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Title 「読むこと 」と 「書くこと 」を関連付けた単元の指導 のエ夫 : 筆者の文章構成とその意図に触れる発問を通し Author(s) 上田, 達大; 下地, 成子; 川上, つゆみ Citation 琉球大学教職センター紀要 = Bulletin of Center for Professional Development of Teachers(1): 129-135 Issue Date 2019-02-28 URL http://hdl.handle.net/20.500.12000/45047 Rights

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Title「読むこと 」と 「書くこと 」を関連付けた単元の指導のエ夫 : 筆者の文章構成とその意図に触れる発問を通して

Author(s) 上田, 達大; 下地, 成子; 川上, つゆみ

Citation 琉球大学教職センター紀要 = Bulletin of Center forProfessional Development of Teachers(1): 129-135

Issue Date 2019-02-28

URL http://hdl.handle.net/20.500.12000/45047

Rights

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琉球大学教職センター紀要 第 1号 2019年 2月

「読むこと」と 「書くこと」を関連付けた単元の指導のエ夫

~筆者の文章構成とその意図に触れる発問を通して~

上田達大 1 • 下地成子 2 • 川上 つ ゆ み 3

The device for unit learning associated reading with writing

Through author's writing structure and teacher's questions for noticing the author's intention

tatsuhiro UEDA, Nariko SHIMOJI, Tsuyumi KAWAKAMI

I テーマ設定の理由

本県の児童の課題として、書く力や説明する力が十分でないことが挙げられている。研究対象

学級の児童においても、作文を書く際に、出来事を直感的に書いていくことが多く、既習の説明

文等で学んだ優れた論理展開を自己の表現に活かしていこうという自覚は十分でない。高学年だ

けでなく低学年においても「時系列」にとどまらず、「事例の順序」「因果関係」を用いた文章を

書 くことを意識させていくことは大事である。

これらの力は、教材の読み取りや論理的思考と分けてとらえられがちで、別々に訓練する指導

がこれまで多かった。しかし、日々の国語の授業で作者や筆者の伝えたいことを論理的に読み取

る中で、その論理展開の工夫による分かりやすさや筆者の思いに気付いていけるような指導を行

い、明示的にその表現方法を自分達の表現に生かすことで児童の「書く」活動を改善できるので

はないかと考えた。

そこで本研究では、低学年の説明的な文章を用いて、読むことと書くことを関連付けた授業を

工夫し、構成や意図を理解しつつ、自分の表現に活用させていく学習指導を実践する。そうする

ことで児童の表現を改善させることができると考え、本テーマを設定した。

II 研究仮説

説明的文章の学習において、籠者の文章構成やその意図を探る発問を工夫することにより、そ

の価値が分かり、自分の表現に活かすことにつながるであろう 。

皿研究内容

1 読むことと書く ことの関連指導が行われるための読解教材の条件

東京学芸大学附大泉小の中島紀子 (1975) は読むことと書くことの関連指導が行われるための

読解教材の条件として次の 3つを挙げている。

①話題・題材が、児童の読解活動 ・作文活動を通して、人間形成上の価値を持っていること 。

教室で行われる学習指導である。意味のない言語活動であっては、教育として価値が無い。人

間形成上役立つような言語活動でありたい。勿論、単なる練習学習ではないのである。

② 読み手の潜在的な問題意識や価値観を刺激 して、追求しようとする意識を喚起する内容を

持っていること。

ふだんは気にしていなかったものでも、教材に よって刺激され目覚めることが期待できるもの

1宮古教育事務所指導主事

2研究協力者砂川小学校教諭

3鏡原小学校教諭

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琉球大学教職センター紀要(第 1号)

