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学校と家庭で育む子どもの生活習慣 改訂版

公益財団法人 日本学校保健会

9784903076164

1920037020002

ISBN978-4-903076-16-4

C0037 ¥2000E

定価 (本体 2,000円+税)発行 公益財団法人日本学校保健会発売 丸善出版株式会社

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はじめに ~学校保健のめざすもの~この本は子どもたちの生活習慣を、どのようにして望ましいものにしていくか

を明らかにしたものです。そのために子どもたちの生活の場である学校や家庭を中心にして、それらに携わる人たちの実態に即し、どうやって育んでいくかをわかりやすく述べたものです。子どもの時期の生活習慣は、身体面・精神面の良好な発育と、各種の疾患の予防などに、大変に役立ち多くは一生続いていきます。生活習慣病と呼ばれる病気は、その呼び名の通り、各自のライフスタイルと深く関連しています。種々の生活習慣病は成人期に発症しますが、その予防は成人になってから慌てて取り組むのではなく、子どもの時期からの望ましい生活習慣の確立が重要といえるでしょう。これをどうやって育んでいくかを、最近の研究成果や調査データをもとに述べたものがこの本です。

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目 次

第Ⅰ章 学齢期における望ましい生活習慣のすすめ子どもたちの生活習慣の現状 ……………………………………………… P1 望ましい生活習慣づくりの実際 …………………………………………… P10

第Ⅱ章 望ましい運動習慣づくり1.現代社会と運動不足 …………………………………………………… P132.運動能力の発達 ………………………………………………………… P153.運動習慣と健康 ………………………………………………………… P184.運動習慣の改善 ………………………………………………………… P195.運動の強さと量を知る ………………………………………………… P206.運動による外傷・障害とその予防 …………………………………… P24

第Ⅲ章 食事の仕方と栄養1.朝食は毎日食べましょう ……………………………………………… P322.栄養バランスのよい食事をとりましょう …………………………… P353.食事を残さず食べましょう …………………………………………… P384.食事は楽しく美味しく食べましょう ………………………………… P395.菓子類は量を決めて食べましょう …………………………………… P406.適正体重を維持しましょう …………………………………………… P42

第Ⅳ章 生活リズムのつくり方と休養1.睡眠時間について ……………………………………………………… P452.生活リズムに関する指導 ……………………………………………… P53

第Ⅴ章 ストレスをやわらげる生活習慣1.子どもたちのストレスとその影響 …………………………………… P662.子どもたちの心身の不調と生活習慣 ………………………………… P693.ストレスへの対応:心身の不調の予防のために …………………… P75

第Ⅵ章 望ましい清潔習慣づくり1.なぜ清潔習慣づくりは大切か ………………………………………… P862.感染症を理解するための基礎知識 …………………………………… P863.食中毒 …………………………………………………………………… P914.感染症予防の基礎となる清潔習慣 …………………………………… P925.手洗い …………………………………………………………………… P976.入浴、洗面、洗髪 ……………………………………………………… P987.身体の臭い ……………………………………………………………… P998.衣服の清潔 …………………………………………………………… P100

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9.寝具・住居環境の清潔 ……………………………………………… P100

第Ⅶ章 アレルギーと生活習慣1.気管支喘息 …………………………………………………………… P1022.アトピー性皮膚炎 …………………………………………………… P1123.食物アレルギー ……………………………………………………… P117

第Ⅷ章 生活習慣と病気のかかわり1.病気の発症と遺伝要因・環境要因 ………………………………… P1272.生活習慣病とは ……………………………………………………… P1293.それぞれの小児生活習慣病 ………………………………………… P132おわりに …………………………………………………………………… P140

