fluと呼ばれるH1N1型のInfluenza Aに対して行われたVaccinationでGBS発症リスクが増大したことがある。

• 一方で近年2009年のH1N1型 Influenza Aに対するVaccinationではそのようなことはなかった。

症状・臨床経過

• 初期症状は – Numbness – Paresthesia (distal) – Weakness – Pain in the limbs

• 症状は進行性で両側性 • 筋力低下は下肢から出現し上肢に進展 • 重症例では呼吸筋麻痺 • 5割に顔面神経麻痺、3割に球麻痺、1割に外眼筋麻痺 • 半数に自律神経障害(不整脈、高血圧など) • Plateauに達するまでの期間は12時間~28日と幅広い。 • 発症前の上気道炎・下痢は3日から6週間前が一般

脱髄型

急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(AIDP)

軸索型

急性運動性軸索型多発ニューロパチー (AMAN)

急性運動感覚性軸索性ニューロパチー (AMSAN) N Engl J Med 2012; 366: 2294-304

診断 診断に必要な特徴 A.2肢以上の進行性の筋力低下、その程度は軽微な両下肢の筋力低下(軽度の失調をともなうこともある)から、四肢、体幹、球麻痺、顔面神経麻痺、外典神経麻痺までを含む完全麻痺までさまざまである。 B.深部腱反射消失、すべての深部反射消失が原則であるが、ほかの所見が矛盾

しなければ、上腕二頭筋反射と膝蓋腱反射の明らかな低下と四肢遠位部の腱反射の消失でも良い。 ほかに

診断を強く支持する特徴 臨床的特徴 進行・費確定対称性・軽度感覚障害・脳神経障害・回復・自律神経障害・神経症状の発症時発熱なし 髄液初見 電気生理学的所見

診断に疑いをもたせる特徴 診断を除外する特徴

蛋白細胞解離

• 細胞数が増加しないが蛋白だけが上昇する現象。感染症との鑑別で有用。

しかし・・・

• 発症1週間以内だと50%未満

• 発症3週間で77%

しか陽性にならない。

• HIV患者のGBSでは髄液細胞増加が見られることがある。

治療

• Supportive care

• Plasma exchange

• IVIG

Plasma exchange

• 歩行できないGBS患者 発症2週間以内で効果的とされている。

• 2012年のCochrane libraryで6つのRCTを評価したPEのReviewがある。

• Primary outcome – Time to recover walking with aid : two RCT (N=311)

– Time to onset of motor recovery (for mild GBS, i.e. able to walk with assistance at inclusion) : one RCT (N=220)

→いずれもPEのほうが保存的治療に比べ優位

(6) Deaths at one year This outcome measure could be obtained from six trials for a total of 649 participants (Farkkila 1987; Greenwood 1984; McKhann1985; Osterman 1984; Raphaël 1987; Raphaël 1997a). There were 15/321 deaths after one year in the treated group, compared to 18/328 in the control group, a non-significant difference (RR 0.86, 95% CI 0.45 to 1.65; see Analysis 2.2 and Summary of findings for the main comparison).

作用機序:自己抗体と補体の除去

血漿交換回数:保険適応上は月7回 3か月まで (Hughes Grade4以上) 軽症例(5m歩行可)では2回、中等度(歩行不可・介助要)~重度(人工呼吸)では4回が妥当とする報告あり 重症で4回と6回に差がなかった。

Ann Neurol 1997; 41: 298 置換液はアルブミン液(FFPとの比較で、効果に有意差なくFFPでAdverse effect↑という報告あり)

HughesのFunctional scale Grade 0 正常 Grade 1 軽微な神経症状を認める Grade 2 歩行器、またはそれに相応する器具なしで5m歩行可 Grade 3 歩行器、またはそれに相応する器具ありで5m歩行可 Grade 4 ベッド上、もしくは車いすに限定(介助があっても5m歩行不可) Grade 5 補助換気を要する Grade 6 死亡

