iii. eu向け輸出に向けた特別な対応 - maff.go.jp · iii....

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参考資料 資料-17 III. EU向け輸出に向けた特別な対応 EU向けに水産食品を輸出するには、HACCPの認証取得が必要となる。また、平成 22 1 月からは新たにIUU漁業規則に基づく規制も開始されている。 そのため、来年度以降、波崎地区においてEU諸国向けに水産食品を輸出する上では、 この2つの規制をクリアすることが前提となることから、本資料においてその概略を紹介 する。 1.HACCPの概要と各認定施設の取組例 (1)対EU輸出水産食品の取扱要領の解説 ここでは、水産食品の対EU向け輸出についての取扱要領の解説を行う。 現在の規制に至る背景と概要を述べ、認定・登録施設の要件や手続きを中心にEU向け HACCPの概略についてまとめた後、一般的な水産HACCPとEU向けHACCPと の違いについて、各種参考資料に基づいて整理した。文末には、現在の日本における認定 施設も掲載した。 ①背景および概要 近年、更なる世界的な食品の安全性向上と品質管理の徹底が求められているが、その際 に頻繁に取り上げられる考え方が、「HACCP(ハサップ・ハセップなどと呼ぶ)」であ る。HACCPは、米NASAによって開発された「Hazard Analysis and Critical Control Point (危害分析・重要管理点方式)」の略称であり、食品の衛生上の危害発生の防止と適正 な品質を確保するため、原材料、加工、輸送、保管等の工程で管理点を設定し、監視と記 録を徹底する製造工程管理方式である。アメリカやEUなどでは、食品業界に導入が義務 づけられているほど、一般的に広く知られている。 日本においては、平成7年(1995 年)の製造物責任法(PL法)の施行や、平成8年(1996 年)の腸管出血性大腸菌O157による食中毒事件を契機に、食品の安全性の向上と品質 管理の徹底を求める声が消費者の間で高まり、HACCPに関連する事柄では、平成7年 に厚生省が食品衛生法を改正し、HACCPの概念を取り入れた『総合衛生管理製造過程 (通称マルソウ)』という制度を作り、その2年後にはHACCPの導入を支援する法律も スタートさせるなど、新しい食の衛生管理システムの導入に積極的に活動を行ってきた。 水産食品の輸出にあたっては、輸出先国が求める食品衛生基準等に従う必要がある。EU 域内では、動物由来の食品に対して、生産段階から加工流通段階までのフード・チェーン・ コントロールを求めている。輸入される水産食品に対しては、EU域内での動物由来の食 品に従った管理が行われていることを前提に、輸出の際には衛生証明書の添付を求めてい る。 日本ではEUの規制に従って、「対EU輸出水産食品の取扱要領」(平成 21 年6月改訂)、

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参考資料

資料-17

III. EU向け輸出に向けた特別な対応

EU向けに水産食品を輸出するには、HACCPの認証取得が必要となる。また、平成

22年 1月からは新たにIUU漁業規則に基づく規制も開始されている。 そのため、来年度以降、波崎地区においてEU諸国向けに水産食品を輸出する上では、

この2つの規制をクリアすることが前提となることから、本資料においてその概略を紹介

する。 1.HACCPの概要と各認定施設の取組例 (1)対EU輸出水産食品の取扱要領の解説

ここでは、水産食品の対EU向け輸出についての取扱要領の解説を行う。 現在の規制に至る背景と概要を述べ、認定・登録施設の要件や手続きを中心にEU向け

HACCPの概略についてまとめた後、一般的な水産HACCPとEU向けHACCPと

の違いについて、各種参考資料に基づいて整理した。文末には、現在の日本における認定

施設も掲載した。 ①背景および概要 近年、更なる世界的な食品の安全性向上と品質管理の徹底が求められているが、その際

に頻繁に取り上げられる考え方が、「HACCP(ハサップ・ハセップなどと呼ぶ)」であ

る。HACCPは、米NASAによって開発された「Hazard Analysis and Critical Control Point(危害分析・重要管理点方式)」の略称であり、食品の衛生上の危害発生の防止と適正な品質を確保するため、原材料、加工、輸送、保管等の工程で管理点を設定し、監視と記

録を徹底する製造工程管理方式である。アメリカやEUなどでは、食品業界に導入が義務

づけられているほど、一般的に広く知られている。 日本においては、平成7年(1995年)の製造物責任法(PL法)の施行や、平成8年(1996年)の腸管出血性大腸菌O157による食中毒事件を契機に、食品の安全性の向上と品質

管理の徹底を求める声が消費者の間で高まり、HACCPに関連する事柄では、平成7年

に厚生省が食品衛生法を改正し、HACCPの概念を取り入れた『総合衛生管理製造過程

(通称マルソウ)』という制度を作り、その2年後にはHACCPの導入を支援する法律も

スタートさせるなど、新しい食の衛生管理システムの導入に積極的に活動を行ってきた。 水産食品の輸出にあたっては、輸出先国が求める食品衛生基準等に従う必要がある。EU域内では、動物由来の食品に対して、生産段階から加工流通段階までのフード・チェーン・

コントロールを求めている。輸入される水産食品に対しては、EU域内での動物由来の食

品に従った管理が行われていることを前提に、輸出の際には衛生証明書の添付を求めてい

る。 日本ではEUの規制に従って、「対EU輸出水産食品の取扱要領」(平成 21年6月改訂)、

資料-18

厚生労働省医薬食品局食品安全部、農林水産省消費・安全局、水産庁)を定め、PP(一

般的衛生管理基準)やHACCPに当たる基準、EU諸国に向けて輸出する水産食品の証

明書の発行に関して、証明書発行機関の責務、関係事業者が遵守すべき要件、証明書発行

の手続などの必要事項が定められている。 ②EU水産HACCPの概略 EU水産HACCPは、基本的には食品の安全に関する世界規格となったコーデックス

食品規格の内容に則しているため、内容に大きな違いは無いが、前述の通り、基準をクリ

アし認定組織として認定を受ける必要がある。その際に重要になってくる4つのポイント

を中心に、EU水産HACCPの概要をまとめる。 ★EU水産HACCPの重要POINT★

1)担当機関の認定及び登録

ア) 対EU輸出水産食品を取り扱う施設等の要件

認定施設、認定施設以外の施設(登録施設)が満たさなければいけない要件を図表1に

まとめた。 また、上記全ての施設の共通項目として、各施設において取り扱われる個別の生鮮品、

冷凍品、解凍品及び加工品は、対EU輸出水産食品の運搬、包装及び梱包、保管・保管並

びに表示は、図表 2に示すように、該当する基準に適合する必要がある。

①EU向け輸出を行うには担当機関の認定及び登録が必須

②輸出の度に衛生証明書の発行が義務づけられている

③EU指令に基づく養殖魚介類使用物への残留モニタリング検査が必須

④EU向け水産食品輸出に関わる禁止等の規制事項

参考資料

資料-19

図表1 対EU輸出水産食品を取り扱う施設等の要件

手続

種類 施設 別添1の基準

検査基準

(別添1の第6)