コラムコラム1 夏のスポーツと熱中症 ……………………………………………… P25コラム 2 日常の身体活動や姿勢を見直そう ………………………………… P27コラム3 肥満予防のための生活習慣 ………………………………………… P44コラム4 人間は、なぜ早寝・早起きが必要なのでしょう。 ………………… P48コラム5 眠りのメカニズム …………………………………………………… P51コラム6 動物の睡眠 …………………………………………………………… P54コラム7 セロトニンとセロトニン神経 ……………………………………… P57コラム8 体内時計とメラトニン ……………………………………………… P62コラム9 眼の健康を守るため ………………………………………………… P63コラム 10 発達障害の子とストレス …………………………………………… P83コラム 11 むし歯予防に効果的な歯みがき習慣 ……………………………… P94コラム 12 職種別のアレルギー対応 ………………………………………… P124コラム 13 花粉症と食物アレルギー ………………………………………… P126コラム 14 メタボリックシンドローム ……………………………………… P141コラム 15 生活習慣とおくすり ……………………………………………… P142コラム 16 西洋式の生活習慣と糖尿病の発症       ― Pima インディアンとハワイ日系人の事例より ― ……… P144

索引 ………………………………………………………………………………… Pⅰ引用文献・参考文献 ……………………………………………………………… P ⅳ執筆者一覧 ………………………………………………………………………… P ⅶ

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学齢期における望ましい生活習慣のすすめ

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Ⅰ学齢期における望ましい生活習慣のすすめ

子どもたちの生活習慣の現状

日本学校保健会では、継続して「児童生徒の健康状態サーベイランス」事業を実施してきました。これは全国の協力校に依頼し、児童生徒の健康状態の実態を調査するものです。これにより学齢期の子どもたちに伴いやすい病気や、生活習慣上の問題点が浮かび上がってきました。調査対象者のライフスタイルの中では、運動、食事、睡眠などが中心的なものと考えられ、近年では SNS(Social�networking�service)も、より大きな役割を占めるようになりました。体格や検査所見などの生活習慣病のリスクファクターなども検討されています。子どもの病的状態としては、メンタルヘルス、アレルギーなどが遭遇する機会の多いものであり、調査項目に含まれています。以下にこれらの要点を、簡単に述べていきたいと考えます。なお、この事業は子どもたちの現状を示すことにより、いろいろな施策・対応がな

され、子どもたちの生活をより良好にすることを支援するものです。この本は以上の結果をもとに、いかにして学校と家庭で望ましい生活習慣が育まれていくかをわかりやすく述べました。旧版に最新のデータを盛り込み、図を多数使用し、読者にわかりやすいことを目標とし全面的に改編したものです。

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学校と家庭で育む子どもの生活習慣

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1.身体活動・運動子どもたちの身体活動については、文部科学省の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」などに報告されています。総合的な体力水準は、調査がこの形で開始された平成 20 年度と比べて、女子では小中学生ともに上昇が見られましたが、小学校男子では、わずかながら低い点数でした(図1)。種目別では,握力及び投げる能力にかかる項目は,全体に低下していると考えられました。身長・体重などの体格は大きくなっていますが、この運動能力の低下はいろいろの原因により身体活動が低下していること(運動不足など)が主な理由であると考えられます。身体活動の低下(運動不足)はそれだけでなく、成人期・熟年期にも大きな影響を持つと考えられます。大人になってからの筋肉や骨の量とも深く関連することが知られるようになりました。生活習慣病は現代人にとって重要な疾患の一つですが、これと関わっているのが肥満であり、これも次項で述べる食生活の混乱とともに、運動不足が中心的な要因にあげられています。小児肥満も以前に比べ

出典:スポーツ庁 全国体力・運動能力、運動習慣等調査報告書 平成 27年度

図1 体力の総合点の推移

4244464850525456

小学校

中学校

●男子(点)

4244464850525456

●女子(点)

●男子(点)

3638404244464850

●女子(点)

3638404244464850

54.2 54.2 54.4 54.1 53.9 53.9 53.8

H20 H21 H22 H24 H26H25 H27(年度)

H20 H21 H22 H24 H26H25 H27(年度)

