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Title 自動詞の他動詞的構文について

Author(s) 田中, 彰一

Citation 長崎大学教養部紀要. 人文科学篇. 1990, 30(2), p.37-58

Issue Date 1990-01

URL http://hdl.handle.net/10069/15265

Right

NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE

http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp

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長崎大学教養部紀要(人文科学篇) 第30巻 第2号 37-58 (1990年1月)

自動詞の他動詞的構文について

田中彰一

On the Transitive Constructions of

Intransitive Verbs

Shoichi TANAKA

欧文要約(Abstract)

In English it is usually taken for granted that transitive and intransitive

verbs are different in that the former takes the object NP but the latter does

not. However, there are some constructions in which intransitive verbs take

the object NPs. Among such constructions, we consider here two kinds of

sentence: cognate object constructions (ia) and resultative constructions (ib).

(i) a. John slept a sound sleep.

b. John laughed himself sick.

We show that both of these constructions have two types of functional and

semantic use which we call "intransitive" and "transitive." The high

productivity of resultative constructions apparently allows us to make the two

types of resultative sentence with cognate objects. However, such sentences,

which are conceptually acceptable, are actually unacceptable to native

speakers. We explain that this fact is attributed to a syntactic constraint

in the "intransitive" type sentence and to some peculiarity of cognate objects

in the "transitive" type, which can be considered to be shared with "object

of result."

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1.英持動詞の他動性( transitivity)'

英語の動詞は他動性が強いといわれる。たとえば、本来自動詞である動詞が

目的語をとり、他動詞のふるまいをみせることがある。

(1 ) They live, eat, sleep, and dream athletics.1

ここでは自動詞であるIive, sleep, dreamが他動詞eatと等位接続されて目的

語athleticsをとり、他動詞的になっている。しかしこのような例は比倫的用法

または派生的用法とみなされ、自動詞は普通後ろに直接名詞句(NP)を従え

ないとされる。しかしながら英語には自動詞が目的語をとる生産的な構文があ

る。本稿では、そのような構文として(2)の同族目的語構文(cognate object

constructious)と( 3 )のいわゆる結果構文( resultative constructions )

を考える。2

(2) a. He died aheroic death.

b. She lived a happy life.

(3) a. Mary cried her eyes red.

b. John laughed himself sick.

以下でそれぞれの構文の特性を安井(1983)とSato (1987)の分析にしたがっ

て考察してみると、どちらの構文にも自動詞型他動詞型と呼べる2つの型があ

ることがわかる。それを前提に考えてみると原理的には2つのタイプの同族目

的語の結果構文が可能と予測されるが、実際にはどちらも不可能である。本稿

の目的はそれらのタイプの結果構文がなぜ存在しないかを説明することにある。

結論としては、ひとつのタイプは統語的に排除されるが、もうひとつのタイプ

は統語的に排除することはできず、同族目的語に特有の性質により排除される

ということを示す。

2.同族目的持構文の両棲的性質

安井(1983)では、同族目的語には両極的な2つの機能があることが指摘さ

れている。そのひとつは自動詞を修飾する副詞的機能である。たとえば、 (4a)

の文が「彼はぐっすり眠った。」の意で、 (4b)のように書き換えることができ、

同族目的語a sound sleepは副詞的機能を果たしているということができる。

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(4) a. Heslept asound sleep.

b. He slept soundly.

同様に、 (5a)は「幸せに生きている」、 (6a)は「明るく笑った」、 (7a) 「心

から笑った」の意味になる。

(5) a. Helives ahappylife.

b. He lives happily.

(6) a. She smiled a bright smile.

b. She smiled brightly.

(7) a. She laughed a hearty laugh.

b. She laughed heartily.

このように(4) - (7)の場合にはaとbがほぼ同じ意味を表す。これに対

し、 (8) (9)では同族目的語が他動詞の目的語の機能をもつので、 (4) - (7)

の場合とは異なり、 aとbは同義にはならない。

(8) a. He dreamed a strange dream.

b. He dreamed strangely.

(9) a. He sang a beautiful song.

b. He sang beautifully.

(8b)では夢の見方が奇妙であったのに対し、 (8a)は見た夢が奇妙であった

と言っている(9b)では歌い方が見事だったのに対し、 (9a)は歌が美しい

と言っている。したがって、この機能をもつ目的語は対応する様態の副詞と共

起できる。

(10) a. He dreamed a strange dream strangely.

b. He sang a beautiful song beautifully.