HACCPを用いた

自主衛生管理

(別添1の第9、10)

認定 認定施設

(加工場、冷蔵庫など) 満たすこと 実施すること 実施すること

認定施設以外の対EU輸出水

産食品を取り扱う施設

(市場)

満たすこと 実施すること

登録 一次生産の関連作業以降の段

階の水産食品の生産、加工及

び流通等に携わる食品事業者

実施すること

資料)「対EU輸出水産食品の取扱要領」より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成

図表2 共通項目の基準

運搬 包装及び梱包 保存・保管 表示

別添1中 第2の3 第2の9 第2の10 第7

生鮮品

氷温付近の温度に維持。

活に関しては、食品の安全

性を確保、生存に悪影響を

与えないように輸送。

氷漬けの保存容器

は、耐水性があり、

氷解水が製品に接

触し続けないこと

氷漬けの氷解水が製品に接

触し続けないこと。

氷温付近の温度に維持。

活に関しては、食品の安全

性を確保、生存に悪影響を

与えないように輸送。

冷凍品

-18 度以下に保つこと。

(缶詰用に冷水中で冷凍

したものを除く)輸送途中

は、3℃以内の変動はOK。

船上で加工した冷

凍ブロックは、陸

揚げ前に適切に包

-18℃以下で保存。ただ

し、缶詰製造用は-9℃以

下でOK

解凍品 未加工の水産物は、氷温付

近の温度にて維持

未加工の水産物は、氷温付

近の温度にて維持

加工品 甲殻類・軟体動物は、氷温

付近の温度にて維持

甲殻類・軟体動物は、氷温

付近の温度にて維持

通常は梱包に直接

印刷となっている

が、輸送したり、別

の施設で取り扱っ

たりする場合(加工

や梱包など)は、コ

ンテナ・梱包の外面

に添付でもOK

資料)「対EU輸出水産食品の取扱要領」より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成

資料-20

イ) 認定・登録にかかる手続き

認定・登録の手続きは、下記のようなステップで行われる。 図表3 認定施設、登録施設の申請に関する手続き手順

手順 認定手続き 産地市場及び消費地市場の登

録手続き

養殖場等、EU向け冷凍船及び

生産漁船の登録手続き

1 都道府県知事等宛に申請

(必要書類の添付)

都道府県等衛生部局に

都道府県知事等宛で申請

(必要書類の添付)

都道府県水産部局に

都道府県知事等宛で申請

(必要書類の添付)

2 書類審査及び現地調査(別添3

のチェックリスト)

書類審査及び現地調査(別添3

のチェックリスト)

書類審査及び現地調査

(養殖場:別添5、冷凍船・生

産漁船:別添6のチェックリス

ト)*

3 地方厚生局との協議及び認定

注釈)*:やむをえない理由がある場合、外国で現地調査することも可能

資料)「対EU輸出水産食品の取扱要領」より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成

2)認定後の事務手続き

ア) 認定施設

輸出の都度、所定の様式で衛生証明書発行申請書を提出すると、指名食品衛生監視員か

ら、別途欧州委員会から示される様式により衛生証明書が発行される。この衛生証明書の

原本を付けることで、水産食品を輸出することが可能となる。 図表4 監視・検査の基準(別添1の第8要約)

製造及び流通の

監視

1. 陸揚げと最初の販売の衛生状態についての定期検査

2. 漁船及び陸上施設(産地市場及び消費地市場含む)

・定められた要件を満たしているか

・魚介類が適切に取り扱われているか

・衛生・温度基準が守られているか

・施設・機器・設備・従業員の衛生状況

3. 保存、輸送状態の検査

水産食品の検査 ヒスタミン、全揮発性窒素、鉛・カドミウム及び水銀、調理済み甲殻類及び軟体動物

の微生物学的検査、施設における使用水

注釈)基準を満たしていない場合、検体と同一ロットの水産物はEUに輸出できない措置が採られる。

資料)「対EU輸出水産食品の取扱要領」より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成

参考資料

資料-21

荷口と申請内容の確認の際には、必要に応じ、認定施設に対して(登録施設等は除く)、

指名食品衛生監視員による施設の監視や検査が行われる。 また、上記に加え、認定施設について、認定要件が適正に実施されていることを、4か月

に1回以上、同じく指名食品衛生監視員が確認する。この時、別添3のチェックリストを

使用する。監視等の結果、認定要件が適正に実施されていないと判断された場合は、改善

指導、衛生証明書発行の停止、認定の取消し等の措置が採られることになる。 なお、指名食品衛生監視員の監視及び検査等を拒否した場合には、認定が取り消されて

しまう。 さらに、6か月に1回以上、認定要件及び衛生証明書発行手続きと指名食品衛生監視員

による施設の監視が適正に実施されていることを確認するため、輸出水産食品検査担当官

による査察が実施される。適正に実施されていないと判断した場合は、改善指導、衛生証

明書の発行停止、認定の取消し等の措置が採られる。 イ) 産地市場及び消費地市場

登録要件が適正に実施されていることを、年に1回以上、指名食品衛生監視員が別添3

のチェックリストを元に確認する(次頁図表5を参照)。このチェックリストは、「構造設

備基準」、「運搬」など6つの大項目で構成されており、それぞれの大項目において、別添

1の基準に沿った形で項目が整理されており、全部で 126 の小項目(チェック事項)がある。 なお、指名食品衛生監視員の監視を拒否した場合には、登録が取り消される。監視の結