である。気づかないでいたことを、ふと気づかせてくれたり、 このことについてもう一歩確

かめてみたいと感じさせてくれたりする教材である。読解教材が、読んでも問題を感じない

ものであるなら、書くという行為に発展しない。

③児童の発達段階に応じて、読解から作文へ移行しうる言語能力が、その教材の中で的確におさ

えられていること。

読解教材で、表現方法につながる言語能力の指導がなされなければ、それは関連指導とはとら

えない。

以上の三点を整えた読解教材を条件とし、この中のどれか 1つも欠けてはならないものとしてい

る。

2 本教材「どうぶつ園のじゅうい」の特徴

今回扱う教材「どうぶつ園のじゅうい」(光村図書こくご 2年たんぽぽ)は、低学年の児童にとっ

て興味のある動物園の「動物」と「獣医」の関係が書かれており、生き物に関心を持って触れ合

うことを好むこの時期の子どもたちにとって親しみやすい内容である。人間の医者と比較したり、

人間と動物の病気を比べたり類推したりできるので児童にとって自分の経験等を結び付け、自分

の考えを持って意欲的に取り組める。また、「なか」の文の事例が命に関わる順に構成されてい

ることを見つけ出すことで獣医の仕事の苦労・知恵そして気高さを感じ取ることができる。中島

の読解教材の条件を満たすと考える。

文章構成としては「はじめ」「なか」「おわり」の 3部構成の典型となっている。「時間的な順序」

や「事柄の順序」が明確で、それぞれの仕事の「理由」が2文目に配置され「~のです」等の文

末の表現が指摘しやすい。さらに「なか」の仕事が「その日だけ」と「毎日」で構成されている

ことに気付けば、動物の命を守るための緊急の治療と恒常的な予防の違いにつなげられ、その大

切さを比較して深めることができる。これらのことを毎時間「書くこと」の「しかけ」として価

値づけて読み取ることができれば、児童が自分の表現の場において活用できる知識 ・技能を習得

するのに適した教材である。

3 「書くこと」を充実させる「読むこと」

教科書では、この単元は「読むこと」を中心として設定されている。よって今回の試みは、「読

むこと」の教材を通して「書くこと」にもつなげていく複合単元である。中島 (1975)は、読

むことと書くことを関連させた活動として「読みを深めるためにあるいは読みを確かにするため

に、読解活動の中に書く活動を入れる場合」つまりその場面で感じたことを書くような「書くこ

と」と「作文を書くために読む活動が行われる場合。いわゆる作文指導のために、教材文を読む

ことがこれである。話題の求め方・文章構成・表現のしかた等の視点をもって読むが、書くこと

がねらいであって、読解そのものが目的ではない。」が一般的であるという 。しかし、本単元では、

「教材を文章を書くための素材にだけ還元して真似る」のではなく、「獣医のしごとを興味深く分

かりやすく伝えるために工夫された文章構成を通して、筆者の動物に対する思いに気付かせ、筆

者の思いに寄り添っていく 。」ことをねらう 。「教材を教える」のではなく、「教材で教える」と

言われる。しかし、無駄なく 言語技術が詰まってはいるが、児童にとって身近な経験や興味と関

わりのない文章からは、意欲も生まれず、言語技術の大切さも学べない。だからこそ、新学習指

導要領は「汎用的なスキル」だけでなく「教育内容」も等しく配置し「見方・考え方」でつなげ

ているのである。教育内容も汎用的なスキ)レもそれ単体では「転移」しないと言われているから

である。教材文の魅力とそこに内包される言語技術的な知識とが不可分であるのも同じだと考え

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上田・下地・川上 「読むこと」と「書くこと」を関連付けた単元の指導の工夫

る。よって教材文から籠者の思いを読み取る「読むこと」の充実を保障させながら、その教材文

のよさを支える「文章構成のヒミツ」を児童に価値づけることを目指していく 。

N 研究の実際

1 単元構成の段階

本単元を通して「事例の順序」や「因果関係」を意識した文章を書く力を身につけさせるには、

教材文を通した指導において以下の段階が必要である。

①時間的順序を前景化させる段階

②表の中にいつ、どうする、理由をまとめていく段階

③理由の文の文末を確認する段階

④2つの種類の仕事があることに気づく段階

⑤ 「動物園を出る時」は獣医の仕事かどうかを検討する段階

⑥教材の文構成を抽象化して整理し、「私の 1日」「身近な人の 1日」「保健の先生の 1日など

児童の書きたいテーマで具体化して、事柄の並べ方や時間表現、理由等を考えていく段階

2 具体的な指導過程の要素

上記の学習を成立させるために以下の要素を具体化する。

①時間的順序に気付くためのアニマシオン的な手立て

② 「いつ、どうする、その理由」を表にまとめて読み取りを深める手段にする。

③理由の文末表現に気づかせるために理由の文から共通点を見つけ、「たんぽぽのちえ」の既

習事項を想起させる。

④事柄の構成を整理する(いつもやる仕事、そうでない仕事の 2種類と「お風呂」の評価

*動物園を出るときのことは仕事なのか?

⑤中の順序性の必然性に触れる段階

⑥教材の文から「順序を表す表現」「何をするのか」 「なぜそうするのか理由」(いつもするい

つもでは無い特別」などの視点を文を書く「しかけ」としてまとめておき保健の先生の 1

日を説明する文を書くために活用する。

3 書くことにつなげる単元計画

毎時間で学んだことを「上手に伝えるしかけ」として自分の表現に活かせるような単元計画に

する。以下に実際に行った発問と見出すしかけの計画を記す。

第 2 時の学習 —------- - ---- - --------------------

◎うえださんは、どのような順番で伝えたの?

