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This document is downloaded at: 2020-02-06T14:36:14Z Title <実践報告>初級後期日本語学習者の作文の誤用例とその対応 : 当セ ンターの場合 Author(s) 田北, 光子 Citation 長崎大学外国人留学生指導センター紀要. vol.3, p.139-150; 1995 Issue Date 1995-03-25 URL http://hdl.handle.net/10069/5461 Right NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp

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Title <実践報告>初級後期日本語学習者の作文の誤用例とその対応 : 当センターの場合

Author(s) 田北, 光子

Citation 長崎大学外国人留学生指導センター紀要. vol.3, p.139-150; 1995

Issue Date 1995-03-25

URL http://hdl.handle.net/10069/5461

Right

NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE

http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp

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139

初級後期日本語学習者の

作文の誤用例とその対応

- 当センターの場合 一

田 北 光 子

はじめに

初級後期の学習者は、習得した語嚢数も増えて、かなりの表現力がついて

いる。 しかしこの程度になると、意味が類似した言葉を的確に使えず混同す

ることによる誤用、また、長文にする場合の誤用、文が与える語感について

など、注意すべき新たな問題が生じてくる。

筆者は長崎大学外国人留学生指導センターで初級後期の作文クラスを担当

しているが、そこに見られる誤用を分析 して、混同されやすい語とその状沢

を知り、誤用を少なくする方策を考えたい。この段階の日本語力でも、助詞

の誤用はなかなか少なくならないが、本稿では言葉 ・語嚢に絞って彼らの誤

用例を見る。

このクラスの構成は、中国人留学生6人、韓国人留学生3人、台湾 ・イン

ドネシア ・ミャンマーからの留学生各々 1人である。今回資料とするものは、

1994年 5月から12月までのこの学生たちの誤用例である。

本稿の下線の部分は誤用の箇所、○を付したものは正しい文、△は悪くは

ないがこの段階では望ましくない文、×は誤用文である。

誤用の実例

[1]発音と表記

ちょっと:ちょと ちょうと ちょと

いっしょ:いしょ いしょう いっしょう

もっています :もています

もっと :もと

見て :見って

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140 初級後期日本語学習者の作文の誤用例とその対応

~になった :~になた

ほとんど:ほとんと ほどんと

だいたい :だいだい

あたたかい :あただかい

ともだち :どもたち ともたち

~ですけれども:~ですげれども

飲んだり:のんたり

好き :好ぎ

おなじこと:おなじいこと

シャワー :シヤーワ シャワ

ベッド:ベット

コーヒー :コ-ヒ

ス-′ヾ- :スーパ

スポーツ :スポッ スポース

ワール ドカップ :ワール ドコップ ワアル ト・カップ

テニスコー ト:テニスコト

特にひらがな語の場合は、清音 ・濁音 ・促音 ・長音がまだ正しく発音でき

ないことがこのような表記になって表れてくる。これらの誤用は、周知のよ

うに中国語 ・韓国語を母語とする学生に多く見られ、当クラスでも発音や聞

き取 り、書き取 りの指導を行うことが必要になってくる。しかし時間に余裕

がないので、初級段階での発音と表記を結びつけた指導が望まれる。

カタカナ語の場合は、特に長音に誤りが多く見られるが、その原語の元来

の発音はさておき、日本語としての表記の仕方は一種の約束事なので慣れて

もらうよりしかたがない。筆者は最近のカタカナ語の氾濫に対して批判的な

考えを持っているが、外国人にとっても、理解しなければならない語嚢数が

増大するばかりでなく、そのカタカナ語から原語のスペルを類推することは

困難で、非常な負担を強いられているのが現状である。

[2]漢字の使い方 ・送り仮名のつけ方

(自己紹介のとき)私は〇〇〇〇と言います。

私は東京に行って来ました。

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長崎大学外国人留学生指導センター紀要 第3号 報告編 1995年 141