果、登録要件が満たされていないと判断された場合は、改善指導又は登録の取消の措置が

採られる。 さらに、登録要件及び、上記監視が適正に実施されていることを確認するため、輸出水

産食品検査担当官による査察が実施される。適正に実施されていないと判断した場合は、

改善指導又は登録の取消の措置が採られる。

資料-22

図表5 チェックリスト(別添3)のサンプル

(陸上で処理、加工等を行う施設の一般基準等)

資料)「対EU輸出水産食品の取扱要領」

参考資料

資料-23

ウ) 養殖場等、EU向け冷凍船及び生産漁船

登録した養殖場等、EU向け冷凍船又は生産漁船に対し、年に1回以上(ただし、1年

以上帰港しない漁船については、帰港の都度。)、都道府県水産部局の担当職員の監視を受

けなければならない。その際、図表6、又は図表7に載せたチェックリストにより、登録

要件が満たされていることの確認が行われる。1年以上帰港しないEU向け冷凍船の場合、

当該EU向け冷凍船の食品事業者が、年に1回以上、表7のチェックリストにより自主確

認を行い、所定の様式により、都道府県知事宛に報告を行う必要がある。 なお、監視が拒否された場合又は報告書の提出がない場合には、登録が取り消されるこ

とになる。監視の結果、登録した養殖場等、EU向け冷凍船及び生産漁船が、登録要件を

満たしていないと判断された場合は、改善指導又は登録の取消しの措置が採られる。 EU向け冷凍船及び生産漁船が他県へ帰港する場合は、登録を行った都道府県(以下「登

録都道府県」という。)において監視を受けることが原則だが、当該都道府県に帰港できな

い等のやむを得ない事由の場合には、入港先の都道府県において監視を受けることが可能

である。(登録を行った都道府県から入港先の都道府県に対して監視依頼が行われる。) EU向け冷凍船又は生産漁船を管理する食品事業者は、登録を受けたEU向け冷凍船又

は生産漁船が帰港する予定日の情報について、登録都道府県に対して所定の様式により報

告する必要がある。帰港予定日について虚偽の連絡を行った場合は、登録が取消される。 原則として、日本国内において監視を受ける必要があるが、1年以上日本に帰港しない

等のやむ得ない理由で、外国での監視等を希望する場合、理由書を添付の上、所管する都

道府県と相談を行い、都道府県が、理由が妥当と認める場合は、水産庁漁政部加工流通課

に外国における監視等を要請することができる。 EU向け冷凍船を管理する食品事業者は、運航計画について、所定の様式を用いて毎年

4月の第1週までに報告する必要がある。

資料-24

図表6 養殖場の管理についてのチェックリスト(別添5)

参考資料

資料-25

資料)「対EU輸出水産食品の取扱要領」

資料-26

図表7 EU向け冷凍船及び生産漁船についてのチェックリスト(別添6)

参考資料

資料-27

資料)「対EU輸出水産食品の取扱要領」

3)養殖魚介類を使用した水産食品等の残留動物医薬品等の取扱い【参考】

本件では養殖魚介類を対象としていないため必要は無いが、汎用的な資料との位置付け

として、参考情報として掲載する。 ア) 対象

EU指令 96/23/ECに基づき、対EU輸出水産食品(その原材料を含む)のうち養殖魚介類を使用したものに対し、養殖中に使用されるおそれのある動物用医薬品等の残留モニタ

リング検査を実施する必要がある。 イ) モニタリング計画及び実施要領の策定

都道府県知事等により、養殖魚介類を使用した水産食品(その原材料を含む。ただし、

輸入された原材料は除く。)をEUに輸出する認定加工施設に対して、養殖魚介類に関する

残留動物医薬品等のモニタリング計画及び実施要領が策定される。モニタリング計画は、

資料-28

養殖場や加工施設において動物用医薬品等の残留による危害の可能性についてモニタリン

グ検査を行うに当たって、対象とする魚介類の種類、化学物質、検査頻度等について暦年

単位(1~12 月)での実施計画を定めたものである。これは、別添7に示すモニタリング対象物質に関して、未承認の動物用医薬品等の不正使用、動物用医薬品等の残留基準への

適合状況、環境汚染物質による汚染状況などに関する実態調査(検査を含む。)を行った上

で策定される。また、実施要領は、上記のモニタリング検査を実施するに当たってのサン

プリング、検査実施機関までの輸送、検査の実施等に関する手順を定めたものである。 ウ) モニタリング検査の実施

養殖魚介類を用いて対EU輸出水産食品の加工・製造を行おうとする者(養殖魚介類加

工・製造者)は、都道府県知事等が定めたモニタリング計画及び実施要領に従って、残留

動物用医薬品等のモニタリング検査を実施する必要がある。モニタリング検査の実施に当

たっては、登録養殖場の所在地を所轄する都道府県知事等が指名する指名食品衛生監視員

がサンプリングを行い、検査は都道府県、保健所設置市又は特別区の試験検査機関もしく

は食品衛生法に定める登録検査機関により実施される。 エ) サンプリングの頻度等

検体は、対象魚介類の大きさや試験検査に必要な量を考慮し、1尾以上の魚介類とし、

化学物質が使われた可能性がある場合、検査対象物質及び検体とするように決められてい

る。 サンプリングは、食品事業者に実施日時を事前に予告することなく行われ、特定の日時

や曜日に偏らないよう計画される。登録養殖場の生産量に応じてサンプリング検体数、頻

度を決めることとなっているが、毎年、生産量 100 トンにつき、少なくとも1検体以上をサンプリングするよう、基準を設けられている。しかし、タンパク同化作用を持つ物質及

び欧州域内での未承認物質(Stilebenesや Steroid等)は、総サンプリング数の1/3の検体について検査を行い、抗菌性物質などの動物用医薬品や環境汚染物質、日本で使用が認