IVIG

• 1988年にKleiwegらが初めてGBSに対してIVIGを使用した。

• すでにPlasma exchangeがGBSに対して治療コンセンサスを得られていたので、IVIGにまつわるStudyはPEとの比較。

• IVIGとPEで効果に差がないことが証明されている。 • 適応は歩行困難以上のGBS

• PEと同様、発症2週間以内で効果的。

IVIG単独、PE単独、PE+IVIG を比較した大規模無作為化コントロール試験 11か国38施設が参加 ①PE群:50ml/kg置換でPEを実施(合計250ml/kg置換) ②IVIG群 400mg/kg/dを5日間 ③PE+IVIG群:①群の治療→②群の治療 Major outcome: 4週間後のDisability grade, (arm grade, vital capacity)の改善(本報告はdisability gradeを紹介) Secondary outcome: mechanical ventilationが不要な割合 歩行可能となった割合 結果 Disability gradeは4週間後3群間で有意差が 見られなかった(下図) recovery trendも有意差がなし(右図)

Randomised trial of plasma exchange, intravenous immunoglobulin, and combined treatments in Guillain-Bare syndrome R A C Hughes et al

Lancet 1997; 349:225-30

結論 1)IVIGとPEで効果に有意差なし 2)PEとIVIGを併用しても効果に有意差なし。

Randomised trial of plasma exchange, intravenous immunoglobulin, and combined treatments in Guillain-Bare syndrome R A C Hughes et al

Lancet 1997; 349:225-30

Secondary outcome

人工呼吸器を必要とする割合(左図)

歩行可能となった割合(右図)

いずれも3群間で有意差を認めなかった。

Guillain Barre症候群に対する単純血漿交換と二重膜濾過法の後ろ向き観察研究 台湾の3施設で1987年1月から2000年6月までにGBSと診断された患者 ①Plasma exchange 39人 ②DFPP 63人 Plasma exchange, DFPPともに7~12日で5回施行 1回あたりの血漿処理量は約3000ml(50ml/kg) DFPPは置換液に5%Albumin, PEは5%AlbuminもしくはFFP

Plasma Exchange Versus Double Filtration Plasmapheresis in the Treatment of Guillain-Barre Syndrome Rong-Kuo Lyu et al

Ther Aher 2002; 6(2): 163-6

Plasma Exchange Versus Double Filtration Plasmapheresis in the Treatment of Guillain-Barre Syndrome Rong-Kuo Lyu et al

Ther Aher 2002; 6(2): 163-6

両群とも有意に臨床的改善を認めた PE群の方が2週間後のDisability score改善度がDFPPより高かった(P<0.05) PE群の方が効果が見

られるまでの期間がDFPPより短かった(P<0.05) 6か月後で致死率、disability scoreは両群で差が見られず

GBSにおける血漿交換療法のまとめ

GBSにおけるPlasmapheresisの有用性は以前より明確である。 PEの方がDFPPより短期的に有効とするretrospective studyも存在するが、長期的には両治療とも同等の効果であり、PE, DFPPともにGBSの治療として推奨される。 ただIAPPのDFPP, PEに対する非劣性について示されており、本邦ではIAPP(イムソーバ TR-350)を使用することが多い。 実際の使用)連日または隔日で4回使用 重症例・難治例ではさらに2回追加 (保険適応:一連につき月7回を3月間まで) IVIg, PE, IVIg+PE間で効果に差がなく、実際にはIVIg難治例でPlasmapheresisを検討することが多いか。

血漿交換に伴う合併症

最多は低カルシウム血症で(左図)、多くがFFP中のクエン酸によるもの。 (アルブミン置換でも1.8%で生じる)

カルシウム製剤の予防的投与とモニタリングで、この合併症は著しく防ぐことが可能。 FFP置換はアルブミン置換に比べadverse effectが2倍といわれている。

血漿吸着カラムとACE阻害薬

• 陰性荷電した吸着カラム(TR-350, LA-15など)

により、血管拡張作用のあるブラジキニンが誘導される。

• ACE阻害剤はブラジキニンの代謝を抑制する

作用をもちアナフィラキシー様の血圧低下を引き起こすため、ACE阻害薬は併用禁忌である。

アルブミン置換による単純血漿交換と凝固異常

一回のアルブミン置換による単純血漿交換で PT: 30%延長 aPTT: 100%延長 するが、aPTTは約4時間で、PTも約24時間で回復する。 AT-3やFibrinogenは2.5~4日間かかる。