一方、 (4) (5) (6)でみた副詞的機能をもつ同族目的語は、余剰的意味にな

り対応する副詞と共起できない。

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(ll) a. He slept a sound sleep soundly.

b. *He lives a happy life happily.

c. *He smiled a bright smile brightly.

このように副詞的機能と他動詞の目的語的機能という両極的な同族目的語の

性質をみてくると次のことが言える。すなわち、同族目的語構文は必ず動詞・

目的語の連続という他動詞的構文の形をとるが、同族目的語は副詞の役割を果

たす場合と、他動詞構文にふさわしく目的語として名詞の役割を果たす場合の

2つがあるということである。これら2つの性質は、同族目的語の統語的ふるま

いにも反映されるはずである。

安井(1983: 86)で述べられているように、一般に、他動詞の目的語であれ

ばその名詞的性質から、受動文の主語になったり、擬似分裂文の焦点の位置に

現れたり、代名詞化することができる。したがって、上でみた他動詞の目的語

の機能をもつ同族目的語にはそれらの操作が可能であると予想できる(12)

と(13)はそれが事実であることを示している。3

(12) a. Mary sang a beautiful song.

b. A beautiful song was sung by Mary.

c. What Mary sang was a beautiful song.

d. Mary sang a beautiful song and Jane sang it/one, too.

(13) a. Mary dreamed a lovely dream last night.

b. A lovely dream was dreamed by Mary last night.

c. What Mary dreamed last night was a lovely dream.

d. Mary dreamed a lovely dream two nights ago and Jane

dreamed it/ one last night, too.

これに対し、副詞的機能をもつ同族目的語は名詞の性質をもたないために、予

想どおり受動文の主語になったり、擬似分裂文の焦点の位置に現れたり、代名

詞化することができない。

(14) a. He died aheroic death.

b. A heroic death was died by John.

c. *What John died was a heroic death.

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d. *Joh/i died a heroic death and Bob died it/one, too.

(15) a. Mary laughed an unpleasant laugh.

b. *An unplesant laugh was laughed by Mary.

c. What she laughed was an unpleasant laugh.

d. Mary laughed an unpleasant laugh and Jone laughed

it/one, too.

また同族目的語を答えとする疑問文にも違いが出る。

(16) a. He dreamed a strange dream.b. What did he dream?

(17) a. He lived a happy life.

b. How/*What did he live?

(16a)の名詞的機能を果たしている同族目的語をとるdreamの文を答えとす

る疑問文では、 (16b)のように名詞表現を尋ねる疑問詞whatで聞くことがで

きるが、 (17)のIiveの場合は、 whatを使うことはできず、様態を尋ねるhow

を用いなければならない。

以上、動詞が目的語を従えているという点で統語的には他動詞的構文となっ

ている同族目的語構文には、典型的に2つの機能があるということをみてき

た。4それは、自動詞を修飾する副詞的機能と他動詞の目的語としての名詞機能

であった。そこで前者を自動詞型の同族目的語構文、後者を他動詞型の同族目

的構文と呼んでおく。

(18) a.副詞的機能の同族目的語構文---自動詞型

b.名詞機能の同族目的語構文----他動詞型

他動性の観点からみると、同族目的語構文は、次にみる自動詞の結果構文と同

じく、英語の他動性の強さから派生された自動詞の他動詞的構文である。

3.結果構文の性質

結果構文に現われる動詞は使役化されており、その構造は(19)で、目的語

を従える構造であるから基本的に他動詞の構文であるといえる。

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(19) NPi V NP2 [AP/PP]!

(19)の構造をもつ典型的な場合を見てみよう。

(20) a. John hammered the metel flat.

b. Mary broke the vase into pieces.

ここでは、目的語のNPが他動詞の表している行為を直接受ける受動者( Patient )

である。そして後続する形容詞または前置詞句が動詞の行為を受けたあとの結

果の状態を示している(20a)はJohnがその金属をハンマーでたたいて平ら

にしたということを表しており、 (20b)はMaryが花瓶を壊して粉々にしたと

いう意味になる。

第1節で述べたように他動詞ばかりでなく自動詞もこの構文をとることがで

きる。本稿の目的は自動詞の他動詞的構文を見ることにあるが、第3節での議

論の都合上、他動詞を用いた場合も含めて結果構文の特徴を見ておく必要があ

る。ここではSato(1987)の分析にしたがって、結果構文を5つのタイプに区

切して考える。

(21) a. Type A: Bill drank himself silly.

b. Type B: The ice cream froze solid.

c. Type C: John shot her dead.

d. Type D: Mary cried her eyes red.

e. Type E: Mary sang the baby to sleep.