められている動物用医薬品、ホルマリン・マカライトグリーンなどの動物用医薬品以外の

薬剤は、総サンプリング数の2/3の検体について、登録養殖場における出荷段階または、

加工施設又は卸売市場の段階(鮮魚介類の状態で、かつ、結果が陽性の場合に生産した登

録養殖場への遡り調査が可能であること)で検査を行う必要がある。詳しいモニタリング

対象物質の一覧は、別添7を参照のこと。なお、サンプリングは、登録養殖場内の全ての

養殖ポイントの 10%以上のポイントから行うことになっている。 モニタリング検査において、基準を超える等の異常値が見られた場合、当該魚介類の原

材料への使用を中止するよう指導され、原因究明・必要な改善措置を講ずる必要がある。

参考資料

資料-29

図表8 養殖魚介類を用いた対EU輸出水産食品中の残留動物用医薬品等の

モニタリング対象物質)(別添7)

資料)「対EU輸出水産食品の取扱要領」

Ⅰ タンパク同化作用を持つ物質及び欧州域内での未承認物質

(1)Stilbenes, stilbene derivatives, and their salts and esters

(2)Steroids

(3)次に掲げる化学物質

① Aristolochia spp. and preparations thereof,

② Chloramphenicol

③ Chloroform

④ Chlorpromazine

⑤ Colchicine

⑥ Dapsone

⑦ Dimetridazole

⑧ Metronidazole,

⑨ Nitrofurans (furazolidoneを含む )。

⑩ Ronidazole

Ⅱ 動物用医薬品(動物用医薬品として使用される可能性のある未承認医薬品を含

む )及び環境汚染物質 。

(1)抗菌性物質(sulphonomides, quinolonesを含む )。

(2)その他の動物用医薬品

Anthelmintics

(3)環境汚染物質等その他の化学物質

① Organochlorine compounds including PCBs

② Chemical elements

③ Mycotoxins

④ Dyes

Ⅲ 我が国で使用が認められている動物用医薬品

薬事法(昭和35年8月10日、法律第145号)及び動物用医薬品の使用の規制に関する省令(昭和

55年9月30日、農林水産省令第42号)において魚介類の養殖に使用が認められている動物用医薬

Ⅳ 動物用医薬品以外の薬剤

(1)ホルマリン

(2)マラカイトグリーン等

資料-30

オ) EU向け水産食品輸出に関わる禁止等の規制事項

図表9 規制する魚病名と感受性種(別添4の注記部分)

魚病名 感受性種

EUS

(流行性潰瘍症候群)

属名:カトラ属、タイワンドジョウ属、Mastacembelus、ボラ属、

Puntius and Trichogaster

EHN

(流行性造血器壊死症) レッドフィンパーチ、ニジマス

TS

(タウラ症候群)

ノーザンホワイトシュリンプ(Penaeus setiferus)、ブルーシュ

リンプ(P.stlirostris)、バナメイエビ(P.vannamei)

YHD

(イエローヘッド病)

ノーザンブラウンシュリンプ(Penaeus aztecus)、ピンクエビ

( P.duorarum) 、 ク ル マエ ビ ( P.japonicus )、 ウシ エ ビ

(P.monodon)、ノーザンホワイトシュリンプ(P.setiferus)、ブル

ーシュリンプ(P.stylirostris)、バナメイエビ(P.vannamei)

VHS

(ウイルス性出血性敗血症)

大西洋マダラ、大西洋ニシン、ブラウントラウト、マスノスケ、ギン

ザケ、グレイリング、ハドック、太平洋マダラ、太平洋ニシン、パイ

ク、ニジマス、キングクリップ、スプラット、ターボット、コレゴヌ

IHN

(伝染性造血器壊死症)

ニジマス、マスノスケ、ベニザケ、シロザケ、ヤマメ、ビワマス、ギ

ンザケ、大西洋サケ

ISA

(伝染性サケ貧血症) 大西洋サケ、ニジマス、ブラウントラウト

KHV

(コイヘルペスウイルス病) コイ

WSD

(ホワイトスポット)

すべての十脚目甲殻類(十脚目)

資料)「対EU輸出水産食品の取扱要領」

図表 10 使用可能な洗浄剤及び消毒剤等のリスト(別添 10)

Ⅰ 洗浄剤 1 陰イオン界面活性剤 anion surfatants 2 水酸化ナトリウム希釈液 sodium hydroxide

Ⅱ 消毒剤 1 パラクロロメタキシレノール p-chloro-m-xylenol 2 イソプロピルメチルフェノール isopropyl-methlphenol 3 アルコール製剤 ethanol 4 次亜塩素酸ナトリウム sodium hypochloride

5 ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩 polyhexametylene biguanidine hydrochloide Ⅲ 両方の用途 1 塩化ベンザルコニウム benzalkonium chloride 2 アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩 alkyldiaminoethyl glycine hydorochloide 3 ジアルキルジメチルアンモニウムクロライト dialkyldimethyl anmonium chloride IV 上記以外の洗浄剤及び消毒剤等 上記以外の洗浄剤及び消毒剤等を使用する場合には、当該品が EU 域内においても同様の用途で使用が認

められていることを書面にて確認をとった上で使用すること。

また、この確認書面 については、指名食品衛生監視員の求めに応じて提示すること。 資料)「対EU輸出水産食品の取扱要領」

参考資料

資料-31

図表 11 EUに輸出できない魚類リスト(別添 12)

1.ふぐ毒を含有するおそれのある魚種

フグ科 Famille CANTHIGASTERIDAE ハリセンボン科 Famille DIODONTIDAE

マンボウ科 Famille MOLIDAE

マフグ科 Famille TETRAODONTIDAE

2.シガテラ魚による健康被害を起こすおそれのある魚種

アカマダラハタ Epinephelus fuscoguttatus(Forsskal) アマダレドクハタ Plectropomus oligacanthus(Bleeker) バラハタ Variola louti(Forsskal) バラフエダイ Lutjanus bohar

フエドクタルミ Lutjanus gibbus(Forsskal)

オニカマス Spyraena barracuda(Walbaum)(Picuda)

3.ワックスによる健康被害を起こすおそれのある魚種 アブラソコムツ Lepidocybium flavobrunneum バラムツ Puvettus 4.ビタミンAによる健康被害を起こすおそれのある魚種

イシナギ Stereolepis ischinagi 資料)「対EU輸出水産食品の取扱要領」 ③一般的な水産HACCPとEU水産HACCPの違い ここまでは、EU水産HACCPオリジナルの内容を中心に概要をまとめたが、ここで