AとBを比べて見ると~ 。

良くなっていくでしょう :良くなって行 くでしょう。

これからも努力して行きたい。

少なくなかったので :少 くなかったので

これは日本人が書いた文にもよく見られる誤 りである。「~てくる」「~て

みる」「~ていく」「-てくる」のような 「~て+助動詞」の場合は漢字は使

わない、つまりその漢字が持っている本来の意味を有する時にのみ、漢字を

使うように指導する。

また、送 り仮名をまちがえると、上記の例の場合のように、「す くない」

のか 「す くなくない」のか判明しないというようなことも起こってくる。

[3]横書きの場合の数字の書き方

10時 :十時 12月 :十二月

横書きの場合はアラビア数字を、縦書 きの場合は漢数字を使うように指導

する。 但 し、横書きの場合でも、数える観念があるときはアラビア数字を、

言葉として扱っているときには漠数字を使うことを、実例と共に示す。例え

ば次のようなものである。

一番大きい 一応 一体 一緒 一生懸命 日本一

世界一 二枚 目 一流 四季

[4】類似 していて混同されることが多い言葉

1)さまざまな/いろいろな

×私の国には国技がさまざまあります。

×オリンピックのさまざまな試合を見ました。

ものの種類が多いようすは 「いろいろな」で表し、一つのものに限った場

合でその内容が多いときには 「さまざまな」を使う。 辞書に書かれている

言葉の意味からだけでは、どう使い分けたらいいのか分からない。使われて

いる 「場」を示すために、多 くの例文を与えて分からせることが必要である。

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142 初級後期日本語学習者の作文の誤用例とその対応

○留学生はいろいろな国から来ています。

○さまざまな生き方があります。

2)たまたま/たまに

×テレビで卓球の試合をたまたま見ます。

○ (忙しいのであまりテレビを見ませんが)たまに見ます。

湊字で書くと 「偶」という字を使うことによる間違いと考えられるが、意

味は全然違っってくる。

3)たいてい/だいたい

×私の部屋はたいてい6畳の広さで~。

ちょうど/ちょっと

×このアパートは高いところにありますので、ちょうど不便です。

この二つは発音と表記が母語によって干渉された結果起きた誤用である。

4)みんなで/みんな

×家族はみんな7人です。

下記のような文例を与えて、ある範囲を限定する場合の 「で」の使い方を

分からせる。

○このクラスで誰が一番若いですか.

0家族はみんな元気です。

○これとこれでいくらですか。

5)誰も/誰でも

×中国人は卓球がほとんど誰も少しできます。

何も/何でも

×Aさんは私の何も話し合える親友です。

どこかへ/どこへも

×金曜日の夜はどこかへも行きません。

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長崎大学外国人留学生指導センター紀要 第3号 報告編 1995年 143

どうしても

×私の1週間はどうしても忙しいです。

「誰も」「何も」「どこ-も」「どうしても」の語は、「誰も~ない」「何 も

~ない」「どこへも~ない」「どうしても~ない」のように否定表現と共に用

いられる。 但し、「どうしてもやりとげたい」などのように強い意志や必要

性を表す場合もある。また、「誰でもが」とすると、肯定文を続けることが

できるが、この段階の学生にあまり多くの文型を与えるのは控えた方がいい

と思う。

6)つもり/はず

×私の専門を生かしてできることなら何でもするはずです。

「つもり」は予定や計画 ・意志を表し、「はず」は当然予想されることを

表す。「予定」「予想」に影響されて、混同しやすいようである。 次のような

例を与えて、使われる状況を分からせる。

○彼はきっと来るはずです。

○そんなに安いはずがない。

7)かならず/いつも

×毎朝踏み切りをかならず通ります。

「必ず通らなければならない」わけではなく、「毎日通る」 という単なる習

慣なので、「かならず」は不必要である。「いつもその状況が成立する」とい

う気持ちから使ったと思われる誤用である。

○踏み切 りではかならず一度止まらなければなりません。

8)すばやく/急速に

×私の国はすばやく成長しています。

「すばやく」は人の動作の速いことをいうときに使われる。 現象について

いうときには使えない語である。

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144 初級後期日本語学習者の作文の誤用例とその対応

9)ままで

×1日中研究で忙しく疲れたままで会館に戻 ります。

「ままで」は、「その状態を変えないで」の意味がある。「疲れた状態」は

意志的には変えられないので 「疲れて」の方が適当である。「まま」「ままで」

が使われる状況を、例文を通して分からせることが必要である。

○日本人は魚を生のまま食べることがあります。

○立ったまま ・濡れたまま ・眠ったまま ・このまま ・そのまま

○そのままでいいですよ。

10)~として

×大学院生として、朝 9時半ごろ大学に行きます。

「~として」は、資格や立場に意味を持たせる語なので、後件に来る文と

合わないと誤用になる。

○私は国費留学生として日本に来ました。

○長崎は観光地として有名です。

ll)あの/その

×(昔~をしました。)あのときの楽しさを今でも覚えています。

×国に親友がいます。あの人は~という名前です。

この誤用は、かなり日本語力のある人でも起こしやすい。その場にいる人

たち皆が共通して知っていることにしか 「あの」「あれ」「あそこ」は使えな

い 。

○ (管がよく知っている生協の食堂について)あの食堂は安いですね。

12)理由/原因

× (大きくなってからは卓球ができなくなりました。)原因は勉強が忙

しくなったからです。

○昨日の事故の原因は、スピードの出し過ぎだそうです。

○彼が豚肉を食べないのは、宗教上の理由によるものです。

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長崎大学外国人留学生指導センター紀要 第3号 報告編 1995年 145