(20)で見た典型的結果構文はタイプCにあたる。一見自動詞の構文に見える

タイプBを見てみようKeyser-Roeper (1984)によれば、 freezeのような

能格動詞( ergative verb )は本来他動詞であり、その自動詞用法はそこから「派

生」するものと考えているCしたがってその考えにしたがえば、 Sato (1987:

97)も述べているように、 (21b)の文は他動詞から派生した文ということにな

る。この文は(22)の構造から語尭部門(lexicon)で適用されるMoreαの

規則によって導かれる。6

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(22) NPi V NP2 AP

freeze the icecream solid

I __」

Moveα

まず目的語の格が取り除かれ、目的語は主語の位置-移動し、元の位置に痕跡

を残す。その後主語の位置の動作主(Agent)の主題役割が削除され、 (21b)

の文の形となる(22)の構造主体は(19)でみた構造であるから、タイプB

の主語はもともと他動詞の目的語としてその行為を直接受ける項であったとい

える。7したがって、タイプBは他動詞から派生されたものであるから、本稿で

考えている自動詞の他動詞的構文の考察からは除くことにする。このように考

えると自動詞のとる結果構文は(21)のタイプA-D-Eの3タイプである。

対応する自動詞の構文を見ると、タイプEの動詞に後続するNPはもともと

前置詞の目的語であることがわかる。つまり、 (21e)のタイプEの文は(23)

を含意している。

(21e) Mary sang the baby to sleep.

(23) Mary sangto the baby.

同様に、

(24) a. The audience laughed the actors off the stage.

b. The audience laughed at the actors.

(25) a. The joggers ran the pavemant thin.

b. The joggers ran on the pavemant.

(24a)は「観衆は俳優たちを笑ってステージからおろした。」で、 (24b)を

含意し、 (25a)は「ジョガーたちは走ってその舗装を薄くした。」の意味にな

り、 (25b)を合意する。すなわち、このタイプEでは、たとえ動詞が自動詞で

あっても、動詞と後続するNPの間になんらかの意味関係が存在している。8上

で見たように、その意味関係は、動詞が前置詞をとるときと同じである。これ

に対して、次に見るタイプAとタイプDではそのような意味関係がない。

タイプAの結果構文では、その特徴として動詞のあとのNPは必ずoneselfの

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形をしているが、動詞は後続するNPに対して直接的意味関係をもたない。た

とえば、 (21a)のタイプAの文は、 (26)を合意しない。

(21a) Type A: Bill drank himself silly.

(26) John drank himself.

つまり、 (21a)のhimselfは動詞drinkの目的語ではなく、 Billが酒を飲むこ

とによってsillyになった人物、 Bill自身を示している。したがって、文全体の

意味は「Billは飲みすぎでふらふらになった。」となる。この場合動詞drinkは

目的語NPを項としてとっているのではなく、節的な[himself silly]全体が

結果の状態を表していると考えられる。 NPを従えるdrinkは普通他動詞とさ

れるが、この構文ではその普通の他動詞的意味をもたず、自動詞的な役割を果

たしていることになる。同様に、 (27a)はグレイスが泣いた結果、眠っている

という状態になったということを示しており、 (27b)を合意しない。 (28a)

は走った結果息が切れたということであり、 (28b)は含意しない。

(27) a. Grace cried herself asleep.

b. Grace cried herself.

(28) a. He ran himsely out of breath.

b. He ran himself.

このようにタイプAの結果構文は、タイプEの結果構文と異なり、動詞は後続

するNPに対して直接的意味関係をもたず、本来の機能である自動詞の役割を

果たしている。

タイプDも基本的にこのタイプAと同じ特徴をもつが、かなり慣用句に近い

(idiomatic)表現になる。また、より生産的なタイプAの結果構文の動詞に

後続するNPがoneself形に限られるのに対して、このタイプのNPには制限が

ない。

(29) a. He slept his liquor off.

b. Harry ate his belly full.

c. John talked my ear off.