*時間的な順序の前景化のため、文章の並べ替えを行うことで、時間を表す言葉の大事さを意識

する。

I上手に伝えるしかけ① I

時間を表す言葉があると一日の流れが分かりやすいね。うえださんはうまいね。

②朝③見回りが終わる ころ④お昼前に⑤お昼すぎには⑥夕方⑦一日の終わりには⑧どうぶつ園を

出る前には

第 3 時の学習 —------- ------ --------------- ---- -

◎じゅういさんの仕事はいくつかな?

・日記や風呂は直接的ではないが、仕事につながっているという読みを促す。

I上手に伝えるしかけ②I目立たたないけど大事な仕事を伝えよう 。

第 4 時の学習 —---- ------- -------------- ------- -

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琉球大学教職センター紀要(第 1号)

◎じゅういさんの仕事ってなんですか?

・理由を表す言葉や文を本文から見つける。

・「~のです」「~からです」「だから~」「なぜかというと」という理由を表す言葉に気づく 。

・「いつ ・動物・どんな仕事 ・理由」を表にまとめる。」

・「項目名」を自分達で考えさせる。(抽象化)

I上手に伝えるしかけ③ |

理由があるから仕事の意味がよく分かる。(納得)

第 5 時の学習—------- - ------- ---- - ---- ---------

◎お仕事は仲間分けできるのかな?

• 前に作成したお仕事の理由表を活用する。

・「なか」の文が「毎日」と「特別」な仕事で構成されているこ とに気づく 。

0どうしてこの順番なの?

順番には、意図がある。「特別」な仕事をこの順番で説明しているのには理由があることを問う 。

・検診→投薬→治療→救出 (重要度 • 特殊性)

I上手に伝えるしかけ④ I・「毎日の仕事」「特別(今日だけ)の仕事」と分けて書くといいね。

• お仕事の順番も意味があるね。

第 6 時の学習 — --- --- -------------------------- -

◎一番大切な仕事はどれかな?

・獣医さんの仕事をどう思っているか知りたいという児童からの課題を解決する。

4 授業の様子と考察

(1)授業の様子から

第2時の学習の終了後、時間を表す仕掛けを教材文から導き出した後、児童は自分たちも作文

を書けそうだと意欲的になっていた。そこで「仕掛け①時を表す言葉」を使って児童がめいめい

に保健の先生の 1日を書き始めた。 しかし、朝何をする、昼何をする。夕方何をするという文

章しか書けなかった。「文が少ないね」「本にはもっと書いてあることがあるんじゃない?」と聞

くと、「事件が書かれているよ」「理由が書かれているよ」と児童が発言したので、じゃあ「中」

の文をもっと詳しく見てみようと次の活動につなげた。

第3時では、「獣医の仕事はいくつかな?」という「問い」で学習をスタ ート したが、「日記」

と「風呂」を仕事にするかどうかでズレが発生したが決着がつかなかった。決められなくて困っ

たので「どうすれば良いか」と考えさせると「理由」をよく見れば解決できるのではないかと新

たな次時への「問い」になり、第4時で仕事の「理由」を探っていった。そうすると「日記」と「風

呂」が毎日行う大事な仕事であるということを 「理由」を見つけることで解決した。そこで児童

たちは、しかけ 3として理由があると仕事がよくわかる。とまとめることができた。

しかし、「なか」の事例の順序に意図があるということに児童は気付くことができず、「しかけ」

としての「順番の意図」を児童に印象付けることに失敗してしまった。

児童から獣医さんの仕事をどう思っているか知りたいという課題が出ていたので、第 6時の学習

では文章表現としての仕掛けは特にないが、「獣医さんは自分の仕事をどう思っているか」とい

う課題で学んだ。児童は、獣医が日頃から動物の命を守るために行っている苦労や工夫を考える

ことで獣医である筆者が自分の仕事に誇りを持っていることに気付くことができた。その結果、

当初予想していなかった「保健の先生の仕事に対する思いを書く」というのも新たな 「しかけ」

として児童は、まとめることができた。

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上田 ・下地 ・川上 :「読むこと」と「書 くこと」を関連付けた単元の指導の工夫