0健康上の理由で、彼は国に帰った。

上記のような例文を与えて、「なぜ」「どうして」を説明するときは 「理由」

を使い、「何によってそれが起きたか」を述べるときは 「原因」を使 うこと

を説明する。

13)興味/趣味

×私は卓球に趣味を持っています。

○私は卓球に興味があります。

○私の趣味は卓球です。

日本語の r興味」は中国語の 「興趣」にあたるので、混同しやすいらしい。

文例を挙げてその区別を分からせる。

14)住所/住んでいる所

×私の住所は坂が多くて、~。

○私の住所は~市~町~番地です。

○私が住んでいる所は、ちょっと不便ですが、静かです。

漢字を知っている人は、同じ意味だと思うようである。

15)行く/行ってくる

×Aさんは去年アメリカへ行ってきました。(注 ;Aさんは今滞米中で

ある)

「行ってくる」は、r行って」その後 r戻ってくる」という意味を持つ。 し

たがって、その過去形である 「行ってきました」は、r今は戻っている」状

態であることを表現する言い方である。

OAさんは去年アメリカに行ってきました。(注 ;Aさんはもう戻って

きている)

O 「行ってきます。」(荏 ;行って戻ってくる場合に使うあいさつの言葉)

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146 初級後期日本語学習者の作文の誤用例とその対応

16)~ます/~ています

×毎朝かわいい小学生たちをよく見ています。

×私は学校に行くときには急ぎ足で歩いています。

上記の二つの誤用文は、いつもの習慣を述べているのではあるが、書き手

の目の前のことや、事実の状態を述べているのだから、「~ています」は不

適当である。

既習事項である 「~ています」の文例を復習し、再確認させる。

○私は今作文を書いています。

〇両が降らない日が続いています。

○私は毎朝ジョギングをしています。

17)偲れる/慣れている

×私はもうすっかり日本の生活に慣れています。

「慣れる」という動詞は完了した状態を表すので、「~ています」は合わ

ないと思う。

○私はもうすっかり日本の生活に慣れました。

18)話す/話し合う/相談する

×友達と一緒に話し合います。(注 ;雑談の場合)

「話」の内容によって、「話し合う」「相談する」の語が使い分けられるの

である。

○友達と話します。(雑談の場合)

○パーティーのやりかたについて、いろいろ友達と話し合いました。

○そのことについて先輩に相談しました。

19)覚える/習う

×卓球は小学生のとき父から覚えました。

×テニスは日本へ来て、韓国人から覚えました。

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長崎大学外国人留学生指導センター紀要 第3号 報告編 1995年 147