(年度)H20 H21 H22 H24 H26H25 H27

(年度)H20 H21 H22 H24 H26H25 H27

41.4 41.3 41.5 42.1

48.3 47.9 48.0 48.6 48.3 48.5 49.0

41.7 41.6 41.8

54.8 54.6 54.9 54.9 54.7 55.0 55.2

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学齢期における望ましい生活習慣のすすめ

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数倍増加し、およそ 10 人に一人が肥満傾向児となっていますが、依然として明らかな減少は確認されていません。肥満は子どもたちの体や心に望ましくない影響をもたらすことが知られています。子どもたちの身体活動量は総じて低下していますが、中高生になると部活動などで運動量の多い者と、課外活動も少なく運動不足の者とに二極化する傾向がみられます(図2)。

2.食生活子どもたちの望ましい食習慣をどうやって育てるかについては、食育なる単語も広まってきました。食生活では当然ながら、各栄養素の過不足などが問題となります。この食事「内容」の混乱に加え、食事の「摂り方」も問題視され、朝食の欠食は大いに注目されてきました。朝食を摂らないと、特に午前中の活力低下、その反動ともいえる午後以降の過食、栄養分の偏りなどをもたらし、肥満の誘因にもあげられています。午前中に脳のエネルギーとなるブドウ糖の供給が十分でないと、脳が適切に活動を始めず、体のスイッチも入りません。気分的にもイライラしやすかったり、学業成績も低下したりするとのデータも提出されています。全体の生活時間が遅れ、就寝時刻も遅くなりがちになります。すなわち夜更かし・朝寝坊が生じやすく、これを防ぐために「早寝・早起き・朝ごはん」の標語の下に、国民運動が展開されました。以前は中高生の 10 ~ 20%程度が朝食を摂っていませんでしたが、全体として朝食を摂る割合はやや増加し

出典:スポーツ庁 全国体力・運動能力、運動習慣等調査報告書 平成 27年度

図2 1週間の総運動時間の分布;運動時間の二極化

25

20

15

10

5

0

1週間の総運動時間60分未満

7.1%

300 600 900 1,200 1,500 1,800 2,100 2,400(分)

25

20

15

10

5

0

1週間の総運動時間60分未満

21.0%

300 600 900 1,200 1,500 1,800 2,100 2,400(分)

(%)(%)●男子(中学校) ●女子(中学校)

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学校と家庭で育む子どもの生活習慣

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ているようですが、学年が進むと欠食が増えがちになるという問題も指摘されています(図3)。これ以外に一人で食事を摂る(孤食、個食)者が見られるのも現代の特徴でしょう。中学生以後、特に高校生になってくると、女子では 70 ~ 80%で「痩せたいと思っている」とし、約半数にダイエットの経験があると報告されています(図4)。もし不適切にダイエットが行われるとすれば、健康上から好ましくありません。不適当な体重減少は、いくつかの問題をもたらしますが、主なものをあげると、①月経不順ないし無月経と、②骨密度(骨の硬さ)の低下です。低体重となると、卵巣の働きが低下し、無月経となります。これに加え、骨が弱くなり骨折にもつながります。骨密度が増え、骨が丈夫になるのは青年期までで、低体重であるとこれが抑えられ、骨は密度の低いままで成人になり、その後に誰にも生ずる閉経期以後の骨密度の低下がより著しくなり、老年期の骨折(大腿骨頸部骨折など)の主要な原因となります。子どもの時の体重・骨密度は、大人になった後の健康と深く関連していることを知っておくべきでしょう。