は、特にEU水産HACCPと一般的なHACCPの基準について比較し、EU水産HA

CCPを取得・維持する際に、どういった点に気をつけるべきかについてまとめる。 図表 12 各地のHACCP基準と実施内容

資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社作成

HACCP基準 HACCP導入 監視 衛生証明書

日本国内 任意(承認) なし なし

対米輸出

一般的な

HACCPの内容

(原理原則) 必須(認定) 輸出先の要求があれば、モニ

タリング記録を開示 必要なし

対EU輸出

対象範囲が広く、

基準が細かく設定さ

れている

必須(認定)

各国の法律で規定

輸出時に毎回。EU指令に基

づくモニタリング検査要。

規定のチェックリストあり。

輸出の都度に

必須

資料-32

表 12に、日本国内、対米、対EU輸出それぞれのHACCPの位置づけと実施内容をまとめた。HACCPの基準に関しては、日本・アメリカが一般的な原理原則を要求してい

るのに対し、対EUでは非常に細かく基準が定められている点が大きく異なっている。「対

EU輸出水産食品の取扱要領」の別添1には、「構造設備及び衛生管理等に関する基準」と

題し、【別添1 第1~8】に、一般的衛生管理プログラム(PP)に該当する部分につい

て、また【別添1 第9・10】に、HACCPの導入・実施に関する詳細な記載がされている。マルソウと比較して、後者に大きな違いはないが、前者の基準は、対象範囲が広く、

基準も細かいものとなっている。また、非常に細かいチェックリストも定められており、

これを元に担当者による監視が定期的に行われる。これは、EU各国がHACCPの導入

を法律で必須と定めており、非常に厳しくモニタリングを行っているためだと考えられる。 ここでは、一般的水産HACCPの代表としてマルソウと、「対EU輸出水産食品の取扱

要領」の内容を比較する。厚生労働省が発行している、「食品等事業者が実施すべき管理運

営基準に関する指針(ガイドライン)と、社団法人大日本水産会が発行している「食肉ね

り製品のHACCP計画の作成」をマルソウの内容として参考に、比較項目は、一般的衛

生管理プログラムの 10項目に加えて、運搬、記録、表示、HACCP導入、HACCP実施を加えた 15項目とした。

図表 13 一般的なHACCPとEU水産HACCPの比較

項目 一般的HACCP

(マルソウ) EU水産HACCP

1 施設設備の衛生管理

と保守点検

施設設備としては一般的に、水産

食品加工工場を対象としており、

その天井や内壁、床、出入り口な

どについての基準のみ。

それに加えて、「漁船の構造設備」、「漁

船の衛生管理」「養殖場等における魚病

の衛生管理」などに関しても基準が設け

られており、一次水産に関わる領域も管

理対象。(別添1:第1の3~5)

製品の特徴に合わせて個別基準を設定。

(水産HACCPでは、漁船を含む、陸

揚げ時及びその後の水産物を取り扱う

施設に関しても明記。別添1:第3、第

4)

2 従業員の衛生教育 新規採用時に実施。定期的に再教

育を行う。

マルソウと同じく、実施要。施設のHA

CCP担当者は、HACCP原則の適用

に関して、適切な研修を受けなければな

らない。(別添1:第2の12)

3 機械器具の衛生管理

と保守点検

対象施設内の設備。特に食品に触

れるものに関しては十分に管理

するように記載。

マルソウとほぼ同じ。必要に応じて機器

に制御装置を備える。(別添1:第2の

4)

4 そ族・昆虫の防除 侵入、発生防止のための衛生管理

事項を明記。

詳細な記載はないが、食品施設に関する

一般基準(別添1:第2の1)に記載あ

り。

5 使用水の衛生管理 水道水以外の水の場合検査要。 水産物の処理、加工及び製造について使

用する水の残留遊離塩素濃度は 2pp

m以下であること となっている。

使用する水に対して、水道法の規定に適

合していることの検査を行う。(別添

1:第2の6、第6の7)

参考資料

資料-33

6 排水および廃棄物の

衛生管理

飛散水による汚染防止、排出水の

水質測定、廃棄物の取扱い及び保

管ルールに言及。

全ての廃棄物は、関連法規等に従って、

衛生的かつ環境に配慮した方法での処

分が必要。(別添1:第5)

7 従業員の衛生管理 検便や細かい服装・行動指示に関

する記載

マルソウのような記載はない(別添1:

第2の7)

8 食品等の衛生的な取

ヒスタミンに関する基準有り 使用する工程は、国際的に認められた基

準(低温殺菌法、UHT法、滅菌法等)

に準拠が必要。(別添1:第2の8~11)

ヒスタミンに関する基準以外に、全揮発

性窒素、寄生虫、鉛・カドミウム及び水

銀、調理済み甲殻類及び軟体動物の微生

物学的検査に関する基準が設けられて

いる。(別添1:第6)

9 製品の回収プログラ

フローなどで明記 輸出を行うことを前提にしているから

か、特に記載なし

10 製品等の試験検査に

用いる設備等の保守

管理

試験検査計画の策定~実施・検証

~保守点検について、詳細管理策

あり。

製造者が製品検査の信頼性確保(GL

P)が行われている検査施設にて行うこ

と。(別添1:第6)

11 記録に関して HACCPの原則に基づき、プラ

ンどおりに実施された証拠とし

て維持(モニタリング結果、改善

処置結果、一般的衛生管理実施結

果、検証の結果)。

HACCPに講じた措置の記録を維持

管理し、都道府県知事及び納入先の要請

に応じて、情報を提供すること。

また、魚介類に関わる場合、与えた肥料

の種類及び原産地や行った検査に関す

る報告書などの記録が必要。(別添1:

第1の2)

12 運搬に関して 工場内外で車両を兼用しない。

冷凍の水産物は製品温度を-18℃以下

に保つ(3℃以内の変動は可)等、温度

基準が明記されていたり、食品以外のも

のを一緒に輸送したり、別の食品を同時

に輸送したりする場合は製品を分離す

るなど、輸送時の置き場所にも基準があ

る。(別添1:第2の3)

13 表示基準 JAS法、食品衛生法、計量法等

に準拠し、表示。

出荷国及び施設認定番号を明示する必

要有り。(別添1:第7)

14 HACCPの導入 7原則、12 手順。推奨されては

いるが、導入は任意。

手順・原則に大きな違いは無し。ただし、

輸出には認定が必須なため、必ずHAC

CPを導入しなければいけない。(別添

1:第10)