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自動詞の他動詞的構文について 45

(29a)は眠って酔いをさました、 (29b)は食べてお腹いっぱいになった、 (29c)

はのべつ話して私をうんざりさせたの意味合いになる。

このように、タイプA-D-Eの結果構文では自動詞にNPが直接後続し、そ

の点では他動詞的になっているが、タイプEでは自動詞が後続するNPに対し

て意味関係を保持しているのに対し、タイプA・Dではそうではない。第1節

で見た目動詞型の同族目的語の場合のようにタイプA・Dの目的語を副詞的と

みなしてしまうことはできないが、 A・Dの動詞は、自動詞型の同族目的語の

場合のように、あとに従えるNPに直接的意味関係をもたないのである。つま

り、同じ自動詞の他動詞的構文でありながらタイプA・DはタイプEより他動

的性質が弱いのである。この意味でここでは、自動詞のとる結果構文を2つに

分けて、タイプA・Dを自動詞型の結果構文、タイプEを他動詞型の結果構文

と呼ぶ。

(30) a.自動詞と目的語の間に意味関係のない結果構文(A-D)一目動詞型

b.自動詞と目的語の間に意味関係のある結果構文(E) -他動詞型

先に述べたように、自動詞型の結果構文では動詞は目的語NPを項としてとっ

ているのではなく、節的な[NP2 AP/PP]全体が結果の状態を表していると

考えられる。

3.自動詞のとる目的拝の性賞

これまで自動詞のとる他動詞的構文として、同族目的語構文と結果構文を見

てきたが、同族目的構文と結果構文の両方に自動詞型と他動詞型があることが

わかった。それではこれまで見てきた本来自動詞である動詞のとる目的語自体

の性質にも自動詞型と他動詞型に分けたように統語的意味的にはっきりした違

いがあるのであろうか。

それを調べるための一方法として結果構文の生産性の高さを利用することが

できる。あとで見るように結果構文にはいくつかの制約はあるものの、他動詞

自動詞を問わずこの構文をとれることが観察されている。たとえば、 Jespersen

(1949V: 23)は、

As a matter of fact any verb, whether transitive or intransitive, may

be combined with a simple nexus to denote the result or consequence

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of the action or state implied in the main verb.

と述べており、またRiviとre (1982: 688)も、

It seems that any nonstative verb of English can be followed by

NP R [ resultative-ST ] with the resultative interpretation.

と述べている。さらに、 Randall (1982: 85)は(31)の語嚢規則(lexical

rule)を立て、自動詞・他動詞に関係なく適用することができるとしている0

(31) V - V,[+caus] 0 [ Adj.

第2節で見たように結果構文は形式的に目的語をとる構造になるため、目的語

NPに作用して状態変化を起こす意味を表す動詞であれば自動詞でもこの構造を

とることができるのである。しかし、結果構文が成立するにはいくつかの制約

がある。まず統語的な制約として、結果の状態を表す形容詞は分詞形であって

はいけない。9

(32) a. She combed her hair into knots.

b. *She combed her hair tangled. (Green (1972: 89) )

(33) a. The jockeys raced the horses hungry.

b. *The jockeys raced the horses starving / starved.

(Jackendoff (1987: 68) )

また、動詞は単独で生じなければならず、句動詞を用いることはできない。

(34) a. The man beat ( up) the dog bloody.

b. The campers patted (*down) their sleeping bags flat.

(Randall (1982: 86 - 7))

ここで結果構文の生産性の高さから、次のことが言える。すなわち(33)(34)

でみた制約に遺尿しない限り、自動詞型の同族目的語を用いて自動詞型の結果

構文を作ることができ、他動詞型の同族目的語を用いて他動詞型の結果構文を

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自動詞の他動詞的構文について 47

作ることが原理上は可能であるということである。前者の場合から見てみる。

第2節で見たタイプAの結果構文は生産的な自動詞型の構文である。また第

1節で見たように、自動詞型の同族目的語は副詞的役割を果たしているのである

から、この日動詞型の結果構文に組み込んで文を作ることができるはずである。

たとえば、 (35a)の動詞Iaughに副詞的な役割しか果たさない同族目的語を組

み込んでも、その結果の意味には影響を与えず適格な文になるはずである。し

かし実際は非文となる(35b)。

(35) a. Mary laughed herself sick.

b. Mary laughed unpleasant laughs herself sick.

同様にsmile, sleepの自動詞型の同族目的語を用いた結果構文も許されない。

(36) a. She smiled herself happy.

b. *She smiled a bright smile herself happy.

(37) a. He slept himself tired.

b. He slept a long sleep himself senseless.