「~から習う」「~から教えてもらう」、その結果 r覚えた」のであって、

途中の語が抜けている。

20)喜ぶ/嬉しい/楽しい

×中国で時々友達とサッカーをしましたが、とても喜んでいました。

×私は患者がよくなったのを見ると、とても楽しいです。

○長崎での生活はとても楽しいです。

○長崎で生活できてとても嬉しいです。

○母は電話をするととても喜びます。

上記のような例をいろいろ挙げて、どのように使い分けられているかを分

からせる。「喜ぶ」は 「人が喜ぶ」、「嬉しい」は何か良いことがあってその

時 「嬉しい」、「楽しい」は嬉しい気持ちが長く続いている時に使われている

ことを発見させる。

21)忙しい/忙 しそう/忙しいそうです

×私は毎日~で忙 しそうです。

これらの言葉は形が似ているので、混同することが多いようである。 初級

段階での学習が確実に習得できていないことの表れであろう。

【5】短文と短文をつないで長文にする場合の誤用

1)~て/~ると

×私は大学の勉強が終わって、寮に帰って~。

×大学前の歩道橋を渡って、学校に着きます。

「~て」は動作の継続を表すが、後件に来る動詞によっては、合わないこ

ともある例である。 誤用例や正しい例を与えて、「~て」と 「~ると」の違

いを分からせる。

○大学前の歩道橋を渡って、大学に行きます。

○大学前の歩道橋を渡ると、大学に着きます。

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148 初級後期日本語学習者の作文の誤用例とその対応

2)さらに/また

× (スポーツはス トレス解消にいいです。)さらに新 しい友達を作るこ

とができます。

「さらに」も 「また」も、「加える」意味があるために、混同しやすいよ

うである。 「また」には、ただ並列する意味があり、「さらに」は、以

前の状態より程度が増す意味を持っている。

○また明日も行きたいです。

○もう説明したが、さらに説明を加える。

○友達はたくさんいるが、さらに増えた。

○今も風雨が強いですが、さらに強くなるでしょう。

○さらに研究を続けたい。

3)つまり

×中国には四季があります。つまり3、4、5月は春です。

「つまり」は 「結論を簡単に言うと」の意味がある。また前に述べた語の

意味を補うときにも使われる。 上記の場合はそのどちらでもなく不適切であ

る。 使用例を挙げて説明する。

4)「~て」「~で」「~ていますが」

△時々お互いに話が分かりません。本当に困ります。

△物産はきわめて豊富です。色々な物がとれます。

△私の国では外国語も盛んに学ばれます。特に英語と日本語は人気があ

ります。

△今は私は研究生です。大学院の修士課程に進学したいです。

△寮は便利なところにあります。生活しやすいです。

述べられた文の前件と後件の事柄に一体感があるときは、「~て」「~で」

「~ですが」でつないだほうが良い。しかし、前件と後件の内容が無関係で

あるときや、順接しているときは、「~ですが」を使うとおかしな文になる。

×私は⊂X二X)と申しますが、今は~に住んでいます。

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長崎大学外国人留学生指導センター紀要 第 3号 報告編 1995年 149

×私の家は~町にありますが、毎日通学しています。

×長崎は有名な観光地ですが、たくさんの観光客が訪れます。

×私の町には公民館もありますが、町の人たちが利用できます。

×この時間はラッシュアワーですが、道が大変こんでいます。

×会館に色々な国から来た留学生がおおぜいいますが、とても楽しいで

す。

文をつないで長文にする場合は、常に文中における前件と後件の関係を考

えなければならない。これもいろいろな文例を与えて、指導する必要がある。

[6]文が与える語感について

1)私は中国から来た⊂X○○だ。(注 ;(北 は名前)

この文は丁寧体 「~です」を使えば問題はないのであるが、普通体 「~だ」

を使ったので、それによって与えられる語感は、強圧的で非常に悪いものと

なってしまっている。

2)「~んです」の多用による語感について

「あなたはすもうが好きですか?」-×「もちろん好きなんです。」

×今は健康のためにスポーツをしたいんです。

×私は毎土曜日にテニスをしているんです。

(教室で教師が学生に)「質問がありますか?」

-×「質問があるんですか?」

「~んです」はどんなときに使われるのか、場面と例を与える。また、相

手にどんな語感を与えるのかも説明する。例えば、「質問あるんですか ?」

と言われた場合は、質問したくてもしてはいけないような感じを与えること

を説明する。

O 「どうして遅刻したんですか?」「実験がなかなか終わらなかったん

です。」

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150 初級後期日本語学習者の作文の誤用例とその対応

まとめ

以上に見られる誤用は、日本人なら無意識に正しく使い分けているものだ

が、誤用の原因として考えられることは、

(1)発音の間違いからくる表記の間違い

(2) 語の形が類似 しているために混同しやすいこと

(3)学習者の母語との意味の違い

(4)辞書で意味を調べて、ただ単に文中に挿入しただけなどである。

上記の(1x2X3)は、当然ながら学習過程で獲得されていくべきものだが、(4)

については、教える側に責任がある。 日本語学習初期の時期に行われるパタ

ン・プラクティスの際に、その語が使われている 「時」と 「場」をきちんと

与えるべきである。言葉を機械的に代入するような練習になってはいけない。

学生が作文を書く場合、語の意味を辞書で調べて使うことが多いと思われ

るが、ほとんどの辞書には、それが使われる場面が与えられていない。教室

で文例をいくつも与えて、その語がどんな場面でどんな時に使われているの

かを発見させることが大切である。

また、語感についてであるが、言葉がコミュニケーションのためのもので

ある以上、その言い方が与える語感というものも重視 して指導しなければな

らない。

参考文献

(1)森田良行 (1988)

(2) 森田良行 (1994)

(3)長崎線合科学大学

(4) 本多勝一 (1994)

(5)中村 明 (1994)

「基礎日本語辞典」角川書店

r誤用文の分析 と研究」明治書院

(1994)r作文を書くための用例集J

r実戦 ・日本語の作文技術J朝日新聞社

「センスある日本語表現のためにj中公新書

(外国人留学生指導センター日本語コース委嘱講師)