nectj jhl annual conference 2013 makiko kato

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13th NECTJ JHL Annual Conference 2013 Presenter: Makiko Kato 第13回NECTJ継承語研究大会 2013 プレゼンター:加藤真紀子

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Page 1: NECTJ JHL Annual Conference 2013 Makiko Kato

「補習校 JFL 低学年クラスにおけるオリジナル教材を

使った授業の工夫」

プリンストン日本語学校加藤真紀子

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1.JASLの特色

★ JASLとは: Japanese As Second Language★ JHLとJFLの両方の生徒で構成★ 複合方式のクラス  JASL1 低学年の初級者(G1~G3)   JASL2 高学年の初級者(G4以上)  JASL3 JASL1を終了した学習者 (中級)  JASL4 JASL2,3を終了した学習者        (中級以上)★  1~3は、基本的にコースは2年間履修する

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2 -1 .JASL3の生徒の多様な背景学年 学習開始 家庭内言語 備考

M.C 3G 2010 日・英 母親は日本人

S.B 3G 2010 英 母親は日系2世、日本語は話さない

H.W 3G 2010 日・英 母親は日本人

F.M 3G 2010 英>日 母親は日本人だが英語使用が多い

J.C 4G 2010 日・英 母親は日本人。M.Cの姉。ADHD診断者

A.D 4G 2010 英・仏 父親フランス人、母親アメリカ人

Y.F 4G 2010 英>日 母親は日本人だが英語使用が多い

J.O 4G 2009 英>日 父親日本人、母親アメリカ人

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2 -1 .JASL3の生徒の多様な背景(続き)

継承語の定義から見ると、クラスの90%以上が継承語学習者である。( Hornberger, Wang,Webb, MillerScalera, Campbell,Peyton and Valdes)

日常会話ならやりとりに問題ない生徒から、習ったこと以外は全くわからない生徒までレベルは様々

4技能でみると、日常会話ができる生徒でも、読み・書きが圧倒的に弱い(かなの定着すら怪しい)

言語のアイデンティティは英語、または強く英語より

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2-2.   JASL 授業の特徴 フレーズから入り、語彙、文型重視 文型・日常生活会話に沿ったアクティビティ

が多い   ex;  助数詞カルタ、動詞カード、    カタカナビンゴ、言葉のしりとり、    道を聞く、答える 文化の紹介 季節の行事、書き初め、        俳句、運動会

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2 -3  JASLに効果的な授業とは 基本的に家庭でのサポートをあてにできない 文法を取り出して教えられない年齢 教室の学習が全て 場面支援を多く必要とし、認知力が低い低学年、しかも

様々な背景を抱えたJFL生徒たちに有効な授業プランを開発する

日常会話から一歩進んだ内容でないと、子どもが楽しめないため、低学年ではあるが、5Cを意識して他の学科に関する言語も含める授業方法を考慮する

文化や日米の違いなどに目を向けた授業展開を試みる 可能な限りの個別対応     

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3.2012年度JASL3授業スケジュール

使用テキスト  やさしい日本語         黄色、青 時間割  1 : 00 ~ 1 : 45   復習、漢字      1 : 50 ~ 2 : 30   文型      2 : 45 ~ 3 : 30   アクティビティ      3 : 35 ~ 3 : 20   読みと歌

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4 授業実践の例    ~絵本の通読~

実施日: 毎週4時限目(全11回)使用絵本 :スイミー(全4回)      ないたあかおに ( 全7回)実施場所:教室。長いテーブルの周りを椅子で囲     い、全員が輪になるように座る教材:部分対訳を貼付した絵本のコピー通読方法:基本的には希望者を優先したが、全く     読まない生徒が出てくるので、必ず     全員が一回は読むように配慮した宿題:その日読んだ部分までの音読

      

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文科省指導要綱 読むことの指導目標    第3・4学年

目的に応じ,内容の中心をとらえたり段落相互の関係を考えたりしながら読むことができるようにするとともに,幅広く読書しようとする態度を育てる

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READING CONTINUUM FOR AGE 7-9