このことを説明するためには、これらの文の構造に注目しなければならない(35)-

(37)の(b)文がすべて(38)の構造をもっている。

(38) NPi V NP2 NP3 AP

この構造は(31)のRandallの語嚢規則に合わず、第2節で見た結果構文の

構造とも違っている。また統語的に見ると、この構造は格付与の隣接条件

(Adjacency Condition )に違反している。つまりNP2の存在でNP3は動詞

に隣接しないので格を与えられず、格フィルター(Case Filter)に違反してし

まうのである。10そのため(38)のNP2が同族目的語でない場合でも非文とな

るii (Herbert (1975: 261))

(39) a. *John drank martinis himself silly.

b. *Grace sang ‖Happy Birthday" herself hoarse.

c. *Frank smoked tea himself sick last night.12

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また実際この隣接条件に抵触するために副詞も生起できないのである0

(Yamada (1987: 88))

(40) a. She cried frantically herself tired.

b. John drank heavily himself crazy.

このように第-の可能性は文法的に排除される.13

第2の可能性を見てみよう。すなわち他動詞型の同族目的語を用いて他動詞

型の結果構文を作る場合である。しかしこの場合もネイティブスピーカーに容

認されない。

(41) a.??Mary sang the beautiful song into a musical hit.

b.??A famous singer sang the wonderful song popular.

(42) a.??John danced the new dance artistic.

b. rrjohn danced the new dance into a waltz.

(43)??She laughed the strange laugh open.

(44)??He ran his good run famous.

(41) - (44)の文はこれまで見た統語的な説明では排除できない。それで

はなぜこれらの文は容認されないのであろうか(41)の「歌を歌って~した。」

や(42)の「踊りを踊って~にした。」といった意味は変則(anomalous)で

はない。実際ネイティブスピーカーはこれらの文の結果的意味を理解できる。

しかし文としては容認されない判断となっている。そこでこれまでに提案され

ている結果構文の意味的制約を見てみよう。それらの制約のどれかに該当すれ

ば、意味的に排除されるということになる。

まず動詞の影響を受ける対象物は部分ではなくて、完全にそれ全体でその影

響を受けなければならないという制約がある(Randall (1982: 99))

(45) a. *Grandpa kissed Mary wet.

b. Grandpa kissed MaiY's nose wet.

(45a)では、通常キスされて濡れる対象としてMa町は大きすぎるので容認

されず、 (45b)のように全体で影響を受けることのできるMary's noseなら

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自動詞の他動詞的構文について 49

ば容認される。しかし(41) - (44)の文はこの完全性の制約には違反して

いないので、この制約では排除できない。

次に結果を示す叙述語は意味的に余剰( redundant)であってはならないと

いう制約がある(Randall (1982: 100))

(46) a. The workers loaded the truck full.

b. *The workers unloaded the truck empty.

(46a)の「荷を積んでトラックをいっぱいにした。」では余剰的にはならない

が、 (46b)の「荷をおろした。」の意のunloadedではトラックは空になるは

ずであるから、 emptyを置いて結果構文にすると余剰的になり容認されない。

しかしまた(41) - (44)の文の叙述語は余剰的とはいえないのでこの制約

で排除することもできない。

第3に場所の変化を表す動詞は結果の意味を表すことができない。 14

(Simpson (1983: 147))

(47) a. He fell dead.

b. He emerged bedraggled.

(47)の叙述語は付帯状況的な意味にしか解釈されず、結果の状態を示すこと

はできない。たとえば(47a)は「死んだまま倒れた」であって「倒れた結果

死んだ」とはならない。しかしここでも、 (41) - (44)の文の動詞は場所の

変化を表す動詞ではないので、それらが容認されない理由を説明できない。 15

最後に、動詞は目的語に必ず影響を与えなければならないSimpson ( 1983:

146)は、知覚動詞は目的語に影響を与えることができないので、たとえ神話の

中でも結果構文をとれないと言っている。

(48) a. *Medusa saw the hero stone/into stone.

b. *Midas touched the tree gold/into gold.

しかしこの制約は次のような例を誤って容認不可能と予測する。

(49) a. A lover's eyes will gaze an eagle blind. (Shakespeare)

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50 田中彰一

b. We must think peace into existence. ( Riviとre (1982: 686) )

(49a)の"gazeするだけ、 (49b)の"think"するだけでは、 (48)の場合

と同じように、目的語に影響を与えることはできないと考えられるが、 (49)