図3 朝食の摂取状況

0% 20% 40% 60% 80% 100%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

●男子

全体

小学校 1・2 年生

小学校 3・4 年生

小学校 5・6 年生

中学生

高校生

●女子

全体

小学校 1・2 年生

小学校 3・4 年生

小学校 5・6 年生

中学生

高校生

88.388.3

94.294.2

94.294.2

92.092.0

84.484.4

78.778.7

88.288.2

94.794.7

93.393.3

91.691.6

83.983.9

80.180.1

6.76.7 1.01.02.52.51.41.4

3.93.90.30.3

0.50.5

3.83.80.10.11.31.3

4.84.80.90.92.12.1

0.20.2

9.39.3 1.51.53.13.11.71.7

10.410.4 3.03.04.84.8 3.23.2

7.57.5 0.50.52.42.43.73.7

0.00.01.21.20.40.4

4.24.20.00.01.71.7

0.80.8

5.05.00.20.22.42.4

0.90.9

0.50.53.03.02.22.2

12.312.3

10.410.4

1.71.73.23.22.72.7

1.51.5

■ 毎日食べる  ■ 食べる日の方が多い  ■ 食べない日の方が多い  ■ ほとんど食べない  ■ 毎日食べない

1.11.10.60.6

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学齢期における望ましい生活習慣のすすめ

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3.睡眠現代人の生活は総じて夜型となっています。例えば日本学校保健会の最近の調査結果を昭和 56 年度のものと比較すると、小中学生の就寝時刻は約 15 ~ 30 分遅くなっています(図5)。睡眠時間も 15 ~ 45 分短くなっています。起床時刻も遅れがちになっているようです。すなわち現代の子どもたちは、より夜型の生活へ向かっており、これが低年齢にも見られるのが目立つといえます。生まれつきヒトに備わっているといわれる「体内時計」は、24 時間+アルファ

を1日としてセットされています。これを概日リズム(およそ1日という意味)といいます。したがって自然の成り行きにまかせると、毎日少しずつ(+アルファ分)起床時間は遅くなる傾向にあります。登校時刻などを規則的にすると、正 24時間のリズムをつくることが出来ます。起床後、特に日光を浴びたりすると脳内にメラトニンというホルモンの分泌が抑制され、起床・就寝のリズムつくりに役立ちます。夜更かしをすると、朝寝坊、朝食の欠食につながります。この結果、午前中の

活力不足、昼食以後の過食、気分のイラ立ち、学業成績の低下になりやすいとの結果となります。

図4 ダイエットの経験

0% 20% 40% 60% 80% 100%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

■ 医師から指導を受けて実行した  ■ 学校の先生などから指導を受けて実行した■ 自分で考えた内容で実行した   ■ 実行したことはない

88.088.010.310.3

13.513.5

0.80.80.80.8

91.491.41.11.11.31.3

0.40.40.10.12.72.7

6.16.1

88.888.81.11.11.21.2 8.98.9

84.984.90.90.90.80.8

18.618.6 80.080.00.60.60.80.8

96.896.8

74.574.524.324.3

36.136.1

0.40.40.80.8

91.391.30.40.40.70.7

0.30.30.70.7

4.04.0

7.67.6

87.387.30.70.71.11.1

62.862.80.40.40.60.6

55.355.3 43.743.70.30.30.60.6

95.095.0

10.910.9

●男子

全体(n=9604)

小学校 1・2 年生

小学校 3・4 年生

小学校 5・6 年生

中学生

高校生

●女子

全体(n=9532)

小学校 1・2 年生

小学校 3・4 年生

小学校 5・6 年生

中学生

高校生

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学校と家庭で育む子どもの生活習慣

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4.ストレス社会現代の社会はストレス社会といわれます。これは大人だけの問題ではなく、子どもたちにとってより深刻ともいえます。子どもたちは学校の宿題や塾通いや習い事、パソコン・携帯用ゲーム、そして SNS と称されるスマートフォンなどを用いた通信・娯楽手段など、勉強に遊びにと大変忙しい生活を送っています。さらに多くの子どもには、高校や大学などへ進学するための受験が待っています。少子化のため集団遊びの機会が減り、仲間をつくりにくくなっていることもストレスの原因の一つにあげられるでしょう。