◫1. 簡単なチャプターブック(やや長めで章立てのある本)を読むことができる ◫2. レベルにマッチしたいろいろな読み物を、助けを得て選び、読み、読み終わる。 ◫3. すらすら声に出して読める ☺4. だんだんに黙読の時間が長くなる(15-30分) ☑ 5. 読み物のタイプや目的によって適切な読みストラテジーを使う ☑ 6. 未知のことばに遭遇したとき、語彙構成(語幹、接頭辞、接尾辞、語のかたまり)を手がかりとして使う ☑ 7. 意味の手がかりを使って語彙を増やす(文脈) ☑ 基本的な漢字語彙(80~200)が認識できる ☑ 8. 意味が通じるように自己修正をする ☑ 9. 文字で書かれた指示に従う ☑ 10. 章のタイトルや目次が何を意味するのか分かる(テキストの構成) ☝ 11. 時間的な流れにそってお話の出来事をまとめたり、再生したりできる ☝ 12. 読み物の中の事実、人物、状況について反応し、自分自身と関連づける ☝ 13. 登場人物や出来事を比較対照することができる ☝ 14. 助けを得て、行間を読み取ることができる $15. 助けを得て、自分の読みのストラテジーを自覚して目標設定ができる

◫ 本の種類と音読 ☺ 態度 ☑ 読書方法 ☝ 理解と反応 $ 自己評価

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L1とL2の関連

L1で学習してもL2で学習しても、読み書きを通して獲得された認知力がもう一つの言語へ転移する。( Fitszgerald & Cummims, 1996:388)

L2 の会話力が弱くても、L1の音韻意識や読解力がL2の読解力を予測する率が高い。( Durgunoglu et al.,1993)

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絵本を部分対訳つきで通読する意味 生きた言葉に触れる 物語の面白さを外国語で学ぶことができる 読み聞かせだけではわからない言葉、言い回しまで理解

できる 絵を伴うので、イメージしやすい 日本語発話の貴重な機会 絵本を楽しめる年齢であると同時に、対訳をつけて読め

る年齢 後ろに戻ったり辞書を引く動作は、流れを止めてしまう。

すぐ目が届き、流れを妨げない Input 日本語、 output 英語の気楽さ 単語、文節を区切る等、読みの練習になる 他の生徒の読みを聞く機会になる

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補習校部2年生の教材で、長期にわたり子どもに人気がある楽しい話

もともと英語の話である。英語で知っている生徒もおり、取り掛かりが簡単であるため、日本語でもイメージしやすい

形容詞が多いため、「~~のような○○」、「~~て、~~い」という文型に繋がる

5ー1 . スイミーを選んだ理由と目的

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おそろしい fierce, horrible まぐろ    tuna fish すごい       very much, extremely ミサイル      missileつっこんで      darting一ぴきのこらず  all of them, no one was left

5-2 対訳の例

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5- 3  子どもの反応

英語の本を持っている!と楽しみにしている生徒あり

読みたい生徒が続出 「うなぎ」が出てきたとき、「日本人

はうなぎを食べるんだよね」と顔をしかめた生徒がいた

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5- 3  子どもの反応(続き)

天気の良い日に外で読み、実際に一人ひとりスイミーになったり、全員で長いうなぎになってみた。協力しあうのが少々困難なクラスなので、なかなかまとまるのがむずかしかったものの、楽しい時間であった

「目になる」という真の意味、「ながい」という概念が、日本語でも理解できた

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1.スイミーはどんなさかな?   

2.まぐろはどんなさかな?   

3.くらげは どんなふう?   

4.いせえびは?   

5.見たこともないさかなは?   

6.岩は?  

7.うなぎは?  

8.いそぎんちゃくは?  

9.なかまたちは?  