の結果構文は容認可能な文とされている。このようにこの制約自体疑わしいが、

(41) - (44)の文の同族目的語は動詞の影響を受けているとみなして差し

つかえないと思われる。そうなるとこの意味的制約でも(41) - (44)の文

を排除できないということになる。

それではいかなる要因で(41) - (44)の文は容認不可能となっているの

であろうか。上で見た統語的意味的制約で説明できないとなると、その要因は

同族目的語そのものの性質にあるのではないかと考えられる。他動詞型の同族

目的語は名詞的性質があることを第1節で見たが、統語的意味的制約のどれに

も違反していないのに生産性の高い結果構文をとれないのは、元々・の同族目的

語に何か特別な特徴があるためではないかと考えられるのである。 、そこで同族

目的語との平行性がしばしば議論されてきた結果の目的語( ObjectofResult )

について見てみる。 16

(50)の例はFillmore ( 1968)等の格文法で議論されたものであるが、 (50a)

は(51)の問いの答えになれるのに対して、 (50b)はなれない。

(50) a. John ruined the table.

b. John built the table.

(51) What did John do to the table?

(51)はもともと存在する机に何をしたのかを簡うている文であるから、作っ

た結果テーブルができるという(50b)の結果の目的語を用いた文は答えにな

れないのである。この結果の目的語を用いて結果構文を作ることができるであ

ろうか。一見奇妙なことに、同族目的語の場合と同じように、結果の目的語は

結果構文を許さない。

(52) a. He smiled his welcome.

b.??He smiled his welcome noticeable.

(53) a. He nodded approval.

b.??He nodded approval open.

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自動詞の他動詞的構文について 51

(52a)は「微笑んで感謝の意を表した」、 (53a)は「うなづいて同意を示し

た」の意で、 (52b) (53b)のように「目立たせた」、 「明らかにした」の意味

で結果の叙述語を加えると文の意味的余剰性が生じ排除される。また、

(54) a. John dug the ground rough.

b.??John dug the grave rough.

(55) a. John painted the door green.

b.??John painted the portrait impressive and life-like.

(54) (55)のa文の目的語は達成された結果の意味をもっていない。すなわ

ち元々存在していた「地面」 「ドア」という解釈の目的語である。この場合は結

果構文をとることができる。これに対して、 b文の目的語は結果の目的語であ

るために、結果構文は成立しない。さらに次の例で考えてみよう。

(56) a. Moths ate the holes in the curtains.

b. Moths ate the holes noticeable in the curtains.

結果構文ではない(56a)のthe holesには暖昧性がある。つまりカーテンの

穴は元々あったものでもよいし、虫が食った結果できた穴であってもよい。こ

れに対して結果構文となっている(56b)のthe holesに暖味性はなく、前者

の解釈すなわり元々あった穴でなければならない。

このような結果の目的語のふるまいは目的語の結果の意味から説明される。

すなわち,結果の目的語は動詞の示す行為の結果達成されるものを指している

のに、結果構文は元々存在するものに影響を与えて結果の状態を示す構文であ

るために矛盾が生じているのである。結果構文の目的語はそれ以前に存在して

いるものであり、それに動詞がなんらかの影響を与えてその結果起こる状態変

化を結果の叙述語が表す。一方、結果の目的語は動詞の示す行為の結果達成さ

れるものを指しているので、結果の目的語で結果構文を作ると目的語は相いれ

ない2つの機能を同時に果たさなければならないことになり、非文となるので

ある。これは当然の帰結といえる。それでは問題となっている(41) - (44)

の同族目的語の場合はどうであろうか。実際、安井(1982: 84)が指摘するよ

うに、結果の目的語と考えられる同族目的語がある。次の(57)の同族目的語

は結果の目的語と考えてよいであろう。

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52 田中彰一

(57) a. She sighed a sigh of ineffable satisfaction.

b. He has fought the good fight. Jespersen ( 1949111:235))

またJespersen (1949m: 235)が指摘しているように、同族目的語が動詞の

同格表現として使われる場合がある。

(58) a. Then he smiled, a sky nervous smile.

b. Kitty laughed - a laugh musical but malicious.

(58)のコンマ、ダッシュの後のNPは動詞の示す行為の結果達成されたもの

を表している。したがって問題となっている(41) - (44)の他動詞型の同

族目的語は結果の目的語と同じ性質をもつために排除されている可能性がある。

実際、 (47)で見たように、同族目的語の中に結果の目的語の役割を果たして

いると考えられる例がある。さらに、 (50) (51)で見たように、動詞の動作

の達成された結果の意味を同族目的語がもつかどうかを見てみるために、同族

目的語構文を次のような擬似分裂文にしてみる。

(59) a. He sang a beautiful song.

b. *What he did to the beautiful song was to sing it.