図5 就寝時刻の年次推移

1:00

0:30

0:00

23:30

23:00

22:30

22:00

21:30

21:00

(時)

1:00

0:30

0:00

23:30

23:00

22:30

22:00

21:30

21:00

(時)

●男子

●女子

23:490:03 0:00

0:10 0:10 0:06 0:04 23:56 23:56 23:59 23:500:14

0:22

22:0021:46 21:52 21:55 21:58

22:02 21:58 22:00 22:00 21:57 21:56 21:5521:5722:03

21:3521:23 21:23 21:23 21:18 21:21

21:3621:21

21:37 21:37 21:4221:47 21:50 21:43

21:37 21:37 21:35 21:3621:4421:43

23:50 0:00 23:57 0:04 0:06 0:06 0:120:01 23:58 0:02 23:53

0:070:10

23:19

22:53

23:1523:19

23:3823:24 23:24 23:30 23:21 23:24 23:28 23:2123:2623:29

22:1121:48 21:59 22:04 22:10 22:07 22:08 22:10 22:07 22:06 22:04 22:0322:0722:10

21:27 21:23 21:20 21:23 21:19 21:20

21:39

21:16

21:40 21:41 21:44 21:43 21:4821:42 21:41 21:38 21:39 21:39

21:4421:39

23:0122:48

23.28 23:1923:12 23:12 23:1023:06

23:19 23:15 23:1223:1123:19

23:01

平成26年度

平成24年度

平成22年度

平成20年度

平成18年度

平成16年度

平成14年度

平成12年度

平成10年度

平成8年度

平成6年度

平成5年度

平成4年度

昭和56年度

平成26年度

平成24年度

平成22年度

平成20年度

平成18年度

平成16年度

平成14年度

平成12年度

平成10年度

平成8年度

平成6年度

平成5年度

平成4年度

昭和56年度

小学校1・2年生 小学校3・4年生 小学校5・6年生 中学生 高校生

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学齢期における望ましい生活習慣のすすめ

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ストレスとは体や心に様々な圧迫がかかることです。この結果としてストレスホルモンが分泌されたりして、このストレスに打ち勝ったり、解消したりなどの反応を起こします。しかし、ストレスが強すぎたり、解消法が有効でなかったりすると、身体や精神が故障してしまいます。日常ではしばしば心の問題に焦点をあてストレスという言葉が用いられています。誰しもがいくらかのストレスをかかえて生きているといえます。ただそれが過度であったり、適切なストレス解消法がなされていなかったりすると、子どもたちを押しつぶしてしまうこととなります。

5.アレルギー疾患アレルギーの症状に悩まされている子どもたちも少なくないので、児童生徒にとって見過ごすわけにはいきません。アレルギーの原因であるアレルゲンはしばしば生活の中に存在することから、学校・家庭でも予防や対応(通常時、緊急時)の体制が必要となります。気管支喘息に対するステロイド吸入、アナフィラキシー・ショックの際のエピペンʀ注射、食物アレルギーに対する脱感作療法をはじめとして、近年に広く導入され目覚ましい成果をあげている治療法についてよく知ることも、大いに重要といえるでしょう。アレルゲンとなり得る物質には、多くの種類があり(図6)、複数のアレルゲン

に反応する人もいます。気管支喘息の原因となる物質は、空気中にあり吸い込まれる物質(吸入抗原という)が多くみられます。室内の塵(ハウスダスト)中のダニ類や、ペット(毛など)、季節により飛散する種々の花粉などがアレルゲンと