15 HACCPの実施 導入は任意のため、実施に関する

記載無し

HACCP実施のための5原則を明記。

チェックシートが存在(別添3)。自主

監視ではなく、認定機関の指名食品衛生

監視員による検査が必要。(別添1:第

8・第9)

資料)「対EU輸出水産食品の取扱要領」等より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成

資料-34

④認定施設 厚生労働省によると、平成 21年 5月 19日時点で、21施設が認定を受け、水産食品のEU向け輸出を行っている。

図表 14 対EU向け輸出水産食品 認定施設一覧(平成 21年5月 19日現在)

認定番号 自治体 施設名 輸出品目

1 0137001 函館市 北海道ファインケミカル

株式会社

精製魚油

高度精製魚油

2 0173001 北海道 株式会社マタツ水産 冷凍帆立貝柱

冷凍帆立卵付貝柱

3 0188001 北海道 マルキチ(株) 冷凍ほたて卵付貝柱(加熱用)

冷凍ほたて貝柱(生食用)

4 0188002CS 北海道 マルレイ(株) (冷凍・冷蔵業)

5 0188003 北海道 株式会社マルキチ第二工場 冷凍帆立卵付貝柱(加熱用)

6 0192001 北海道 寺本商店食品工場 冷凍ほたて卵付貝柱

冷凍ほたて貝柱

7 0251001 青森市 成邦商事株式会社 冷凍ほたて卵付貝柱

脱殻済みほたて貝冷凍貝柱

8 0452001 宮城県 極洋食品株式会社

第2工場 冷凍食品(えびフリッター)

9 0869001 茨城県

日本水産株式会社

ファインケミカル総合工場

つくば工場

DHA Rich Fish Oil

10 1255001 千葉県 株式会社紀文食品

東京工場 魚肉ねり製品

11 2260001 静岡市 株式会社 高栄

興津工場

冷凍さめ

冷凍まぐろ

12 2704001 大阪市

(株)セントラル・コール

ド・ストレージ第5冷凍倉

カニ風味かまぼこ

13 2866001 姫路市 ヤマサ蒲鉾株式会社

夢前第2工場 蒲鉾

14 2866002 姫路市 ヤマサ蒲鉾株式会社

夢前第1工場 蒲鉾

15 2866003 姫路市 ヤマサ蒲鉾株式会社

夢前第3工場 蒲鉾

参考資料

資料-35

16 3404001 広島市 株式会社大崎水産 蒲鉾

17 3404002CS 広島市 協和冷蔵株式会社 (冷凍・冷蔵業)

18 3855001 愛媛県 森松水産冷凍株式会社

チルドハマチフィレ

チルドハマチロイン

チルドハマチドレス

冷凍ハマチフィレ

冷凍ハマチロイン

19 4367001 熊本県 株式会社ブリミー加工場

生鮮養殖ハマチフィレ

生鮮養殖ハマチドレス

生鮮養殖ハマチロイン

冷凍養殖ハマチフィレ

冷凍養殖ハマチロイン

生鮮養殖カンパチフィレ

生鮮養殖カンパチドレス

生鮮養殖マダイラウンド

生鮮養殖シマアジラウンド

生鮮養殖マアジラウンド

20 4554001 宮崎県 黒瀬水産株式会社

食品加工施設

生鮮養殖ぶりフィレ/ドレス

冷凍養殖ぶりロイン

21 4656001 鹿児島県 東町漁業協同組合

産地付加価値向上施設

冷凍養殖ハマチラウンド/フィレ

生鮮養殖ハマチラウンド/フィレ/セミ

ドレス/ドレス

資料)厚生労働省医薬食品局 認定施設一覧

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/jigyousya/taieu/3.html

【参照法規】 ○対EU輸出水産食品の取扱いについて

(平 21.6.4食安発第 0603001号・ 21消安第 2148号・ 21水漁第 175号)

○対EU輸出水産食品に係る衛生証明書について(平 21.6.22事務連絡)

【参照文献】 ○厚生労働省「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)」

○社団法人 大日本水産会「食肉ねり製品のHACCP計画の作成」

資料-36

参考資料 別添1(EU向け) 施設の構造設備及び衛生管理等に関する基準 目次

第 1 一次生産及びその関連作業における構造設備及び衛生管理等に関する基準

1.衛生管理基準

2.記録の管理

3.漁船の構造設備に関する基準

4.漁船の衛生管理に関する基準

5.養殖場等における魚病の衛生管理に関する基準

第 2 食品事業者(第1で規定されている一次生産及びその関連作業を除く。)における構造設備及び衛生

管理等に関する基準

1.食品施設に関する一般基準

2.食品の処理・加工等を行う区画に関する個別基準

3.運搬に関する基準

4.機器等に関する基準

5.食品廃棄物に関する基準

6.使用水に関する基準

7.従業者の衛生管理に関する基準

8.食品の取扱に関する基準

9.包装及び梱包に関する基準

10.水産物の保存基準

11.加熱処理に関する個別基準

12.研修

第 3 陸揚げ時及びその後の水産物を取り扱う施設に関する個別基準

1.水産物の積卸し及び陸揚げに関する基準

2.産地市場及び消費地市場に関する基準

3.船上での冷却が不可能な場合

4.監視の実施

第 4 水産物を取り扱う施設(漁船を含む)に関する個別基準

1.生鮮水産物に関する基準

2.冷凍水産物に関する基準

3.機械を使用して分離する水産物に関する基準

4.寄生虫に関する基準

5.魚油に関する基準

第 5 加工水産物に関する個別基準

甲殻類及び軟体動物の調理(3項目)

第 6 水産物の衛生基準

1.水産物の官能調査

2.ヒスタミン

3.全揮発性窒素

4.寄生虫

5.鉛、カドミウム及び水銀

6.調理済み甲殻類及び軟体動物の微生物学的検査

第 7 表示基準

表示基準(7項目)

第 8 都道府県知事等による監視等の基準

1.水産食品の製造及び流通に関する監視

2.水産食品等の検査

3.その他

第 9 HACCPの実施

HACCP実施における原則(5項目)

第 10 HACCPの具体的実施基準 (= HACCP一般原則及び導入手順)