(60) a. Mary dreamed a lovely dream last night.

b. *What Mary did to the lovely dream was to dream it.

(61) a. John danced a new dance.

b. *What did to the new dance was to dance it.

Jackendoff ( 1987: 61 )は、このような擬似分裂文は目的語NPが受動者である

かどうかのテストとしている。それにしたがうと、 b文に示されているように

同族目的語にはこの擬似分裂文が作れないことから、同族目的語が受動者の役

割をもっていないということになる。ここでは、そればかりでなく、同族目的

語が動詞の動作の達成された結果の意味をもつためであるというネイティブス

ピーカーの反応を得た。たとえば、 (59a)では歌う行為があってはじめて美し

い歌になるということである。そのため、 (59a)を(59b)にすることは歌う

行為の前に美しい歌が存在していたことになり容認されないというのである。

逆に言えば、まさにこの結果の意味のために、存在が前提となる受動者の役割

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自動詞の他動詞的構文について 53

をもつNPになることができないのである0

4.まとめ

これまで見たことから、本稿で見た自動詞が形式上とる目的語NPは他動詞

の目的語とは異なる性質をもっていることがわかった。その中で,第一の可能

性として考えたように、自動詞型の同族目的語は、副詞的機能を果たしている

は言え、結果構文をとれないことから、 NPとしての機能を保持していること

は明らかである。また第二の可能性の他動詞型の同族目的語の結果構文が成立

しないことから、同族目的語は、他動詞の目的語NPにはないある特有の性質

をもっているのではないかということがわかった。上で述べたように、その特

性とは結果の目的語のもつ性質と同じである可能性が高い。つまり、結果構文

の生産性の高さにもかかわらず同族目的語が結果構文を許さないのは、結果の

目的語が結果構文をとらないのと同じ理由で排除されていると言えるというこ

とである。このことはまた、従来指摘されてきた同族目的語と結果の目的語の

類似性を明示的にしたことにもなるのである。17

*本稿は、 1988年10月30日に大分大学で行なわれた日本英文学会第41回

九州支部大会において口頭発表したものに加筆修正を施したものである。学会

と福岡言語研究会(FLC) 4月例会でコメントを下さった方々に謝意を表した

い。また、インフォーマントとして例文をチェックしていただいたRichard C.

Creager氏とデータに関して貴重な助言をしていただいた西原俊明氏には、時

間を割いていただいた。さらに、本稿の内容に関して、有益なコメントをいた

だいた広瀬幸生氏、結論に関して意味のある示唆をいただいた遠藤喜雄氏にも

謝意を表したい。

1.この例はPowle, B. 1989. "Should the commercial, `drug addict'olym-

pics be abolished?" The English Journal 19. 97-9.から引用0

2.この2つの構文のうち、英語の同族目的語をとる動詞には制限があるが、

Jayaseelan (1988: 99)によれば、 Malayalam語ではすべての自動詞に同

族目的語構文が可能である。したがって同族目的語構文は言語学的に特殊な

構文とはいえない。

(i)はいわゆる副詞的目的語の場合である。

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54 田中彰一

(i) a. He ran the distance in record time.

b. The distance was run in record time.

Larson ( 1985)はこれをBare-NP adverbと呼ぶが、本文で見る副詞的同

族目的語との類似性を考えることもできる。このような自動詞の他動詞的構

文については別の機会に論じたい。

3. (12) - (17)の例文は安井(1983)から引用。

4.安井(1983: 87)によると、 Iiveが過去形の時の同族目的語が名詞的機能

を果たす。

(i) a. John lived/lives a happy life.

b. A happy life was / is lived byJone.

c. What Jone lived was/*What Jone lives is a happy life.

すなわち、 (i)の同族目的語は、 Iiveが過去形の時は受動文の主語になるこ

とができ、擬似分裂文の焦点の位置にこれることから、他動詞の目的語のふ

るまいを示し、 Iiveが現在形の時はそれらの操作を許さないので、様態の副

詞のふるまいをしている。このことは同族目的語の名詞性が必ずしも動詞に

よって決定されているのではないということを示している。

また、本文中で他動詞的とした動詞は典型的に前置詞ofをとるが(iia)、

副詞的な目的語をとる動詞はofをとることができない(iib)

(ii) a. She sang of world peace/dreams of dead mother.

b. They laughed *of/ at the comical incident.