図6 アレルゲンの種類

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学校と家庭で育む子どもの生活習慣

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なることがあります。ハウスダストは家庭での掃除を十分に行うこと、ペットは安易に接触しないなど、日常生活の中に予防のカギが存在する場合が少なくありません。アレルゲンには症状の出るような量に繰り返し接触すると、次第に反応が強くなる性質があります。反対にごくわずかな量で無症状な場合は、繰り返すうちに次第に慣れていくという性質があります。前者の考え方から、アレルゲンの除去が必要であるとされます。アレルゲンに繰り返し接触するとますます悪化してゆきます。掃除を徹底しダニをなくしたり、その人にアレルギーを生ずる食品を食べないようにしたりすることです。後者の考えを治療に応用したものに、脱感作療法があげられます。例をあげれば、ごく少量のアレルゲンとなっている物質(食品など)を、発作の起こらないようにしながら、ごく少量ずつ増量し、次第に慣れさせようとするものです。これは判断が難しく、医療機関で相談しながらやる治療法といえます。気管支喘息における室内の塵(ハウスダスト)の除去、アトピー性皮膚炎での皮膚の清潔などは、どちらも子どもたちの日常生活と深く関わっているといえます。

6.生活習慣病生活習慣病による動脈硬化(心筋梗塞、脳梗塞・出血など)は成人にとって、悪性腫瘍とならんで2大疾病といわれることがあります。生活習慣病には血清脂質異常、高血圧、糖尿病(特に2型)などがありますが、これらと密接にかかわっているものが肥満です。生活習慣病は主として成人期・老年期に発症しますが、子どもたちにおける重要性が叫ばれるのはなぜでしょうか。まずあげられるのは、大人ほど多くはありませんが、生活習慣病が小児期に生ずることがあるからです。その後の動脈硬化もより早く進行すると考えられます。次いで、生活習慣づくりは子どもの時期にスタートするわけですから、この時期から望ましい生活習慣を確立しておくことは、成人期における健康維持にも大きな影響を持っているといえるでしょう。肥満の頻度は子どもたちではおおよそ 10%前後とされ、年齢や性別により若干の違いがあります。昭和 45 年度の調査結果ではおよそ3%でしたので、3倍前後の著しい増加といえます。大人の肥満の判定には、主としてBMIが用いられますが、子どもでのBMI の適用はそれほど容易ではありません。子どもたちには肥満度を

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学齢期における望ましい生活習慣のすすめ

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算定し(計算式:133 ページ 参照)、多くは+20%(120%)以上を肥満と考えるのが、我が国では一般的です。また成長曲線などを用い、長期的な経過を見るのも、簡単でわかりやすい方法といえます。現代の子どもたちは、生活習慣病のリスクに向かい合っているといわれています。その中心的な要因がライフスタイルの中にあることは、彼らの生活を振り返れば容易にわかるでしょう。子どもの時期はそれ以後の一生のライフスタイルの基礎づくりの時期にあたります。実際的には、運動不足となりやすい生活、カロリーの十分すぎる食事、SNS への極端な依存などであり、夜型の生活はこれらを促進する傾向があります。現代人すべてがこれらのリスクにさらされているといえるでしょう。すなわち、特定の人ではなく、すべての人たちが、現状を十分に理解し生活していく必要があるでしょう。

7.インターネット・SNS近年の SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)と総称される通信システムの発達は目覚ましいものがあります。これはインターネットを利用し、各種の情報を発信・受信し、社会的なネットワークをつくり上げるもので、ウエブサイト、電子掲示板などを含め、様々な形態があります。これらの長所や弊害はともかくとして、すでに子どもたちの生活に深く関わりをもっており、廃止や極端な制限は非現実的です。しかしながら、これを利用するにあたり、その性質を理解して出来るだけ賢く使用すべきでしょう。まず気になるのは、時間的な混乱です。連続的に長時間使用したり、深夜や食事中などの好ましいとはいえない時間に使用したりすることがあります。次いで内容の不適切さが危惧されます。成人向けだったり、暴力的だったりすることに対しては、可能なブロック策を検討しましょう。関連する金銭関係のトラブルにも注意する必要があります。「歩きスマホ」などと呼ばれる、歩行時の使用なども安全性の面から気をつけましょう。インターネットを利用した SNS は、情報収集上は極めて有効な手段といえます。それと同時に機能が優秀であればあるほど、その弊害も大きくなる危険性に気をつけることが必要となるでしょう。

