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エコチューニング実践事例 「省エネ計画と実践の差異 に対する効果検証」 1 技術統括本部 設備部係長 野田哲也

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エコチューニング実践事例

「省エネ計画と実践の差異

に対する効果検証」

1

技術統括本部 設備部係長

野田哲也

・建物概要【エコチューニング実践現場概要】

建物用途:福祉施設(宿泊あり)

竣 工:1977年10月

延床面積:30,259㎡

階 数:地上2階 地下1階

空調運転時間:24時間(不定期)※平成23年設備更新

期 間:冷房6月~10月中 暖房11月中~3月中

室内設定:個別設定可能

温 度:夏28℃ 冬23℃

設 備:冷温水発生機・GHP・照明機器

設備員数:7名の設備員で24時間シフト制巡回点検作業風景

2

• 実践施設の特性(計画に際し)当該施設は福祉施設という特性上、居室の温度の要求が季節を問わず、不安定な部分が

ありました。現在は居住者の要求量を個別空調方式(FCU)にて対応しています。

これは、利用者個々の要求量に合わせた運転を行う為で、チューニングを実践していく上で

難易度の高い施設である事は実践前に解っていましたが、さらなるチューニングが

検討出来得る事業場として、以下の計画事案を作成しました。

【実践計画】

①冷温水発生機の運転時間管理(短縮化)及びファンコイル設定温度の管理を実施

②BEMS機器(スケジュール運転)を、細かな手動運転管理に変更

③発生機以外の機器(照明・GHP)の運転管理及び、随時LED管球へ変更

④居室内温度確認を館内巡回点検時に実施し、安定化と数値化(見える化)を計画

【提案】

①お客様用事務室内で機器の「ON」「OFF」や温度調整を行う事が

出来るので、顧客への省エネに対する意識付けを提案(細かな制御指示)

冷温水発生機(FCU専用)

制御盤(運転管理は顧客で行っている)

ファンコイルの温度制御

3

・対策による削減結果(27年度)実践データ

ここに注目!!

電力(KWh)建物全体 ガス(㎥)冷温水発生機のみ

平成27年消費量

平成26年消費量

3年平均消費量

削減量

平成27年消費量

平成26年消費量

3年平均消費量

削減量

前年比較3年

(23~25年)前年費

3年(23~25年)

7 132,185 135,922 129,788 -3,737 2,397 10,346 8,592 8,204 1,754 2,142

8 150,566 149,642 150,084 924 482 11,017 10,022 10,952 995 65

9 135,756 135,458 143,774 298 -8,018 6,892 5,200 7,526 1,692 -634

10 117,888 118,286 120,742 -398 -2,854 2,750 2,397 3,057 353 -307

11 123,514 129,146 125,332 -5,632 -1,818 2,306 1,876 1,995 430 311

12 140,774 145,565 145,755 -4,791 -4,981 5,396 5,623 5,664 -227 -268

1 148,985 154,937 151,424 -5,952 -2,439 7,464 8,892 8,562 -1,428 -1,098

期間計 949,668 968,956 966,899 -19,288 -17,231 46,171 42,602 45,960 3,569 211

9月の電気・ガスの使用量の差異を確認。前年比と3年平均との大きな差異の原因を究明しよう。先ずはグラフ化し比較しよう。

・その他(実践データの検証)①グラフ作成(電力)

1 2 3 4 5 6 7

系列1 -3,737 924 298 -398 -5,633 -4,790 -5,952

系列3 2,397 482 -8,018 -2,854 -1,818 -4,981 -2,439

-10,000

-8,000

-6,000

-4,000

-2,000

0

2,000

4,000

電力(kwh)全体の電力量

前年比

3年平均比

冷房⇒暖房(中間期)エコチューニング実践による効果

-344,612円 :3年平均値増減額

大きな数値の変動を検証することが必要

ここに注目!!

5

7月~翌年1月までのデータ

3年平均値が大きく減少した原因を検証すると…

個別空調化した工事が関係しています。

また、LED化や運転管理も起因しています。

・その他(実践データの検証)②グラフ作成(ガス)

1 2 3 4 5 6 7

系列1 1,754 995 1,692 353 430 -227 -1,428

系列3 2,142 65 -634 -307 311 -268 -1,098

-2,000

-1,500

-1,000

-500

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

ガス(㎥)冷温水発生機のみ

3年平均比

前年比

冷房⇒暖房(中間期)

31,861円 :3年平均値増減額

使用量が上昇傾向

ここに注目!!

計画想定より削減効果が低い

6

7月~翌年1月までのデータ

前年比が上昇傾向となっています。

原因を検証すると気象条件が起因していると思われます。

気象条件をグラフにしてみると…

・その他(実践データの検証)③気象データと比較検証

ここに注目!!

実践:夏も終わり温度変化が大きい時期は、日ごとの温湿度管理を行い、温度設定を行わなければならない

9月の気象条件を見てみると、気温が高い日と低い日があり、運転管理が難しい状態が見受けられます。

また、降水も多く湿度の影響も受けているようです。

・その他(実践データの検証)④気象データと比較検証グラフ作成

0

5

10

15

20

25

30

0 1 2 3 4 5 6 7 8

平均気温

0

100

200

300

400

500

600

0 1 2 3 4 5 6 7 8

降水量

雨が多い

温度が下がる傾向

中間期

中間期

7月~翌年1月まで 7月~翌年1月まで

ここに注目!!

負荷増加に起因する外的要因:グラフでも雨が多く湿度が高い時期があり、また急激な温度の下限値が見受けられる8

データグラフの分析

・電気・ガスの使用量の削減は、機器のこまめな発停により前年比

3年間平均でトータル的には削減効果が出ています。しかし個別の

月(9月)のガス使用量の増加に関しては、外的要因(天候・気温

等)が大きな影響を与えている事も、要因の一つとして考えられ

ます。また、電気的な発停による電力の削減は出来た一方で、熱源機

器(冷温水発生機・GHP)はガスを利用して運転している為、発停を

細かく繰り返す事で負荷の不安定化を促進してしまう結果となり、

消費量の削減には繋がらないといった結果になりました。

<勘案>

結果、データにより、外的要因や機器的因果関係を把握して、更なる

綿密な計画立案を専門技術者(エコチューニング技術者)として要求される

事象であったと思います。

(熱源機器電源供給と熱源機器エネルギー)

ここに注目!!何をもって、削減できたかの要因と効果測定を明確にしましょう。

エコチューニング技術者としての業務

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【今後のチューニングについて】

全国には、削減できる事業場が沢山あると思います。

今回の現場のように難しいと思われる事業場でも、チューニング次第では省エネ効果が

得られます。しかし今後の長期計画の実践については、事業上の設備の経年劣化などを

考慮すると、更新やメンテナンスによる「保全作業」も併用して必要となります。

お客様への「提案」で機器の状態を把握し⇒「計画(見積り)」で実践する機器の選定・

耐用年数をお客様へ申し送りし⇒「実践」しながら機器の延命処置・保全作業を行う方向で

エコチューニングの推進をして行くことが大切と感じました。

以上