参考資料

資料-37

(2)対EU輸出水産食品取扱認定施設における対策例

輸出の第一段階として必要な、施設の認定・登録を行う際に発生する課題と対策について、参考資料やすでに認定を取得している施設に対する聞き取り調査を行った結果をまとめた。 ①波崎地区のEU向け水産物輸出の流れ 波崎地区がEU向けに水産物を輸出する際のフローと、それぞれの段階で求められる要件及び想定される課題や問題点などを以下にまとめる。 なお、各項目における詳細な情報に関しては、別途記載されている資料を参考されたい。

図表 15 波崎地区 EU向け水産物輸出の流れ

資料)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社作成

漁船

波崎漁港

加工施設

(冷凍・梱包)

EUへ

輸出

衛生証明書

取得

市場 ★今回、波崎地区は、加工業者及び漁船の双方が登録・認定されていれば市場を登録施設としなくてもよいとなっているため(保健所の認可済)、

市場を登録申請しなくともEU輸出には問題ない。

捕獲

水揚

運搬

担当者チェック

輸出準備

【管轄】茨城県農林水産部漁政課

【管轄】茨城県保健福祉部生活衛生課

■冷凍サバラウンドのポーランドへの輸出が第一候補

■輸出の際には、IUU漁業規定に準拠する必要がある

■輸出の度に添付が必須となる

■輸出先の要求として、大きさ、油の割合等の基準がある

■「対EU輸出水産食品の取扱いについて」 別添6のチェックリストに適合するように、対応が必要

■社団法人大日本水産会発行の「生産段階品質管理ガイドライン」に参考情報あり

■「対EU輸出水産食品の取扱いについて」 別添1に適合し、施設認定および倉庫登録を行うために、

HACCPシステムへの対応が必要

・EUで求める衛生基準とは?

・漁船の対応には具体的にはどこをどう変え

ればよい?

など

詳細は②

を参照

・水揚げや運搬時に工夫していることは?

・施設の設備はどのような事に注意すべき?

・ゾーニングはどのように行えばよい?

・検査についての対応は?

・従業員教育や心構えは?

など

詳細は③

を参照

施設の認定(登録)に向けて、

よくある課題・問題点など

登録

認定

不要

■水揚げしたサバをトラックに載せたストッカーに入れ、出来るだけ素早く蓋をする

■病変、変死等が無いことを目視確認し、食用に適さないものは除去する

資料-38

②漁船に関する要求事項及びポイント 漁船に関する基準やポイントについて、社団法人大日本水産会・社団法人海洋水産システム協会発行の、「生産段階品質管理ガイドライン」より、波崎地区に関係する部分を抽出し、以下にまとめた。

図表 16 漁船に関する要求事項及びポイント一覧

カテゴリ 要求事項 補足情報

水産物が接触する表面は、なめらかで洗浄しやすく、腐食しにくい材質であること

・FRPやアルミニウム、ステンレスの場合問題なし(鉄製品、木製品はNG)

・ただし木製のものでも、表面に堅牢で毒性が無いFRPやエポキシ樹脂等のコーティングや硬質ゴムラバー等

を用いれば使用可

水産物を取り扱う場所には、薬品や油及び汚物、汚水等を近づけないこと ―

取水口は、汚染を引き起こさない場所にあること 取水口は、排水口(機関室舷側喫水線上に設置)からできるだけ離して、機関室内船幅又は船長方向の船底に設置

することが必要

1 漁船の構造設備

作業に使用する器具類は、耐腐食性で、洗浄や消毒が容易であること

(手鉤や包丁等の柄が木製の場合、適切な材質で被覆すること)

・アルミニウムやステンレス、カーボンファイバー等、錆びない材質であれば問題なし

・柄が木製の場合は、プラスチック等で適切に被覆することが必要

漁獲された水産物は、魚体に傷をつけないよう、迅速・丁寧に取り扱う EU輸出用のサバは速やかにタモでストッカーに移すことで対応可能

水産物は、漁獲後、できるだけ滞留時間を短くし、日光等の熱による影響を避ける

漁獲直後に、

①漁獲物の迅速な前処理、②漁獲物の急速な冷却保蔵 等を実施することで品質の維持を図る

漁獲物の滞留時間が長くならないように気をつける

水産物の保管区域や容器は、清潔に保ち、燃料やビルジ等によって汚染されないようにする

・使用ごとに洗浄することにより、清潔を保つ

・保守点検を定期的に実施、破損又は著しい汚れ等には適切な補修又は取替え

・各種ポンプの発停やバルブの開閉とホースの取扱い等に十分な注意が必要

漁獲された水産物は、速やかに冷却する ―

一般衛生管理

水産物の洗浄や保管に使用する水は、飲用適の水または清浄海水を使用する 清浄海水:食品の衛生状態に影響を与える量の微生物、有害物質及び有毒海洋

プランクトンを含んでいない海水及び汽水

水産物の処理作業に使用した場所や容器、器具等は、常に清潔に保ち、「一般衛生管理記録簿」に、適切

に記録及び保管する ―

汚染の原因となる動物や害虫は駆除し、駆除日を「一般衛生管理記録簿」に、適切に記録及び保管する

一般に、動物は鼠族、害虫はゴキブリ等が対象になっており、鼠族に対しては入港時に鼠止めを設置するほか、

航海毎又はドック内にそれらの駆除を行い、実施結果を漁船の一般衛生管理記録簿に記録・保管することが必要

となる

有害物資は、水産物の取扱い区域から隔離された場所に適切に保管する 有害物資の適切な保管とは、①施錠できる棚又は倉庫、②使用又は搬出した物資の品名別数量の記録・保管、