2時終了後

「読むこと」の授業終了後

児童の書いた「ほけんの先生の仕事」

第 7時に入り、 書 くための材料を集めるために保健の先生にインタビューをした。保健の先

生に全員でしかけを軸とした質問をした。 しかけを中心に質問したことで、児童は何を軸として

書けば良いかがわかったようだった。

保健の先生にインタビューした際に、先生が自分の仕事内容を動物園の獣医の教材に置き換え

て読んでくれるという想定外のことが起こった。その時に、児童が「動物園の獣医の文は、保健

の先生の仕事も説明できる文だね。」「どんなお仕事でも使えるね。」と発見し、この流れで書け

ば、いろんな仕事を表現できることを見通せ、「しかけ」を見つけていくよさを感じたようだっ

た。保健の先生の即興ともいう読み聞かせにより、どこを置き換えてどこを置き換えないかです

ぐに別の仕事を表現できることに改めて感動しているようであった。そのような感動が起きたの

は、児童がこれまで教材の文章構成の論理をしっかり学んでいたからだと考える。

「保健の先生は自分の仕事をどう思っているか」という「どうぶつ園のじゅうい」から導いた「し

かけ」の質問を児童が行うと「児童たちが楽しい日々を送るために必要な仕事だし、児童たちの

健康を預かっていることを誇りに思っている。」と述べていた。

(2)児童の作文から

以下は、第 2時に文章の並べ替えで気づいた筆者のしかけ① 「時を表す言葉を使うと一日の流れ

が分かりやすい」をもとに、保健の先生のことを書いた作文 (上)と全てのしかけを整理し、イ

ンタビューをもとに書いた児童の作文(下)である。

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琉球大学教職センター紀要 (第 1号)

第2時終了後

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「読むこと」の授業終了後

児童の書いた「ほけんの先生の仕事」

2

児童 Aの作文 (①時を表す言葉授業後)みえこ先生は、保けんの先生です。みえこ先生は、どこかがいたいときは、保けん室で休ませて

くれます。これから、みえこ先生のしごとのしょうかいをします。

みえこ先生は、いつでもけがをしたときには、きず口にばんそうこうをはってくれます。また、

頭がいたいなどだと、休ませてくれます。

朝のうちには、各学年のけんこうかんさつぼを見ます。

午前は、このようなしごとをしています。

児童 Aの作文(全ての「しかけ」終了後)

圏]、ほけんの先生は、すべての学年の教室のみんなに、あいさつをしています。

みんなの顔色を見たり、体長 (ママ)がわるいかも見たりします。 日可尼日に、んでいる子のことをうちます。□豆祖には、ぼくたちのしん体計そくをします。なぜかというと、ぼくたちが大きくなっているかしらべるためです。

iちょうどこの時間加、保けんだよりをつくります。なぜかというとその時きにちゅういしてほしいことをほうこくするためです。

iぼくたちが帰った後は、その日に保けん室に来た人や、休んでいる人のことをまとめます。そのほかに、ぶかつやりくじょうでけがをした人たちがいたら、すぐちりょうできるようにじゅ

んびをしています。先生は、その仕ごとのことをほこりに思っているそうです。そのりゆうはみんなととてもたの

しい日々をおくることができるからです。また、みんなのけんこうをあずかっているからです。

なぜかというと、

パソコンに、休

(3)考察

初めの文章に比べて、後の文章は、より細かく「時間を表す言葉」を使って時系列にまとめる

ことができている。 また「なぜかというと」という言葉を使い、仕事の内容の次の文に「理由」

をしっかり配置できている。 さらに朝と放課後に行う毎日の仕事を説明できている。児童は、最

後の締めくくりに「保健の先生の仕事に対する思い」をしっかり述べることができていた。「読

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上田・下地・川上. 「読むこと」と「書くこと」を関連付けた単元の指導の工夫

むこと」と「書くこと」を関連させてきた今回の取組により、文章構成やその意図を探る発問に

より低学年の児童で も文章構成に目を向け、自分の表現に生かすことができることが分かった。

児童の学習の様子から「読むこと」における教材が「書く こと」のみに還元されるものではなく、

児童にとって興味のあるものでなければならず、その文章構成のしかけの価値を筆者の思いと関

連付けて読んでいくことの大切さを再認識できた。

なおこのような文章を作成する過程で、自分たちの書いた文章を「上手に伝えるしかけ」(時

間・理由・文末表現、その日だけと毎日)を視点に「読みあい」、アドバイスを加え「書き直す」

などの活動を取り入れたことも効果的であった。

文章を筆者の伝えたいことや文章構成を把握することなしに、具体レベルで真似ても児童に生

きて働く知識とはならない。文章を目的に応じた「抽象レベル」で整理し、その良さを認め、自

分の表現に活用していく過程を、教師は児童に自覚的なおかつ明示的に行う必要があることを強

く感じる。

v 成果と課題

1 成果

(1)児童がたてた「問い」の解決の中で文章構成の「しかけ」を見つけ、その価値を知ること

ができた。

(2)筆者の思いが文を構成する一つのしかけであることを児童によって導き出すことができた。

(3)「読むこと」から導いた「上手に伝えるしかけ」を意識するようになり、作文の内容が豊か

になった。

2 課題

(1) 身につけた書く 力を日常的に活用させる場の計画と設定を年間の単元と関連させて行う 。

(2)学んだ「書く知識・技能」をどの場で適用できるか、児童が自覚できるよう、教師が明示

的にする場を意識する。

【引用文献.「読むことと書くことの関連指導」東京学芸大学附大泉小 中島紀子 (1915)l

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