このことは動詞の他動詞性と何らかの関係があると思われる。(このような前

置詞の違いに関しては稲田俊明氏から示唆をいただいた。)

5. (19)の[AP/PP]の位置にはいわゆる叙述的な語句が現われるが、こ

の部分をただのAP/PPと分析するか、 PROを有する小節(smallclause)

とみなすかという理論的問題は本文中の議論と関係しないので扱わないSato

(1987)とYamada (1987)の分析を参照。

また(19)の[AP/PP]は、 Ⅹバー理論の階層で考えると、 Vlに支配

される要素である。つまり動詞に下位範時化されると要素となるIwasawa

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自動詞の他動詞的構文について 55

(1985)を参照。

6.詳しくはKeyser-Roeper (1984: 402)を参照。

7.もしこの考え方が正しいとすると、 (21)の文はみな同じ構造に還元するこ

とができるので、すべての結果構文は(19)の構造に関係づけられることに

なる。

8.タイプEの結果構文で動詞と後続するNPの間に前置詞を入れると非文にな

ることから、結果構文には「構造的意味」と呼べるようなものが存在し、動

詞の他動性を高め、使役的意味を帯びると推測できる。池上(1980-81)参

照。

中右(1986: 623-4)は意味的関係として次のような対比に注目し、直接

の意味関係を主張する。

(i) a. John shot (*at) the elephant down/dead.

b. A bullet shot (*at) the elephant.

ここで(a)の象が倒れて死んだという結果的状態が成り立つためには動詞

と目的語の間に直接的な物理的接触が保証されなければならない。この直接

性は文法的にも決定されなければならないので前置詞atの介在は許されない。

このような議論の延長線上に、一般原理として(ii)が立てられる。

(ii)文法関係の意味的直接性の原理:

名詞句と述語のあいだに文法関係があるとき、そのあいだにはまた、

それと平行して、直接的な意味関係がある。

この原理の一般性の検証は紙面の都合上許されないが、この原理にしたがえ

ば、本文で他動詞型の結果構文とした自動詞の場合にも後に前置詞を置くこ

とができないことが説明される(例文(23) - (25)参照)。またこの原理

が逆にも成り立つとすると、本文で自動詞型の結果構文とした自動詞と目的

語の間に意味関係のないタイプAとDの結果構文の場合には結果的状態は名

詞句と叙述語が形成する節的な要素によって示されるということになる(註

の13を参照)。なお(ii)の原理の一般性の議論は中右(1986)を参照のこ

と。

9.この制約を意味的とする議論もあるJackendoff (1987: 68)参感。

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56 田中彰一

10. Chomsky (1981: 175), Stowell (1981: 113)を参照。

ll.しかしこの説明を、 (38)の構造をもつ(i)の二重目的語構文が結果の

意味をもてないことにあてはめることはできない。

(i) I sent John the vase broken. (Simpson (1983: 147))

(i)は「花瓶が壊れたまま送った」の意味なら容認されるが、結果の意味を

表す文にはなれない。 (i)は(38)の構造をもつが、英語の二重目的語構文

は許される構文であるから、 (i)を格フィルターで処理するのは適切ではな

い。

ここでは、 Simpsonにしたがって、場所の変化を意味する動詞は結果の意

味を表すことができないという、 (47)で見る意味制約により結果のよみが

排除されると考えておく。

12.この場合目的語をwith句の形で取り入れれば結果構文を作ることは可能で

ある。 (Herbert (1975: 262))

(i) a. John drank himself silly with martinis.

b. Grace sang herself hoarse with "Happy Birthday."

c. Frank smoked himself sick with tea last night.

同族目的語の場合も同様である。

(ii) He slept himself tired with a long sleep.

13.また遠藤善雄氏(個人談話)にしたがって次のように考えることもできる。

自動詞は結果の状態を示すのに節的な[NP AP/PP]の項を取るのに対し

て、他動詞は目的語の後に[AP/PP]の項を取ると考える(Yamada

(1987: 85)参照)そうすると、 (35) - (37)では自動詞が節的な項[NP

AP/PP]を取らなければならないのに目的語NPの項も取っているので、

動詞の下位範噂化の情報に違反し非文となると説明される。

14.これまで本文中で見た例は状態の変化を表す動詞である。

15.二重目的語構文が結果構文をとれないのもこの制約で説明される。註11を

参無のこと。

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自動詞の他動詞的構文について 57

16. Quirk et al. (1985: 750)参照Jespersen (1949in: 234)は、同族

目的語は結果の目的語と平行的というよりむしろ結果の目的語の下位類であ

るとみなしている。

17.註16を参照。

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