TRALI

• 輸血を実施したのち急速に(6時間以内)肺障害を引き起こす疾患。

• HLA classⅠ・Ⅱへの抗体、ヒト好中球抗体(HNA)への抗体が関与。

• 輸血されたドナー抗体がレシピエントの好中球に結合し肺微小血管内に限局し、免疫複合体が補体活性→内皮細胞傷害→肺浮腫

• TRALIの発症率は輸血5000~190000回に1回と推定されている。

J Clin Apher 2011; 26: 2490-251

治療:supportive care(酸素投与、人工呼吸器管理など) ステロイド治療については有用性がはっきりしていない。 約80%の症例は48~96時間以内に改善する。 残り20%は速やかに改善せず、1週間以上かかる。 致死率は5~10%で、そのほとんどが発症数時間から数週以内にARDSにより死亡。

血漿交換療法と薬剤 血漿交換の時に、投与されている薬剤によって除去されやすいものとされにくいものがある。 左表は除去されやすい因子

1.薬剤投与をしてすぐに血漿交換を行う(体内分布する前に除去されてしまう) 2.蛋白結合率が高い※ 3.体内分布容量が小さい 4.血漿交換量、行う間隔、置換量

※血液透析の場合には蛋白結合率が低いものが除去される

Am J Kidney Dis 2008; 52(6): 1180-96

蛋白結合率が高く、分布容積が狭い主な薬剤

蛋白結合率が低く、分布容積が非常に大きい薬剤は除去されないので注意。 その代表例:Digoxin (投与後に血漿交換をしても、体内にあるDigoxinの1.5%しか除去されない)

薬剤の蛋白結合率、分布容積について把握しておくことが重要 (Semin Dial 2012; 25(2): 176-89に主な薬剤についてまとめたものがあり)

適応疾患 PE DFPP PA 留意事項

多発性骨髄腫 ○ ○ 1連につき週1回限度3月間に限る

マクログロブリン血症 ○ ○ 1連につき3か月に限り12回を限度

劇症肝炎 ○ ○ 一連につきおおむね10回を限度

薬物中毒 ○ 一連につきおおむね8回を限度

重症筋無力症 ○ ○ ○ 一連につき月7回を限度に3月間に限る

悪性関節リウマチ ○ ○ ○ 週1回を限度

全身性エリテマトーデス ○ ○ ○ 月4回を限度

TTP ○ ○ 一連につき週3回を限度に3月間に限る

重症血液型不適合妊娠 ○ ○

術後肝不全 ○ ○ 一連につきおおむね7回を限度

急性肝不全 ○ ○ 一連につきおおむね7回を限度

多発性硬化症 ○ ○ ○ 一連につき月7回を限度に3月間に限る

CIDP ○ ○ ○ 一連につき月7回を限度に3月間に限る

GBS ○ ○ ○ 一連につき月7回を限度に3月間に限る

天疱瘡 ○ ○ 一連につき週2回を限度に3月間に限る 重症度が中等度以上はさらに3月間算定

資料)日本におけるPE, DFPPの保険適応①

適応疾患 PE DFPP PA 留意事項

類天疱瘡 ○ ○ 1連につき週2回限度3月間に限る

巣状糸球体硬化症 ○ ○ 1連につき3か月に限り12回を限度

溶血性尿毒症症候群 ○ ○

家族性高コレステロール血症

○ ○ ○ 週1回を限度

閉塞性動脈硬化症 ○ ○ ○ 一連につき3月間に限り10回を限度

中毒性表皮壊死症 ○ ○ 一連につき8回を限度

スティーブンス・ジョンソン症候群

○ ○ 一連につき8回を限度

血友病 ○ ○

同種腎移植 ○ ○ 一連につき術前は4回、術後は2回を限度

慢性C型肝炎 ○ ○ 5回を限度

川崎病 ○ ○ 一連につき6回を限度

資料)日本におけるPE, DFPPの保険適応②

最後に

血漿交換療法の手法および、対象となる疾患の一部、血漿交換にまつわる合併症について触れた。 治療エビデンスと具体的血漿交換方法についてはAmerican Society for Apheresis(ASFA)が発表したGuideline(J Clin Apher 2010; 25: 83-177)に各疾患ごとに触れられている。 しかし、エビデンスレベルは殆どの疾患で低いといわざるを得ず(血漿交換にまつわるRCTは過去12年で18本のみ(Table Ⅱ))、個々の疾患・症例に対して判断せざるを得ない状況もある。

治療根拠となるエビデンスで使用されている血漿交換頻度より、日本では少ない頻度しか保険適応が認められていない疾患もあり、残念であり改善することを願ってやまない。(e.g. TTP)