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学校と家庭で育む子どもの生活習慣

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望ましい生活習慣づくりの実際

これまで述べたように、現代の子どもたちの生活習慣には、いくつかの問題が潜んでいます。これを解決し、望ましい生活習慣をつくっていくためには、何が必要となるでしょうか。要点を以下に記しますが、必要により後の各章も参照してください(図7)。

1.早寝、早起きをしよう「早寝、早起き、朝ごはん」の標語のとおり、早起きは日中の生活のスイッチをオンにすることからも、一日の始めとして重要なものです。ヒトは「概日リズム」といわれる 24 時間を少し上回る周期を持っているため、

24 時間周期を維持し、規則正しい生活をするためには、いくらかの注意が必要です。通学・通園している子どもたちは、遅刻しないようにすることが、知らず知らずに正しい一日の規則的なリズムの確立に役立っています。「早寝」と「早起き」は多くは連動しており、早く寝ると、次第に早起きになることが出来るようです。望ましい睡眠のリズムをつくる具体的方法としては、まず早起きの習慣をつくるように心がけると、それにつれて早寝になっていくことが多いようです。日中は日光を浴びて光を感じることが、メラトニンの分泌を抑え、昼夜の生活をより明確に区別させるために有効です。適度な運動も心身をリラックスさせ、寝つきをスムーズにすると考えられます。

図7 望ましい生活習慣づくり

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学齢期における望ましい生活習慣のすすめ

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早寝、早起きは習慣づけが大切です。子どもたちは年齢が低いほど、より保護者のライフスタイルに影響されるので、親が寝るのが遅ければ、それにつられて寝るのが遅くなる傾向があります。親には自身の生活がありますから、子どもには年齢に適した望ましい生活リズムを考えなくてはなりません。年齢が進んでしまうと困難になりやすいので、小さい頃から「早寝、早起き」の習慣づくりに努めたいものです。(45 ページ、第Ⅳ章 参照)

2.朝食を食べて食生活リズムをつくろう朝食をしっかり食べることは、体を目覚めさせ、脳を活発に働かせるためにと

ても大切です。これは単なる栄養補給にとどまらず、一日の生活リズムをつくる上で、極めて重要です。朝食をしっかり食べることで、昼食、そして夕食へと健康的で、規則的な食事のリズムができ、これに「早寝、早起き」の習慣が加われば、心地よい排便や睡眠にもつながることが期待できます。この意味から、「早寝、早起き、朝ごはん」なる標語の大切さが再認識されます。欠食すると栄養不足が生じたり、他の機会(昼食、夕食、間食など)に食べ過

ぎになったりしがちです。学業成績、精神的な安定、午前中の活力、肥満ややせの減少など種々の影響があるとの調査結果もあります。(32 ページ、第Ⅲ章 1.朝食は毎日食べましょう 参照)

3.体をこまめに動かそうとにかく日常的に体を動かす機会をみつけることが大切です。それには、風呂

洗い、食器洗い、洗濯物の始末、新聞の片付けといった、家で体を動かすお手伝いをすることも一石二鳥でしょう。現代社会は男女共同参画を基本としていますので、男子も女子も一定の家事の能力を身につけておくべきでしょう。将来的な成人としての生活にも、男女ともに大いに役立ちます。運動に長い時間を費やしている子どもたちがいる反面、運動不足の者も増えて

いることが、調査によっても明らかにされています。運動好きになり、スポーツの技能を身につけておくことも、子どもにとって有効です。成人においても運動は大いに必要です。肥満症や糖尿病の治療のため、運動メニューが処方されることもあり、運動がこれらの予防のために必要となることがあります。この際に、運動嫌いであったり、スポーツが不得手であったりすると、運動療法が十分に行えません。(13 ページ、第Ⅱ章 参照)

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