③品名別在庫数量等の記録・保管

乗組員の清潔度と、健康チェックは毎日、健康診断は毎年1回以上行い、「一般衛生管理記録簿」に、適

切に記録及び保管する

健康状態のチェック:下痢、嘔吐、発熱の有無、清潔度:清潔な着衣(雨具含む)及び専用長靴の着用や手洗い

これらの毎回実施が必要

2 漁船の

衛生管理

管理記録等

漁獲物は、必要な場合、漁獲から水揚まで、漁場毎に、その滞留時間及び保持温度等を「漁船操業記録

簿」に適切に記録及び保管する ―

トイレはいつも清潔に 以下の3点に特に注意

①使用後の洗浄消毒等が容易な流水設備、②便所区間の遮蔽(しゃへい)、③便所区画の清潔保持等が必要

怪我や体調不良(嘔吐・下痢や発熱等)時は、すぐに作業を中止し、速やかに治療を行うこと

作業は、清潔な着衣や長靴で、手指等を消毒して取組むこと 液体石鹸や消毒液などを利用する

作業中の飲食、禁煙、放尿、放痰は禁止、専用の着衣や長靴以外で魚に触る等の不潔行為もダメ ― 3 乗組員の衛生管理意識

EU向け輸出水産食品の取扱要領、ガイドライン、その他水産食品の一般衛生管理に関する教材又は冊

子が船内に保持され、

従業員に周知されていること

4 漁獲物の品質保持 「鮮度落ち」、「細菌」、「有害な生成物質」には気をつける 鮮度落ち:腐敗、細菌:腸炎ビブリオ、有害な生成物質:ヒスタミン に注意

いずれも、時間経過と温度管理、容器等の汚染防止を徹底すること

資料出典)「生産段階品質管理ガイドライン」より、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社作成

参考資料

資料-39

図表 17 一般衛生管理記録簿サンプル

資料出典)「生産段階品質管理ガイドライン」より

資料-40

図表 18 漁船操業記録簿サンプル

資料出典)「生産段階品質管理ガイドライン」より

参考資料

資料-41

③認証取得時の課題・指摘事項と対策 以下に、今回ヒアリングを行った各社認定施設が、認証取得に際して解決した課題や指摘された事項と、その解決のために行った対策をまとめた。

図表 19 課題・指摘事項と対策一覧

課題カテゴリ 課題・指摘事項 対策 費用(-は不明)

水揚げ・搬送時の衛生管理が十分でない ・計量台、計量器、ストッカーはとにかく清潔に保ち、フォークリフトで素早く加工場に運ぶ

・船内にて魚をストッカーに保存し、ストッカーをクレーンにて陸揚げ -

水揚げ後、工場に入るまでにストッカーの底が汚れる ・ストッカーの底を洗う装置を作成 -

ストッカーの蓋が1枚蓋だと、置き場所に困り使いにくい ・蓋付きストッカーの蓋を3つ折りタイプに -

1 水揚げ・搬送

近距離ではあるものの、異物混入の可能性がある ・ストッカーに必ず蓋をする -

床の痛み また、通常の床は薄いため、すぐにはがれてしまう ・床の張り替え。材料には厚めの床を敷き、はがれてこないように工夫 1000万円

原料搬入から出荷までに、重複する動線がある ・施設の動線計画を徹底し、必要な箇所は改造を行い、動線が重ならないように設計

また、どうしても交差してしまうところは、時間差でかわせることを保健所等の担当者に説明 -

白衣やタオルが一緒に洗濯されており、専用の場所がない ・洗濯場を設置し、白衣用1台、タオル用2台の専用機を導入

・レンタルユニフォームを着用し、洗濯は業者に任せ、手袋等は使い捨て

120万円/台

ストッカーの洗い場に天井がない ・屋根を増設(スレート) 2000万円

外での喫煙が衛生管理に影響する ・分煙のため喫煙室を設置 -

ステンレスの天井では暗くなってしまう ・ガルバリ鋼板の天井に変更 -

手洗い後にドアノブを触らないと清潔区に入ることができない ・ドアノブのないドアを導入し、手で開けられないようにした -

2 施設

手洗い場の水道に給湯機がないため手洗いが不十分となる可能性がある ・給湯機を設置 数百万円

包丁やスコップがさびてしまう ・樹脂製包丁・樹脂製スコップ・ステンレス製スコップに変更

さびないだけでなく、耐久性も向上したため、長く使えるようになった -

布製のタオルでは細菌の発生を抑制できない ・ペーパータオルを使用 -

壁の継ぎ目に凹があり、コーキングで埋めていたが、カビや汚れを防げないと指摘 ・凸型のアルミのカバーを作成し、パネルの継ぎ目を床から天井までカバーした -

壁の漆喰部分にカビが発生する ・パネルに交換 - 3 カビ・細菌・錆

密閉空間が多いため、カビが発生する(壁や床など)

・フィルターを通して外気を入れ、2~3時間で空気の入れ換えを行う

・作業終了後も3時間程度エアコンを使用し、乾燥させる

・同じステンレスでも、耐食性能の高いものを使用

機械のなかで一部アルミを用いているが、使用後の水洗いを怠らないようにしている

-

天井の電気がむき出しになっているため、そこに溜まった埃が落ちる ・電気にカバーをし、埃が溜まらないようにする -

窓枠に埃がたまって落ちる ・窓の下の部分を斜めにし、物理的に埃が溜まらないように工事指示 - 4 埃

壁と床の継ぎ目に埃が溜まる ・壁と床の継ぎ目をRにする -

排水溝がさびている ・ステンレスで作り直し - 5 排水

隅に汚れが溜まりやすい ・形状を角形からU字型へ変更 -

従業員が着替えるスペースから、(加工場を通らずに)包装スペースに行く通路がない ・加工場のスペースを少し狭くし、通路を増設 -

6 ゾーニング 清潔区と準清潔区の区別を明確にできていない

・汚染区、清潔区、準清潔区の床を色別(赤と緑など)

・色分けしたセクションごとに、担当者を決めて作業 -

認証審査前に、HACCPを導入して本当に菌が減っているかが分からない ・認証準備を行うと同時に、工場全体でモニタリング調査(菌など) - 7

検査・

モニタリング 分析・検査費用がかかる ・自前のラボを設立し、分析・サンプル代を年間80万円に抑えた -

HACCPについて従業員の理解が徹底されていない ・保健所からビデオをレンタルし、毎月従業員に見せながら研修を実施 0円 8 従業員教育

仕組みを導入しても、経営者頼みで現場力が高まらない ・調理師免許の取得推奨や ISO22000にチャレンジ -

9 その他 保健所等の担当者の指摘が非常に多く、現実的に全ては対応できない ・何を目的としたチェック項目であるかを理解し、その目的を達成するために必要な事項を改善する -

資料出典)認定施設ヒアリング結果より、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社作成

資料-42