スイミー ワークシート

おもしろかった?                                   。

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5- 4  評価・考察

スイミーの見るものが全て文中で説明されていたので、絵本をみればどんな○○だったかすぐわかった。ワークシートは難しい物ではなく、とりかかりはスムーズだった。

「○○のような」という言い方が、何かを形容する言い方だ、とわかりやすかった

うなぎは「ながくて、くろい」と、文に説明がないものも絵本でイメージして書けた

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6 -1. 「ないたあかおに」を選んだ理由と目的

2月の節分に合わせて、鬼の概念を知る。豆まきのときに、なぜ鬼を追い出すか

  →鬼は悪い生き物だ

文学を通し、鬼でもやさしい鬼もいるのだという、アンビバレントな感情を読みとれる

  →人間のような鬼もいる

赤・青という漢字の定着

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6-2 ないたあかおに           SCAFFOLDING

1/13-2/10 歌:鬼のパンツ(振付つき)1/27 スライド  豆まきの由来と鬼について ✔ 中国から伝わった行事     ✔鬼= bad spirit, evil        人をも食べる     ✔豆を投げて追い払う=厄払い2/3     豆まき2/3-3/17   通読

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じごく( HELL) の 青おに

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おにの まつり

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赤おに と 青おに

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6ー3 部分対訳の例ーないたあかおにー

  はだし            bare foot  ちゃんと           purposefully  そこら            around there   手あたりしだい        randomly         たたいたり          hitting,  けったり            kicking,  とんだり            jumping,  はねたり            hopping,さか立ちしたり         hands standing

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6- 4  子どもの反応

思ったよりもずっと読みたがる生徒が多かった 発音、イントネーション、文節区切り等、課題

は山積みだが、それらはあまり重視せず、読み間違えたときのみそっと訂正をうながした

最後まで読み通した後、「 it is sad… 」と心を寄せた生徒もいた

翌週に、前回までのあらすじを言わせ、同じ語彙が出てきたときは、理解を確認したが、みんなよく覚えていた

 

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6-5 評価・考察(ないたあかおに) かなは読めるが、日常会話や文法重視のテキスト

は読んでも面白くない。しかし、絵本は絵があるので、全ての日本語がわからなくてもアウトラインは理解できる。せっかくかなが読めるのだから、読んでみたい、という気持ちを奮いおこした

ディスカッションは英語で行ったので、楽に意見を言えた

物語を楽しみたいという、基本的な欲求を充足することができる

日常会話では使わない日本語に触れる機会となった

「鬼」の概念は定着した

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7 JASL-今後の読みの授業の課題

絵本通読は、国語の授業のようにする必要はないが、物語を日本語で楽しむという点で、知識レベルにもあった教材を選べばかなり深い学びにつながると思われる。

読みと書き能力は比例するので、読めない生徒は書けない。楽しんで読むこと、内容を理解すること、本からの語彙や言い回しを学ぶことは、低学年であっても、JFL生徒に有効であると考える。

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引用・参考文献 Cummins, J. & Swain, M. 1986. Bilingualism in Education. Longman. 山田初 ,2003.   JSL児童生徒の学習言語能力の獲得 清田淳子 ,2000. 教科としての「国語」と日本語教育を統合した内容重視のアプローチの試み

Hornberger, N.H., & Wang, S.C. (2008). Who Are Our Heritage Language Learners?: Identity and Biliteracy in Heritage Language Education in the United States In Brinton, Kagan, Bauckus(Eds.), Heritage Langugae Education; A New Field Emerging (pp. 3-35). New York/London: Routledge

中島和子 マルチリンガル教育への招待―言語資源としての外国人・日本人年少者 2010.  ひつじ書房

笹島茂編集 CLILー新しい発想の授業  2011, 三修社 安藤寿康・鹿毛雅治編集 教育心理学  2013, 慶應義塾大学出版会 カルダー淑子 補習校における母語支援―プリンストン日本語学校の実践から   2008,月刊海外子女教育 鳥山敏子 イメージをさぐるーからだ・ことば・イメージの授業  1985, 太郎次郎社 中島和子 地域で母語教育を行う上で役立つこと(発表) 2012, 国際健康開発セ

ンター Campbell Hill Reading Continuum

http://www.bonniecampbellhill.com/Handouts/JContinuumMIKA.pdf

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ありがとうございました!

ご意見・アドバイスがありましたら下記のアドレスまでお願いいたします。[email protected]@gmail.com